「Platter」 バチバチソニック
「Platter」(2014 バチバチソニック)
バチバチソニック

<members>
PEVO1号:guitar・chorus
Y子:vocal・guitar
伊藤英紀:bass・chorus
1.「Psy-Click」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
2.「Platter」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
3.「Volxxx」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
4.「Qrom」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
5.「S星人の惑星侵略手法」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
6.「無軌道軸スルホロバス」
詞:モニクラハシト・けろん(美蛙)・伊藤英紀・PEVO1号 曲:PEVO1号
編:バチバチソニック
7.「Suna」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
8.「Higher」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
9.「Bogy Snatcher」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
10.「潮風に乞う」 詞:Y子 曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
11.「おやすみ」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
produced by バチバチソニック
mixing engineered by KC
● PEVO星人のソロワークという視点以上に2名のクリエイターによる対照的な宇宙観が興味深いコズミックテクノポップバンドの2ndアルバム
平沢進/P-MODEL界隈を今でも定期的に騒がせているPEVO星人。1996年に突如として彼らのアルバムがリリースされた時は、まさかこの企画モノバンドが20年も続くとは思っていませんでしたが、それどころか中心人物であるソルドシステム・ハザードギターのpevo1号は自主制作盤を地道にリリースし続け現在では本家平沢進の良き片腕としてその存在感は急上昇しています。そんなpevo1号のソロワークスとして2010年に始動したのがバチバチソニックです。女性ヴォーカルのseogram、ベースの伊藤英紀、ドラムの005Harryで結成された4人組の彼らはニューウェーブ直系ともいうべきひねくれた展開の楽曲を当然のように電子音でデザインしたサウンドを施し、ヴォーカルは無機質を貫く徹底ぶりでしたが、2011年の1stアルバム「バチバチソニック」は歌詞にもPEVO語が散りばめていることからもわかるように、PEVO星人としてのpevo1号ソロユニットという枠からは出られていないという印象でした。しかしその後彼らは看板であったヴォーカルを交代するなどバンドとしてのリニューアルを図り、残ったpevo1号と伊藤に加えて、1号が参加していた80'sニューウェーブ伝説のパーティーバンド・コンクリーツのダンス&コーラスを担当していたY子を新ヴォーカリストに迎え、トリオ編成として再スタート、2015年に2ndアルバムとなる本作をリリースするに至ったというわけです。
リニューアルされた彼ら、バチバチソニックのサウンドはガラリと変わっていました。まず重要なのは前作がpevo1号の楽曲に統一されていたのに対して、本作では前作ではプレイヤーに徹していたタルボベースの伊藤英紀が実に4曲を提供しています。そしてこれら4曲のクオリティが全く遜色なく、テクノポップ/シンセポップの矜恃に溢れたシーケンス&リズム、解凍P-MODELを彷彿とさせる世界観、そして何よりも極端にキャッチーに振れまくったポップチューンに仕上がっていて、バンドに新しい風を吹き込むことに成功しています。pevo1号の楽曲は相変わらずのスペースプログレな世界観で難解な楽曲をエレクトリカルかつマニアックに表現しており、この両名の異なるタイプ(しかしどちらも時代は違えども平沢系ニューウェーブマナーに則ったサウンド)の楽曲が生み出すコントラストが、本作の最大の魅力と言えるでしょう。新ヴォーカリストのY子も楽曲ごとの表現の変化に長けており、前作とはコンセプトは違えども格段にポップになった本作では最適解なヴォーカルではないかと思います。彼女が作詞した初期P-MODEL系サーフテクノ「潮風に乞う」は本作のバラエティに富んだ楽曲の幅を的確に表した1曲と言えるかもしれません。また、ドラマーがいないにもかかわらずパワフルなリズムに進化しているのは、同年リリースのPEVOの名盤「The Spot Directive/スポット破壊指令」のサウンドに似た志向を持っているためと言えますが、音を際立たせたマスタリングの良さも差し引いても、サウンドパワーの格段の進化は本作のクオリティの向上を示す指標としては十分ではないかと思われます。
現在バチバチソニックは活動休止中ですが、pevo1号はPEVOはもちろん三浦俊一とのCOTOとしての活動等で活躍の場を広げ、本作でサウンドメイカーとしての力量を披露した伊藤は、自身のソロユニットSonikovを立ち上げ3枚のミニアルバムをリリース、さらに派生したユニットを続々と立ち上げ精力的に活動していますので、復活はもう少し先になりそうです。
<Favorite Songs>
・「Psy-Click」
再スタートの清々しさを感じさせるような伊藤英紀によるオープニングナンバー。リニューアル前の音楽性を忘れさせるほどの潔いまでのコズミックテクノロックで、縦横無尽に駆け巡るベースフレーズに気持ち良さそうなギタープレイが堪能できます。それでいてメロディは非常にポップ性に満ちており、このスペイシー感覚は彼のソロユニットSonikovへと引き継がれていきます。
・「無軌道軸スルホロバス」
これまでのPEVOやバチバチソニックのサウンドに近しいスペースプログレチューン。それでもリズムやシーケンスにキレが増しているのは、マスタリングの効果もあると思われますが確実にトラックメイキングの技量が向上しているためとも言えるでしょう。四つ打ちながらSFチックな電子音で彩りつついなたいギターフレーズで脇を締める、緻密な音の重ね方が楽しめます。
・「Bogy Snatcher」
気持ち良いくらいの直球ど真ん中のエレクトロダンスロックナンバー。スペイシーな音色選択、上下運動の激しいシーケンス、ギターはノリノリのディストーションにキレの良いカッティングでフォロー、四つ打ちのダンス仕様のリズムがライブ等で盛り上がりそうな印象を受けます。
<評点>
・サウンド ★★★ (音のメリハリは格段に向上し電子音がなお際立つ)
・メロディ ★★ (前作よりポップ性が上がりSF度も急激に高まる)
