「恋のアルゴリズム」 クヌースP
「恋のアルゴリズム」(2011 KarenT)
クヌースP:all instruments

1.「恋のアルゴリズム(feat.初音ミク)」 詞・曲・編:クヌースP
2.「ワタシアナライザー(feat.初音ミク)」 詞・曲・編:クヌースP
3.「ワタシをアサインして(feat.初音ミク)」 詞:ちよこT 曲・編:クヌースP
4.「恋スル乙女ハ弾丸ライナー(feat.初音ミク)」 詞:ひなぁ 曲・編:クヌースP
5.「冬の魔法(feat.初音ミク)」 詞:ひなぁ 曲・編:クヌースP
6.「シークレットバレンタイン(feat.初音ミク)」 詞:ひなぁ 曲・編:クヌースP
produced by クヌースP
engineered by クヌースP
● 相性抜群のファンタジックなボーカロイドテクノポップを志向する世代を感じる音色使いが光るラブソング集
初音ミクに代表されるボーカロイドミュージックが全盛期を迎える予感をひしひしと感じていた2008年、アルゴリズム解析と呼ばれる分野を開拓した数学者、Donald Knuthの名前を拝借したボカロプロデューサー、クヌースPはニコニコ動画にて「恋のアルゴリズム」で活動を開始、古き良き80年代テクノポップフレーバー満載の麗しきシンセサイザーサウンドに乗った初音ミクボーカルは、本質的なテクノポップへの相性の良さを再確認させるもので、そのメロディ及びサウンドメイクの完成度の高さはハイレベルなものがありました。その後も彼は立て続けに楽曲を配信し完全にドリーミーテクノポップな方向性を確立すると、ボカロ全盛期の2011年には待ちに待った1stアルバムを配信アルバムとしてリリースすることになります。6曲入りの本作は彼の作品の中でも恋の歌を選曲されたもので、甘酸っぱさを表現しきった夢見心地なサウンドを基軸に緻密にプログラミングされた、まさに「The Art of Computer Programming 」な楽曲が多数収録された好作品となっています。
空間的なリバーブが施されたコーラスやサイン波が光るアルペジオシーケンス、そしてハートウォームなシンセパッドによるツボを心得たコードワークが支配するシンセの醍醐味をこれでもかと注ぎ込んだサウンドは、まさしく80's初期の直球近未来テクノポップです。そこにボーカロイド本来の無機質ボイスが絡むとその絶妙な相性が楽しめることになるわけですが、もともとボーカロイドテクノロジーはボーカリストの代替として開発されたマシンボイスの発展形とも言えますので、高速ロックやテクノ&ハウスなど様々なサウンドアプローチが行われていても、最も親和性を発揮するのは近未来感を醸し出すシンセポップ、中でも美しいメロディラインを軸としたわかりやすい楽曲構成とお約束の音色とプログラミングが施されたSFテクノ歌謡であると個人的には感じています。そういう意味では本作収録の6曲は全てがメロディ自体に主張があることがまず一番の武器であり、変なギミックはなくてもわかりやすさを第一として着眼点を置いた音色選択とフレージング、そして魅惑のコードワークが確実に備わっているので、その手のサウンドが好みのリスナーにとってはまず期待は裏切らないでしょうし、満足度の高い粒揃いの楽曲が楽しめることでしょう。
その後しばらく続くボカロブームの中、バラエティを広げた楽曲を収録したアルバム「文芸的音楽」をリリースしたクヌースPですが、2015年からはボカロ作品や同人音楽作品を扱う自主制作委託販売専門店「TOKYO FUTURE MUSIC」を池袋に開店・運営し、その手の好事家達の憩いの場として貴重な拠点となっています。
<Favorite Songs>
・「ワタシアナライザー(feat.初音ミク)」
無機質なウィスパーボイスでボカロを使用したドリーミーテクノポップ。重厚なシンセコーラスと16音符で正確に刻むシンセベースにまさしくテクノポップの美味しい部分を凝縮しています。アクセントとなるシンドラの減衰音の長さにこだわりも感じます。
・「シークレットバレンタイン(feat.初音ミク)」
宇宙のように壮大なサウンドメイクが魅力のバレンタインソング。この楽曲の魅力は何といってもSuper Saw的な分厚いパッドサウンドによる美しいコードワークでしょう。空間を埋めるこのシンセパッドのワクワク感たるや、ぴこぴこシーケンスと合わせてテクノポップファンとしてはヨダレものでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★ (レトロフューチャー全開の楽しい電子音満載)
・メロディ ★★★★ (起承転結のある構成と覚えやすさ重視のフレージング)
・リズム ★★ (特別派手な仕掛けはないがその軽さが逆に魅力的)
・曲構成 ★ (80'sな雰囲気満載なのでやはり10曲は欲しかった)
・個性 ★★ (ボーカロイドの声質を見事に生かしきった楽曲)
