「飛行夢 sora・tobu・yume」 ZABADAK
「飛行夢 sora・tobu・yume」(1989 MMG)
ZABADAK

<members>
吉良知彦:vocal・guitars・bass・keyboards
上野洋子:vocal・keyboards・computer programming
1.「FOLLOW YOUR DREAMS」 詞:小峰公子 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
2.「飛行夢(そら とぶ ゆめ)」 詞:小峰公子 曲:上野洋子 編:ZABADAK
3.「砂煙りのまち」 詞:松田克志 曲:上野洋子 編:ZABADAK
4.「I AM・・・」 詞:Chris Mosdell 曲:上野洋子 編:ZABADAK
5.「THERE’S A VISION」 詞:Tommy Snyder 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
6.「GOOD BYE EARTH」 詞・曲:吉良知彦 編:ZABADAK
7.「街角・影法師」 詞:小峰公子 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
8.「人形たちの永い午睡」 詞:小峰公子 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
9.「WALKING TOUR」 詞:松田克志 曲:上野洋子 編:ZABADAK
10.「LET THERE BE LIGHT」 詞:Ralph McCarthy 曲:上野洋子 編:ZABADAK
<support musician>
内田健太郎:bass
宮田繁男:drums
坂上真清:irish harp
安井敬:tin whistle・recorder
今井裕:sax
Alan Smale:violin
Kathy Smale:violin
Padraig O’Conner:viola
David James:cello
Martin Walsh:contrabass
produced by 今井裕・Kevin Moloney
mixing engineered by Kevin Moloney・新銅"V"康晃
recording engineered by 新銅"V"康晃・松林正志・鎮西正憲
● 瑞々しいアコースティック寄りのポップサウンドに進化した後世に影響を与える男女ユニットの出世作
早くからアコースティックサウンドにデジタル的な手法によるサウンドデザインを施す斬新性を包含した楽曲で新しい音楽シーンを模索していたZABADAK。1986年のデビュー時は3人組であった彼らはミニアルバム2枚を残し翌87年にドラムの松田克志が脱退、吉良知彦と上野洋子のデュオとなった彼らは間髪入れず3rdアルバム「ウェルカム・トゥ・ザバダック」をリリースするもののここでレコード会社を移籍し仕切り直しを図ります。本作はそんな彼らのMMG移籍後にリリースされた初のアルバムということになりますが、再デビューかと思わせる程の丹念な準備と周到に固められたコンセプトに裏打ちされた気合いの乗った内容に仕上がっており、アイルランド録音ということもあり、以前から表面化しつつあったアイリッシュトラッド的な民族音楽的な部分が全開となり、強烈にユニットとしての個性を世に知らしめた作品となっています。
3人組時代のZABADAKは打ち込み主体のサウンドを柱にしてアコースティックやプログレを装飾した楽曲が目立っていましたが、本作からはそれが逆転してまずギターを前面に据えたアコースティック性を表に出しながら80'sの残り香漂うエフェクティブなスネアサウンドやシンセフレーズをあくまで控えめに主張させる作風に転換しています。これはプロデューサーである元サディスティックミカバンドの今井裕の影響も多分にあると思われますが、それ以上にデジタルサウンドをあからさまなプログラミングではなくディレイやリバーブを駆使した音響面によるギミカルな工夫でより隠し味的な整えたことが、サウンド面において広がりを持たせることに成功していると思います。非常に先鋭化しつつあった上野洋子のヴォーカルセンスとアコースティックな中のデジタル音響が相まって、幻想的でファンタジックな世界観を形成する足がかりになったと言えるでしょう。洋邦を巧みに使い分けたトラッドソングや渋いデジアナロック&POPSなど楽曲的にもバラエティに富んでおり、この後全盛期に向かうZABADAKサウンドの礎を築いた重要作品ではないでしょうか。この勢いを駆りメディアへの露出を増やしながら翌年には名盤「遠い音楽」がリリースされることになります。
<Favorite Songs>
・「砂煙りのまち」
旧メンバーの松田克志作詞の連続するギターリフが印象的なマイナーチューン。浮遊感のあるベースフレーズや随所でアクセントとなるシンセフレーズがよい仕事ぶりです。2回り目に1度だけシンセブラスを挿入するセンスが面白いです。サビの最後のメロディがメジャーに転調して救いが出るのも実に良いです。
・「THERE’S A VISION」
吉良知彦ヴォーカルのアコギPOPS。ゴダイゴのドラマーであるTommy Snyder作詞のこの楽曲に限らず、吉良ヴォーカル楽曲は吉良なりのダンディズムが前面に出てくるのが興味深いです。本作でも他の楽曲に比べてガラッと空気が変わります。コーラスに徹する上野の声質もここでは上質な脇役といったところでしょうか。
・「LET THERE BE LIGHT」
上野の美しいヴォーカルによる賛美歌的楽曲。リバーブで広がりを持たせた音響による上野ヴォーカルに完全に耳を奪われますが、それを支える幻想的なシンセパッドなしではこのファンタジーは生み出せないでしょう。繊細過ぎるギターフレーズの音処理もバッチリキマッたまさに名曲中の名曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (印象はアコースティック隠し味はデジタル風味で)
・メロディ ★★ (格段にわかりやすくなり親しみやすいメロディ)
・リズム ★★ (リズムは控えめにしかししっかりエフェクティブに)
・曲構成 ★★★ (美しくシンプルな楽曲で最初と最後を締める安定感)
・個性 ★★★ (全盛期の彼らの音の基礎となった試金石的作品)