・リズム ★★★ (打ち込みリズムとは思えない気持ち良いスネアの響き)
・曲構成 ★★ (2名のコンポーザーによる作風の違いがポイント)
・個性 ★★ (品質は格段に向上して良質なテクノロックバンドに)
総合評点: 7点
中野の某専門ショップだけで独占販売中。
バチバチソニックHP
バチバチソニック

<members>
PEVO1号:guitar・chorus
Y子:vocal・guitar
伊藤英紀:bass・chorus
1.「Psy-Click」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
2.「Platter」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
3.「Volxxx」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
4.「Qrom」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
5.「S星人の惑星侵略手法」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
6.「無軌道軸スルホロバス」
詞:モニクラハシト・けろん(美蛙)・伊藤英紀・PEVO1号 曲:PEVO1号
編:バチバチソニック
7.「Suna」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
8.「Higher」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
9.「Bogy Snatcher」 詞・曲:伊藤英紀 編:バチバチソニック
10.「潮風に乞う」 詞:Y子 曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
11.「おやすみ」 詞・曲:PEVO1号 編:バチバチソニック
produced by バチバチソニック
mixing engineered by KC
● PEVO星人のソロワークという視点以上に2名のクリエイターによる対照的な宇宙観が興味深いコズミックテクノポップバンドの2ndアルバム
平沢進/P-MODEL界隈を今でも定期的に騒がせているPEVO星人。1996年に突如として彼らのアルバムがリリースされた時は、まさかこの企画モノバンドが20年も続くとは思っていませんでしたが、それどころか中心人物であるソルドシステム・ハザードギターのpevo1号は自主制作盤を地道にリリースし続け現在では本家平沢進の良き片腕としてその存在感は急上昇しています。そんなpevo1号のソロワークスとして2010年に始動したのがバチバチソニックです。女性ヴォーカルのseogram、ベースの伊藤英紀、ドラムの005Harryで結成された4人組の彼らはニューウェーブ直系ともいうべきひねくれた展開の楽曲を当然のように電子音でデザインしたサウンドを施し、ヴォーカルは無機質を貫く徹底ぶりでしたが、2011年の1stアルバム「バチバチソニック」は歌詞にもPEVO語が散りばめていることからもわかるように、PEVO星人としてのpevo1号ソロユニットという枠からは出られていないという印象でした。しかしその後彼らは看板であったヴォーカルを交代するなどバンドとしてのリニューアルを図り、残ったpevo1号と伊藤に加えて、1号が参加していた80'sニューウェーブ伝説のパーティーバンド・コンクリーツのダンス&コーラスを担当していたY子を新ヴォーカリストに迎え、トリオ編成として再スタート、2015年に2ndアルバムとなる本作をリリースするに至ったというわけです。
リニューアルされた彼ら、バチバチソニックのサウンドはガラリと変わっていました。まず重要なのは前作がpevo1号の楽曲に統一されていたのに対して、本作では前作ではプレイヤーに徹していたタルボベースの伊藤英紀が実に4曲を提供しています。そしてこれら4曲のクオリティが全く遜色なく、テクノポップ/シンセポップの矜恃に溢れたシーケンス&リズム、解凍P-MODELを彷彿とさせる世界観、そして何よりも極端にキャッチーに振れまくったポップチューンに仕上がっていて、バンドに新しい風を吹き込むことに成功しています。pevo1号の楽曲は相変わらずのスペースプログレな世界観で難解な楽曲をエレクトリカルかつマニアックに表現しており、この両名の異なるタイプ(しかしどちらも時代は違えども平沢系ニューウェーブマナーに則ったサウンド)の楽曲が生み出すコントラストが、本作の最大の魅力と言えるでしょう。新ヴォーカリストのY子も楽曲ごとの表現の変化に長けており、前作とはコンセプトは違えども格段にポップになった本作では最適解なヴォーカルではないかと思います。彼女が作詞した初期P-MODEL系サーフテクノ「潮風に乞う」は本作のバラエティに富んだ楽曲の幅を的確に表した1曲と言えるかもしれません。また、ドラマーがいないにもかかわらずパワフルなリズムに進化しているのは、同年リリースのPEVOの名盤「The Spot Directive/スポット破壊指令」のサウンドに似た志向を持っているためと言えますが、音を際立たせたマスタリングの良さも差し引いても、サウンドパワーの格段の進化は本作のクオリティの向上を示す指標としては十分ではないかと思われます。
現在バチバチソニックは活動休止中ですが、pevo1号はPEVOはもちろん三浦俊一とのCOTOとしての活動等で活躍の場を広げ、本作でサウンドメイカーとしての力量を披露した伊藤は、自身のソロユニットSonikovを立ち上げ3枚のミニアルバムをリリース、さらに派生したユニットを続々と立ち上げ精力的に活動していますので、復活はもう少し先になりそうです。
<Favorite Songs>
・「Psy-Click」
再スタートの清々しさを感じさせるような伊藤英紀によるオープニングナンバー。リニューアル前の音楽性を忘れさせるほどの潔いまでのコズミックテクノロックで、縦横無尽に駆け巡るベースフレーズに気持ち良さそうなギタープレイが堪能できます。それでいてメロディは非常にポップ性に満ちており、このスペイシー感覚は彼のソロユニットSonikovへと引き継がれていきます。
・「無軌道軸スルホロバス」
これまでのPEVOやバチバチソニックのサウンドに近しいスペースプログレチューン。それでもリズムやシーケンスにキレが増しているのは、マスタリングの効果もあると思われますが確実にトラックメイキングの技量が向上しているためとも言えるでしょう。四つ打ちながらSFチックな電子音で彩りつついなたいギターフレーズで脇を締める、緻密な音の重ね方が楽しめます。
・「Bogy Snatcher」
気持ち良いくらいの直球ど真ん中のエレクトロダンスロックナンバー。スペイシーな音色選択、上下運動の激しいシーケンス、ギターはノリノリのディストーションにキレの良いカッティングでフォロー、四つ打ちのダンス仕様のリズムがライブ等で盛り上がりそうな印象を受けます。
<評点>
・サウンド ★★★ (音のメリハリは格段に向上し電子音がなお際立つ)