総合評点: 7点
クヌースP:all instruments

1.「恋のアルゴリズム(feat.初音ミク)」 詞・曲・編:クヌースP
2.「ワタシアナライザー(feat.初音ミク)」 詞・曲・編:クヌースP
3.「ワタシをアサインして(feat.初音ミク)」 詞:ちよこT 曲・編:クヌースP
4.「恋スル乙女ハ弾丸ライナー(feat.初音ミク)」 詞:ひなぁ 曲・編:クヌースP
5.「冬の魔法(feat.初音ミク)」 詞:ひなぁ 曲・編:クヌースP
6.「シークレットバレンタイン(feat.初音ミク)」 詞:ひなぁ 曲・編:クヌースP
produced by クヌースP
engineered by クヌースP
● 相性抜群のファンタジックなボーカロイドテクノポップを志向する世代を感じる音色使いが光るラブソング集
初音ミクに代表されるボーカロイドミュージックが全盛期を迎える予感をひしひしと感じていた2008年、アルゴリズム解析と呼ばれる分野を開拓した数学者、Donald Knuthの名前を拝借したボカロプロデューサー、クヌースPはニコニコ動画にて「恋のアルゴリズム」で活動を開始、古き良き80年代テクノポップフレーバー満載の麗しきシンセサイザーサウンドに乗った初音ミクボーカルは、本質的なテクノポップへの相性の良さを再確認させるもので、そのメロディ及びサウンドメイクの完成度の高さはハイレベルなものがありました。その後も彼は立て続けに楽曲を配信し完全にドリーミーテクノポップな方向性を確立すると、ボカロ全盛期の2011年には待ちに待った1stアルバムを配信アルバムとしてリリースすることになります。6曲入りの本作は彼の作品の中でも恋の歌を選曲されたもので、甘酸っぱさを表現しきった夢見心地なサウンドを基軸に緻密にプログラミングされた、まさに「The Art of Computer Programming 」な楽曲が多数収録された好作品となっています。
空間的なリバーブが施されたコーラスやサイン波が光るアルペジオシーケンス、そしてハートウォームなシンセパッドによるツボを心得たコードワークが支配するシンセの醍醐味をこれでもかと注ぎ込んだサウンドは、まさしく80's初期の直球近未来テクノポップです。そこにボーカロイド本来の無機質ボイスが絡むとその絶妙な相性が楽しめることになるわけですが、もともとボーカロイドテクノロジーはボーカリストの代替として開発されたマシンボイスの発展形とも言えますので、高速ロックやテクノ&ハウスなど様々なサウンドアプローチが行われていても、最も親和性を発揮するのは近未来感を醸し出すシンセポップ、中でも美しいメロディラインを軸としたわかりやすい楽曲構成とお約束の音色とプログラミングが施されたSFテクノ歌謡であると個人的には感じています。そういう意味では本作収録の6曲は全てがメロディ自体に主張があることがまず一番の武器であり、変なギミックはなくてもわかりやすさを第一として着眼点を置いた音色選択とフレージング、そして魅惑のコードワークが確実に備わっているので、その手のサウンドが好みのリスナーにとってはまず期待は裏切らないでしょうし、満足度の高い粒揃いの楽曲が楽しめることでしょう。
その後しばらく続くボカロブームの中、バラエティを広げた楽曲を収録したアルバム「文芸的音楽」をリリースしたクヌースPですが、2015年からはボカロ作品や同人音楽作品を扱う自主制作委託販売専門店「TOKYO FUTURE MUSIC」を池袋に開店・運営し、その手の好事家達の憩いの場として貴重な拠点となっています。
<Favorite Songs>
・「ワタシアナライザー(feat.初音ミク)」
無機質なウィスパーボイスでボカロを使用したドリーミーテクノポップ。重厚なシンセコーラスと16音符で正確に刻むシンセベースにまさしくテクノポップの美味しい部分を凝縮しています。アクセントとなるシンドラの減衰音の長さにこだわりも感じます。
・「シークレットバレンタイン(feat.初音ミク)」
宇宙のように壮大なサウンドメイクが魅力のバレンタインソング。この楽曲の魅力は何といってもSuper Saw的な分厚いパッドサウンドによる美しいコードワークでしょう。空間を埋めるこのシンセパッドのワクワク感たるや、ぴこぴこシーケンスと合わせてテクノポップファンとしてはヨダレものでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★ (レトロフューチャー全開の楽しい電子音満載)
・メロディ ★★★★ (起承転結のある構成と覚えやすさ重視のフレージング)
・リズム ★★ (特別派手な仕掛けはないがその軽さが逆に魅力的)
・曲構成 ★ (80'sな雰囲気満載なのでやはり10曲は欲しかった)
・個性 ★★ (ボーカロイドの声質を見事に生かしきった楽曲)
総合評点: 7点
「HELLO」 伊藤智恵理
