「CHOCOLATE LIPS」 CHOCOLATE LIPS
「CHOCOLATE LIPS」(1984 アリオラ)
CHOCOLATE LIPS

<members>
美穂:vocal
Jimmie L.Weaver:sax・vocal
James W.Norwood Jr.:bass・vocal
1.「SEXY EYES」
詞:美穂 曲:Jimmie L.Weaver 編:Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson・Shu
2.「DAY DREAMIN’」
詞:美穂 曲:Jimmie L.Weaver 編:Michael C.Wilson・Jimmie L.Weaver
3.「TELL ME WHY」
詞・曲:美穂 編:Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson・美穂
4.「FOOLISH GIRL」
詞:美穂 曲:もんたよしのり
編:もんたよしのり・Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson
5.「WEEKEND LOVER」
詞:美穂 曲:Michael C.Wilson 編:Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson
6.「MILK & HONEY」 詞:美穂 曲・編:Michael C.Wilson・Jimmie L.Weaver
7.「MIDNIGHT STEP」 詞:夢彦 曲:美穂・SILKY 編:Jimmie L.Weaver・Shu
8.「FEEL SO GOOD(サイコーノキブン)」
詞:美穂・Jimmie L.Weaver 曲:Jimmie L.Weaver 編:Jimmie L.Weaver・Shu
9.「IN TIME」 詞:美穂 曲・編:Jimmie L.Weaver・奈良部匠平
<support musician>
福田真國:electric guitar
Andre W.C.Salisberry:drums
Michael C.Wilson:keyboards
奈良部匠平:keyboards
Matthew L.Gregory:chorus
山内洋子:chorus
produced by Jimmie L.Weaver・増井ヨシヒロ
engineered by 寺田仁
● 軽快なニューウェーブテイストのアーバンファンクに乗った日米混合ユニットが残したブラコン&ダンサブルな唯一の作品
もんた&ブラザーズのゲストサックスプレイヤーとして来日していたアメリカ西海岸のセッションミュージシャンであったJimmie Weaverがたまたま遊びに来ていた六本木のライブハウスで飛び入りで歌っていた女性に出会ったことがきっかけで結成されたという逸話のCHOCOLATE LIPS。美穂と名乗るこの女性は臆することのないそのヴォーカルセンスによりWeaverを魅了、無理やり彼女を口説き落としたWeaverは活動拠点を日本に移してまでこのユニットに専念しようとするわけですが、そこに70年代から早くも日本に魅せられ留学生として移住するかたわら、つのだ☆ひろ率いるセッション・グランプリのベーシストとしても活躍していたJames Norwood Jr.が加わり、本格的にユニットが始動、1984年に本アルバムがリリースされることになります。時代はちょうどテクノポップブームが下火になりつつも電子楽器技術が日進月歩の発達を遂げていたことに起因したブラックテイストのエレクトロアーバンファンクがアメリカを中心に流行、日本にも先鋭的なミュージシャンがそのニュアンスを取り入れ始めていた時期ということもあって、本作では日米男女混合ユニットという個性的な側面を生かしつつ、そのイメージへの期待を裏切ることのない本場を意識したアーバンファンクサウンドを楽しむことができます。
本格派ブラコンサウンドが当然のごとく期待され、その期待に応えるだけのクオリティを備えている本作ですが、そこは日本リリースの作品ということもあって、アーバンファンクの裏にはしっかりとジャパニーズ歌謡特有のいなたいメロディが隠されている楽曲も多く収録されています。またチープなシンセフレーズの多用や柔らかいスネア処理が中心であることを考えると、下火になったニューウェーブサウンドの残り香すら漂っていますが、それでも本作がブラックコンテンポラリーな匂いを充満させているのは、James Norwood Jr.のチョッパー(あえてチョッパーと呼びます)を中心としたベースプレイに他なりません。彼のナチュラルで軽快なチョッパープレイは、コケティッシュで日本人離れした美穂のヴォーカルとの相性も良く、一聴して洋楽コピーと揶揄されがちなサウンドの中でも個性的で、本場というよりは日本での暮らしによって得られた和の文化を理解しているかのような日本人の好みに寄った印象で、その辺りがこのユニットの他にはない日米混合を生かした個性になっているものと思われます。結局ブレイクには至らず本作を残すのみに終わってしまったわけですが、美穂はミニアルバム「カリフォルニア・クライシス」を残した後は、本名の「藤原美穂」として80年代後半を岩田雅之と西脇辰弥とのユニットPAZZ等で活躍、セッションヴォーカリストとして経験を積みながら、90年代でも中野雅仁とのPas de Chatとしても活動し、その足跡を残しています。なお、Jimmie Weaverのその後は確認できていませんが、James Norwood Jr.は森岡みまや若林忠宏と共に無国籍バンド「七福神」のベーシストとしてその名を確認できるとともに、その後もサポートプレイヤーや長身を生かしたCMモデルやDJ活動等多岐にわたり「日本で」活動しています。
(また、本作は和モノコレクターアイテムとして人気があるのかアナログレコードとしても再発されるようです。隠れた人気ですね。)
<Favorite Songs>
・「SEXY EYES」
シモンズドラム&チョッパーという80年代中期ファンクの典型的なリズム隊で攻めるオープニングナンバー。このシモンズの響きとチープな白玉シンセの安っぽいサウンドがNorwoodのチョッパーをより引き立てるとともに、ファンクというよりもポストニューウェーブの側面で語るに足る印象を持つことができます。
・「DAY DREAMIN’」
前曲と比較するとニューミュージックテイストに寄ったポップソング。くぐもったシンセリフとカッティングギターの陰に隠れたプチプチっとしたリリースを極限までに切ったリズミカルシンセフレーズがたまりません。
・「MIDNIGHT STEP」
美穂自身が作曲も手がけたミディアムチューン。鼻にかかったような美穂のヴォーカル存在感が光りますが、楽曲としては地味ですが音数の少なさの中で分離の良く粒が立ったブリブリとコクを効かせたベースフレーズが味わい深いです。
