「Silent Moon」 国分友里恵
「Silent Moon」(1990 BMGビクター)
国分友里恵:vocal・background vocals・vocal arrangement

1.「Silent Moon」 詞:吉田美奈子 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
2.「One More Chance」 詞:秋元薫 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
3.「Saturday Nite」 詞:吉田美奈子 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
4.「遠い夜明け」 詞:国分友里恵 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
5.「私にだけForever」 詞:国分友里恵・秋元薫 曲:羽場仁志・岩本正樹 編:岩本正樹
6.「I Love You」 詞:国分友里恵 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
7.「It’s A Destiny」 詞:秋元薫 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
8.「Moment Of Summer」 詞:吉田美奈子 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
9.「It’s A Party」 詞:国分友里恵 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
10.「It’s Hard To Say Good-bye〜さよならは愛の言葉〜」 詞・曲:角松敏生 編:岩本正樹
11.「Whisperin’」 詞:渡辺なつみ 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
12.「I Love You (English Version)」 詞:倫児真理 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
<support musician>
岩本正樹:all instruments・keyboards・synthesizer operate・drums programming
羽場仁志:vocal・background vocals・synthesizer operate・drums programming
今 剛:guitar
竹内一宏:guitar
土方隆行:guitar
古川望:guitar
富倉安生:bass
宮崎全弘:drums
荒木敏男:trumpet
河東伸夫:trumpet
平内保夫:trombone
金城寛文:sax
菊池康正:tenor sax・alto sax
内田輝Group:strings
秋元薫:background vocals
高尾直樹:background vocals
斉藤仁:synthesizer operate・drums programming
浅野浩伸:synthesizer operate・drums programming
produced by 塚田達也
sound produced by HIM Project(岩本正樹・羽場仁志・浅野浩伸)
engineered by 浅野浩伸
● 力強いヴォーカルと時代のデジタルダンサブルビートにブラコン魂を感じる貫禄の2ndアルバム
1980年代より実力派のシンガーとして、またスタジオレコーディングで活躍するコーラスとして、当時の音楽界において存在感を発揮、山下達郎や角松敏生といった大物アーティストにも愛されていた国分友里恵は、83年の「Relief」、80年代後期の派手派手しいブラコンサウンドで衝撃を与えた87年の「STEPS」と80年代の2枚のアルバムを残しました。80年代末には日本を代表するフュージョンバンドCASIOPEAが誇るリズム隊の2人、櫻井哲夫と神保彰の歌モノユニットSHAMBARAにヴォーカリストとして参加するなどその美声を披露していた彼女でしたが、SHAMBARAは90年には活動休止、彼女も制作を進めてきた3rdアルバムをリリースすることになります。
本作は前作「STEPS」と同様に羽場仁志&岩本正樹の作編曲コンビが再登板し、前作のデジタルファンクと国分の伸びのあるヴォーカルを生かしたマイルドなバラードソングを中心に、濃厚なブラックコンテンポラリーミュージックを展開しています。80年代後期のような勢いと粗さが同居したようなプログラミングサウンドはやや後退したものの、90年代初頭はまだバブルの残り香が漂う時代背景もあってリズム隊に関する音の厚みは健在、全体を包むリバーブに支えられたシンセサウンドの広がり方も高品位で(このあたりはエンジニアリング&サウンドプロデュースの浅野浩伸の良質な仕事)、国分の魅力溢れる歌唱力を埋もれさせないクオリティを保っています。アメリカ西海岸風なメロディでシティポップの王道を行く羽場仁志の作曲能力もさることながら、やはり国分友里恵楽曲といえば夫でもある岩本正樹の気合い入りまくりのこのサウンドメイクに頼る部分も大きいと思われます。キーボーディストでもある彼はエレクトリックピアノの響かせ方もお洒落で、かつブラスやストリングスのフレージングも隙がなく、さすがに現在までドラマ劇伴等で活躍できるほどの完成度の高い仕事ぶりです。彼も一般的にもっと再評価されて良いアレンジャーと言えるでしょう。
角松敏生とのデュエットで名を馳せた名バラード「「It’s Hard To Say Good-bye〜さよならは愛の言葉〜」を羽場仁志とのデュエットでリメイクするなど奇しくも80年代ブラコンサウンド路線の集大成とも言える作品を作り上げた彼女ですが、以降は徐々にヒーリングPOPS路線へと移行、クリスチャンとして賛美歌を歌うことも多くなりましたが、その美声をPOPSの世界で披露することもまだまだあるようです。
<Favorite Songs>
・「Silent Moon」
濃厚なファンクネスで迫ってくるオープニングにしてタイトルチューン。シンセブラスとコーラスによる音の壁で全体を隔離した音に密度の濃さを感じます。スネアの後ろに入る短く切ったリバース音のアイデアは面白いです。アウトロのラップとスラップベースの絡みなどはもはや洋楽の世界に迷い込んだかのようです。
・「私にだけForever」
抜群の歌謡力が生かされた躍動感が半端ではないファンキーシティポップ。派手なブラスセクションに洋楽ライクなコーラスワークも美しく、デジタル色豊かなシーケンスをリズムにしながらも豪快さを失わないのはまさにキラーフレーズともいうべきサビの開放感に裏打ちされていると思われます。
・「It’s A Destiny」
