「NEW ROMANCER」 宮川弾
「NEW ROMANCER」(2009 エイベックス)
宮川弾:vocal・all instruments・computer programming

1.「サタデーナイト」 詞・曲・編:宮川弾
2.「今そこに居る理由」 詞・曲・編:宮川弾
3.「あのころの未来」 詞・曲・編:宮川弾
4.「フクロウとシチュー」 詞・曲・編:宮川弾
5.「ストレイライトの偽物」 曲・編:宮川弾
6.「スタードーム」 詞:土岐麻子 曲・編:宮川弾
7.「美女と野暮」 詞:いしわたり淳治 曲・編:宮川弾
8.「ひとつ」 詞・曲・編:宮川弾
9.「この星の上で」 詞・曲・編:宮川弾
10.「トラブルの午後」 曲・編:宮川弾
11.「堕落」 詞:高井康生 曲・編:宮川弾
12.「ふたつのおと」 詞・曲・編:宮川弾
13.「国道沿い」 詞・曲・編:宮川弾
<support musician>
Chocolat:vocals
片寄明人:vocals
平原まなみ:vocal
高井康生:electric guitar・acoustic guitar
萩原顕彰:french horn
西岡ヒデロー:trumpet・flugel horn
石戸谷斉:trombone
首藤晃志:sax
朝川朋之:harp
弦一徹ストリングス:strings
produced by 宮川弾
engineered by 原真人
● 80年代的メロディアスなエレポップを21世紀的手法で再構築した職人アレンジャーの意欲作
1993年渋谷系全盛時代に一瞬輝きを放った6人組グループ、ラヴ・タンバリンズ のキーボーディストとしてデビューした宮川弾は、バンド解散後は編曲家に転向し、MUSEUM OF PLATEやFantastic Plastic Machine、ROUND TABLEなどのロック&POPSバンドを中心にアレンジを手掛け、その手腕は高く評価されていました。そしてキャリアが確立されつつあった2006年に「宮川弾アンサンブル」名義での管弦楽器を中心とした生演奏サウンドのアルバム「pied-piper」をリリース、定評のあったストリングスアレンジを中心に他の作品にはないアプローチのこのソロ作品は話題性十分のものでした。しかし約2年ぶりにリリースされた2ndアルバムの本作は、前作の反動というか本人のルーツともいうべき80年代的開き直りのエレクトロポップサウンドが満載の、キラキラした珠玉のPOPS集となっており、また本人がみずから歌うことで宮川本人の音楽的実体験が生々しく表現された傑作と言っても過言ではない仕上がりとなっています。
のっけから神経質なゴリゴリしたエレクトリックサウンドに圧倒されますが、ストリングスが上手く融合したドリーミーなシーケンスとフレーズと音響面の緻密な構成力が彼の本来の魅力とも言えます。それは本作のようなシンセプログラミングによるものであっても、前作のような生楽器主体のオーケストラルサウンドであっても不変であり、まさに彼のセンスと力量の賜物であると思われます。とはいえやはり本作で目立つのは細かい譜割のシンセシーケンスに代表されるプログラマブルサウンドで、あの時代に憧憬を持っている者でしか理解し得ないシンセやシーケンサーへの愛情をここまであからさまにしている作品にはそうは出会えないでしょう。決して上手く声量があるとも思えない宮川の歌唱力も、その独特の鼻にかかったような声質だからこその味があり、ストリングスとエレクトロをバックにした豪華な演奏に埋もれることなく、結果的にそれが独特の個性となっていることも見逃せませんし、しっかりサビにキラーフレーズを持ってくる彼のメロディセンスがあって初めて、メロディとサウンドの絶妙なバランスによって生まれるクオリティが生まれています。今後彼が同じアプローチの作品をリリースするとは思えませんが、彼の才能とエレクトリックサウンドの相性の良さが引き起こした1つの結晶というべき作品であることに間違いはありません。
<Favorite Songs>
・「今そこに居る理由」
全編を支配するめくるめくキュートなシーケンスとサビに絶妙に入ってくるストリングスが魅力の宮川らしさが前面に出た楽曲。多彩なフレーズと音響面も含めて細部にわたって緻密に計算されたアレンジであり、キャッチーなサビでそのアレンジがさらに生きてくる印象があります。
・「フクロウとシチュー」
少々変わったフレーズのイントロにかかわらず超高級なサビのインパクトを持つ名曲。ストリングス&ハープに彩られ、そしてギターのアクセントが効果的なサビのフレーズはこの楽曲のみならず本作のハイライトと言ってよいと思います。
・「この星の上で」
イントロのシンセパッドで全体を引っ張っていくミディアムチューン。Aメロ&Bメロの構成ながらBメロに絡んでくるシーケンスが相変わらず絶妙な入り方をしてきます。そのシーケンスやシンセソロにおけるいかにもシンセな音色も気持ち良いくらいです。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (計算され尽くしたプログラミングと音色は鬼気迫る)
・メロディ ★★★★ (キラーフレーズ生産能力が尋常でないことを証明)
・リズム ★★★ (あくまで楽曲を邪魔しない程度の打ち込みリズム)
・曲構成 ★★ (惜しむらくは曲数が多過ぎて中弛みしてしまったこと)
・個性 ★★★★ (80's懐古趣味とはいえその志を忘れていないのがよい)
総合評点: 9点
宮川弾:vocal・all instruments・computer programming

