「AROUND+AROUND」 DATE OF BIRTH
「AROUND+AROUND」(1985 ポートレート)
DATE OF BIRTH

<members>
Norico:vocal・percussion
重藤功:guitars・Kurzweil K250
重藤進:drums・tape
1.「PACK MY BAG」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
2.「SPACE TO TIME」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
3.「MISTRESS OF THE NIGHT」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
4.「REMEMBER EYES」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
5.「FRESH CHAPTER “MIXED UP 1967”」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
6.「BACKWARD」 曲・編:DATE OF BIRTH
produced by DATE OF BIRTH
co-produced by 柏木省三
engineered by DATE OF BIRTH
● インディーズらしからぬ洗練された完成度を誇る福岡が生んだ稀代の多重録音ユニットの10インチミニアルバム
福岡を拠点にした宅録ユニットとして1985年に結成されたDATE OF BIRTHは、福岡にレコーディングスタジオを所有しルースターズ関連アーティスト関連(大江慎也や1984等)のエンジニアリングを担当するなど、地元福岡では知る人ぞ知る存在のクリエイターとなりつつありました。メンバーを家族で構成しているのも特徴で、重藤功、進の兄弟に進の妻・Noricoをヴォーカルに迎えた編成により(末っ子の賢一は後に加入)作品制作を開始、同年には10インチレコードというレアな形式により自主制作アルバムの本作をリリースすることになります。本作は日本よりもまず欧州にて高い評価を得ることに成功し、英国の名門Virgin Recordsからもオファーが来るほどでしたが、福岡を離れたくないためオファーを蹴るという有名な逸話を残しています。本作は前述のように彼らの存在をいち早くメジャーデビュー前に好事家に名を知らしめることになった名盤であります。
彼らの楽曲を当時斬新な印象に育て上げたのは、クレジットにもあるように当時席巻していた歴史的サンプラーマシンの1つであるKurzweil K250の導入です。随所でその特徴的な(当時としては)生々しいサンプリングピアノ音色や自然音が使用されており、彼らが持ち合わせている実験精神をくすぐられている様子が窺えます。本来彼らの志向としては「PACK MY BAG」「MISTRESS OF THE NIGHT」といった60's〜70'sマナーの洋楽POPSといったところでしょうが、メジャーデビュー後も何度となくリメイクされていく「思い出の瞳」(粗さが残る良いバージョン)や「FRESH CHAPTER」といったオケヒット多用の名曲がその後しばらく彼らの斬新な音手法と共に彼らの代名詞となっていきます。世界的な評価もこの洋楽POPSをサンプラー多用の斬新なサウンドに溶け込ませた音楽性による部分が大きかったと思われますが、その後のメジャーデビュー後は「思い出の瞳」のインパクトに乗せられるかのように、エヴァーグリーンな日本語(打ち込み)POPS路線としてキャリアを始めることになります。そして本来の彼らの泥臭い渋めのポップセンスは2ndアルバム「Gratest Hits 1989-1999」によって開花していくことになるのです。
<Favorite Songs>
・「SPACE TO TIME」
彼らの実験性を如実に表しているその名の通りスペイシーなミディアムチューン。ゆったりアコギに気怠いヴォーカル、その上を這い回る逆回転ギターのフレーズが素晴らしいです。この短い楽曲に似合わないラストの壮大さを表現する音色も笑っちゃうくらい楽しめます。
・「FRESH CHAPTER “MIXED UP 1967”」
Kurzweilサンプリングが暴れ回るこれぞDOBなスペイシーポップソング。ゲートリバーブもパワフルなバスドラ連打のマシンドラムが随所で光るオケヒットと絡み合って斬新なリズムを刻みます。カットアップのコラージュやボイスサンプルも重なって混沌とした間奏部分も実験性とポップ性が絶妙にブレンドされています。
