「Saturation Flower」 貴水博之
「Saturation Flower」(1991 バンダイ)
貴水博之:vocal

1.「Mr. Brick」 詞:貴水博之 曲・編:遠山裕
2.「Saturation Flower」 詞:Vivien Allender・保泉ヒロ・貴水博之 曲・編:保泉ヒロ
3.「GRIEVOUS RAIN」 詞:久和カノン 曲:大堀薫 編:遠山裕
4.「光と影のDéjà vu」 詞:久和カノン 曲・編:遠山裕
5.「Good Times, Bad Times」 詞:貴水博之 曲・編:遠山裕
6.「Slipping Off Your Mask」 詞:貴水博之 曲:保泉ヒロ・岡井大二 編:保泉ヒロ
7.「We Shed No Tears」 詞:久和カノン 曲:鈴木雄大 編:椎名和夫
8.「21世紀少年(21st century boy)」
詞:尾上文 曲:岡井大二 編:岡井大二・遠山裕
9.「Out Of Time」 詞・曲:Mick Jagger・Keith Richards 編:岡井大二・遠山裕
<support musician>
稲葉政裕:guitar
椎名和夫:guitar・computer programming・drums & percussions programming・instrument manipulate
石黒彰:keyboards・instrument manipulate
浦田千尋:chorus
遠山裕:computer programming・drums & percussions programming・instrument manipulate
保泉ヒロ:computer programming・instrument manipulate
岡井大二:drums & percussions programming
津田ヒロユキ:instrument manipulate
福富幸宏:instrument manipulate
produced by 岡井大二
sound produced by 保泉ヒロ(exept 2、6)
engineered by 伊藤圭一・津田ヒロユキ・中村充時・斉藤浩
● accessでのブレイク前に密かにデビューしたハイトーンヴォーカリストのハウス基調の音遊びも豊かな幻のデビューアルバム
今や押しも押されぬ浅倉大介の相棒、accessの貴水博之。しかし彼はaccessとしてのデビューまでに2度CDデビューを果たしています。最初は1989年、5人組ロカビリーヴォーカルグループHOT SOX(俳優・乃木涼介や渡辺美奈代の夫らが在籍)のメインヴォーカリストHIROとしてシングルとアルバムを1枚ずつ残しましたが、爪痕は残せずグループは解体、HIROは貴水博之としてソロシンガーに転身、2年後の91年にシングル「GRIEVOUS RAIN」で再デビューに至ります。この楽曲がアニメ「ゲッターロボ號」のエンディングテーマに採用され、同番組オープニングテーマの「21世紀少年」と共にお茶の間の子供達にそのハイトーンヴォイスが届けられました。そしてその2度目の再デビューの2ヵ月後に自身初のソロアルバムとして本作がリリースされることになるわけです。
さて、ソロとしての再デビューにあたり、貴水がプロデュースされたのは伝説的なプログレッシブロックバンド、四人囃子の元ドラマーであった岡井大二です。89年の四人囃子再結成の余韻冷めやらぬ時期のプロデュースということで、本作のサウンドは紛れもなくエレクトロポップです。しかし80年代のような過剰で分厚いゴリゴリしたサウンドというよりは、いかにも90年代的な洗練された軽快さをまとったダンサブルエレポップといった風情です(「We Shed No Tears」だけは完全なる80'sシティポップ)。半数以上の編曲に関わっているのは、70年代からキャリアを積みながら並行してL⇔Rのプロデュースも手掛けていた遠山裕で、彼の音数が少ないながらもその縦横無尽のシンセベースとチープなウワモノシンセで独特の味を醸し出すサウンドメイクは、本作全体のサウンド面での柱となっているようです。それに加えて本作において2曲に関わっている保泉ヒロ(後のHiro Hozumi)は異色のハウスビートでその存在感を発揮しており、SODOM等でタッグを組んでいた福富幸宏をマニピュレーターとして引き込んで、実験精神に溢れたトラックを提供しています。しかしながらさすがは後年エレポップシンガーとして花開く貴水博之は、本作のような細かく整理されたリズムトラック&シーケンスに乗ったシリアスなエレクトリックサウンドをバックにしても、個人の色を損なうことなく堂々と渡り合っており、本作の経験があってこそaccessのような圧倒的なシンセサイザーまみれのダンサブルポップに組み込まれても、違和感なくハマったと言えるのではないでしょうか。
