「Mind Game」 中山美穂
「Mind Game」(1988 キング)
中山美穂:vocal

1.「Into The Crowd」 詞:Cindy 曲・編:羽田一郎
2.「Strange Parade」 詞:芹沢類 曲:羽田一郎 編:杉山卓夫
3.「Why Not?」 詞:芹沢類 曲:羽田一郎 編:杉山卓夫
4.「Cat Walk」 詞:芹沢類 曲・編:キタロー
5.「Moonlight Sexy Dance」 詞:芹沢類 曲・編:杉山卓夫
6.「In The Morning」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:杉山卓夫
7.「Mind Game」 詞:芹沢類 曲:Cindy・羽田一郎 編:杉山卓夫
8.「I Know」 詞:芹沢類 曲:Cindy 編:杉山卓夫
9.「Velvet Hammer」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:杉山卓夫
10.「Take It Easy」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:杉山卓夫
11.「Long Distance To The Heaven」 詞・曲:北山瑞穂 編:杉山卓夫
12.「Husky Town」 詞:芹沢類 曲:羽田一郎 編:杉山卓夫
<support musician>
羽田一郎:electric guitar・drums programming
鳴海寛:acoustic guitar
キタロー:electric bass・synthesizer bass・computer programming・background voices・chorus arrangement
阿部薫:drums
柿崎”Iseley”洋一郎:synthesizer・electric piano・Fender Rhodes
杉山卓夫:synthesizer・drums・computer programming
木村”キムチ”誠:percussions
古村敏比古:sax
AMAZONS(吉川智子・齊藤久美・大滝裕子):background voices・chorus arrangement
Cindy:backing vocals・vocal arrangement
Darek Jackson:background voices
Micael Wilson:background voices
清水美恵:background voices
松木美音:background voices
安倍均:computer manipulate
大竹徹夫:computer manipulate
produced by 福住朗 in association with Mother Earth
engineered by 松岡義昭・吉井聡・宮内広・藤田浩
● 久保田利伸のバックバンドを引き連れてコシのあるシンセベースを効かせながらブラコン一直線のオトナ歌謡を目指した意欲作
1988年2月リリースの6thアルバム「CATH THE NITE」は、角松敏生プロデュースによる洗練されたデジタルファンクPOPSサウンドが中山本人のアイドル的人気絶頂期にタイミングがハマって初のオリコン第1位を獲得するなど、メモリアルな作品となりましたが、この快進撃はとどまるところを知らず、同年7月には早くも次作のリリースに至ります。角松による前作によってアーティスティックな方向性に目覚めつつあった中山が間髪入れずにアルバム制作ということで角松プロデュースの継続が期待されていましたが、ここで白羽の矢が立ったのが当時日本人らしからぬリズム感覚とヴォーカル力でその実力への評価が急上昇していた久保田利伸と彼のバックバンド・Mother Earthでした。ギターの羽田一郎やキーボードの杉山卓夫などコンポーザー&アレンジャーとしても活躍し始めていたこのサウンドチームは、本作において得意のブラックコンテンポラリーサウンドを遺憾なく発揮、彼女のアーティスティック路線を確固たるものにしていくことになります。
さて、麗しい水着のジャケのインパクトに釣られがちですが、本編のサウンドは非常に気合が入っています。まずほとんどの楽曲をMother Earthの杉山卓夫が担当していますが、彼のアレンジはブラコンをベースにしつつも派手なリズムやフレーズを多用する傾向にあり、当然本作においてもキレとネバりを併せ持つシンセサウンドをベースに、野太くレゾナンスを効かせたシンセベースや手数の多いエレクトリックドラムでアーバン感覚を全開にさせるサウンドデザインを施しています。前作も角松特有の打ち込み率の高い手数の多い音が目立ちましたが、本作も方向性は微妙に異なりながらも負けず劣らず手数の多さで勝負しています。こればかりは88年というデジタル過剰主義が臨界点に近づきつつあった時代の産物と言っても良いでしょう。なお、前作との決定的な違いは全体的な音色のギラギラ感で、S.E.的なリズム音色やFM音源系エレピ等のデジタルな感覚は、より大人の階段を登るようなアダルティな楽曲には実によくマッチしています。前作「CATH THE NITE」と本作の2枚がリリースされた中山美穂の1988年は、彼女にとっても音楽的な大きな転換点となりましたが、その急激な成長を代償にしてサウンド的な妙味は少しずつ失われていくことになります。