<評点>
・サウンド ★★★ (Kurzweilを大胆にも使いこなすセンスは当時でも抜きん出る)
・メロディ ★★ (メロディも書けるバンドだが本作では音の実験場の雰囲気)
・リズム ★★★ (リバーブも深めで音も厚く自主制作ながら攻める音に)
・曲構成 ★ (スタートしたばかりということもあり方向性の紹介に終始)
・個性 ★★ (自主制作にしてはという注意書きが必要だが品質は保障済み)
総合評点: 7点
デモ音源と合わせた15曲入りのベスト盤としてCDリリースされています。
DATE OF BIRTH

<members>
Norico:vocal・percussion
重藤功:guitars・Kurzweil K250
重藤進:drums・tape
1.「PACK MY BAG」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
2.「SPACE TO TIME」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
3.「MISTRESS OF THE NIGHT」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
4.「REMEMBER EYES」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
5.「FRESH CHAPTER “MIXED UP 1967”」 詞:Norico 曲・編:DATE OF BIRTH
6.「BACKWARD」 曲・編:DATE OF BIRTH
produced by DATE OF BIRTH
co-produced by 柏木省三
engineered by DATE OF BIRTH
● インディーズらしからぬ洗練された完成度を誇る福岡が生んだ稀代の多重録音ユニットの10インチミニアルバム
福岡を拠点にした宅録ユニットとして1985年に結成されたDATE OF BIRTHは、福岡にレコーディングスタジオを所有しルースターズ関連アーティスト関連(大江慎也や1984等)のエンジニアリングを担当するなど、地元福岡では知る人ぞ知る存在のクリエイターとなりつつありました。メンバーを家族で構成しているのも特徴で、重藤功、進の兄弟に進の妻・Noricoをヴォーカルに迎えた編成により(末っ子の賢一は後に加入)作品制作を開始、同年には10インチレコードというレアな形式により自主制作アルバムの本作をリリースすることになります。本作は日本よりもまず欧州にて高い評価を得ることに成功し、英国の名門Virgin Recordsからもオファーが来るほどでしたが、福岡を離れたくないためオファーを蹴るという有名な逸話を残しています。本作は前述のように彼らの存在をいち早くメジャーデビュー前に好事家に名を知らしめることになった名盤であります。
彼らの楽曲を当時斬新な印象に育て上げたのは、クレジットにもあるように当時席巻していた歴史的サンプラーマシンの1つであるKurzweil K250の導入です。随所でその特徴的な(当時としては)生々しいサンプリングピアノ音色や自然音が使用されており、彼らが持ち合わせている実験精神をくすぐられている様子が窺えます。本来彼らの志向としては「PACK MY BAG」「MISTRESS OF THE NIGHT」といった60's〜70'sマナーの洋楽POPSといったところでしょうが、メジャーデビュー後も何度となくリメイクされていく「思い出の瞳」(粗さが残る良いバージョン)や「FRESH CHAPTER」といったオケヒット多用の名曲がその後しばらく彼らの斬新な音手法と共に彼らの代名詞となっていきます。世界的な評価もこの洋楽POPSをサンプラー多用の斬新なサウンドに溶け込ませた音楽性による部分が大きかったと思われますが、その後のメジャーデビュー後は「思い出の瞳」のインパクトに乗せられるかのように、エヴァーグリーンな日本語(打ち込み)POPS路線としてキャリアを始めることになります。そして本来の彼らの泥臭い渋めのポップセンスは2ndアルバム「Gratest Hits 1989-1999」によって開花していくことになるのです。
<Favorite Songs>
・「SPACE TO TIME」
彼らの実験性を如実に表しているその名の通りスペイシーなミディアムチューン。ゆったりアコギに気怠いヴォーカル、その上を這い回る逆回転ギターのフレーズが素晴らしいです。この短い楽曲に似合わないラストの壮大さを表現する音色も笑っちゃうくらい楽しめます。
