「晩成」 THE HAKKIN
「晩成」(2014 ビートランド)
THE HAKKIN

<members>
長澤佑哉:vocal
浅野麻人:guitar・computer programming
春日賀賀:bass・computer programming
1.「四千年のLOVER」 詞・曲・編:THE HAKKIN
2.「Tokyo Lung」 詞・曲・編:THE HAKKIN
3.「禁じ手」 詞・曲・編:THE HAKKIN
4.「ニウ神経衰弱」 詞・曲・編:THE HAKKIN
5.「震えた口唇に最後のKISSをしよう」 詞・曲・編:THE HAKKIN
6.「NO NO モチベーション」 詞・曲・編:THE HAKKIN
<support musician>
對馬悠介:drums programming
produced by THE HAKKIN
mixing engineered by 近”KORN”修
recording engineered by 24 Track Abnormals
● ありそうでなかった80年代後半のバンドサウンドを甦らせた異色3ピースニューウェーブバンドの若さ溢れるデビューミニアルバム
1980年代のバンドブームを現代に甦らすべく活動開始以降、3年間の活動を風のように駆け抜けていったTHE HAKKINは、ヴィジュアル系バンドのヴィデオグラマァを活動休止させる形で結成されました。ヴィデオグラマァは2006年、その2年前よりSHINTOKU圏のベースを担当していた儺俐(春日賀賀)が佑哉(長澤佑哉)をヴォーカリストに迎え電影グラマァとして活動開始してから2009年に改名し、そのcali≠gariスタイルのバンドサウンドとヴィジュアルをベースに音源制作をこなしながら地道なライブ活動によりヴィジュアル系シーンの真っ只中で試行錯誤していましたが、2012年6月バンドは活動休止し、半年の準備期間を経て2013年1月よりギターの浅野麻人を迎えTHE HAKKINとしてイメージチェンジ、一転として80年代ロックの伝道師として、新たな挑戦に踏み出していくことになります。4月にはライブ活動限定デモCD「原色図鑑」も配布、その後も精力的なライブ活動のかたわら「ニウ神経衰弱」「CENTURY BOY」2枚の限定デモCDを配布、その認知度を上げていくと、翌2014年、遂に全国流通の1stミニアルバムである本作をリリースすることになります。
さて、この作品は上條淳士的なジャケットのイメージからも想起されるように、80年代後期を席巻したバンドブームを意識したサウンドを見事に表現した楽曲が満載です。前年のデモ音源ではまだヴィデオグラマァ時代のヴィジュアル系特有の湿っぽい雰囲気が漂うロックサウンド(にしてはメロディラインは非常にわかりやすくポップな印象)でしたが、本作では吹っ切れたかのような開放感を感じさせるフレーズを連発、キャッチー度は格段に上がった感があります。このバンドの名を好事家の中で知らしめた「四千年のLOVER」の見事な80'sロックの再現度の高さには筆舌に尽くし難いものがあります。80年代を意識したサウンドを志向するグループは数多くありますが、彼らはあくまで3ピースバンドなので、シンセは装飾程度に留められ特に音色にこだわりは見せてはいませんが、恐らくDX7と思われる金属系サウンドを随所に挿入するタイミングのセンスが秀逸で、本当によく80'sロックを研究していると思わされます。そんな彼らでも執拗な程のこだわりを見せているのがスネアドラムの処理でしょう。とにかく80'sサウンドのキモはこのスネアの音処理に尽きるのですが、本作のドラムサウンドは非常に硬質で、とにかくビシバシ叩かれて非常に気持ちが良いです。しかもこれがプログラミングで作られているということなので、一体どれだけのドラム音をレイヤーしているのか興味深いところです。ヴィジュアルだけでなく、サウンドからメロディライン、そしてCDジャケットに至るまで80's、それもレイト80'sのしかもバンドブームの音をここまで再現し、新しい個性として訴えかけようとした作品は稀であり、そういった点ではむしろ後年になって本作の価値が理解されていくことになるかもしれません。
