「CONTINENTAL」 清野由美
「CONTINENTAL」(1983 日本コロムビア)
清野由美:vocal・backing vocals

1.「ママ」 詞:杉山政美 曲:山崎修 編:笹路正徳
2.「シェルの涙−CHEZ LAURETTE−」
詞:Michel Delpech・杉山政美 曲:Roland Vincent 編:笹路正徳
3.「傾く」 詞:杉山政美 曲:清野由美 編:笹路正徳
4.「もしかして明日は冬」 詞:杉山政美 曲:和泉常寛 編:笹路正徳
5.「夜よさようなら−UNE SIMPLE MELODIE−」
詞:Michel Polnareff・杉山政美 曲:Michel Polnareff 編:笹路正徳
6.「いってモナムール−LA MAISON EST EN PUINE−」
詞:Michel Delpech・Jean Michel Rivat・杉山政美 曲:Claude Morgan
編:笹路正徳
7.「ホントに愛してる−LES DIVORCES−」
詞:Michel Delpech・Jean Michel Rivat・杉山政美 曲:Roland Vincent
編:笹路正徳
8.「真夜中の電話」 詞:杉山政美 曲・編:笹路正徳
9.「砂の舟」 詞:杉山政美 曲:滝沢洋一 編:笹路正徳
<support musician>
土方隆行:guitar
渡辺モリオ:bass
山木秀夫:drums・syndrums
笹路正徳:keyboards・marimba・vibraphone・recorder
宮城純子:acoustic piano
小野誠彦:charango・pan pipe
清水靖晃:tenor sax・clarinet・bass clarinet
中川昌三:flute
多グループ:strings section
加藤グループ:strings section
produced by 岡田健
engineered by 小野誠彦
● マライアのバックアップと小野誠彦の変幻自在のミックスで電子的な実験も兼ね備えたオシャレかつストレンジな作品
1981年アルバム「U・TA・GE」でデビューした清野由美は、井上鑑をアレンジャーに迎えパラシュートの面々をバックに従えた「寺尾聰」プロダクションでいかにも80年代初頭らしいニューミュージックスタイルの良曲を歌い、同年リリースの2ndアルバム「Natural Woman」ではさらに難波弘之や山本達彦、松岡直也も参加して、まさに全盛期とも言えるシティポップブームに乗ったシンガーとして微かな足跡を残しましたが、マイナーな知名度に留まってしまいます。このような境遇のシンガーの3枚目は文字通り勝負作となるわけでして、大胆な方向転換を余儀なくされた清野制作チームはサウンドプロデュースに亜蘭知子や村田有美といった初期ビーイングアーティストを実験的かつ野心的な作風に落とし込んだ制作集団・清水靖晃や笹路正徳らを擁するマライアに白羽の矢を立て、ガラリと様相を変えたチャレンジングな作品を仕上げてまいりました。それが83年リリースの本作です。
この83年当時はジャズ&フュージョンもしくはプログレッシブロックのイメージであったマライアが、テクノ・ニューウェーブに接近したラストアルバム「うたかたの日々」を制作していた時期に重なっており、本作も彼らの当時の作風が還元されたかのようなエレクトロニクスと変化球気味のストレンジなサウンドを志向しています。実に4曲ものフレンチPOPSの名曲をリメイクしていることから、全体的な印象としては実験的なエレクトロ風味のプログレフレンチポップとなりますが、それだけでは語ることができないような音作りへのこだわりが随所に感じられます。全ての楽曲のアレンジを笹路正徳が務めていますが、80年代前半の笹路サウンドは特にシンセサウンドにおいても挑戦的な作風のものが多く、本作でも「シェルの涙−CHEZ LAURETTE−」「もしかして明日は冬」「ホントに愛してる−LES DIVORCES−」あたりはフレージング、リズム構築、音色選択など非常に攻めたサウンドメイクに徹しています(もちろん「傾く」や「真夜中の電話」といった正統派のシティポップも継承していますが)。もちろん清水靖晃や土方隆行、渡辺モリオに山木秀夫といったマライアメンバー達の進取に富んだ演奏力の賜物でもありますが、それらをまとめ上げ音響面でも斬新な音像を作り上げた若き日の小野誠彦の見事なミキシングの貢献も非常に大きい作品です。清野自身は本作の強い個性を発するキャッチーとは言えない楽曲とよく闘ってはいますが、流石にシンガーとしての個性を発揮することはかなわず、本作をもって彼女名義の作品は終焉を迎えることとなりますが、本作が放つ一種異様なクオリティは80年代前半のチャレンジングな作品群の1つとして語り継がれていくべきと言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「シェルの涙−CHEZ LAURETTE−」