プログラマブルな硬めのリズムとオケヒットギミックサウンドが魅力の本作最も派手な楽曲。ブゥーンと低音を響かせるシンセベースの使い方に特徴があり、強烈なアクセントになっています。ギターソロも派手なバックトラックに合わせてギミカルで唸りを上げるアヴァンギャルドなフレーズで聴かせます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (音の広がり方が素晴らしく芳醇な音世界)
・メロディ ★★★ (サウンドに圧倒されない力のあるフレーズも)
・リズム ★★ (派手さは残るものの安定感を重視した音づくり)
・曲構成 ★ (余りに濃厚な楽曲が続くためある種の疲労感が)
・個性 ★ (歌唱力に疑いないが余りに洋楽過ぎる面も)
総合評点: 7点
国分友里恵:vocal・background vocals・vocal arrangement

1.「Silent Moon」 詞:吉田美奈子 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
2.「One More Chance」 詞:秋元薫 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
3.「Saturday Nite」 詞:吉田美奈子 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
4.「遠い夜明け」 詞:国分友里恵 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
5.「私にだけForever」 詞:国分友里恵・秋元薫 曲:羽場仁志・岩本正樹 編:岩本正樹
6.「I Love You」 詞:国分友里恵 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
7.「It’s A Destiny」 詞:秋元薫 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
8.「Moment Of Summer」 詞:吉田美奈子 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
9.「It’s A Party」 詞:国分友里恵 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
10.「It’s Hard To Say Good-bye〜さよならは愛の言葉〜」 詞・曲:角松敏生 編:岩本正樹
11.「Whisperin’」 詞:渡辺なつみ 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
12.「I Love You (English Version)」 詞:倫児真理 曲:羽場仁志 編:岩本正樹
<support musician>
岩本正樹:all instruments・keyboards・synthesizer operate・drums programming
羽場仁志:vocal・background vocals・synthesizer operate・drums programming
今 剛:guitar
竹内一宏:guitar
土方隆行:guitar
古川望:guitar
富倉安生:bass
宮崎全弘:drums
荒木敏男:trumpet
河東伸夫:trumpet
平内保夫:trombone
金城寛文:sax
菊池康正:tenor sax・alto sax
内田輝Group:strings
秋元薫:background vocals
高尾直樹:background vocals
斉藤仁:synthesizer operate・drums programming
浅野浩伸:synthesizer operate・drums programming
produced by 塚田達也
sound produced by HIM Project(岩本正樹・羽場仁志・浅野浩伸)
engineered by 浅野浩伸
● 力強いヴォーカルと時代のデジタルダンサブルビートにブラコン魂を感じる貫禄の2ndアルバム
1980年代より実力派のシンガーとして、またスタジオレコーディングで活躍するコーラスとして、当時の音楽界において存在感を発揮、山下達郎や角松敏生といった大物アーティストにも愛されていた国分友里恵は、83年の「Relief」、80年代後期の派手派手しいブラコンサウンドで衝撃を与えた87年の「STEPS」と80年代の2枚のアルバムを残しました。80年代末には日本を代表するフュージョンバンドCASIOPEAが誇るリズム隊の2人、櫻井哲夫と神保彰の歌モノユニットSHAMBARAにヴォーカリストとして参加するなどその美声を披露していた彼女でしたが、SHAMBARAは90年には活動休止、彼女も制作を進めてきた3rdアルバムをリリースすることになります。
本作は前作「STEPS」と同様に羽場仁志&岩本正樹の作編曲コンビが再登板し、前作のデジタルファンクと国分の伸びのあるヴォーカルを生かしたマイルドなバラードソングを中心に、濃厚なブラックコンテンポラリーミュージックを展開しています。80年代後期のような勢いと粗さが同居したようなプログラミングサウンドはやや後退したものの、90年代初頭はまだバブルの残り香が漂う時代背景もあってリズム隊に関する音の厚みは健在、全体を包むリバーブに支えられたシンセサウンドの広がり方も高品位で(このあたりはエンジニアリング&サウンドプロデュースの浅野浩伸の良質な仕事)、国分の魅力溢れる歌唱力を埋もれさせないクオリティを保っています。アメリカ西海岸風なメロディでシティポップの王道を行く羽場仁志の作曲能力もさることながら、やはり国分友里恵楽曲といえば夫でもある岩本正樹の気合い入りまくりのこのサウンドメイクに頼る部分も大きいと思われます。キーボーディストでもある彼はエレクトリックピアノの響かせ方もお洒落で、かつブラスやストリングスのフレージングも隙がなく、さすがに現在までドラマ劇伴等で活躍できるほどの完成度の高い仕事ぶりです。彼も一般的にもっと再評価されて良いアレンジャーと言えるでしょう。
角松敏生とのデュエットで名を馳せた名バラード「「It’s Hard To Say Good-bye〜さよならは愛の言葉〜」を羽場仁志とのデュエットでリメイクするなど奇しくも80年代ブラコンサウンド路線の集大成とも言える作品を作り上げた彼女ですが、以降は徐々にヒーリングPOPS路線へと移行、クリスチャンとして賛美歌を歌うことも多くなりましたが、その美声をPOPSの世界で披露することもまだまだあるようです。
<Favorite Songs>
・「Silent Moon」
濃厚なファンクネスで迫ってくるオープニングにしてタイトルチューン。シンセブラスとコーラスによる音の壁で全体を隔離した音に密度の濃さを感じます。スネアの後ろに入る短く切ったリバース音のアイデアは面白いです。アウトロのラップとスラップベースの絡みなどはもはや洋楽の世界に迷い込んだかのようです。
・「私にだけForever」