<Favorite Songs>
・「Strange Parade」
まさにアーバンファンクといった風情のキレのあるシンセ満載のエレクトロチューン。なんといってもグチュグチュしたシンセベース、鷺巣詩郎ばりのねちっこいポルタメント多用のシンセフレーズ、そして要所で入れてくるローファイなハンドクラップがたまりません。
・「Mind Game」
オシャレすぎるコーラスがどこを切り取ってもキャッチーなCINDY&羽田一郎共作のデジタルファンク歌謡。どこまでもノリ重視な細かいバスドラも炸裂するリズムトラックに細かい譜割のシンセベースが絡み合えば、たちまちアーバンな風景が目の前に広がります。
・「Velvet Hammer」
本作中では比較的バンドサウンド色の強いサマーチューン。サビ後とAメロの間に入っていくスラップからのイントロが実に味があります。パラパラッとしたハンドクラップやシュルシュルッと入ってくるストリングスも気になりますが、熱いギターやコクのあるスラップベースが楽曲を引っ張っていきます。
<評点>
・サウンド ★★★ (前作以上にギラギラ感満載の音処理が目立つ)
・メロディ ★★ (比較的サウンド重視で印象にはやや残りにくいか)
・リズム ★★★ (多彩な音色とダンサブルなリズム構築が秀逸)
・曲構成 ★ (ギラギラな音処理のおかげか均一化が気になる)
・個性 ★★ (急速に大人の階段を駆け上がっていく転換期)
総合評点: 7点
中山美穂:vocal

1.「Into The Crowd」 詞:Cindy 曲・編:羽田一郎
2.「Strange Parade」 詞:芹沢類 曲:羽田一郎 編:杉山卓夫
3.「Why Not?」 詞:芹沢類 曲:羽田一郎 編:杉山卓夫
4.「Cat Walk」 詞:芹沢類 曲・編:キタロー
5.「Moonlight Sexy Dance」 詞:芹沢類 曲・編:杉山卓夫
6.「In The Morning」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:杉山卓夫
7.「Mind Game」 詞:芹沢類 曲:Cindy・羽田一郎 編:杉山卓夫
8.「I Know」 詞:芹沢類 曲:Cindy 編:杉山卓夫
9.「Velvet Hammer」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:杉山卓夫
10.「Take It Easy」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:杉山卓夫
11.「Long Distance To The Heaven」 詞・曲:北山瑞穂 編:杉山卓夫
12.「Husky Town」 詞:芹沢類 曲:羽田一郎 編:杉山卓夫
<support musician>
羽田一郎:electric guitar・drums programming
鳴海寛:acoustic guitar
キタロー:electric bass・synthesizer bass・computer programming・background voices・chorus arrangement
阿部薫:drums
柿崎”Iseley”洋一郎:synthesizer・electric piano・Fender Rhodes
杉山卓夫:synthesizer・drums・computer programming
木村”キムチ”誠:percussions
古村敏比古:sax
AMAZONS(吉川智子・齊藤久美・大滝裕子):background voices・chorus arrangement
Cindy:backing vocals・vocal arrangement
Darek Jackson:background voices
Micael Wilson:background voices
清水美恵:background voices
松木美音:background voices
安倍均:computer manipulate
大竹徹夫:computer manipulate
produced by 福住朗 in association with Mother Earth
engineered by 松岡義昭・吉井聡・宮内広・藤田浩
● 久保田利伸のバックバンドを引き連れてコシのあるシンセベースを効かせながらブラコン一直線のオトナ歌謡を目指した意欲作