・メロディ ★★ (前作よりポップ性が上がりSF度も急激に高まる)
・リズム ★★★ (打ち込みリズムとは思えない気持ち良いスネアの響き)
・曲構成 ★★ (2名のコンポーザーによる作風の違いがポイント)
・個性 ★★ (品質は格段に向上して良質なテクノロックバンドに)
総合評点: 7点
中野の某専門ショップだけで独占販売中。
バチバチソニックHP
「Vicious Pink」 Vicious Pink
「Vicious Pink」(1986 Capitol)
Vicious Pink

<members>
Brian Moss:keyboards
Josephine Warden:vocals
1.「Cccan’t You See」 Brian Moss/Josephine Warden
2.「Spooky」 Harry Middlebrooks/Mike Sharpe
3.「The Spaceship Is Over There」 Josephine Warden
4.「Blue (Love Mix)」 Brian Moss/Josephine Warden
5.「Fetish」 Brian Moss/Josephine Warden
6.「Take Me Now」 John David
7.「Always Hoping」 Brian Moss/Josephine Warden
8.「8:15 To Nowhere / Great Balls Of Fire」 Jack Hammer/Otis Blackwell/Brian Moss
9.「Cccan’t You See (Exxx-tended Re-Mixxx)」 Brian Moss/Josephine Warden
produced by Tony Mansfield・Gary Moberley
engineered by John "Tokes" Posotoker・Martin Webster
● 粗さの残るサイバーな質感が硬質な味を漂わせるマイナーエレポップデュオ唯一のベスト盤的アルバム
1982年「Private My Tokyo」というジャパンリスペクトなシングルでデビューしたシンセポップデュオVicious Pink Phenomena。Soft CellのバッキングヴォーカルとしてキャリアをスタートしたBrian MossとJosephine Wardenの2人によるこのユニットは、Soft CellのDavid Ballのプロデュースによる妖艶でストレンジなサウンドを引っ提げて前述の楽曲を含む2枚のシングルをリリースしたものの完全に当時のエレポップシーンの渦中に埋もれてしまう形となりました。しかし84年に心機一転、Vicious Pinkとユニット名を簡略化し、さらに元New MuzikのTony Mansfieldをプロデュースに迎えた3rdシングル「Cccan't You See... 」がマイナーヒットとなり、80'sを過ごした音楽好きの人々の記憶の片隅にその名を残すことになるわけです。その後も「Fetish」「Take Me Now」と立て続けにシングルをリリースした彼らですが、1stアルバムとしてレコーディングされた「Blue」はレコード会社との軋轢もあってお蔵入りとなってしまい、結局活動休止後の86年に申し訳程度にリリースされたシングル曲の編集盤が本作になります。
前述の通り本作はリネーム後の84年〜85年に彼らが残した3枚のシングルを集めた形となっているベスト盤ですが、そのサウンドはNew Muzikの3rdアルバム「Warp」からTony MansfieldがFairlight CMIに凝りまくっていたという背景もあって、PCM音源によるリズムを基調としたゴリゴリのサンプリング&シーケンスサウンドで埋め尽くされています。しかしながらFairlight CMIに耳を奪われがちなサウンドながら、Brian Mossが使用していた機材にはRoland製のシンセ&リズムマシンが多く、特に「Cccan’t You See」や「Fetish」といった楽曲にはTB-303が使用されており、まだアシッドマシーンとして認知される前のチープなベースシンセであったTB-303を(あの特徴的なレゾナンスを強調することなしに)活用していた先進性を垣間見せているところは興味深いものがあります。なお、5thシングル「Take Me Now」からは後年Prefab Sprout「From Langley Park To Memphis」にも参加していたGary Moberleyをプロデューサーに迎えていますが、彼もいわゆる「トニマンサウンド」を継承した硬質なミドル80'sサウンドを構築しており、シングル編集盤とはいえ意外と統一感の感じられる内容となっています。楽曲自体は平凡の域を出ないものの、Tony Mansfield直伝の人口甘味料的デジタリズムエレクトリックサウンドで魅了した彼らですが、この編集盤を持って活動を停止してしまいます。しかしお蔵入りとなった幻のアルバム「Blue」はまだロンドンのアビーロードスタジオに保管されているそうですので、いつの日か陽の目を見ることを期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Cccan’t You See」
彼らの名を一躍知らしめた最大(といってもマイナーですが)のヒットシングル。いかにもFairlight仕掛けですよ、と言わんばかりのサイバーなシーケンスにアンニュイなヴォーカルのリフレインがサンプリングまじりに繰り返されるというダンスチューンです。
・「Spooky」
4thシングル「Fetish」の両A面となった60年代オールディーズナンバーのリメイク。コクの深いベースフレーズにサンプラーによる強烈なスネアが楽曲を引っ張っており、その硬質な肌触りは原曲を忘れさせるほどの流石のTony Mansfield仕事です。
・「Always Hoping」
5thシングル「Take Me Now」のカップリング楽曲。彼ららしい実験精神が見え隠れするシンセポップで、軽快なシンセベースラインにキレのあるリズム、空間を意識したシンセサウンド、遊び感覚を感じるリズムトラックが楽しいB面ならではのマニアックチューンです。
<評点>
・サウンド ★★★ (トニマン人工サウンドによる仕掛け豊富なテクノ)
・メロディ ★ (典型的なサウンド偏重タイプの楽曲に特化している)
・リズム ★★★ (音作りと組み立て方は流石にミドル80'sらしさが)
・曲構成 ★ (シングルの寄せ集めではなくやはりアルバムを)
・個性 ★ (過激な音は光るが当のメンバーの個性につながらず)
総合評点: 6点
Vicious Pink

<members>
Brian Moss:keyboards
Josephine Warden:vocals
1.「Cccan’t You See」 Brian Moss/Josephine Warden
2.「Spooky」 Harry Middlebrooks/Mike Sharpe
3.「The Spaceship Is Over There」 Josephine Warden