その後彼らは翌年フルアルバム「情緒」をリリース(この作品に関しては筆者が先行レビューした特別編をご覧下さい)、80'sと90'sを股にかけた、さらに進化したサウンドとチャレンジ精神溢れる楽曲が収録された名盤を残しながら、同年惜しまれつつ活動を休止いたしますが、そろそろ90年代サウンドが再評価されそうな空気の中、この絶妙な時代を昇華して新しいサウンドとして表現しようとした彼らの挑戦こそ、これからリスペクトされるべきではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「四千年のLOVER」
彼らの代表曲と言ってもよいキャッチー性満点のキラーチューン。メジャー調のキラキラしたシンセの味わいと、ジャストに叩き出されるドラムプログラミング、キメで唸るベースフレーズ、そして気持ちよくリフを刻んでいくギター、それぞれが粗さの中で絶妙に混じり合っている様子が実に興味深い名曲です。
・「ニウ神経衰弱」
タイトルが既に80'sニューウェーブファンの心を鷲掴みにする哀愁ニューロマンティックナンバー。前年のデモ音源と比べても格段にクオリティが上がり、Aメロの哀愁メロディが一気につかんでいく力があり、そこにバンドの初期衝動によるモチベーションの高さが感じられます。
・「NO NO モチベーション」
タイトルからもわかる通り吉川晃司「NO NOサーキュレーション」をモチーフとしたイントロからのハイパーなイカ天スタイルなアッパーロックチューン。ギターのカッティングのキレも良く、これがスピード感の持続に一役買っています。猥雑なAメロからドリーミーなBメロ、そしてキラキラしたサビと80'sの魅力が詰まった彼らの個性を表した楽曲と言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (特別なことはせずともフレーズの挿入センスが秀逸)
・メロディ ★★★★ (80'sの魅力がキャッチーメロなことを理解している)
・リズム ★★★★★(このスネアの硬さは現在の音楽に欠けていたもの)
・曲構成 ★★★★ (青さと粗さがまさに青春の勢いを表現している)
・個性 ★★★★ (この時代の音に挑戦したバンドはなかなかなかった)
総合評点: 9点
THE HAKKIN

<members>
長澤佑哉:vocal
浅野麻人:guitar・computer programming
春日賀賀:bass・computer programming
1.「四千年のLOVER」 詞・曲・編:THE HAKKIN
2.「Tokyo Lung」 詞・曲・編:THE HAKKIN
3.「禁じ手」 詞・曲・編:THE HAKKIN
4.「ニウ神経衰弱」 詞・曲・編:THE HAKKIN
5.「震えた口唇に最後のKISSをしよう」 詞・曲・編:THE HAKKIN
6.「NO NO モチベーション」 詞・曲・編:THE HAKKIN
<support musician>
對馬悠介:drums programming
produced by THE HAKKIN
mixing engineered by 近”KORN”修
recording engineered by 24 Track Abnormals
● ありそうでなかった80年代後半のバンドサウンドを甦らせた異色3ピースニューウェーブバンドの若さ溢れるデビューミニアルバム
1980年代のバンドブームを現代に甦らすべく活動開始以降、3年間の活動を風のように駆け抜けていったTHE HAKKINは、ヴィジュアル系バンドのヴィデオグラマァを活動休止させる形で結成されました。ヴィデオグラマァは2006年、その2年前よりSHINTOKU圏のベースを担当していた儺俐(春日賀賀)が佑哉(長澤佑哉)をヴォーカリストに迎え電影グラマァとして活動開始してから2009年に改名し、そのcali≠gariスタイルのバンドサウンドとヴィジュアルをベースに音源制作をこなしながら地道なライブ活動によりヴィジュアル系シーンの真っ只中で試行錯誤していましたが、2012年6月バンドは活動休止し、半年の準備期間を経て2013年1月よりギターの浅野麻人を迎えTHE HAKKINとしてイメージチェンジ、一転として80年代ロックの伝道師として、新たな挑戦に踏み出していくことになります。4月にはライブ活動限定デモCD「原色図鑑」も配布、その後も精力的なライブ活動のかたわら「ニウ神経衰弱」「CENTURY BOY」2枚の限定デモCDを配布、その認知度を上げていくと、翌2014年、遂に全国流通の1stミニアルバムである本作をリリースすることになります。