1988年2月リリースの6thアルバム「CATH THE NITE」は、角松敏生プロデュースによる洗練されたデジタルファンクPOPSサウンドが中山本人のアイドル的人気絶頂期にタイミングがハマって初のオリコン第1位を獲得するなど、メモリアルな作品となりましたが、この快進撃はとどまるところを知らず、同年7月には早くも次作のリリースに至ります。角松による前作によってアーティスティックな方向性に目覚めつつあった中山が間髪入れずにアルバム制作ということで角松プロデュースの継続が期待されていましたが、ここで白羽の矢が立ったのが当時日本人らしからぬリズム感覚とヴォーカル力でその実力への評価が急上昇していた久保田利伸と彼のバックバンド・Mother Earthでした。ギターの羽田一郎やキーボードの杉山卓夫などコンポーザー&アレンジャーとしても活躍し始めていたこのサウンドチームは、本作において得意のブラックコンテンポラリーサウンドを遺憾なく発揮、彼女のアーティスティック路線を確固たるものにしていくことになります。
さて、麗しい水着のジャケのインパクトに釣られがちですが、本編のサウンドは非常に気合が入っています。まずほとんどの楽曲をMother Earthの杉山卓夫が担当していますが、彼のアレンジはブラコンをベースにしつつも派手なリズムやフレーズを多用する傾向にあり、当然本作においてもキレとネバりを併せ持つシンセサウンドをベースに、野太くレゾナンスを効かせたシンセベースや手数の多いエレクトリックドラムでアーバン感覚を全開にさせるサウンドデザインを施しています。前作も角松特有の打ち込み率の高い手数の多い音が目立ちましたが、本作も方向性は微妙に異なりながらも負けず劣らず手数の多さで勝負しています。こればかりは88年というデジタル過剰主義が臨界点に近づきつつあった時代の産物と言っても良いでしょう。なお、前作との決定的な違いは全体的な音色のギラギラ感で、S.E.的なリズム音色やFM音源系エレピ等のデジタルな感覚は、より大人の階段を登るようなアダルティな楽曲には実によくマッチしています。前作「CATH THE NITE」と本作の2枚がリリースされた中山美穂の1988年は、彼女にとっても音楽的な大きな転換点となりましたが、その急激な成長を代償にしてサウンド的な妙味は少しずつ失われていくことになります。
<Favorite Songs>
・「Strange Parade」
まさにアーバンファンクといった風情のキレのあるシンセ満載のエレクトロチューン。なんといってもグチュグチュしたシンセベース、鷺巣詩郎ばりのねちっこいポルタメント多用のシンセフレーズ、そして要所で入れてくるローファイなハンドクラップがたまりません。
・「Mind Game」
オシャレすぎるコーラスがどこを切り取ってもキャッチーなCINDY&羽田一郎共作のデジタルファンク歌謡。どこまでもノリ重視な細かいバスドラも炸裂するリズムトラックに細かい譜割のシンセベースが絡み合えば、たちまちアーバンな風景が目の前に広がります。
・「Velvet Hammer」
本作中では比較的バンドサウンド色の強いサマーチューン。サビ後とAメロの間に入っていくスラップからのイントロが実に味があります。パラパラッとしたハンドクラップやシュルシュルッと入ってくるストリングスも気になりますが、熱いギターやコクのあるスラップベースが楽曲を引っ張っていきます。
<評点>
・サウンド ★★★ (前作以上にギラギラ感満載の音処理が目立つ)
・メロディ ★★ (比較的サウンド重視で印象にはやや残りにくいか)
・リズム ★★★ (多彩な音色とダンサブルなリズム構築が秀逸)
・曲構成 ★ (ギラギラな音処理のおかげか均一化が気になる)
・個性 ★★ (急速に大人の階段を駆け上がっていく転換期)
総合評点: 7点
「STRONGER THAN REASON」 PERSON TO PERSON
「STRONGER THAN REASON」 (1985 Epic)
PERSON TO PERSON

<members>
Pete Eason:vocals
Lloyd Richards:guitars
David Palmer:drums
Dave Clayton:keyboards
Jeremy Meek:bass
1.「HIGH TIME」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
2.「LOVE ON THE REBOUND」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
3.「TURNING BACK THE PAGES」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
4.「REPUTATION」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
