「DEMENTOS」 清水靖晃
「DEMENTOS」(1988 ビクター)
清水靖晃:vocals・soprano sax・alto sax・tenor sax・keyboards

1.「青い背広」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
2.「デメントス」 詞・曲・編:清水靖晃
3.「シュリーク夫人」 曲・編:清水靖晃
4.「普通の日」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
5.「絶句」 曲・編:清水靖晃
6.「私は愛に死ぬ」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
7.「秘書の友達」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
8.「大好きなアナコンダ」 曲・編:清水靖晃
9.「ソルデロック」 詞:清水三恵子 曲・編:清水靖晃
10.「さてと」 曲・編:清水靖晃
<support musician>
清水三恵子:vocals
David Cunningham:guitar
Dominique Brethes:guitar
Manny Elias:drums
Pandit Dinesh:percussion
Bernadette Mordi:backing vocals
Mal Henry:backing vocals
produced by 清水靖晃
mixing engineered by David Load
recording engineered by Dominique Brethes
● サックスプレイのみならずクリエイターとしての才能を存分に見せつける無国籍エレクトリックPOPSの名盤
プログレッシブな音楽的思想を持つ伝説的グループ、マライアの中心的メンバーであった気鋭のサックスプレイヤー清水靖晃は、マライア在籍時から「愛究壱百七拾九」「案山子」といったサックスを使用した音楽的表現にとどまらない作風で底知れなさを垣間見せていましたが、マライア解散後は当然のようにCM音楽分野にも進出し、サックスプレイを中心にその才能は広く知られていくようになりました。そして80年代後半はヨーロッパへと活動の拠点を移し、現地ミュージシャンとのコラボレーションによる作品を次々と生み出していくことになります。その皮切りとしてリリースされた1987年の「SUBLIMINAL」は、来るべきワールドミュージックムーブメントを想起させるような無国籍風なサウンドをエレクトリックな手法に落とし込んだ個性の際立つ作品で、しかも歌モノとして成立したポップメイカーとしてもそのセンスを発揮すると、翌88年には貪欲にも第2弾である本作を続けてリリースしていきます。
しかしながらパリ録音であった本作では前作の共同プロデューサーであったMartin Messonierからは離れ、レコーディングスタジオをロンドンに移した上で、日本から呼び寄せた自身の妹である清水三恵子のヴォーカルをフィーチャーしたり、The Flying LizardsのDavid Cunninghamをゲストに迎え各収録曲のイントロを担当させるなど、カラーとすれば前作とは非常に異なる部分を感じさせます。サウンド面でも非常にクールで微に細を穿つというか、こだわりを非常に感じさせる神経質な音づくりで高いクオリティを保証してくれます。印象的なのは本作より参加した清水三恵子のコーラスワークで、彼女のエスニックな声質は楽曲の無国籍ぶりに拍車をかけることに成功しています。そしてやはり個人的に喜ばしいのはエレクトリック度がさらに上がっていることで、楽曲としての性質はワールドミュージックな雰囲気を漂わせているのですが、その楽曲を形成する1つ1つのサウンドはシンセサイザーやサンプラー、そして効果的なミキシングによるエフェクトによって計算高く作り込まれており、歌モノにしてもインストゥルメンタルにしてもその遊び心溢れるサウンドメイクは、清水靖晃本人の世界に通用するセンスが成せる業と言えるでしょう。それにしても本作は彼がサックスプレイヤーであることを忘れさせるほど、サックスはふんだんに使用されてはいるもののサウンド全体に溶け込んでしまっているため、決してサックスプレイヤーズアルバムではなく、1人のサウンドクリエイターがその全方向的音楽的センスを頼りに作り上げた名盤という評価の方が正しいと言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「青い背広」
鮮烈なシンセブラスからスタートするオープニングチューン。何の抵抗感もなく日本語の歌が始まるところに驚いてはいけません。当然のことながらサウンドにおける細部にわたる「詰め」が素晴らしく、程よい緊張感を生み出しています。
・「秘書の友達」
浮遊感のあるイントロとは対照的に重厚感のあるドラムが引っ張っていくエクスペリメンタルポップス。三恵子ヴォーカルのエスニカンぶりは尋常ではなく、それに伴うシンセブラスなども含めて、とにかく全体的に「圧」がスゴいです。
・「ソルデロック」
これも非常に強烈な音圧が施されたドラムが特徴のエレクトリックチューン。ザップ音によるシーケンスが隠されていたり、サンプリングボイスが捻じ曲げていたり、ギターも音響重視、エレクトリカルな処理のされた渋さ満点のテナーサックスソロ等、ハイライトが幾つもあって飽きさせません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (多彩な音色と冒険的な仕掛けで貫禄とセンスを見せつける)
・メロディ ★ (歌モノとは言えども流石に分かりやすさまでは獲得できず)
・リズム ★★★ (安定感たっぷりのグルーヴに音色も豊かで深みを感じる)
・曲構成 ★★ (効果的にインストを入れながらも飽きさせることもない)
・個性 ★★★ (88年特有の過剰さを備えながらワールド音楽の隆盛を予言)