Michel DelpechのフレンチPOPSスタンダード「Chez Laurette」の斬新なリメイク。山木秀夫がシンセドラムを叩きまくりながら小野誠彦がリバーブとディレイを駆使したダブミックスで幻惑サウンドを演出、アヴァンギャルド性が強く出た実験作です。
・「傾く」
前曲とは打って変わって人懐っこいシティポップナンバー。多彩な音色とフレーズで惑わす笹路正徳のシンセプレイと清水靖晃の情熱的なサックスソロで盛り上げます。淡々と正確にリズムを刻むドラミングもこの楽曲のポイントの1つです。
・「もしかして明日は冬」
比較的地味な作風の哀愁歌謡ですが、この楽曲でも山木のシンセドラムが柔らかで軽やかなタムプレイで楽曲の基軸となり、特にサビ以外ではリバースサウンドでプログレッシブな不思議空間を作り出します。そんな野心的な作風でもサビではしっかり歌謡曲している部分に、そのギリギリを突く攻め具合が偲ばれます。ラストの「う〜〜〜」の切り取り方のセンスが興味深いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (多彩な音色によるサウンドを斬新なミックスで演出)
・メロディ ★ (明らかにフレンチカバーよりオリジナル楽曲が良い)
・リズム ★★★ (スネアにかけられるディレイのタイミングが秀逸)
・曲構成 ★ (欲を言えば全てオリジナル楽曲で挑戦して欲しかった)
・個性 ★★ (大幅なサウンド転換で従来のファンも戸惑いを隠せず)
総合評点: 7点
清野由美:vocal・backing vocals

1.「ママ」 詞:杉山政美 曲:山崎修 編:笹路正徳
2.「シェルの涙−CHEZ LAURETTE−」
詞:Michel Delpech・杉山政美 曲:Roland Vincent 編:笹路正徳
3.「傾く」 詞:杉山政美 曲:清野由美 編:笹路正徳
4.「もしかして明日は冬」 詞:杉山政美 曲:和泉常寛 編:笹路正徳
5.「夜よさようなら−UNE SIMPLE MELODIE−」
詞:Michel Polnareff・杉山政美 曲:Michel Polnareff 編:笹路正徳
6.「いってモナムール−LA MAISON EST EN PUINE−」
詞:Michel Delpech・Jean Michel Rivat・杉山政美 曲:Claude Morgan
編:笹路正徳
7.「ホントに愛してる−LES DIVORCES−」
詞:Michel Delpech・Jean Michel Rivat・杉山政美 曲:Roland Vincent
編:笹路正徳
8.「真夜中の電話」 詞:杉山政美 曲・編:笹路正徳
9.「砂の舟」 詞:杉山政美 曲:滝沢洋一 編:笹路正徳
<support musician>
土方隆行:guitar
渡辺モリオ:bass
山木秀夫:drums・syndrums
笹路正徳:keyboards・marimba・vibraphone・recorder
宮城純子:acoustic piano
小野誠彦:charango・pan pipe
清水靖晃:tenor sax・clarinet・bass clarinet
中川昌三:flute
多グループ:strings section
加藤グループ:strings section
produced by 岡田健
engineered by 小野誠彦
● マライアのバックアップと小野誠彦の変幻自在のミックスで電子的な実験も兼ね備えたオシャレかつストレンジな作品
