「ANOTHER GAME」 P-MODEL
「ANOTHER GAME」(1984 ジャパン)
P-MODEL

<members>
平沢進:guitar・voice・synthesizer・heavenizer
田井中貞利:drums・real drum programming
菊池達也:bass
1.「ANOTHER GAME step1」 曲:平沢進 編:P-MODEL
2.「HOLLAND ELEMENT」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
3.「ATOM-SIBERIA」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
4.「PERSONAL PULSE」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
5.「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
6.「BIKE」 詞:平沢進 曲:Syd Barrett 編:P-MODEL
7.「HARM HARMONIZER」 曲:平沢進 編:P-MODEL
8.「MOUTH TO MOUTH」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
9.「FLOOR」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
10.「GOES ON GHOST」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
11.「ECHOES」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
12.「AWAKENING SLEEP〜α click」 曲:平沢進 編:P-MODEL
<support musician>
三浦俊一:keyboards・piano
蔦木栄一:xylophone・slit drum
京島トシノブ:voice
高田真奈美:voice
produced by P-MODEL
engineered by 小西康司
● 音楽的パートナーが脱退し一気に平沢ソロユニット的色彩が濃くなった過渡期の迷える5thアルバム
テクノポップブームからの離脱を図り劇的な方向転換を図った3rdアルバム「Potpourri」に続く、さらに重厚で深淵に引きずり込まれるような摩訶不思議なサウンドで聴き手を惑わしたいわくつきの名盤「Perspective」のリリースから2年を経た1984年、P-MODELは5thアルバムをリリースすることになるわけですが、この2年の間には紆余曲折と劇的な変化がありました。まずリーダー平沢進の音楽的パートナーであったキーボードの田中靖美が脱退、サウンド&パフォーマンスの核であった彼を失ったP-MODELは当然のことながら平沢進ワンマン主導体制への転換を余儀されなくなりました。また、実際は83年秋にリリースされるはずであった本作は、収録曲「ATOM-SIBERIA」の歌詞がレコード制作基準倫理委員会の規定に抵触したため、実に4ヶ月のリリース延期の憂き目に逢い、その間ボーカルは再レコーディングされるなど、リリースに至るまでのドタバタ感は尋常ではないものがありました。そのような中、平沢主導のもと生み出された本作は、田中在籍時のレパートリーが多く収録されたことから前作の路線を継承したものと考えられますが、よりスピリチュアルで難解な音楽性の周辺をウロウロするかのような迷走状態とも言える過渡期的な作品と捉えた方が自然な作品と言えるでしょう。
バイオフィードバックのガイダンスから始まるこの作品は、その不気味さを本編の楽曲にも伝播させ、奇妙に音階が上下する主旋律や、楽曲ごとに緻密に作り込まれたスネアサウンド等、前作の雰囲気を踏襲していることには間違いないと思われます。しかし、さらにテクニカルになっていく逸脱ギターフレーズや、そろそろ常人には理解し難くなってきた歌詞と歌メロは、さらに進化の一途を辿っていると共に、奇妙な中にも重厚感のあった前作にはなかった開き直りといいますか、(ヤケクソな)明るさを垣間見せているのも本作の特徴かもしれません(Pink Floydのリメイク「BIKE」はその代表例)。その中でも比較的重厚感の薄れた感のあるドラムサウンドにあって、田井中貞利の手数の多いドカドカバラバラっとしたドラミングはその恩恵を受けています。本作を持って一旦脱退する田井中ですが、本作でもキッチリ自身の仕事は全うしていると思われます。かたやシンセサウンドに関しては、当時P-MODELサウンドの中心を占めていたKORG Poly-Sixのコーラス付シンセストリングスを大々的にフィーチャーし過ぎてやや単調な印象も受けますが、この時期にP-MODELはドラムの音作りに傾倒していたような節があるため、多彩なシンセで楽曲を彩ることはないということも、さもありなんといったところでしょうか。
結局前述のようなリリーストラブルもあって、2作続いたジャパンレコードから移籍する彼らですが、その後は次のレコード会社移籍までは、P-MODEL周辺の得意技とも言えるソノシート攻撃を繰り返し、さらなる独自の音楽性を磨きながら平沢以外のメンバーを一新することになります。