総合評点: 7点
清水靖晃:vocals・soprano sax・alto sax・tenor sax・keyboards

1.「青い背広」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
2.「デメントス」 詞・曲・編:清水靖晃
3.「シュリーク夫人」 曲・編:清水靖晃
4.「普通の日」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
5.「絶句」 曲・編:清水靖晃
6.「私は愛に死ぬ」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
7.「秘書の友達」 詞:清水靖晃・清水三恵子 曲・編:清水靖晃
8.「大好きなアナコンダ」 曲・編:清水靖晃
9.「ソルデロック」 詞:清水三恵子 曲・編:清水靖晃
10.「さてと」 曲・編:清水靖晃
<support musician>
清水三恵子:vocals
David Cunningham:guitar
Dominique Brethes:guitar
Manny Elias:drums
Pandit Dinesh:percussion
Bernadette Mordi:backing vocals
Mal Henry:backing vocals
produced by 清水靖晃
mixing engineered by David Load
recording engineered by Dominique Brethes
● サックスプレイのみならずクリエイターとしての才能を存分に見せつける無国籍エレクトリックPOPSの名盤
プログレッシブな音楽的思想を持つ伝説的グループ、マライアの中心的メンバーであった気鋭のサックスプレイヤー清水靖晃は、マライア在籍時から「愛究壱百七拾九」「案山子」といったサックスを使用した音楽的表現にとどまらない作風で底知れなさを垣間見せていましたが、マライア解散後は当然のようにCM音楽分野にも進出し、サックスプレイを中心にその才能は広く知られていくようになりました。そして80年代後半はヨーロッパへと活動の拠点を移し、現地ミュージシャンとのコラボレーションによる作品を次々と生み出していくことになります。その皮切りとしてリリースされた1987年の「SUBLIMINAL」は、来るべきワールドミュージックムーブメントを想起させるような無国籍風なサウンドをエレクトリックな手法に落とし込んだ個性の際立つ作品で、しかも歌モノとして成立したポップメイカーとしてもそのセンスを発揮すると、翌88年には貪欲にも第2弾である本作を続けてリリースしていきます。
しかしながらパリ録音であった本作では前作の共同プロデューサーであったMartin Messonierからは離れ、レコーディングスタジオをロンドンに移した上で、日本から呼び寄せた自身の妹である清水三恵子のヴォーカルをフィーチャーしたり、The Flying LizardsのDavid Cunninghamをゲストに迎え各収録曲のイントロを担当させるなど、カラーとすれば前作とは非常に異なる部分を感じさせます。サウンド面でも非常にクールで微に細を穿つというか、こだわりを非常に感じさせる神経質な音づくりで高いクオリティを保証してくれます。印象的なのは本作より参加した清水三恵子のコーラスワークで、彼女のエスニックな声質は楽曲の無国籍ぶりに拍車をかけることに成功しています。そしてやはり個人的に喜ばしいのはエレクトリック度がさらに上がっていることで、楽曲としての性質はワールドミュージックな雰囲気を漂わせているのですが、その楽曲を形成する1つ1つのサウンドはシンセサイザーやサンプラー、そして効果的なミキシングによるエフェクトによって計算高く作り込まれており、歌モノにしてもインストゥルメンタルにしてもその遊び心溢れるサウンドメイクは、清水靖晃本人の世界に通用するセンスが成せる業と言えるでしょう。それにしても本作は彼がサックスプレイヤーであることを忘れさせるほど、サックスはふんだんに使用されてはいるもののサウンド全体に溶け込んでしまっているため、決してサックスプレイヤーズアルバムではなく、1人のサウンドクリエイターがその全方向的音楽的センスを頼りに作り上げた名盤という評価の方が正しいと言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「青い背広」
鮮烈なシンセブラスからスタートするオープニングチューン。何の抵抗感もなく日本語の歌が始まるところに驚いてはいけません。当然のことながらサウンドにおける細部にわたる「詰め」が素晴らしく、程よい緊張感を生み出しています。
・「秘書の友達」
浮遊感のあるイントロとは対照的に重厚感のあるドラムが引っ張っていくエクスペリメンタルポップス。三恵子ヴォーカルのエスニカンぶりは尋常ではなく、それに伴うシンセブラスなども含めて、とにかく全体的に「圧」がスゴいです。
・「ソルデロック」
これも非常に強烈な音圧が施されたドラムが特徴のエレクトリックチューン。ザップ音によるシーケンスが隠されていたり、サンプリングボイスが捻じ曲げていたり、ギターも音響重視、エレクトリカルな処理のされた渋さ満点のテナーサックスソロ等、ハイライトが幾つもあって飽きさせません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (多彩な音色と冒険的な仕掛けで貫禄とセンスを見せつける)
・メロディ ★ (歌モノとは言えども流石に分かりやすさまでは獲得できず)
・リズム ★★★ (安定感たっぷりのグルーヴに音色も豊かで深みを感じる)
・曲構成 ★★ (効果的にインストを入れながらも飽きさせることもない)
・個性 ★★★ (88年特有の過剰さを備えながらワールド音楽の隆盛を予言)
総合評点: 7点
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