「HELLO」(1987 CBSソニー)
伊藤智恵理:vocal

1.「Winter Wonderland」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:西平彰
2.「トキメキがいたくて」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:中村哲
3.「彼のダイアモンド」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
4.「ルージュ」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
5.「雨に消えたあいつ」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:新川博
6.「Merry Christmas」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:西平彰
7.「辞書の最後のページ」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
8.「大切な気持ち」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
9.「魔法をかけて」 詞:戸沢暢美 曲:吉実明宏 編:西平彰
10.「パラダイス・ウォーカー」 詞:戸沢暢美 曲:佐藤健 編:鷺巣詩郎
produced by 東良睦孝
mixing engineered by 関根辰夫
recording engineered by 関根辰夫・吉井聡・藤田浩
● 抜群の歌唱力と良質な楽曲ながら時代に埋もれてしまったアイドルソングの隠れたウィンターアルバム
ポスト松田聖子&中森明菜を巡る熾烈な争いやおニャン子クラブ旋風が吹き荒れる80年代後半のアイドルシーンには数多くのアイドル歌手がしのぎを削っていたわけですが、伊藤智恵理もその中の1人でした。酒井法子や立花理佐といった同期を向こうに回す彼女の武器は何といってもその歌唱力の高さで、1987年のデビューシングル「パラダイス・ウォーカー」の安定した音程とよく伸びる声質はとてもデビュー当初とは思えないほどの貫禄がありました。その後彼女は「トキメキがいたくて」「雨に消えたあいつ」と順調にリリースしていきますが、売り上げとしては失敗とまではいかないまでも一流とまではいかず、印象的な良曲を連発している実力派アイドルという微妙な立ち位置のまま、同年12月に1stアルバムである本作がリリースに至るというわけです。
さて、12月というリリース時期ですから当然のことながらウィンターシーズンを意識した楽曲をメインに据えていますが、全体的には彼女の歌唱力を生かした良曲を取り揃えており、そのクオリティの高さには驚かされます。作詞面では戸沢暢美が全曲を任せられ、作曲では岸正之と川上明彦が美メロを連発(特に岸正之の4曲は彼の仕事の中でも名曲揃い)、西平彰や大谷和夫といったキーボーディスト出身の売れっ子アレンジャーがサウンド面で彩りを加えた本作の収録曲はどの楽曲も隙がありません。そしてその隙のなさを演出しているのは伊藤智恵理本人の素晴らしい歌唱テクニックと、彼女の「歌」を下支えするための分厚いコーラスワークです。若さゆえの当時のアイドル特有の不安定さ(それも魅力の1つですが)を全く感じさせないサイボーグのような完璧な音程のコントロール術は彼女ならではのテクニックで、当然彼女のその魅力的な長所を生かすためのバックアップとして本気のコーラスで盛り立てていると思われますが、この戦略は作品の質を向上させる上で成功していると言えるでしょう。また、FM系シンセ特有のベル音色やストリングス&ブラスを多用していますが、これも彼女の歌唱力がアイドルとしては完成され過ぎているため、少しでも「若さ」を演出するためには必要であったのかもしれません。完全なバラードソングを収録しなかったのも重たくなり過ぎないようにする配慮を感じさせます。
結果として、アルバムとしての完成度は非常に満足できるもので、アイドルファンの中では名盤という評価も得られる形で長く愛される作品になりましたが、売り上げとしては結果的に報われることはなく、歌手活動は1990年で一旦終了、90年代後半にはChieriとして復活するも2000年にはタレント活動を終了します。しかし、彼女の歌唱力をこのまま埋もれさすにはもったいないので、美魔女活動も良いのですが、是非歌手活動の再開を望みたいです。
<Favorite Songs>
・「Winter Wonderland」
おしゃれなユーロビート調で幕を開けるダンサブルチューン。爽やかなシンセによるストリングス&ブラスが彩るサウンドメイクと、ゴージャスなコーラスワークが印象的ですが、それも主役の歌唱力があってこそ。ビシバシの打ち込みリズムもカッチリキマっています。