本作はaccessのシンガー貴水博之としては忘れたい過去なのか、公式にはリストアップされないアルバムですが、この過渡期であるからこそのルーツの再確認と実験性(ラストのThe Rolling Stonesのリメイク「Out Of Time」ではしっかりルーツに向き合っていますし)、access前夜のエレポップへの適応力の高さが再確認できる貴重な作品ではないかと思われるので、是非再び本作に向き合ってくれることを願っています。
<Favorite Songs>
・「Saturation Flower」
音遊びで聴き手を翻弄するいなたいハウスポップチューン。当時勃興し始めていたハウスな軽いビートに、保泉ヒロ&福富幸宏によるサンプリングを大胆に使用したSEが飛び交うリズムコンストラクションがこれでもかと繰り出されます。ポップなメロディとはお世辞にも言えませんが、そのチャレンジ精神は認めたくなります。
・「Slipping Off Your Mask」
これも保泉ヒロによるシリアスハウストラック。派手なシンセブラスやオケヒットも混ぜながら、メリハリの効いたリズムトラックで躍動感を演出、相変わらずメロディ自体はポップのカケラも感じないものの、いなたいダンスチューンとしてはこれも1つの形と言えると思います。
・「We Shed No Tears」
本作中では異色の80年代シティポップ感覚溢れるポップチューン。作曲がソロシンガーとしても活躍した鈴木雄大、アレンジが椎名和夫となると、モロに80'sの匂いが満載といっても不思議ではありません。そして本作だけが妙に哀愁メロディでドラムも非常に力強さを残し、数年前にタイムリープした感覚に襲われます。結果的に名曲の誉れが高くなったわけですが・・・。
<評点>
・サウンド ★★ (90年代的なチープな音作りだが作り込みも感じる)
・メロディ ★ (ポップシンガーとしては1曲を除き旋律が地味な印象)
・リズム ★★★ (ハウス調の軽いリズム感覚だがギミック音は多彩)
・曲構成 ★ (何故か80'sの残り香漂う過渡期ならではの混在感)
・個性 ★★ (シンガーとしての魅力は既に確立されている)
総合評点: 7点
貴水博之:vocal

1.「Mr. Brick」 詞:貴水博之 曲・編:遠山裕
2.「Saturation Flower」 詞:Vivien Allender・保泉ヒロ・貴水博之 曲・編:保泉ヒロ
3.「GRIEVOUS RAIN」 詞:久和カノン 曲:大堀薫 編:遠山裕
4.「光と影のDéjà vu」 詞:久和カノン 曲・編:遠山裕
5.「Good Times, Bad Times」 詞:貴水博之 曲・編:遠山裕
6.「Slipping Off Your Mask」 詞:貴水博之 曲:保泉ヒロ・岡井大二 編:保泉ヒロ
7.「We Shed No Tears」 詞:久和カノン 曲:鈴木雄大 編:椎名和夫
8.「21世紀少年(21st century boy)」
詞:尾上文 曲:岡井大二 編:岡井大二・遠山裕
9.「Out Of Time」 詞・曲:Mick Jagger・Keith Richards 編:岡井大二・遠山裕
<support musician>
稲葉政裕:guitar
椎名和夫:guitar・computer programming・drums & percussions programming・instrument manipulate
石黒彰:keyboards・instrument manipulate
浦田千尋:chorus
遠山裕:computer programming・drums & percussions programming・instrument manipulate
保泉ヒロ:computer programming・instrument manipulate
岡井大二:drums & percussions programming
津田ヒロユキ:instrument manipulate
福富幸宏:instrument manipulate
produced by 岡井大二
sound produced by 保泉ヒロ(exept 2、6)
engineered by 伊藤圭一・津田ヒロユキ・中村充時・斉藤浩
● accessでのブレイク前に密かにデビューしたハイトーンヴォーカリストのハウス基調の音遊びも豊かな幻のデビューアルバム
