「SIZZLE」 小林健
「SIZZLE」(1987 日本コロムビア)
小林健:vocal・keyboards

1.「モナリサ・リップス」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:武部聡志
2.「It’s アメリカン・ドリームス」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:松下誠
3.「恋人にJealousy」 詞:小林健・栗原賢二 曲:小林健 編:鈴川真樹・小林健
4.「ボクサー」 詞:寺田恵子 曲:小林健 編:稲川徹・小林健
5.「ジュリア」 詞:小林健・栗原賢二 曲:小林健 編:小林武史
6.「WELCOME LADY」 詞:小林健・栗原賢二 曲:小林健 編:稲川徹・小林健
7.「ショッキング・ブルーナイト」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:鈴川真樹・小林健・小林武史
8.「左手のS・O・S〜土曜日のフィナーレ〜」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:松下誠
9.「CLOSE UP」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:武部聡志
10.「確かなものが何も・・・・」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:小林武史
<support musician>
鈴川真樹:guitar
松下誠:guitar
稲川徹:keyboards
小林武史:keyboards
武部聡志:keyboards
produced by 小林健
co-produced by 澤田シンジ・森川タクオ
engineered by 三浦克弘
● 多彩なアレンジャー陣を従えて楽曲のクオリティも格段に進化した80’sエレクトリックシティポップの金字塔的な2ndアルバム
YAMAHAが1986年に打ち出した時代を先取りしたアマチュアミュージシャンで実現可能な多重録音システムX'ART100。ミニ鍵盤のFMシンセサイザーDX-100を筆頭にリズムマシンやシーケンサー、4トラックMTR等をセット売りにしたこのプロジェクトは大胆にもCMも放映され、音楽制作の新時代到来を想起させました。このCMに堂々とモデル(その姿はまさに多重録音王子!)として登場しCMソングまで手がけたのが、同年颯爽とデビューを果たすシンガーソングライター小林健です。みずからキーボードを弾きながら作曲も手がける作家志向でもある彼は、前述のCMソング「君の瞳のブルー」を含む難波正司プロデュースによる1stアルバム「URBAN BLUE」をリリース、当時流行のシーケンスを多用したオシャレなシティポップを展開しましたが、群雄割拠のミドル80'sの音楽界にあって地味な印象だけを残してしまいました。そこで心機一転勝負の2ndアルバムを翌87年にリリースすることになります。
さて、本作の前作と比較しての特徴といえばもちろん外部アレンジャーの投入です。当時は斉藤由貴や種ともこ等先鋭的でテクニカルなアレンジで脚光を浴びていた武部聡志に「モナリサ・リップス」や「CLOSE UP」といったキラーチューンを任せ、元AB'Sの敏腕ギタリスト松下誠や当時はまだ新進気鋭のキーボーディストの1人であった小林武史、既にスタジオワークや編曲家として活動していた稲川徹、鈴川真樹(後にジョー・リノイエらとともにD-PROJECTを結成)が参加し、楽曲のクオリティは劇的に変化しました。また、作詞にも売れっ子の三浦徳子やSHOW-YAの寺田恵子を迎えるなど、本作に賭けた心意気が窺えます。そしてやはりなんといっても小林健自身は多重録音王子としての面目がありますから、シンセサウンドは当然のように多彩に装飾され、リズムは加工しまくりのビシバシドラムが施されるなど、前述のCMを知るリスナーの期待にもしっかり応えてくれます。確実に、そして明らかにあからさまにヒットを狙ってきた感のあるスーパーキラーチューン「モナリサ・リップス」の完成度は高く、プロモーション次第では違う未来もあったのかもしれませんが、それ以外にも「恋人にJealousy」や「ショッキング・ブルーナイト」といった鈴川アレンジのチャレンジングなサウンドや、バラード2曲を任せられた小林武史の若手らしからぬ安定感、そして決して没個性ではない小林健自身のメロディセンス等、随所に才気を感じさせる仕上がりなだけに一般的に余り認知されることなく表舞台から消えてしまったことは残念でなりません。しかし80年代後半にデビューしたソロアーティストにはこのような境遇の方々が多く存在していたのです。盤の流通も少なかったためか再発もされず中古市場でもプレミアがつくばかりのようですので、こういった作品こそSpotifyなどのストリーミング配信で日の目を見てもらいたいと願っています。
<Favorite Songs>
・「モナリサ・リップス」
武部聡志をアレンジャーに迎えた本作のリードチューン。どこまでも爽やかなサマーチューンですが、リズムもフレーズもどれをとってもエレクトリック。そして明らかにヒットを狙ったサビのフレーズの合間に入るチャラーン♪というギターワークはこれぞ80年代です。ラストの崩れそうなピアノソロも深い味わいです。