1.「サタデーナイト」 詞・曲・編:宮川弾
2.「今そこに居る理由」 詞・曲・編:宮川弾
3.「あのころの未来」 詞・曲・編:宮川弾
4.「フクロウとシチュー」 詞・曲・編:宮川弾
5.「ストレイライトの偽物」 曲・編:宮川弾
6.「スタードーム」 詞:土岐麻子 曲・編:宮川弾
7.「美女と野暮」 詞:いしわたり淳治 曲・編:宮川弾
8.「ひとつ」 詞・曲・編:宮川弾
9.「この星の上で」 詞・曲・編:宮川弾
10.「トラブルの午後」 曲・編:宮川弾
11.「堕落」 詞:高井康生 曲・編:宮川弾
12.「ふたつのおと」 詞・曲・編:宮川弾
13.「国道沿い」 詞・曲・編:宮川弾
<support musician>
Chocolat:vocals
片寄明人:vocals
平原まなみ:vocal
高井康生:electric guitar・acoustic guitar
萩原顕彰:french horn
西岡ヒデロー:trumpet・flugel horn
石戸谷斉:trombone
首藤晃志:sax
朝川朋之:harp
弦一徹ストリングス:strings
produced by 宮川弾
engineered by 原真人
● 80年代的メロディアスなエレポップを21世紀的手法で再構築した職人アレンジャーの意欲作
1993年渋谷系全盛時代に一瞬輝きを放った6人組グループ、ラヴ・タンバリンズ のキーボーディストとしてデビューした宮川弾は、バンド解散後は編曲家に転向し、MUSEUM OF PLATEやFantastic Plastic Machine、ROUND TABLEなどのロック&POPSバンドを中心にアレンジを手掛け、その手腕は高く評価されていました。そしてキャリアが確立されつつあった2006年に「宮川弾アンサンブル」名義での管弦楽器を中心とした生演奏サウンドのアルバム「pied-piper」をリリース、定評のあったストリングスアレンジを中心に他の作品にはないアプローチのこのソロ作品は話題性十分のものでした。しかし約2年ぶりにリリースされた2ndアルバムの本作は、前作の反動というか本人のルーツともいうべき80年代的開き直りのエレクトロポップサウンドが満載の、キラキラした珠玉のPOPS集となっており、また本人がみずから歌うことで宮川本人の音楽的実体験が生々しく表現された傑作と言っても過言ではない仕上がりとなっています。
のっけから神経質なゴリゴリしたエレクトリックサウンドに圧倒されますが、ストリングスが上手く融合したドリーミーなシーケンスとフレーズと音響面の緻密な構成力が彼の本来の魅力とも言えます。それは本作のようなシンセプログラミングによるものであっても、前作のような生楽器主体のオーケストラルサウンドであっても不変であり、まさに彼のセンスと力量の賜物であると思われます。とはいえやはり本作で目立つのは細かい譜割のシンセシーケンスに代表されるプログラマブルサウンドで、あの時代に憧憬を持っている者でしか理解し得ないシンセやシーケンサーへの愛情をここまであからさまにしている作品にはそうは出会えないでしょう。決して上手く声量があるとも思えない宮川の歌唱力も、その独特の鼻にかかったような声質だからこその味があり、ストリングスとエレクトロをバックにした豪華な演奏に埋もれることなく、結果的にそれが独特の個性となっていることも見逃せませんし、しっかりサビにキラーフレーズを持ってくる彼のメロディセンスがあって初めて、メロディとサウンドの絶妙なバランスによって生まれるクオリティが生まれています。今後彼が同じアプローチの作品をリリースするとは思えませんが、彼の才能とエレクトリックサウンドの相性の良さが引き起こした1つの結晶というべき作品であることに間違いはありません。
<Favorite Songs>
・「今そこに居る理由」
全編を支配するめくるめくキュートなシーケンスとサビに絶妙に入ってくるストリングスが魅力の宮川らしさが前面に出た楽曲。多彩なフレーズと音響面も含めて細部にわたって緻密に計算されたアレンジであり、キャッチーなサビでそのアレンジがさらに生きてくる印象があります。
・「フクロウとシチュー」
少々変わったフレーズのイントロにかかわらず超高級なサビのインパクトを持つ名曲。ストリングス&ハープに彩られ、そしてギターのアクセントが効果的なサビのフレーズはこの楽曲のみならず本作のハイライトと言ってよいと思います。
・「この星の上で」
イントロのシンセパッドで全体を引っ張っていくミディアムチューン。Aメロ&Bメロの構成ながらBメロに絡んでくるシーケンスが相変わらず絶妙な入り方をしてきます。そのシーケンスやシンセソロにおけるいかにもシンセな音色も気持ち良いくらいです。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (計算され尽くしたプログラミングと音色は鬼気迫る)
・メロディ ★★★★ (キラーフレーズ生産能力が尋常でないことを証明)
・リズム ★★★ (あくまで楽曲を邪魔しない程度の打ち込みリズム)
・曲構成 ★★ (惜しむらくは曲数が多過ぎて中弛みしてしまったこと)
・個性 ★★★★ (80's懐古趣味とはいえその志を忘れていないのがよい)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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