・「FRESH CHAPTER “MIXED UP 1967”」
Kurzweilサンプリングが暴れ回るこれぞDOBなスペイシーポップソング。ゲートリバーブもパワフルなバスドラ連打のマシンドラムが随所で光るオケヒットと絡み合って斬新なリズムを刻みます。カットアップのコラージュやボイスサンプルも重なって混沌とした間奏部分も実験性とポップ性が絶妙にブレンドされています。
<評点>
・サウンド ★★★ (Kurzweilを大胆にも使いこなすセンスは当時でも抜きん出る)
・メロディ ★★ (メロディも書けるバンドだが本作では音の実験場の雰囲気)
・リズム ★★★ (リバーブも深めで音も厚く自主制作ながら攻める音に)
・曲構成 ★ (スタートしたばかりということもあり方向性の紹介に終始)
・個性 ★★ (自主制作にしてはという注意書きが必要だが品質は保障済み)
総合評点: 7点
デモ音源と合わせた15曲入りのベスト盤としてCDリリースされています。
「Surfbank Social Club」 一十三十一
「Surfbank Social Club」(2013 ビルボード)
一十三十一:vocal

1.「Surfbank Social Club 1」 詞:一十三十一 曲:一十三十一・Dorian 編:Dorian
2.「Last Friday Night Summer Rain」 詞:一十三十一 曲・編:Kashif
3.「Dolphin」 詞:一十三十一 曲・編:Dorian
4.「Stardust Tonight」
詞:一十三十一・LUVRAW 曲:LUVRAW・grooveman Spot 編:grooveman Spot
5.「Prismatic」 詞:一十三十一 曲・編:Kashif
6.「Before Velvet Hour」 詞:一十三十一 曲:一十三十一・Kashif 編:Kashif
7.「Feel Like Bayside Love」
詞:一十三十一・BTB 曲:BTB・grooveman Spot 編:grooveman Spot
8.「Passion Girl」 詞・曲・編:クニモンド瀧口
9.「Lonesome Airport」 詞:一十三十一 曲・編:クニモンド瀧口
10.「Metamorphose」 詞:一十三十一 曲:一十三十一・南條レオ 編:Avec Avec
11.「Surfbank Social Club 2」 詞・曲:一十三十一 編:Kashif
12.「Endless Summer Holiday」 詞 詞・曲:一十三十一 編:Kashif
<support musician>
Kashif:electric guitar・electric bass・computer programming・chorus
山之内俊夫:electric guitar
ヤマカミヒトミ:alto sax
ツチヤナナミ:chorus
BTB:talkbox
LUVRAW:talkbox
Avec Avec:computer programming
Dorian:computer programming・chorus
grooveman Spot:computer programming
クニモンド瀧口:computer programming
engineered by 平野栄二
●過剰にバブリーな80年代を意識させながら当代実力派クリエイターによる軽快なトラックが魅力的な夏の名盤
辣腕クリエイターに恵まれつつジャンルレスなサウンドを存在感のある歌唱でまとめ上げる個性的なシンガーであった一十三十一の大きな音楽的方向性の転換点となったのが、2006年のクニモンド瀧口のソロユニット流線形「TOKYO SNIPER」へのゲストヴォーカルとしての参加でした(江口ニカという変名での参加)。80'sシティポップフレイバー豊かなこの作品に大きな影響を受けたためか、2009年リリースの「Letters」では主に80年代POPSのリメイクに挑戦、そして3年後の産休後復帰作となったアルバム「CITY DIVE」にて、完全に現代型80'sシティポップへと舵を切ることになります。もともとがアンニュイかつメランコリックなヴォーカルで聴き手を魅了する歌唱力を持つ彼女でしたが、流線形でタッグを組んだクニモンド瀧口を中心に、アーバンスタイルなリゾートポップで頭角を現していたクリエイターDorianや、横浜の新進気鋭の音楽集団PPP(an Pacific Playa)のギタリストKashifといった面々を向こうに回して、80年代の「あの時代」を見事に再現しつつ現代でも通用するようなハイセンスなサウンドを構築、現在のシティポップ再評価ムーブメントの先鞭をつける格好となったわけです。そして翌2013年にリリースされた本作では、その続編ともいうべき、しかしコンセプトはさらにがっちり固められたサマーリゾートPOPS作品に挑戦しています。