総合評点: 7点
ZABADAK

<members>
吉良知彦:vocal・guitars・bass・keyboards
上野洋子:vocal・keyboards・computer programming
1.「FOLLOW YOUR DREAMS」 詞:小峰公子 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
2.「飛行夢(そら とぶ ゆめ)」 詞:小峰公子 曲:上野洋子 編:ZABADAK
3.「砂煙りのまち」 詞:松田克志 曲:上野洋子 編:ZABADAK
4.「I AM・・・」 詞:Chris Mosdell 曲:上野洋子 編:ZABADAK
5.「THERE’S A VISION」 詞:Tommy Snyder 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
6.「GOOD BYE EARTH」 詞・曲:吉良知彦 編:ZABADAK
7.「街角・影法師」 詞:小峰公子 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
8.「人形たちの永い午睡」 詞:小峰公子 曲:吉良知彦 編:ZABADAK
9.「WALKING TOUR」 詞:松田克志 曲:上野洋子 編:ZABADAK
10.「LET THERE BE LIGHT」 詞:Ralph McCarthy 曲:上野洋子 編:ZABADAK
<support musician>
内田健太郎:bass
宮田繁男:drums
坂上真清:irish harp
安井敬:tin whistle・recorder
今井裕:sax
Alan Smale:violin
Kathy Smale:violin
Padraig O’Conner:viola
David James:cello
Martin Walsh:contrabass
produced by 今井裕・Kevin Moloney
mixing engineered by Kevin Moloney・新銅"V"康晃
recording engineered by 新銅"V"康晃・松林正志・鎮西正憲
● 瑞々しいアコースティック寄りのポップサウンドに進化した後世に影響を与える男女ユニットの出世作
早くからアコースティックサウンドにデジタル的な手法によるサウンドデザインを施す斬新性を包含した楽曲で新しい音楽シーンを模索していたZABADAK。1986年のデビュー時は3人組であった彼らはミニアルバム2枚を残し翌87年にドラムの松田克志が脱退、吉良知彦と上野洋子のデュオとなった彼らは間髪入れず3rdアルバム「ウェルカム・トゥ・ザバダック」をリリースするもののここでレコード会社を移籍し仕切り直しを図ります。本作はそんな彼らのMMG移籍後にリリースされた初のアルバムということになりますが、再デビューかと思わせる程の丹念な準備と周到に固められたコンセプトに裏打ちされた気合いの乗った内容に仕上がっており、アイルランド録音ということもあり、以前から表面化しつつあったアイリッシュトラッド的な民族音楽的な部分が全開となり、強烈にユニットとしての個性を世に知らしめた作品となっています。
3人組時代のZABADAKは打ち込み主体のサウンドを柱にしてアコースティックやプログレを装飾した楽曲が目立っていましたが、本作からはそれが逆転してまずギターを前面に据えたアコースティック性を表に出しながら80'sの残り香漂うエフェクティブなスネアサウンドやシンセフレーズをあくまで控えめに主張させる作風に転換しています。これはプロデューサーである元サディスティックミカバンドの今井裕の影響も多分にあると思われますが、それ以上にデジタルサウンドをあからさまなプログラミングではなくディレイやリバーブを駆使した音響面によるギミカルな工夫でより隠し味的な整えたことが、サウンド面において広がりを持たせることに成功していると思います。非常に先鋭化しつつあった上野洋子のヴォーカルセンスとアコースティックな中のデジタル音響が相まって、幻想的でファンタジックな世界観を形成する足がかりになったと言えるでしょう。洋邦を巧みに使い分けたトラッドソングや渋いデジアナロック&POPSなど楽曲的にもバラエティに富んでおり、この後全盛期に向かうZABADAKサウンドの礎を築いた重要作品ではないでしょうか。この勢いを駆りメディアへの露出を増やしながら翌年には名盤「遠い音楽」がリリースされることになります。
<Favorite Songs>
・「砂煙りのまち」
旧メンバーの松田克志作詞の連続するギターリフが印象的なマイナーチューン。浮遊感のあるベースフレーズや随所でアクセントとなるシンセフレーズがよい仕事ぶりです。2回り目に1度だけシンセブラスを挿入するセンスが面白いです。サビの最後のメロディがメジャーに転調して救いが出るのも実に良いです。
・「THERE’S A VISION」
吉良知彦ヴォーカルのアコギPOPS。ゴダイゴのドラマーであるTommy Snyder作詞のこの楽曲に限らず、吉良ヴォーカル楽曲は吉良なりのダンディズムが前面に出てくるのが興味深いです。本作でも他の楽曲に比べてガラッと空気が変わります。コーラスに徹する上野の声質もここでは上質な脇役といったところでしょうか。
・「LET THERE BE LIGHT」
上野の美しいヴォーカルによる賛美歌的楽曲。リバーブで広がりを持たせた音響による上野ヴォーカルに完全に耳を奪われますが、それを支える幻想的なシンセパッドなしではこのファンタジーは生み出せないでしょう。繊細過ぎるギターフレーズの音処理もバッチリキマッたまさに名曲中の名曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (印象はアコースティック隠し味はデジタル風味で)
・メロディ ★★ (格段にわかりやすくなり親しみやすいメロディ)
・リズム ★★ (リズムは控えめにしかししっかりエフェクティブに)
・曲構成 ★★★ (美しくシンプルな楽曲で最初と最後を締める安定感)
・個性 ★★★ (全盛期の彼らの音の基礎となった試金石的作品)
総合評点: 7点
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