<Favorite Songs>
・「ATOM-SIBERIA」
リリース延期の原因となった問題作と言われるいかにもP-MODEL臭さをプンプン漂わせる代表曲の1つ。粒立ちの良いベースラインにふわふわ漂うようなメロディ、平沢お得意の変態ギターソロも炸裂し、その激しさは歌詞の問題などを凌駕する勢いを感じさせます。
・「PERSONAL PULSE」
歌が始まる前のイントロが非常に長い、本作の不気味さを最も表現している楽曲。淡々と刻んでいくリズム隊を尻目に、ギターのフレーズがキテレツ極まりありません。そして一旦歌が始まると今度はその歌のフレーズが常識を逸脱したかのような不気味さを演出、とても子供は夜に聴けないような仕様になっています。
・「FLOOR」
単調な曲調ながら本作随一の長尺な楽曲。相変わらずの手数の多さを見せながら淡々とした印象のドラムが主導し、煮え切らないメロディがゆったりと進んでいきます。間奏では突然段ボールの蔦木栄一が木琴や木鼓を叩きまくり、その奇妙な音像に花を添えています。
<評点>
・サウンド ★★ (単調なシンセ音と奇妙なフレーズを繰り返すギターの対照性)
・メロディ ★ (煮え切らない奇妙な歌メロを連発し聴き手を毒していく)
・リズム ★★★ (音響面は大人しくなるも田井中のドラミングとマッチする)
・曲構成 ★★ (特に盛り上がりもないメリハリのなさもコンセプトたるが故)
・個性 ★★ (80年代中盤の鮮やかなデジタルサウンドの裏道を行く)
総合評点: 7点
P-MODEL

<members>
平沢進:guitar・voice・synthesizer・heavenizer
田井中貞利:drums・real drum programming
菊池達也:bass
1.「ANOTHER GAME step1」 曲:平沢進 編:P-MODEL
2.「HOLLAND ELEMENT」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
3.「ATOM-SIBERIA」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
4.「PERSONAL PULSE」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
5.「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
6.「BIKE」 詞:平沢進 曲:Syd Barrett 編:P-MODEL
7.「HARM HARMONIZER」 曲:平沢進 編:P-MODEL
8.「MOUTH TO MOUTH」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
9.「FLOOR」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
10.「GOES ON GHOST」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
11.「ECHOES」 詞・曲:平沢進 編:P-MODEL
12.「AWAKENING SLEEP〜α click」 曲:平沢進 編:P-MODEL
<support musician>
三浦俊一:keyboards・piano
蔦木栄一:xylophone・slit drum
京島トシノブ:voice
高田真奈美:voice
produced by P-MODEL
engineered by 小西康司
● 音楽的パートナーが脱退し一気に平沢ソロユニット的色彩が濃くなった過渡期の迷える5thアルバム
テクノポップブームからの離脱を図り劇的な方向転換を図った3rdアルバム「Potpourri」に続く、さらに重厚で深淵に引きずり込まれるような摩訶不思議なサウンドで聴き手を惑わしたいわくつきの名盤「Perspective」のリリースから2年を経た1984年、P-MODELは5thアルバムをリリースすることになるわけですが、この2年の間には紆余曲折と劇的な変化がありました。まずリーダー平沢進の音楽的パートナーであったキーボードの田中靖美が脱退、サウンド&パフォーマンスの核であった彼を失ったP-MODELは当然のことながら平沢進ワンマン主導体制への転換を余儀されなくなりました。また、実際は83年秋にリリースされるはずであった本作は、収録曲「ATOM-SIBERIA」の歌詞がレコード制作基準倫理委員会の規定に抵触したため、実に4ヶ月のリリース延期の憂き目に逢い、その間ボーカルは再レコーディングされるなど、リリースに至るまでのドタバタ感は尋常ではないものがありました。そのような中、平沢主導のもと生み出された本作は、田中在籍時のレパートリーが多く収録されたことから前作の路線を継承したものと考えられますが、よりスピリチュアルで難解な音楽性の周辺をウロウロするかのような迷走状態とも言える過渡期的な作品と捉えた方が自然な作品と言えるでしょう。