4.「Blue (Love Mix)」 Brian Moss/Josephine Warden
5.「Fetish」 Brian Moss/Josephine Warden
6.「Take Me Now」 John David
7.「Always Hoping」 Brian Moss/Josephine Warden
8.「8:15 To Nowhere / Great Balls Of Fire」 Jack Hammer/Otis Blackwell/Brian Moss
9.「Cccan’t You See (Exxx-tended Re-Mixxx)」 Brian Moss/Josephine Warden
produced by Tony Mansfield・Gary Moberley
engineered by John "Tokes" Posotoker・Martin Webster
● 粗さの残るサイバーな質感が硬質な味を漂わせるマイナーエレポップデュオ唯一のベスト盤的アルバム
1982年「Private My Tokyo」というジャパンリスペクトなシングルでデビューしたシンセポップデュオVicious Pink Phenomena。Soft CellのバッキングヴォーカルとしてキャリアをスタートしたBrian MossとJosephine Wardenの2人によるこのユニットは、Soft CellのDavid Ballのプロデュースによる妖艶でストレンジなサウンドを引っ提げて前述の楽曲を含む2枚のシングルをリリースしたものの完全に当時のエレポップシーンの渦中に埋もれてしまう形となりました。しかし84年に心機一転、Vicious Pinkとユニット名を簡略化し、さらに元New MuzikのTony Mansfieldをプロデュースに迎えた3rdシングル「Cccan't You See... 」がマイナーヒットとなり、80'sを過ごした音楽好きの人々の記憶の片隅にその名を残すことになるわけです。その後も「Fetish」「Take Me Now」と立て続けにシングルをリリースした彼らですが、1stアルバムとしてレコーディングされた「Blue」はレコード会社との軋轢もあってお蔵入りとなってしまい、結局活動休止後の86年に申し訳程度にリリースされたシングル曲の編集盤が本作になります。
前述の通り本作はリネーム後の84年〜85年に彼らが残した3枚のシングルを集めた形となっているベスト盤ですが、そのサウンドはNew Muzikの3rdアルバム「Warp」からTony MansfieldがFairlight CMIに凝りまくっていたという背景もあって、PCM音源によるリズムを基調としたゴリゴリのサンプリング&シーケンスサウンドで埋め尽くされています。しかしながらFairlight CMIに耳を奪われがちなサウンドながら、Brian Mossが使用していた機材にはRoland製のシンセ&リズムマシンが多く、特に「Cccan’t You See」や「Fetish」といった楽曲にはTB-303が使用されており、まだアシッドマシーンとして認知される前のチープなベースシンセであったTB-303を(あの特徴的なレゾナンスを強調することなしに)活用していた先進性を垣間見せているところは興味深いものがあります。なお、5thシングル「Take Me Now」からは後年Prefab Sprout「From Langley Park To Memphis」にも参加していたGary Moberleyをプロデューサーに迎えていますが、彼もいわゆる「トニマンサウンド」を継承した硬質なミドル80'sサウンドを構築しており、シングル編集盤とはいえ意外と統一感の感じられる内容となっています。楽曲自体は平凡の域を出ないものの、Tony Mansfield直伝の人口甘味料的デジタリズムエレクトリックサウンドで魅了した彼らですが、この編集盤を持って活動を停止してしまいます。しかしお蔵入りとなった幻のアルバム「Blue」はまだロンドンのアビーロードスタジオに保管されているそうですので、いつの日か陽の目を見ることを期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Cccan’t You See」
彼らの名を一躍知らしめた最大(といってもマイナーですが)のヒットシングル。いかにもFairlight仕掛けですよ、と言わんばかりのサイバーなシーケンスにアンニュイなヴォーカルのリフレインがサンプリングまじりに繰り返されるというダンスチューンです。
・「Spooky」
4thシングル「Fetish」の両A面となった60年代オールディーズナンバーのリメイク。コクの深いベースフレーズにサンプラーによる強烈なスネアが楽曲を引っ張っており、その硬質な肌触りは原曲を忘れさせるほどの流石のTony Mansfield仕事です。
・「Always Hoping」
5thシングル「Take Me Now」のカップリング楽曲。彼ららしい実験精神が見え隠れするシンセポップで、軽快なシンセベースラインにキレのあるリズム、空間を意識したシンセサウンド、遊び感覚を感じるリズムトラックが楽しいB面ならではのマニアックチューンです。
<評点>
・サウンド ★★★ (トニマン人工サウンドによる仕掛け豊富なテクノ)
・メロディ ★ (典型的なサウンド偏重タイプの楽曲に特化している)
・リズム ★★★ (音作りと組み立て方は流石にミドル80'sらしさが)
・曲構成 ★ (シングルの寄せ集めではなくやはりアルバムを)
・個性 ★ (過激な音は光るが当のメンバーの個性につながらず)
総合評点: 6点
「REBECCA IV Maybe Tomorrow」 REBECCA
「REBECCA IV Maybe Tomorrow」 (1985 CBSソニー)
REBECCA

<members>
NOKKO:vocal
土橋安騎夫:synthesizers・acoustic piano・organ・chorus
高橋教之:electric bass・computer programming・chorus
古賀森男:electric guitar・acoustic guitar・chorus
小田原豊:drums
1.「Hot Spice」 詞:宮原芽映 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
2.「プライベイト・ヒロイン」 詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
3.「Cotton Time」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
4.「76th Star」 詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
5.「光と影の誘惑」 曲:高橋教之 編:REBECCA
6.「ボトムライン」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
