「Moon Voice」 GRASS VALLEY
「Moon Voice」 (1987 CBSソニー)
GRASS VALLEY

<members>
出口雅之:vocal
本田恭之:keyboards
根本一朗:bass
西田信哉:guitar
上領亘:drums
1.「MOON VOICE」 詞:出口雅之 曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
2.「砂上の夢」 詞:出口雅之 曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
3.「ALL OF BARREN SOUL」 詞:出口雅之 曲:根本一朗 編:GRASS VALLEY
4.「輝くほとりに」 詞:出口雅之 曲:上領亘 編:GRASS VALLEY
5.「真夜中の透視図」 詞:出口雅之 曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
6.「TEARFUL COLOR」 詞・曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
7.「遙かなる光芒」 詞:出口雅之 曲:上領亘 編:GRASS VALLEY
directed(produced) by 丸沢和宏・山本ケンヤ
mixing engineered by Ron Saint Germain
recording engineered by 川部修久
● 叙情的かつダークで繊細なシンセサウンド!バンドの世界観が最も如実に表現された名作2ndアルバム
1987年シングル「Freezin'」、アルバム「Grass Valley」で颯爽とデビューした、ニューウェーブをデジタル世代ならではの新解釈で換骨奪胎したクールなサウンドが光るGRASS VALLEYは、その衝撃的な1stアルバムから間髪入れずに、同年秋には2ndアルバムである本作をリリースします。前作同様グレーで染めたダークなジャケからも想像できるように、そこに漂うのは鋼のクールで叙情的な世界観です。名刺代わりであった前作では彼らの志向するニューウェーブ・ニューロマンティクスが進化したエレクトリックなサウンドを披露していましたが、本作では当時の数あるバンドの中でも唯一無二のシンセによる巧みなサウンドデザインによって、さらにそのサウンドを深淵化させることに成功し、それが本作を彼らの作品の中で最も彼ららしく表現された大切な名盤として記憶されているゆえんであると思われます。
前作ほど期待に満ちあふれた作風ではなく、また次作「Style」以降のその名のとおりスタイリッシュでキャッチーなポップ感覚を備えているわけでもない本作ですが、随所に散りばめられた絵画的でセンチメンタルな本田恭之のシンセフレーズはますますフィーチャーされ、夜空に輝く星のごとくファンタジックに楽曲を彩り、このバンドのもう1つの売りでもある複雑でタイト、そしてノングルーヴでエフェクティブな(ここが大事)上領亘のドラミングはますます冴え渡っています。もちろん西田信哉や根本一朗の弦楽器陣が奏でる目立たなくもキレとコクがあるプレイはGRASS VALLEYの重要なサウンド要素の1つでもありますが、ギターやベースが後ろを支え、シンセやドラムがサウンド面で前面に押し出されるパターンは他のいわゆるロックバンド形態のグループでは珍しいスタイルであると言えるでしょう。もちろん出口雅之の湿った低音ヴォーカルもこの世界観の構築には欠かせませんし、まさに彼の声質が最も生かされているのも本作と言えるかもしれません。このサウンドスタイルを本作によっていち早く確立した彼らは、個人的にはYMOやPINKにも劣らない80年代を代表するエレクトリックサウンドのグループとしてもっと評価されてもよいと思いますし、こういったシンセやエレクトロニクスの醍醐味を味わわせてくれる作品こそ、現代のマスタリング技術でリマスターしてほしいと思います。
<Favorite Songs>
・「MOON VOICE」
実は珍しいシーケンスのイントロから複雑なドラムパターンを構築するシングルカットにしてタイトルチューン。シングルに似つかわしくない渋い曲調で盛り上がりにも乏しいのですが、いなたいギターフレーズとドラムにかかるエフェクト処理のキレが鋭いです。
・「砂上の夢」
