「DENSHIYOKU」 SYS
「DENSHIYOKU」 (2016 ORC)
SYS

<members>
Can:vocal・keyboards
Fuyu:vocal
1.「DENSHIYOKU」 詞・曲・編:SYS
2.「denshoque」 詞・曲・編:SYS
3.「Gen-Shoku」 詞・曲・編:SYS
4.「Hatouchou」 詞・曲・編:SYS
produced by SYS
engineered by Can
● 沖縄から突如現れた純度抜群のTHE テクノポップ!東洋メロディと近未来感が美しく交差する期待度満点のミニアルバム
2000年代中頃に都心から遠く離れた沖縄で密やかにYMOのコピーバンドとして活動していた「さわやかスポーツやくざ」はバンド名を「SYS」と改名し、ヴォーカルFuyuを迎えた4人組バンドとして2008年にスタート、地元沖縄でライブ活動を少しずつ始めながら(多少のメンバーの入れ替わりを経験しつつ)2009年に1stミニアルバム「Click Crack」をリリースします。この頃はハードなギターと生ドラムに電子音+ボコーダーという、POLYSICS的なパンキッシュなニューウェーブスタイルを見せつつ、楽曲によってサンプルギミックや音響系アンビエントな作風も見せるなど、雑種的で音楽性を模索していた時代のようでした。そこから程なくドラムが脱退し、トリオバンドとなった2011年に2nd CDとなる「DisA」をリリース、ここでは少し音が整理されオシャレ感覚を身につけつつありましたが、ポップ性にはほど遠く、まだまだ不遇の時代が続くことになります。その後は音楽活動はそこそこにたまにアート系イベントを開催するのみの緩やかな活動スタイルの中で、ギターが脱退し2人組となったところで転機が訪れます。平沢進の兄・平沢裕一が茨城県つくば市にて経営していたCafe Gazioにふとしたきっかけで見初められると、2015年にGazioで数回ライブを開催し、P-MODEL界隈のコアなファン達にその存在を認識されることになります。そこでモチベーションを上げたSYSは本格的に音楽活動を再開し3rdミニアルバムである本作をリリース、ということになったわけです。
自身の音楽性を「機能単位式電子POPプロジェクト」と銘打つなど、2人組になりしっかりコンセプトを固めてきた感のある本作ですが、これまでの2作に比べると方向性ががっちり固まったことによって雑多であった電子音が驚くほどに整理され、1つ1つの音の粒を際立たせることによって、まずサウンド面でのクオリティが劇的に上がりました。そしてFuyuのボーカルを全面的にフィーチャーしたことによりポップ性も獲得しているわけですが、沖縄らしくオリエンタルな響きを纏わせながら、テクノらしく無機質な表情を崩さない独特の声質を生かし切っていて、それがKORG RADIASを中心に奏でられる純粋な電子音に絶妙にハマっています。正直な話、KORG RADIASのようなストイックなアナログモデリングシンセをここまで十分に生かし切ったサウンドは他にはないのではないかと思われます。「DENSHIYOKU」→「denshoque」→「Gen-Shoku」と言葉遊びのように連続する3曲は、どれもが一貫したコンセプトで繋がりながら様々な角度からのアプローチで、時にはミニマルに、時にはメロディアスに「機能単位式電子POP」ワールドに引き込むことに成功しています(そして4曲目「Hatouchou」のシンセソロは絶品!)。まさに沖縄の地に隠れていたテクノポップセンスの開花と言えるでしょう。
このような渾身の一作を生み出しながら、翌17年の「Mugenten Garden」を最後に音源リリースは止まり、地元沖縄での活動に勤しんでいるSYSですが、マイペースな彼らのことですから気長に新曲を待つほかないでしょう。まだまだ期待のテクノポップユニットであることには間違いありません。
<Favorite Songs>
・「DENSHIYOKU」
のっけからの左右に振られたアルペジオのクリアな音像が素晴らしい混じり気のない純粋な電子ポップチューン。東洋的で神秘的な歌メロとエレクトリックなサウンドデザインのバランスが恐ろしく整っています。サビで少しスピードアップする細やかなシーケンスといい、Bメロの歌の引っ込み具合といい、音の空間把握能力に優れています。
・「denshoque」
3曲連続する中での真ん中に配置されていますが、静謐な中で緻密な電子音が楽しめる本作随一の楽曲。電子ノイズとシーケンスの抜き差しによって空間を自由に飛び交う電子音が織りなすファンタジックなエレクトリックワールドに、今度はCanもユニゾンデュオでヴォーカルに加わります。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (電子音に埃が存在しない実にクリアな音像)
・メロディ ★★★★ (オリエンタルが嫌味にならない絶妙なフレージング)
・リズム ★★★★ (細かい高速シーケンスでリズムを生成する)
・曲構成 ★★ (3曲目までノンストップは大正解だがまだまだ聴きたい)
・個性 ★★★★ (本作によって鋼のコンセプトと得難いクオリティを獲得)
総合評点: 9点
CDは「GAZIO WEB SHOP」と「SHOP MECANO」にてのみ販売しています。
SYS