さて、ダイビングスーツの御姿も麗しいジャケからも想像できる通り、中身はまさにバブリーな時代のリゾートバケーションといった趣で、そんなシチュエーションにはぴったりのBGMとして使われるべき楽曲が多く収録されています。前作では半数の楽曲を手掛けていたクニモンド瀧口は2曲の参加にとどまり、前作参加のDorianやKashifのほかにgrooveman SpotやAvec Avecといった新顔も含めて若手のクリエイターを多く起用しているのが特徴で、80'sシティポップの良くも悪くも煮え切らないメロディラインを忠実に再現するクニモンド楽曲と比較して、サビの訴求力が高くきらびやかなシンセサウンドと共にリズムワークにも緻密さと若さを感じるKashifやgrooveman Spotらの才能が躍動しているといった印象です。特にKashifの本作への貢献度が高く、効果的なギターフレーズもさることながら、随所に気の利いたプログラミングと80'sシンセサウンドの追求度の高さによって、楽曲全体に漂うバブリーな雰囲気を見事に体現しています。もちろん他のクリエイター達も80'sアーバンリゾートPOPSの旗印のもと、それぞれの得意技を駆使して緻密なサウンド作りが施されていますが、実力派の一十三十一の純粋な存在感と作品としての起承転結感がはっきりしていることもあって、そのクオリティは当代きってのレベルにまで到達しているのではないでしょうか。彼女はその後もこのシティポップ路線をひた走ることになりますが、それまで様々なタイプの楽曲をこなしてきた彼女の理想郷にようやく辿り着いたということなのかもしれません。
<Favorite Songs>
・「Dolphin」
細かく音を散りばめたリズムトラックにセンスを感じるDorian楽曲。80'sシンボル的なカウベルの音や必要以上のスプラッシュなリバーブが要所要所で効いていて、ムードたっぷりのエレピも交えて彩りを加えています。派手なメロディラインではないものの丁寧な音づくりのためか安定感は抜群です。
・「Stardust Tonight」
トライバルなリズムからのLUVRAWのtalkboxも軽やかなイントロにワクワクさせられるgrooveman Spotの佳曲。キラキラしたシンセリフと楽曲の魅力はほとんどそこにあると言って良いコクのあるシンセベースの跳ね具合が絶妙です。
・「Before Velvet Hour」
そしたさらにキラキラ感が増した楽曲がこのミディアムラグジュアリーPOPS。メタリックなリフとにじむようなシンセパッドに味があると共に、上下に動き回る太いシンセベースのフレージングがたまりません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (各々のサウンド構成に無駄がなく隙もない)
・メロディ ★★ (このジャンルにありがちな煮え切らなさも)
・リズム ★★ (良くも悪くも派手さはないが縁の下を支える)
・曲構成 ★★★★ (はっきりしたコンセプトだが期待に見事に応える)
・個性 ★★ (本作で完全に現代シティポップの女王に君臨)
総合評点: 8点
一十三十一:vocal

1.「Surfbank Social Club 1」 詞:一十三十一 曲:一十三十一・Dorian 編:Dorian
2.「Last Friday Night Summer Rain」 詞:一十三十一 曲・編:Kashif
3.「Dolphin」 詞:一十三十一 曲・編:Dorian
4.「Stardust Tonight」
詞:一十三十一・LUVRAW 曲:LUVRAW・grooveman Spot 編:grooveman Spot
5.「Prismatic」 詞:一十三十一 曲・編:Kashif
6.「Before Velvet Hour」 詞:一十三十一 曲:一十三十一・Kashif 編:Kashif
7.「Feel Like Bayside Love」
詞:一十三十一・BTB 曲:BTB・grooveman Spot 編:grooveman Spot
8.「Passion Girl」 詞・曲・編:クニモンド瀧口
9.「Lonesome Airport」 詞:一十三十一 曲・編:クニモンド瀧口
10.「Metamorphose」 詞:一十三十一 曲:一十三十一・南條レオ 編:Avec Avec
11.「Surfbank Social Club 2」 詞・曲:一十三十一 編:Kashif