7.「ガールズ ブラボー!」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
8.「フレンズ」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
9.「London Boy」 詞:沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
10.「Maybe Tomorrow」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
<support musician>
是永巧一:electric guitars・chorus
produced by REBECCA
engineered by 川部修久
● シングルのスマッシュヒットによって大ブレイク!勢いそのままにリリースされた昇り龍の如く高みへ到達した4thアルバム
1984年にデビューしたREBECCAは当時はニューウェーブに影響された印象のある一介のロックバンドに過ぎませんでしたが、85年にギタリスト兼コンポーザーの木暮武彦とドラムの小沼達也が脱退してから少しずつ様相が変わってまいります。木暮と小沼に代わって古賀森男と小田原豊が加入、土橋安騎夫がリーダーとなりサウンドプロデュースの実権を握ると、新生REBECCAの第1弾シングル「ラブ イズ Cash」がヒット、格段に洗練されたサウンドとパワーに満ちた3rdアルバム「WILD & HONEY」も立て続けにチャートインするなどブレイクの兆しを見せると、ドラマ「ハーフポテトな俺たち」に起用された4thアルバムである本作の先行シングル「フレンズ/ガールズ ブラボー!」が空前の大ヒットとなり、完全にスターダムにのし上がることになります。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らの4枚目のアルバムは「フレンズ」の人気絶頂時にリリースされたということで当然大ヒット、彼らの激動の1年を締めくくるにふさわしい勢い全開の、売れるべくして売れたと言わんばかりの完成度を誇る作品として世に送り出されたわけです。
REBECCAといえばNOKKOのカリスマ性抜群のヴォーカルスタイルですが、本作では方向性が定まって吹っ切れたかのような声の伸びで聴き手を圧倒してきます。当然それを支えているのは当然土橋安騎夫のキャッチーな楽曲とイメージを喚起させる控えめながらも職人的なシンセサウンドにほかなりません。しかしながらそれ以上に本作では小田原豊の重さの感じられるドラミングが冴え渡っており、それはゲートリバーブを深くかけた音処理にも起因しているかもしれませんが、この時代特有のパワーステーション風サウンドが、本作の楽曲群を牽引していることには間違いありません。また、メンバーの中でもプログラミングも手がける縁の下の力持ちながら地味な役割といった印象であった高橋教之が、フレットレスベースを駆使した「光と影の誘惑」を作曲、他の楽曲とは一線を画し過ぎて浮いてしまっている感のある壮大なインストゥルメンタルを披露しているのも聴き逃せません。こういった音楽性も備えているという彼らなりの自己主張でもあったのでしょう(本作以降スターバンドになり過ぎてこうした冒険はしにくくなりましたが)。とはいえ、「フレンズ」の哀愁ガールズロック、「ガールズ ブラボー!」のお転婆ポップロックの先入観に聴くにはいささか刺激的であり、「Hot Spice」「76th Star」「ボトムライン」といった骨太感があり、テクニックも存分に堪能できるロックチューンは「フレンズ」で入ってきたライトリスナーにとっても新鮮に聴こえたのではないかと思われます。本作は彼ら最初のオリコン第1位のアルバムでありその後解散に至るまで1位を続けていくことになる記念碑的な作品ですが、彼らの実力がそれに相応しいことも結果的に示すことになった重要な作品とも言えるのではないでしょうか。とにかくこの作品から滲み出る野心と勢い、このパワーみなぎる1985年の彼らの活躍ぶりが80年代後半のバンドブームの先鞭をつけたと言っても過言ではないでしょう。
<Favorite Songs>
・「Hot Spice」
ボトムの低いパワフルなドラムとキレのあるギターリフがスターの階段を駆け上がる彼らの勢いを如実に表現しているかのようなオープニングナンバー。完全なるバンド映えするナンバーながら、シーケンス要素もしっかり導入している部分がデジタル世代な彼ららしい部分です。珍しいタイプの音処理がされている古賀のギターソロも興味深いです。
・「76th Star」
ポップなメロディと音数の少なさで勝負するポップチューン。といえば聞こえはいいのですが、常にドラムはバスドラにもスネアにもタムにもド派手なゲートリバーブが施されてグイグイ引っ張っていきます。必要最小限の音で構築されているので余計シンプル&パワフルなドラムが目立つというものです。
・「ガールズ ブラボー!」
大ヒットシングル「フレンズ」の両A面シングルとしてカットされたポップロックチューン。カラッとした明るさが魅力のハイパーポップですが、シングルとしての聴き映えを重視したのか、多彩なシンセフレーズで楽曲を彩ります。Aメロでは軽快にレゾナンスシンセベースが飛び交い、サビではキュートな音色で装飾、しかしながらドラムはいつも通りのパワー重視なのでした。
<評点>
・サウンド ★★ (派手さはないが不可欠なエレクトリック要素)
・メロディ ★★ (特にBメロからの流れにセンスを感じる)
・リズム ★★★★ (全力で叩き出すドラミングのパワーが圧倒的)
・曲構成 ★ (あの興味深いインストは冒険的だったのでは)
・個性 ★★★ (バンドとしての方向性はここにめでたく確立)
総合評点: 7点
REBECCA

<members>
NOKKO:vocal
土橋安騎夫:synthesizers・acoustic piano・organ・chorus
高橋教之:electric bass・computer programming・chorus
古賀森男:electric guitar・acoustic guitar・chorus
小田原豊:drums
1.「Hot Spice」 詞:宮原芽映 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
2.「プライベイト・ヒロイン」 詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
3.「Cotton Time」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
4.「76th Star」 詞:NOKKO・沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
5.「光と影の誘惑」 曲:高橋教之 編:REBECCA
6.「ボトムライン」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
7.「ガールズ ブラボー!」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
