「女たちよ」 沢田研二
「女たちよ」(1983 ポリドール)
沢田研二:vocals

1.「藤いろの恋」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
2.「夕顔 はかないひと」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
3.「おぼろ月夜だった」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
4.「さすらって」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
5.「愛の旅人」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
6.「エピソード」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
7.「水をへだてて」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
8.「二つの夜」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
9.「ただよう小舟」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
10.「物語の終わりの朝は」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
<support musician>
柴山和彦:electric guitar
白井良明:electric guitar
安田尚哉:electric guitar
吉田建:bass
上原豊:drums
西平彰:keyboards
ペッカー:percussion
松武秀樹:computer programming
produced by 加瀬邦彦・木崎賢治
engineered by 飯泉俊之・水谷照也
● 大村雅朗&松武秀樹コンビによるエレクトリック源氏物語!これまでのイメージを払拭する妖艶ジュリーのコンセプトアルバム
少々前衛的に突出し過ぎた前作「MIS CAST.」により歌手としての人気に陰りが見え始めた沢田研二ですが、キャラクターとしての魅力はまだ衰えることなく、1981年の映画「魔界転生」での天草四郎役に代表されるような存在感のある俳優としても一歩踏み出していった時期で、ちょうど歌手と俳優との分水嶺的な時期にあったのが80年代前半の彼であったと言えます。そんな彼のハマリ役の1つとして80年のドラマ「源氏物語」での光源氏役があったのですが、それを見てか見てないかは不明ですが、詩人・高橋睦郎が沢田に白羽の矢を立て「源氏物語」を「歌わせる」というコンセプトを実行したのが、83年リリースの本作です。
我が国の長きにわたる歴史において随一の古典である「源氏物語」がテーマということで、その意気込みは楽曲制作陣の人選にも表れています。まず作曲には当時の歌謡界において並び立つ者のいないヒットメイカー筒美京平を沢田の楽曲では初起用、そして編曲には同年のシングル「晴れのちBLUE BOY」の斬新なジャングルビートアレンジで信頼を得ていた売り出し中のアレンジャー大村雅朗を抜擢し、作詞の高橋睦郎との3人4脚で10曲が仕上がっています。さて、本作ではこの難解なテーマをどのように表現するかについて注目が集まりましたが、そんな平安時代という豪華絢爛さと、歴史の迷宮ともいうべき妖艶さを表現したのは、大村雅朗と彼が相棒として連れてきたシンセサイザーオペレーターの松武秀樹による幻想的なエレクトリックサウンドでした。日本古来の文学をテーマにしながら和のテイストに偏ることなく、仕上がったサウンドはどちらかといえば西洋的なニューウェーブ&ニューロマンティックなニュアンスが強く(「エピソード」などは吉川晃司の先取り感全開)、しかもミディアムテンポの地味な楽曲が多いながらも、当時の大沢誉志幸楽曲さながらに強力にリズムが顔を出すストレンジな質感は、(聴き手の捉え方の違いによって)リスナーの期待を良い意味でも悪い意味でも裏切ったものとも言えますが、その1つ1つの音のクオリティは抜きん出ており、沢田本人のキャラクターも必要以上に前面に押し出されることなく、当然シングルカットされる楽曲もなく、まさに「源氏物語」という一大コンセプトのもとに作詞・メロディ・サウンド・歌が一体となった芸術作品として、高みに登った(異色の)名アルバムと言えるではないでしょうか。それにしても本作における松武秀樹のシンセ仕事の凄みは素晴らしいです。細部に作り込まれた珠玉のシンセ音色とシーケンスプログラミング、PCMドラムマシンを駆使した刺激的なリズムサウンド、そしてこうした幻惑的なサウンドを楽曲として成立させる(前衛的な振れまくった83年〜85年の)大村雅朗の類まれな才気煥発の極みに圧倒されること間違いなしです。正直に言えばもはや源氏物語などどこかへ飛んでいってしまうほどの強烈なエレクトリックファンタジアに仕上がっていると思います。
<Favorite Songs>
・「さすらって」
ロングトーンのシンセパッドや電子的に模倣された風の音に代表される細部にこだわった音が堪能できる怪しさ全開シンセポップ。特に微妙な音階で淡々とつぶやくようなシンセベースの存在感が素晴らしいです。
・「愛の旅人」
ローファイに蠢くシーケンサーによるフレーズに期待も膨らむ幻想ファンタジアポップ。歌詞中でアルバムタイトルを回収していることからもこれが本作のリードチューンと言えます。変調するコーラス、刺激的なギラつくシンセ、サビでのリズム感覚は、その幻想的な世界観を表現するにふさわしいエレクトリックワールドです。
・「二つの夜」
本作中最も前衛的かつ攻撃的なストレンジポップの王様。ドラムマシンによる連打に次ぐ連打、フレットレス気味にブヨブヨしたベース音の質感、サビ前のギターギミック、エンディングのシリアスさも抜群の隠れた名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(じっくり練り込まれたシンセサウンドの博覧会)
・メロディ ★ (稀代のヒットメイカーにしては余りに地味な)
・リズム ★★★★ (ドラムマシンによる強烈な主張が絶妙なスパイス)
・曲構成 ★★★ (全体的にそのストレンジな世界観に圧倒される)
・個性 ★★★ (ここまでの冒険心溢れる楽曲は当時の沢田ならでは)
