「月姫」 山口美央子
「月姫」(1983 キャニオン)
山口美央子:vocals

1.「夕顔(あはれ)」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
2.「夏」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
3.「沈みゆく」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
4.「鏡」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
5.「白昼夢」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
6.「月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS)」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
7.「さても天晴 夢桜」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
8.「恋は春感」 詞・曲:山口美央子 編:後藤次利
<support musician>
松武秀樹:synthesizer programming
produced by 立川直樹
sound produced by 土屋昌巳
engineered by 伊東俊郎・原田真伍
● 土屋昌巳の名プロデュース!気怠い和風テイストが随所に光るシンセの歌姫の代表作
80年代初頭に登場した作詞作曲をこなす新感覚ガールズオリエンタルPOPSの旗手であった山口美央子は、パートナーに井上鑑を迎え、1980年アルバム「夢飛行」でデビュー、翌年には2ndアルバム「NILVANA」をリリースし、プログラミングに松武秀樹を起用して80'sテクノポップ基調のシンセサウンドをフィーチャーしたシティポップを披露していました。そして83年、プロデューサーを「すみれSeptember Love」で一躍スターダムにのし上がった一風堂の土屋昌巳を迎え本作が制作され3rdアルバムとしてリリースに至ります。アレンジャーを変更したことで作風が大胆に変更された本作は、楽曲のタイトルからも推察されるように「和」テイストが全開となっており、しかもミディアムで落ち着いたテンポの楽曲が増えた結果、これまでのようなオシャレなOL的雰囲気は押し流され、日本女性の情念のようなものが浮かび上がってくる個性的な作品となっています。
1曲目「夕顔(あはれ)」からしとやかなピアノのイントロからオリエンタル一色に染まるこの作品ですが、やはり魅力は山口美央子本人の声質にあると思われます。後年現れる鈴木祥子のようなしっとり艶やかな歌唱は、和のテイストを前面に押し出したサウンドに絶妙に溶け合っています。そしてこのジャパネスクサウンドを創り出しているのが前述の土屋昌巳であり、当時の彼のソロアルバム「RICE MUSIC」で追求してきた純日本風ニューウェーブの実験場としても本作は機能しています。よく伸びるサスティンギターフレーズやお囃子を意識したリズムボックス中心のトラック、松武秀樹の電子音がバランス良く配置されており、その完成度は非常に高く感じられます。何よりも当時では斬新この上ないこのサウンドを向こうに回して全くぶれない山口本人のメロディセンスに裏打ちされた歌の存在感が素晴らしいです。
その後なぜか本作をもってリーダーオリジナルアルバムをリリースしなくなった彼女ですが、その後作曲家に転身、特に80年代末期から90年代前半にかけてのアイドルソングにおいて数々の名曲を残し、そのメロディメイカーぶりを十二分に発揮しています。
<Favorite Songs>
・「鏡」
松武秀樹が創り出したと思われる電子音を配したイントロが不思議な雰囲気を醸し出すミディアムチューン。他の楽曲と同じくピアノのバッキングを中心としながら浮遊感のあるシンセを全面的に配置した未来派サウンドは彼女の作品ならではの傾向です。
・「月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS)」
最もテクノポップっぽいと言える本作中で最も明るめのタイトル曲。テクノ典型のシーケンスベースによるジャストなリズムが心地良く、またサビ後の夢心地なフレーズの雰囲気が何とも言えない幸福感があります。
・「さても天晴 夢桜」