5.「RIGHT FROM WRONG」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
6.「STILL ON MY MIND」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
7.「POISON STREET」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
8.「4 A.M.」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
9.「WRONG SIDE OF MIDNIGHT」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
10.「RUNNING OUT」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
produced by Mic Murphy & David Frank・Steve Harvey
mixing engineered by Michael Brauer・John Hudson・Steve Harvey・John Gallen
recording engineered by John Gallen
● 元ABCのドラマーが結成したエレポップユニットをTHE SYSTEMがプロデュース!聴きやすさの中にパワフルなドラムが炸裂する唯一のアルバム
1980年代初頭を飾ったUKニューロマンティックバンドABCのドラマーであったDavid Palmerは、82年の彼らの大ヒットデビューアルバム「The Lexicon Of Love」に参加しますが、この1stアルバムを引っ提げたワールドツアー中に当時YMOとしての活動と共にソロプロジェクトを進めていた高橋幸宏にライブサポートドラマーへの参加を打診されます。もともとABCはメンバーが流動的なユニットということもあって、律儀なDavidはあっさりとABCを脱退、その後高橋のツアーのみならずYMO散開ライブにもゲストドラマーとして参加(その仕事ぶりは素晴らしかった!)、一気に日本における知名度を獲得しました。一方彼は本国UKにおいて新たな5人組のシンセポップバンドPERSON TO PERSONを結成、84年にシングル「High Time」をリリース、パワフルなドラムとバキバキのエレクトリックサウンドでポストエレポップの美意識を継承するかのごとき楽曲で期待感を煽り、2ndシングル「REPUTATION」のリリース後、翌85年に待望の1stアルバムである本作を完成させることになります。
David Palmerのリーダーバンドということでやはり耳を持っていかれるのはドラムプレイ。85年という時代もあってスネアもパワフルに加工され、時にはゲートリバーブ&コンプレッション、時にはエレクトロノイズ成分を含んだSIMMONSサウンドで、リズムトラックを豊かに彩っていきます。もちろん艶やかでコクのあるシンセベース、そしてエレガントなシンセフレーズも質の高いものであることは一聴して印象づけられるわけですが、本作をプロデュースしているのはニューヨーク出身の気鋭のデジタルファンクユニットTHE SYSTEMで、ゴリゴリのシーケンスやきらびやかなシンセフレーズに加えて、強烈なドラム処理が施されている部分はTHE SYSTEMの本領発揮というところです。「HIGH TIME」「RUNNING OUT」といったハードなエレクトロダンスビートと、「TURNING BACK THE PAGES」「4 A.M.」のようなスウィートロマンティックなミディアムナンバーが同居しているのも、このデジタリックソウルなニューヨーカーデュオの貢献が大きいと言わざるを得ません。しかし80年代中期という時代はこうしたサウンドが雨後の筍のように出現していた時代ということで、彼らもその波に飲み込まれるように本作を持って活動を中止してしまうことになります。David PalmerもYMOサポートの杵柄から80年代後半の坂本龍一をサポートするなど、相変わらず日本では知られた存在でしたが、徐々に表舞台から姿を消していくことになります。
<Favorite Songs>
・「HIGH TIME」
DavidのジャストなスネアがフィーチャーされたScritti Politti調のメカニカルなエレポップチューン。実に気持ちよくキマるスネアやゲートリバーブ成分たっぷりのタムのフィルインが抜群です。コクのあるシンセベースシーケンスとの絡みも秀逸で、80年代中期のダンスビートの快感を一手に閉じ込めた名曲です。
・「STILL ON MY MIND」
マシナリーなベースラインと哀愁メロディが噛み合ったエレクトロダンスナンバー。切迫感と共に駆け寄ってくるシンセリフ、角松敏生も大いに参考にしたと思われるこの黄金のシンセベーススタイルは、流石のTHE SYSTEM節といったところでしょう。