<評点>
・サウンド ★★ (チョッパーが生み出すブラコン特有の躍動感)
・メロディ ★ (意外と保守的なフレーズで冒険心は薄い印象)
・リズム ★★ (ベースの存在感が際立つがドラムは意外と大人しい)
・曲構成 ★ (ラストにバラードを2曲続けるのは少し退屈かも)
・個性 ★★ (ポテンシャルを出し切れない感もあり惜しかった)
総合評点: 6点
CHOCOLATE LIPS

<members>
美穂:vocal
Jimmie L.Weaver:sax・vocal
James W.Norwood Jr.:bass・vocal
1.「SEXY EYES」
詞:美穂 曲:Jimmie L.Weaver 編:Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson・Shu
2.「DAY DREAMIN’」
詞:美穂 曲:Jimmie L.Weaver 編:Michael C.Wilson・Jimmie L.Weaver
3.「TELL ME WHY」
詞・曲:美穂 編:Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson・美穂
4.「FOOLISH GIRL」
詞:美穂 曲:もんたよしのり
編:もんたよしのり・Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson
5.「WEEKEND LOVER」
詞:美穂 曲:Michael C.Wilson 編:Jimmie L.Weaver・Michael C.Wilson
6.「MILK & HONEY」 詞:美穂 曲・編:Michael C.Wilson・Jimmie L.Weaver
7.「MIDNIGHT STEP」 詞:夢彦 曲:美穂・SILKY 編:Jimmie L.Weaver・Shu
8.「FEEL SO GOOD(サイコーノキブン)」
詞:美穂・Jimmie L.Weaver 曲:Jimmie L.Weaver 編:Jimmie L.Weaver・Shu
9.「IN TIME」 詞:美穂 曲・編:Jimmie L.Weaver・奈良部匠平
<support musician>
福田真國:electric guitar
Andre W.C.Salisberry:drums
Michael C.Wilson:keyboards
奈良部匠平:keyboards
Matthew L.Gregory:chorus
山内洋子:chorus
produced by Jimmie L.Weaver・増井ヨシヒロ
engineered by 寺田仁
● 軽快なニューウェーブテイストのアーバンファンクに乗った日米混合ユニットが残したブラコン&ダンサブルな唯一の作品
もんた&ブラザーズのゲストサックスプレイヤーとして来日していたアメリカ西海岸のセッションミュージシャンであったJimmie Weaverがたまたま遊びに来ていた六本木のライブハウスで飛び入りで歌っていた女性に出会ったことがきっかけで結成されたという逸話のCHOCOLATE LIPS。美穂と名乗るこの女性は臆することのないそのヴォーカルセンスによりWeaverを魅了、無理やり彼女を口説き落としたWeaverは活動拠点を日本に移してまでこのユニットに専念しようとするわけですが、そこに70年代から早くも日本に魅せられ留学生として移住するかたわら、つのだ☆ひろ率いるセッション・グランプリのベーシストとしても活躍していたJames Norwood Jr.が加わり、本格的にユニットが始動、1984年に本アルバムがリリースされることになります。時代はちょうどテクノポップブームが下火になりつつも電子楽器技術が日進月歩の発達を遂げていたことに起因したブラックテイストのエレクトロアーバンファンクがアメリカを中心に流行、日本にも先鋭的なミュージシャンがそのニュアンスを取り入れ始めていた時期ということもあって、本作では日米男女混合ユニットという個性的な側面を生かしつつ、そのイメージへの期待を裏切ることのない本場を意識したアーバンファンクサウンドを楽しむことができます。
本格派ブラコンサウンドが当然のごとく期待され、その期待に応えるだけのクオリティを備えている本作ですが、そこは日本リリースの作品ということもあって、アーバンファンクの裏にはしっかりとジャパニーズ歌謡特有のいなたいメロディが隠されている楽曲も多く収録されています。またチープなシンセフレーズの多用や柔らかいスネア処理が中心であることを考えると、下火になったニューウェーブサウンドの残り香すら漂っていますが、それでも本作がブラックコンテンポラリーな匂いを充満させているのは、James Norwood Jr.のチョッパー(あえてチョッパーと呼びます)を中心としたベースプレイに他なりません。彼のナチュラルで軽快なチョッパープレイは、コケティッシュで日本人離れした美穂のヴォーカルとの相性も良く、一聴して洋楽コピーと揶揄されがちなサウンドの中でも個性的で、本場というよりは日本での暮らしによって得られた和の文化を理解しているかのような日本人の好みに寄った印象で、その辺りがこのユニットの他にはない日米混合を生かした個性になっているものと思われます。結局ブレイクには至らず本作を残すのみに終わってしまったわけですが、美穂はミニアルバム「カリフォルニア・クライシス」を残した後は、本名の「藤原美穂」として80年代後半を岩田雅之と西脇辰弥とのユニットPAZZ等で活躍、セッションヴォーカリストとして経験を積みながら、90年代でも中野雅仁とのPas de Chatとしても活動し、その足跡を残しています。なお、Jimmie Weaverのその後は確認できていませんが、James Norwood Jr.は森岡みまや若林忠宏と共に無国籍バンド「七福神」のベーシストとしてその名を確認できるとともに、その後もサポートプレイヤーや長身を生かしたCMモデルやDJ活動等多岐にわたり「日本で」活動しています。
(また、本作は和モノコレクターアイテムとして人気があるのかアナログレコードとしても再発されるようです。隠れた人気ですね。)
<Favorite Songs>
・「SEXY EYES」
シモンズドラム&チョッパーという80年代中期ファンクの典型的なリズム隊で攻めるオープニングナンバー。このシモンズの響きとチープな白玉シンセの安っぽいサウンドがNorwoodのチョッパーをより引き立てるとともに、ファンクというよりもポストニューウェーブの側面で語るに足る印象を持つことができます。
・「DAY DREAMIN’」