ジャパネスクここに極まれりといった感があるお囃子系ニューミュージック。伝統芸能的なリズムワークに笛の音&お囃子サンプリングが味わい深く、そこに絡んでくる隠し味的な電子音リズムの音色センスはまさに松武イズムといったところでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (和風テイストと電子音の親和性が証明される好例)
・メロディ ★★ (後年職業作曲家として評価されるセンスの萌芽を見る)
・リズム ★★★ (どこまでも和を意識した緻密なリズム構成は秀逸)
・曲構成 ★ (さすがに化粧品CMの典型なラスト曲は浮いてしまう)
・個性 ★★ (AORな前作までの雰囲気から脱却したが残り香も漂う)
総合評点: 7点
山口美央子:vocals

1.「夕顔(あはれ)」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
2.「夏」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
3.「沈みゆく」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
4.「鏡」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
5.「白昼夢」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
6.「月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS)」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
7.「さても天晴 夢桜」 詞・曲:山口美央子 編:土屋昌巳
8.「恋は春感」 詞・曲:山口美央子 編:後藤次利
<support musician>
松武秀樹:synthesizer programming
produced by 立川直樹
sound produced by 土屋昌巳
engineered by 伊東俊郎・原田真伍
● 土屋昌巳の名プロデュース!気怠い和風テイストが随所に光るシンセの歌姫の代表作
80年代初頭に登場した作詞作曲をこなす新感覚ガールズオリエンタルPOPSの旗手であった山口美央子は、パートナーに井上鑑を迎え、1980年アルバム「夢飛行」でデビュー、翌年には2ndアルバム「NILVANA」をリリースし、プログラミングに松武秀樹を起用して80'sテクノポップ基調のシンセサウンドをフィーチャーしたシティポップを披露していました。そして83年、プロデューサーを「すみれSeptember Love」で一躍スターダムにのし上がった一風堂の土屋昌巳を迎え本作が制作され3rdアルバムとしてリリースに至ります。アレンジャーを変更したことで作風が大胆に変更された本作は、楽曲のタイトルからも推察されるように「和」テイストが全開となっており、しかもミディアムで落ち着いたテンポの楽曲が増えた結果、これまでのようなオシャレなOL的雰囲気は押し流され、日本女性の情念のようなものが浮かび上がってくる個性的な作品となっています。
1曲目「夕顔(あはれ)」からしとやかなピアノのイントロからオリエンタル一色に染まるこの作品ですが、やはり魅力は山口美央子本人の声質にあると思われます。後年現れる鈴木祥子のようなしっとり艶やかな歌唱は、和のテイストを前面に押し出したサウンドに絶妙に溶け合っています。そしてこのジャパネスクサウンドを創り出しているのが前述の土屋昌巳であり、当時の彼のソロアルバム「RICE MUSIC」で追求してきた純日本風ニューウェーブの実験場としても本作は機能しています。よく伸びるサスティンギターフレーズやお囃子を意識したリズムボックス中心のトラック、松武秀樹の電子音がバランス良く配置されており、その完成度は非常に高く感じられます。何よりも当時では斬新この上ないこのサウンドを向こうに回して全くぶれない山口本人のメロディセンスに裏打ちされた歌の存在感が素晴らしいです。
その後なぜか本作をもってリーダーオリジナルアルバムをリリースしなくなった彼女ですが、その後作曲家に転身、特に80年代末期から90年代前半にかけてのアイドルソングにおいて数々の名曲を残し、そのメロディメイカーぶりを十二分に発揮しています。
<Favorite Songs>
・「鏡」
松武秀樹が創り出したと思われる電子音を配したイントロが不思議な雰囲気を醸し出すミディアムチューン。他の楽曲と同じくピアノのバッキングを中心としながら浮遊感のあるシンセを全面的に配置した未来派サウンドは彼女の作品ならではの傾向です。