抜群の歌謡力が生かされた躍動感が半端ではないファンキーシティポップ。派手なブラスセクションに洋楽ライクなコーラスワークも美しく、デジタル色豊かなシーケンスをリズムにしながらも豪快さを失わないのはまさにキラーフレーズともいうべきサビの開放感に裏打ちされていると思われます。
・「It’s A Destiny」
プログラマブルな硬めのリズムとオケヒットギミックサウンドが魅力の本作最も派手な楽曲。ブゥーンと低音を響かせるシンセベースの使い方に特徴があり、強烈なアクセントになっています。ギターソロも派手なバックトラックに合わせてギミカルで唸りを上げるアヴァンギャルドなフレーズで聴かせます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (音の広がり方が素晴らしく芳醇な音世界)
・メロディ ★★★ (サウンドに圧倒されない力のあるフレーズも)
・リズム ★★ (派手さは残るものの安定感を重視した音づくり)
・曲構成 ★ (余りに濃厚な楽曲が続くためある種の疲労感が)
・個性 ★ (歌唱力に疑いないが余りに洋楽過ぎる面も)
総合評点: 7点
「RAGE IN EDEN」 ULTRAVOX
「RAGE IN EDEN」(1981 Chrysalis)
ULTRAVOX

<members>
Chris Cross:bass・synthesizers・vocals
Midge Ure:vocals・guitars・synthesizers
Warren Cann:drums・electronic percussion・vocals
Billy Currie:synthesizers・piano・violin・viola
1.「The Voice」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
2.「We Stand Alone」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
3.「Rage in Eden」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
4.「I Remember (Death in the Afternoon)」
Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
5.「The Thin Wall」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
6.「Stranger Within」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
7.「Accent on Youth」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
8.「The Ascent」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
9.「Your Name (Has Slipped My Mind Again)」
Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
produced by ULTRAVOX・Conny Plank
engineered by Conny Plank
● ポップソングの中にもニューウェーブ道をストイックに突き詰めた緊迫感溢れる空気感が魅力的な新生第2弾アルバム
カリスマ的ヴォーカリストであったJohn Foxxが脱退しMidge Ureを新たに迎えた新生ULTRAVOXがアルバム「Vienna」でブレイクを果たしたのが1980年。わかりやすい直線的なベースラインと泣きのヴォーカルで一世を風靡した彼らはその勢いをそのままに次作を制作、翌年夏に先行シングル「The Thin Wall」(名曲!)をリリース後、本作が発表されます。前作で披露されたMidge Ureのソングライティングは本作でも全開ですが、それ以上にサウンド面での充実ぶりが極まっており、さらに尖ったエレクトロセンスを見せつけるニューウェーバー達のバイブルとなるべき名盤として現在も語り継がれています。
なにせ当時はニューウェーブ全盛期ですからソレ系のグループはこぞってシンセサイザーを初めとした電子楽器を我れ先に使用したくなるわけですが、本作ではバンドサウンドのおけるシンセフレーズのお手本のような楽曲が並びます。生ベースとシンセベースを要所で使い分け、あくまでギターサウンドをフィーチャーしてロックバンドの型を維持しながら随所でねじりまくったシンセサウンド(&E-bowギター等のギミック)で新しさを追求する、これぞニューウェーブの典型というべき構成からもバンドの充実ぶりが窺えます。そしてこの手のバンドには不可欠なノンスウィング・ノングルーヴのドラミングをWarren Cannが忠実にこなすことで、楽曲に「芯」が生まれていることにも注目です。特にシーケンスによるシンセベースを多用する彼らのようなバンドにこそこのドラミングが必要で、シーケンスと生ドラムによる独特のマシナリーグルーヴは、その後のテクノ&エレクトリック系グループの礎となったと思われます。また顕著なのは淡々とリズムを繰り返すミニマルテンポを多用することで一種の陶酔効果を招き寄せることです。これはテクノポップ系の名プロデューサー&エンジニアであるConny Plankの成せる業で、特にジャーマンロックで見られるこのミニマル効果を生み出すにはジャストなテンポが必要なので、そこでWarren Cannのようなドラミングとお得意の直線的ベースラインが不可欠であり、それをベースにフリーダムなギターやシンセを遊ばせることで、幻惑のサウンドが生み出されるというわけです。当時のULTRAVOXにはそのようなマジックを生み出す神がかったサウンドセンスが備わっていたと思われるのですが、これもConny Plankの魔術師的サウンドメイクがあってこそで、それはConny が離れたその後の彼らの作品を聴いても明確になると思われます。
<Favorite Songs>
・「The Voice」
シングルカットされたオープニングナンバー。ジャストなリズム(アクセントのザップ音が素晴らしい)に支えられ、男なコーラスに泣きのサビという新生ULTRAVOX十八番の展開が実に良いです。間奏ではうねりまくるシンセソロで、期待を裏切りません。
・「The Thin Wall」
異常なテンションと魅惑のコードワークでニューウェーブ界に多大な影響を与えた稀代の名曲。何といっても特徴的なつんのめりベースラインでしょう。息継ぐ間もなくまくしたて歌い上げる盛り上がることこの上なしのヴォーカルからの陰鬱なコーラスに彩られた幻想的な世界、後半は例のベースラインとキレのあるカッティングで押しまくるミニマルな展開等見せ場も多く、恐らくULTRAVOXのレパートリーでも1、2を争う名曲です。
・「Stranger Within」