今や押しも押されぬ浅倉大介の相棒、accessの貴水博之。しかし彼はaccessとしてのデビューまでに2度CDデビューを果たしています。最初は1989年、5人組ロカビリーヴォーカルグループHOT SOX(俳優・乃木涼介や渡辺美奈代の夫らが在籍)のメインヴォーカリストHIROとしてシングルとアルバムを1枚ずつ残しましたが、爪痕は残せずグループは解体、HIROは貴水博之としてソロシンガーに転身、2年後の91年にシングル「GRIEVOUS RAIN」で再デビューに至ります。この楽曲がアニメ「ゲッターロボ號」のエンディングテーマに採用され、同番組オープニングテーマの「21世紀少年」と共にお茶の間の子供達にそのハイトーンヴォイスが届けられました。そしてその2度目の再デビューの2ヵ月後に自身初のソロアルバムとして本作がリリースされることになるわけです。
さて、ソロとしての再デビューにあたり、貴水がプロデュースされたのは伝説的なプログレッシブロックバンド、四人囃子の元ドラマーであった岡井大二です。89年の四人囃子再結成の余韻冷めやらぬ時期のプロデュースということで、本作のサウンドは紛れもなくエレクトロポップです。しかし80年代のような過剰で分厚いゴリゴリしたサウンドというよりは、いかにも90年代的な洗練された軽快さをまとったダンサブルエレポップといった風情です(「We Shed No Tears」だけは完全なる80'sシティポップ)。半数以上の編曲に関わっているのは、70年代からキャリアを積みながら並行してL⇔Rのプロデュースも手掛けていた遠山裕で、彼の音数が少ないながらもその縦横無尽のシンセベースとチープなウワモノシンセで独特の味を醸し出すサウンドメイクは、本作全体のサウンド面での柱となっているようです。それに加えて本作において2曲に関わっている保泉ヒロ(後のHiro Hozumi)は異色のハウスビートでその存在感を発揮しており、SODOM等でタッグを組んでいた福富幸宏をマニピュレーターとして引き込んで、実験精神に溢れたトラックを提供しています。しかしながらさすがは後年エレポップシンガーとして花開く貴水博之は、本作のような細かく整理されたリズムトラック&シーケンスに乗ったシリアスなエレクトリックサウンドをバックにしても、個人の色を損なうことなく堂々と渡り合っており、本作の経験があってこそaccessのような圧倒的なシンセサイザーまみれのダンサブルポップに組み込まれても、違和感なくハマったと言えるのではないでしょうか。
本作はaccessのシンガー貴水博之としては忘れたい過去なのか、公式にはリストアップされないアルバムですが、この過渡期であるからこそのルーツの再確認と実験性(ラストのThe Rolling Stonesのリメイク「Out Of Time」ではしっかりルーツに向き合っていますし)、access前夜のエレポップへの適応力の高さが再確認できる貴重な作品ではないかと思われるので、是非再び本作に向き合ってくれることを願っています。
<Favorite Songs>
・「Saturation Flower」
音遊びで聴き手を翻弄するいなたいハウスポップチューン。当時勃興し始めていたハウスな軽いビートに、保泉ヒロ&福富幸宏によるサンプリングを大胆に使用したSEが飛び交うリズムコンストラクションがこれでもかと繰り出されます。ポップなメロディとはお世辞にも言えませんが、そのチャレンジ精神は認めたくなります。
・「Slipping Off Your Mask」
これも保泉ヒロによるシリアスハウストラック。派手なシンセブラスやオケヒットも混ぜながら、メリハリの効いたリズムトラックで躍動感を演出、相変わらずメロディ自体はポップのカケラも感じないものの、いなたいダンスチューンとしてはこれも1つの形と言えると思います。
・「We Shed No Tears」
本作中では異色の80年代シティポップ感覚溢れるポップチューン。作曲がソロシンガーとしても活躍した鈴木雄大、アレンジが椎名和夫となると、モロに80'sの匂いが満載といっても不思議ではありません。そして本作だけが妙に哀愁メロディでドラムも非常に力強さを残し、数年前にタイムリープした感覚に襲われます。結果的に名曲の誉れが高くなったわけですが・・・。
<評点>
・サウンド ★★ (90年代的なチープな音作りだが作り込みも感じる)
・メロディ ★ (ポップシンガーとしては1曲を除き旋律が地味な印象)
・リズム ★★★ (ハウス調の軽いリズム感覚だがギミック音は多彩)
・曲構成 ★ (何故か80'sの残り香漂う過渡期ならではの混在感)
・個性 ★★ (シンガーとしての魅力は既に確立されている)
総合評点: 7点
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