「Blood and Snow」 Quadraphonics
「Blood and Snow」 (1990 アルファ)
Quadraphonics

<members>
岡野ハジメ:voice・all instruments
吉田仁:voice・all instruments
1.「Snuff Your Sap」 曲:Quadraphonics 編:福富幸宏・Quadraphonics
2.「Flying」
曲:John Lennon・Paul McCartney・George Harrison・Ringo Starr 編:Quadraphonics
3.「Mesc Mosque」 曲・編:Quadraphonics
4.「Soaked In Pleasure」 詞:ANtje E.Gummels・Quadraphonics 曲・編:Quadraphonics
5.「Blood and Snow」 詞・曲・編:Quadraphonics
6.「Address Of Beyond」 詞・曲・編:Quadraphonics
7.「Peel Off My Skin」 詞・曲・編:Quadraphonics
8.「Anfang」 詞:ANtje E.Gummels 曲:Quadraphonics 編:福富幸宏・Quadraphonics
9.「Paradise」 詞・曲・編:Quadraphonics
10.「Peel Off Your Skin」 曲・編:Quadraphonics
<support musician>
ANtje E.Gummels:voice
竹中仁見:computer programming
福富幸宏:computer programming
木原健次郎:break beat
produced by Quadraphonics
engineered by Quadraphonics
● 2枚目にして完全ハウスユニットに変身!当時のマイブームをあからさまに表現したミニマルで渋めの意欲作
スペース・サーカス、PINKほか様々な超絶技巧バンドの個性派ベーシストとして活躍していた岡野ハジメと、岡野の出身大学である明治学院大学の非公認サークル・現代音楽研究会の同期であった吉田仁は、吉田が竹中仁見と結成したSALON MUSICのデモテープを岡野がサポートした縁もあり、双方が多重録音に関心が強かったということもあり意気投合、それぞれがメジャーシーンで活躍していた時期においても共同での録音作業を密かに続けていました。そのレコーディング作品が日の目を見たのは1988年。PINKとしての活動が終焉期に入り、既に解散後の活動も視野に入れていた岡野と吉田との共同ユニット「Quadraphonics(クアドロフォニクス)」は、インディーニューウェーブにグラムロックテイストなアルバム「Heat Me」でメジャーデビューを果たすことになります。同時期にレコーディングされたPINKの1989年リリースのラストアルバム「RED & BLUE」では吉田との共同作業による「AUGUST MOON」が収録され、Quadraphonicsとしての本格的な活動を示唆されていましたが、80年代末に差し掛かって吉田仁が強烈なアシッドハウスムーブメントに感化されると、吉田絡みの作品のサウンドスタイルが大きく影響を受けていくことになります。
1990年6月にリリースされたSALON MUSICの6thアルバム「PSYCHIC BALL」はレゾナンスをビキビキ効かせたアTB-303系アシッドベースがフィーチャーされたリズムトラックが特徴の完全テクノ仕様なシーケンスサウンドに返信していましたが、その3ヶ月後にリリースされたのがQuadraphonicsの2ndアルバムである本作です。となれば当然本作もサウンドは完全にアシッドハウスに支配されることになり、リズムボックスによるミニマルで機械的なリズムトラックに、安っぽさが魅力のPCMピアノ音色のリフ、ウニョウニョした303ベースが這いずり回るハウストラックが目白押しで、1stアルバムとは全く異なるアプローチに生まれ変わっています。前作に顕著であった汚したギターワークはワウによるうねりまくったアシッド仕様に変化、そして執拗に繰り返されるミニマルなシーケンスが中心となるため、本作はもはやPOPSの範疇を超えたテクノ/ハウス作品と捉えた方がしっくり来るのではないかと思われます。なお、吉田は同時期にリリースされた自身のプロデュース作品であるyフリッパーズ・ギターの2ndアルバム「CAMERA TALK」収録の「カメラ! カメラ! カメラ!」でも作品中浮きまくるほどのアシッドベースを取り入れており、いかにこの1990年が吉田にとってアシッドハウスに傾倒していたかが理解できるかと思います。その後潮が引いたように同路線が鎮静化したことを考えますと、本作以降作品リリースがいまだないQuadraphonicsも、もし3rdアルバムが出たとしても全く異なる音楽性になったと思いますし、そのように考えますと本作はまさに1990年ならではの時代の産物と言えるのではないでしょうか。まさに当時、(一部の先鋭的なクリエイターにとって)時代はアシッドに侵されていたわけです。