バイオフィードバックのガイダンスから始まるこの作品は、その不気味さを本編の楽曲にも伝播させ、奇妙に音階が上下する主旋律や、楽曲ごとに緻密に作り込まれたスネアサウンド等、前作の雰囲気を踏襲していることには間違いないと思われます。しかし、さらにテクニカルになっていく逸脱ギターフレーズや、そろそろ常人には理解し難くなってきた歌詞と歌メロは、さらに進化の一途を辿っていると共に、奇妙な中にも重厚感のあった前作にはなかった開き直りといいますか、(ヤケクソな)明るさを垣間見せているのも本作の特徴かもしれません(Pink Floydのリメイク「BIKE」はその代表例)。その中でも比較的重厚感の薄れた感のあるドラムサウンドにあって、田井中貞利の手数の多いドカドカバラバラっとしたドラミングはその恩恵を受けています。本作を持って一旦脱退する田井中ですが、本作でもキッチリ自身の仕事は全うしていると思われます。かたやシンセサウンドに関しては、当時P-MODELサウンドの中心を占めていたKORG Poly-Sixのコーラス付シンセストリングスを大々的にフィーチャーし過ぎてやや単調な印象も受けますが、この時期にP-MODELはドラムの音作りに傾倒していたような節があるため、多彩なシンセで楽曲を彩ることはないということも、さもありなんといったところでしょうか。
結局前述のようなリリーストラブルもあって、2作続いたジャパンレコードから移籍する彼らですが、その後は次のレコード会社移籍までは、P-MODEL周辺の得意技とも言えるソノシート攻撃を繰り返し、さらなる独自の音楽性を磨きながら平沢以外のメンバーを一新することになります。
<Favorite Songs>
・「ATOM-SIBERIA」
リリース延期の原因となった問題作と言われるいかにもP-MODEL臭さをプンプン漂わせる代表曲の1つ。粒立ちの良いベースラインにふわふわ漂うようなメロディ、平沢お得意の変態ギターソロも炸裂し、その激しさは歌詞の問題などを凌駕する勢いを感じさせます。
・「PERSONAL PULSE」
歌が始まる前のイントロが非常に長い、本作の不気味さを最も表現している楽曲。淡々と刻んでいくリズム隊を尻目に、ギターのフレーズがキテレツ極まりありません。そして一旦歌が始まると今度はその歌のフレーズが常識を逸脱したかのような不気味さを演出、とても子供は夜に聴けないような仕様になっています。
・「FLOOR」
単調な曲調ながら本作随一の長尺な楽曲。相変わらずの手数の多さを見せながら淡々とした印象のドラムが主導し、煮え切らないメロディがゆったりと進んでいきます。間奏では突然段ボールの蔦木栄一が木琴や木鼓を叩きまくり、その奇妙な音像に花を添えています。
<評点>
・サウンド ★★ (単調なシンセ音と奇妙なフレーズを繰り返すギターの対照性)
・メロディ ★ (煮え切らない奇妙な歌メロを連発し聴き手を毒していく)
・リズム ★★★ (音響面は大人しくなるも田井中のドラミングとマッチする)
・曲構成 ★★ (特に盛り上がりもないメリハリのなさもコンセプトたるが故)
・個性 ★★ (80年代中盤の鮮やかなデジタルサウンドの裏道を行く)
総合評点: 7点
「GUSTO」 Especia
「GUSTO」(2014 つばさ)
Especia

<members>
冨永悠香:vocal・voice sample
三ノ宮ちか:vocal・voice sample
杉本暁音:vocal・voice sample
三瀬ちひろ:vocal・voice sample
脇田もなり:vocal・voice sample
森絵莉加:vocal・voice sample
1.「Intro」
2.「BayBlues」 詞:mirco 曲:miifuu 編:Schtein&Longer
3.「FOOLISH」 詞:mirco・ポウル守屋 曲・編:Schtein&Longer
4.「アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver)」 詞・曲・編:マセラティ渚
5.「Mount Up」 詞:三瀬ちひろ 曲:大谷武史 編:大谷武史・Schtein&Longer
6.「BEHIND YOU」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
7.「嘘つきなアネラ」 詞:UKO 曲:柿平愛 編:Schtein&Longer
8.「Intermission」
9.「No1 Sweeper」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
10.「L’elisir d’amore」 詞:mirco・ナンブフトシ 曲:Schtein&Longer 編:AWA
11.「海辺のサティ(PellyColo Remix)」 詞:mirco 曲・編:PellyColo
12.「ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)」
詞・曲:SAWA 編:Schtein&Longer
13.「くるかな」 詞・曲・編:マセラティ渚
14.「アビス」 詞:mirco 曲:ikkubaru 編:ikkubaru・Schtein&Longer