前曲と比較するとニューミュージックテイストに寄ったポップソング。くぐもったシンセリフとカッティングギターの陰に隠れたプチプチっとしたリリースを極限までに切ったリズミカルシンセフレーズがたまりません。
・「MIDNIGHT STEP」
美穂自身が作曲も手がけたミディアムチューン。鼻にかかったような美穂のヴォーカル存在感が光りますが、楽曲としては地味ですが音数の少なさの中で分離の良く粒が立ったブリブリとコクを効かせたベースフレーズが味わい深いです。
<評点>
・サウンド ★★ (チョッパーが生み出すブラコン特有の躍動感)
・メロディ ★ (意外と保守的なフレーズで冒険心は薄い印象)
・リズム ★★ (ベースの存在感が際立つがドラムは意外と大人しい)
・曲構成 ★ (ラストにバラードを2曲続けるのは少し退屈かも)
・個性 ★★ (ポテンシャルを出し切れない感もあり惜しかった)
総合評点: 6点
「世界の縁」 ウニタ・ミニマ
「世界の縁」(1989 Pin)
ウニタ・ミニマ

<members>
近藤達郎:vocals・keyboards・piano・accordion・indian banjo・mini piano・thumb piano etc
れいち:vocals・drums・xylophone・keyboards etc
1.「シャツ」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
2.「場所」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
3.「空」 詞:れいち 曲・編:ウニタ・ミニマ
4.「走る」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
5.「夜」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
6.「パレード」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
7.「微笑む」 詞・曲:近藤達郎 編:ウニタ・ミニマ
8.「世界の縁」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
produced by ウニタ・ミニマ・藤井暁
engineered by 藤井暁
● マニアックなセンスが光る複雑なリズムとミニマルなピアノをバックに真摯な歌で爪痕を残した才能溢れる男女ユニットの唯一作
チャクラのメンバーとしてその名を知られるようになってから、小川美潮界隈のみならず立花ハジメ、土屋昌巳や高橋幸宏等のテクノ&ニューウェーブ系作品への参加、その他多くのアーティストのサポートやCM音楽をこなすなど、引く手数多のキーボーディストであった近藤達郎は、前述の活動において培った音楽的センスを開放するためのソロ活動を地道に始め、1984年のMOON RIDERS系インディーズアーティストを集めたオムニバスアルバム「陽気な若き博物館員たち」では、「Ballet Machinique」「ぼくら」の2曲でソロ名義で参加、そのシンプルかつミニマル+ポリリズムな前衛的サウンドは異彩を放っていました。その中でも「ぼくら」は歌モノとしての独特な存在感を醸し出していましたが、そこでゲストヴォーカルとして参加していたのが、仙波清彦率いる強烈な個性を放つ和風ニューウェーブバンド、はにわちゃんのドラマー兼ヴォーカリストのれいちで、この楽曲の発展形として近藤とれいちの男女デュオとしてのユニットとして、ウニタ・ミニマが結成されることになります。しかしながら両者共に優れた演奏力を備えた引っ張りだこのミュージシャンということもあって、80年代の多忙な時期の合間に地道にライブ活動を続けた結果、音源としてのリリースは80年代も終わりを迎えた89年まで待たなければならなかったわけです。
こうして生まれた本作ですが、2人でシーケンサーやテープに頼らずどこまでできるか、をテーマにした活動というだけあって、その音像はシンプルの一言。しかしミニマルかつプログレッシブな展開を見せる楽曲構成があいまって、そのドラムパターンは複雑極まりなく、転調を重ねまくるコードワークはまさに「一筋縄ではいかない」という言葉を象徴するかのようです。基本としてはピアノとドラム、そして両者がユニゾンで、時には輪唱で掛け合いながら歌いまくるという、純粋な共同作業スタイルですが、楽曲によってはチープなシンセサイザーで味付けして音世界にうっすらと色を加えています。そしてそのシンプルな音像に対する絶妙な色の加え方(一気にエレクトリックワールドに引き込んでいく)が彼らのセンスの見せ所であり、彼らの類稀な個性の源と言えるでしょう。このあたりは故・藤井暁のエンジニアリングによる部分も大きいのですが、彼らの独創的なミニマルポップとエレクトリックの邂逅によって非常に包容力のある音響に仕上がっていると思います。結局のところこのユニットとしてのレコーディング作品は本作のみにとどまりましたが、近藤達郎はその後も大友良英やくじら、原マスミとの共同作業のほか多数のアーティストに請われる形で現在も現役バリバリに活躍していますし、れいちも夫の清水一登とのユニットAREPOSでマイペースに活動していますので、2人ともそれぞれに音楽界で確かな足跡を残しています。そして本作は2016年、未発表音源と共にまさかのリマスターで再発されましたので、再評価の一助としていただければ幸いです(未発表ライブ音源の「昼」は絶品です)。
<Favorite Songs>
・「シャツ」
細かいハイハット&タムワークが魅力的なオープニングナンバー。決して表には出てこなくても存在感たっぷりのノイズなアトモスフィアと、間奏の不気味な2種類のシンセソロとコーラスワークに、テクノロジーを感じさせます。
・「パレード」
8分音符を刻むキーボードリフに乗って4連のスネアが強烈に主張するストレンジポップ。中盤からは絶妙にシンセな味付けが施されて音風景を広げていきます。リピートが多いメロディにあってサウンド面での抜き差しの妙が楽しめるテクニカルな楽曲です。
・「微笑む」
オリエンタル調なゆったりしたテンポに癒しを感じながらもドラムの音量が大き目に主張する楽曲。1周目の間奏からはアトモスフィアなシンセが大活躍しており、ナチュラルに楽曲に入り込みながら複雑なミニマルと転調の狭間でエレクトリックに侵食していくサウンドデザインが巧みです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ピアノ&ドラムの隙間に絶妙にシンセが流れ込む)
・メロディ ★ (歌モノとして成立するがやや捻り過ぎな面も)
・リズム ★★★ (生音を大事にしながらもテクニックに疑いなし)
・曲構成 ★ (大まかなタイプで分けると似たような楽曲が続く)