・「ショッキング・ブルーナイト」
インダストリアルなリズムで幕を開けるサスペンスタッチなマイナーポップチューン。鈴川&W小林のトリプルアレンジャー体制のこの楽曲ならではの音数の多さと多彩な仕掛けが魅力的です。柔らかい白玉パッドやローファイなシンセブラス、ギミカルなSEやテクニカルなギターソロなど、どれを取っても挑戦的です。
・「左手のS・O・S〜土曜日のフィナーレ〜」
コクのあるスラップとレゾナンスシンセベースのダブルスープで攻める松下誠アレンジの軽快なポップチューン。1周目の間奏でリズムが逆回転になるギミックが面白いです。キレのあるシンセブラスも良いアクセントになっています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (外部アレンジャーがこぞって気合の乗ったサウンドに)
・メロディ ★★★ (リゾート感のあるキャッチーなフレーズを連発)
・リズム ★★★ (力強さとギミックに満ちたレイト 80's特有の加工音)
・曲構成 ★★★ (アッパーチューンとバラードのバランスも良い)
・個性 ★★ (楽曲の完成度は高いがキャラが埋もれてしまった)
総合評点: 8点
まさかのプレミア価格がついておりますので、参考までに。
小林健:vocal・keyboards

1.「モナリサ・リップス」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:武部聡志
2.「It’s アメリカン・ドリームス」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:松下誠
3.「恋人にJealousy」 詞:小林健・栗原賢二 曲:小林健 編:鈴川真樹・小林健
4.「ボクサー」 詞:寺田恵子 曲:小林健 編:稲川徹・小林健
5.「ジュリア」 詞:小林健・栗原賢二 曲:小林健 編:小林武史
6.「WELCOME LADY」 詞:小林健・栗原賢二 曲:小林健 編:稲川徹・小林健
7.「ショッキング・ブルーナイト」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:鈴川真樹・小林健・小林武史
8.「左手のS・O・S〜土曜日のフィナーレ〜」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:松下誠
9.「CLOSE UP」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:武部聡志
10.「確かなものが何も・・・・」 詞:三浦徳子 曲:小林健 編:小林武史
<support musician>
鈴川真樹:guitar
松下誠:guitar
稲川徹:keyboards
小林武史:keyboards
武部聡志:keyboards
produced by 小林健
co-produced by 澤田シンジ・森川タクオ
engineered by 三浦克弘
● 多彩なアレンジャー陣を従えて楽曲のクオリティも格段に進化した80’sエレクトリックシティポップの金字塔的な2ndアルバム
YAMAHAが1986年に打ち出した時代を先取りしたアマチュアミュージシャンで実現可能な多重録音システムX'ART100。ミニ鍵盤のFMシンセサイザーDX-100を筆頭にリズムマシンやシーケンサー、4トラックMTR等をセット売りにしたこのプロジェクトは大胆にもCMも放映され、音楽制作の新時代到来を想起させました。このCMに堂々とモデル(その姿はまさに多重録音王子!)として登場しCMソングまで手がけたのが、同年颯爽とデビューを果たすシンガーソングライター小林健です。みずからキーボードを弾きながら作曲も手がける作家志向でもある彼は、前述のCMソング「君の瞳のブルー」を含む難波正司プロデュースによる1stアルバム「URBAN BLUE」をリリース、当時流行のシーケンスを多用したオシャレなシティポップを展開しましたが、群雄割拠のミドル80'sの音楽界にあって地味な印象だけを残してしまいました。そこで心機一転勝負の2ndアルバムを翌87年にリリースすることになります。
さて、本作の前作と比較しての特徴といえばもちろん外部アレンジャーの投入です。当時は斉藤由貴や種ともこ等先鋭的でテクニカルなアレンジで脚光を浴びていた武部聡志に「モナリサ・リップス」や「CLOSE UP」といったキラーチューンを任せ、元AB'Sの敏腕ギタリスト松下誠や当時はまだ新進気鋭のキーボーディストの1人であった小林武史、既にスタジオワークや編曲家として活動していた稲川徹、鈴川真樹(後にジョー・リノイエらとともにD-PROJECTを結成)が参加し、楽曲のクオリティは劇的に変化しました。また、作詞にも売れっ子の三浦徳子やSHOW-YAの寺田恵子を迎えるなど、本作に賭けた心意気が窺えます。そしてやはりなんといっても小林健自身は多重録音王子としての面目がありますから、シンセサウンドは当然のように多彩に装飾され、リズムは加工しまくりのビシバシドラムが施されるなど、前述のCMを知るリスナーの期待にもしっかり応えてくれます。