「TECHNASMA」 LOGIC SYSTEM
「TECHNASMA」(2020 pinewaves)
LOGIC SYSTEM

<members>
松武秀樹:synthesizer programming
<electric equipment>
Moog IIIc・Moog MiniMoog Voyager・Moog Mother-32・Moog GrandMother・Moog DFAM (Drummer From Another Mother)・EMS VSC3・EMS Vocoder2000・E-mu Vintage Keys・E-mu Orbit・E-mu Planet Phatt・E-mu Carnaval・E-mu Morpheus・Sequencial Circuits Prophet5・Sequencial Pro3・Arp Odyssey・Clavia Nord Lead・Arturia V Collection7・Spectrasonics Omnisphere2・Yamaha Montage・Yamaha FS1R・Yamaha MU2000・Roland Fantom・Roland Jupiter-Xm・Roland TR-808・Roland TR-8・Roland VP-770・Roland SC-88 Pro・Simmons SDS-V・Stylophone・CANADEON PW40
1.「Overture」 曲:山口美央子・松武秀樹 編:Logic System Project
2.「Crisis」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
3.「Time Seeds」 曲:松武秀樹 編:Logic System Project
4.「Mondrian’s Square」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
5.「Closing//Glassworks」 曲:Philip Glass 編:土橋安騎夫・松武秀樹
6.「Golden Ratio」 曲:松武秀樹 編:Logic System Project
7.「Aqua Aura」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
8.「妖踊」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
9.「Contact」 曲:松武秀樹 編:Logic System Project
10.「Revive」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
11.「Silence Is Betrayal」 曲・編:坂本龍一・松武秀樹
<support musician>
山口美央子:piano・keyboards・voice
produced by 松武秀樹
engineered by 松武秀樹
●山口美央子を相棒に迎え12年ぶりに再始動!テクノとしての純度の高さは今もって孤高の域に達するレジェンド達の共演アルバム
2000年代に2枚のアルバムをリリースし再び沈黙状態に入った松武秀樹率いるLOGIC SYSTEMが、その眠りを覚ますことになったきっかけは、2017年の松武秀樹の活動をコンプリートした集大成5枚組BOX「ロジック・クロニクル」のリリース、そして一部の好事家達から待ちに待たれていた80年代前半を席巻したシンセの歌姫・山口美央子の3枚のソロアルバム「夢飛行」「NIRVANA」「月姫」のCD再発リリースでした。特に山口美央子の再発には、アルバム制作当時から松武が大きく関わっていたこともあり、松武が権利関係をクリアするために自ら交渉するなどその貢献度は高かったわけですが、この再発と松武の勧めもあり2018年には山口がまさかのソロ活動を再開、実に26年ぶりのアルバム「トキサカシマ」をリリースし数回のライブも行いましたが、これらの活動をバックアップにサポートに八面六臂の活躍を見せていたのが松武でした。ここまで業務上の相棒として二人三脚で近年は活動してきた彼らですから、必然的に松武が久方ぶりのLOGIC SYSTEMを始動させたからには、片腕となるのは作曲能力に秀でた山口が参加することはもはや必然的であったと言わざるを得なかったわけです。
そのようなわけで松武秀樹&山口美央子というタッグでスタートした第4期LOGIC SYSTEMのアルバムが2020年にリリースされます。使用されるシンセサイザーは松武の代名詞であるMoog IIIcや古き良き時代のアナログシンセに加え、Yamaha MontageやRoland Jupiter-Xmといった最新型のシンセ、LOGIC的には初登場のソフトシンセの王様・Spectrasonics Omnisphere2が見事な音処理と共に大活躍しています。さらに、山口美央子のライブや作品においてもお披露目されてきたMIDIオルゴールCANADEON PW40もしっかり使用されており、万全な制作体制の中進められたことが窺えますが、本作で驚くべきはこれまでの作品群と比較しても格段にサウンド処理が鮮烈であることです。持ち前のメロディセンスが光る山口楽曲の仕上がりの良さもさることながら、Philip Glassのリメイク「Closing//Glassworks」を共同制作した土橋安騎夫も、自身のテクノポップアルバム「SENRITSU」シリーズのノウハウを落とし込んだような丹念かつ重厚なシンセサイザーサウンドで本作に多大な貢献を果たしています。