「ソラヲト」 久遠みへき
「ソラヲト」 (2014 自主制作)
久遠みへき:vocal・all instruments

1.「Blue World」 詞・曲・編:mihequi
2.「Heavenly blue」 詞・曲・編:mihequi
3.「花咲く惑星」 詞・曲・編:mihequi
4.「KaKeRa」 詞・曲・編:mihequi
5.「きみと僕の宇宙で」 詞・曲:mihequi 編:PROTOTYPE_AI
6.「ソラオト〜宙音〜」 詞:mihequi 曲:Aero Finback 編:伊藤@hertzmix
<support musician>
ficuslot:guitar
produced by 久遠みへき
engineered by mihequi
● 宇宙大好きクリエイターのスペイシーなレトロフューチャーシンセサウンドにウィスパーボイスを乗せた歌モノプロジェクトとしての1stアルバム
1990年代に少女漫画家・いづみひろのとして商業誌デビュー、様々なペンネームを用いながら同人誌を中心に活動していた彼女は、2006年にTERRARIUMというPOPSユニットでみへきと名乗り音楽活動を開始しますが、この異色のキャリアを持つ彼女の音楽人生は一過性のものではなく、ここから長い道のりが始まります。TERRARIUMは2007年に終了しますが、2009年からはmihequiとしてのソロプロジェクト・Prismatic Polynicaとしてスペイシーなテクノインスト作品を6枚もリリースしていきます。このプロジェクトは2014年に終了しますが、翌年に始まったmihequiとしてのソロワークも結局は宇宙シリーズと銘打たれたスペイシーテクノインストが基本となっており、その違いを判別することは難しいのですが、彼女はとにかく宇宙、スペース、コズミック、プラネット・・・シンセサイザーのプログラミングによるスペイシーサウンドが大好きで大好きでたまらないといった音楽性ですので、もはやその歩みを止めることはできないと思われます。しかし彼女はそのようなソロワークスの裏で、歌モノにも挑戦をし始めることになります。2012年からはKANADEやトキノマキナといったテクノユニットで活動していたPROTOTYPE_AIとのユニット・姫と博士、2015年にはボーカリストyuhとのRoséという派生ユニットを突発的に開始しながら、2013年に歌モノに特化した名義「久遠みへき」としてシングル「Prismatic」でシンガーデビュー、翌年には6曲入りのアルバムをリリースするに至る、という経緯となっております。
歌モノとはいえ宇宙大好き久遠みへきの作品ですから、当然本作も徹頭徹尾スペイシー、どこまでもエレクトリック、空間を埋めまくるシンセサイザー、何かに急き立てられるようなシーケンスまみれのコズミックテクノポップが展開されていきます。しかし本作は歌モノですので、どのような声質の歌がこの手のサウンドに乗っていくかが関心事となるわけですが、彼女の声質はとてつもなくキュートなウイスパー系で、見事に情報過多なシンセサウンドに歌が一体化しており、歌モノとして歌そのものが主張することなく、サウンドの一部として機能させるタイプと言ってよいでしょう。それにしてもサウンドにしても歌詞にしてもどこまでいってもスペイシーワールド一直線なので、確固たる世界観を持つ反面意外な展開は期待できない作風ではありますが、とにかく宇宙サウンドを構築するシンセプログラミングには豊富な経験による匠の技を会得しているためか、既にベテランの風格さえ漂っています。中森明菜「不思議」並みに歌に「壁」を作るミックスになっているため歌モノとして聴くには好き嫌いが分かれるところであると思われますが、ガッツリと宇宙空間に浸りたいリスナーにはお薦めの作品です。
<Favorite Songs>
・「Blue World」
mihequiとしてのテクノクリエイター活動を生かしたサウンドメイクが麗しいスペイシーテクノポップ。とにかくスペイシーなシーケンスを詰め込みに詰め込んだシンセサイザーサウンドにウイスパー系ボーカルが埋もれそうになるかならないかのギリギリの線を狙う強かさがこの楽曲をより魅力的なものにしています。
・「KaKeRa」