確実に、そして明らかにあからさまにヒットを狙ってきた感のあるスーパーキラーチューン「モナリサ・リップス」の完成度は高く、プロモーション次第では違う未来もあったのかもしれませんが、それ以外にも「恋人にJealousy」や「ショッキング・ブルーナイト」といった鈴川アレンジのチャレンジングなサウンドや、バラード2曲を任せられた小林武史の若手らしからぬ安定感、そして決して没個性ではない小林健自身のメロディセンス等、随所に才気を感じさせる仕上がりなだけに一般的に余り認知されることなく表舞台から消えてしまったことは残念でなりません。しかし80年代後半にデビューしたソロアーティストにはこのような境遇の方々が多く存在していたのです。盤の流通も少なかったためか再発もされず中古市場でもプレミアがつくばかりのようですので、こういった作品こそSpotifyなどのストリーミング配信で日の目を見てもらいたいと願っています。
<Favorite Songs>
・「モナリサ・リップス」
武部聡志をアレンジャーに迎えた本作のリードチューン。どこまでも爽やかなサマーチューンですが、リズムもフレーズもどれをとってもエレクトリック。そして明らかにヒットを狙ったサビのフレーズの合間に入るチャラーン♪というギターワークはこれぞ80年代です。ラストの崩れそうなピアノソロも深い味わいです。
・「ショッキング・ブルーナイト」
インダストリアルなリズムで幕を開けるサスペンスタッチなマイナーポップチューン。鈴川&W小林のトリプルアレンジャー体制のこの楽曲ならではの音数の多さと多彩な仕掛けが魅力的です。柔らかい白玉パッドやローファイなシンセブラス、ギミカルなSEやテクニカルなギターソロなど、どれを取っても挑戦的です。
・「左手のS・O・S〜土曜日のフィナーレ〜」
コクのあるスラップとレゾナンスシンセベースのダブルスープで攻める松下誠アレンジの軽快なポップチューン。1周目の間奏でリズムが逆回転になるギミックが面白いです。キレのあるシンセブラスも良いアクセントになっています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (外部アレンジャーがこぞって気合の乗ったサウンドに)
・メロディ ★★★ (リゾート感のあるキャッチーなフレーズを連発)
・リズム ★★★ (力強さとギミックに満ちたレイト 80's特有の加工音)
・曲構成 ★★★ (アッパーチューンとバラードのバランスも良い)
・個性 ★★ (楽曲の完成度は高いがキャラが埋もれてしまった)
総合評点: 8点
まさかのプレミア価格がついておりますので、参考までに。
「three cheers for our side」 Flipper's Guitar
「three cheers for our side〜海へ行くつもりじゃなかった〜」(1989 ポリスター)
Flipper's Guitar

<members>
小山田圭吾:vocals・guitars・harmonica
小沢健二:guitars・vocals
吉田秀作:bass・voice
荒川康伸:drums・voice
井上由紀子:keyboards・voice
1.「Hello ハロー/いとこの来る日曜日」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
2.「Boys Fire the Tricot ボーイズ、トリコに火を放つ」
詞・曲:小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
3.「Joyride すてきなジョイライド」
詞・曲:小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
4.「Coffee-milk Crazy コーヒーミルク・クレイジー」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
5.「My Red Shoes Story 僕のレッド・シューズ物語」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
6.「Exotic Lollipop (and other red roses) 奇妙なロリポップ」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
7.「Happy Like a Honeybee ピクニックには早すぎる」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
8.「Samba Parade サンバ・パレードの華麗な噂が」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
9.「Sending to your Heart 恋してるとか好きだとか」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
10.「Goodbye, our Pastels Badges さようならパステルズ・バッヂ」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