思えばこれまでの共同制作者であった川上了や入江純、石田勝範や山本健司らは(3rdアルバム「東方快車」の後藤次利を例外とすれば)職業作曲家の側面が強く、本作のような山口美央子や土橋安騎夫といったミュージシャンズコンポーザーとの共同作業は、LOGIC SYSTEMとしてはほぼ初めてでしょう。しかし山口美央子のようなメロディ力を持つ作曲家の楽曲だからこそ、松武も安心して集中できるということもあるでしょうから、その余裕がサウンド面でも表れているというのが本作のストロングポイントになっていると思われます。そしてその集大成となる楽曲がラストの「Revive」(坂本龍一とのインプロ「Silence Is Betrayal」はボーナストラック扱い)で、山口のボコーダーから始まる図太いシーケンスは松武謹製のMoog IIIcでないと出せない音でしょう。このシーケンスだけでも本作を聴く価値があると言ってよいと思います。松武と山口の相性の良さが溢れ出た本作は、今後の活動への期待にも繋がる良質なアルバムとして、令和の現在でも他の若いDTMクリエイターの作品群にも堂々と渡り合っていると言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「Crisis」
Stylophone系のシーケンスを多数に組み合わせたイントロフレーズに、ノイジーなリズムが絡み出し、鮮やかなシンセブラスが飛び出してくるファンタジックなサウンドメイク、そして起承転結の「転」となる魅惑のコードワークと躍動感のあるフレージングは、山口美央子の参加ならではの効果と言えるでしょう。。
・「Mondrian’s Square」
エレクトロ度の高いシーケンスを軸に、鮮烈な切り込みのリードシンセが襲ってくる非常に豊かなサウンドを堪能できる楽曲。ポルタメントの効いた笛系のフレーズへのエフェクトのかかり具合が秀逸です。微かに山口自身のボイスもコーラス的に処理されていますが、サウンドに溶け込んでいるのに主張する声質は山口ならではの個性と言えるでしょう。
・「Revive」
山口の声質はボコーダーでも一聴してすぐに確認できるのが素晴らしいです。そこから荘厳なパッドが入ってきてあのMOOG IIIcのドクドクシーケンスが降りかかってきます。そしてドラムはSimmons SDS-V。しかしスノッブにはならずにしっかりサスペンスタッチな楽曲構成に仕上がっている部分が完成度の高さを物語っています。本作随一の名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★(シーケンスの組み立てもさることながら実に音質が抜群)
・メロディ ★★ (インスト中心とはいえ親しみやすさは山口参加の賜物)
・リズム ★★ (本作はドラムパートよりもシンセへの意識がより強い)
・曲構成 ★★ (コロナ禍を意識した楽曲を配し時代性も意識する余裕)
・個性 ★★ (相棒に迎えた山口美央子との相性の良さがすべて)
総合評点: 7点
LOGIC SYSTEM

<members>
松武秀樹:synthesizer programming
<electric equipment>
Moog IIIc・Moog MiniMoog Voyager・Moog Mother-32・Moog GrandMother・Moog DFAM (Drummer From Another Mother)・EMS VSC3・EMS Vocoder2000・E-mu Vintage Keys・E-mu Orbit・E-mu Planet Phatt・E-mu Carnaval・E-mu Morpheus・Sequencial Circuits Prophet5・Sequencial Pro3・Arp Odyssey・Clavia Nord Lead・Arturia V Collection7・Spectrasonics Omnisphere2・Yamaha Montage・Yamaha FS1R・Yamaha MU2000・Roland Fantom・Roland Jupiter-Xm・Roland TR-808・Roland TR-8・Roland VP-770・Roland SC-88 Pro・Simmons SDS-V・Stylophone・CANADEON PW40
1.「Overture」 曲:山口美央子・松武秀樹 編:Logic System Project
2.「Crisis」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
3.「Time Seeds」 曲:松武秀樹 編:Logic System Project
4.「Mondrian’s Square」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
5.「Closing//Glassworks」 曲:Philip Glass 編:土橋安騎夫・松武秀樹
6.「Golden Ratio」 曲:松武秀樹 編:Logic System Project
7.「Aqua Aura」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
8.「妖踊」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
9.「Contact」 曲:松武秀樹 編:Logic System Project
10.「Revive」 曲:山口美央子 編:Logic System Project
11.「Silence Is Betrayal」 曲・編:坂本龍一・松武秀樹
<support musician>
山口美央子:piano・keyboards・voice
produced by 松武秀樹