・個性 ★★★ (技巧派の演奏と真摯なユニゾン歌唱に圧倒される)
総合評点: 7点
ウニタ・ミニマ

<members>
近藤達郎:vocals・keyboards・piano・accordion・indian banjo・mini piano・thumb piano etc
れいち:vocals・drums・xylophone・keyboards etc
1.「シャツ」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
2.「場所」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
3.「空」 詞:れいち 曲・編:ウニタ・ミニマ
4.「走る」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
5.「夜」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
6.「パレード」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
7.「微笑む」 詞・曲:近藤達郎 編:ウニタ・ミニマ
8.「世界の縁」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
produced by ウニタ・ミニマ・藤井暁
engineered by 藤井暁
● マニアックなセンスが光る複雑なリズムとミニマルなピアノをバックに真摯な歌で爪痕を残した才能溢れる男女ユニットの唯一作
チャクラのメンバーとしてその名を知られるようになってから、小川美潮界隈のみならず立花ハジメ、土屋昌巳や高橋幸宏等のテクノ&ニューウェーブ系作品への参加、その他多くのアーティストのサポートやCM音楽をこなすなど、引く手数多のキーボーディストであった近藤達郎は、前述の活動において培った音楽的センスを開放するためのソロ活動を地道に始め、1984年のMOON RIDERS系インディーズアーティストを集めたオムニバスアルバム「陽気な若き博物館員たち」では、「Ballet Machinique」「ぼくら」の2曲でソロ名義で参加、そのシンプルかつミニマル+ポリリズムな前衛的サウンドは異彩を放っていました。その中でも「ぼくら」は歌モノとしての独特な存在感を醸し出していましたが、そこでゲストヴォーカルとして参加していたのが、仙波清彦率いる強烈な個性を放つ和風ニューウェーブバンド、はにわちゃんのドラマー兼ヴォーカリストのれいちで、この楽曲の発展形として近藤とれいちの男女デュオとしてのユニットとして、ウニタ・ミニマが結成されることになります。しかしながら両者共に優れた演奏力を備えた引っ張りだこのミュージシャンということもあって、80年代の多忙な時期の合間に地道にライブ活動を続けた結果、音源としてのリリースは80年代も終わりを迎えた89年まで待たなければならなかったわけです。
こうして生まれた本作ですが、2人でシーケンサーやテープに頼らずどこまでできるか、をテーマにした活動というだけあって、その音像はシンプルの一言。しかしミニマルかつプログレッシブな展開を見せる楽曲構成があいまって、そのドラムパターンは複雑極まりなく、転調を重ねまくるコードワークはまさに「一筋縄ではいかない」という言葉を象徴するかのようです。基本としてはピアノとドラム、そして両者がユニゾンで、時には輪唱で掛け合いながら歌いまくるという、純粋な共同作業スタイルですが、楽曲によってはチープなシンセサイザーで味付けして音世界にうっすらと色を加えています。そしてそのシンプルな音像に対する絶妙な色の加え方(一気にエレクトリックワールドに引き込んでいく)が彼らのセンスの見せ所であり、彼らの類稀な個性の源と言えるでしょう。このあたりは故・藤井暁のエンジニアリングによる部分も大きいのですが、彼らの独創的なミニマルポップとエレクトリックの邂逅によって非常に包容力のある音響に仕上がっていると思います。結局のところこのユニットとしてのレコーディング作品は本作のみにとどまりましたが、近藤達郎はその後も大友良英やくじら、原マスミとの共同作業のほか多数のアーティストに請われる形で現在も現役バリバリに活躍していますし、れいちも夫の清水一登とのユニットAREPOSでマイペースに活動していますので、2人ともそれぞれに音楽界で確かな足跡を残しています。そして本作は2016年、未発表音源と共にまさかのリマスターで再発されましたので、再評価の一助としていただければ幸いです(未発表ライブ音源の「昼」は絶品です)。
<Favorite Songs>
・「シャツ」
細かいハイハット&タムワークが魅力的なオープニングナンバー。決して表には出てこなくても存在感たっぷりのノイズなアトモスフィアと、間奏の不気味な2種類のシンセソロとコーラスワークに、テクノロジーを感じさせます。
・「パレード」
8分音符を刻むキーボードリフに乗って4連のスネアが強烈に主張するストレンジポップ。中盤からは絶妙にシンセな味付けが施されて音風景を広げていきます。リピートが多いメロディにあってサウンド面での抜き差しの妙が楽しめるテクニカルな楽曲です。
・「微笑む」
オリエンタル調なゆったりしたテンポに癒しを感じながらもドラムの音量が大き目に主張する楽曲。1周目の間奏からはアトモスフィアなシンセが大活躍しており、ナチュラルに楽曲に入り込みながら複雑なミニマルと転調の狭間でエレクトリックに侵食していくサウンドデザインが巧みです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ピアノ&ドラムの隙間に絶妙にシンセが流れ込む)
・メロディ ★ (歌モノとして成立するがやや捻り過ぎな面も)
・リズム ★★★ (生音を大事にしながらもテクニックに疑いなし)
・曲構成 ★ (大まかなタイプで分けると似たような楽曲が続く)
・個性 ★★★ (技巧派の演奏と真摯なユニゾン歌唱に圧倒される)
総合評点: 7点
「Fuel For The Fire」 Naked Eyes
「Fuel For The Fire」 (1984 EMI)
Naked Eyes

<members>
Pete Byrne:vocals
Rob Fisher:keyboards・Fairlight CMI programming・LINN drum programming
1.「(What) In The Name Of Love」 Pete Byrne/Rob Fisher
2.「New Hearts」 Pete Byrne/Rob Fisher
3.「Sacrifice」 Pete Byrne/Rob Fisher
4.「Eyes Of A Child」 Pete Byrne/Rob Fisher