11.「The Chime will Ring やがて鐘が鳴る」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
12.「Red Flag on the Gondola レッド・フラッグ」
詞:小沢健二 曲:traditional 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
<support musician>
仙波清彦:percussions
岸義和:flugel horn
後藤浩明:Scott Joplin styled-prepared piano
Motorbike Sisters:chorus
吉田仁:synthesizer operate
竹中仁見:computer programming
produced by 吉田仁・竹中仁見・牧村憲一
mixing engineered by 吉田仁・土井章嗣
recording engineered by 土井章嗣
● 80年代に別れを告げる珠玉のネオアコサウンド!美しいメロディラインで早くも才気を爆発させた5人組時代の1stアルバム
80年代後半から徐々に日本の音楽シーンにおいて新感覚派と思しきバンド達が活動を開始していました。田島貴男率いるレッドカーテン(後のOriginal Love)、SOLEILのプロデューサーとしてお馴染みのサリー久保田を中心としたザ・ファントムギフト、加藤ひさし&古市コータローらのザ・コレクターズ等のネオGSブームがインディーズ界隈で火がつくと、過剰なデジタルサウンドのカウンターとしてのUKアコースティック系を意識したバンドも芽吹いてきました。そんなシンク・カーネーションやデボネアといった美メロユニット達の代表的な存在が、5人組のネオアコバンド、ロリポップ・ソニックです。1988年に音楽雑誌「英国音楽」のソノシートに「Coffee-milk Crazy」「Exotic Lollipop」の2曲が収録されるなど密かに注目を浴びていた彼らのデモテープが、80年代前半にいち早く英国デビューを果たして話題となった男女デュオ、SALON MUSICの手に渡るとトントン拍子にメジャーデビューが決定、メジャー進出を機にFlipper's Guitar(フリッパーズ・ギター)とバンド名を変更し、翌89年に本作でデビューということになります。
本作に収録されている12曲はまさにネオアコースティックの殿堂ともいうべき美メロと爽やかさと甘いボーカルの嵐で、アルバム全体としても新世代の登場を否が応でも予感させる悔しいほどの完成度を誇っています。そんな才気溢れる彼らをバックアップしているのが、サウンドプロデュースを務め共同アレンジャーとして深く関わる吉田仁&竹中仁見のSALON MUSICのお2人。吉田がシンセサイザーをオペレートし、竹中がコンピューターでプログラミングする、いわゆるテクノロジー系は彼らに任せながらサウンドの輪郭に幅を持たせています。そのほかにも仙波清彦が全面的にパーカッションで花を添えていたり、80年代後半から音楽+美術の融合スタイルのユニット・レプリカでライブ活動を行いながら。音楽雑誌「TECHII」で執筆活動も行っていた作編曲家、後藤浩明が「Hello」でニューオリンズスタイルのプリペアードピアノで参加するなど、サポート勢は万全です。そのようなバックアップで制作されているため、ネオアコスタイルといっても音楽性は多岐にわたっており、本作では若さを全面に押し出したバンドサウンドではあるものの、小山田と井上は元々「Pee Wee '60s」というテクノユニットを出自としているためテクノロジーサウンドに抵抗なく、生音中心であるものの底にこだわりを見せない自由な作風を感じさせます。もちろん電子音としては控えめですが、「Exotic Lollipop」のような奇妙なイントロが許される土壌が既にあるからこそ、本作後に小山田と小沢の2人組となった彼らの音楽的センスの爆発が誘引されることになるのです。
<Favorite Songs>
・「Coffee-milk Crazy コーヒーミルク・クレイジー」
「英国音楽」ソノシートにも収録された涼やかなポップチューン。何と言ってもAメロから炸裂する美メロフレーズ。シンプルなシンセストリングスのサウンドとギターソロの絡み合いも瑞々しいネオアコの旨みを凝縮したような佳曲です。
・「Happy Like a Honeybee ピクニックには早すぎる」
小山田のハーモニカがノスタルジックな情景にマッチしたメロディアスナンバー。特にサビのメロディが絶品にもかかわらず、後半ではサビに転調を持ってくるなかなかのニクい技で、そこに以降につながるセンスの一端を垣間見せています。
・「Goodbye, our Pastels Badges さようならパステルズ・バッヂ」
ドリーミーなメロディラインでオリーブ少女のハートを見事にキャッチするスピード感のあるファンタジックチューン。この楽曲は特にBメロの夕焼けメロディが素晴らしいです。そして間奏の岸義和のflugel hornが大活躍で、この抑え気味な響きのフレーズの役割が非常に大きいと思います。
<評点>
・サウンド ★★ (ネオアコ主流ではあるが上積みを感じさせるサポート力)
