「ベル・エキセントリック」 加藤和彦
「ベル・エキセントリック」(1981 ワーナーパイオニア)
加藤和彦:vocals・guitar・electronics

1.「SCANDALE DE Mme ROTHCHILD ロスチャイルド夫人のスキャンダル」
詞:安井かずみ 曲・編:加藤和彦
2.「GIGI, LA DANSEUSE 浮気なGigi」 詞:安井かずみ 曲・編:加藤和彦
3.「BAR AMERICAIN」 詞:安井かずみ 曲・編:加藤和彦
4.「DIAGHILEV, L’HOMME-ORCHESTRE ディアギレフの見えない手」
詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・清水信之
5.「LES NUITS FOLLES DE L’HOTEL NEGRESCO ネグレスコでの御発展」
曲:加藤和彦 編:清水信之
6.「MASQUE ROSE DE Mme M バラの仮面をつけた Mme M」
詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・坂本龍一
7.「TOROCADERO トロカデロ」 詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:清水信之
8.「JE CONNAISSAIS JEAN COCTEAU わたしはジャン・コクトーを知っていた」
詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・坂本龍一
9.「ADIEU, MON AMOUR」 詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・清水信之
10.「JE TE VEUX」 曲:Erik Satie 編:坂本龍一
<support musician>
大村憲司:guitars
細野晴臣:bass
高橋幸宏:drums
坂本龍一:chamberlin・Prophet5・piano
清水信之:synthesizers・piano・marimba・tympani
矢野顕子:piano
Nadia Dancourt:voice
松武秀樹:MC-8
produced by 加藤和彦
mixing engineered by 大川正義・加藤和彦
recording engineered by Boa・島雄一・大川正義
● ヨーロッパ3部作の最後はパリ録音!YMO全面参加で先鋭的かつ情景豊かに作り上げられた不朽の名盤
1960年代後半からザ・フォーク・クルセダーズやサディスティック・ミカ・バンドなど日本のロック黎明期から常に新しさを追求し先を行く音楽家であった加藤和彦は、バンド活動のかたわらソロアルバムもコンスタントにリリース、作詞家の安井かずみと結婚してからはさらにその先鋭性に磨きがかかり、ワーナーパイオニアへの移籍後の「パパ・ヘミングウェイ」以降は自身が信頼する手練のミュージシャンを引き連れて海外レコーディングを敢行するなど、その豪奢な制作環境に劣らない質の高い作品を連発し、ワーナー移籍後の3作は後にヨーロッパ3部作と呼ばれるほど、その作品群は日本ロック史に確かな足跡を残しています。本作は、その3部作の最後となる作品で、芸術の都・パリにてレコーディングされた名盤です。
さて、折しもYMO全盛期の81年ということで、本作には前作「うたかたのオペラ」まで全面参加してきた高橋幸宏をはじめ、細野晴臣や坂本龍一、矢野顕子、大村憲司に松武秀樹といったYMO第2次ワールドツアーメンバーが3作目にして遂に全員顔を揃えております。演奏力の高い彼らなので、エレクトリックとアナログの端境期的な当時の先進的POPSにあっても、違和感なくその技術を遺憾なく発揮しています。加藤和彦のヨーロピアンな世界観はここに来て円熟期に入っており、しかも前作で培ったテクノポップ風アプローチをさらに進化させ、楽曲によってはエレクトリック度が非常に高いサウンドで楽しませてくれます。また本作のポイントとしては前作でも2曲に参加していた清水信之のアレンジャーとしての参加があります。時にはYMO以上にエレクトリックサウンドを惜しげもなく楽曲に取り入れる清水が、本作では黎明期のデジタルシーケンサーMC-8を操る松武秀樹とタッグを組み、YMOファミリー参加のゴージャスなパリ録音の向こうを張る形で、東京録音の楽曲におけるイニシアチブを担っています。結果としてそのシンプルともいえるシンセサウンドの存在感は本作のアクセントとして機能しており、彼のアレンジ参加が本作のクオリティの向上に一躍買ったと言えるでしょう。非常にその音楽観に対する志と参加アーティスト達のクオリティとのバランスがとれた傑作であると思います。