深いリバーブをウイスパーボイスにかけて非現実感を追求したサウンドのエレクトロニカPOPS。大げさなほどの音階によるウイスパーを引き立たせるために、音数は少ないながらもリズムは繊細でノイジーな処理がなされ、シーケンスを幾重に重ねることによるドリーミー感覚なサウンドに仕上げられています。
<評点>
・サウンド ★★★ (宇宙サウンドの構築にかけては一日の長あり)
・メロディ ★ (普段はインスト中心のためかリフレインが多い)
・リズム ★★ (細かなエフェクトを駆使した工夫が感じられる)
・曲構成 ★ (インスト作品の楽曲の多さを半分でも分けて欲しい)
・個性 ★ (歌モノである必要性があるかどうかが課題)
総合評点: 6点
久遠みへき:vocal・all instruments

1.「Blue World」 詞・曲・編:mihequi
2.「Heavenly blue」 詞・曲・編:mihequi
3.「花咲く惑星」 詞・曲・編:mihequi
4.「KaKeRa」 詞・曲・編:mihequi
5.「きみと僕の宇宙で」 詞・曲:mihequi 編:PROTOTYPE_AI
6.「ソラオト〜宙音〜」 詞:mihequi 曲:Aero Finback 編:伊藤@hertzmix
<support musician>
ficuslot:guitar
produced by 久遠みへき
engineered by mihequi
● 宇宙大好きクリエイターのスペイシーなレトロフューチャーシンセサウンドにウィスパーボイスを乗せた歌モノプロジェクトとしての1stアルバム
1990年代に少女漫画家・いづみひろのとして商業誌デビュー、様々なペンネームを用いながら同人誌を中心に活動していた彼女は、2006年にTERRARIUMというPOPSユニットでみへきと名乗り音楽活動を開始しますが、この異色のキャリアを持つ彼女の音楽人生は一過性のものではなく、ここから長い道のりが始まります。TERRARIUMは2007年に終了しますが、2009年からはmihequiとしてのソロプロジェクト・Prismatic Polynicaとしてスペイシーなテクノインスト作品を6枚もリリースしていきます。このプロジェクトは2014年に終了しますが、翌年に始まったmihequiとしてのソロワークも結局は宇宙シリーズと銘打たれたスペイシーテクノインストが基本となっており、その違いを判別することは難しいのですが、彼女はとにかく宇宙、スペース、コズミック、プラネット・・・シンセサイザーのプログラミングによるスペイシーサウンドが大好きで大好きでたまらないといった音楽性ですので、もはやその歩みを止めることはできないと思われます。しかし彼女はそのようなソロワークスの裏で、歌モノにも挑戦をし始めることになります。2012年からはKANADEやトキノマキナといったテクノユニットで活動していたPROTOTYPE_AIとのユニット・姫と博士、2015年にはボーカリストyuhとのRoséという派生ユニットを突発的に開始しながら、2013年に歌モノに特化した名義「久遠みへき」としてシングル「Prismatic」でシンガーデビュー、翌年には6曲入りのアルバムをリリースするに至る、という経緯となっております。
歌モノとはいえ宇宙大好き久遠みへきの作品ですから、当然本作も徹頭徹尾スペイシー、どこまでもエレクトリック、空間を埋めまくるシンセサイザー、何かに急き立てられるようなシーケンスまみれのコズミックテクノポップが展開されていきます。しかし本作は歌モノですので、どのような声質の歌がこの手のサウンドに乗っていくかが関心事となるわけですが、彼女の声質はとてつもなくキュートなウイスパー系で、見事に情報過多なシンセサウンドに歌が一体化しており、歌モノとして歌そのものが主張することなく、サウンドの一部として機能させるタイプと言ってよいでしょう。それにしてもサウンドにしても歌詞にしてもどこまでいってもスペイシーワールド一直線なので、確固たる世界観を持つ反面意外な展開は期待できない作風ではありますが、とにかく宇宙サウンドを構築するシンセプログラミングには豊富な経験による匠の技を会得しているためか、既にベテランの風格さえ漂っています。中森明菜「不思議」並みに歌に「壁」を作るミックスになっているため歌モノとして聴くには好き嫌いが分かれるところであると思われますが、ガッツリと宇宙空間に浸りたいリスナーにはお薦めの作品です。