<Favorite Songs>
・「Soaked In Pleasure」
ハウストラックが多くを占める中、比較的ロック色を垣間見せるミディアムチューン。しかしながら当然リズムはゆったりとしたハウスビートです。ワウの効いたギターと掠れたフェイクが実に良い味を醸し出す中、美しいコードワークのおかげで飽きは来ない構成となっています。ポエトリーリーディングは日本在住のドイツ人作家ANtje E.Gummels。
・「Blood and Snow」
小気味良いハウストラックに料理されているタイトルチューンが、この既聴感は間違いなくKraftwerkのあの曲がモチーフとなっているに違いありません。後半でフィルターで遊びまくるソロシンセフレーズにフリーダムを感じます。
・「Paradise」
本作において最もキャッチーなコードワークとロマンティック性を感じさせるミディアムトラック。8分以上の長尺トラックではありますが、美しいコードワークに淡々と刻むように見せて訴求力のあるフィルインが挿入されるリズムトラックを中心に、加工されたシンセフレーズとワウギターで装飾されたサウンドは、後半にボーカルが挿入されることで一気に楽曲として盛り上げることに成功しています。このタイプの楽曲としてはハイレベルの完成度です。
<評点>
・サウンド ★★★ (ミニマリズムを追求するも随所で生楽器を駆使し味変)
・メロディ ★ (時折美しいコードワークで聴かせるも基本はリズム重視)
・リズム ★★ (いわゆる垂れ流し系のリズムになりがちだが・・)
・曲構成 ★ (長尺の割にリフレインが多く実験性が表面に出る格好に)
・個性 ★ (ムーブメントに即応し大胆な変化を厭わない柔軟性も魅力)
総合評点: 6点
Quadraphonics

<members>
岡野ハジメ:voice・all instruments
吉田仁:voice・all instruments
1.「Snuff Your Sap」 曲:Quadraphonics 編:福富幸宏・Quadraphonics
2.「Flying」
曲:John Lennon・Paul McCartney・George Harrison・Ringo Starr 編:Quadraphonics
3.「Mesc Mosque」 曲・編:Quadraphonics
4.「Soaked In Pleasure」 詞:ANtje E.Gummels・Quadraphonics 曲・編:Quadraphonics
5.「Blood and Snow」 詞・曲・編:Quadraphonics
6.「Address Of Beyond」 詞・曲・編:Quadraphonics
7.「Peel Off My Skin」 詞・曲・編:Quadraphonics
8.「Anfang」 詞:ANtje E.Gummels 曲:Quadraphonics 編:福富幸宏・Quadraphonics
9.「Paradise」 詞・曲・編:Quadraphonics
10.「Peel Off Your Skin」 曲・編:Quadraphonics
<support musician>
ANtje E.Gummels:voice
竹中仁見:computer programming
福富幸宏:computer programming
木原健次郎:break beat
produced by Quadraphonics
engineered by Quadraphonics
● 2枚目にして完全ハウスユニットに変身!当時のマイブームをあからさまに表現したミニマルで渋めの意欲作