・「雨に消えたあいつ」
哀愁のコーラスワークからスタートする名曲3rdシングル。サウンドとしてはミディアム調のロックテイストですが、美しいメロディラインと安定感抜群の歌唱力が絶妙にマッチングした完成度の高い楽曲です。特に後半のサビの転調は白眉です。
・「魔法をかけて」
跳ねるリズムとカッティングギターが爽快感を演出する良質なポップチューン。特徴的な音色のシンセブラスの畳み掛けるようなフレージングが素晴らしいです。ガチガチのリズムとの掛け合いへのハマり具合も絶妙です。
<評点>
・サウンド ★★ (派手な仕掛けはないものの細部に気を遣った音作り)
・メロディ ★★★ (覚えやすく歌いやすい気持ちよく歌いたい人向け)
・リズム ★★ (打ち込みのマシナリーな部分が良い方向に作用)
・曲構成 ★★★ (要所にミディアム調の名曲を配し曲順の良さも光る)
・個性 ★★ (アイドルとして類い稀な歌唱力には圧倒される)
総合評点: 7点
伊藤智恵理:vocal

1.「Winter Wonderland」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:西平彰
2.「トキメキがいたくて」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:中村哲
3.「彼のダイアモンド」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
4.「ルージュ」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
5.「雨に消えたあいつ」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:新川博
6.「Merry Christmas」 詞:戸沢暢美 曲:岸正之 編:西平彰
7.「辞書の最後のページ」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
8.「大切な気持ち」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:大谷和夫
9.「魔法をかけて」 詞:戸沢暢美 曲:吉実明宏 編:西平彰
10.「パラダイス・ウォーカー」 詞:戸沢暢美 曲:佐藤健 編:鷺巣詩郎
produced by 東良睦孝
mixing engineered by 関根辰夫
recording engineered by 関根辰夫・吉井聡・藤田浩
● 抜群の歌唱力と良質な楽曲ながら時代に埋もれてしまったアイドルソングの隠れたウィンターアルバム
ポスト松田聖子&中森明菜を巡る熾烈な争いやおニャン子クラブ旋風が吹き荒れる80年代後半のアイドルシーンには数多くのアイドル歌手がしのぎを削っていたわけですが、伊藤智恵理もその中の1人でした。酒井法子や立花理佐といった同期を向こうに回す彼女の武器は何といってもその歌唱力の高さで、1987年のデビューシングル「パラダイス・ウォーカー」の安定した音程とよく伸びる声質はとてもデビュー当初とは思えないほどの貫禄がありました。その後彼女は「トキメキがいたくて」「雨に消えたあいつ」と順調にリリースしていきますが、売り上げとしては失敗とまではいかないまでも一流とまではいかず、印象的な良曲を連発している実力派アイドルという微妙な立ち位置のまま、同年12月に1stアルバムである本作がリリースに至るというわけです。
さて、12月というリリース時期ですから当然のことながらウィンターシーズンを意識した楽曲をメインに据えていますが、全体的には彼女の歌唱力を生かした良曲を取り揃えており、そのクオリティの高さには驚かされます。作詞面では戸沢暢美が全曲を任せられ、作曲では岸正之と川上明彦が美メロを連発(特に岸正之の4曲は彼の仕事の中でも名曲揃い)、西平彰や大谷和夫といったキーボーディスト出身の売れっ子アレンジャーがサウンド面で彩りを加えた本作の収録曲はどの楽曲も隙がありません。そしてその隙のなさを演出しているのは伊藤智恵理本人の素晴らしい歌唱テクニックと、彼女の「歌」を下支えするための分厚いコーラスワークです。若さゆえの当時のアイドル特有の不安定さ(それも魅力の1つですが)を全く感じさせないサイボーグのような完璧な音程のコントロール術は彼女ならではのテクニックで、当然彼女のその魅力的な長所を生かすためのバックアップとして本気のコーラスで盛り立てていると思われますが、この戦略は作品の質を向上させる上で成功していると言えるでしょう。また、FM系シンセ特有のベル音色やストリングス&ブラスを多用していますが、これも彼女の歌唱力がアイドルとしては完成され過ぎているため、少しでも「若さ」を演出するためには必要であったのかもしれません。完全なバラードソングを収録しなかったのも重たくなり過ぎないようにする配慮を感じさせます。
