「Psychedelic Insanity」 ALI PROJECT
「Psychedelic Insanity」(2007 徳間ジャパン)
ALI PROJECT

<members>
宝野アリカ:vocal
片倉三起也:all instruments
1.「青嵐血風録」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
2.「暗黒サイケデリック」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
3.「CYBER DEVILS」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
4.「胡蝶夢心中」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
5.「纏われし者ら」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
6.「欲望」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
7.「暴夜layla幻談」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
8.「六道輪廻サバイバル」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
9.「若い死者からのレクイエム」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:平野義久
10.「gai desespoir」 曲:片倉三起也 編:平野義久
<support musician>
細田真子:cembalo
渡辺剛:strings arrangement
sound produced by 片倉三起也
engineered by 滝田二郎
● ジャケットのイメージ通りゴシックにエレクトロな極彩色を施したサウンドで進化を続ける実力派ユニットの意欲作
不遇の90年代後半を経てアニメソングを手掛けるようになったALI PROJECTは、「コッペリアの柩」「月蝕グランギニョル」と現在のパブリックイメージの基礎となるタイアップシングルをリリース、そしてトップ10ヒットとなった「聖少女領域」「亡国覚醒カタルシス」によって、その音楽的スタイルと立ち位置は確立することになります。この2曲は彼らの知名度を上げることに貢献したため、その後コンスタントにリリースされるアルバムは軒並み20位以内にランクするほどの安定したヒットを続けることになりますが、彼らの音楽スタイルとデビューからの足跡を辿ってみるにつけ、それは非常に奇跡的なことなのではないでしょうか。本作はそんな彼らの8thアルバムにして、前述のスマッシュヒット2曲後の初のオリジナルアルバムでもあります。彼らはシングル曲はオリジナル作品にはほとんど収録しない、良い意味でしっかり切り分けができているグループであるのですが、本作ではシングル曲なしのしかも成功に導いたゴシカルな打ち込みストリングスPOPSのみならず、実は初期からの持ち味であるTECHNOLOGYな部分、そこにサイバーな雰囲気を味つけした新趣向を見せた挑戦作という側面も垣間みせています。
とはいえ片倉三起也の相変わらずの目まぐるしいストリングスフレーズを中心としたアレンジテクニックは健在で、宝野アリカの衰えない歌唱と共に初期からの彼らの音楽のストロングポイントになっていますが、本作は近年顕著になってきた日本的なフレーズと音使い、「和」のテイストを取り入れながらさらにエレクトリック寄りといいますか、音使いとしてシンセやエフェクティブなサウンドが全面に押し出ています。ベテランらしくそのサウンド手法も多彩で、このあたりが彼らがアニメソングだけでなく音楽界の中でも一目置かれる存在にしているのですが、本作では特に電子的なサウンドにおいてその多彩さが特にアピールされており(特に「纏われし者ら」は圧巻の一言)、シングル曲ではこれまでのリスナーの期待に応えながら、アルバムでは新しい方向性を提示するという姿勢が窺えます。その後はアルバムごとにスタイルを模索していく彼らですが、既に一聴してわかるほどの知名度を得たアリプロサウンドの安定感は崩さず、アルバムでは自身の信じる方向性を実験できるという環境は、実はアーティストにとっても理想的なのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「CYBER DEVILS」
音を電子的に歪ませる手法で新趣向を見せタイトル通りの人工風味なサウンドを聞かせる挑戦的な楽曲。なんといってもAメロの疾走する電子リズムにヴォーカルをエフェクティブに変化させるギミックが楽しいです。サビは彼ららしい大げさな盛り上がりを見せますが、ラストを賛美歌風で占める唐突さもこの混沌とした楽曲にはふさわしいです。
・「纏われし者ら」
本作の中で最も実験的かつテクノロジー的な方向性が極度に現れた会心の傑作。インダストリアルなリズムに全体に漂うサイバー感覚、ストリングス的なフレーズも皆無で全編シンセサウンドのテクノポップです。4つの場面を繰り返すような楽曲構成も斬新で興味深い名曲です。
・「六道輪廻サバイバル」
いわゆる「聖少女領域」に通じるようなダークでゴシカルな目まぐるしいフレーズが特徴のストリングスPOPS。躍動感のある逸脱したメロディラインと、意図したかのような不協和音的フレーズの使い方が、なんとも彼ららしい混沌とした世界観を生み出しています。意外にも跳ねるリズムトラックも楽しい楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ度が高く格段に電子的な味わいが深くなった)
・メロディ ★ (相変わらず凝ったフレーズで押しまくるが難解さも)
・リズム ★★ (楽曲に合わせてスタイルも音色も多彩に使いこなす)
・曲構成 ★ (どうせならラストまでそのサイバー性を貫いてほしい)
・個性 ★★ (型を確立した中で閉塞感を打破する挑戦意欲は◯)
総合評点: 7点
ALI PROJECT

<members>
宝野アリカ:vocal
片倉三起也:all instruments
1.「青嵐血風録」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
2.「暗黒サイケデリック」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
3.「CYBER DEVILS」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
4.「胡蝶夢心中」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