15.「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」 詞:mirco 曲:松隈ケンタ 編:Schtein&Longer
16.「Outro」
<support musician>
大谷武史:guitar
佐久間崇文:guitar
横山佑輝:guitar・bass・drum programming
柿平愛:piano・chorus
蝿田ミノル:piano
米原俊:trumpet
中川悦宏:tenor sax・alto sax
UKO:chorus
嵯峨根エラン:voice sample
新貝友輝:voice sample
山本大地:voice sample
山田由樹:voice sample
清水大充:rap・chorus
sound produced by Schtein&Longer
engineered by Rillsoul
● 濃厚な80’s臭を醸し出す音楽性で勝負する大阪ギャルアイドルグループの満を持したバブリー&ムーディーな1stフルアルバム
大阪堀江の80'sフレーバー豊かな地方アイドルグループEspeciaは、2012年のシングル「DULCE」、翌年の収録曲を一部入れ替えた2形態の変則ミニアルバム「AMARGA -Noche-」「AMARGA -Tarde-」が話題を呼び、その知名度を徐々に一部の音楽マニア達に浸透させていきます。BiS等の楽曲提供でその名を知られつつあったSchtein&Longerこと横山佑輝をサウンドプロデューサーに迎えていた彼女らの楽曲は、現在の80'シティポップ〜AORムーブメントの先鞭をつける役割を担うこととなり、そのアイドルらしからぬ渋さ全開のサウンドメイクは、個性を際立たせようとするあまり多様なジャンルに活路を求めていくことになる10年代アイドルグループの中でも確固たる地位を獲得し、アイドルソングに対する新たなファン層を増やしていくモデルケースとして注目を浴びる存在となっていきました。そして2014年、待望の1stフルアルバムがリリースされることとなるわけです。
十分に期待を持たせてからのフルアルバムということで、本作も実にがっつり16曲という大作となっていますが、キャッチーな楽曲でのっけから引き込むということもなく、いきなりムードたっぷりのインストから「Bay Blues」「FOOLISH」といったミディアムテンポの(良い意味での)地味な楽曲で勝負する、そのベテランのような風格というか貫禄たるや、まだメジャーデビューも果たしていないアイドルグループらしからぬ落ち着きが感じられます。対して宅録女子シンガーSAWAが手がけたキャッチー&ポップチューン「ミッドナイトConfusion」(本作のバージョンには全く納得がいってはいませんが)やVaporwave感満載の本作のリードチューン「No1 Sweeper」、Bis関係を手掛ける気鋭のサウンドプロデューサー松隈ケンタ作曲のシングルカット曲「YA・ME・TE!」といった打ち込み系ダンスチューンでは、覚えやすいキラーフレーズをしっかり混ぜ込みながら80'sサウンドを満喫できます。そしてその他のアルバム曲はアルバム曲らしく出過ぎず目立た過ぎず、Schtein&Longerお得意の「乾いたブラスセクションと煮え切らないメロディ」という古き良きシティポップマナーを踏襲した楽曲で音楽通を頷かせるような気遣いがなされており、若干の間延び感はあるものの、そのいなたさ具合がそのままEspeciaというグループ自体の個性として成立しているため、特に嫌味にも感じられません。まずはこの楽曲の充実ぶりとグループ個性の完成から考えても彼女らが全盛期に差し掛かってきたことが如実に理解できる作品と言えるでしょう。
アイドルソングのみならずPOPSとしての質の高さが認められた本作を手土産に、メジャーフィールドへ進出、順風満帆に思われたEspeciaでしたが、そこからプロモーション戦略の失敗からかイメージチェンジ→失速→メンバー脱退→新メンバー加入によるイメージチェンジ→失速→解散というように、もったいない方向へと推移していきます。大阪特有の場末感が彼女達の魅力の1つでもあっただけに、東京進出による迷いが戦略に現れてしまった不幸な例となってしまったことは残念でなりません。
<Favorite Songs>
・「No1 Sweeper」
流麗なサックスソロから一気になだれ込んでくる80'sエレクトロファンクチューン。クッキリとしたリズムパターン、長尺に揺らしながらのシンセパッドが特徴ですが、それらが支えているのは彼女達の真摯なヴォーカルで、本作中でも最もリズム感や楽曲とのマッチ感に優れていると思います。
・「アビス」
皆さんお馴染みインドネシアのikkubaruが提供したド直球のシティポップナンバー。ブラスセクションや軽快なギターのカッティング以上に、非常にメロディラインが良いです。特にノスタルジックなAメロに心打たれます。
・「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」
跳ねるブラス、粒の立ったスラップベースにより抜群のノリを生み出したシングルカット曲。メインフレーズを動き回るブラスセクションに任せながら、ワウワウギターとピアノをバックにあくまでアナログに攻めまくります。間奏のサックスソロにも深みを感じます。