8.「フレンズ」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
9.「London Boy」 詞:沢ちひろ 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
10.「Maybe Tomorrow」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
<support musician>
是永巧一:electric guitars・chorus
produced by REBECCA
engineered by 川部修久
● シングルのスマッシュヒットによって大ブレイク!勢いそのままにリリースされた昇り龍の如く高みへ到達した4thアルバム
1984年にデビューしたREBECCAは当時はニューウェーブに影響された印象のある一介のロックバンドに過ぎませんでしたが、85年にギタリスト兼コンポーザーの木暮武彦とドラムの小沼達也が脱退してから少しずつ様相が変わってまいります。木暮と小沼に代わって古賀森男と小田原豊が加入、土橋安騎夫がリーダーとなりサウンドプロデュースの実権を握ると、新生REBECCAの第1弾シングル「ラブ イズ Cash」がヒット、格段に洗練されたサウンドとパワーに満ちた3rdアルバム「WILD & HONEY」も立て続けにチャートインするなどブレイクの兆しを見せると、ドラマ「ハーフポテトな俺たち」に起用された4thアルバムである本作の先行シングル「フレンズ/ガールズ ブラボー!」が空前の大ヒットとなり、完全にスターダムにのし上がることになります。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らの4枚目のアルバムは「フレンズ」の人気絶頂時にリリースされたということで当然大ヒット、彼らの激動の1年を締めくくるにふさわしい勢い全開の、売れるべくして売れたと言わんばかりの完成度を誇る作品として世に送り出されたわけです。
REBECCAといえばNOKKOのカリスマ性抜群のヴォーカルスタイルですが、本作では方向性が定まって吹っ切れたかのような声の伸びで聴き手を圧倒してきます。当然それを支えているのは当然土橋安騎夫のキャッチーな楽曲とイメージを喚起させる控えめながらも職人的なシンセサウンドにほかなりません。しかしながらそれ以上に本作では小田原豊の重さの感じられるドラミングが冴え渡っており、それはゲートリバーブを深くかけた音処理にも起因しているかもしれませんが、この時代特有のパワーステーション風サウンドが、本作の楽曲群を牽引していることには間違いありません。また、メンバーの中でもプログラミングも手がける縁の下の力持ちながら地味な役割といった印象であった高橋教之が、フレットレスベースを駆使した「光と影の誘惑」を作曲、他の楽曲とは一線を画し過ぎて浮いてしまっている感のある壮大なインストゥルメンタルを披露しているのも聴き逃せません。こういった音楽性も備えているという彼らなりの自己主張でもあったのでしょう(本作以降スターバンドになり過ぎてこうした冒険はしにくくなりましたが)。とはいえ、「フレンズ」の哀愁ガールズロック、「ガールズ ブラボー!」のお転婆ポップロックの先入観に聴くにはいささか刺激的であり、「Hot Spice」「76th Star」「ボトムライン」といった骨太感があり、テクニックも存分に堪能できるロックチューンは「フレンズ」で入ってきたライトリスナーにとっても新鮮に聴こえたのではないかと思われます。本作は彼ら最初のオリコン第1位のアルバムでありその後解散に至るまで1位を続けていくことになる記念碑的な作品ですが、彼らの実力がそれに相応しいことも結果的に示すことになった重要な作品とも言えるのではないでしょうか。とにかくこの作品から滲み出る野心と勢い、このパワーみなぎる1985年の彼らの活躍ぶりが80年代後半のバンドブームの先鞭をつけたと言っても過言ではないでしょう。
<Favorite Songs>
・「Hot Spice」
ボトムの低いパワフルなドラムとキレのあるギターリフがスターの階段を駆け上がる彼らの勢いを如実に表現しているかのようなオープニングナンバー。完全なるバンド映えするナンバーながら、シーケンス要素もしっかり導入している部分がデジタル世代な彼ららしい部分です。珍しいタイプの音処理がされている古賀のギターソロも興味深いです。
・「76th Star」
ポップなメロディと音数の少なさで勝負するポップチューン。といえば聞こえはいいのですが、常にドラムはバスドラにもスネアにもタムにもド派手なゲートリバーブが施されてグイグイ引っ張っていきます。必要最小限の音で構築されているので余計シンプル&パワフルなドラムが目立つというものです。
・「ガールズ ブラボー!」
大ヒットシングル「フレンズ」の両A面シングルとしてカットされたポップロックチューン。カラッとした明るさが魅力のハイパーポップですが、シングルとしての聴き映えを重視したのか、多彩なシンセフレーズで楽曲を彩ります。Aメロでは軽快にレゾナンスシンセベースが飛び交い、サビではキュートな音色で装飾、しかしながらドラムはいつも通りのパワー重視なのでした。
<評点>
・サウンド ★★ (派手さはないが不可欠なエレクトリック要素)
・メロディ ★★ (特にBメロからの流れにセンスを感じる)
・リズム ★★★★ (全力で叩き出すドラミングのパワーが圧倒的)
・曲構成 ★ (あの興味深いインストは冒険的だったのでは)
・個性 ★★★ (バンドとしての方向性はここにめでたく確立)
総合評点: 7点
「SUPERSONIC GENERATION」 布袋寅泰
「SUPERSONIC GENERATION」(1998 東芝EMI)
布袋寅泰:vocals・all instruments
<synthesizer instruments>
Korg Trinity・StudioElectrinics Midi-Mini・Doepfer A100BS・Clavia Nordlead・Akai S3200XL・Roland SVC350・Roland JD990・E-mu Orbit・E-mu Vintage Keys・E-mu Proteus・Sherman Filterbank・Alesis DM5

1.「SUPERSONIC GENERATION」 詞・曲・編:布袋寅泰
2.「FUCK THE FAKE STAR」
詞:布袋寅泰 曲:布袋寅泰・Noko・Trevor Gray・Howard Gray
編:布袋寅泰・Apollo440
3.「THEY SPY YOU」 詞・曲・編:布袋寅泰
4.「BELIEVE ME, I’M A LIAR」 詞:布袋寅泰 曲・編:布袋寅泰・Darren Price
5.「MYTERY OF LOVE」 詞・曲・編:布袋寅泰
6.「WE ALL ALONE」 詞:森雪之丞 曲:布袋寅泰 編:布袋寅泰・SLINKY
7.「IMMIGRANT SONG」 詞・曲:Jimmy Page・Robert Plant 編:布袋寅泰