総合評点: 8点
沢田研二:vocals

1.「藤いろの恋」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
2.「夕顔 はかないひと」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
3.「おぼろ月夜だった」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
4.「さすらって」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
5.「愛の旅人」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
6.「エピソード」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
7.「水をへだてて」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
8.「二つの夜」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
9.「ただよう小舟」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
10.「物語の終わりの朝は」 詞:高橋睦郎 曲:筒美京平 編:大村雅朗
<support musician>
柴山和彦:electric guitar
白井良明:electric guitar
安田尚哉:electric guitar
吉田建:bass
上原豊:drums
西平彰:keyboards
ペッカー:percussion
松武秀樹:computer programming
produced by 加瀬邦彦・木崎賢治
engineered by 飯泉俊之・水谷照也
● 大村雅朗&松武秀樹コンビによるエレクトリック源氏物語!これまでのイメージを払拭する妖艶ジュリーのコンセプトアルバム
少々前衛的に突出し過ぎた前作「MIS CAST.」により歌手としての人気に陰りが見え始めた沢田研二ですが、キャラクターとしての魅力はまだ衰えることなく、1981年の映画「魔界転生」での天草四郎役に代表されるような存在感のある俳優としても一歩踏み出していった時期で、ちょうど歌手と俳優との分水嶺的な時期にあったのが80年代前半の彼であったと言えます。そんな彼のハマリ役の1つとして80年のドラマ「源氏物語」での光源氏役があったのですが、それを見てか見てないかは不明ですが、詩人・高橋睦郎が沢田に白羽の矢を立て「源氏物語」を「歌わせる」というコンセプトを実行したのが、83年リリースの本作です。
我が国の長きにわたる歴史において随一の古典である「源氏物語」がテーマということで、その意気込みは楽曲制作陣の人選にも表れています。まず作曲には当時の歌謡界において並び立つ者のいないヒットメイカー筒美京平を沢田の楽曲では初起用、そして編曲には同年のシングル「晴れのちBLUE BOY」の斬新なジャングルビートアレンジで信頼を得ていた売り出し中のアレンジャー大村雅朗を抜擢し、作詞の高橋睦郎との3人4脚で10曲が仕上がっています。さて、本作ではこの難解なテーマをどのように表現するかについて注目が集まりましたが、そんな平安時代という豪華絢爛さと、歴史の迷宮ともいうべき妖艶さを表現したのは、大村雅朗と彼が相棒として連れてきたシンセサイザーオペレーターの松武秀樹による幻想的なエレクトリックサウンドでした。日本古来の文学をテーマにしながら和のテイストに偏ることなく、仕上がったサウンドはどちらかといえば西洋的なニューウェーブ&ニューロマンティックなニュアンスが強く(「エピソード」などは吉川晃司の先取り感全開)、しかもミディアムテンポの地味な楽曲が多いながらも、当時の大沢誉志幸楽曲さながらに強力にリズムが顔を出すストレンジな質感は、(聴き手の捉え方の違いによって)リスナーの期待を良い意味でも悪い意味でも裏切ったものとも言えますが、その1つ1つの音のクオリティは抜きん出ており、沢田本人のキャラクターも必要以上に前面に押し出されることなく、当然シングルカットされる楽曲もなく、まさに「源氏物語」という一大コンセプトのもとに作詞・メロディ・サウンド・歌が一体となった芸術作品として、高みに登った(異色の)名アルバムと言えるではないでしょうか。それにしても本作における松武秀樹のシンセ仕事の凄みは素晴らしいです。細部に作り込まれた珠玉のシンセ音色とシーケンスプログラミング、PCMドラムマシンを駆使した刺激的なリズムサウンド、そしてこうした幻惑的なサウンドを楽曲として成立させる(前衛的な振れまくった83年〜85年の)大村雅朗の類まれな才気煥発の極みに圧倒されること間違いなしです。正直に言えばもはや源氏物語などどこかへ飛んでいってしまうほどの強烈なエレクトリックファンタジアに仕上がっていると思います。
<Favorite Songs>
・「さすらって」
ロングトーンのシンセパッドや電子的に模倣された風の音に代表される細部にこだわった音が堪能できる怪しさ全開シンセポップ。特に微妙な音階で淡々とつぶやくようなシンセベースの存在感が素晴らしいです。
・「愛の旅人」
ローファイに蠢くシーケンサーによるフレーズに期待も膨らむ幻想ファンタジアポップ。歌詞中でアルバムタイトルを回収していることからもこれが本作のリードチューンと言えます。変調するコーラス、刺激的なギラつくシンセ、サビでのリズム感覚は、その幻想的な世界観を表現するにふさわしいエレクトリックワールドです。
・「二つの夜」
本作中最も前衛的かつ攻撃的なストレンジポップの王様。ドラムマシンによる連打に次ぐ連打、フレットレス気味にブヨブヨしたベース音の質感、サビ前のギターギミック、エンディングのシリアスさも抜群の隠れた名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(じっくり練り込まれたシンセサウンドの博覧会)
・メロディ ★ (稀代のヒットメイカーにしては余りに地味な)
・リズム ★★★★ (ドラムマシンによる強烈な主張が絶妙なスパイス)
・曲構成 ★★★ (全体的にそのストレンジな世界観に圧倒される)
・個性 ★★★ (ここまでの冒険心溢れる楽曲は当時の沢田ならでは)
総合評点: 8点
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