7分以上にも及ぶ大作ながら各パートに見せ場たっぷりのプログレッシブナンバー。およそロックらしからぬフレーズの挿入や効果的なエフェクトワーク、楽曲自体は地味めではあるもののギミカルなサウンドが飛び交う玄人好みの意欲的な楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (一言で言うとアクの強い音で粒立ちが良くヒネている)
・メロディ ★★ (ポップ性では前作には劣るがサビの強さは相変わらず)
・リズム ★★★★ (ベース&ドラムの麻薬効果は抜群で後世のお手本に)
・曲構成 ★ (後半になるにつれてマニアックな楽曲が続く)
・個性 ★★ (完全に立ち位置を確立するがベタなサビの兆候も)
総合評点: 7点
ULTRAVOX

<members>
Chris Cross:bass・synthesizers・vocals
Midge Ure:vocals・guitars・synthesizers
Warren Cann:drums・electronic percussion・vocals
Billy Currie:synthesizers・piano・violin・viola
1.「The Voice」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
2.「We Stand Alone」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
3.「Rage in Eden」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
4.「I Remember (Death in the Afternoon)」
Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
5.「The Thin Wall」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
6.「Stranger Within」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
7.「Accent on Youth」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
8.「The Ascent」 Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
9.「Your Name (Has Slipped My Mind Again)」
Warren Cann/Chris Cross/Billy Currie/Midge Ure
produced by ULTRAVOX・Conny Plank
engineered by Conny Plank
● ポップソングの中にもニューウェーブ道をストイックに突き詰めた緊迫感溢れる空気感が魅力的な新生第2弾アルバム
カリスマ的ヴォーカリストであったJohn Foxxが脱退しMidge Ureを新たに迎えた新生ULTRAVOXがアルバム「Vienna」でブレイクを果たしたのが1980年。わかりやすい直線的なベースラインと泣きのヴォーカルで一世を風靡した彼らはその勢いをそのままに次作を制作、翌年夏に先行シングル「The Thin Wall」(名曲!)をリリース後、本作が発表されます。前作で披露されたMidge Ureのソングライティングは本作でも全開ですが、それ以上にサウンド面での充実ぶりが極まっており、さらに尖ったエレクトロセンスを見せつけるニューウェーバー達のバイブルとなるべき名盤として現在も語り継がれています。
なにせ当時はニューウェーブ全盛期ですからソレ系のグループはこぞってシンセサイザーを初めとした電子楽器を我れ先に使用したくなるわけですが、本作ではバンドサウンドのおけるシンセフレーズのお手本のような楽曲が並びます。生ベースとシンセベースを要所で使い分け、あくまでギターサウンドをフィーチャーしてロックバンドの型を維持しながら随所でねじりまくったシンセサウンド(&E-bowギター等のギミック)で新しさを追求する、これぞニューウェーブの典型というべき構成からもバンドの充実ぶりが窺えます。そしてこの手のバンドには不可欠なノンスウィング・ノングルーヴのドラミングをWarren Cannが忠実にこなすことで、楽曲に「芯」が生まれていることにも注目です。特にシーケンスによるシンセベースを多用する彼らのようなバンドにこそこのドラミングが必要で、シーケンスと生ドラムによる独特のマシナリーグルーヴは、その後のテクノ&エレクトリック系グループの礎となったと思われます。また顕著なのは淡々とリズムを繰り返すミニマルテンポを多用することで一種の陶酔効果を招き寄せることです。これはテクノポップ系の名プロデューサー&エンジニアであるConny Plankの成せる業で、特にジャーマンロックで見られるこのミニマル効果を生み出すにはジャストなテンポが必要なので、そこでWarren Cannのようなドラミングとお得意の直線的ベースラインが不可欠であり、それをベースにフリーダムなギターやシンセを遊ばせることで、幻惑のサウンドが生み出されるというわけです。当時のULTRAVOXにはそのようなマジックを生み出す神がかったサウンドセンスが備わっていたと思われるのですが、これもConny Plankの魔術師的サウンドメイクがあってこそで、それはConny が離れたその後の彼らの作品を聴いても明確になると思われます。
<Favorite Songs>
・「The Voice」
シングルカットされたオープニングナンバー。ジャストなリズム(アクセントのザップ音が素晴らしい)に支えられ、男なコーラスに泣きのサビという新生ULTRAVOX十八番の展開が実に良いです。間奏ではうねりまくるシンセソロで、期待を裏切りません。
・「The Thin Wall」
異常なテンションと魅惑のコードワークでニューウェーブ界に多大な影響を与えた稀代の名曲。何といっても特徴的なつんのめりベースラインでしょう。息継ぐ間もなくまくしたて歌い上げる盛り上がることこの上なしのヴォーカルからの陰鬱なコーラスに彩られた幻想的な世界、後半は例のベースラインとキレのあるカッティングで押しまくるミニマルな展開等見せ場も多く、恐らくULTRAVOXのレパートリーでも1、2を争う名曲です。
・「Stranger Within」
7分以上にも及ぶ大作ながら各パートに見せ場たっぷりのプログレッシブナンバー。およそロックらしからぬフレーズの挿入や効果的なエフェクトワーク、楽曲自体は地味めではあるもののギミカルなサウンドが飛び交う玄人好みの意欲的な楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (一言で言うとアクの強い音で粒立ちが良くヒネている)
・メロディ ★★ (ポップ性では前作には劣るがサビの強さは相変わらず)
・リズム ★★★★ (ベース&ドラムの麻薬効果は抜群で後世のお手本に)