・メロディ ★★★★ (天性のメロディセンスはマニアックな音楽的素養の賜物)
・リズム ★★ (バンド仕様と時代の手法でスネアもまだまだ力強い)
・曲構成 ★★ (音楽スタイルも多岐にわたり新人ながら安定感は抜群)
・個性 ★★ (新時代の到来を予感させる若々しさと瑞々しさの同居)
総合評点: 7点
Flipper's Guitar

<members>
小山田圭吾:vocals・guitars・harmonica
小沢健二:guitars・vocals
吉田秀作:bass・voice
荒川康伸:drums・voice
井上由紀子:keyboards・voice
1.「Hello ハロー/いとこの来る日曜日」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
2.「Boys Fire the Tricot ボーイズ、トリコに火を放つ」
詞・曲:小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
3.「Joyride すてきなジョイライド」
詞・曲:小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
4.「Coffee-milk Crazy コーヒーミルク・クレイジー」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
5.「My Red Shoes Story 僕のレッド・シューズ物語」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
6.「Exotic Lollipop (and other red roses) 奇妙なロリポップ」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
7.「Happy Like a Honeybee ピクニックには早すぎる」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
8.「Samba Parade サンバ・パレードの華麗な噂が」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
9.「Sending to your Heart 恋してるとか好きだとか」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
10.「Goodbye, our Pastels Badges さようならパステルズ・バッヂ」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
11.「The Chime will Ring やがて鐘が鳴る」
詞:小沢健二 曲:小山田圭吾・小沢健二 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
12.「Red Flag on the Gondola レッド・フラッグ」
詞:小沢健二 曲:traditional 編:Flipper's Guitar・吉田仁・竹中仁見
<support musician>
仙波清彦:percussions
岸義和:flugel horn
後藤浩明:Scott Joplin styled-prepared piano
Motorbike Sisters:chorus
吉田仁:synthesizer operate
竹中仁見:computer programming
produced by 吉田仁・竹中仁見・牧村憲一
mixing engineered by 吉田仁・土井章嗣
recording engineered by 土井章嗣
● 80年代に別れを告げる珠玉のネオアコサウンド!美しいメロディラインで早くも才気を爆発させた5人組時代の1stアルバム
80年代後半から徐々に日本の音楽シーンにおいて新感覚派と思しきバンド達が活動を開始していました。田島貴男率いるレッドカーテン(後のOriginal Love)、SOLEILのプロデューサーとしてお馴染みのサリー久保田を中心としたザ・ファントムギフト、加藤ひさし&古市コータローらのザ・コレクターズ等のネオGSブームがインディーズ界隈で火がつくと、過剰なデジタルサウンドのカウンターとしてのUKアコースティック系を意識したバンドも芽吹いてきました。そんなシンク・カーネーションやデボネアといった美メロユニット達の代表的な存在が、5人組のネオアコバンド、ロリポップ・ソニックです。1988年に音楽雑誌「英国音楽」のソノシートに「Coffee-milk Crazy」「Exotic Lollipop」の2曲が収録されるなど密かに注目を浴びていた彼らのデモテープが、80年代前半にいち早く英国デビューを果たして話題となった男女デュオ、SALON MUSICの手に渡るとトントン拍子にメジャーデビューが決定、メジャー進出を機にFlipper's Guitar(フリッパーズ・ギター)とバンド名を変更し、翌89年に本作でデビューということになります。