結果として、アルバムとしての完成度は非常に満足できるもので、アイドルファンの中では名盤という評価も得られる形で長く愛される作品になりましたが、売り上げとしては結果的に報われることはなく、歌手活動は1990年で一旦終了、90年代後半にはChieriとして復活するも2000年にはタレント活動を終了します。しかし、彼女の歌唱力をこのまま埋もれさすにはもったいないので、美魔女活動も良いのですが、是非歌手活動の再開を望みたいです。
<Favorite Songs>
・「Winter Wonderland」
おしゃれなユーロビート調で幕を開けるダンサブルチューン。爽やかなシンセによるストリングス&ブラスが彩るサウンドメイクと、ゴージャスなコーラスワークが印象的ですが、それも主役の歌唱力があってこそ。ビシバシの打ち込みリズムもカッチリキマっています。
・「雨に消えたあいつ」
哀愁のコーラスワークからスタートする名曲3rdシングル。サウンドとしてはミディアム調のロックテイストですが、美しいメロディラインと安定感抜群の歌唱力が絶妙にマッチングした完成度の高い楽曲です。特に後半のサビの転調は白眉です。
・「魔法をかけて」
跳ねるリズムとカッティングギターが爽快感を演出する良質なポップチューン。特徴的な音色のシンセブラスの畳み掛けるようなフレージングが素晴らしいです。ガチガチのリズムとの掛け合いへのハマり具合も絶妙です。
<評点>
・サウンド ★★ (派手な仕掛けはないものの細部に気を遣った音作り)
・メロディ ★★★ (覚えやすく歌いやすい気持ちよく歌いたい人向け)
・リズム ★★ (打ち込みのマシナリーな部分が良い方向に作用)
・曲構成 ★★★ (要所にミディアム調の名曲を配し曲順の良さも光る)
・個性 ★★ (アイドルとして類い稀な歌唱力には圧倒される)
総合評点: 7点
「BlueSongs」 KASHIF
「BlueSongs」(2017 ビルボード)
KASHIF:vocals・all instruments

1.「Breezing」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
2.「On and On」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
3.「The Night」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
4.「Clean Up」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
5.「Desparate Coffee」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
6.「PPP I Love You (Part2.1)」 詞・曲・編:KASHIF
7.「You」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
8.「Neverland」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
9.「Be Colorful」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
10.「B G M」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
11.「PPP I Love You (Part3)」 詞・曲・編:KASHIF
<support musician>
一十三十一:vocal・chorus
produced by KASHIF
engineered by KASHIF
mastering engineered by 砂原良徳
● 10年代型シティポップ界隈の最重要人物の1人が満を持して作り上げた細部にわたるサウンドデザインに圧倒されるソロデビュー作
横浜を中心として活動している音楽集団PanPacificPlayaにてギタリストとして活躍しているKASHIFは、10年代に入るとシティポップ再評価ムーブメントの波に乗って、80'sな心を理解する貴重なギタリスト兼コンポーザーとして、一十三十一のシティポップ路線をバックアップ、DORIANや(((さらうんど)))等の80'sリバイバルなサウンドの一端を担う役割を全うしつつ、PanPacificPlaya周辺のオールスター的ネオドゥーワップバンドJINTANA&EMERALDSのメンバーとしても活動する10年代邦楽シーンの重要人物の1人です。そんな彼が不惑にして初のソロアルバムをリリースしたのが2017年。待ちに待たれたソロ作品がどのようなカテゴリーのサウンドに仕上がるのか、耳ざといリスナーにとっても関心事の1つであったと思われますが、完成品は堂々のシングルカットなしのフルアルバム、そして自身が歌うエレクトリックAORとでも称されるべきもので、大人の色気を十分に感じさせながらも音作りには細部にこだわりを見せるなど期待以上のクオリティを提示してきたわけです。