1981年アルバム「U・TA・GE」でデビューした清野由美は、井上鑑をアレンジャーに迎えパラシュートの面々をバックに従えた「寺尾聰」プロダクションでいかにも80年代初頭らしいニューミュージックスタイルの良曲を歌い、同年リリースの2ndアルバム「Natural Woman」ではさらに難波弘之や山本達彦、松岡直也も参加して、まさに全盛期とも言えるシティポップブームに乗ったシンガーとして微かな足跡を残しましたが、マイナーな知名度に留まってしまいます。このような境遇のシンガーの3枚目は文字通り勝負作となるわけでして、大胆な方向転換を余儀なくされた清野制作チームはサウンドプロデュースに亜蘭知子や村田有美といった初期ビーイングアーティストを実験的かつ野心的な作風に落とし込んだ制作集団・清水靖晃や笹路正徳らを擁するマライアに白羽の矢を立て、ガラリと様相を変えたチャレンジングな作品を仕上げてまいりました。それが83年リリースの本作です。
この83年当時はジャズ&フュージョンもしくはプログレッシブロックのイメージであったマライアが、テクノ・ニューウェーブに接近したラストアルバム「うたかたの日々」を制作していた時期に重なっており、本作も彼らの当時の作風が還元されたかのようなエレクトロニクスと変化球気味のストレンジなサウンドを志向しています。実に4曲ものフレンチPOPSの名曲をリメイクしていることから、全体的な印象としては実験的なエレクトロ風味のプログレフレンチポップとなりますが、それだけでは語ることができないような音作りへのこだわりが随所に感じられます。全ての楽曲のアレンジを笹路正徳が務めていますが、80年代前半の笹路サウンドは特にシンセサウンドにおいても挑戦的な作風のものが多く、本作でも「シェルの涙−CHEZ LAURETTE−」「もしかして明日は冬」「ホントに愛してる−LES DIVORCES−」あたりはフレージング、リズム構築、音色選択など非常に攻めたサウンドメイクに徹しています(もちろん「傾く」や「真夜中の電話」といった正統派のシティポップも継承していますが)。もちろん清水靖晃や土方隆行、渡辺モリオに山木秀夫といったマライアメンバー達の進取に富んだ演奏力の賜物でもありますが、それらをまとめ上げ音響面でも斬新な音像を作り上げた若き日の小野誠彦の見事なミキシングの貢献も非常に大きい作品です。清野自身は本作の強い個性を発するキャッチーとは言えない楽曲とよく闘ってはいますが、流石にシンガーとしての個性を発揮することはかなわず、本作をもって彼女名義の作品は終焉を迎えることとなりますが、本作が放つ一種異様なクオリティは80年代前半のチャレンジングな作品群の1つとして語り継がれていくべきと言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「シェルの涙−CHEZ LAURETTE−」
Michel DelpechのフレンチPOPSスタンダード「Chez Laurette」の斬新なリメイク。山木秀夫がシンセドラムを叩きまくりながら小野誠彦がリバーブとディレイを駆使したダブミックスで幻惑サウンドを演出、アヴァンギャルド性が強く出た実験作です。
・「傾く」
前曲とは打って変わって人懐っこいシティポップナンバー。多彩な音色とフレーズで惑わす笹路正徳のシンセプレイと清水靖晃の情熱的なサックスソロで盛り上げます。淡々と正確にリズムを刻むドラミングもこの楽曲のポイントの1つです。
・「もしかして明日は冬」
比較的地味な作風の哀愁歌謡ですが、この楽曲でも山木のシンセドラムが柔らかで軽やかなタムプレイで楽曲の基軸となり、特にサビ以外ではリバースサウンドでプログレッシブな不思議空間を作り出します。そんな野心的な作風でもサビではしっかり歌謡曲している部分に、そのギリギリを突く攻め具合が偲ばれます。ラストの「う〜〜〜」の切り取り方のセンスが興味深いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (多彩な音色によるサウンドを斬新なミックスで演出)
・メロディ ★ (明らかにフレンチカバーよりオリジナル楽曲が良い)
・リズム ★★★ (スネアにかけられるディレイのタイミングが秀逸)
・曲構成 ★ (欲を言えば全てオリジナル楽曲で挑戦して欲しかった)
・個性 ★★ (大幅なサウンド転換で従来のファンも戸惑いを隠せず)
総合評点: 7点
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