「JUNK SCAPE」 ジャンクフジヤマ
「JUNK SCAPE」(2013 ビクター)
ジャンク フジヤマ:vocal

1.「あの空の向こうがわへ(Long Ver.)」
詞:藤木直史 曲:坂本竜太 編:知野芳彦 管編:本間将人
2.「シェダル」 詞:藤木直史 曲・編:知野芳彦
3.「誘惑」 詞:藤木直史 曲・編:坂本竜太 管編:湯本淳希 コーラス編:知野芳彦
4.「Wandering Again」 詞:藤木直史 曲・編:宮崎裕介 コーラス編:宮崎裕介・知野芳彦
5.「パズル(Calm Ver.)」 詞・曲:神谷旬平・藤木直史 編:宮崎裕介
6.「魅惑の唇(Album Ver.)」
詞:藤木直史 曲:藤木直史・神谷旬平 編:井上鑑 コーラス編:KAZCO・井上鑑
7.「BRAND-NEW DAY」 詞:白井未留 曲:藤木直史・知野芳彦 編:知野芳彦
8.「EGAO」 詞:藤木直史 曲:藤木直史・神谷旬平 編:知野芳彦
9.「Lonely Days」 詞:藤木直史 曲:天野清継 編:知野芳彦
10.「PROUD」 詞:藤木直史 曲・編:知野芳彦 管編:本間将人
11.「聖夜の微笑み」
詞:藤木直史 曲:藤木直史・神谷旬平・原田卓也 編:笹路正徳 コーラス編:原田卓也
12.「ありふれた午後」 詞・曲:藤木直史 編:天野清継
<support musician>
天野清継:guitar
今 剛:guitar
知野芳彦:guitar・chorus・all instruments
松田肇:guitar
岡沢章:bass
坂本竜太:bass・conga
岸田容男:drums
外薗雄一:drums
村上”ポンタ”秀一:drums
井上鑑:acoustic piano・keyboards
笹路正徳:keyboards
宮崎裕介:keyboards・all instruments
斎藤ノブ:percussion
富村”TURBO”唯:percussion
川上鉄平:trumpet
田中充:trumpet
中野勇介:trumpet・flugelhorn
湯本淳希:trumpet
黒澤沙紀:trombone
鹿討奏:trombone
原田彩香:trombone
半田信英:trombone
本間将人:soprano sax・alto sax・tenor sax・Hammond organ
近藤淳也:alto sax
KAZCO:chorus
原田卓也:chorus
ハルナ:chorus
produced by 知野芳彦・坂本竜太・宮崎裕介・井上鑑・笹路正徳・天野清継
mixing engineered by 松岡健
recording engineered by 松岡健・谷健太
● 豪快な風貌に似合わず現代に甦った古き良きシティポップの王道を邁進する熱きヴォーカリストのメジャーデビューアルバム
日本のPOPS史に燦然と輝くトップアーティストである山下達郎。季節感たっぷりの清涼系サウンドにクセのある高音ヴォーカルは、名バンドSugar Babeからの不変の産物ですが、POPSとして完成され尽くされた重厚なサウンド構築術と実力派ミュージシャンの圧倒的な演奏力のおかげもあって特に90年代以降は後に続くアーティストも少なくなっていました。しかし00年代後半になり80年代シティポップがもてはやされる風潮の中、颯爽と現れ敢然とこの隙のないカリスマのフォロワーに挑んでいったのが藤木直史ことジャンクフジヤマです。その豪快な風貌からは「重量感のある山下達郎」という異名もあながち間違いでないほどですが、2009年リリースの1stミニアルバム「A color」の堂々としたシティポップ道の主張ぶりが達郎バンドでも活躍する名ドラマー村上" ポンタ"秀一の目に止まり、ライブアルバム「JUNKTIME」、ソロアルバム「JUNKWAVE」と2010年〜2011年の2年間で充実した活動を繰り広げた後、満を持して2012年にシングル「あの空の向こうがわへ」でメジャーデビューを果たし、翌年春には待望の1stフルアルバムである本作でその名を知らしめることになるわけです。
現在の音楽シーンに果敢に挑む気合いの乗った勝負のアルバムということで、その意気込みは濃厚なアレンジとサウンドメイク、そして良く鍛えられた円熟の演奏陣によって支えられた楽曲が満載であることからも十分に感じることができます。山下達郎の二番煎じと揶揄されるきらいもある彼ですが本作をじっくり堪能すればわかるとおり、声質が似ている部分はあるにせよ楽曲自体は本家よりもむしろキャッチー度では上回っていると思います(特に坂本竜太の2曲は突出)。また本人のキャラクターによるものなのか、歌唱法によるものなのかはわかりませんが、ある種の(良い意味での)いかがわしさといいますか、コッテリスープのような濃厚さのような感覚が達郎色を一蹴して、どちらかといえば80年代の角松敏生のようなギラギラしたイメージを彷佛とさせる瞬間が、楽曲の端々に感じられます。