5.「Once Is Enough」 Pete Byrne/Rob Fisher
6.「No Flowers Please」 Pete Byrne/Rob Fisher
7.「Answering Service」 Pete Byrne/Rob Fisher
8.「Me I See In You」 Pete Byrne/Rob Fisher
9.「Flying Solo」 Pete Byrne/Rob Fisher
10.「Flag Of Convenience」 Pete Byrne/Rob Fisher
<support musician>
Ira Sigel:guitar
Tony Mansfield:guitar
John Read:bass
Frank Valardi:drums
Graham Broad:drums
Audrey Wheeler:backing vocals
Cindy Mizelle:backing vocals
Tina B.:backing vocals
Wendall Morrison:backing vocals
produced by Arthur Baker・Tony Mansfield
engineered by Haydn Bendall・Jay Burnett
● 1stに引き続きトニマン色を引き継ぎながらもメインストリームを意識した親しみやすい音づくりを志向する2ndアルバム
Fairlight CMIをいち早く導入してマシナリーエレポップで瞬間的にチャートを席巻したデュオユニットNaked Eyesは、哀愁エレポップの先駆者であったNew MuzikのTony Mansfieldをプロデューサーに迎え、1983年に1stアルバム「Burning Bridges」をリリース、いわゆるトニマン節満載の緻密なエレクトリックサウンドの完成度と、シングル「Always Something There to Remind Me」、「Promises, Promises」のスマッシュヒットも手伝って、一躍エレポップシーンに一石を投じるユニットとなりかけました。その勢いを駆って翌年間髪入れずに早くも2ndアルバムがリリースされることになりますが、当時としては当たり前であったこのリリース間隔も彼らにとっては少々急ぎ過ぎた感もあったのか、楽曲のタイプとしてはほぼ1stの人工バブルガムエレポップを踏襲したものとなっており特に変化はなかったことから、消費スピードが格段に早くなった当時のエレポップ界においてはなかなか難しい立ち位置になった作品と言えるかもしれません。今回取り上げるのはそんな本作になります。
1stアルバムの延長線上ということで、本作においてもFairlightCMIとLINN Drumという80年代前半の最先端サンプリング&PCMサウンドが楽しめますが、本作でも前作に引き続き全面的にプロデュースを継続しているTony Mansfieldの影響力がやはり強く感じられます。しかし本作では先行シングルであった「(What) In The Name Of Love」や「Sacrifice」の2曲では、Afrika Bambaataa「Planet Rock」で名を馳せたArthur Bakerをプロデューサーに迎えるなど新機軸を打ち出そうとしています。結果的には劇的な違いこそ生み出すことはできず、全体的にはTony Mansfieldが得意とする人工甘味料全開のサイボーグ化された哀愁エレポップ道をひた走り続けるといった印象を受けます。多彩な音色をフレーズ毎に散りばめながらFairlight中心のサンプリング&PCMサウンドを構築していくTony Mansfieldのセンスと技術を、前作では指をくわえるだけであったRob Fisherが、本作ではメロディ&サウンドのデザイン力にはセンスを見せ始めるなどその技術を忠実に受け継ごうとする意志も感じられ、その成長ぶりが期待されるところでしたが、結局このプロジェクトは本作で一旦終了してしまったことは残念でした。さらに残念だったのは、解散後Climie Fisherとしても活躍していたRob Fisherが99年に早逝してしまったことで、その後Pete ByrneはNaked Eyesの看板を独りで背負っているようですが、デュオでこその輝きをもう少し見ていたかったと今でも嘱望して止みません。
<Favorite Songs>
・「(What) In The Name Of Love」
冒頭からシモンズドラムが乱れ打たれる先行シングルナンバー。Arthur Baker直伝の派手なリズムをフィーチャーしながらチープなシーケンスで装飾しながらのマイナーメロディ全開の楽曲は、彼らのデビュー当初からの十八番と言えるでしょう。
・「New Hearts」
リズムだけでなくシーケンスもバキバキのプログラミングで開き直った感のあるテクノロジー感満載のエレポップ。これぞTony Mansfieldともいうべききらびやかなサウンドデザイン、特にシンセベースのタイミングや残響音を排したギターサウンドは強烈です。
・「No Flowers Please」
ミディアムチューンだからこそ生きる哀愁メロディのセンスに、Fairlightのサンプリングを豪快に使用したサウンドメイクが光る佳曲。オケヒットやコーラスのLo-Fiサンプリングの妙が楽しめます。もちろんトニマン謹製のソナーサウンドのロマンティックエレポップです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (電子楽器発達期だからこその多彩な人工デザイン)
・メロディ ★★ (後半に地味な楽曲が続くが哀愁メロディは健在)
・リズム ★★★ (エフェクトを駆使してPCMリズムをパワフルに)
・曲構成 ★ (前半の楽曲の勢いを後半にも維持したかったが)
・個性 ★ (乱立してしまった時期遅れのエレポップの中で苦戦)
総合評点: 7点
Naked Eyes

<members>
Pete Byrne:vocals
Rob Fisher:keyboards・Fairlight CMI programming・LINN drum programming
1.「(What) In The Name Of Love」 Pete Byrne/Rob Fisher
2.「New Hearts」 Pete Byrne/Rob Fisher
3.「Sacrifice」 Pete Byrne/Rob Fisher
4.「Eyes Of A Child」 Pete Byrne/Rob Fisher
5.「Once Is Enough」 Pete Byrne/Rob Fisher
6.「No Flowers Please」 Pete Byrne/Rob Fisher
7.「Answering Service」 Pete Byrne/Rob Fisher