12.「Endless Summer Holiday」 詞 詞・曲:一十三十一 編:Kashif
<support musician>
Kashif:electric guitar・electric bass・computer programming・chorus
山之内俊夫:electric guitar
ヤマカミヒトミ:alto sax
ツチヤナナミ:chorus
BTB:talkbox
LUVRAW:talkbox
Avec Avec:computer programming
Dorian:computer programming・chorus
grooveman Spot:computer programming
クニモンド瀧口:computer programming
engineered by 平野栄二
●過剰にバブリーな80年代を意識させながら当代実力派クリエイターによる軽快なトラックが魅力的な夏の名盤
辣腕クリエイターに恵まれつつジャンルレスなサウンドを存在感のある歌唱でまとめ上げる個性的なシンガーであった一十三十一の大きな音楽的方向性の転換点となったのが、2006年のクニモンド瀧口のソロユニット流線形「TOKYO SNIPER」へのゲストヴォーカルとしての参加でした(江口ニカという変名での参加)。80'sシティポップフレイバー豊かなこの作品に大きな影響を受けたためか、2009年リリースの「Letters」では主に80年代POPSのリメイクに挑戦、そして3年後の産休後復帰作となったアルバム「CITY DIVE」にて、完全に現代型80'sシティポップへと舵を切ることになります。もともとがアンニュイかつメランコリックなヴォーカルで聴き手を魅了する歌唱力を持つ彼女でしたが、流線形でタッグを組んだクニモンド瀧口を中心に、アーバンスタイルなリゾートポップで頭角を現していたクリエイターDorianや、横浜の新進気鋭の音楽集団PPP(an Pacific Playa)のギタリストKashifといった面々を向こうに回して、80年代の「あの時代」を見事に再現しつつ現代でも通用するようなハイセンスなサウンドを構築、現在のシティポップ再評価ムーブメントの先鞭をつける格好となったわけです。そして翌2013年にリリースされた本作では、その続編ともいうべき、しかしコンセプトはさらにがっちり固められたサマーリゾートPOPS作品に挑戦しています。
さて、ダイビングスーツの御姿も麗しいジャケからも想像できる通り、中身はまさにバブリーな時代のリゾートバケーションといった趣で、そんなシチュエーションにはぴったりのBGMとして使われるべき楽曲が多く収録されています。前作では半数の楽曲を手掛けていたクニモンド瀧口は2曲の参加にとどまり、前作参加のDorianやKashifのほかにgrooveman SpotやAvec Avecといった新顔も含めて若手のクリエイターを多く起用しているのが特徴で、80'sシティポップの良くも悪くも煮え切らないメロディラインを忠実に再現するクニモンド楽曲と比較して、サビの訴求力が高くきらびやかなシンセサウンドと共にリズムワークにも緻密さと若さを感じるKashifやgrooveman Spotらの才能が躍動しているといった印象です。特にKashifの本作への貢献度が高く、効果的なギターフレーズもさることながら、随所に気の利いたプログラミングと80'sシンセサウンドの追求度の高さによって、楽曲全体に漂うバブリーな雰囲気を見事に体現しています。もちろん他のクリエイター達も80'sアーバンリゾートPOPSの旗印のもと、それぞれの得意技を駆使して緻密なサウンド作りが施されていますが、実力派の一十三十一の純粋な存在感と作品としての起承転結感がはっきりしていることもあって、そのクオリティは当代きってのレベルにまで到達しているのではないでしょうか。彼女はその後もこのシティポップ路線をひた走ることになりますが、それまで様々なタイプの楽曲をこなしてきた彼女の理想郷にようやく辿り着いたということなのかもしれません。
<Favorite Songs>
・「Dolphin」
細かく音を散りばめたリズムトラックにセンスを感じるDorian楽曲。80'sシンボル的なカウベルの音や必要以上のスプラッシュなリバーブが要所要所で効いていて、ムードたっぷりのエレピも交えて彩りを加えています。派手なメロディラインではないものの丁寧な音づくりのためか安定感は抜群です。
・「Stardust Tonight」
