「Music That You Can Dance To」 SPARKS
「Music That You Can Dance To」 (1986 Curb)
SPARKS

<members>
Russell Mael:vocals
Ron Mael:Fairlight・Roland Jupiter8・Yamaha DX-7
1.「Music That You Can Dance To」 Ron Mael/Russell Mael
2.「Rosebud」 Ron Mael/Russell Mael
3.「Fingertips」 Clarence Paul/Henry Cosby
4.「Armies Of The Night」 Ron Mael/Russell Mae
5.「The Scene」 Ron Mael/Russell Mael
6.「Shopping Mall Of Love」 Ron Mael/Russell Mae
7.「Modesty Plays (New Version)」 Ron Mael/Russell Mae
8.「Let’s Get Funky」 Ron Mael/Russell Mae
<support musician>
Robert Mache:guitar
Bob Haag:Endodyne guitars・Roland synthesizers・backing vocals
Leslie Bohem:bass・backing vocals
David Kendrick:drums
John Thomas:keyboards
produced by Ron Mael・Russell Mael・Greg Penny
engineered by Dan Lacksman
● サンプラーを導入し硬質なデジタルサウンドに進化したベテラン兄弟ユニットのダンサブルエレクトロポップ作品
1972年から時代に合わせてそのサウンドスタイルをカメレオンのように変化させながら、そのひねくれたユーモアと大胆さを兼ね備えていたアメリカL.A.の兄弟ユニットSPARKSは、79年リリースの名盤「No.1 In Heaven」でテクノポップブームの火付け役の一端を担うなど怒涛のエレポップ期に突入、80年代前半は5枚のアルバムを立て続けにリリースするなどその精力的な活動に拍車がかかっていきました。しかしブームとは過ぎ去るもので雨後の筍のように現れるエレポップグループの波にかき消されるようにその存在感が希薄になったSPARKSは、80年代後半にはメインストリームからは忘れ去られたような雰囲気になってしまいます。ところが彼らはここで果敢にもFairlight CMIシリーズを導入したハイパーなエレポップを志向してその遊び心を持て余した時期であったようで、その興味深い時期の作品である本作は、「No.1 In Heaven」とは違ったアプローチによるダンサブルマシンビートなサウンドで、チャレンジ精神豊かな楽曲を多く収録している好作品となりました。
Fairlightというモンスターサンプラーを大フィーチャーした本作に特徴は何といってもゴリゴリに駆け巡る16ビートのシンセベースと、これでもかと繰り出されるオーケストラヒットでしょう。そこに時代性の象徴とも言えるビッグパワーなドラムサウンドが絡んでくるわけですから、そのマシナリー感覚が尋常ではありません。それでも前半4曲はまだ大人しく遠慮さえ感じられがちなのですが、後半(レコードにおけるB面)一発目の「The Scene」からの怒涛の攻撃的なサンプラーフレーズの嵐には度肝を抜かれます。もちろん彼ら特有のストレンジポップな部分は維持されており、ポップソングとして成立しながらのこの冒険的なサウンドデザインですから、そのチャレンジ精神には相変わらず驚かされるところです。それにしてもこのスラップをサンプルしたベースをページRでシーケンスしたような独特のゴリゴリベースラインにはテンション上がりますし、執拗なオーケストラヒットにはやり過ぎ感でそのしつこさに悲鳴を上げたくなるくらいなのですが、80年代中期から後期にかけてのエレポップが飽きられていた時代だからこそ、こうした過激なサウンドが許されていたのであって、このようなサウンドは現在では古臭いと感じるか、逆に刺激的と捉えるかはリスナー次第といったところであると思われます。しかし本ブログの読者であれば気に入っていただけるほどのテクノロジー度満載のサウンドデザインが施されていますので、その点に関しては保証しておきたいです。時代に合わせて変身していった彼らのミドル80'sだからこそ生まれた隠れた名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「The Scene」
ストーリーを感じさせるような壮大な展開を見せる激動のサンプラーエレポップ。全体を引っ張っていく派手なスラップサンプリングのベースライン、圧力をかけまくる過激なオケヒット、中盤のブレイクからはインダストリアルなメタリックリズムで場面転換、このやり過ぎオーバーヒートな感じは個人的に大好物です。
・「Shopping Mall Of Love」
爆音ドラムをバックにしたポエトリーリーディング中心の挑戦的な楽曲。全体的に使用している音色は少なめながらも、全てを打ち消すかのような深いゲートリバーブをかけまくったリズムに漲る不気味なパワーと日常的なタイトルとのコントラストが面白いです。
・「Let’s Get Funky」
ミディアムなビートに乗った緩やかなダンスチューンと言いつつも、メインフレーズをオケヒットの連続で担わせているため、その暑苦しさが半端ではありません。ビーンッといった電子音もその執拗さに拍車をかけていますし、彼らなりの歪んだデジタルファンク精神が堪能できて非常に興味深いです。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (本作は過激に繰り出されるベースとオケヒットに尽きる)
・メロディ ★ (圧力の高いサウンドにあって楽曲は幾分地味だったかも)
・リズム ★★★ (80'sの彼らのどの作品よりもドラムの圧が強力)
・曲構成 ★ (前半の停滞感が嘘のように後半に勢いが急上昇)
・個性 ★★ (彼らの歴史の中でも評価が定まらないのが惜しい)