スペース・サーカス、PINKほか様々な超絶技巧バンドの個性派ベーシストとして活躍していた岡野ハジメと、岡野の出身大学である明治学院大学の非公認サークル・現代音楽研究会の同期であった吉田仁は、吉田が竹中仁見と結成したSALON MUSICのデモテープを岡野がサポートした縁もあり、双方が多重録音に関心が強かったということもあり意気投合、それぞれがメジャーシーンで活躍していた時期においても共同での録音作業を密かに続けていました。そのレコーディング作品が日の目を見たのは1988年。PINKとしての活動が終焉期に入り、既に解散後の活動も視野に入れていた岡野と吉田との共同ユニット「Quadraphonics(クアドロフォニクス)」は、インディーニューウェーブにグラムロックテイストなアルバム「Heat Me」でメジャーデビューを果たすことになります。同時期にレコーディングされたPINKの1989年リリースのラストアルバム「RED & BLUE」では吉田との共同作業による「AUGUST MOON」が収録され、Quadraphonicsとしての本格的な活動を示唆されていましたが、80年代末に差し掛かって吉田仁が強烈なアシッドハウスムーブメントに感化されると、吉田絡みの作品のサウンドスタイルが大きく影響を受けていくことになります。
1990年6月にリリースされたSALON MUSICの6thアルバム「PSYCHIC BALL」はレゾナンスをビキビキ効かせたアTB-303系アシッドベースがフィーチャーされたリズムトラックが特徴の完全テクノ仕様なシーケンスサウンドに返信していましたが、その3ヶ月後にリリースされたのがQuadraphonicsの2ndアルバムである本作です。となれば当然本作もサウンドは完全にアシッドハウスに支配されることになり、リズムボックスによるミニマルで機械的なリズムトラックに、安っぽさが魅力のPCMピアノ音色のリフ、ウニョウニョした303ベースが這いずり回るハウストラックが目白押しで、1stアルバムとは全く異なるアプローチに生まれ変わっています。前作に顕著であった汚したギターワークはワウによるうねりまくったアシッド仕様に変化、そして執拗に繰り返されるミニマルなシーケンスが中心となるため、本作はもはやPOPSの範疇を超えたテクノ/ハウス作品と捉えた方がしっくり来るのではないかと思われます。なお、吉田は同時期にリリースされた自身のプロデュース作品であるyフリッパーズ・ギターの2ndアルバム「CAMERA TALK」収録の「カメラ! カメラ! カメラ!」でも作品中浮きまくるほどのアシッドベースを取り入れており、いかにこの1990年が吉田にとってアシッドハウスに傾倒していたかが理解できるかと思います。その後潮が引いたように同路線が鎮静化したことを考えますと、本作以降作品リリースがいまだないQuadraphonicsも、もし3rdアルバムが出たとしても全く異なる音楽性になったと思いますし、そのように考えますと本作はまさに1990年ならではの時代の産物と言えるのではないでしょうか。まさに当時、(一部の先鋭的なクリエイターにとって)時代はアシッドに侵されていたわけです。
<Favorite Songs>
・「Soaked In Pleasure」
ハウストラックが多くを占める中、比較的ロック色を垣間見せるミディアムチューン。しかしながら当然リズムはゆったりとしたハウスビートです。ワウの効いたギターと掠れたフェイクが実に良い味を醸し出す中、美しいコードワークのおかげで飽きは来ない構成となっています。ポエトリーリーディングは日本在住のドイツ人作家ANtje E.Gummels。
・「Blood and Snow」
小気味良いハウストラックに料理されているタイトルチューンが、この既聴感は間違いなくKraftwerkのあの曲がモチーフとなっているに違いありません。後半でフィルターで遊びまくるソロシンセフレーズにフリーダムを感じます。
・「Paradise」
本作において最もキャッチーなコードワークとロマンティック性を感じさせるミディアムトラック。8分以上の長尺トラックではありますが、美しいコードワークに淡々と刻むように見せて訴求力のあるフィルインが挿入されるリズムトラックを中心に、加工されたシンセフレーズとワウギターで装飾されたサウンドは、後半にボーカルが挿入されることで一気に楽曲として盛り上げることに成功しています。このタイプの楽曲としてはハイレベルの完成度です。
<評点>
・サウンド ★★★ (ミニマリズムを追求するも随所で生楽器を駆使し味変)
・メロディ ★ (時折美しいコードワークで聴かせるも基本はリズム重視)
・リズム ★★ (いわゆる垂れ流し系のリズムになりがちだが・・)
・曲構成 ★ (長尺の割にリフレインが多く実験性が表面に出る格好に)
・個性 ★ (ムーブメントに即応し大胆な変化を厭わない柔軟性も魅力)
総合評点: 6点
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