<Favorite Songs>
・「Blue World」
mihequiとしてのテクノクリエイター活動を生かしたサウンドメイクが麗しいスペイシーテクノポップ。とにかくスペイシーなシーケンスを詰め込みに詰め込んだシンセサイザーサウンドにウイスパー系ボーカルが埋もれそうになるかならないかのギリギリの線を狙う強かさがこの楽曲をより魅力的なものにしています。
・「KaKeRa」
深いリバーブをウイスパーボイスにかけて非現実感を追求したサウンドのエレクトロニカPOPS。大げさなほどの音階によるウイスパーを引き立たせるために、音数は少ないながらもリズムは繊細でノイジーな処理がなされ、シーケンスを幾重に重ねることによるドリーミー感覚なサウンドに仕上げられています。
<評点>
・サウンド ★★★ (宇宙サウンドの構築にかけては一日の長あり)
・メロディ ★ (普段はインスト中心のためかリフレインが多い)
・リズム ★★ (細かなエフェクトを駆使した工夫が感じられる)
・曲構成 ★ (インスト作品の楽曲の多さを半分でも分けて欲しい)
・個性 ★ (歌モノである必要性があるかどうかが課題)
総合評点: 6点
「гипноза [Gipnoza]」 核P-MODEL
「гипноза [Gipnoza]」(2013 ケイオスユニオン)
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「гипноза (Gipnoza)」 詞・曲・編:平沢進
2.「それ行け! Halycon」 詞・曲・編:平沢進
3.「排時光」 詞・曲・編:平沢進
4.「白く巨大で」 詞・曲・編:平沢進
5.「Dμ34=不死」 詞・曲・編:平沢進
6.「Dr.древние (Dr.Drevniye)」 詞・曲・編:平沢進
7.「Parallel Kozak」 曲・編:平沢進
8.「Alarm」 詞・曲・編:平沢進
9.「109号区の氾濫」 詞・曲・編:平沢進
10.「Timelineの東」 詞・曲・編:平沢進
<support musician>
PEVO1号:guitar
田中靖美:keyboard solo
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 老いてもなお盛んな電子音の嵐!9年ぶりに放つソロP-MODELのブレない平沢テクノ全開の2ndアルバム
2004年に突然始まった解凍後のP-MODELのような攻撃的な電子音を撒き散らす作風の平沢進のアナザーユニット・核P-MODEL。その刺激的かつ衝撃的な電子音に彩られた1stアルバム「ビストロン」は、作風に落ち着きが見え始めていたソロワークスにマンネリズムを感じ始めていたリスナーにとっても好意的に迎えられた作品でした。その後も平沢はソロアルバムを3枚、アニメ映画「パプリカ」のオリジナルサウンドトラック、そしてソロ活動20周年・P-MODEL30周年記念プロジェクト「凝集する過去 還弦主義8760時間」に関連するリメイクアルバム等、精力的に作品を発表し続けながら、インタラクティブライブを定期的に開催するなど、その活動ペースは盛んになるばかりでした。そして周年行事が落ち着いた2013年、9年ぶりにまさかの核P-MODELが再始動、本作のリリースに至るというわけです。
タイトルチューンを真っ先に配置しスタートからパワー全開で電子音をぶちまけてきますが、その勢いは3曲目までとどまることを知りません。高速シーケンスと平沢印のストレンジな電子音で埋め尽くす飽和状態のサウンドは健在です。そして本作のポイントは彼の最近の作品としては珍しいゲストプレイヤーの参加で、初期P-MODELの盟友・田中靖美とPEVO星人のギタリスト・pevo1号という、新旧の相棒が参加しているというサービス精神が嬉しい部分です。さて、平沢式テクノポップの魅力の1つといえば、その意外性たっぷりのフレージングにあると思われますが、本作でも「それ行け! Halycon」に代表される音階の幅を可能な限り広げながら行き来するフレーズ構築が、彼が生み出す音楽のストレンジ性を増幅させているように感じます。