・「RUNNING OUT」
イントロのシリアスなシンセパッドが秀逸なラストナンバー。キュートなアルペジオとパワードラムとの対比も楽しく、ジャストなリズムキープだからこそ生まれる、どこを切り取ってもカッコ良いマシナリーな快感を味わえるこれぞUKエレポップの醍醐味といった佳曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (生とシーケンスを使い分けるベースラインに命をかける)
・メロディ ★ (オリジナリティを見つけるのは難しいが悪くはない)
・リズム ★★★ (パワーあふれるスネア&タムの処理とリズム感覚は流石)
・曲構成 ★★ (キラーチューンでサンドイッチするが中間でマンネリも)
・個性 ★★ (プロデューサーの色が出過ぎた感もあるが悪くはない)
総合評点: 7点
PERSON TO PERSON

<members>
Pete Eason:vocals
Lloyd Richards:guitars
David Palmer:drums
Dave Clayton:keyboards
Jeremy Meek:bass
1.「HIGH TIME」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
2.「LOVE ON THE REBOUND」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
3.「TURNING BACK THE PAGES」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
4.「REPUTATION」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
5.「RIGHT FROM WRONG」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
6.「STILL ON MY MIND」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
7.「POISON STREET」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
8.「4 A.M.」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
9.「WRONG SIDE OF MIDNIGHT」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
10.「RUNNING OUT」
Dave Clayton/David Palmer/Jeremy Meek/Lloyd Richards/Pete Eason
produced by Mic Murphy & David Frank・Steve Harvey
mixing engineered by Michael Brauer・John Hudson・Steve Harvey・John Gallen
recording engineered by John Gallen
● 元ABCのドラマーが結成したエレポップユニットをTHE SYSTEMがプロデュース!聴きやすさの中にパワフルなドラムが炸裂する唯一のアルバム
1980年代初頭を飾ったUKニューロマンティックバンドABCのドラマーであったDavid Palmerは、82年の彼らの大ヒットデビューアルバム「The Lexicon Of Love」に参加しますが、この1stアルバムを引っ提げたワールドツアー中に当時YMOとしての活動と共にソロプロジェクトを進めていた高橋幸宏にライブサポートドラマーへの参加を打診されます。もともとABCはメンバーが流動的なユニットということもあって、律儀なDavidはあっさりとABCを脱退、その後高橋のツアーのみならずYMO散開ライブにもゲストドラマーとして参加(その仕事ぶりは素晴らしかった!)、一気に日本における知名度を獲得しました。一方彼は本国UKにおいて新たな5人組のシンセポップバンドPERSON TO PERSONを結成、84年にシングル「High Time」をリリース、パワフルなドラムとバキバキのエレクトリックサウンドでポストエレポップの美意識を継承するかのごとき楽曲で期待感を煽り、2ndシングル「REPUTATION」のリリース後、翌85年に待望の1stアルバムである本作を完成させることになります。