本作に収録されている12曲はまさにネオアコースティックの殿堂ともいうべき美メロと爽やかさと甘いボーカルの嵐で、アルバム全体としても新世代の登場を否が応でも予感させる悔しいほどの完成度を誇っています。そんな才気溢れる彼らをバックアップしているのが、サウンドプロデュースを務め共同アレンジャーとして深く関わる吉田仁&竹中仁見のSALON MUSICのお2人。吉田がシンセサイザーをオペレートし、竹中がコンピューターでプログラミングする、いわゆるテクノロジー系は彼らに任せながらサウンドの輪郭に幅を持たせています。そのほかにも仙波清彦が全面的にパーカッションで花を添えていたり、80年代後半から音楽+美術の融合スタイルのユニット・レプリカでライブ活動を行いながら。音楽雑誌「TECHII」で執筆活動も行っていた作編曲家、後藤浩明が「Hello」でニューオリンズスタイルのプリペアードピアノで参加するなど、サポート勢は万全です。そのようなバックアップで制作されているため、ネオアコスタイルといっても音楽性は多岐にわたっており、本作では若さを全面に押し出したバンドサウンドではあるものの、小山田と井上は元々「Pee Wee '60s」というテクノユニットを出自としているためテクノロジーサウンドに抵抗なく、生音中心であるものの底にこだわりを見せない自由な作風を感じさせます。もちろん電子音としては控えめですが、「Exotic Lollipop」のような奇妙なイントロが許される土壌が既にあるからこそ、本作後に小山田と小沢の2人組となった彼らの音楽的センスの爆発が誘引されることになるのです。
<Favorite Songs>
・「Coffee-milk Crazy コーヒーミルク・クレイジー」
「英国音楽」ソノシートにも収録された涼やかなポップチューン。何と言ってもAメロから炸裂する美メロフレーズ。シンプルなシンセストリングスのサウンドとギターソロの絡み合いも瑞々しいネオアコの旨みを凝縮したような佳曲です。
・「Happy Like a Honeybee ピクニックには早すぎる」
小山田のハーモニカがノスタルジックな情景にマッチしたメロディアスナンバー。特にサビのメロディが絶品にもかかわらず、後半ではサビに転調を持ってくるなかなかのニクい技で、そこに以降につながるセンスの一端を垣間見せています。
・「Goodbye, our Pastels Badges さようならパステルズ・バッヂ」
ドリーミーなメロディラインでオリーブ少女のハートを見事にキャッチするスピード感のあるファンタジックチューン。この楽曲は特にBメロの夕焼けメロディが素晴らしいです。そして間奏の岸義和のflugel hornが大活躍で、この抑え気味な響きのフレーズの役割が非常に大きいと思います。
<評点>
・サウンド ★★ (ネオアコ主流ではあるが上積みを感じさせるサポート力)
・メロディ ★★★★ (天性のメロディセンスはマニアックな音楽的素養の賜物)
・リズム ★★ (バンド仕様と時代の手法でスネアもまだまだ力強い)
・曲構成 ★★ (音楽スタイルも多岐にわたり新人ながら安定感は抜群)
・個性 ★★ (新時代の到来を予感させる若々しさと瑞々しさの同居)
総合評点: 7点
「light showers」 藤井隆
「light showers」(2017 よしもとR&C)
藤井隆:vocal・chorus

1.「Going back to myself〜再生のリズム〜」 詞・曲:EPO 編:冨田謙
2.「mode in the end」 詞:YOU 曲:RIS 編:冨田謙
3.「DARK NIGHT」 詞・曲:堂島孝平 編:冨田謙
4.「AIR LOVER」 詞・曲:ARAKI 編:冨田謙
5.「守ってみたい」 詞:藤井隆 曲・編:冨田謙
6.「くちばしは黄色」 詞・曲:シンリズム 編:冨田謙
7.「踊りたい」 詞・曲:澤部渡 編:冨田謙
8.「カサノバとエンジェル」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田謙
9.「ドライバー」 詞:藤井隆 曲:葉山拓亮 編:冨田謙
10.「プラスティック・スター」 詞:藤井隆 曲・編:冨田謙
<support musician>
冨田謙:all instruments・chorus
ARAKI:electric guitar
RIS:electric guitar・chorus
シンリズム:electric guitar・bass
堂島孝平:electric guitar
乙葉:chorus
澤部渡:chorus
produced by 冨田謙
engineered by 兼重哲哉
● 90年代深夜のCM音楽集というコンセプトのセンスが抜群!あの時代の空気感を忠実に再現しながらも現在進行形に耐え得る質の高い作品集