8.「Me I See In You」 Pete Byrne/Rob Fisher
9.「Flying Solo」 Pete Byrne/Rob Fisher
10.「Flag Of Convenience」 Pete Byrne/Rob Fisher
<support musician>
Ira Sigel:guitar
Tony Mansfield:guitar
John Read:bass
Frank Valardi:drums
Graham Broad:drums
Audrey Wheeler:backing vocals
Cindy Mizelle:backing vocals
Tina B.:backing vocals
Wendall Morrison:backing vocals
produced by Arthur Baker・Tony Mansfield
engineered by Haydn Bendall・Jay Burnett
● 1stに引き続きトニマン色を引き継ぎながらもメインストリームを意識した親しみやすい音づくりを志向する2ndアルバム
Fairlight CMIをいち早く導入してマシナリーエレポップで瞬間的にチャートを席巻したデュオユニットNaked Eyesは、哀愁エレポップの先駆者であったNew MuzikのTony Mansfieldをプロデューサーに迎え、1983年に1stアルバム「Burning Bridges」をリリース、いわゆるトニマン節満載の緻密なエレクトリックサウンドの完成度と、シングル「Always Something There to Remind Me」、「Promises, Promises」のスマッシュヒットも手伝って、一躍エレポップシーンに一石を投じるユニットとなりかけました。その勢いを駆って翌年間髪入れずに早くも2ndアルバムがリリースされることになりますが、当時としては当たり前であったこのリリース間隔も彼らにとっては少々急ぎ過ぎた感もあったのか、楽曲のタイプとしてはほぼ1stの人工バブルガムエレポップを踏襲したものとなっており特に変化はなかったことから、消費スピードが格段に早くなった当時のエレポップ界においてはなかなか難しい立ち位置になった作品と言えるかもしれません。今回取り上げるのはそんな本作になります。
1stアルバムの延長線上ということで、本作においてもFairlightCMIとLINN Drumという80年代前半の最先端サンプリング&PCMサウンドが楽しめますが、本作でも前作に引き続き全面的にプロデュースを継続しているTony Mansfieldの影響力がやはり強く感じられます。しかし本作では先行シングルであった「(What) In The Name Of Love」や「Sacrifice」の2曲では、Afrika Bambaataa「Planet Rock」で名を馳せたArthur Bakerをプロデューサーに迎えるなど新機軸を打ち出そうとしています。結果的には劇的な違いこそ生み出すことはできず、全体的にはTony Mansfieldが得意とする人工甘味料全開のサイボーグ化された哀愁エレポップ道をひた走り続けるといった印象を受けます。多彩な音色をフレーズ毎に散りばめながらFairlight中心のサンプリング&PCMサウンドを構築していくTony Mansfieldのセンスと技術を、前作では指をくわえるだけであったRob Fisherが、本作ではメロディ&サウンドのデザイン力にはセンスを見せ始めるなどその技術を忠実に受け継ごうとする意志も感じられ、その成長ぶりが期待されるところでしたが、結局このプロジェクトは本作で一旦終了してしまったことは残念でした。さらに残念だったのは、解散後Climie Fisherとしても活躍していたRob Fisherが99年に早逝してしまったことで、その後Pete ByrneはNaked Eyesの看板を独りで背負っているようですが、デュオでこその輝きをもう少し見ていたかったと今でも嘱望して止みません。
<Favorite Songs>
・「(What) In The Name Of Love」
冒頭からシモンズドラムが乱れ打たれる先行シングルナンバー。Arthur Baker直伝の派手なリズムをフィーチャーしながらチープなシーケンスで装飾しながらのマイナーメロディ全開の楽曲は、彼らのデビュー当初からの十八番と言えるでしょう。
・「New Hearts」
リズムだけでなくシーケンスもバキバキのプログラミングで開き直った感のあるテクノロジー感満載のエレポップ。これぞTony Mansfieldともいうべききらびやかなサウンドデザイン、特にシンセベースのタイミングや残響音を排したギターサウンドは強烈です。
・「No Flowers Please」
ミディアムチューンだからこそ生きる哀愁メロディのセンスに、Fairlightのサンプリングを豪快に使用したサウンドメイクが光る佳曲。オケヒットやコーラスのLo-Fiサンプリングの妙が楽しめます。もちろんトニマン謹製のソナーサウンドのロマンティックエレポップです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (電子楽器発達期だからこその多彩な人工デザイン)
・メロディ ★★ (後半に地味な楽曲が続くが哀愁メロディは健在)
・リズム ★★★ (エフェクトを駆使してPCMリズムをパワフルに)
・曲構成 ★ (前半の楽曲の勢いを後半にも維持したかったが)
・個性 ★ (乱立してしまった時期遅れのエレポップの中で苦戦)
総合評点: 7点
「POP STATION」 NONA REEVES
「POP STATION」(2013 ビルボード)
NONA REEVES

<members>
西寺郷太:vocal・synthesizer bass・acoustic guitar・computer programming・background vocals
奥田健介:vocal・electric guitars・acoustic guitars・acoustic piano・synthesizer bass・computer programming・background vocals
小松シゲル:vocal・drums・background vocals
1.「P-O-P-T-R-A-I-N」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
2.「Weee Like It!!!」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
3.「Never Ever Let U Down」