トライバルなリズムからのLUVRAWのtalkboxも軽やかなイントロにワクワクさせられるgrooveman Spotの佳曲。キラキラしたシンセリフと楽曲の魅力はほとんどそこにあると言って良いコクのあるシンセベースの跳ね具合が絶妙です。
・「Before Velvet Hour」
そしたさらにキラキラ感が増した楽曲がこのミディアムラグジュアリーPOPS。メタリックなリフとにじむようなシンセパッドに味があると共に、上下に動き回る太いシンセベースのフレージングがたまりません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (各々のサウンド構成に無駄がなく隙もない)
・メロディ ★★ (このジャンルにありがちな煮え切らなさも)
・リズム ★★ (良くも悪くも派手さはないが縁の下を支える)
・曲構成 ★★★★ (はっきりしたコンセプトだが期待に見事に応える)
・個性 ★★ (本作で完全に現代シティポップの女王に君臨)
総合評点: 8点
「私生活」 中谷美紀
「私生活」 (1999 ワーナー)
中谷美紀:vocal

1.「フロンティア〜Album Version〜」 詞:中谷美紀 曲・編:坂本龍一
2.「雨だれ」 詞:中谷美紀 曲・編:坂本龍一
3.「temptation」
詞:中谷美紀 曲:Gabriel Faure 編:鷲見音右衛門文宏・星野英和・坂本龍一
4.「Confession」 曲・編:半野喜弘
5.「クロニック・ラヴ〜Remix Version〜」 詞:中谷美紀 曲・編:坂本龍一
6.「Spontaneous」 曲・編:竹村延和
7.「夏に恋する女たち」 詞・曲:大貫妙子 編:前田和彦・星野英和・坂本龍一
8.「Automatic Writing」 曲・編:半野喜弘
9.「フェティッシュ(Fetish)〜Folk Mix〜」 詞:売野雅勇 曲・編:坂本龍一
10.「Leave me alone....」 曲・編:竹村延和
11.「promise」 詞・曲:京極和士 編:京極和士・坂本龍一
12.「all this time」 詞:jcfs 曲・編:坂本龍一
13.「temptation〜Drum Mix〜」
詞:中谷美紀 曲:Gabriel Faure 編:鷲見音右衛門文宏・星野英和・坂本龍一
<support musician>
坂本龍一:all instruments
竹村延和:all instruments
半野喜弘:all instruments
SUGIZO:guitars
佐橋佳幸:guitars
坂田雅幸:sound technicians
東浦正也:sound technicians
produced by 坂本龍一
mixing engineered by Go Hotoda・坂本龍一・半野喜弘・竹村延和
recording engineered by Fernando Aponte・松田正博・渋谷直人・半野喜弘・竹村延和
● 坂本龍一プロデュースのもとエレクトロニカ周辺の若手クリエイターが競い合う女優作品ながらクールでマニアックなエレクトロポップアルバム
90年代初頭に活動していたアイドルグループ、桜っ子クラブのメンバーであった中谷美紀の音楽活動は、グループ内デュオユニットであったKEY WEST CLUBに遡ります。3枚のシングルと2枚のアルバムをリリースしたこのアイドルデュオは、売れ線からは外れる形で自然消滅しますが、中谷はその後ドラマやCM出演によりその美貌が話題となり、急速に売れっ子となっていきます。そしてある程度知名度が固まりつつある中、1996年になんと坂本龍一プロデュースにより音楽活動を再開、再デビューシングル「MIND CIRCUS」はアーバンな坂本サウンドと共に一躍話題となりました。その後も作品を連発する中谷は、1stアルバム「食物連鎖」、2ndアルバム「cure」と、徹底的な坂本プロデュースのもと確固たる音楽的な世界観を作り上げ、「砂の果実」「いばらの冠」といったシングルの確かな存在感も相まって、90年代後半においてしっかりと音楽的立ち位置を築くことに成功したわけです。そして99年、3rdアルバムとしてリリースされた本作はその世界観をさらに推し進めた異様なまでのクールな質感を漂わせた作品として、さらに聴き手を楽しませることに成功するのです。