8.「LOVE OR DIE」 詞:森雪之丞 曲・編:布袋寅泰
9.「SPIDER IN THE SKY」 詞:森雪之丞 曲・編:布袋寅泰
10.「DESTINY」 詞 詞:森雪之丞 曲:布袋寅泰 編:布袋寅泰・Darren Price
<support musician>
Jeff Patterson:vocals・backing vocals
Ofra Haza:vocal
HIROSHI:bass
Zachary Alford:drums
Katie Kissoon:backing vocals
Tessa Niles:backing vocals
Tony Jackson:backing vocals
Wera Wonder:backing vocals
Apollo440:computer programming
SLINKY:computer programming
Darren Price:computer programming
渡部伸隆:computer programming・audio edit
produced by 布袋寅泰・Apollo440・Darren Price・SLINKY
engineered by 今井邦彦
● 攻撃的なエレクトリックロックを携えて本領発揮!サイバー的な世界観で統一されたコンセプチュアルな問題作
日本ロック界史上に残る名ギタリストとしての名を欲しいままにする布袋寅泰が、自身の音楽性をとことん突き詰めたソロワークシリーズ「GUTARHYTHM」4部作を完成し次のステージへ進んでいったわけですが、その先はヒットチューンが期待されたポップ路線でした。「POISON」「スリル」といった耳に残るリフをかましつつ印象に残るサビを乗せた楽曲は一般リスナーにも人気を博し文字通りスマッシュヒット。名実共にスターダムに昇り詰めていった彼は、しかしながらその状況に満足せず、再び自身が志向する音楽性に向き合うことを決意します。彼の音楽性の根幹といえばニューウェーブ。デジタルサウンドとロックの融合というテーマは「GUTARHYTHM」シリーズでも幾度となくチャレンジしていたわけですが、90年代後半となると、世界的にデジロックが席巻し始めており、奇しくも布袋はその時流に乗った形で、98年に本作のようなサイバーロック的アプローチが施されたマニアックでコンセプチュアルなアルバムのリリースに至りました。前作のポップ路線をかなぐり捨てたこの硬派なデジロック路線は、流行に媚びたと揶揄されたり、前作路線を期待したファンを篩にかける形になったりと、賛否両論が渦巻く形となりましたが、作品としてはチャレンジ精神に溢れた硬派な作品として、異色ながら傑作の呼び声の高い作品として評価されています。
元来典型的なロックギタリストでありながらエレクトロサウンドの導入に抵抗感のなく、ニューウェーブ感覚豊かなセンスを持ち合わせている布袋寅泰ですが、本作ではそのサウンドセンスが遺憾なく発揮されています。彼の代名詞であるキレのあるカッティングを中心としたギターワークはそのままに、過激で粘り気のある、尖りまくった音色のエレクトリックサウンドが添え物ではなく中心的な役割として導入され、まるでSF戦争映画を見せられているかのような攻撃性に満ちた過激音色で派手に立ち回っています。Apollo440やUnderworldに関わっていたDarren Price、SLINKYといった海外ミュージシャンの参加も本作の話題性の1つですが、海外デジロック勢を向こうに張っても全く臆することがないどころか、このような過激なエレクトリックサウンドだからこそ自身の個性的なギターワークが生きるのだ、と言わんばかりの布袋の生き生きとしたプレーぶりが堪能できます。それにしても本作のデジタルサウンド、シンセサウンドへの傾倒ぶりは激しく、CD-Extraに掲載されている機材一覧(上記「synthesizer instruments」参照)を見てもわかるように、KORG Trinityを中心に90年代の名機達(しかも比較的廉価な)を使用しながらのこの一貫としたサイバー感覚の演出は、生半可な覚悟でニューウェーブ→デジロックの道を辿っていないことを感じさせるものです。本人の強力な知名度とギタリストとしての存在感が目立ってしまうため誤解されがちですが、彼の本質はサイバーで近未来、元来がテクノ&ニューウェーブの人間であることを再認識させられます。できることならば、本作のような路線を続けていってほしかったところですが、彼のような大スターともなると周囲の様々なしがらみからこのようなノンシングルカットの嗜好が偏りがちな作品をリリースし続けることは難しかったのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「SUPERSONIC GENERATION」
ガバ調の高速BPMの4つ打ちバスドラが響き渡る渾身のタイトルチューン。サンプリング全開のシャウトに痛いほどアシッドなベースライン、間奏の圧巻のギターソロでは必要以上にフラットかつ金属的なフレーズが暴れ回ります。本作のコンセプトを高らかと宣言するサイバーで攻撃的な世界観の名曲です。
・「SPIDER IN THE SKY」
イントロのロックなギターリフを音色でサイバーテクノに変身させた本作の作風を象徴するかのような楽曲。これも間奏の暴れるギターソロは圧巻ですが、その裏でしつこく粘り続けるアシッドなシンセフレーズが強烈なアクセントとしてギターと掛け合っているのが面白いです。最後のスペイシーラジオな効果から宇宙船が飛び去って、本作ラストソングの「DESTINY」に繋がる演出もニクいです。
・「DESTINY」
ドラマ仕立ての台詞回しが面白いラストチューン。サントラのようなドラマティックな展開も楽しいのですが、ハウス調のガンガンくるリズムにアシッドテクノのグチョグチョしたフレーズが絡んできて、その上に乗ってくるポエトリーリーディングとの違和感がこの楽曲の最大の魅力です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (攻撃的ではあるがアシッドでテクノな音色が満載)
・メロディ ★ (徹底的なサウンド志向でポップ性は後退)
・リズム ★★★ (レイト90's特有の直線的かつ神経質な構築ぶり)
・曲構成 ★★ (コンセプト作品として全体を通した激しさは一貫する)
・個性 ★★ (自身の志向と世間のイメージとの折り合いに苦しむ)
総合評点: 7点
布袋寅泰:vocals・all instruments
<synthesizer instruments>
Korg Trinity・StudioElectrinics Midi-Mini・Doepfer A100BS・Clavia Nordlead・Akai S3200XL・Roland SVC350・Roland JD990・E-mu Orbit・E-mu Vintage Keys・E-mu Proteus・Sherman Filterbank・Alesis DM5

1.「SUPERSONIC GENERATION」 詞・曲・編:布袋寅泰
2.「FUCK THE FAKE STAR」