その濃厚な味わいを匠に中和しているのが知野芳彦、宮崎裕介等の編曲陣で、彼らの緩急織り交ぜた80'sリゾート&シティPOPSオマージュの巧みなサウンドメイキングは、本作に参加している井上鑑や笹路正徳といった大御所アレンジャーにも引けを取っておらず、彼らあってこそのこの安定感抜群の本作であることは言うまでもありません。テクノロジーの進化によるPOPSサウンドの変化を経たからこそ立ち返った生演奏重視のサウンド&音響に支えられた、21世紀になってからは珍しいほどの濃厚な楽曲自体の世界観が次々と提供されるため、後半はやや食傷気味になってしまう部分もありますが、若手ならではの80'sへの恩返しパワーとおぼしきこの作品をしっかりと受けとめられるかどうかが聴き手の矜持であると考えていますので、その熱量に負けることなくこの名盤を心して聴いていきたいと思います。
<Favorite Songs>
・「あの空の向こうがわへ(Long Ver.)」
記念すべきメジャーデビューシングル。CMソングに起用されただけあって何ともキャッチーなメロディライン。麗しいエレピと軽快なギターのカッティングに乗って、ブラスが駆け回り豊かに伸びるヴォーカルが醸し出す凄まじい爽快感に圧倒されます。
・「誘惑」
彼の特徴の1つである緻密なファンクネスが感じられる楽曲。冒頭のスラップベースから一気に引き込まれます。ワウギターとブラスの絡み合いから雪崩れ込む美メロのサビがまた素晴らしく、濃密なアウトロからのラストもしっかりキマッています。
・「EGAO」
ジャンク本人が作曲も手掛けた癒しすら感じさせる清涼感抜群のポップチューン。ブリッジのコーラスワークが印象的で、うっすら入るストリングス音色と共に風通しの良さを演出しています。そして涙が出そうになる美しいサビのフレーズは楽曲研究の努力と生来持ち合わせているポップセンスが成せる業であると思います。
<評点>
・サウンド ★★★★ (生演奏重視のゴージャスな音世界は贅沢過ぎる)
・メロディ ★★★★★ (次々と繰り出されるキラーフレーズの数々に脱帽)
・リズム ★★ (派手さはなくとも滲み出る安定感は流石の技量)
・曲構成 ★★ (この濃密な情報量であれば12曲でもやや多いかも)
・個性 ★★★ (POPSシンガーとしての十分過ぎる能力を開放)
総合評点: 8点
ジャンク フジヤマ:vocal

1.「あの空の向こうがわへ(Long Ver.)」
詞:藤木直史 曲:坂本竜太 編:知野芳彦 管編:本間将人
2.「シェダル」 詞:藤木直史 曲・編:知野芳彦
3.「誘惑」 詞:藤木直史 曲・編:坂本竜太 管編:湯本淳希 コーラス編:知野芳彦
4.「Wandering Again」 詞:藤木直史 曲・編:宮崎裕介 コーラス編:宮崎裕介・知野芳彦
5.「パズル(Calm Ver.)」 詞・曲:神谷旬平・藤木直史 編:宮崎裕介
6.「魅惑の唇(Album Ver.)」
詞:藤木直史 曲:藤木直史・神谷旬平 編:井上鑑 コーラス編:KAZCO・井上鑑
7.「BRAND-NEW DAY」 詞:白井未留 曲:藤木直史・知野芳彦 編:知野芳彦
8.「EGAO」 詞:藤木直史 曲:藤木直史・神谷旬平 編:知野芳彦
9.「Lonely Days」 詞:藤木直史 曲:天野清継 編:知野芳彦
10.「PROUD」 詞:藤木直史 曲・編:知野芳彦 管編:本間将人
11.「聖夜の微笑み」
詞:藤木直史 曲:藤木直史・神谷旬平・原田卓也 編:笹路正徳 コーラス編:原田卓也
12.「ありふれた午後」 詞・曲:藤木直史 編:天野清継
<support musician>
天野清継:guitar
今 剛:guitar
知野芳彦:guitar・chorus・all instruments
松田肇:guitar
岡沢章:bass
坂本竜太:bass・conga
岸田容男:drums
外薗雄一:drums
村上”ポンタ”秀一:drums
井上鑑:acoustic piano・keyboards
笹路正徳:keyboards
宮崎裕介:keyboards・all instruments
斎藤ノブ:percussion
富村”TURBO”唯:percussion
川上鉄平:trumpet
田中充:trumpet
中野勇介:trumpet・flugelhorn
湯本淳希:trumpet
黒澤沙紀:trombone
鹿討奏:trombone
原田彩香:trombone
半田信英:trombone
本間将人:soprano sax・alto sax・tenor sax・Hammond organ
近藤淳也:alto sax
KAZCO:chorus
原田卓也:chorus
ハルナ:chorus
produced by 知野芳彦・坂本竜太・宮崎裕介・井上鑑・笹路正徳・天野清継