・曲構成 ★ (後半になるにつれてマニアックな楽曲が続く)
・個性 ★★ (完全に立ち位置を確立するがベタなサビの兆候も)
総合評点: 7点
「The Mode Of Life」 LUNATIC ORCHESTRA
「The Mode Of Life」 (1990 CBSソニー)
LUNATIC ORCHESTRA SENNEN COMETS

<members>
高鍋千年:vocal・keyboard・percussion・bass・guitar・chorus
1.「The Mode Of Life」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
2.「Fairy Tale」 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
3.「Twilight Song」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
4.「Michael」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
5.「Just One Day」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
6.「Blue Rain」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
7.「Summer Story」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
8.「Love Is Lie」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
9.「Velvet Dream」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
10.「Voice Of Sky」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
11.「Boy」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
12.「罪深き夏」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
<support musician>
KAZ高橋:guitar
バカボン鈴木:bass
渡辺等:wood bass
夏目一朗:drum programming・accordion・keyboard
浦山秀彦:keyboard・percussion・guitar・kalimba・chorus
近藤達郎:piano・electric piano・harmonica・clarinet
Harry Butterfield:recorder
sound produced by 高鍋千年
sound supervised by 浦山秀彦
mixing engineered by 河合十里
recording engineered by 河合十里・鎌田岳彦・飛澤正人
● バンドを解体しソロユニットに移行!独自の美意識世界を具現化した強力なコンセプチュアルアルバム
数々の名アーティストを生み出したCBSソニーオーディション出身のカリスマ系ヴォーカリストとして期待された高鍋千年。彼の独特な佇まいと歌唱力を生かすために集められた川上シゲ等と1987年に結成した千年COMETSは、80年代後半の群雄割拠渦巻くロックバンドの中でも、ポストニューロマンティックな匂いを醸し出していた個性豊かなグループでした。しかし劇的に移り変わるレイト80'sの音楽シーンの中で確固たる結果を得られなかった彼らは、もともとが高鍋千年プロジェクトの一員というバンドとしての不安定さを露呈したこともあって89年に解散することになります。しかし高鍋は千年COMETSというプロジェクトを終了させることなく、新たなソロユニットとして継続していくことを選択しました。それがこのLUNATIC ORCHESTRA SENNEN COMETSというわけで、早速90年には高鍋ワールド全開のコンセプチュアルな本作をリリースすることになります。
ソロユニットとしての再始動にあたって高鍋をサポートするのは、CBSソニーよりデビューしたロックバンドCLAXONの元キーボーディストであり、後期千年COMETSのメンバーでもあった夏目一朗や、本作のスーパーバイザーを務めた、ほとらぴからっ→めいなCo.、ASACHAN&巡礼のメンバーとしての渋い活躍が光るサウンドメイカー浦山秀彦といった面々です。本作に漂うギター中心の無国籍民族的サウンドは、浦山秀彦と彼が連れてきた(と思われる)近藤達郎の仕事による部分が大きいと思われますが、河合十里による広がりのあるエンジニアリングのためか空間的仕掛けも丁寧に施されており、その音世界は想像以上に濃厚なものです。また本作で際立つのは千年COMETS時代にも定評のあった高鍋自身のソングライティング能力で、バンド時代は斜に構えて小難しい部分もあったフレーズも、本作では比較的素直になって厭世的な雰囲気が後退し、光が差すような開放的な旋律を好むようになっています。それらが持ち前のコンセプチュアルなストーリー性濃厚な世界観によって1つのアルバムに構築されていくわけですから、高鍋ワールドは聴き手にはより直接的に訴えかけてくることになりますが、こうなってしまうと余りに世界観の押しつけが強過ぎて聴き手に好き嫌いが分かれてしまうことになり、結果としては本作を最後に高鍋千年の表立ったアーティスト活動は終了してしまうことになります。しかしこの千年COMETSプロジェクトによって残された彼の仕事ぶりは現在でこそ強烈な存在感を放っているので、再び彼らの作品群が日の目を見ることを期待しています。
<Favorite Songs>
・「The Mode Of Life」
程よくノイジーな幾重にも重ねられたギターワークが中心ですが、それ以上に滲むようなシンセパッドが麗しいタイトルチューン。一聴して認識できる高鍋メロディで安心させられる濃厚な世界観は健在です。作品の導入部ということもあり、アウトロを意図的にフェイドアウトさせた鼓動を感じるエンディングも秀逸です。
・「Twilight Song」
コーラスワークが魅力的な憂いと爽快感をブレンドしたギターロック。全体を包む爽やかさはまさにこのコーラスにあり、特にAメロのリバースコーラスの入り方は素晴らしく、ラムネのような清涼感に溢れています。
・「Velvet Dream」
フレットレスベースの妖艶なフレーズが幻想的なミディアムチューン。Aメロの空間を支配するシンセパッドとピアノ&ベースの掛け合いと、控えめな空間ノイジーギターの入れ方が聴き所ですが、サビではしっかり転調してコーラスを生かした爽やかフレーズを聴かせます。
<評点>
・サウンド ★★ (緻密に作り上げられるがバンド時代の斬新さは後退)