さて、この作品は上條淳士的なジャケットのイメージからも想起されるように、80年代後期を席巻したバンドブームを意識したサウンドを見事に表現した楽曲が満載です。前年のデモ音源ではまだヴィデオグラマァ時代のヴィジュアル系特有の湿っぽい雰囲気が漂うロックサウンド(にしてはメロディラインは非常にわかりやすくポップな印象)でしたが、本作では吹っ切れたかのような開放感を感じさせるフレーズを連発、キャッチー度は格段に上がった感があります。このバンドの名を好事家の中で知らしめた「四千年のLOVER」の見事な80'sロックの再現度の高さには筆舌に尽くし難いものがあります。80年代を意識したサウンドを志向するグループは数多くありますが、彼らはあくまで3ピースバンドなので、シンセは装飾程度に留められ特に音色にこだわりは見せてはいませんが、恐らくDX7と思われる金属系サウンドを随所に挿入するタイミングのセンスが秀逸で、本当によく80'sロックを研究していると思わされます。そんな彼らでも執拗な程のこだわりを見せているのがスネアドラムの処理でしょう。とにかく80'sサウンドのキモはこのスネアの音処理に尽きるのですが、本作のドラムサウンドは非常に硬質で、とにかくビシバシ叩かれて非常に気持ちが良いです。しかもこれがプログラミングで作られているということなので、一体どれだけのドラム音をレイヤーしているのか興味深いところです。ヴィジュアルだけでなく、サウンドからメロディライン、そしてCDジャケットに至るまで80's、それもレイト80'sのしかもバンドブームの音をここまで再現し、新しい個性として訴えかけようとした作品は稀であり、そういった点ではむしろ後年になって本作の価値が理解されていくことになるかもしれません。
その後彼らは翌年フルアルバム「情緒」をリリース(この作品に関しては筆者が先行レビューした特別編をご覧下さい)、80'sと90'sを股にかけた、さらに進化したサウンドとチャレンジ精神溢れる楽曲が収録された名盤を残しながら、同年惜しまれつつ活動を休止いたしますが、そろそろ90年代サウンドが再評価されそうな空気の中、この絶妙な時代を昇華して新しいサウンドとして表現しようとした彼らの挑戦こそ、これからリスペクトされるべきではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「四千年のLOVER」
彼らの代表曲と言ってもよいキャッチー性満点のキラーチューン。メジャー調のキラキラしたシンセの味わいと、ジャストに叩き出されるドラムプログラミング、キメで唸るベースフレーズ、そして気持ちよくリフを刻んでいくギター、それぞれが粗さの中で絶妙に混じり合っている様子が実に興味深い名曲です。
・「ニウ神経衰弱」
タイトルが既に80'sニューウェーブファンの心を鷲掴みにする哀愁ニューロマンティックナンバー。前年のデモ音源と比べても格段にクオリティが上がり、Aメロの哀愁メロディが一気につかんでいく力があり、そこにバンドの初期衝動によるモチベーションの高さが感じられます。
・「NO NO モチベーション」
タイトルからもわかる通り吉川晃司「NO NOサーキュレーション」をモチーフとしたイントロからのハイパーなイカ天スタイルなアッパーロックチューン。ギターのカッティングのキレも良く、これがスピード感の持続に一役買っています。猥雑なAメロからドリーミーなBメロ、そしてキラキラしたサビと80'sの魅力が詰まった彼らの個性を表した楽曲と言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (特別なことはせずともフレーズの挿入センスが秀逸)
・メロディ ★★★★ (80'sの魅力がキャッチーメロなことを理解している)
・リズム ★★★★★(このスネアの硬さは現在の音楽に欠けていたもの)
・曲構成 ★★★★ (青さと粗さがまさに青春の勢いを表現している)
・個性 ★★★★ (この時代の音に挑戦したバンドはなかなかなかった)
総合評点: 9点
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