本作を含めた当時最も海外のムーブメントに接近したミュージシャンと共に作り上げたヨーロッパ3部作は結果として加藤和彦の代表作シリーズとなりましたが、加藤が亡くなった現在でもその完成度の高さで好事家達の耳を魅了し続けています。
<Favorite Songs>
・「GIGI, LA DANSEUSE 浮気なGigi」
当時としては斬新な力強いドラムサウンドがインパクトを与える本作のリードチューン。フェイザーがかったエフェクトでサウンドにうねりをもたらすなど音響面でも冒険心に溢れています。加藤のヴォーカルも程よく加工されてダンディズムを感じさせます。
・「DIAGHILEV, L’HOMME-ORCHESTRE ディアギレフの見えない手」
80年代初期のエレクトリックPOPSにおける重要人物の1人である清水信之がアレンジに参加したヨーロピアンシンセポップ。清水信之&松武秀樹のシンセマジックがここに炸裂。どこか演歌的なメロディにあってリズムサウンドまで丹念にシンセに音づくりされた緻密な楽曲です。
・「ADIEU, MON AMOUR」
滲むようなシンセの白玉パッドのイントロが味わい深いエレクトリックワルツナンバー。アナログシンセのチープなベースの響きがなんともいえないアクセントになっていますが、ドリーミーに展開するオーケストレーションをシンセで作り出すサウンドデザインの才能を清水信之が惜しみなく披露しています。
<評点>
・サウンド ★★ (豪奢なパリと繊細な東京のサウンド的コントラスト)
・メロディ ★ (時代的とはいえ少しバタ臭いメロディもあるのも事実)
・リズム ★★★ (何曲かでゲートリバーブによるパワフルドラムを実現)
・曲構成 ★ (楽曲が厳選されたとはいえ少しあっさり感も漂う)
・個性 ★★ (ヨーロッパを巡る旅も終焉にふさわしい円熟の出来)
総合評点: 7点
加藤和彦:vocals・guitar・electronics

1.「SCANDALE DE Mme ROTHCHILD ロスチャイルド夫人のスキャンダル」
詞:安井かずみ 曲・編:加藤和彦
2.「GIGI, LA DANSEUSE 浮気なGigi」 詞:安井かずみ 曲・編:加藤和彦
3.「BAR AMERICAIN」 詞:安井かずみ 曲・編:加藤和彦
4.「DIAGHILEV, L’HOMME-ORCHESTRE ディアギレフの見えない手」
詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・清水信之
5.「LES NUITS FOLLES DE L’HOTEL NEGRESCO ネグレスコでの御発展」
曲:加藤和彦 編:清水信之
6.「MASQUE ROSE DE Mme M バラの仮面をつけた Mme M」
詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・坂本龍一
7.「TOROCADERO トロカデロ」 詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:清水信之
8.「JE CONNAISSAIS JEAN COCTEAU わたしはジャン・コクトーを知っていた」
詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・坂本龍一
9.「ADIEU, MON AMOUR」 詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:加藤和彦・清水信之
10.「JE TE VEUX」 曲:Erik Satie 編:坂本龍一
<support musician>
大村憲司:guitars
細野晴臣:bass
高橋幸宏:drums
坂本龍一:chamberlin・Prophet5・piano
清水信之:synthesizers・piano・marimba・tympani
矢野顕子:piano
Nadia Dancourt:voice
松武秀樹:MC-8
produced by 加藤和彦
