「A.O.R」 MOON RIDERS
「A.O.R」(1992 東芝EMI)
MOON RIDERS
<members>
鈴木慶一:vocal・keyboards
岡田徹:synthesizer・piano・guitar・Digitech VHM5・all instruments・chorus
武川雅寛:violin・trumpet・harmonica・8strings ukulele・backing vocal
かしぶち哲郎:chorus
白井良明:electric guitar・ acoustic guitar・electric bass・computer programming・all instruments・chorus
鈴木博文:chorus
1.「幸せの洪水の前で」 詞:鈴木慶一 曲・編:白井良明
2.「ダイナマイトとクールガイ(アルバム・ミックス)」 詞:鈴木慶一 曲・編:岡田徹
3.「シリコン・ボーイ(アルバム・ヴァージョン)」 詞・曲:鈴木慶一 編:白井良明
4.「さよならを手に」 詞:鈴木慶一 曲・編:岡田徹
5.「現代の晩年」 詞:鈴木慶一 曲:鈴木慶一・岡田徹 編:岡田徹
6.「WOO BABY」 詞:鈴木慶一 曲:かしぶち哲郎 編:岡田徹
7.「ONE WAY TO THE HEAVEN」
詞:武川雅寛・白井良明・鈴木慶一 曲:武川雅寛・白井良明 編:白井良明
8.「レンガの男」 詞・曲:鈴木博文 編:白井良明
9.「無職の男のホットドッグ」 詞・曲:鈴木慶一 編:白井良明・岡田徹
10.「月の爪」 詞・曲:鈴木博文 編:白井良明
<support musician>
国友孝純:computer programming
土岐幸男:computer programming
花井昇:computer programming
山岡広司:computer programming
produced by 白井良明・岡田徹
mixing engineered by 大森政人
recording engineered by 大森政人・阿部充泰・小田真・花井昇・山田千鶴
● その名の通りAOR風のメロディ重視な渋い楽曲を白井・岡田のサウンドチームが料理した丁寧な作風のアルバム
1991年のアルバム「最後の晩餐」で5年振りに復活を果たしたMOON RIDERS。白井良明が早くから取り入れてきたハウスのリズムトラックを大胆に取り入れた90年代型サウンドでその健在振りを示した名盤の後、間髪入れず1年後にリリースされた東芝EMI移籍後2枚目のアルバムが本作です。前年に復活したといってもそれぞれソロアルバムを制作したりサポートの仕事も多く、非常に多忙な日々を送っていたメンバーということもあり、本作ではそれぞれ楽曲は持ち寄ったものの編曲は前作においてもサウンド面でのキーマンであった白井良明と岡田徹の2名に全面的に委任され、バンドとしての質感は後退し、洗練されたプログラミングによる大人のロック作品(しかし時たま冒険)に仕上がっています。
タイトルにおいても揶揄されているようにAOR風のゆったりとしたメロディが多用され、特にオープニングが比較的ノーマルな美メロバラードの「幸せの洪水の前で」ということもあり(この楽曲のサスティンギターとストリングスは圧巻)、これまで挑戦的で実験的な作風によってマニアな人気を培ってきた彼らのファンにとっては面食らうと共に違和感すら感じたと思われますが、確かにメロディラインは分かりやすく時代性に寄り添った感はあるものの、そこは80年代からテクノロジーの進化を敏感に感じ取り実験を繰り返してきた白井と岡田の緻密な音づくりによってクオリティ自体は間違いなく高く満足できるものとなっています。当然この2人のサウンドですから小技も効いており、「シリコン・ボーイ」の高速ゴリゴリベースや、「現代の晩年」のアシッドシンセベースの使用、随所で登場するRobert Frippばりのギターフレーズ、「WOO BABY」におけるノイズの上昇音や、「レンガの男」〜「無職の男のホットドッグ」へと続く狂気で攻撃的なリズムワーク等(この2曲はいつものマッドな一面を見せてくれます)、聴き所も満載です。もちろんバンドサウンドを求めているリスナーにとっては物足りなさも残り一体感は後退しているかもしれませんが、当然彼らのことですからPOPS作品として普通に一定以上の高品質を提供できる自信があるのでしょう。本作もその範疇を外さない作品と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「ダイナマイトとクールガイ(アルバム・ミックス)」
