「夢の振子」 伊藤つかさ
「夢の振子」(1986 ビクター)
伊藤つかさ:vocal

1.「不思議劇場(はてなシアター)」 詞:細田博子 曲・編:白井良明
2.「雲をつかむような話」 詞:細田博子 曲・編:中原信雄
3.「猫のフィーリング」 詞:佐伯健三 曲・編:鈴木智文
4.「ハートの季節」 詞:松井五郎 曲:都倉俊一 編:川村栄二
5.「水辺の王国」 詞:佐伯健三 曲・編:白井良明
6.「青い捜査線」 詞:佐伯健三 曲・編:鈴木智文
7.「御招待~夜が好き~」 詞:細田博子 曲・編:中原信雄
8.「夢の振子」 詞:細田博子 曲・編:白井良明
9.「やっぱり私ここにいる」 詞:岩里祐穂 曲・編:白井良明
produced by 白井良明
engineered by 秋元秀之
● 重厚な打ち込みサウンドに挑戦!音楽の冒険を続ける正統派アイドルの新境地を開いたコンセプトアルバム
子役上がりの女優兼アイドル歌手であった伊藤つかさは、1982年の2ndアルバム「さよなら こんにちは」で坂本龍一や高橋幸宏などYMO周辺の作編曲家を起用しニューウェーブへの接近をいち早く進めるなど、そのファニーなルックスに似合わず他のアイドルとは一線を画したさまざまなアプローチの楽曲を披露していました。そのクオリティが開花するのが84年の清水信之プロデュース名盤「オススメ!」でしたが、ここからますます斜め上へセンスが振り切られ、翌年には怪作12インチ「謎のアンドロメダ」をリリース、鷺巣詩郎の組曲風シンセアレンジに劇団いろは仕込みの伊藤つかさの台詞回しがカオスを作り出すこの楽曲は、今後彼女がどこへ行こうとしているのか期待と不安が入り混じった感覚を味わわせてくれる楽曲でした。そしてその謎が明らかにされたかどうかは定かではないのですが、満を持してリリースされた作品が彼女のラストアルバムとなる本作です。
本作のプロデュースを手掛けたのはMOONRIDERSの白井良明で、堀ちえみや中川勝彦らのアルバムで遊び心溢れるニューウェーブなアレンジに挑戦してきた個性派ギタリストの参加により、物語風もしくはミュージカル風(7分を超える「夢の振子」は圧巻!)ともとれるようなコンセプチュアルな作品に仕上がっています。もちろん白井だけでなく前作に引き続き参加したパール兄弟のデビューで勢いに乗るサエキけんぞうや、カンツォーネニューウェーブバンド、ショコラータの作詞を手掛けていた細田博子を作詞に起用、また鈴木智文や中原信雄といったportable rockの面々を作編曲に迎えるなどこれまでにない布陣で臨んでいます。そしてそのサウンドの印象は、ズバリ重い!80年代後半にさしかかった時期ということもありますが、エフェクティブなリズムは重厚感を増し、シーケンスもバキバキしたデジタル&サンプリング風味、そして何よりもこれまでの彼女の作風からすると一見不釣り合いに思わせるようなロック的で白井良明的ストレンジかつ不穏な空気感が、ある種の違和感をもたらしています。しかし得てしてこうして違和感は功を奏するもので、ラ・ムー時代の菊池桃子がそうであったように、ヴォーカルとサウンドのギャップがコントラストとなって双方の魅力を引き立てることによって、デジタルでテクノロジーな楽曲にメリハリを持たせることに成功しているのです。結局この違和感は一般には受け入れられず彼女の音源リリースはここまでとなってしまいましたが、こうした挑戦は賞賛こそすれ失敗作と揶揄されるものではないと、個人的にはさらにスポットを当ててほしいと願わざるを得ません。
<Favorite Songs>
・「不思議劇場(はてなシアター)」
変調ボイスにチープなプログラミングなイントロから始まる全ての幕開けのコンセプトソング。緻密なサンプリングの組み合わせ方もさることながら本編の爆音ドラムが凄まじいです。これぞミュージカル風ファンタジックテクノロジーPOPSの真髄ともいえる楽曲です。
・「猫のフィーリング」
エレクトリックなプログラミングが光るテクノ歌謡の名曲。ゴージャスなシンセプラスと攻撃的なドラミングの圧力に気圧されます。AメロとBメロしかない単純な構成ですが、ニューウェーブなギターソロとその音圧がノーマルな印象を与えてくれません。
・「青い捜査線」
余りに彼女のイメージに合わなくて物議を醸し出したサスペンスタッチのデジタルロック歌謡。グチャッとしたシンセパッドやうなりを上げる歪んだギター、ノイジーなドラムなど聴き所満載、切迫感あふれるサウンドがファンには受け入れられなかったのかもしれません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (緻密でデジタルでマシナリーなゴリゴリサウンド)
・メロディ ★★ (サウンド重視ながら哀愁フレーズをそっと忍ばせる)
・リズム ★★★★★(音色、圧力ともに豊潤で強力なインパクトで圧倒)
・曲構成 ★★★ (「ハートの季節」が浮き過ぎてこの作品では邪魔かも)
・個性 ★★★★ (ニューウェーブ趣味の本領を発揮したストレンジ作品)
総合評点: 9点
伊藤つかさ:vocal

1.「不思議劇場(はてなシアター)」 詞:細田博子 曲・編:白井良明