詞:布袋寅泰 曲:布袋寅泰・Noko・Trevor Gray・Howard Gray
編:布袋寅泰・Apollo440
3.「THEY SPY YOU」 詞・曲・編:布袋寅泰
4.「BELIEVE ME, I’M A LIAR」 詞:布袋寅泰 曲・編:布袋寅泰・Darren Price
5.「MYTERY OF LOVE」 詞・曲・編:布袋寅泰
6.「WE ALL ALONE」 詞:森雪之丞 曲:布袋寅泰 編:布袋寅泰・SLINKY
7.「IMMIGRANT SONG」 詞・曲:Jimmy Page・Robert Plant 編:布袋寅泰
8.「LOVE OR DIE」 詞:森雪之丞 曲・編:布袋寅泰
9.「SPIDER IN THE SKY」 詞:森雪之丞 曲・編:布袋寅泰
10.「DESTINY」 詞 詞:森雪之丞 曲:布袋寅泰 編:布袋寅泰・Darren Price
<support musician>
Jeff Patterson:vocals・backing vocals
Ofra Haza:vocal
HIROSHI:bass
Zachary Alford:drums
Katie Kissoon:backing vocals
Tessa Niles:backing vocals
Tony Jackson:backing vocals
Wera Wonder:backing vocals
Apollo440:computer programming
SLINKY:computer programming
Darren Price:computer programming
渡部伸隆:computer programming・audio edit
produced by 布袋寅泰・Apollo440・Darren Price・SLINKY
engineered by 今井邦彦
● 攻撃的なエレクトリックロックを携えて本領発揮!サイバー的な世界観で統一されたコンセプチュアルな問題作
日本ロック界史上に残る名ギタリストとしての名を欲しいままにする布袋寅泰が、自身の音楽性をとことん突き詰めたソロワークシリーズ「GUTARHYTHM」4部作を完成し次のステージへ進んでいったわけですが、その先はヒットチューンが期待されたポップ路線でした。「POISON」「スリル」といった耳に残るリフをかましつつ印象に残るサビを乗せた楽曲は一般リスナーにも人気を博し文字通りスマッシュヒット。名実共にスターダムに昇り詰めていった彼は、しかしながらその状況に満足せず、再び自身が志向する音楽性に向き合うことを決意します。彼の音楽性の根幹といえばニューウェーブ。デジタルサウンドとロックの融合というテーマは「GUTARHYTHM」シリーズでも幾度となくチャレンジしていたわけですが、90年代後半となると、世界的にデジロックが席巻し始めており、奇しくも布袋はその時流に乗った形で、98年に本作のようなサイバーロック的アプローチが施されたマニアックでコンセプチュアルなアルバムのリリースに至りました。前作のポップ路線をかなぐり捨てたこの硬派なデジロック路線は、流行に媚びたと揶揄されたり、前作路線を期待したファンを篩にかける形になったりと、賛否両論が渦巻く形となりましたが、作品としてはチャレンジ精神に溢れた硬派な作品として、異色ながら傑作の呼び声の高い作品として評価されています。
元来典型的なロックギタリストでありながらエレクトロサウンドの導入に抵抗感のなく、ニューウェーブ感覚豊かなセンスを持ち合わせている布袋寅泰ですが、本作ではそのサウンドセンスが遺憾なく発揮されています。彼の代名詞であるキレのあるカッティングを中心としたギターワークはそのままに、過激で粘り気のある、尖りまくった音色のエレクトリックサウンドが添え物ではなく中心的な役割として導入され、まるでSF戦争映画を見せられているかのような攻撃性に満ちた過激音色で派手に立ち回っています。Apollo440やUnderworldに関わっていたDarren Price、SLINKYといった海外ミュージシャンの参加も本作の話題性の1つですが、海外デジロック勢を向こうに張っても全く臆することがないどころか、このような過激なエレクトリックサウンドだからこそ自身の個性的なギターワークが生きるのだ、と言わんばかりの布袋の生き生きとしたプレーぶりが堪能できます。それにしても本作のデジタルサウンド、シンセサウンドへの傾倒ぶりは激しく、CD-Extraに掲載されている機材一覧(上記「synthesizer instruments」参照)を見てもわかるように、KORG Trinityを中心に90年代の名機達(しかも比較的廉価な)を使用しながらのこの一貫としたサイバー感覚の演出は、生半可な覚悟でニューウェーブ→デジロックの道を辿っていないことを感じさせるものです。本人の強力な知名度とギタリストとしての存在感が目立ってしまうため誤解されがちですが、彼の本質はサイバーで近未来、元来がテクノ&ニューウェーブの人間であることを再認識させられます。できることならば、本作のような路線を続けていってほしかったところですが、彼のような大スターともなると周囲の様々なしがらみからこのようなノンシングルカットの嗜好が偏りがちな作品をリリースし続けることは難しかったのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「SUPERSONIC GENERATION」
ガバ調の高速BPMの4つ打ちバスドラが響き渡る渾身のタイトルチューン。サンプリング全開のシャウトに痛いほどアシッドなベースライン、間奏の圧巻のギターソロでは必要以上にフラットかつ金属的なフレーズが暴れ回ります。本作のコンセプトを高らかと宣言するサイバーで攻撃的な世界観の名曲です。
・「SPIDER IN THE SKY」
イントロのロックなギターリフを音色でサイバーテクノに変身させた本作の作風を象徴するかのような楽曲。これも間奏の暴れるギターソロは圧巻ですが、その裏でしつこく粘り続けるアシッドなシンセフレーズが強烈なアクセントとしてギターと掛け合っているのが面白いです。最後のスペイシーラジオな効果から宇宙船が飛び去って、本作ラストソングの「DESTINY」に繋がる演出もニクいです。
・「DESTINY」
ドラマ仕立ての台詞回しが面白いラストチューン。サントラのようなドラマティックな展開も楽しいのですが、ハウス調のガンガンくるリズムにアシッドテクノのグチョグチョしたフレーズが絡んできて、その上に乗ってくるポエトリーリーディングとの違和感がこの楽曲の最大の魅力です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (攻撃的ではあるがアシッドでテクノな音色が満載)
・メロディ ★ (徹底的なサウンド志向でポップ性は後退)
・リズム ★★★ (レイト90's特有の直線的かつ神経質な構築ぶり)
・曲構成 ★★ (コンセプト作品として全体を通した激しさは一貫する)
・個性 ★★ (自身の志向と世間のイメージとの折り合いに苦しむ)
総合評点: 7点
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