・「月姫 (MOON-LIGHT PRINCESS)」
最もテクノポップっぽいと言える本作中で最も明るめのタイトル曲。テクノ典型のシーケンスベースによるジャストなリズムが心地良く、またサビ後の夢心地なフレーズの雰囲気が何とも言えない幸福感があります。
・「さても天晴 夢桜」
ジャパネスクここに極まれりといった感があるお囃子系ニューミュージック。伝統芸能的なリズムワークに笛の音&お囃子サンプリングが味わい深く、そこに絡んでくる隠し味的な電子音リズムの音色センスはまさに松武イズムといったところでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (和風テイストと電子音の親和性が証明される好例)
・メロディ ★★ (後年職業作曲家として評価されるセンスの萌芽を見る)
・リズム ★★★ (どこまでも和を意識した緻密なリズム構成は秀逸)
・曲構成 ★ (さすがに化粧品CMの典型なラスト曲は浮いてしまう)
・個性 ★★ (AORな前作までの雰囲気から脱却したが残り香も漂う)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
コメント
No title
Re: No title
しかごれぶるさん、はじめまして。
拙ブログをお読みいただき光栄です。ありがとうございます。励みになります。
これは名盤だと思いますし、恐らくCD化の要望も多いと思われるのになぜなのかいまだに疑問なのです。
山口美央子さん本人の作曲家としてのキャリアも十分ですし、不思議ですよね。
この気怠い声に電子音が絡むのがまたいいんですよw
いつかCD化されるまで気長に待ちたいところです。
拙ブログをお読みいただき光栄です。ありがとうございます。励みになります。
これは名盤だと思いますし、恐らくCD化の要望も多いと思われるのになぜなのかいまだに疑問なのです。
山口美央子さん本人の作曲家としてのキャリアも十分ですし、不思議ですよね。
この気怠い声に電子音が絡むのがまたいいんですよw
いつかCD化されるまで気長に待ちたいところです。
いよいよ
ご無沙汰しています。
いつもいつも拝見して発見してamazonしています。
たまにヤフオクで...
いよいよですね。発売!!
おまけに3枚同時で。
松武さん、ありがとうって感じですかね。
前回のコメントを見ますと8年前ですね。
いや~ずいぶんと月日が経ちました。
あと少しです。楽しみです。
いつもいつも拝見して発見してamazonしています。
たまにヤフオクで...
いよいよですね。発売!!
おまけに3枚同時で。
松武さん、ありがとうって感じですかね。
前回のコメントを見ますと8年前ですね。
いや~ずいぶんと月日が経ちました。
あと少しです。楽しみです。
Re: いよいよ
こちらこそご無沙汰しています。
本ブログでいろいろな作品を発見していただき、聴いていただけるのが何より嬉しいです。
ありがとうございます!
諦めかけていた山口美央子の再発!
なんだ、マスターあるんじゃん!と叫んでしまいましたよw
松武さんのスタッフの方にも当レビューを気に入っていただけているようで、緊張の面持ちなのですが、嬉しいですね!
私は本日のイベントにも行きたかったのですが(特に松武さんと土屋昌巳さんと山口さんの対談)、是非通販で手に入れたいと思います。
過去2枚もいつかレビューしたいです。
本ブログでいろいろな作品を発見していただき、聴いていただけるのが何より嬉しいです。
ありがとうございます!
諦めかけていた山口美央子の再発!
なんだ、マスターあるんじゃん!と叫んでしまいましたよw
松武さんのスタッフの方にも当レビューを気に入っていただけているようで、緊張の面持ちなのですが、嬉しいですね!
私は本日のイベントにも行きたかったのですが(特に松武さんと土屋昌巳さんと山口さんの対談)、是非通販で手に入れたいと思います。
過去2枚もいつかレビューしたいです。
No title
テクノポップに目覚めまして、いわゆるゴリゴリのテクノが好みではなく歌モノのテクノが心に沁みます。シンセだけの曲ではなくてギター、生ドラムが入っていてもカチッとしているものが好きだったので、このいわゆる『TECHNOLOGY POPS』が好きなんですよ。結構知っていると思っていましたが、まだまだ奥が深いです。そして楽しみです。
コメントの投稿
最高ですよね。レコードしか持っていないので何十年って聞いていないです。これからもわかりやすいレビューよろしくお願いします。