詞:西寺郷太 曲:奥田健介 編:冨田譲・NONA REEVES
4.「ECSTACY」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
5.「GOLDEN CITY feat.一十三十一」
詞:谷口尚久・西寺郷太 曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
6.「Mr. Melody Maker」 詞:西寺郷太 曲:奥田健介 編:冨田譲・NONA REEVES
7.「マンドリン・ガール」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
8.「WEEKEND (P-O-P-T-R-A-I-N Part II)」
詞:西寺郷太 曲:西寺郷太・奥田健介 編:冨田譲・NONA REEVES
9.「三年」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
10.「休もう、ONCE MORE」
詞・曲:西寺郷太・谷口尚久 編:冨田譲・NONA REEVES
<support musician>
一十三十一:vocal
真城めぐみ:vocal
冨田譲:keyboards・synthesizer bass・acoustic piano・organ・acoustic guitar・mandolin・computer programming・background vocals
松井泉:percussions
川上鉄平:trumpet
滝本尚史:trombone
武嶋聡:sax
谷口尚久:background vocals
produced by 冨田譲
co-produced by 奥田健介
engineered by 兼重哲哉
● 限りなくキャッチーなメロディを追求する求道的な円熟のトリオバンドが4年ぶりに放つ究極のポップミュージックアルバム
日本が誇るグッドメロディPOPSグループとして長年良質の作品をリリースし続けているNONA REEVESは、比較的コンスタントにアルバムを発表していた印象がありましたが、2009年リリースの「GO」を最後に4年のインターバルを置き、その間にレコード会社を移籍、バンドとしての仕切り直しを試みることになります。2011年にBillboard Japanへ移籍した彼らは2年後に移籍後初のアルバムとなる本作をリリースするわけですが、本作発表に至る充電期間の間にも、3人のメンバーそれぞれがプロデュース業や楽曲提供、さまざまなアーティストのサポートプレイ等、非常に充実した活動を行なっており、その音楽性に対するセンスと演奏者としての力量に対する評価を高めていたタイミングでの本作のリリースとなるわけですから、もともと温度差が感じられることもあった彼らの作品群の中でも、ある種の壁を突き破った感のあるクオリティを存分に感じさせる、彼らにとっての自信作と言える仕上がりになっています。
タイトルにも高らかに「POP」と謳っていることもあって、本作は彼らの経験と知識(と技術)に裏打ちされた80's直系のハイテンポ、ミディアムテンポ全対応型の珠玉のポップチューンが満載です。ちょうど同時期にNegiccoをプロデュースし、そのメロディセンスによりブレイクさせるきっかけを作った西寺郷太の旬の勢いを駆りながらも、従来は彼の才能に依存する部分もあった彼らの楽曲面にあって、本作では奥田健介提供楽曲もクオリティが急成長を遂げており、アルバムという作品集の中でも幅の広さを堪能できるようになっています。サウンド面ではこれまで以上にシンセサイザーを多用したエレクトリックサウンドに重点が移されていますが、これはプロデュースを任された盟友、冨田謙の作風による部分も大きいでしょう。しかしながら元々が相性の良さが光るNONA REEVESと冨田に加えて、エンジニアリングでその技量を発揮する兼重哲哉による制作チームの充実ぶりは特筆すべきものがあり、その証拠にラストを飾る「休もう、ONCE MORE」でのメンバーそれぞれがヴォーカルを代わる代わる担当する、尋常ではない安定感はこうした制作チームの絆の深さを象徴するものと思われます。「GOLDEN CITY」でゲストに迎えられた一十三十一の存在感すら希薄にさせる「休もう、ONCE MORE」の説得力、本作を語る上で欠かせない最大のポイントと言えるかもしれません。本作路線は概ね好意的に受け入れられたと思うのですが、その後はまたコンスタントなリリース感覚に戻り、その旺盛な創作意欲を巻き散らかしながら21世紀の高品質なJ-POPを牽引する彼らの活躍ぶりはまだまだ続きそうです。
<Favorite Songs>
・「P-O-P-T-R-A-I-N」
四つ打ちも軽やかなキラキラ感半端ないエレクトリックポップチューン。隙のないメロディラインは彼らの十八番ながら、Bメロのボコーダーやサビのバックで流れるシーケンス音の程よい粒の硬さが秀逸です。このあたりの職人技なサウンドメイクは冨田謙色が非常に強く感じられます。
・「Mr. Melody Maker」
メロディメイカーとしての急成長ぶりが光る奥田健介が手がけた誇らしげなタイトルに負けないくらいのポップナンバー。一発で覚えられるサビのメロディにノックアウトされます。ピアノのリフが印象的ですが、随所でザップ音やシンセドラムなサウンドで細かく楽曲を彩ります。
・「休もう、ONCE MORE」
メンバー全員で歌う彼らの楽曲の中でも1、2を争う珠玉の名曲。ドリーミーなリバーブ添えのビブラフォン系音色が実に滲みます。ゆったりテンポに癒し系、と言えば話は早いのですが、バンド全員で歌う絆の深さ、状態の良さ、こういうのを見せつけられると何とも言えない幸福感に包まれます。その景色が美しいのです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (軽やかなシンセ音を基調とした「壊さない」包容力)
・メロディ ★★★★★ (充電期間の成長ぶりを十分に生かした隙のないセンス)
・リズム ★★ (派手さはないが破綻もせず短調でもない安心感)
・曲構成 ★★★★ (曲順にも配慮してアルバムという媒体を意識)
・個性 ★★★ (常に良質な楽曲を提供し続ける安定感に尽きる)
総合評点: 8点
NONA REEVES

<members>
西寺郷太:vocal・synthesizer bass・acoustic guitar・computer programming・background vocals
奥田健介:vocal・electric guitars・acoustic guitars・acoustic piano・synthesizer bass・computer programming・background vocals
