「PiPi ZAZOU」 METRO FARCE
「PiPi ZAZOU」(1984 日本コロムビア)
METRO FARCE

<members>
伊藤与太郎:vocals・keyboards
光永巌:guitars・vocals
鈴木”バカボン”正之:bass・stick・vocals
岩瀬”チャバネ”雅彦:drums
小滝満:keyboards
1.「サカモギ・ソング」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
2.「TRACE AGAIN」 詞:伊藤与太郎 曲・編:METRO FARCE
3.「Livin’ in the parties dream」 詞:伊藤与太郎 曲:光永巌 編:METRO FARCE
4.「NAVIGATOR」 詞:伊藤与太郎 曲:光永巌 編:METRO FARCE
5.「BEATING DRUM」 詞:伊藤与太郎 曲・編:METRO FARCE
6.「消息不明の子供達」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
7.「なしくずしオペラ」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
8.「Jeune Fille(ジュネ・フィユ)」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
9.「MISTRAL」 詞:伊藤与太郎 曲:光永巌 編:METRO FARCE
<support musician>
中原幸雄:sax
矢口博康:clarinet
美尾洋乃:violin
渡辺等:cello
produced by METRO FARCE
engineered by 時枝一博
● 難解なサウンドの端々にニューウェーブの香りを充満させながら個性的な歌の訴求力で攻めるカリスマバンドのメジャー1stアルバム
80年代ニューウェーブ全盛期からその活動を開始し、メンバーチェンジを幾度も繰り返しながら21世紀に至るまで地道ながら存在感を光らせて活動してきた長寿バンドのMETRO FARCE(メトロファルス)。そのフロントマンである伊藤ヨタロウは現在も音楽界と演劇界で強烈な個性を放ち続けているわけですが、彼が最も眩い光を放っていたのはやはりメトロファルスのヴォーカルとしてステージに立っていた頃ではないでしょうか。古くからMOON RIDERS周辺で活動していた彼らがEPレコードをリリースしたのは1982年の「SAKAMOGI SONG」。当然70年代末から80年代にかけてのニューウェーブムーブメントを通過しているため、出てくるサウンドはまさにその時代特有のものでしたが、ルックスも幅の広さを感じる声質も個性的なヴォーカル、伊藤与太郎と僧侶ベースとして異色の存在が認められた鈴木正之(後にバカボン鈴木に改名)や一足先にシネマのキーボードとしてデビュー済みであった小滝満らのパフォーマンスの甲斐あって、83年には自主制作により1stアルバム「バリザンボー」をリリース、そしてそのままメジャーデビューを果たし、本作を片手にメジャーシーンに殴り込みをかけることになります。
彼らのサウンドの醍醐味は土着的な無国籍観というべき独特の世界をニューウェーブ特有の多彩な音処理でカラフルに表現しているといったところでしょうか。長年の伊藤の相棒である光永巌のいかにもニューウェーブな奇妙なフレーズ感覚を中心にサウンドは組み立てられていますが、これは七色ボイスと謳われた伊藤の変化の激しい歌唱に個性に肩を並べるには、サウンド面でもノーマルではいられないということなのだと思われます。そこで1984年の本作で施されているのは深いリバーブがかけられ多彩な効果が試されたシンセワークと、アタック感と残響感が強調されたカラフルな表情を見せるドラムサウンドです。特にドラムのスネアのローファイ感漂うエフェクティブな音色には違和感すら感じるほどで、それは生ドラムにせよ電子ドラムにせよ時代の音という言葉では片付けられない程の鈍い個性を放っています。ドラムは80年代末から90年代初頭にかけてエフラックスレコードを設立してきどりっこやタイツといった個性派グループを世に送り出した岩瀬雅彦ですが、岩瀬のテクニックもさることながらこの多彩で凝り性を感じる音づくりは興味深い発見でもあり、このビート重視のサウンドメイクが本作の最大の特徴と言ってもよいかもしれません。