本田恭之お得意の「砂」シリーズのこれも渋く光るいぶし銀な楽曲。ここではシンセが大活躍で、絶妙なタイミングで組み込まれたフレーズは本田の真骨頂でしょう。特にサビの左から右へ、右から左へパンしながら消えていくキラキラシンセは美しいことこの上ありません。
・「TEARFUL COLOR」
本田恭之が作曲だけでなく作詞も担当した最もロマンティックなミディアムバラード。彼らの楽曲の素晴らしいところはこうした叙情的な楽曲であっても、しっかりドラムがタイトかつクリアで攻撃的なところです。また本田の得意音色の1つでもあるピアノ系サウンドをはじめとしたRoland系シンセの響きも美しさを増しています。
<評点>
・サウンド ★★★★★(まさに絵画的で芸術肌のシンセワークは非の打ち所なし)
・メロディ ★★★ (自己の世界観に忠実であるが故にポップ性は減少)
・リズム ★★★★★(突如現れた天が二物を与えた新星ドラマーの鋭い妙技)
・曲構成 ★★★★ (ラストに渋過ぎる楽曲を持っていってしまった感が)
・個性 ★★★★★(彼らのバンドとしての本質はここに既に確立している)
総合評点: 9点
GRASS VALLEY

<members>
出口雅之:vocal
本田恭之:keyboards
根本一朗:bass
西田信哉:guitar
上領亘:drums
1.「MOON VOICE」 詞:出口雅之 曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
2.「砂上の夢」 詞:出口雅之 曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
3.「ALL OF BARREN SOUL」 詞:出口雅之 曲:根本一朗 編:GRASS VALLEY
4.「輝くほとりに」 詞:出口雅之 曲:上領亘 編:GRASS VALLEY
5.「真夜中の透視図」 詞:出口雅之 曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
6.「TEARFUL COLOR」 詞・曲:本田恭之 編:GRASS VALLEY
7.「遙かなる光芒」 詞:出口雅之 曲:上領亘 編:GRASS VALLEY
directed(produced) by 丸沢和宏・山本ケンヤ
mixing engineered by Ron Saint Germain
recording engineered by 川部修久
● 叙情的かつダークで繊細なシンセサウンド!バンドの世界観が最も如実に表現された名作2ndアルバム
1987年シングル「Freezin'」、アルバム「Grass Valley」で颯爽とデビューした、ニューウェーブをデジタル世代ならではの新解釈で換骨奪胎したクールなサウンドが光るGRASS VALLEYは、その衝撃的な1stアルバムから間髪入れずに、同年秋には2ndアルバムである本作をリリースします。前作同様グレーで染めたダークなジャケからも想像できるように、そこに漂うのは鋼のクールで叙情的な世界観です。名刺代わりであった前作では彼らの志向するニューウェーブ・ニューロマンティクスが進化したエレクトリックなサウンドを披露していましたが、本作では当時の数あるバンドの中でも唯一無二のシンセによる巧みなサウンドデザインによって、さらにそのサウンドを深淵化させることに成功し、それが本作を彼らの作品の中で最も彼ららしく表現された大切な名盤として記憶されているゆえんであると思われます。
前作ほど期待に満ちあふれた作風ではなく、また次作「Style」以降のその名のとおりスタイリッシュでキャッチーなポップ感覚を備えているわけでもない本作ですが、随所に散りばめられた絵画的でセンチメンタルな本田恭之のシンセフレーズはますますフィーチャーされ、夜空に輝く星のごとくファンタジックに楽曲を彩り、このバンドのもう1つの売りでもある複雑でタイト、そしてノングルーヴでエフェクティブな(ここが大事)上領亘のドラミングはますます冴え渡っています。もちろん西田信哉や根本一朗の弦楽器陣が奏でる目立たなくもキレとコクがあるプレイはGRASS VALLEYの重要なサウンド要素の1つでもありますが、ギターやベースが後ろを支え、シンセやドラムがサウンド面で前面に押し出されるパターンは他のいわゆるロックバンド形態のグループでは珍しいスタイルであると言えるでしょう。もちろん出口雅之の湿った低音ヴォーカルもこの世界観の構築には欠かせませんし、まさに彼の声質が最も生かされているのも本作と言えるかもしれません。このサウンドスタイルを本作によっていち早く確立した彼らは、個人的にはYMOやPINKにも劣らない80年代を代表するエレクトリックサウンドのグループとしてもっと評価されてもよいと思いますし、こういったシンセやエレクトロニクスの醍醐味を味わわせてくれる作品こそ、現代のマスタリング技術でリマスターしてほしいと思います。