<評点>
・サウンド ★★★ (アイドルの必要性を感じさせないほどの貫禄の音像)
・メロディ ★ (本格派を追求するあまり地味なフレーズが多し)
・リズム ★★ (80'sの匂いも残しながらそれは現代風に再構築)
・曲構成 ★ (幾ら何でも16曲は放り込み過ぎで質に差も)
・個性 ★★ (本作以降何でもありのアイドルグループが増加)
総合評点: 7点
Especia

<members>
冨永悠香:vocal・voice sample
三ノ宮ちか:vocal・voice sample
杉本暁音:vocal・voice sample
三瀬ちひろ:vocal・voice sample
脇田もなり:vocal・voice sample
森絵莉加:vocal・voice sample
1.「Intro」
2.「BayBlues」 詞:mirco 曲:miifuu 編:Schtein&Longer
3.「FOOLISH」 詞:mirco・ポウル守屋 曲・編:Schtein&Longer
4.「アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver)」 詞・曲・編:マセラティ渚
5.「Mount Up」 詞:三瀬ちひろ 曲:大谷武史 編:大谷武史・Schtein&Longer
6.「BEHIND YOU」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
7.「嘘つきなアネラ」 詞:UKO 曲:柿平愛 編:Schtein&Longer
8.「Intermission」
9.「No1 Sweeper」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
10.「L’elisir d’amore」 詞:mirco・ナンブフトシ 曲:Schtein&Longer 編:AWA
11.「海辺のサティ(PellyColo Remix)」 詞:mirco 曲・編:PellyColo
12.「ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)」
詞・曲:SAWA 編:Schtein&Longer
13.「くるかな」 詞・曲・編:マセラティ渚
14.「アビス」 詞:mirco 曲:ikkubaru 編:ikkubaru・Schtein&Longer
15.「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」 詞:mirco 曲:松隈ケンタ 編:Schtein&Longer
16.「Outro」
<support musician>
大谷武史:guitar
佐久間崇文:guitar
横山佑輝:guitar・bass・drum programming
柿平愛:piano・chorus
蝿田ミノル:piano
米原俊:trumpet
中川悦宏:tenor sax・alto sax
UKO:chorus
嵯峨根エラン:voice sample
新貝友輝:voice sample
山本大地:voice sample
山田由樹:voice sample
清水大充:rap・chorus
sound produced by Schtein&Longer
engineered by Rillsoul
● 濃厚な80’s臭を醸し出す音楽性で勝負する大阪ギャルアイドルグループの満を持したバブリー&ムーディーな1stフルアルバム
大阪堀江の80'sフレーバー豊かな地方アイドルグループEspeciaは、2012年のシングル「DULCE」、翌年の収録曲を一部入れ替えた2形態の変則ミニアルバム「AMARGA -Noche-」「AMARGA -Tarde-」が話題を呼び、その知名度を徐々に一部の音楽マニア達に浸透させていきます。BiS等の楽曲提供でその名を知られつつあったSchtein&Longerこと横山佑輝をサウンドプロデューサーに迎えていた彼女らの楽曲は、現在の80'シティポップ〜AORムーブメントの先鞭をつける役割を担うこととなり、そのアイドルらしからぬ渋さ全開のサウンドメイクは、個性を際立たせようとするあまり多様なジャンルに活路を求めていくことになる10年代アイドルグループの中でも確固たる地位を獲得し、アイドルソングに対する新たなファン層を増やしていくモデルケースとして注目を浴びる存在となっていきました。そして2014年、待望の1stフルアルバムがリリースされることとなるわけです。
