「幻想庭園」 蟻プロジェクト
「幻想庭園」(1988 サウンドワールド)
蟻プロジェクト

<members>
宝野アリカ:vocal
片倉三起也:all instruments
1.「青蛾月 SEIGAGETSU」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
2.「マリーゴールド・ガーデン」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
3.「鏡面界 im Juni」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
4.「アンジェ・ノワールの祭戯」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
5.「紅い睡蓮の午後」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
6.「桜の花は狂い咲き」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
7.「少女忌恋歌」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
8.「パラソルのある風景」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
9.「硝子天井のうちゅう」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
10.「Poupee Frou Frou」 曲・編:片倉三起也
produced by 蟻プロジェクト
● ゲルニカとは異なるアプローチで打ち込みサウンドによる大正浪漫的な独自の世界観を見せた宅録インディーズアルバム
大ベテランながら2010年代の今日にあって第一線で活躍し続けているALI PROJECTが結成されたのは80年代半ばに遡ります。当時より片倉三起也と宝野アリカの2人組ユニット「蟻プロジェクト」(当時はひらがな表記)として数々のコンテストでその独自の音楽性をもって注目されつつ、オムニバスアルバムで音源デビュー、アルバムデビューは当時急速に市民権を得つつあったインディーズレーベルからでした。本作はその記念すべき1stアルバムというわけですが、彼らは女性ヴォーカルとサウンドクリエイターという完全分業制ユニット、そして音楽性が豪華絢爛な大正ロマン主義を彷佛とさせるゴシックな佇まい(このあたりは現在にも脈々と受け継がれている)で、当時は近似性を持つユニットとしてあのゲルニカと比較されることも多かったように記憶しています。しかしそれは表面的なイメージがもたらすものであってサウンド面ではその違いは顕著であると思っていただいて間違いありません。
さてインディーズリリースということもあって本作は、もはやプログレッシブロックの突然変異と言ってもよいほどの複雑緻密なプログラミングで聴き手を幻惑させます。かつて前述のゲルニカはアナログシンセとリズムボックスのチープなサウンドをクラシカルで細かいフレーズを多用しながらも、どこかで和を感じさせる楽曲で独自性を見出していましたが、蟻プロジェクトは既に80年代後半ということもあってストリングス等に大胆にサンプラーを駆使しながら、(ゲルニカにはない)PCMドラムマシンによるビートを前面に出したりメタリックな音色を多用して、サウンド的なアプローチに違いを演出しています。さらに全体的にモヤがかっているリバーブが幻想的な世界観の構築に拍車をかけていることも見逃せません。余りにもサウンド面では実験的なアプローチが過ぎていると共に、メロディも不思議さを追求するあまりキャッチー性には優れていないため、インディーズリリースということも頷ける作品ですが、80年代後期らしい過激さと実験性は、当時のデジタル系打ち込みユニットの異端児的な存在としての個性を放っていました。それが今日ではアニメソング等を手掛けながらブレイクを果たし、別の意味で市民権を得てカリスマ的な存在となっているということも興味深いし隔世の感があります。
<Favorite Songs>
・「青蛾月 SEIGAGETSU」
ドラムマシンの連打と奇妙な構成でのっけから調子を狂わせられるオープニングチューン。サンプラーやストレンジなピアノフレーズなどプログレッシブな一面を垣間見せ才能の一端を披露しています。
・「鏡面界 im Juni」
イントロの不思議フレーズと荘厳なストリングスを中心に幻想的な世界を形成する舞踏会ワルツなバラード。全体を包み込むリバーブとデジタルで金属的な質感が、より聴き手を幻惑させます。
・「アンジェ・ノワールの祭戯」
力強いリズムマシンにバキバキのプログラミングがテクノなエレクトリックポップ。構成・フレーズ・リズム共にトリッキーなギミックを多用してストレンジ性を十二分に発揮しています。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラー等デジタル音による幻惑サウンドが秀逸)
・メロディ ★ (ひねり過ぎて聴き手にはわかりにくいフレーズを多用)
・リズム ★★★ (大胆なドラムマシンで攻めの姿勢を貫く好印象)
・曲構成 ★ (特に後半にもうひと盛り上がりが欲しかったかも)
・個性 ★★ (当時の打ち込みユニットの中では異彩を放っていた)
総合評点: 7点
蟻プロジェクト

<members>
宝野アリカ:vocal