前作まではほとんどの楽曲を坂本龍一が手掛け、その強烈な個性にどっぷり浸かっていたという印象でしたが、本作では引き続き坂本プロデュースではあるものの、半野喜弘や竹村延和といったクセのあるエレクトロニカアーティストをはじめとして、前田和彦・星野英和といった坂本龍一の90年代後半に担当していた音楽番組「gut on-line」のデモテープ特集から輩出された若手クリエイターや、現在も第一線で活躍している鷲見音右衛門文宏や現在はエンジニアとしても活動している京極和士らの当時無名のアーティストを積極的に起用しており、坂本一派の贅沢な実験場と化しているのも実に興味深いところです。既にその実力が多方面で認められていた半野や竹村がサウンドコラージュ的な実験的インストとして合間的に起用される中、本作でもキーとなるべき「temptation」や「夏に恋する女たち」「promise」といった楽曲に起用された若手にとっては、非常にチャレンジ精神を煽られると共にやりがいのある仕事であったと推測されます。そのためかどの楽曲も気合いの入り方が違っており、丁寧過ぎるほどの音の置き方に加え、どこか王道を外そうという茶目っ気なども見られ、その空気に感化されたためか坂本龍一自身のアレンジにも自身の当時のアルバムよりもキレとセンスが発揮されているように思われます。実に計算され尽くされたコンセプチュアル作品のため、その世界観に追随できないリスナーにとっては評価の難しい面もありますが、坂本と彼の末裔たちが織りなすクールなエレクトロニカ&アンビエントテクノ歌謡の重要作品として、今後も地味に語り継がれる作品であることに間違いはないでしょう。
<Favorite Songs>
・「フロンティア〜Album Version〜」
オープニングは先行シングルのアルバムバージョン。もはや貫禄といっても良い坂本節で、静謐なイメージの中を気怠いエレクトリック&アコースティックギターと飛び交う電子音がか細い中谷のヴォーカルで浄化される、完成度の高いサウンドが楽しめます。
・「クロニック・ラヴ〜Remix Version〜」
岡田有希子「Wonder Trip Lover」、そして坂本龍一「Ballet Mecanique」と受け継がれた名曲の90年度版リメイクとしてシングルリリースされた楽曲をさらにリミックス。電子音が縦横無尽に飛び交う驚くべき浮遊感により、幻想的に展開する名曲に変化しました。
・「夏に恋する女たち」
大貫妙子の名曲を「gut on-line」出身の若手クリエイターが見事に料理した素晴らしいリメイク。ノイズを巧みに利用した心地良いリズムトラックに、細部に行き届いた音の粒がしっかり整理されていて、実に聴きやすいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (女優アルバムとしては異質の実験的な音の散りばめ方)
・メロディ ★ (リメイク曲は名曲だが基本は徹底的なサウンド志向)
・リズム ★★ (軽めのリスムも加工され尽くした丁寧な音づくり)
・曲構成 ★★ (インストを挟みながら8mm映画のような独特の世界)
・個性 ★★ (既に中谷のパーソナルは実体を離れ若手の実験場に)
総合評点: 7点
中谷美紀:vocal

1.「フロンティア〜Album Version〜」 詞:中谷美紀 曲・編:坂本龍一
2.「雨だれ」 詞:中谷美紀 曲・編:坂本龍一
3.「temptation」
詞:中谷美紀 曲:Gabriel Faure 編:鷲見音右衛門文宏・星野英和・坂本龍一
4.「Confession」 曲・編:半野喜弘
5.「クロニック・ラヴ〜Remix Version〜」 詞:中谷美紀 曲・編:坂本龍一
6.「Spontaneous」 曲・編:竹村延和
7.「夏に恋する女たち」 詞・曲:大貫妙子 編:前田和彦・星野英和・坂本龍一
8.「Automatic Writing」 曲・編:半野喜弘
9.「フェティッシュ(Fetish)〜Folk Mix〜」 詞:売野雅勇 曲・編:坂本龍一
10.「Leave me alone....」 曲・編:竹村延和
11.「promise」 詞・曲:京極和士 編:京極和士・坂本龍一
12.「all this time」 詞:jcfs 曲・編:坂本龍一
13.「temptation〜Drum Mix〜」
詞:中谷美紀 曲:Gabriel Faure 編:鷲見音右衛門文宏・星野英和・坂本龍一
<support musician>
坂本龍一:all instruments
竹村延和:all instruments
半野喜弘:all instruments
SUGIZO:guitars
佐橋佳幸:guitars
坂田雅幸:sound technicians
東浦正也:sound technicians
produced by 坂本龍一
mixing engineered by Go Hotoda・坂本龍一・半野喜弘・竹村延和
recording engineered by Fernando Aponte・松田正博・渋谷直人・半野喜弘・竹村延和