コメディアン・俳優でありながら3枚のフルアルバムをリリースし、それら全ての作品が高評価を獲得、底知れぬ音楽的才能を知らしめている藤井隆。2002年の「ロミオ道行」、2004年の「オールバイマイセルフ」の2枚の名盤と企画モノのアルバムを発表した00年代中盤以降は本業が忙しく音楽活動は沈滞化していましたが、その音楽センスを惜しんだ周囲からのコンタクトもあって、2014年に自身の音楽レーベルSLENDERIE RECORDを設立、2015年には西寺郷太と富田謙とのコラボによる久しぶりの3rdフルアルバム「Coffee Bar Cowboy」にて音楽活動を再開、健在ぶりをアピールします。そして2年後の2017年、4枚目のフルアルバムとなる本作のリリースとなるわけですが、この作品では一大プロジェクトによるコンセプトアルバムに挑戦します。「90年代CMソング集」という誰もがやりそうでできなかったコンセプトによる本作は、先行したプロモーションPVの緻密な作り込みが話題となりましたが、その期待に違わぬコンセプトに見合った、それでいて高い水準のクオリティをクリアした楽曲群が立ち並ぶ、まさに壮観な作品集に仕上がっています。
EPO、西寺郷太、葉山拓亮、堂島孝平といったベテランから、スカートの澤部渡や高校生デビューのスーパールーキー・シンリズムらの期待の新人アーティストまで、幅広い人脈を駆使して集められたそれぞれの「90年代CMソング」の楽曲達。これらを一手に引き受けてサウンドプロデュースを引き受けているのが、NONA REEVES仕事で安定感を発揮し藤井隆の作品も前作より全面的にバックアップしているサウンドクリエイター富田謙です。90年代といってもサウンドのタイプは90年代初頭と終盤では全く異なるものですが、そんな空気感の違いまで各楽曲に反映されているのは、その時代をリアルタイムに駆け抜けた富田の手腕による部分が非常に大きいと思います。EPOの手掛けた「Going back to myself〜再生のリズム〜」ではレイト90'sな哀愁ドラムンベースに仕上げられたり、RISの「mode in the end」は相川七瀬風な歌謡デジロック風味、シンリズムの「くちばしは黄色」は90年代中盤を過ぎたあたりのポスト渋谷系歌謡の味わい、先行配信の「プラスティック・スター」はスキーCMの疾走感を再現した歌モノテクノチューンというようにサウンド面では七変化の様相で、しかしながら空気感は明るさと暗さをまぜこぜにした90年代特有の寂寥感を漂わせていたりと、根幹となるコンセプチュアルな部分は守りながらも良質な楽曲を元に懐かしながら楽しく作り上げている様子が窺えます。とはいえ、それぞれが良質なCMソングクオリティといっても、飛び抜けて光を放つという楽曲は実は少なく、そんな鈍い光が安定して灯り続けているというある種の統一感までも90年代を彷彿とさせている作品でもありますが、そういった楽曲がアルバムとして集まってくると途端に眩い光を放つ、コンセプトアルバムとしてのメリットを極限までに生かした2017年を代表する名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「DARK NIGHT」
軽快なリズムとスマートなシンセワークが魅力のダンス歌謡POPSの真髄。軽やかなエレピプレイもオシャレですが、やはり真骨頂は心に突き刺さるサビのメロディライン。90年代特有の覚えやすいサビでインパクトを与える手法を忠実に再現しています。90'sCMソングではこの訴求力のあるサビが延々と繰り返されるわけです。
・「守ってみたい」
残響音長めにゲートを切ったスネアが耳をつくダンサブル歌謡チューン。秀逸なフレーズを連発するBメロからサビまでの流れが最高です。アタック感の強いデジタルピアノのソロも、そしてこの独特の切り貼り感のあるトラックもまさしく90年代の象徴です。
・「カサノバとエンジェル」
西寺郷太作編曲のキャッチーなサビとハウス調のリズムで攻めまくるダンサブルポップ。裏打ちのPCMピアノのフレーズやハイハットの長さとかスネアのスカスカ感などは90年代前半っぽいサウンド感覚です。後半のブレイク部分の奥行きの深さとギミックは流石の安定感のある仕事ぶりです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (富田謙流シンセアレンジは既に王道の域を達している)
・メロディ ★★★ (作家陣のキャッチーなサビ博覧会の様相を呈している)
・リズム ★★★ (90年代の激変するリズムの変遷を良く再現している)
・曲構成 ★★★★ (飛び抜けた曲は少ないことが逆に一体感を生む)
・個性 ★★★★★ (ここまでコンセプトを生かし切った作品も珍しい)
総合評点: 9点
藤井隆:vocal・chorus

1.「Going back to myself〜再生のリズム〜」 詞・曲:EPO 編:冨田謙
2.「mode in the end」 詞:YOU 曲:RIS 編:冨田謙
3.「DARK NIGHT」 詞・曲:堂島孝平 編:冨田謙
4.「AIR LOVER」 詞・曲:ARAKI 編:冨田謙
5.「守ってみたい」 詞:藤井隆 曲・編:冨田謙
6.「くちばしは黄色」 詞・曲:シンリズム 編:冨田謙
7.「踊りたい」 詞・曲:澤部渡 編:冨田謙
8.「カサノバとエンジェル」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田謙
9.「ドライバー」 詞:藤井隆 曲:葉山拓亮 編:冨田謙
10.「プラスティック・スター」 詞:藤井隆 曲・編:冨田謙
<support musician>
冨田謙:all instruments・chorus
ARAKI:electric guitar
RIS:electric guitar・chorus