十分に期待を持たせてからのフルアルバムということで、本作も実にがっつり16曲という大作となっていますが、キャッチーな楽曲でのっけから引き込むということもなく、いきなりムードたっぷりのインストから「Bay Blues」「FOOLISH」といったミディアムテンポの(良い意味での)地味な楽曲で勝負する、そのベテランのような風格というか貫禄たるや、まだメジャーデビューも果たしていないアイドルグループらしからぬ落ち着きが感じられます。対して宅録女子シンガーSAWAが手がけたキャッチー&ポップチューン「ミッドナイトConfusion」(本作のバージョンには全く納得がいってはいませんが)やVaporwave感満載の本作のリードチューン「No1 Sweeper」、Bis関係を手掛ける気鋭のサウンドプロデューサー松隈ケンタ作曲のシングルカット曲「YA・ME・TE!」といった打ち込み系ダンスチューンでは、覚えやすいキラーフレーズをしっかり混ぜ込みながら80'sサウンドを満喫できます。そしてその他のアルバム曲はアルバム曲らしく出過ぎず目立た過ぎず、Schtein&Longerお得意の「乾いたブラスセクションと煮え切らないメロディ」という古き良きシティポップマナーを踏襲した楽曲で音楽通を頷かせるような気遣いがなされており、若干の間延び感はあるものの、そのいなたさ具合がそのままEspeciaというグループ自体の個性として成立しているため、特に嫌味にも感じられません。まずはこの楽曲の充実ぶりとグループ個性の完成から考えても彼女らが全盛期に差し掛かってきたことが如実に理解できる作品と言えるでしょう。
アイドルソングのみならずPOPSとしての質の高さが認められた本作を手土産に、メジャーフィールドへ進出、順風満帆に思われたEspeciaでしたが、そこからプロモーション戦略の失敗からかイメージチェンジ→失速→メンバー脱退→新メンバー加入によるイメージチェンジ→失速→解散というように、もったいない方向へと推移していきます。大阪特有の場末感が彼女達の魅力の1つでもあっただけに、東京進出による迷いが戦略に現れてしまった不幸な例となってしまったことは残念でなりません。
<Favorite Songs>
・「No1 Sweeper」
流麗なサックスソロから一気になだれ込んでくる80'sエレクトロファンクチューン。クッキリとしたリズムパターン、長尺に揺らしながらのシンセパッドが特徴ですが、それらが支えているのは彼女達の真摯なヴォーカルで、本作中でも最もリズム感や楽曲とのマッチ感に優れていると思います。
・「アビス」
皆さんお馴染みインドネシアのikkubaruが提供したド直球のシティポップナンバー。ブラスセクションや軽快なギターのカッティング以上に、非常にメロディラインが良いです。特にノスタルジックなAメロに心打たれます。
・「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」
跳ねるブラス、粒の立ったスラップベースにより抜群のノリを生み出したシングルカット曲。メインフレーズを動き回るブラスセクションに任せながら、ワウワウギターとピアノをバックにあくまでアナログに攻めまくります。間奏のサックスソロにも深みを感じます。
<評点>
・サウンド ★★★ (アイドルの必要性を感じさせないほどの貫禄の音像)
・メロディ ★ (本格派を追求するあまり地味なフレーズが多し)
・リズム ★★ (80'sの匂いも残しながらそれは現代風に再構築)
・曲構成 ★ (幾ら何でも16曲は放り込み過ぎで質に差も)
・個性 ★★ (本作以降何でもありのアイドルグループが増加)
総合評点: 7点
「MUSTARD」 M-AGE
「MUSTARD」(1992 ビクター)
M-AGE

<members>
KOICHIRO:vocals
MIYO-KEN:guitars
KAJIWARA YUJI:bass
OKAZAKI:drums・percussion
DJ PEAH:dj・electronics
1.「SILENT FEARS」 詞:MIYO-KEN・KOICHIRO 曲:MIYO-KEN 編:M-AGE
2.「CALL ME」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
3.「WONDER」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
4.「BLOOMING OUT OF SEASON」 詞:KOICHIRO・OKAZAKI 曲:OKAZAKI 編:M-AGE
5.「MIND WAR」 詞・曲:KOICHIRO 編:M-AGE
6.「UNDER THE CUBIC SKY」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
7.「WALK ON THE MOON」 詞・曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
8.「CRISIS」 詞:KOICHIRO 曲:MIYO-KEN 編:M-AGE
9.「VISITOR」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
10.「ENOUGH OF THIS」 詞:KOICHIRO 曲:OKAZAKI 編:M-AGE
<support musician>
早川岳晴:electric cello
荻原テルエ:chorus
国分友里恵:chorus
横山和俊:synthesizer manipulate
produced by M-AGE
engineered by 比留間等
● ハウスとロックの融合を目指したデジタル新世代バンドの若さ故の粗さも楽しいデビューアルバム