総合評点: 7点
SPARKS

<members>
Russell Mael:vocals
Ron Mael:Fairlight・Roland Jupiter8・Yamaha DX-7
1.「Music That You Can Dance To」 Ron Mael/Russell Mael
2.「Rosebud」 Ron Mael/Russell Mael
3.「Fingertips」 Clarence Paul/Henry Cosby
4.「Armies Of The Night」 Ron Mael/Russell Mae
5.「The Scene」 Ron Mael/Russell Mael
6.「Shopping Mall Of Love」 Ron Mael/Russell Mae
7.「Modesty Plays (New Version)」 Ron Mael/Russell Mae
8.「Let’s Get Funky」 Ron Mael/Russell Mae
<support musician>
Robert Mache:guitar
Bob Haag:Endodyne guitars・Roland synthesizers・backing vocals
Leslie Bohem:bass・backing vocals
David Kendrick:drums
John Thomas:keyboards
produced by Ron Mael・Russell Mael・Greg Penny
engineered by Dan Lacksman
● サンプラーを導入し硬質なデジタルサウンドに進化したベテラン兄弟ユニットのダンサブルエレクトロポップ作品
1972年から時代に合わせてそのサウンドスタイルをカメレオンのように変化させながら、そのひねくれたユーモアと大胆さを兼ね備えていたアメリカL.A.の兄弟ユニットSPARKSは、79年リリースの名盤「No.1 In Heaven」でテクノポップブームの火付け役の一端を担うなど怒涛のエレポップ期に突入、80年代前半は5枚のアルバムを立て続けにリリースするなどその精力的な活動に拍車がかかっていきました。しかしブームとは過ぎ去るもので雨後の筍のように現れるエレポップグループの波にかき消されるようにその存在感が希薄になったSPARKSは、80年代後半にはメインストリームからは忘れ去られたような雰囲気になってしまいます。ところが彼らはここで果敢にもFairlight CMIシリーズを導入したハイパーなエレポップを志向してその遊び心を持て余した時期であったようで、その興味深い時期の作品である本作は、「No.1 In Heaven」とは違ったアプローチによるダンサブルマシンビートなサウンドで、チャレンジ精神豊かな楽曲を多く収録している好作品となりました。
Fairlightというモンスターサンプラーを大フィーチャーした本作に特徴は何といってもゴリゴリに駆け巡る16ビートのシンセベースと、これでもかと繰り出されるオーケストラヒットでしょう。そこに時代性の象徴とも言えるビッグパワーなドラムサウンドが絡んでくるわけですから、そのマシナリー感覚が尋常ではありません。それでも前半4曲はまだ大人しく遠慮さえ感じられがちなのですが、後半(レコードにおけるB面)一発目の「The Scene」からの怒涛の攻撃的なサンプラーフレーズの嵐には度肝を抜かれます。もちろん彼ら特有のストレンジポップな部分は維持されており、ポップソングとして成立しながらのこの冒険的なサウンドデザインですから、そのチャレンジ精神には相変わらず驚かされるところです。それにしてもこのスラップをサンプルしたベースをページRでシーケンスしたような独特のゴリゴリベースラインにはテンション上がりますし、執拗なオーケストラヒットにはやり過ぎ感でそのしつこさに悲鳴を上げたくなるくらいなのですが、80年代中期から後期にかけてのエレポップが飽きられていた時代だからこそ、こうした過激なサウンドが許されていたのであって、このようなサウンドは現在では古臭いと感じるか、逆に刺激的と捉えるかはリスナー次第といったところであると思われます。しかし本ブログの読者であれば気に入っていただけるほどのテクノロジー度満載のサウンドデザインが施されていますので、その点に関しては保証しておきたいです。時代に合わせて変身していった彼らのミドル80'sだからこそ生まれた隠れた名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「The Scene」
ストーリーを感じさせるような壮大な展開を見せる激動のサンプラーエレポップ。全体を引っ張っていく派手なスラップサンプリングのベースライン、圧力をかけまくる過激なオケヒット、中盤のブレイクからはインダストリアルなメタリックリズムで場面転換、このやり過ぎオーバーヒートな感じは個人的に大好物です。
・「Shopping Mall Of Love」
爆音ドラムをバックにしたポエトリーリーディング中心の挑戦的な楽曲。全体的に使用している音色は少なめながらも、全てを打ち消すかのような深いゲートリバーブをかけまくったリズムに漲る不気味なパワーと日常的なタイトルとのコントラストが面白いです。
・「Let’s Get Funky」
ミディアムなビートに乗った緩やかなダンスチューンと言いつつも、メインフレーズをオケヒットの連続で担わせているため、その暑苦しさが半端ではありません。ビーンッといった電子音もその執拗さに拍車をかけていますし、彼らなりの歪んだデジタルファンク精神が堪能できて非常に興味深いです。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (本作は過激に繰り出されるベースとオケヒットに尽きる)
・メロディ ★ (圧力の高いサウンドにあって楽曲は幾分地味だったかも)
・リズム ★★★ (80'sの彼らのどの作品よりもドラムの圧が強力)
・曲構成 ★ (前半の停滞感が嘘のように後半に勢いが急上昇)
・個性 ★★ (彼らの歴史の中でも評価が定まらないのが惜しい)
総合評点: 7点
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