キャッチーな哀愁メロディに含蓄が感じられるシングルカットナンバー。それだけであれば普遍的と捉えられがちですが、淡々としたレゲエ調ながらもインダストリアル風味なリズムトラック、多彩なサウンドで楽しませる切り貼りのギターフレーズ、ハーモナイザーでイビツ感のあるヴォーカリゼーション、実は彼らの実験性を随所に感じる名曲です。
・「シリコン・ボーイ(アルバム・ヴァージョン)」
シングルカットされた前曲のカップリング曲。シーケンスの波に乗る快活なロックチューン。この楽曲(ヴァージョン)の聴き所は何といっても間奏の狂ったようなゴリゴリ高速ベースでしょう。ノーマリティの中に堂々と毒をかきまぜる彼ららしい遊び心に溢れています。
・「レンガの男」
味のある冒頭のセリフから豪快に雪崩れ込んでくるエレクトロニクス感が絶妙な本作随一の激しさと熱さを持ち合わせたダンサブルハウスチューン。バスドラのドンドン四つ打ちにグルーヴの欠片もないバシバシスネア、マッドな鈴木慶一特有のフェイク、ドリルのようにノイジーなカッティングギターによるスピード感が魅力です。スピーカーの破けそうな音の圧力のエンディングも楽しい。
<評点>
・サウンド ★★★ (安定感と共に仕掛けも忘れずその職人技を堪能)
・メロディ ★★ (分かりやすさを追求したが後半は地を隠せない)
・リズム ★★★ (楽曲によって緩急はあるが攻めに出る時はとにかく派手に)
・曲構成 ★★ (中盤に比較的地味な楽曲を配置したため中弛みも)
・個性 ★★ (結局鈴木慶一のヴォーカルで彼らの音にはなる)
総合評点: 7点
MOON RIDERS
<members>
鈴木慶一:vocal・keyboards
岡田徹:synthesizer・piano・guitar・Digitech VHM5・all instruments・chorus
武川雅寛:violin・trumpet・harmonica・8strings ukulele・backing vocal
かしぶち哲郎:chorus
白井良明:electric guitar・ acoustic guitar・electric bass・computer programming・all instruments・chorus
鈴木博文:chorus
1.「幸せの洪水の前で」 詞:鈴木慶一 曲・編:白井良明
2.「ダイナマイトとクールガイ(アルバム・ミックス)」 詞:鈴木慶一 曲・編:岡田徹
3.「シリコン・ボーイ(アルバム・ヴァージョン)」 詞・曲:鈴木慶一 編:白井良明
4.「さよならを手に」 詞:鈴木慶一 曲・編:岡田徹
5.「現代の晩年」 詞:鈴木慶一 曲:鈴木慶一・岡田徹 編:岡田徹
6.「WOO BABY」 詞:鈴木慶一 曲:かしぶち哲郎 編:岡田徹
7.「ONE WAY TO THE HEAVEN」
詞:武川雅寛・白井良明・鈴木慶一 曲:武川雅寛・白井良明 編:白井良明
8.「レンガの男」 詞・曲:鈴木博文 編:白井良明
9.「無職の男のホットドッグ」 詞・曲:鈴木慶一 編:白井良明・岡田徹
10.「月の爪」 詞・曲:鈴木博文 編:白井良明
<support musician>
国友孝純:computer programming
土岐幸男:computer programming
花井昇:computer programming
山岡広司:computer programming
produced by 白井良明・岡田徹
mixing engineered by 大森政人
recording engineered by 大森政人・阿部充泰・小田真・花井昇・山田千鶴