本来のこのバンドの個性はその物語性というかコンセプチュアルな作風になると思うのですが、それは80年代後期からのお江戸路線が見え隠れするところから徐々に顕在化してくるわけで、本作ではまだその片鱗は「Jeune Fille」に感じられるところまでとなっています。本作では彼らの物語はまだまだ始まったばかりで、その後すぐにメジャーとインディーズを行ったり来たりしつつも、各メンバーの個々の活躍を還元しながら、伊藤ヨタロウという稀代のパフォーマによって孤高の存在へと導かれていくのです。
<Favorite Songs>
・「サカモギ・ソング」
記念すべき2年前の1stシングルのリアレンジ。土着的なスカビートも軽やかですが、いなたさと不思議テイスト漂うギターやシンセ、そしてアタック感とロングリバーブを併用するドラムの活躍が光ります。
・「Livin’ in the parties dream」
金属的なギターとコクの深いベースフレーズが引っ張るこれぞニューウェーブの醍醐味が味わえるミディアムチューン。次はシモンズドラムが大活躍で、このチープな電子音で合わせるかのような音数の少ないシンセの入れ方もセンスを感じます。このクールな質感と自由奔放に動き回るヴォーカルのコントラストが魅力です。
・「BEATING DRUM」
タイトル負けしない緻密に構築されたリズムワークがシャープなプログレッシブソング。音の長さを短く切ることでキレを感じるドラムのサウンドメイクと複雑なフレーズに追随するベーステクニック、とにかくこの楽曲はリズム隊が熱いです。
<評点>
・サウンド ★★ (想像以上にシンセのフレーズの入れ方は多彩)
・メロディ ★ (メロディいうよりヴォーカルの訴求力が強過ぎる)
・リズム ★★★★ (キレ良しコク良しの多彩な音づくりが目立つ)
・曲構成 ★ (バラードソングの長さにさえ慣れれば・・)
・個性 ★★ (まだまだその個性はニューウェーブの枠を出ず)
総合評点: 7点
METRO FARCE

<members>
伊藤与太郎:vocals・keyboards
光永巌:guitars・vocals
鈴木”バカボン”正之:bass・stick・vocals
岩瀬”チャバネ”雅彦:drums
小滝満:keyboards
1.「サカモギ・ソング」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
2.「TRACE AGAIN」 詞:伊藤与太郎 曲・編:METRO FARCE
3.「Livin’ in the parties dream」 詞:伊藤与太郎 曲:光永巌 編:METRO FARCE
4.「NAVIGATOR」 詞:伊藤与太郎 曲:光永巌 編:METRO FARCE
5.「BEATING DRUM」 詞:伊藤与太郎 曲・編:METRO FARCE
6.「消息不明の子供達」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
7.「なしくずしオペラ」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
8.「Jeune Fille(ジュネ・フィユ)」 詞・曲:伊藤与太郎 編:METRO FARCE
9.「MISTRAL」 詞:伊藤与太郎 曲:光永巌 編:METRO FARCE
<support musician>
中原幸雄:sax
矢口博康:clarinet
美尾洋乃:violin
渡辺等:cello
produced by METRO FARCE
engineered by 時枝一博
● 難解なサウンドの端々にニューウェーブの香りを充満させながら個性的な歌の訴求力で攻めるカリスマバンドのメジャー1stアルバム