本人が大いに歌い上げる本作ですが、とにかく驚かされるのがクッキリした音像のサウンドデザインです。このあたりはマスタリングを手がけた砂原良徳のお得意とするところではありますが、緻密にプログラミングされたトラックに等分されたリズムが気の利いたエフェクトと共に非常に際立つミックス&マスタリングがされていて、全体的なサウンドの質が高いことが一聴して認識できるのと、お世辞にも派手とは言えないメロディを華やかに聴かせるためのエフェクティブな仕掛けと楽曲構成の巧さでカバーしているため、聴き手がテンションを保ったまま飽きさせずにアルバム全体を通しで聴き終えるように仕上げている確信犯的かつ天性の音楽的センスを感じさせます。家内手工業的エレクトリック「AOR」といった印象なのでどうしても内省的でミディアムな曲調が多いのですが、そのような作品の全体的なイメージを補って余りあるドリーミーかつファンタジックなサウンドメイクは、およそギタリストとは思えない偏執的な音へのこだわりを感じさせるもので、(砂原式マスタリングで輪郭を際立たせているおかげもありますが)近年稀に見る出音の良さを実現しています。そして、ギタリストでありながら隠し味で要所を締めるギターフレーズの艶やかさは特筆すべきもので、そこは百戦錬磨のサポートワークの経験が生きていると言えるでしょう。
初のソロ作品でアーティストとしての個性を高らかに宣言した感のある本作を手応えにして、KASHIF本人にはさらなる良質な作品リリースを期待したいところです(寡作なイメージも感じさせますが・・)。
<Favorite Songs>
・「Breezing」
のっけから音の良さに驚かされるゆったりリゾートなオープニングナンバー。ギターに頼らず音響豊かなリズムと広がりのあるシンセの使い方が美しいです。そして何よりも転調を繰り返しながら盛り上げるアトモスフィアサウンドに引き込まれます。
・「The Night」
盟友である一十三十一とのデュエットソング。切迫感のあるスラップベースがアクセントとなっているシティポップですが、渋いコーラスにギターのカッティングをベースに、飛び道具的なエフェクトワークが光ります。中盤に挟まれるスピーディーな展開も実に味があります。
・「Desparate Coffee」
本作の中でもキャッチー性溢れるエレクトリックAORの名曲。クッキリしたエレクトリカルリズムワークにダンディズム溢れるメロディを渋く歌い回すKASHIFの美意識が最も表現できているのがこの楽曲ではないでしょうか。装飾的に挿入される控えめなギターフレーズもやはり渋みを感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (際立つ音響処理と気の利いたエレクトロセンス)
・メロディ ★★ (抑揚のないメロディの繰り返しもAOR風味)
・リズム ★★★ (隙のない等分された打ち込みリズムが心地よい)
・曲構成 ★★ (全体的にスローテンポで占めるのもコンセプトか)
・個性 ★★★ (ソロデビューとはいえ大人な矜持を忘れず)
総合評点: 8点
KASHIF:vocals・all instruments

1.「Breezing」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
2.「On and On」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
3.「The Night」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
4.「Clean Up」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
5.「Desparate Coffee」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
6.「PPP I Love You (Part2.1)」 詞・曲・編:KASHIF
7.「You」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
8.「Neverland」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
9.「Be Colorful」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