90年代初頭のテクノ~ハウス勢力が急進してきた時代に颯爽と登場した若さ溢れる挑戦的な5人組、M-AGE。バンドというには古臭くなく、テクノというには神経質でもなく、現在でいうところの夜のコンビニでたむろしているような夜遊び好きな若者風のイメージのためか先入観が強すぎて音楽性は評価されにくかった彼らですが、早くからプログラミングによるブレイクビーツにロックなギターを乗せたデジロック志向のサウンドに早くから挑戦しており、先見の明があったグループとして今やレジェンドとして語られるくらいになりました。そんな彼らがメジャーデビューを果たしたのは1991年。ビクターの当時新進気鋭のエレクトロユニットを集めたオムニバス「DANCE 2 NOISE 001」への参加で、翌92年には1stシングル「WALK ON THE MOON」と共にremixシングル「3 RE-MIX + 1」をリリース、この1つの楽曲をremixによって解体+再構築していくスタイルが彼らの個性となっていきます。そしてシングルリリースの1ヶ月後には1stフルアルバムとなる本作が発表されることになるわけです。
オープニングチューンの「SILENT FEARS」からガンガン響くギターリフとは裏腹の軽々しいハウス特有のリズムのコントラストで勢いをつけると、前述の「DANCE 2 NOISE 001」収録曲「CALL ME」のremixでは、アシッドなシンセとスクラッチ&カットアップも活躍する斬新さも見せつけていきます。以降も全編が若さに任せた粗さを物ともしないチャレンジ精神と怖いもの知らずの新人類的中二病思考の賜物で、スクラッチやコラージュを利用した斬新なフレーズや、攻撃的なリズムワーク、シューゲイザーな隙間を埋め尽くすようなギタープレイを次々と繰り出していきます。このバンドの評価として和製Jesus Jonesとかヴォーカルとメロディ力の弱さがよく挙げられていますが、デビューしたてということも考えれば、これらもサウンド面の勢いによって許されるレベルのものではないかと思います。そして何と言ってもギターロックの古臭さをリズムパターンの斬新さでカッコよさに変換する能力に長けていると思わせる、リズム構築センスが彼らの最大の魅力でしょう。特にOKAZAKI(岡崎達成)の生ドラムとリズムボックスを楽曲によって使い分けながら生み出すグルーヴは、どれも直線的で攻撃的なのも若さゆえではあるものの、その粗さが本作では勢いを得ることに成功しているのではないかと思われるのです。もちろん印象的なギターリフを幾つも繰り出すMIYO-KENやDJ PEAHが生み出すトレンディなギミック、楽曲の半数を手がけるKAJIWARAもこの1stアルバムではそれぞれ随所で活躍しており、グループとしての一体感も感じられる好盤と言えるのではないでしょうか。つくづく短命であったのが惜しいバンドでした。
<Favorite Songs>
・「CALL ME」
のっけからノリノリのスクラッチで一気にペースを引き込んでいくリードチューン。音の隙間を埋めていくギターとアクセントとなるアシッドなシンセがポイントですが、間奏にはDJスタイルのカットアップで新しさを演出、若さゆえの勢いを感じます。
・「MIND WAR」
四つ打ちの軽快なリズムに乗り印象的なギターリフが絡んでいくデジロックチューン。AメロのシンセパッドのSF感覚が秀逸ですが、間奏直前のアヴァンギャルドなギターソロが圧巻です。ポツポツするリズムのおかげでコズミック風味になっているのもこの楽曲の印象を良くしていると思います。
・「WALK ON THE MOON」
メジャーデビュー後初のシングル。歪みまくるディストーションギターにハウスマナーのリズムプログラミング、随所で繰り出すサンプルギミック、デビューシングルらしい開放的なメロディ、新時代の幕開けを感じさせる楽曲であったと個人的には思います。
<評点>
・サウンド ★★ (荒々しいギターリフにアクセントとなるギミックが絶妙)
・メロディ ★ (どうしても似たような楽曲が多くなるのはご愛嬌か)
・リズム ★★ (ハウス特有の跳ねるリズムを直線的に構築)
・曲構成 ★ (攻撃的ではあるががメリハリが効いているとは言い難い)
・個性 ★★ (新世代を感じるチャレンジングな音楽性は評価できる)
総合評点: 6点
M-AGE

<members>
KOICHIRO:vocals
MIYO-KEN:guitars
KAJIWARA YUJI:bass
OKAZAKI:drums・percussion
DJ PEAH:dj・electronics
1.「SILENT FEARS」 詞:MIYO-KEN・KOICHIRO 曲:MIYO-KEN 編:M-AGE
2.「CALL ME」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
3.「WONDER」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
4.「BLOOMING OUT OF SEASON」 詞:KOICHIRO・OKAZAKI 曲:OKAZAKI 編:M-AGE
5.「MIND WAR」 詞・曲:KOICHIRO 編:M-AGE
6.「UNDER THE CUBIC SKY」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