2.「雲をつかむような話」 詞:細田博子 曲・編:中原信雄
3.「猫のフィーリング」 詞:佐伯健三 曲・編:鈴木智文
4.「ハートの季節」 詞:松井五郎 曲:都倉俊一 編:川村栄二
5.「水辺の王国」 詞:佐伯健三 曲・編:白井良明
6.「青い捜査線」 詞:佐伯健三 曲・編:鈴木智文
7.「御招待~夜が好き~」 詞:細田博子 曲・編:中原信雄
8.「夢の振子」 詞:細田博子 曲・編:白井良明
9.「やっぱり私ここにいる」 詞:岩里祐穂 曲・編:白井良明
produced by 白井良明
engineered by 秋元秀之
● 重厚な打ち込みサウンドに挑戦!音楽の冒険を続ける正統派アイドルの新境地を開いたコンセプトアルバム
子役上がりの女優兼アイドル歌手であった伊藤つかさは、1982年の2ndアルバム「さよなら こんにちは」で坂本龍一や高橋幸宏などYMO周辺の作編曲家を起用しニューウェーブへの接近をいち早く進めるなど、そのファニーなルックスに似合わず他のアイドルとは一線を画したさまざまなアプローチの楽曲を披露していました。そのクオリティが開花するのが84年の清水信之プロデュース名盤「オススメ!」でしたが、ここからますます斜め上へセンスが振り切られ、翌年には怪作12インチ「謎のアンドロメダ」をリリース、鷺巣詩郎の組曲風シンセアレンジに劇団いろは仕込みの伊藤つかさの台詞回しがカオスを作り出すこの楽曲は、今後彼女がどこへ行こうとしているのか期待と不安が入り混じった感覚を味わわせてくれる楽曲でした。そしてその謎が明らかにされたかどうかは定かではないのですが、満を持してリリースされた作品が彼女のラストアルバムとなる本作です。
本作のプロデュースを手掛けたのはMOONRIDERSの白井良明で、堀ちえみや中川勝彦らのアルバムで遊び心溢れるニューウェーブなアレンジに挑戦してきた個性派ギタリストの参加により、物語風もしくはミュージカル風(7分を超える「夢の振子」は圧巻!)ともとれるようなコンセプチュアルな作品に仕上がっています。もちろん白井だけでなく前作に引き続き参加したパール兄弟のデビューで勢いに乗るサエキけんぞうや、カンツォーネニューウェーブバンド、ショコラータの作詞を手掛けていた細田博子を作詞に起用、また鈴木智文や中原信雄といったportable rockの面々を作編曲に迎えるなどこれまでにない布陣で臨んでいます。そしてそのサウンドの印象は、ズバリ重い!80年代後半にさしかかった時期ということもありますが、エフェクティブなリズムは重厚感を増し、シーケンスもバキバキしたデジタル&サンプリング風味、そして何よりもこれまでの彼女の作風からすると一見不釣り合いに思わせるようなロック的で白井良明的ストレンジかつ不穏な空気感が、ある種の違和感をもたらしています。しかし得てしてこうして違和感は功を奏するもので、ラ・ムー時代の菊池桃子がそうであったように、ヴォーカルとサウンドのギャップがコントラストとなって双方の魅力を引き立てることによって、デジタルでテクノロジーな楽曲にメリハリを持たせることに成功しているのです。結局この違和感は一般には受け入れられず彼女の音源リリースはここまでとなってしまいましたが、こうした挑戦は賞賛こそすれ失敗作と揶揄されるものではないと、個人的にはさらにスポットを当ててほしいと願わざるを得ません。
<Favorite Songs>
・「不思議劇場(はてなシアター)」
変調ボイスにチープなプログラミングなイントロから始まる全ての幕開けのコンセプトソング。緻密なサンプリングの組み合わせ方もさることながら本編の爆音ドラムが凄まじいです。これぞミュージカル風ファンタジックテクノロジーPOPSの真髄ともいえる楽曲です。
・「猫のフィーリング」
エレクトリックなプログラミングが光るテクノ歌謡の名曲。ゴージャスなシンセプラスと攻撃的なドラミングの圧力に気圧されます。AメロとBメロしかない単純な構成ですが、ニューウェーブなギターソロとその音圧がノーマルな印象を与えてくれません。
・「青い捜査線」
余りに彼女のイメージに合わなくて物議を醸し出したサスペンスタッチのデジタルロック歌謡。グチャッとしたシンセパッドやうなりを上げる歪んだギター、ノイジーなドラムなど聴き所満載、切迫感あふれるサウンドがファンには受け入れられなかったのかもしれません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (緻密でデジタルでマシナリーなゴリゴリサウンド)
・メロディ ★★ (サウンド重視ながら哀愁フレーズをそっと忍ばせる)
・リズム ★★★★★(音色、圧力ともに豊潤で強力なインパクトで圧倒)
・曲構成 ★★★ (「ハートの季節」が浮き過ぎてこの作品では邪魔かも)
・個性 ★★★★ (ニューウェーブ趣味の本領を発揮したストレンジ作品)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
コメント
コメントの投稿
« 「SOMETHING FOR EVERYBODY」 DEVO l Home l 「Vendome, la sick Kaiseki」 SPANK HAPPY »