David Palmerのリーダーバンドということでやはり耳を持っていかれるのはドラムプレイ。85年という時代もあってスネアもパワフルに加工され、時にはゲートリバーブ&コンプレッション、時にはエレクトロノイズ成分を含んだSIMMONSサウンドで、リズムトラックを豊かに彩っていきます。もちろん艶やかでコクのあるシンセベース、そしてエレガントなシンセフレーズも質の高いものであることは一聴して印象づけられるわけですが、本作をプロデュースしているのはニューヨーク出身の気鋭のデジタルファンクユニットTHE SYSTEMで、ゴリゴリのシーケンスやきらびやかなシンセフレーズに加えて、強烈なドラム処理が施されている部分はTHE SYSTEMの本領発揮というところです。「HIGH TIME」「RUNNING OUT」といったハードなエレクトロダンスビートと、「TURNING BACK THE PAGES」「4 A.M.」のようなスウィートロマンティックなミディアムナンバーが同居しているのも、このデジタリックソウルなニューヨーカーデュオの貢献が大きいと言わざるを得ません。しかし80年代中期という時代はこうしたサウンドが雨後の筍のように出現していた時代ということで、彼らもその波に飲み込まれるように本作を持って活動を中止してしまうことになります。David PalmerもYMOサポートの杵柄から80年代後半の坂本龍一をサポートするなど、相変わらず日本では知られた存在でしたが、徐々に表舞台から姿を消していくことになります。
<Favorite Songs>
・「HIGH TIME」
DavidのジャストなスネアがフィーチャーされたScritti Politti調のメカニカルなエレポップチューン。実に気持ちよくキマるスネアやゲートリバーブ成分たっぷりのタムのフィルインが抜群です。コクのあるシンセベースシーケンスとの絡みも秀逸で、80年代中期のダンスビートの快感を一手に閉じ込めた名曲です。
・「STILL ON MY MIND」
マシナリーなベースラインと哀愁メロディが噛み合ったエレクトロダンスナンバー。切迫感と共に駆け寄ってくるシンセリフ、角松敏生も大いに参考にしたと思われるこの黄金のシンセベーススタイルは、流石のTHE SYSTEM節といったところでしょう。
・「RUNNING OUT」
イントロのシリアスなシンセパッドが秀逸なラストナンバー。キュートなアルペジオとパワードラムとの対比も楽しく、ジャストなリズムキープだからこそ生まれる、どこを切り取ってもカッコ良いマシナリーな快感を味わえるこれぞUKエレポップの醍醐味といった佳曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (生とシーケンスを使い分けるベースラインに命をかける)
・メロディ ★ (オリジナリティを見つけるのは難しいが悪くはない)
・リズム ★★★ (パワーあふれるスネア&タムの処理とリズム感覚は流石)
・曲構成 ★★ (キラーチューンでサンドイッチするが中間でマンネリも)
・個性 ★★ (プロデューサーの色が出過ぎた感もあるが悪くはない)
総合評点: 7点
「FACE」 FLAT FACE
「FACE」 (1986 ミディ)
FLAT FACE

<members>
武末淑子:vocal
武末充敏:all instruments
1.「HONEYMOON IN PARIS」 詞・曲・編:FLAT FACE
2.「DADA」 詞:FLAT FACE 曲:河崎正芳・FLAT FACE 編:FLAT FACE
3.「LOOK」 詞・曲・編:FLAT FACE
4.「シェリーに口づけ」 詞・曲:Michael Polnareff 編:FLAT FACE
5.「池を越えて」 詞・曲・編:FLAT FACE
6.「ガス燈の下で」 詞・曲・編:FLAT FACE
7.「私もヒゲが欲しい」 詞・曲・編:FLAT FACE
8.「新しいシャンソン」 詞・曲・編:FLAT FACE
9.「MBA」 詞・曲・編:FLAT FACE
10.「日々の泡」 詞・曲・編:FLAT FACE
<support musician>
松本キヨノブ:guitar
河崎正芳:keyboard
produced by FLAT FACE
co-produced by 藤井丈司
engineered by 重藤功・重藤進
● 家内制手工業的ヨーロッパ旅行のお土産といった風情に両面性が垣間見える多重録音夫婦デュオ唯一の作品
1970年代の日本ロック黎明期に2枚のアルバムを残した伝説のロックバンド葡萄畑のオリジナルドラマーであった武末充敏は、80年代に入ると東京に別れを告げ故郷である福岡に拠点を移します。80年代は多重録音急成長期ということもあり、武末は妻である武末淑子と夫婦多重録音ユニットFLAT FACEを結成、彼らのデモソングが当時設立したばかりのMIDIレコードの目に止まり、1986年1stアルバムである本作のリリースに至ります。坂本龍一や大貫妙子、EPO、立花ハジメ、鈴木さえ子・矢野顕子ら錚々たるメンバーであった初期MIDIにあっては、沢村満率いるMICH LIVEや野見祐二のデビューユニット・おしゃれテレビといった無名の実力派ユニットも名を連ねていましたが、その中でもFLAT FACEは比較的匿名性が高いユニットという認識が強く、先行シングル「HONEYMOON IN PARIS」においてその牧歌的エレポップといった風情は確認できてはいたものの、本作においてその全貌が明らかになったのでした。