あの変態的なギターソロにおいても高低を短いフレーズで行き来させることで、独特のサイバー感覚を演出していると思われます。そんな彼の得意技は本作でも存分に発揮されており、加えて剥き出しの電子音を歪ませたり高速で推移させたりするものですから、提供されるサウンドは刺激的以外の何物でもありません。また驚くべきはその高低自在のフレージングを自身のボーカルにも適用してしまうことです。これは相当音域に幅がないとできない芸当ですし、しかも当時還暦間近であったことを考えますと、その衰えない歌唱には脱帽せざるを得ないでしょう。この世代でいまだにそのようなショッキングな電子音をバックに朗々と歌い上げるアーティストは皆無であり、それが彼を必要以上に神格化させる要因の1つではないかと思います。しかしさらに驚かされるのは、2020年の現在であっても彼の音楽性やパフォーマンスが全く衰えないということでしょう。この不世出のアーティストにはこれからも目が離せない状況が続きそうです。
<Favorite Songs>
・「それ行け! Halycon」
忙しないリズムと素っ頓狂なメインフレーズが初期P-MODELのオマージュを感じさせるエレクトロスカチューン。それもそのはず、初期Pの盟友でありサウンドの代名詞でもあったキーボーディスト・田中靖美がキーボードで参加、衰えを知らない激しいソロプレイで古くからのリスナーの感涙を呼びます。。
・「白く巨大で」
ローファイなリズムと雄大なギターによるメインフレーズが開放的な本作においても完成度の高さは随一のミディアムナンバー。どこを切り取ってもいわゆる「聴かせる」楽曲であるのに、細かく刻まれていく電子ノイズや一般的に使用されないような大げさなギミック電子音で埋め尽くす「バラード」です。ギターソロもとにかく美しいです。
・「Dμ34=不死」
不穏な空気満々の暗黒SFエレクトロチューン。特に2周目から現れてくるグチュグチュした足下を這いずり回るようなシーケンスがとにかく気持ち悪いのですが、サビでの徐々に低下していくランダムフレーズがなんとも硬派です。この楽曲ではアルペジオ大活躍で、音色に酸味を加えながら変化させていく高速アルペジオフレーズの細やかさには流石の年季を感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (誰にも真似はできない恐るべき電子音の構築術)
・メロディ ★★★ (前作よりもソロの作風に引っ張られたような渋み)
・リズム ★★★★ (ローファイな処理を施したスネアも活躍)
・曲構成 ★★★ (激しい楽曲が多い反面同タイプの曲も多いか)
・個性 ★★★★ (質うんぬんを超えて孤高の立ち位置に到達)
総合評点: 9点
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「гипноза (Gipnoza)」 詞・曲・編:平沢進
2.「それ行け! Halycon」 詞・曲・編:平沢進
3.「排時光」 詞・曲・編:平沢進
4.「白く巨大で」 詞・曲・編:平沢進
5.「Dμ34=不死」 詞・曲・編:平沢進
6.「Dr.древние (Dr.Drevniye)」 詞・曲・編:平沢進
7.「Parallel Kozak」 曲・編:平沢進
8.「Alarm」 詞・曲・編:平沢進
9.「109号区の氾濫」 詞・曲・編:平沢進
10.「Timelineの東」 詞・曲・編:平沢進
<support musician>
PEVO1号:guitar
田中靖美:keyboard solo
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 老いてもなお盛んな電子音の嵐!9年ぶりに放つソロP-MODELのブレない平沢テクノ全開の2ndアルバム