● 坂本龍一プロデュースのもとエレクトロニカ周辺の若手クリエイターが競い合う女優作品ながらクールでマニアックなエレクトロポップアルバム
90年代初頭に活動していたアイドルグループ、桜っ子クラブのメンバーであった中谷美紀の音楽活動は、グループ内デュオユニットであったKEY WEST CLUBに遡ります。3枚のシングルと2枚のアルバムをリリースしたこのアイドルデュオは、売れ線からは外れる形で自然消滅しますが、中谷はその後ドラマやCM出演によりその美貌が話題となり、急速に売れっ子となっていきます。そしてある程度知名度が固まりつつある中、1996年になんと坂本龍一プロデュースにより音楽活動を再開、再デビューシングル「MIND CIRCUS」はアーバンな坂本サウンドと共に一躍話題となりました。その後も作品を連発する中谷は、1stアルバム「食物連鎖」、2ndアルバム「cure」と、徹底的な坂本プロデュースのもと確固たる音楽的な世界観を作り上げ、「砂の果実」「いばらの冠」といったシングルの確かな存在感も相まって、90年代後半においてしっかりと音楽的立ち位置を築くことに成功したわけです。そして99年、3rdアルバムとしてリリースされた本作はその世界観をさらに推し進めた異様なまでのクールな質感を漂わせた作品として、さらに聴き手を楽しませることに成功するのです。
前作まではほとんどの楽曲を坂本龍一が手掛け、その強烈な個性にどっぷり浸かっていたという印象でしたが、本作では引き続き坂本プロデュースではあるものの、半野喜弘や竹村延和といったクセのあるエレクトロニカアーティストをはじめとして、前田和彦・星野英和といった坂本龍一の90年代後半に担当していた音楽番組「gut on-line」のデモテープ特集から輩出された若手クリエイターや、現在も第一線で活躍している鷲見音右衛門文宏や現在はエンジニアとしても活動している京極和士らの当時無名のアーティストを積極的に起用しており、坂本一派の贅沢な実験場と化しているのも実に興味深いところです。既にその実力が多方面で認められていた半野や竹村がサウンドコラージュ的な実験的インストとして合間的に起用される中、本作でもキーとなるべき「temptation」や「夏に恋する女たち」「promise」といった楽曲に起用された若手にとっては、非常にチャレンジ精神を煽られると共にやりがいのある仕事であったと推測されます。そのためかどの楽曲も気合いの入り方が違っており、丁寧過ぎるほどの音の置き方に加え、どこか王道を外そうという茶目っ気なども見られ、その空気に感化されたためか坂本龍一自身のアレンジにも自身の当時のアルバムよりもキレとセンスが発揮されているように思われます。実に計算され尽くされたコンセプチュアル作品のため、その世界観に追随できないリスナーにとっては評価の難しい面もありますが、坂本と彼の末裔たちが織りなすクールなエレクトロニカ&アンビエントテクノ歌謡の重要作品として、今後も地味に語り継がれる作品であることに間違いはないでしょう。
<Favorite Songs>
・「フロンティア〜Album Version〜」
オープニングは先行シングルのアルバムバージョン。もはや貫禄といっても良い坂本節で、静謐なイメージの中を気怠いエレクトリック&アコースティックギターと飛び交う電子音がか細い中谷のヴォーカルで浄化される、完成度の高いサウンドが楽しめます。
・「クロニック・ラヴ〜Remix Version〜」
岡田有希子「Wonder Trip Lover」、そして坂本龍一「Ballet Mecanique」と受け継がれた名曲の90年度版リメイクとしてシングルリリースされた楽曲をさらにリミックス。電子音が縦横無尽に飛び交う驚くべき浮遊感により、幻想的に展開する名曲に変化しました。
・「夏に恋する女たち」
大貫妙子の名曲を「gut on-line」出身の若手クリエイターが見事に料理した素晴らしいリメイク。ノイズを巧みに利用した心地良いリズムトラックに、細部に行き届いた音の粒がしっかり整理されていて、実に聴きやすいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (女優アルバムとしては異質の実験的な音の散りばめ方)
・メロディ ★ (リメイク曲は名曲だが基本は徹底的なサウンド志向)
・リズム ★★ (軽めのリスムも加工され尽くした丁寧な音づくり)
・曲構成 ★★ (インストを挟みながら8mm映画のような独特の世界)
・個性 ★★ (既に中谷のパーソナルは実体を離れ若手の実験場に)
総合評点: 7点
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