5.「纏われし者ら」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
6.「欲望」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
7.「暴夜layla幻談」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
8.「六道輪廻サバイバル」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
9.「若い死者からのレクイエム」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:平野義久
10.「gai desespoir」 曲:片倉三起也 編:平野義久
<support musician>
細田真子:cembalo
渡辺剛:strings arrangement
sound produced by 片倉三起也
engineered by 滝田二郎
● ジャケットのイメージ通りゴシックにエレクトロな極彩色を施したサウンドで進化を続ける実力派ユニットの意欲作
不遇の90年代後半を経てアニメソングを手掛けるようになったALI PROJECTは、「コッペリアの柩」「月蝕グランギニョル」と現在のパブリックイメージの基礎となるタイアップシングルをリリース、そしてトップ10ヒットとなった「聖少女領域」「亡国覚醒カタルシス」によって、その音楽的スタイルと立ち位置は確立することになります。この2曲は彼らの知名度を上げることに貢献したため、その後コンスタントにリリースされるアルバムは軒並み20位以内にランクするほどの安定したヒットを続けることになりますが、彼らの音楽スタイルとデビューからの足跡を辿ってみるにつけ、それは非常に奇跡的なことなのではないでしょうか。本作はそんな彼らの8thアルバムにして、前述のスマッシュヒット2曲後の初のオリジナルアルバムでもあります。彼らはシングル曲はオリジナル作品にはほとんど収録しない、良い意味でしっかり切り分けができているグループであるのですが、本作ではシングル曲なしのしかも成功に導いたゴシカルな打ち込みストリングスPOPSのみならず、実は初期からの持ち味であるTECHNOLOGYな部分、そこにサイバーな雰囲気を味つけした新趣向を見せた挑戦作という側面も垣間みせています。
とはいえ片倉三起也の相変わらずの目まぐるしいストリングスフレーズを中心としたアレンジテクニックは健在で、宝野アリカの衰えない歌唱と共に初期からの彼らの音楽のストロングポイントになっていますが、本作は近年顕著になってきた日本的なフレーズと音使い、「和」のテイストを取り入れながらさらにエレクトリック寄りといいますか、音使いとしてシンセやエフェクティブなサウンドが全面に押し出ています。ベテランらしくそのサウンド手法も多彩で、このあたりが彼らがアニメソングだけでなく音楽界の中でも一目置かれる存在にしているのですが、本作では特に電子的なサウンドにおいてその多彩さが特にアピールされており(特に「纏われし者ら」は圧巻の一言)、シングル曲ではこれまでのリスナーの期待に応えながら、アルバムでは新しい方向性を提示するという姿勢が窺えます。その後はアルバムごとにスタイルを模索していく彼らですが、既に一聴してわかるほどの知名度を得たアリプロサウンドの安定感は崩さず、アルバムでは自身の信じる方向性を実験できるという環境は、実はアーティストにとっても理想的なのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「CYBER DEVILS」
音を電子的に歪ませる手法で新趣向を見せタイトル通りの人工風味なサウンドを聞かせる挑戦的な楽曲。なんといってもAメロの疾走する電子リズムにヴォーカルをエフェクティブに変化させるギミックが楽しいです。サビは彼ららしい大げさな盛り上がりを見せますが、ラストを賛美歌風で占める唐突さもこの混沌とした楽曲にはふさわしいです。
・「纏われし者ら」
本作の中で最も実験的かつテクノロジー的な方向性が極度に現れた会心の傑作。インダストリアルなリズムに全体に漂うサイバー感覚、ストリングス的なフレーズも皆無で全編シンセサウンドのテクノポップです。4つの場面を繰り返すような楽曲構成も斬新で興味深い名曲です。
・「六道輪廻サバイバル」
いわゆる「聖少女領域」に通じるようなダークでゴシカルな目まぐるしいフレーズが特徴のストリングスPOPS。躍動感のある逸脱したメロディラインと、意図したかのような不協和音的フレーズの使い方が、なんとも彼ららしい混沌とした世界観を生み出しています。意外にも跳ねるリズムトラックも楽しい楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ度が高く格段に電子的な味わいが深くなった)
・メロディ ★ (相変わらず凝ったフレーズで押しまくるが難解さも)
・リズム ★★ (楽曲に合わせてスタイルも音色も多彩に使いこなす)
・曲構成 ★ (どうせならラストまでそのサイバー性を貫いてほしい)
・個性 ★★ (型を確立した中で閉塞感を打破する挑戦意欲は◯)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
コメント
意外にサイバーより
さすがに8作目ともなると、世界観は完全に確立してますよね。でもこのアルバム相当サイバーな方向へよったイメージがあります。ボーカル・エフェクトが目立ったせいかな...音の仕上がりも心なしかライト(軽い)印象があります。でも相変わらずの様式美は保ちつつ、いろんなプチ実験試みているのはさすが。ただ最近、変態メロディーの入れ方が堂に入りすぎて、ほぼ予定調和になりつつあるのが心配。最近またゴスロリ&大正ロマン系が流行りだしましたね。定期的にやってくるこの流行。ALI PROJECTも稼ぎ時って感じでしょうか。。。タイミング良くまたアルバム出せば海外でも評価されやすいかもしれませんね。
Re: 意外にサイバーより
satoyanさん、こんばんは。
彼らはシングルで稼いでアルバムで思う存分音楽を試している、という羨ましいスタイルなんですよね。
しかしある意味聴き手を選ぶ作風なので、そこがどうにも評価の分かれるところなんでしょう。
ゴスロリ系は需要はありますからね・・・しかしその中でもやはり彼らが抜きん出ているのは片倉氏の非凡なクリエイト能力だと思います。
彼らはシングルで稼いでアルバムで思う存分音楽を試している、という羨ましいスタイルなんですよね。
しかしある意味聴き手を選ぶ作風なので、そこがどうにも評価の分かれるところなんでしょう。
ゴスロリ系は需要はありますからね・・・しかしその中でもやはり彼らが抜きん出ているのは片倉氏の非凡なクリエイト能力だと思います。
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