7.「WALK ON THE MOON」 詞・曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
8.「CRISIS」 詞:KOICHIRO 曲:MIYO-KEN 編:M-AGE
9.「VISITOR」 詞:KOICHIRO 曲:KAJIWARA YUJI 編:M-AGE
10.「ENOUGH OF THIS」 詞:KOICHIRO 曲:OKAZAKI 編:M-AGE
<support musician>
早川岳晴:electric cello
荻原テルエ:chorus
国分友里恵:chorus
横山和俊:synthesizer manipulate
produced by M-AGE
engineered by 比留間等
● ハウスとロックの融合を目指したデジタル新世代バンドの若さ故の粗さも楽しいデビューアルバム
90年代初頭のテクノ~ハウス勢力が急進してきた時代に颯爽と登場した若さ溢れる挑戦的な5人組、M-AGE。バンドというには古臭くなく、テクノというには神経質でもなく、現在でいうところの夜のコンビニでたむろしているような夜遊び好きな若者風のイメージのためか先入観が強すぎて音楽性は評価されにくかった彼らですが、早くからプログラミングによるブレイクビーツにロックなギターを乗せたデジロック志向のサウンドに早くから挑戦しており、先見の明があったグループとして今やレジェンドとして語られるくらいになりました。そんな彼らがメジャーデビューを果たしたのは1991年。ビクターの当時新進気鋭のエレクトロユニットを集めたオムニバス「DANCE 2 NOISE 001」への参加で、翌92年には1stシングル「WALK ON THE MOON」と共にremixシングル「3 RE-MIX + 1」をリリース、この1つの楽曲をremixによって解体+再構築していくスタイルが彼らの個性となっていきます。そしてシングルリリースの1ヶ月後には1stフルアルバムとなる本作が発表されることになるわけです。
オープニングチューンの「SILENT FEARS」からガンガン響くギターリフとは裏腹の軽々しいハウス特有のリズムのコントラストで勢いをつけると、前述の「DANCE 2 NOISE 001」収録曲「CALL ME」のremixでは、アシッドなシンセとスクラッチ&カットアップも活躍する斬新さも見せつけていきます。以降も全編が若さに任せた粗さを物ともしないチャレンジ精神と怖いもの知らずの新人類的中二病思考の賜物で、スクラッチやコラージュを利用した斬新なフレーズや、攻撃的なリズムワーク、シューゲイザーな隙間を埋め尽くすようなギタープレイを次々と繰り出していきます。このバンドの評価として和製Jesus Jonesとかヴォーカルとメロディ力の弱さがよく挙げられていますが、デビューしたてということも考えれば、これらもサウンド面の勢いによって許されるレベルのものではないかと思います。そして何と言ってもギターロックの古臭さをリズムパターンの斬新さでカッコよさに変換する能力に長けていると思わせる、リズム構築センスが彼らの最大の魅力でしょう。特にOKAZAKI(岡崎達成)の生ドラムとリズムボックスを楽曲によって使い分けながら生み出すグルーヴは、どれも直線的で攻撃的なのも若さゆえではあるものの、その粗さが本作では勢いを得ることに成功しているのではないかと思われるのです。もちろん印象的なギターリフを幾つも繰り出すMIYO-KENやDJ PEAHが生み出すトレンディなギミック、楽曲の半数を手がけるKAJIWARAもこの1stアルバムではそれぞれ随所で活躍しており、グループとしての一体感も感じられる好盤と言えるのではないでしょうか。つくづく短命であったのが惜しいバンドでした。
<Favorite Songs>
・「CALL ME」
のっけからノリノリのスクラッチで一気にペースを引き込んでいくリードチューン。音の隙間を埋めていくギターとアクセントとなるアシッドなシンセがポイントですが、間奏にはDJスタイルのカットアップで新しさを演出、若さゆえの勢いを感じます。
・「MIND WAR」
四つ打ちの軽快なリズムに乗り印象的なギターリフが絡んでいくデジロックチューン。AメロのシンセパッドのSF感覚が秀逸ですが、間奏直前のアヴァンギャルドなギターソロが圧巻です。ポツポツするリズムのおかげでコズミック風味になっているのもこの楽曲の印象を良くしていると思います。
・「WALK ON THE MOON」
メジャーデビュー後初のシングル。歪みまくるディストーションギターにハウスマナーのリズムプログラミング、随所で繰り出すサンプルギミック、デビューシングルらしい開放的なメロディ、新時代の幕開けを感じさせる楽曲であったと個人的には思います。
<評点>
・サウンド ★★ (荒々しいギターリフにアクセントとなるギミックが絶妙)
・メロディ ★ (どうしても似たような楽曲が多くなるのはご愛嬌か)
・リズム ★★ (ハウス特有の跳ねるリズムを直線的に構築)
・曲構成 ★ (攻撃的ではあるががメリハリが効いているとは言い難い)
・個性 ★★ (新世代を感じるチャレンジングな音楽性は評価できる)
総合評点: 6点
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