シンリズム:electric guitar・bass
堂島孝平:electric guitar
乙葉:chorus
澤部渡:chorus
produced by 冨田謙
engineered by 兼重哲哉
● 90年代深夜のCM音楽集というコンセプトのセンスが抜群!あの時代の空気感を忠実に再現しながらも現在進行形に耐え得る質の高い作品集
コメディアン・俳優でありながら3枚のフルアルバムをリリースし、それら全ての作品が高評価を獲得、底知れぬ音楽的才能を知らしめている藤井隆。2002年の「ロミオ道行」、2004年の「オールバイマイセルフ」の2枚の名盤と企画モノのアルバムを発表した00年代中盤以降は本業が忙しく音楽活動は沈滞化していましたが、その音楽センスを惜しんだ周囲からのコンタクトもあって、2014年に自身の音楽レーベルSLENDERIE RECORDを設立、2015年には西寺郷太と富田謙とのコラボによる久しぶりの3rdフルアルバム「Coffee Bar Cowboy」にて音楽活動を再開、健在ぶりをアピールします。そして2年後の2017年、4枚目のフルアルバムとなる本作のリリースとなるわけですが、この作品では一大プロジェクトによるコンセプトアルバムに挑戦します。「90年代CMソング集」という誰もがやりそうでできなかったコンセプトによる本作は、先行したプロモーションPVの緻密な作り込みが話題となりましたが、その期待に違わぬコンセプトに見合った、それでいて高い水準のクオリティをクリアした楽曲群が立ち並ぶ、まさに壮観な作品集に仕上がっています。
EPO、西寺郷太、葉山拓亮、堂島孝平といったベテランから、スカートの澤部渡や高校生デビューのスーパールーキー・シンリズムらの期待の新人アーティストまで、幅広い人脈を駆使して集められたそれぞれの「90年代CMソング」の楽曲達。これらを一手に引き受けてサウンドプロデュースを引き受けているのが、NONA REEVES仕事で安定感を発揮し藤井隆の作品も前作より全面的にバックアップしているサウンドクリエイター富田謙です。90年代といってもサウンドのタイプは90年代初頭と終盤では全く異なるものですが、そんな空気感の違いまで各楽曲に反映されているのは、その時代をリアルタイムに駆け抜けた富田の手腕による部分が非常に大きいと思います。EPOの手掛けた「Going back to myself〜再生のリズム〜」ではレイト90'sな哀愁ドラムンベースに仕上げられたり、RISの「mode in the end」は相川七瀬風な歌謡デジロック風味、シンリズムの「くちばしは黄色」は90年代中盤を過ぎたあたりのポスト渋谷系歌謡の味わい、先行配信の「プラスティック・スター」はスキーCMの疾走感を再現した歌モノテクノチューンというようにサウンド面では七変化の様相で、しかしながら空気感は明るさと暗さをまぜこぜにした90年代特有の寂寥感を漂わせていたりと、根幹となるコンセプチュアルな部分は守りながらも良質な楽曲を元に懐かしながら楽しく作り上げている様子が窺えます。とはいえ、それぞれが良質なCMソングクオリティといっても、飛び抜けて光を放つという楽曲は実は少なく、そんな鈍い光が安定して灯り続けているというある種の統一感までも90年代を彷彿とさせている作品でもありますが、そういった楽曲がアルバムとして集まってくると途端に眩い光を放つ、コンセプトアルバムとしてのメリットを極限までに生かした2017年を代表する名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「DARK NIGHT」
軽快なリズムとスマートなシンセワークが魅力のダンス歌謡POPSの真髄。軽やかなエレピプレイもオシャレですが、やはり真骨頂は心に突き刺さるサビのメロディライン。90年代特有の覚えやすいサビでインパクトを与える手法を忠実に再現しています。90'sCMソングではこの訴求力のあるサビが延々と繰り返されるわけです。
・「守ってみたい」
残響音長めにゲートを切ったスネアが耳をつくダンサブル歌謡チューン。秀逸なフレーズを連発するBメロからサビまでの流れが最高です。アタック感の強いデジタルピアノのソロも、そしてこの独特の切り貼り感のあるトラックもまさしく90年代の象徴です。
・「カサノバとエンジェル」
西寺郷太作編曲のキャッチーなサビとハウス調のリズムで攻めまくるダンサブルポップ。裏打ちのPCMピアノのフレーズやハイハットの長さとかスネアのスカスカ感などは90年代前半っぽいサウンド感覚です。後半のブレイク部分の奥行きの深さとギミックは流石の安定感のある仕事ぶりです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (富田謙流シンセアレンジは既に王道の域を達している)
・メロディ ★★★ (作家陣のキャッチーなサビ博覧会の様相を呈している)
・リズム ★★★ (90年代の激変するリズムの変遷を良く再現している)
・曲構成 ★★★★ (飛び抜けた曲は少ないことが逆に一体感を生む)
・個性 ★★★★★ (ここまでコンセプトを生かし切った作品も珍しい)
総合評点: 9点
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