2004年に突然始まった解凍後のP-MODELのような攻撃的な電子音を撒き散らす作風の平沢進のアナザーユニット・核P-MODEL。その刺激的かつ衝撃的な電子音に彩られた1stアルバム「ビストロン」は、作風に落ち着きが見え始めていたソロワークスにマンネリズムを感じ始めていたリスナーにとっても好意的に迎えられた作品でした。その後も平沢はソロアルバムを3枚、アニメ映画「パプリカ」のオリジナルサウンドトラック、そしてソロ活動20周年・P-MODEL30周年記念プロジェクト「凝集する過去 還弦主義8760時間」に関連するリメイクアルバム等、精力的に作品を発表し続けながら、インタラクティブライブを定期的に開催するなど、その活動ペースは盛んになるばかりでした。そして周年行事が落ち着いた2013年、9年ぶりにまさかの核P-MODELが再始動、本作のリリースに至るというわけです。
タイトルチューンを真っ先に配置しスタートからパワー全開で電子音をぶちまけてきますが、その勢いは3曲目までとどまることを知りません。高速シーケンスと平沢印のストレンジな電子音で埋め尽くす飽和状態のサウンドは健在です。そして本作のポイントは彼の最近の作品としては珍しいゲストプレイヤーの参加で、初期P-MODELの盟友・田中靖美とPEVO星人のギタリスト・pevo1号という、新旧の相棒が参加しているというサービス精神が嬉しい部分です。さて、平沢式テクノポップの魅力の1つといえば、その意外性たっぷりのフレージングにあると思われますが、本作でも「それ行け! Halycon」に代表される音階の幅を可能な限り広げながら行き来するフレーズ構築が、彼が生み出す音楽のストレンジ性を増幅させているように感じます。あの変態的なギターソロにおいても高低を短いフレーズで行き来させることで、独特のサイバー感覚を演出していると思われます。そんな彼の得意技は本作でも存分に発揮されており、加えて剥き出しの電子音を歪ませたり高速で推移させたりするものですから、提供されるサウンドは刺激的以外の何物でもありません。また驚くべきはその高低自在のフレージングを自身のボーカルにも適用してしまうことです。これは相当音域に幅がないとできない芸当ですし、しかも当時還暦間近であったことを考えますと、その衰えない歌唱には脱帽せざるを得ないでしょう。この世代でいまだにそのようなショッキングな電子音をバックに朗々と歌い上げるアーティストは皆無であり、それが彼を必要以上に神格化させる要因の1つではないかと思います。しかしさらに驚かされるのは、2020年の現在であっても彼の音楽性やパフォーマンスが全く衰えないということでしょう。この不世出のアーティストにはこれからも目が離せない状況が続きそうです。
<Favorite Songs>
・「それ行け! Halycon」
忙しないリズムと素っ頓狂なメインフレーズが初期P-MODELのオマージュを感じさせるエレクトロスカチューン。それもそのはず、初期Pの盟友でありサウンドの代名詞でもあったキーボーディスト・田中靖美がキーボードで参加、衰えを知らない激しいソロプレイで古くからのリスナーの感涙を呼びます。。
・「白く巨大で」
ローファイなリズムと雄大なギターによるメインフレーズが開放的な本作においても完成度の高さは随一のミディアムナンバー。どこを切り取ってもいわゆる「聴かせる」楽曲であるのに、細かく刻まれていく電子ノイズや一般的に使用されないような大げさなギミック電子音で埋め尽くす「バラード」です。ギターソロもとにかく美しいです。
・「Dμ34=不死」
不穏な空気満々の暗黒SFエレクトロチューン。特に2周目から現れてくるグチュグチュした足下を這いずり回るようなシーケンスがとにかく気持ち悪いのですが、サビでの徐々に低下していくランダムフレーズがなんとも硬派です。この楽曲ではアルペジオ大活躍で、音色に酸味を加えながら変化させていく高速アルペジオフレーズの細やかさには流石の年季を感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (誰にも真似はできない恐るべき電子音の構築術)
・メロディ ★★★ (前作よりもソロの作風に引っ張られたような渋み)
・リズム ★★★★ (ローファイな処理を施したスネアも活躍)
・曲構成 ★★★ (激しい楽曲が多い反面同タイプの曲も多いか)
・個性 ★★★★ (質うんぬんを超えて孤高の立ち位置に到達)
総合評点: 9点
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