さて本作の蓋を開けてみれば、まず前述の「HONEYMOON IN PARIS」の牧歌的世界観にグッと引き寄せられるわけですが、まずは武末淑子の大貫妙子ばりの清涼感を漂わせた上品な声質によるヴォーカルに否が応でも耳を捉えます。リバーブ感たっぷりのヴォーカルパートと、ギター、ドラムマシン&シンセが中心の音数の少ないオーガニックなサウンドは、過激なサウンドを求め過ぎていた80年代後半に差し掛かる時代にあって、ネオアコースティックと呼ばれるムーブメントを先取りするかのような先見性に優れたセンスを備えているといった印象を受けます。マシナリーになりがちなドラムマシンによるリズムパートでありながら、人間味を感じさせる温かなサウンドを維持し続けているのはやはり朴訥なフレーズを奏で続けるギターフレーズによるもので、特に「池を越えて」や「私もヒゲが欲しい」等ではフレットの音も生々しい手弾き音色の存在感がそのまま彼らのサウンド的個性として生きています。かたや「DADA」や「シェリーに口づけ」「ガス燈の下で」等ではリズムが強調されたり、ボイスサンプリングやエフェクトなどでエレクトリックな処理が活躍するなど(これにはDATE OF BIRTHの重藤兄弟によるミキシングの功績も大きいと思いますが)、打ち込み多重録音ユニットとしての周囲の期待を裏切らず、牧歌的なヨーロピアンテイストを振りまきながらも内に秘めた激しさも垣間見せる表裏一体の「阿修羅FACE」を見せる形となっているところが、本作の実に興味深い部分と言えるのではないでしょうか。
結局本ユニットの作品は本作で打ち止め、ユニットも夫婦も解散しそれぞれ別の道に歩む2人ですが、ヴォーカルの武末淑子は「高取淑子」として90年代末にアジアンテイストを獲得したシンガーソングライターとしてデビューし、現在もマイペースに息長く活動を続けています。しかし武末充敏は福岡でも有名なインテリアショップを運営するなど音楽から離れていますので、これまでの経緯から考えても再始動は叶わないとは思いますが、本作は2013年にリマスターもされるなど、(活動当時からは想像できないほど)長く語り継がれています。
<Favorite Songs>
・「DADA」
彼らの楽曲にしてはメカニカル感が強調されたエレポップチューン。このメカニカル感は間違いなく強烈に主張するリズムトラックによるものでしょう。ゲートリバーブを惜しげも無く施されたタムの乱れ打ちが、相変わらずの長閑なメロディに唐辛子をぶち込むがごとくグイグイとパワーを注入していきます。間奏のドラムマシンソロは圧巻です。
・「LOOK」
前曲からクロスフェードしてくるメランコリック&ヨーロピアン情緒たっぷりのジャジーなおしゃれポップ。生き生きとした河崎正芳のオルガンプレイが美しく、打ち込み中心の本作にあってフィジカルな要素に温かみを感じるエレガントチューンです。
・「ガス燈の下で」
本作でもエレクトロな風味を味わせてくれるハードボイルドなデジタルポップ。ボイス変調によるフレーズを多用したり、キレ重視の尖った音色を中心にしたり、彼らにしては攻撃的なサウンドですが、救いは良い意味でのヴォーカルの線の細さ。奇妙なエンディングも面白いです。
<評点>
・サウンド ★★ (手作り感満載の音作りの温かさを感じる音処理)
・メロディ ★★ (輪郭のはっきりしないフレーズが幸福感を誘う)
・リズム ★★★ (長閑な楽曲にしてはなかなかの派手好みなプログラム)
・曲構成 ★★ (地味な楽曲も多いが効果的なエレクトロがスパイスに)
・個性 ★★ (時代背景もあってネオアコ的だがエレクトロ色が強い)
総合評点: 7点
FLAT FACE

<members>
武末淑子:vocal
武末充敏:all instruments
1.「HONEYMOON IN PARIS」 詞・曲・編:FLAT FACE
2.「DADA」 詞:FLAT FACE 曲:河崎正芳・FLAT FACE 編:FLAT FACE
3.「LOOK」 詞・曲・編:FLAT FACE
4.「シェリーに口づけ」 詞・曲:Michael Polnareff 編:FLAT FACE
5.「池を越えて」 詞・曲・編:FLAT FACE
6.「ガス燈の下で」 詞・曲・編:FLAT FACE
7.「私もヒゲが欲しい」 詞・曲・編:FLAT FACE
8.「新しいシャンソン」 詞・曲・編:FLAT FACE
9.「MBA」 詞・曲・編:FLAT FACE
10.「日々の泡」 詞・曲・編:FLAT FACE
<support musician>
松本キヨノブ:guitar
河崎正芳:keyboard
produced by FLAT FACE
co-produced by 藤井丈司