・メロディ ★★★ (方向性自体がメロディアス志向になり美メロ際立つ)
・リズム ★ (安定はしているが派手さと力強さは不足気味か)
・曲構成 ★ (サウンド自体に抑揚が少なく濃厚さで疲労感も)
・個性 ★★ (余りに世界観を前面に押し出したため孤高の存在に)
総合評点: 6点
LUNATIC ORCHESTRA SENNEN COMETS

<members>
高鍋千年:vocal・keyboard・percussion・bass・guitar・chorus
1.「The Mode Of Life」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
2.「Fairy Tale」 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
3.「Twilight Song」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
4.「Michael」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
5.「Just One Day」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
6.「Blue Rain」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
7.「Summer Story」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
8.「Love Is Lie」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
9.「Velvet Dream」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
10.「Voice Of Sky」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
11.「Boy」 詞・曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
12.「罪深き夏」 詞:Harry Butterfield 曲:高鍋千年 編:LUNATIC ORCHESTRA
<support musician>
KAZ高橋:guitar
バカボン鈴木:bass
渡辺等:wood bass
夏目一朗:drum programming・accordion・keyboard
浦山秀彦:keyboard・percussion・guitar・kalimba・chorus
近藤達郎:piano・electric piano・harmonica・clarinet
Harry Butterfield:recorder
sound produced by 高鍋千年
sound supervised by 浦山秀彦
mixing engineered by 河合十里
recording engineered by 河合十里・鎌田岳彦・飛澤正人
● バンドを解体しソロユニットに移行!独自の美意識世界を具現化した強力なコンセプチュアルアルバム
数々の名アーティストを生み出したCBSソニーオーディション出身のカリスマ系ヴォーカリストとして期待された高鍋千年。彼の独特な佇まいと歌唱力を生かすために集められた川上シゲ等と1987年に結成した千年COMETSは、80年代後半の群雄割拠渦巻くロックバンドの中でも、ポストニューロマンティックな匂いを醸し出していた個性豊かなグループでした。しかし劇的に移り変わるレイト80'sの音楽シーンの中で確固たる結果を得られなかった彼らは、もともとが高鍋千年プロジェクトの一員というバンドとしての不安定さを露呈したこともあって89年に解散することになります。しかし高鍋は千年COMETSというプロジェクトを終了させることなく、新たなソロユニットとして継続していくことを選択しました。それがこのLUNATIC ORCHESTRA SENNEN COMETSというわけで、早速90年には高鍋ワールド全開のコンセプチュアルな本作をリリースすることになります。
ソロユニットとしての再始動にあたって高鍋をサポートするのは、CBSソニーよりデビューしたロックバンドCLAXONの元キーボーディストであり、後期千年COMETSのメンバーでもあった夏目一朗や、本作のスーパーバイザーを務めた、ほとらぴからっ→めいなCo.、ASACHAN&巡礼のメンバーとしての渋い活躍が光るサウンドメイカー浦山秀彦といった面々です。本作に漂うギター中心の無国籍民族的サウンドは、浦山秀彦と彼が連れてきた(と思われる)近藤達郎の仕事による部分が大きいと思われますが、河合十里による広がりのあるエンジニアリングのためか空間的仕掛けも丁寧に施されており、その音世界は想像以上に濃厚なものです。また本作で際立つのは千年COMETS時代にも定評のあった高鍋自身のソングライティング能力で、バンド時代は斜に構えて小難しい部分もあったフレーズも、本作では比較的素直になって厭世的な雰囲気が後退し、光が差すような開放的な旋律を好むようになっています。それらが持ち前のコンセプチュアルなストーリー性濃厚な世界観によって1つのアルバムに構築されていくわけですから、高鍋ワールドは聴き手にはより直接的に訴えかけてくることになりますが、こうなってしまうと余りに世界観の押しつけが強過ぎて聴き手に好き嫌いが分かれてしまうことになり、結果としては本作を最後に高鍋千年の表立ったアーティスト活動は終了してしまうことになります。しかしこの千年COMETSプロジェクトによって残された彼の仕事ぶりは現在でこそ強烈な存在感を放っているので、再び彼らの作品群が日の目を見ることを期待しています。
<Favorite Songs>
・「The Mode Of Life」
程よくノイジーな幾重にも重ねられたギターワークが中心ですが、それ以上に滲むようなシンセパッドが麗しいタイトルチューン。一聴して認識できる高鍋メロディで安心させられる濃厚な世界観は健在です。作品の導入部ということもあり、アウトロを意図的にフェイドアウトさせた鼓動を感じるエンディングも秀逸です。
・「Twilight Song」
コーラスワークが魅力的な憂いと爽快感をブレンドしたギターロック。全体を包む爽やかさはまさにこのコーラスにあり、特にAメロのリバースコーラスの入り方は素晴らしく、ラムネのような清涼感に溢れています。
・「Velvet Dream」
フレットレスベースの妖艶なフレーズが幻想的なミディアムチューン。Aメロの空間を支配するシンセパッドとピアノ&ベースの掛け合いと、控えめな空間ノイジーギターの入れ方が聴き所ですが、サビではしっかり転調してコーラスを生かした爽やかフレーズを聴かせます。
<評点>
・サウンド ★★ (緻密に作り上げられるがバンド時代の斬新さは後退)
・メロディ ★★★ (方向性自体がメロディアス志向になり美メロ際立つ)