小松シゲル:vocal・drums・background vocals
1.「P-O-P-T-R-A-I-N」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
2.「Weee Like It!!!」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
3.「Never Ever Let U Down」
詞:西寺郷太 曲:奥田健介 編:冨田譲・NONA REEVES
4.「ECSTACY」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
5.「GOLDEN CITY feat.一十三十一」
詞:谷口尚久・西寺郷太 曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
6.「Mr. Melody Maker」 詞:西寺郷太 曲:奥田健介 編:冨田譲・NONA REEVES
7.「マンドリン・ガール」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
8.「WEEKEND (P-O-P-T-R-A-I-N Part II)」
詞:西寺郷太 曲:西寺郷太・奥田健介 編:冨田譲・NONA REEVES
9.「三年」 詞・曲:西寺郷太 編:冨田譲・NONA REEVES
10.「休もう、ONCE MORE」
詞・曲:西寺郷太・谷口尚久 編:冨田譲・NONA REEVES
<support musician>
一十三十一:vocal
真城めぐみ:vocal
冨田譲:keyboards・synthesizer bass・acoustic piano・organ・acoustic guitar・mandolin・computer programming・background vocals
松井泉:percussions
川上鉄平:trumpet
滝本尚史:trombone
武嶋聡:sax
谷口尚久:background vocals
produced by 冨田譲
co-produced by 奥田健介
engineered by 兼重哲哉
● 限りなくキャッチーなメロディを追求する求道的な円熟のトリオバンドが4年ぶりに放つ究極のポップミュージックアルバム
日本が誇るグッドメロディPOPSグループとして長年良質の作品をリリースし続けているNONA REEVESは、比較的コンスタントにアルバムを発表していた印象がありましたが、2009年リリースの「GO」を最後に4年のインターバルを置き、その間にレコード会社を移籍、バンドとしての仕切り直しを試みることになります。2011年にBillboard Japanへ移籍した彼らは2年後に移籍後初のアルバムとなる本作をリリースするわけですが、本作発表に至る充電期間の間にも、3人のメンバーそれぞれがプロデュース業や楽曲提供、さまざまなアーティストのサポートプレイ等、非常に充実した活動を行なっており、その音楽性に対するセンスと演奏者としての力量に対する評価を高めていたタイミングでの本作のリリースとなるわけですから、もともと温度差が感じられることもあった彼らの作品群の中でも、ある種の壁を突き破った感のあるクオリティを存分に感じさせる、彼らにとっての自信作と言える仕上がりになっています。
タイトルにも高らかに「POP」と謳っていることもあって、本作は彼らの経験と知識(と技術)に裏打ちされた80's直系のハイテンポ、ミディアムテンポ全対応型の珠玉のポップチューンが満載です。ちょうど同時期にNegiccoをプロデュースし、そのメロディセンスによりブレイクさせるきっかけを作った西寺郷太の旬の勢いを駆りながらも、従来は彼の才能に依存する部分もあった彼らの楽曲面にあって、本作では奥田健介提供楽曲もクオリティが急成長を遂げており、アルバムという作品集の中でも幅の広さを堪能できるようになっています。サウンド面ではこれまで以上にシンセサイザーを多用したエレクトリックサウンドに重点が移されていますが、これはプロデュースを任された盟友、冨田謙の作風による部分も大きいでしょう。しかしながら元々が相性の良さが光るNONA REEVESと冨田に加えて、エンジニアリングでその技量を発揮する兼重哲哉による制作チームの充実ぶりは特筆すべきものがあり、その証拠にラストを飾る「休もう、ONCE MORE」でのメンバーそれぞれがヴォーカルを代わる代わる担当する、尋常ではない安定感はこうした制作チームの絆の深さを象徴するものと思われます。「GOLDEN CITY」でゲストに迎えられた一十三十一の存在感すら希薄にさせる「休もう、ONCE MORE」の説得力、本作を語る上で欠かせない最大のポイントと言えるかもしれません。本作路線は概ね好意的に受け入れられたと思うのですが、その後はまたコンスタントなリリース感覚に戻り、その旺盛な創作意欲を巻き散らかしながら21世紀の高品質なJ-POPを牽引する彼らの活躍ぶりはまだまだ続きそうです。
<Favorite Songs>
・「P-O-P-T-R-A-I-N」
四つ打ちも軽やかなキラキラ感半端ないエレクトリックポップチューン。隙のないメロディラインは彼らの十八番ながら、Bメロのボコーダーやサビのバックで流れるシーケンス音の程よい粒の硬さが秀逸です。このあたりの職人技なサウンドメイクは冨田謙色が非常に強く感じられます。
・「Mr. Melody Maker」
メロディメイカーとしての急成長ぶりが光る奥田健介が手がけた誇らしげなタイトルに負けないくらいのポップナンバー。一発で覚えられるサビのメロディにノックアウトされます。ピアノのリフが印象的ですが、随所でザップ音やシンセドラムなサウンドで細かく楽曲を彩ります。
・「休もう、ONCE MORE」
メンバー全員で歌う彼らの楽曲の中でも1、2を争う珠玉の名曲。ドリーミーなリバーブ添えのビブラフォン系音色が実に滲みます。ゆったりテンポに癒し系、と言えば話は早いのですが、バンド全員で歌う絆の深さ、状態の良さ、こういうのを見せつけられると何とも言えない幸福感に包まれます。その景色が美しいのです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (軽やかなシンセ音を基調とした「壊さない」包容力)
・メロディ ★★★★★ (充電期間の成長ぶりを十分に生かした隙のないセンス)
・リズム ★★ (派手さはないが破綻もせず短調でもない安心感)
・曲構成 ★★★★ (曲順にも配慮してアルバムという媒体を意識)
・個性 ★★★ (常に良質な楽曲を提供し続ける安定感に尽きる)
総合評点: 8点
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