mixing engineered by 松岡健
recording engineered by 松岡健・谷健太
● 豪快な風貌に似合わず現代に甦った古き良きシティポップの王道を邁進する熱きヴォーカリストのメジャーデビューアルバム
日本のPOPS史に燦然と輝くトップアーティストである山下達郎。季節感たっぷりの清涼系サウンドにクセのある高音ヴォーカルは、名バンドSugar Babeからの不変の産物ですが、POPSとして完成され尽くされた重厚なサウンド構築術と実力派ミュージシャンの圧倒的な演奏力のおかげもあって特に90年代以降は後に続くアーティストも少なくなっていました。しかし00年代後半になり80年代シティポップがもてはやされる風潮の中、颯爽と現れ敢然とこの隙のないカリスマのフォロワーに挑んでいったのが藤木直史ことジャンクフジヤマです。その豪快な風貌からは「重量感のある山下達郎」という異名もあながち間違いでないほどですが、2009年リリースの1stミニアルバム「A color」の堂々としたシティポップ道の主張ぶりが達郎バンドでも活躍する名ドラマー村上" ポンタ"秀一の目に止まり、ライブアルバム「JUNKTIME」、ソロアルバム「JUNKWAVE」と2010年〜2011年の2年間で充実した活動を繰り広げた後、満を持して2012年にシングル「あの空の向こうがわへ」でメジャーデビューを果たし、翌年春には待望の1stフルアルバムである本作でその名を知らしめることになるわけです。
現在の音楽シーンに果敢に挑む気合いの乗った勝負のアルバムということで、その意気込みは濃厚なアレンジとサウンドメイク、そして良く鍛えられた円熟の演奏陣によって支えられた楽曲が満載であることからも十分に感じることができます。山下達郎の二番煎じと揶揄されるきらいもある彼ですが本作をじっくり堪能すればわかるとおり、声質が似ている部分はあるにせよ楽曲自体は本家よりもむしろキャッチー度では上回っていると思います(特に坂本竜太の2曲は突出)。また本人のキャラクターによるものなのか、歌唱法によるものなのかはわかりませんが、ある種の(良い意味での)いかがわしさといいますか、コッテリスープのような濃厚さのような感覚が達郎色を一蹴して、どちらかといえば80年代の角松敏生のようなギラギラしたイメージを彷佛とさせる瞬間が、楽曲の端々に感じられます。その濃厚な味わいを匠に中和しているのが知野芳彦、宮崎裕介等の編曲陣で、彼らの緩急織り交ぜた80'sリゾート&シティPOPSオマージュの巧みなサウンドメイキングは、本作に参加している井上鑑や笹路正徳といった大御所アレンジャーにも引けを取っておらず、彼らあってこそのこの安定感抜群の本作であることは言うまでもありません。テクノロジーの進化によるPOPSサウンドの変化を経たからこそ立ち返った生演奏重視のサウンド&音響に支えられた、21世紀になってからは珍しいほどの濃厚な楽曲自体の世界観が次々と提供されるため、後半はやや食傷気味になってしまう部分もありますが、若手ならではの80'sへの恩返しパワーとおぼしきこの作品をしっかりと受けとめられるかどうかが聴き手の矜持であると考えていますので、その熱量に負けることなくこの名盤を心して聴いていきたいと思います。
<Favorite Songs>
・「あの空の向こうがわへ(Long Ver.)」
記念すべきメジャーデビューシングル。CMソングに起用されただけあって何ともキャッチーなメロディライン。麗しいエレピと軽快なギターのカッティングに乗って、ブラスが駆け回り豊かに伸びるヴォーカルが醸し出す凄まじい爽快感に圧倒されます。
・「誘惑」
彼の特徴の1つである緻密なファンクネスが感じられる楽曲。冒頭のスラップベースから一気に引き込まれます。ワウギターとブラスの絡み合いから雪崩れ込む美メロのサビがまた素晴らしく、濃密なアウトロからのラストもしっかりキマッています。
・「EGAO」
ジャンク本人が作曲も手掛けた癒しすら感じさせる清涼感抜群のポップチューン。ブリッジのコーラスワークが印象的で、うっすら入るストリングス音色と共に風通しの良さを演出しています。そして涙が出そうになる美しいサビのフレーズは楽曲研究の努力と生来持ち合わせているポップセンスが成せる業であると思います。
<評点>
・サウンド ★★★★ (生演奏重視のゴージャスな音世界は贅沢過ぎる)
・メロディ ★★★★★ (次々と繰り出されるキラーフレーズの数々に脱帽)
・リズム ★★ (派手さはなくとも滲み出る安定感は流石の技量)
・曲構成 ★★ (この濃密な情報量であれば12曲でもやや多いかも)
・個性 ★★★ (POPSシンガーとしての十分過ぎる能力を開放)
総合評点: 8点
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