● その名の通りAOR風のメロディ重視な渋い楽曲を白井・岡田のサウンドチームが料理した丁寧な作風のアルバム
1991年のアルバム「最後の晩餐」で5年振りに復活を果たしたMOON RIDERS。白井良明が早くから取り入れてきたハウスのリズムトラックを大胆に取り入れた90年代型サウンドでその健在振りを示した名盤の後、間髪入れず1年後にリリースされた東芝EMI移籍後2枚目のアルバムが本作です。前年に復活したといってもそれぞれソロアルバムを制作したりサポートの仕事も多く、非常に多忙な日々を送っていたメンバーということもあり、本作ではそれぞれ楽曲は持ち寄ったものの編曲は前作においてもサウンド面でのキーマンであった白井良明と岡田徹の2名に全面的に委任され、バンドとしての質感は後退し、洗練されたプログラミングによる大人のロック作品(しかし時たま冒険)に仕上がっています。
タイトルにおいても揶揄されているようにAOR風のゆったりとしたメロディが多用され、特にオープニングが比較的ノーマルな美メロバラードの「幸せの洪水の前で」ということもあり(この楽曲のサスティンギターとストリングスは圧巻)、これまで挑戦的で実験的な作風によってマニアな人気を培ってきた彼らのファンにとっては面食らうと共に違和感すら感じたと思われますが、確かにメロディラインは分かりやすく時代性に寄り添った感はあるものの、そこは80年代からテクノロジーの進化を敏感に感じ取り実験を繰り返してきた白井と岡田の緻密な音づくりによってクオリティ自体は間違いなく高く満足できるものとなっています。当然この2人のサウンドですから小技も効いており、「シリコン・ボーイ」の高速ゴリゴリベースや、「現代の晩年」のアシッドシンセベースの使用、随所で登場するRobert Frippばりのギターフレーズ、「WOO BABY」におけるノイズの上昇音や、「レンガの男」〜「無職の男のホットドッグ」へと続く狂気で攻撃的なリズムワーク等(この2曲はいつものマッドな一面を見せてくれます)、聴き所も満載です。もちろんバンドサウンドを求めているリスナーにとっては物足りなさも残り一体感は後退しているかもしれませんが、当然彼らのことですからPOPS作品として普通に一定以上の高品質を提供できる自信があるのでしょう。本作もその範疇を外さない作品と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「ダイナマイトとクールガイ(アルバム・ミックス)」
キャッチーな哀愁メロディに含蓄が感じられるシングルカットナンバー。それだけであれば普遍的と捉えられがちですが、淡々としたレゲエ調ながらもインダストリアル風味なリズムトラック、多彩なサウンドで楽しませる切り貼りのギターフレーズ、ハーモナイザーでイビツ感のあるヴォーカリゼーション、実は彼らの実験性を随所に感じる名曲です。
・「シリコン・ボーイ(アルバム・ヴァージョン)」
シングルカットされた前曲のカップリング曲。シーケンスの波に乗る快活なロックチューン。この楽曲(ヴァージョン)の聴き所は何といっても間奏の狂ったようなゴリゴリ高速ベースでしょう。ノーマリティの中に堂々と毒をかきまぜる彼ららしい遊び心に溢れています。
・「レンガの男」
味のある冒頭のセリフから豪快に雪崩れ込んでくるエレクトロニクス感が絶妙な本作随一の激しさと熱さを持ち合わせたダンサブルハウスチューン。バスドラのドンドン四つ打ちにグルーヴの欠片もないバシバシスネア、マッドな鈴木慶一特有のフェイク、ドリルのようにノイジーなカッティングギターによるスピード感が魅力です。スピーカーの破けそうな音の圧力のエンディングも楽しい。
<評点>
・サウンド ★★★ (安定感と共に仕掛けも忘れずその職人技を堪能)
・メロディ ★★ (分かりやすさを追求したが後半は地を隠せない)
・リズム ★★★ (楽曲によって緩急はあるが攻めに出る時はとにかく派手に)
・曲構成 ★★ (中盤に比較的地味な楽曲を配置したため中弛みも)
・個性 ★★ (結局鈴木慶一のヴォーカルで彼らの音にはなる)
総合評点: 7点
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