<members>
Can:vocal・keyboards
Fuyu:vocal
1.「DENSHIYOKU」 詞・曲・編:SYS
2.「denshoque」 詞・曲・編:SYS
3.「Gen-Shoku」 詞・曲・編:SYS
4.「Hatouchou」 詞・曲・編:SYS
produced by SYS
engineered by Can
● 沖縄から突如現れた純度抜群のTHE テクノポップ!東洋メロディと近未来感が美しく交差する期待度満点のミニアルバム
2000年代中頃に都心から遠く離れた沖縄で密やかにYMOのコピーバンドとして活動していた「さわやかスポーツやくざ」はバンド名を「SYS」と改名し、ヴォーカルFuyuを迎えた4人組バンドとして2008年にスタート、地元沖縄でライブ活動を少しずつ始めながら(多少のメンバーの入れ替わりを経験しつつ)2009年に1stミニアルバム「Click Crack」をリリースします。この頃はハードなギターと生ドラムに電子音+ボコーダーという、POLYSICS的なパンキッシュなニューウェーブスタイルを見せつつ、楽曲によってサンプルギミックや音響系アンビエントな作風も見せるなど、雑種的で音楽性を模索していた時代のようでした。そこから程なくドラムが脱退し、トリオバンドとなった2011年に2nd CDとなる「DisA」をリリース、ここでは少し音が整理されオシャレ感覚を身につけつつありましたが、ポップ性にはほど遠く、まだまだ不遇の時代が続くことになります。その後は音楽活動はそこそこにたまにアート系イベントを開催するのみの緩やかな活動スタイルの中で、ギターが脱退し2人組となったところで転機が訪れます。平沢進の兄・平沢裕一が茨城県つくば市にて経営していたCafe Gazioにふとしたきっかけで見初められると、2015年にGazioで数回ライブを開催し、P-MODEL界隈のコアなファン達にその存在を認識されることになります。そこでモチベーションを上げたSYSは本格的に音楽活動を再開し3rdミニアルバムである本作をリリース、ということになったわけです。
自身の音楽性を「機能単位式電子POPプロジェクト」と銘打つなど、2人組になりしっかりコンセプトを固めてきた感のある本作ですが、これまでの2作に比べると方向性ががっちり固まったことによって雑多であった電子音が驚くほどに整理され、1つ1つの音の粒を際立たせることによって、まずサウンド面でのクオリティが劇的に上がりました。そしてFuyuのボーカルを全面的にフィーチャーしたことによりポップ性も獲得しているわけですが、沖縄らしくオリエンタルな響きを纏わせながら、テクノらしく無機質な表情を崩さない独特の声質を生かし切っていて、それがKORG RADIASを中心に奏でられる純粋な電子音に絶妙にハマっています。正直な話、KORG RADIASのようなストイックなアナログモデリングシンセをここまで十分に生かし切ったサウンドは他にはないのではないかと思われます。「DENSHIYOKU」→「denshoque」→「Gen-Shoku」と言葉遊びのように連続する3曲は、どれもが一貫したコンセプトで繋がりながら様々な角度からのアプローチで、時にはミニマルに、時にはメロディアスに「機能単位式電子POP」ワールドに引き込むことに成功しています(そして4曲目「Hatouchou」のシンセソロは絶品!)。まさに沖縄の地に隠れていたテクノポップセンスの開花と言えるでしょう。
このような渾身の一作を生み出しながら、翌17年の「Mugenten Garden」を最後に音源リリースは止まり、地元沖縄での活動に勤しんでいるSYSですが、マイペースな彼らのことですから気長に新曲を待つほかないでしょう。まだまだ期待のテクノポップユニットであることには間違いありません。
<Favorite Songs>
・「DENSHIYOKU」
のっけからの左右に振られたアルペジオのクリアな音像が素晴らしい混じり気のない純粋な電子ポップチューン。東洋的で神秘的な歌メロとエレクトリックなサウンドデザインのバランスが恐ろしく整っています。サビで少しスピードアップする細やかなシーケンスといい、Bメロの歌の引っ込み具合といい、音の空間把握能力に優れています。
・「denshoque」
3曲連続する中での真ん中に配置されていますが、静謐な中で緻密な電子音が楽しめる本作随一の楽曲。電子ノイズとシーケンスの抜き差しによって空間を自由に飛び交う電子音が織りなすファンタジックなエレクトリックワールドに、今度はCanもユニゾンデュオでヴォーカルに加わります。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (電子音に埃が存在しない実にクリアな音像)
・メロディ ★★★★ (オリエンタルが嫌味にならない絶妙なフレージング)
・リズム ★★★★ (細かい高速シーケンスでリズムを生成する)
・曲構成 ★★ (3曲目までノンストップは大正解だがまだまだ聴きたい)
・個性 ★★★★ (本作によって鋼のコンセプトと得難いクオリティを獲得)
総合評点: 9点
CDは「GAZIO WEB SHOP」と「SHOP MECANO」にてのみ販売しています。
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