engineered by 重藤功・重藤進
● 家内制手工業的ヨーロッパ旅行のお土産といった風情に両面性が垣間見える多重録音夫婦デュオ唯一の作品
1970年代の日本ロック黎明期に2枚のアルバムを残した伝説のロックバンド葡萄畑のオリジナルドラマーであった武末充敏は、80年代に入ると東京に別れを告げ故郷である福岡に拠点を移します。80年代は多重録音急成長期ということもあり、武末は妻である武末淑子と夫婦多重録音ユニットFLAT FACEを結成、彼らのデモソングが当時設立したばかりのMIDIレコードの目に止まり、1986年1stアルバムである本作のリリースに至ります。坂本龍一や大貫妙子、EPO、立花ハジメ、鈴木さえ子・矢野顕子ら錚々たるメンバーであった初期MIDIにあっては、沢村満率いるMICH LIVEや野見祐二のデビューユニット・おしゃれテレビといった無名の実力派ユニットも名を連ねていましたが、その中でもFLAT FACEは比較的匿名性が高いユニットという認識が強く、先行シングル「HONEYMOON IN PARIS」においてその牧歌的エレポップといった風情は確認できてはいたものの、本作においてその全貌が明らかになったのでした。
さて本作の蓋を開けてみれば、まず前述の「HONEYMOON IN PARIS」の牧歌的世界観にグッと引き寄せられるわけですが、まずは武末淑子の大貫妙子ばりの清涼感を漂わせた上品な声質によるヴォーカルに否が応でも耳を捉えます。リバーブ感たっぷりのヴォーカルパートと、ギター、ドラムマシン&シンセが中心の音数の少ないオーガニックなサウンドは、過激なサウンドを求め過ぎていた80年代後半に差し掛かる時代にあって、ネオアコースティックと呼ばれるムーブメントを先取りするかのような先見性に優れたセンスを備えているといった印象を受けます。マシナリーになりがちなドラムマシンによるリズムパートでありながら、人間味を感じさせる温かなサウンドを維持し続けているのはやはり朴訥なフレーズを奏で続けるギターフレーズによるもので、特に「池を越えて」や「私もヒゲが欲しい」等ではフレットの音も生々しい手弾き音色の存在感がそのまま彼らのサウンド的個性として生きています。かたや「DADA」や「シェリーに口づけ」「ガス燈の下で」等ではリズムが強調されたり、ボイスサンプリングやエフェクトなどでエレクトリックな処理が活躍するなど(これにはDATE OF BIRTHの重藤兄弟によるミキシングの功績も大きいと思いますが)、打ち込み多重録音ユニットとしての周囲の期待を裏切らず、牧歌的なヨーロピアンテイストを振りまきながらも内に秘めた激しさも垣間見せる表裏一体の「阿修羅FACE」を見せる形となっているところが、本作の実に興味深い部分と言えるのではないでしょうか。
結局本ユニットの作品は本作で打ち止め、ユニットも夫婦も解散しそれぞれ別の道に歩む2人ですが、ヴォーカルの武末淑子は「高取淑子」として90年代末にアジアンテイストを獲得したシンガーソングライターとしてデビューし、現在もマイペースに息長く活動を続けています。しかし武末充敏は福岡でも有名なインテリアショップを運営するなど音楽から離れていますので、これまでの経緯から考えても再始動は叶わないとは思いますが、本作は2013年にリマスターもされるなど、(活動当時からは想像できないほど)長く語り継がれています。
<Favorite Songs>
・「DADA」
彼らの楽曲にしてはメカニカル感が強調されたエレポップチューン。このメカニカル感は間違いなく強烈に主張するリズムトラックによるものでしょう。ゲートリバーブを惜しげも無く施されたタムの乱れ打ちが、相変わらずの長閑なメロディに唐辛子をぶち込むがごとくグイグイとパワーを注入していきます。間奏のドラムマシンソロは圧巻です。
・「LOOK」
前曲からクロスフェードしてくるメランコリック&ヨーロピアン情緒たっぷりのジャジーなおしゃれポップ。生き生きとした河崎正芳のオルガンプレイが美しく、打ち込み中心の本作にあってフィジカルな要素に温かみを感じるエレガントチューンです。
・「ガス燈の下で」
本作でもエレクトロな風味を味わせてくれるハードボイルドなデジタルポップ。ボイス変調によるフレーズを多用したり、キレ重視の尖った音色を中心にしたり、彼らにしては攻撃的なサウンドですが、救いは良い意味でのヴォーカルの線の細さ。奇妙なエンディングも面白いです。
<評点>
・サウンド ★★ (手作り感満載の音作りの温かさを感じる音処理)
・メロディ ★★ (輪郭のはっきりしないフレーズが幸福感を誘う)
・リズム ★★★ (長閑な楽曲にしてはなかなかの派手好みなプログラム)
・曲構成 ★★ (地味な楽曲も多いが効果的なエレクトロがスパイスに)
・個性 ★★ (時代背景もあってネオアコ的だがエレクトロ色が強い)
総合評点: 7点
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