・リズム ★ (安定はしているが派手さと力強さは不足気味か)
・曲構成 ★ (サウンド自体に抑揚が少なく濃厚さで疲労感も)
・個性 ★★ (余りに世界観を前面に押し出したため孤高の存在に)
総合評点: 6点
「N°1」 IX・IX
「N°1」(1989 アルファムーン)
IX・IX

<members>
山本振市:vocals・guitars・background vocals
山本洸盟:drums・percussions・background vocals
山本一留成:vocals・keyboards・background vocals
1.「Take me with you」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
2.「Turning Back」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本一留成 編:IX・IX
3.「laughter in the sun」 詞:山本振市・山本洸盟 曲:山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
4.「Dreaming」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
5.「Moon Blue」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
6.「Heartbeat」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
7.「my way my love」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
8.「Oh! Lady」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
9.「Gypsy Girl」 詞:山本洸盟・山本一留成 曲:山本一留成 編:IX・IX
10.「Faces」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
<support musician>
Steve Lukather:guitars
鈴木茂:guitars
Carmen Mosier:acoustic guitar
Neil Stubenhaus:bass
重実徹:electric piano・acoustic piano
難波弘之:electric piano・acoustic piano
Paulinho Da Costa:percussion
Brandon Fields:sax
Glen Garrett:sax
Rick Riso:background vocals
Tim Hosman:background vocals
石川鉄男:synthesizer operate
林秀幸:synthesizer operate
福田竜太:synthesizer operate
produced by IX・IX
mixing engineered by 伊東俊郎・佐藤康夫
recording engineered by Mark Jackson・Peter Woodford・David Glover・Brian Soucy・中村辰也・佐藤康夫
● やんちゃだったエレポップ3兄弟が洗練された大人のAORポップユニットとして帰って来た再デビューアルバム
後藤次利プロデュースにより1983年にデビューしたタキシード姿も麗しい3兄弟ユニットIKOSHINの音楽性は過激なエレクトリックビートとニューロマンティクス感たっぷりのヴォーカル&パフォーマンスで、ヴィジュアル面でも先鋭的な感覚を持ちながらもいまいちブレイクしきれずに2枚のミニアルバムを残し2年間にわたる活動を休止してしまい、音楽界からは忘れかけた存在となっていました。その後音楽界はさらなるテクノロジーの進歩によりエレクトリックサウンドの手法は一般化かつ過激化していったわけですが、それが飽和状態に達した89年に再び彼らは音楽界に姿を現し、X・IX(アイクス・アイクス)という新しいグループ名のもと1stアルバムである本作をリリースします。5年の歳月を経て大人になった彼らが80年代末期に世に問うたサウンドとはいかなるものだったのでしょうか。
IKOSHIN時代からも後藤次利のサポートがありながらも3兄弟による楽曲制作を行っていましたが、本作では既に独り立ちしたかのような安定感を作品全体から感じ取ることができます。しかし5年前のハイパーエレクトロ連打ビートの面影はリズム音色の残滓にとどまっており、(もちろんビート構築のキレにはセンスを感じますが)よりポップネスに舵を切ったサウンドを志向しています。また2曲は大物ギタリスト鈴木茂のプロデュースを受けていますが、これも安定期に入った山本3兄弟の象徴ともいうべきAORアプローチ満載の音づくりなので、IKOSHIN時代の音を期待していたリスナーにとっては肩透かしを食らうかもしれません。しかしながらもともとが帰国子女であるための洋楽志向である彼らがTOTOのSteve Lukatherをゲストに迎えてまで西海岸風AORへ傾倒していくのは当然の帰結とも言えるでしょう。そのようなわけで何とも薄味な音楽性に落ち着いたと揶揄された彼らですが、救いは89年という時代性からのパワーが残るリズムトラックで、この厚みのあるビート構築があるこそ美しいメロディが引き立つわけで、埋没しがちな個性を掘り起こすことにも成功していると思われます。結局この手法も長くは続かず、翌年2ndアルバム「Stories」を発表後は再び眠りにつくことになりますが、日本人らしからぬ安定感と美意識を兼ね備えていたグループであったと思うので、再評価を期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Take me with you」
落ち着いたサウンドと美メロをアピールしたオープニングナンバー。ファンタジック系とメタリック系を駆使したシンセ音色がオシャレで、曲調にスパイスを与えるいななきギターも良いですが、ラストの転調とジャラ〜ンとしたギターが美しいです。
・「Heartbeat」
柔らかいシンセパッドが染み渡る英詞ミディアムチューン。サックスもフィーチャーされたムーディーなAORに終わらないのはタイトに主張するスネア音色に他なりません。
・「Gypsy Girl」
これもインダストリアルなリズム音色で個性を際立たせるAOR歌謡。楽曲としてはソフトタッチの美メロPOPSと終えますが、延々と続くガシンッ!ガシンッ!というスネアが耳について仕方がありません。
<評点>
・サウンド ★★ (派手さはないものの隙のなさに成長を感じる)
・メロディ ★★ (センスは感じるがどこか煮え切らなさも感じる不安)
・リズム ★★ (打ち込みによる正確性とタイトな音色が光る)
・曲構成 ★ (ポップ性を追求するあまり似たような楽曲が集まる)