engineered by 松武秀樹
●山口美央子を相棒に迎え12年ぶりに再始動!テクノとしての純度の高さは今もって孤高の域に達するレジェンド達の共演アルバム
2000年代に2枚のアルバムをリリースし再び沈黙状態に入った松武秀樹率いるLOGIC SYSTEMが、その眠りを覚ますことになったきっかけは、2017年の松武秀樹の活動をコンプリートした集大成5枚組BOX「ロジック・クロニクル」のリリース、そして一部の好事家達から待ちに待たれていた80年代前半を席巻したシンセの歌姫・山口美央子の3枚のソロアルバム「夢飛行」「NIRVANA」「月姫」のCD再発リリースでした。特に山口美央子の再発には、アルバム制作当時から松武が大きく関わっていたこともあり、松武が権利関係をクリアするために自ら交渉するなどその貢献度は高かったわけですが、この再発と松武の勧めもあり2018年には山口がまさかのソロ活動を再開、実に26年ぶりのアルバム「トキサカシマ」をリリースし数回のライブも行いましたが、これらの活動をバックアップにサポートに八面六臂の活躍を見せていたのが松武でした。ここまで業務上の相棒として二人三脚で近年は活動してきた彼らですから、必然的に松武が久方ぶりのLOGIC SYSTEMを始動させたからには、片腕となるのは作曲能力に秀でた山口が参加することはもはや必然的であったと言わざるを得なかったわけです。
そのようなわけで松武秀樹&山口美央子というタッグでスタートした第4期LOGIC SYSTEMのアルバムが2020年にリリースされます。使用されるシンセサイザーは松武の代名詞であるMoog IIIcや古き良き時代のアナログシンセに加え、Yamaha MontageやRoland Jupiter-Xmといった最新型のシンセ、LOGIC的には初登場のソフトシンセの王様・Spectrasonics Omnisphere2が見事な音処理と共に大活躍しています。さらに、山口美央子のライブや作品においてもお披露目されてきたMIDIオルゴールCANADEON PW40もしっかり使用されており、万全な制作体制の中進められたことが窺えますが、本作で驚くべきはこれまでの作品群と比較しても格段にサウンド処理が鮮烈であることです。持ち前のメロディセンスが光る山口楽曲の仕上がりの良さもさることながら、Philip Glassのリメイク「Closing//Glassworks」を共同制作した土橋安騎夫も、自身のテクノポップアルバム「SENRITSU」シリーズのノウハウを落とし込んだような丹念かつ重厚なシンセサイザーサウンドで本作に多大な貢献を果たしています。思えばこれまでの共同制作者であった川上了や入江純、石田勝範や山本健司らは(3rdアルバム「東方快車」の後藤次利を例外とすれば)職業作曲家の側面が強く、本作のような山口美央子や土橋安騎夫といったミュージシャンズコンポーザーとの共同作業は、LOGIC SYSTEMとしてはほぼ初めてでしょう。しかし山口美央子のようなメロディ力を持つ作曲家の楽曲だからこそ、松武も安心して集中できるということもあるでしょうから、その余裕がサウンド面でも表れているというのが本作のストロングポイントになっていると思われます。そしてその集大成となる楽曲がラストの「Revive」(坂本龍一とのインプロ「Silence Is Betrayal」はボーナストラック扱い)で、山口のボコーダーから始まる図太いシーケンスは松武謹製のMoog IIIcでないと出せない音でしょう。このシーケンスだけでも本作を聴く価値があると言ってよいと思います。松武と山口の相性の良さが溢れ出た本作は、今後の活動への期待にも繋がる良質なアルバムとして、令和の現在でも他の若いDTMクリエイターの作品群にも堂々と渡り合っていると言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「Crisis」
Stylophone系のシーケンスを多数に組み合わせたイントロフレーズに、ノイジーなリズムが絡み出し、鮮やかなシンセブラスが飛び出してくるファンタジックなサウンドメイク、そして起承転結の「転」となる魅惑のコードワークと躍動感のあるフレージングは、山口美央子の参加ならではの効果と言えるでしょう。。
・「Mondrian’s Square」
エレクトロ度の高いシーケンスを軸に、鮮烈な切り込みのリードシンセが襲ってくる非常に豊かなサウンドを堪能できる楽曲。ポルタメントの効いた笛系のフレーズへのエフェクトのかかり具合が秀逸です。微かに山口自身のボイスもコーラス的に処理されていますが、サウンドに溶け込んでいるのに主張する声質は山口ならではの個性と言えるでしょう。
・「Revive」
山口の声質はボコーダーでも一聴してすぐに確認できるのが素晴らしいです。そこから荘厳なパッドが入ってきてあのMOOG IIIcのドクドクシーケンスが降りかかってきます。そしてドラムはSimmons SDS-V。しかしスノッブにはならずにしっかりサスペンスタッチな楽曲構成に仕上がっている部分が完成度の高さを物語っています。本作随一の名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★(シーケンスの組み立てもさることながら実に音質が抜群)
・メロディ ★★ (インスト中心とはいえ親しみやすさは山口参加の賜物)
・リズム ★★ (本作はドラムパートよりもシンセへの意識がより強い)
・曲構成 ★★ (コロナ禍を意識した楽曲を配し時代性も意識する余裕)
・個性 ★★ (相棒に迎えた山口美央子との相性の良さがすべて)
総合評点: 7点
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