80年代ニューウェーブ全盛期からその活動を開始し、メンバーチェンジを幾度も繰り返しながら21世紀に至るまで地道ながら存在感を光らせて活動してきた長寿バンドのMETRO FARCE(メトロファルス)。そのフロントマンである伊藤ヨタロウは現在も音楽界と演劇界で強烈な個性を放ち続けているわけですが、彼が最も眩い光を放っていたのはやはりメトロファルスのヴォーカルとしてステージに立っていた頃ではないでしょうか。古くからMOON RIDERS周辺で活動していた彼らがEPレコードをリリースしたのは1982年の「SAKAMOGI SONG」。当然70年代末から80年代にかけてのニューウェーブムーブメントを通過しているため、出てくるサウンドはまさにその時代特有のものでしたが、ルックスも幅の広さを感じる声質も個性的なヴォーカル、伊藤与太郎と僧侶ベースとして異色の存在が認められた鈴木正之(後にバカボン鈴木に改名)や一足先にシネマのキーボードとしてデビュー済みであった小滝満らのパフォーマンスの甲斐あって、83年には自主制作により1stアルバム「バリザンボー」をリリース、そしてそのままメジャーデビューを果たし、本作を片手にメジャーシーンに殴り込みをかけることになります。
彼らのサウンドの醍醐味は土着的な無国籍観というべき独特の世界をニューウェーブ特有の多彩な音処理でカラフルに表現しているといったところでしょうか。長年の伊藤の相棒である光永巌のいかにもニューウェーブな奇妙なフレーズ感覚を中心にサウンドは組み立てられていますが、これは七色ボイスと謳われた伊藤の変化の激しい歌唱に個性に肩を並べるには、サウンド面でもノーマルではいられないということなのだと思われます。そこで1984年の本作で施されているのは深いリバーブがかけられ多彩な効果が試されたシンセワークと、アタック感と残響感が強調されたカラフルな表情を見せるドラムサウンドです。特にドラムのスネアのローファイ感漂うエフェクティブな音色には違和感すら感じるほどで、それは生ドラムにせよ電子ドラムにせよ時代の音という言葉では片付けられない程の鈍い個性を放っています。ドラムは80年代末から90年代初頭にかけてエフラックスレコードを設立してきどりっこやタイツといった個性派グループを世に送り出した岩瀬雅彦ですが、岩瀬のテクニックもさることながらこの多彩で凝り性を感じる音づくりは興味深い発見でもあり、このビート重視のサウンドメイクが本作の最大の特徴と言ってもよいかもしれません。
本来のこのバンドの個性はその物語性というかコンセプチュアルな作風になると思うのですが、それは80年代後期からのお江戸路線が見え隠れするところから徐々に顕在化してくるわけで、本作ではまだその片鱗は「Jeune Fille」に感じられるところまでとなっています。本作では彼らの物語はまだまだ始まったばかりで、その後すぐにメジャーとインディーズを行ったり来たりしつつも、各メンバーの個々の活躍を還元しながら、伊藤ヨタロウという稀代のパフォーマによって孤高の存在へと導かれていくのです。
<Favorite Songs>
・「サカモギ・ソング」
記念すべき2年前の1stシングルのリアレンジ。土着的なスカビートも軽やかですが、いなたさと不思議テイスト漂うギターやシンセ、そしてアタック感とロングリバーブを併用するドラムの活躍が光ります。
・「Livin’ in the parties dream」
金属的なギターとコクの深いベースフレーズが引っ張るこれぞニューウェーブの醍醐味が味わえるミディアムチューン。次はシモンズドラムが大活躍で、このチープな電子音で合わせるかのような音数の少ないシンセの入れ方もセンスを感じます。このクールな質感と自由奔放に動き回るヴォーカルのコントラストが魅力です。
・「BEATING DRUM」
タイトル負けしない緻密に構築されたリズムワークがシャープなプログレッシブソング。音の長さを短く切ることでキレを感じるドラムのサウンドメイクと複雑なフレーズに追随するベーステクニック、とにかくこの楽曲はリズム隊が熱いです。
<評点>
・サウンド ★★ (想像以上にシンセのフレーズの入れ方は多彩)
・メロディ ★ (メロディいうよりヴォーカルの訴求力が強過ぎる)
・リズム ★★★★ (キレ良しコク良しの多彩な音づくりが目立つ)
・曲構成 ★ (バラードソングの長さにさえ慣れれば・・)
・個性 ★★ (まだまだその個性はニューウェーブの枠を出ず)
総合評点: 7点
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