・個性 ★ (感覚の鋭さは年齢を重ねるごとに衰えてた感もあり)
総合評点: 6点
IX・IX

<members>
山本振市:vocals・guitars・background vocals
山本洸盟:drums・percussions・background vocals
山本一留成:vocals・keyboards・background vocals
1.「Take me with you」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
2.「Turning Back」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本一留成 編:IX・IX
3.「laughter in the sun」 詞:山本振市・山本洸盟 曲:山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
4.「Dreaming」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
5.「Moon Blue」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
6.「Heartbeat」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
7.「my way my love」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
8.「Oh! Lady」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
9.「Gypsy Girl」 詞:山本洸盟・山本一留成 曲:山本一留成 編:IX・IX
10.「Faces」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
<support musician>
Steve Lukather:guitars
鈴木茂:guitars
Carmen Mosier:acoustic guitar
Neil Stubenhaus:bass
重実徹:electric piano・acoustic piano
難波弘之:electric piano・acoustic piano
Paulinho Da Costa:percussion
Brandon Fields:sax
Glen Garrett:sax
Rick Riso:background vocals
Tim Hosman:background vocals
石川鉄男:synthesizer operate
林秀幸:synthesizer operate
福田竜太:synthesizer operate
produced by IX・IX
mixing engineered by 伊東俊郎・佐藤康夫
recording engineered by Mark Jackson・Peter Woodford・David Glover・Brian Soucy・中村辰也・佐藤康夫
● やんちゃだったエレポップ3兄弟が洗練された大人のAORポップユニットとして帰って来た再デビューアルバム
後藤次利プロデュースにより1983年にデビューしたタキシード姿も麗しい3兄弟ユニットIKOSHINの音楽性は過激なエレクトリックビートとニューロマンティクス感たっぷりのヴォーカル&パフォーマンスで、ヴィジュアル面でも先鋭的な感覚を持ちながらもいまいちブレイクしきれずに2枚のミニアルバムを残し2年間にわたる活動を休止してしまい、音楽界からは忘れかけた存在となっていました。その後音楽界はさらなるテクノロジーの進歩によりエレクトリックサウンドの手法は一般化かつ過激化していったわけですが、それが飽和状態に達した89年に再び彼らは音楽界に姿を現し、X・IX(アイクス・アイクス)という新しいグループ名のもと1stアルバムである本作をリリースします。5年の歳月を経て大人になった彼らが80年代末期に世に問うたサウンドとはいかなるものだったのでしょうか。
IKOSHIN時代からも後藤次利のサポートがありながらも3兄弟による楽曲制作を行っていましたが、本作では既に独り立ちしたかのような安定感を作品全体から感じ取ることができます。しかし5年前のハイパーエレクトロ連打ビートの面影はリズム音色の残滓にとどまっており、(もちろんビート構築のキレにはセンスを感じますが)よりポップネスに舵を切ったサウンドを志向しています。また2曲は大物ギタリスト鈴木茂のプロデュースを受けていますが、これも安定期に入った山本3兄弟の象徴ともいうべきAORアプローチ満載の音づくりなので、IKOSHIN時代の音を期待していたリスナーにとっては肩透かしを食らうかもしれません。しかしながらもともとが帰国子女であるための洋楽志向である彼らがTOTOのSteve Lukatherをゲストに迎えてまで西海岸風AORへ傾倒していくのは当然の帰結とも言えるでしょう。そのようなわけで何とも薄味な音楽性に落ち着いたと揶揄された彼らですが、救いは89年という時代性からのパワーが残るリズムトラックで、この厚みのあるビート構築があるこそ美しいメロディが引き立つわけで、埋没しがちな個性を掘り起こすことにも成功していると思われます。結局この手法も長くは続かず、翌年2ndアルバム「Stories」を発表後は再び眠りにつくことになりますが、日本人らしからぬ安定感と美意識を兼ね備えていたグループであったと思うので、再評価を期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Take me with you」
落ち着いたサウンドと美メロをアピールしたオープニングナンバー。ファンタジック系とメタリック系を駆使したシンセ音色がオシャレで、曲調にスパイスを与えるいななきギターも良いですが、ラストの転調とジャラ〜ンとしたギターが美しいです。
・「Heartbeat」
柔らかいシンセパッドが染み渡る英詞ミディアムチューン。サックスもフィーチャーされたムーディーなAORに終わらないのはタイトに主張するスネア音色に他なりません。
・「Gypsy Girl」
これもインダストリアルなリズム音色で個性を際立たせるAOR歌謡。楽曲としてはソフトタッチの美メロPOPSと終えますが、延々と続くガシンッ!ガシンッ!というスネアが耳について仕方がありません。
<評点>
・サウンド ★★ (派手さはないものの隙のなさに成長を感じる)
・メロディ ★★ (センスは感じるがどこか煮え切らなさも感じる不安)
・リズム ★★ (打ち込みによる正確性とタイトな音色が光る)
・曲構成 ★ (ポップ性を追求するあまり似たような楽曲が集まる)
・個性 ★ (感覚の鋭さは年齢を重ねるごとに衰えてた感もあり)
総合評点: 6点
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