<Favorite Songs>
・「MOON VOICE」
実は珍しいシーケンスのイントロから複雑なドラムパターンを構築するシングルカットにしてタイトルチューン。シングルに似つかわしくない渋い曲調で盛り上がりにも乏しいのですが、いなたいギターフレーズとドラムにかかるエフェクト処理のキレが鋭いです。
・「砂上の夢」
本田恭之お得意の「砂」シリーズのこれも渋く光るいぶし銀な楽曲。ここではシンセが大活躍で、絶妙なタイミングで組み込まれたフレーズは本田の真骨頂でしょう。特にサビの左から右へ、右から左へパンしながら消えていくキラキラシンセは美しいことこの上ありません。
・「TEARFUL COLOR」
本田恭之が作曲だけでなく作詞も担当した最もロマンティックなミディアムバラード。彼らの楽曲の素晴らしいところはこうした叙情的な楽曲であっても、しっかりドラムがタイトかつクリアで攻撃的なところです。また本田の得意音色の1つでもあるピアノ系サウンドをはじめとしたRoland系シンセの響きも美しさを増しています。
<評点>
・サウンド ★★★★★(まさに絵画的で芸術肌のシンセワークは非の打ち所なし)
・メロディ ★★★ (自己の世界観に忠実であるが故にポップ性は減少)
・リズム ★★★★★(突如現れた天が二物を与えた新星ドラマーの鋭い妙技)
・曲構成 ★★★★ (ラストに渋過ぎる楽曲を持っていってしまった感が)
・個性 ★★★★★(彼らのバンドとしての本質はここに既に確立している)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
コメント
No title
Re: No title
がちゅぴおさん、はじめまして。
生まれる前というのがすごいですね。
それくらい若い人たちにGRASS VALLEYが聴かれているという事実が。
こういうことこそバンド冥利に尽きるというものではないでしょうか。
これからもGRASS VALLEYの楽曲を楽しんで下さい。
ワタシは彼らの関係者でもなんでもないですけど。(ただの一ファンです)
生まれる前というのがすごいですね。
それくらい若い人たちにGRASS VALLEYが聴かれているという事実が。
こういうことこそバンド冥利に尽きるというものではないでしょうか。
これからもGRASS VALLEYの楽曲を楽しんで下さい。
ワタシは彼らの関係者でもなんでもないですけど。(ただの一ファンです)
No title
リクエストに応えていただき大変有難うございます。お返事遅れまして申し訳有りませんでした。このアルバムはGVで一番好きでして、どうしても貴方様のレヴューが読みたかったでした。何回聴いたかわからないですが、大変濃い、かつ鋭いレヴューで、おかげさまで
新鮮な気持ちで、新たな角度で聴き込ませていただいてます。本当に有難うございました。
新鮮な気持ちで、新たな角度で聴き込ませていただいてます。本当に有難うございました。
Re: No title
shakaさん、こんばんは。
いまいちまだまだ伝え切れていないレビューですが申し訳ありません。
GRASS VALLEYはもっともっと評価されて良いバンドであると思いますので、軒並み高い評価でレビューさせていただいていますが、どうも文章下手で伝えたいことが伝え切れていないような気がするのです。
やはりこうしたレビューよりも聴いていただくのが一番ですね。
そしてまた新しい発見と共に楽しめるのが音楽の醍醐味と言えると思いますし。
いまいちまだまだ伝え切れていないレビューですが申し訳ありません。
GRASS VALLEYはもっともっと評価されて良いバンドであると思いますので、軒並み高い評価でレビューさせていただいていますが、どうも文章下手で伝えたいことが伝え切れていないような気がするのです。
やはりこうしたレビューよりも聴いていただくのが一番ですね。
そしてまた新しい発見と共に楽しめるのが音楽の醍醐味と言えると思いますし。
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が好きです。
自分が生まれる前の曲で、周りの友人は誰一人知らないっていう