片倉三起也:all instruments
1.「青蛾月 SEIGAGETSU」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
2.「マリーゴールド・ガーデン」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
3.「鏡面界 im Juni」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
4.「アンジェ・ノワールの祭戯」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
5.「紅い睡蓮の午後」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
6.「桜の花は狂い咲き」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
7.「少女忌恋歌」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
8.「パラソルのある風景」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
9.「硝子天井のうちゅう」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
10.「Poupee Frou Frou」 曲・編:片倉三起也
produced by 蟻プロジェクト
● ゲルニカとは異なるアプローチで打ち込みサウンドによる大正浪漫的な独自の世界観を見せた宅録インディーズアルバム
大ベテランながら2010年代の今日にあって第一線で活躍し続けているALI PROJECTが結成されたのは80年代半ばに遡ります。当時より片倉三起也と宝野アリカの2人組ユニット「蟻プロジェクト」(当時はひらがな表記)として数々のコンテストでその独自の音楽性をもって注目されつつ、オムニバスアルバムで音源デビュー、アルバムデビューは当時急速に市民権を得つつあったインディーズレーベルからでした。本作はその記念すべき1stアルバムというわけですが、彼らは女性ヴォーカルとサウンドクリエイターという完全分業制ユニット、そして音楽性が豪華絢爛な大正ロマン主義を彷佛とさせるゴシックな佇まい(このあたりは現在にも脈々と受け継がれている)で、当時は近似性を持つユニットとしてあのゲルニカと比較されることも多かったように記憶しています。しかしそれは表面的なイメージがもたらすものであってサウンド面ではその違いは顕著であると思っていただいて間違いありません。
さてインディーズリリースということもあって本作は、もはやプログレッシブロックの突然変異と言ってもよいほどの複雑緻密なプログラミングで聴き手を幻惑させます。かつて前述のゲルニカはアナログシンセとリズムボックスのチープなサウンドをクラシカルで細かいフレーズを多用しながらも、どこかで和を感じさせる楽曲で独自性を見出していましたが、蟻プロジェクトは既に80年代後半ということもあってストリングス等に大胆にサンプラーを駆使しながら、(ゲルニカにはない)PCMドラムマシンによるビートを前面に出したりメタリックな音色を多用して、サウンド的なアプローチに違いを演出しています。さらに全体的にモヤがかっているリバーブが幻想的な世界観の構築に拍車をかけていることも見逃せません。余りにもサウンド面では実験的なアプローチが過ぎていると共に、メロディも不思議さを追求するあまりキャッチー性には優れていないため、インディーズリリースということも頷ける作品ですが、80年代後期らしい過激さと実験性は、当時のデジタル系打ち込みユニットの異端児的な存在としての個性を放っていました。それが今日ではアニメソング等を手掛けながらブレイクを果たし、別の意味で市民権を得てカリスマ的な存在となっているということも興味深いし隔世の感があります。
<Favorite Songs>
・「青蛾月 SEIGAGETSU」
ドラムマシンの連打と奇妙な構成でのっけから調子を狂わせられるオープニングチューン。サンプラーやストレンジなピアノフレーズなどプログレッシブな一面を垣間見せ才能の一端を披露しています。
・「鏡面界 im Juni」
イントロの不思議フレーズと荘厳なストリングスを中心に幻想的な世界を形成する舞踏会ワルツなバラード。全体を包み込むリバーブとデジタルで金属的な質感が、より聴き手を幻惑させます。
・「アンジェ・ノワールの祭戯」
力強いリズムマシンにバキバキのプログラミングがテクノなエレクトリックポップ。構成・フレーズ・リズム共にトリッキーなギミックを多用してストレンジ性を十二分に発揮しています。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラー等デジタル音による幻惑サウンドが秀逸)
・メロディ ★ (ひねり過ぎて聴き手にはわかりにくいフレーズを多用)
・リズム ★★★ (大胆なドラムマシンで攻めの姿勢を貫く好印象)
・曲構成 ★ (特に後半にもうひと盛り上がりが欲しかったかも)
・個性 ★★ (当時の打ち込みユニットの中では異彩を放っていた)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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