mixing engineered by 大川正義・加藤和彦
recording engineered by Boa・島雄一・大川正義
● ヨーロッパ3部作の最後はパリ録音!YMO全面参加で先鋭的かつ情景豊かに作り上げられた不朽の名盤
1960年代後半からザ・フォーク・クルセダーズやサディスティック・ミカ・バンドなど日本のロック黎明期から常に新しさを追求し先を行く音楽家であった加藤和彦は、バンド活動のかたわらソロアルバムもコンスタントにリリース、作詞家の安井かずみと結婚してからはさらにその先鋭性に磨きがかかり、ワーナーパイオニアへの移籍後の「パパ・ヘミングウェイ」以降は自身が信頼する手練のミュージシャンを引き連れて海外レコーディングを敢行するなど、その豪奢な制作環境に劣らない質の高い作品を連発し、ワーナー移籍後の3作は後にヨーロッパ3部作と呼ばれるほど、その作品群は日本ロック史に確かな足跡を残しています。本作は、その3部作の最後となる作品で、芸術の都・パリにてレコーディングされた名盤です。
さて、折しもYMO全盛期の81年ということで、本作には前作「うたかたのオペラ」まで全面参加してきた高橋幸宏をはじめ、細野晴臣や坂本龍一、矢野顕子、大村憲司に松武秀樹といったYMO第2次ワールドツアーメンバーが3作目にして遂に全員顔を揃えております。演奏力の高い彼らなので、エレクトリックとアナログの端境期的な当時の先進的POPSにあっても、違和感なくその技術を遺憾なく発揮しています。加藤和彦のヨーロピアンな世界観はここに来て円熟期に入っており、しかも前作で培ったテクノポップ風アプローチをさらに進化させ、楽曲によってはエレクトリック度が非常に高いサウンドで楽しませてくれます。また本作のポイントとしては前作でも2曲に参加していた清水信之のアレンジャーとしての参加があります。時にはYMO以上にエレクトリックサウンドを惜しげもなく楽曲に取り入れる清水が、本作では黎明期のデジタルシーケンサーMC-8を操る松武秀樹とタッグを組み、YMOファミリー参加のゴージャスなパリ録音の向こうを張る形で、東京録音の楽曲におけるイニシアチブを担っています。結果としてそのシンプルともいえるシンセサウンドの存在感は本作のアクセントとして機能しており、彼のアレンジ参加が本作のクオリティの向上に一躍買ったと言えるでしょう。非常にその音楽観に対する志と参加アーティスト達のクオリティとのバランスがとれた傑作であると思います。
本作を含めた当時最も海外のムーブメントに接近したミュージシャンと共に作り上げたヨーロッパ3部作は結果として加藤和彦の代表作シリーズとなりましたが、加藤が亡くなった現在でもその完成度の高さで好事家達の耳を魅了し続けています。
<Favorite Songs>
・「GIGI, LA DANSEUSE 浮気なGigi」
当時としては斬新な力強いドラムサウンドがインパクトを与える本作のリードチューン。フェイザーがかったエフェクトでサウンドにうねりをもたらすなど音響面でも冒険心に溢れています。加藤のヴォーカルも程よく加工されてダンディズムを感じさせます。
・「DIAGHILEV, L’HOMME-ORCHESTRE ディアギレフの見えない手」
80年代初期のエレクトリックPOPSにおける重要人物の1人である清水信之がアレンジに参加したヨーロピアンシンセポップ。清水信之&松武秀樹のシンセマジックがここに炸裂。どこか演歌的なメロディにあってリズムサウンドまで丹念にシンセに音づくりされた緻密な楽曲です。
・「ADIEU, MON AMOUR」
滲むようなシンセの白玉パッドのイントロが味わい深いエレクトリックワルツナンバー。アナログシンセのチープなベースの響きがなんともいえないアクセントになっていますが、ドリーミーに展開するオーケストレーションをシンセで作り出すサウンドデザインの才能を清水信之が惜しみなく披露しています。
<評点>
・サウンド ★★ (豪奢なパリと繊細な東京のサウンド的コントラスト)
・メロディ ★ (時代的とはいえ少しバタ臭いメロディもあるのも事実)
・リズム ★★★ (何曲かでゲートリバーブによるパワフルドラムを実現)
・曲構成 ★ (楽曲が厳選されたとはいえ少しあっさり感も漂う)
・個性 ★★ (ヨーロッパを巡る旅も終焉にふさわしい円熟の出来)
総合評点: 7点
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