10.「B G M」 詞:鴨田潤 曲・編:KASHIF
11.「PPP I Love You (Part3)」 詞・曲・編:KASHIF
<support musician>
一十三十一:vocal・chorus
produced by KASHIF
engineered by KASHIF
mastering engineered by 砂原良徳
● 10年代型シティポップ界隈の最重要人物の1人が満を持して作り上げた細部にわたるサウンドデザインに圧倒されるソロデビュー作
横浜を中心として活動している音楽集団PanPacificPlayaにてギタリストとして活躍しているKASHIFは、10年代に入るとシティポップ再評価ムーブメントの波に乗って、80'sな心を理解する貴重なギタリスト兼コンポーザーとして、一十三十一のシティポップ路線をバックアップ、DORIANや(((さらうんど)))等の80'sリバイバルなサウンドの一端を担う役割を全うしつつ、PanPacificPlaya周辺のオールスター的ネオドゥーワップバンドJINTANA&EMERALDSのメンバーとしても活動する10年代邦楽シーンの重要人物の1人です。そんな彼が不惑にして初のソロアルバムをリリースしたのが2017年。待ちに待たれたソロ作品がどのようなカテゴリーのサウンドに仕上がるのか、耳ざといリスナーにとっても関心事の1つであったと思われますが、完成品は堂々のシングルカットなしのフルアルバム、そして自身が歌うエレクトリックAORとでも称されるべきもので、大人の色気を十分に感じさせながらも音作りには細部にこだわりを見せるなど期待以上のクオリティを提示してきたわけです。
本人が大いに歌い上げる本作ですが、とにかく驚かされるのがクッキリした音像のサウンドデザインです。このあたりはマスタリングを手がけた砂原良徳のお得意とするところではありますが、緻密にプログラミングされたトラックに等分されたリズムが気の利いたエフェクトと共に非常に際立つミックス&マスタリングがされていて、全体的なサウンドの質が高いことが一聴して認識できるのと、お世辞にも派手とは言えないメロディを華やかに聴かせるためのエフェクティブな仕掛けと楽曲構成の巧さでカバーしているため、聴き手がテンションを保ったまま飽きさせずにアルバム全体を通しで聴き終えるように仕上げている確信犯的かつ天性の音楽的センスを感じさせます。家内手工業的エレクトリック「AOR」といった印象なのでどうしても内省的でミディアムな曲調が多いのですが、そのような作品の全体的なイメージを補って余りあるドリーミーかつファンタジックなサウンドメイクは、およそギタリストとは思えない偏執的な音へのこだわりを感じさせるもので、(砂原式マスタリングで輪郭を際立たせているおかげもありますが)近年稀に見る出音の良さを実現しています。そして、ギタリストでありながら隠し味で要所を締めるギターフレーズの艶やかさは特筆すべきもので、そこは百戦錬磨のサポートワークの経験が生きていると言えるでしょう。
初のソロ作品でアーティストとしての個性を高らかに宣言した感のある本作を手応えにして、KASHIF本人にはさらなる良質な作品リリースを期待したいところです(寡作なイメージも感じさせますが・・)。
<Favorite Songs>
・「Breezing」
のっけから音の良さに驚かされるゆったりリゾートなオープニングナンバー。ギターに頼らず音響豊かなリズムと広がりのあるシンセの使い方が美しいです。そして何よりも転調を繰り返しながら盛り上げるアトモスフィアサウンドに引き込まれます。
・「The Night」
盟友である一十三十一とのデュエットソング。切迫感のあるスラップベースがアクセントとなっているシティポップですが、渋いコーラスにギターのカッティングをベースに、飛び道具的なエフェクトワークが光ります。中盤に挟まれるスピーディーな展開も実に味があります。
・「Desparate Coffee」
本作の中でもキャッチー性溢れるエレクトリックAORの名曲。クッキリしたエレクトリカルリズムワークにダンディズム溢れるメロディを渋く歌い回すKASHIFの美意識が最も表現できているのがこの楽曲ではないでしょうか。装飾的に挿入される控えめなギターフレーズもやはり渋みを感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (際立つ音響処理と気の利いたエレクトロセンス)
・メロディ ★★ (抑揚のないメロディの繰り返しもAOR風味)
・リズム ★★★ (隙のない等分された打ち込みリズムが心地よい)
・曲構成 ★★ (全体的にスローテンポで占めるのもコンセプトか)
・個性 ★★★ (ソロデビューとはいえ大人な矜持を忘れず)
総合評点: 8点
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