「頭が割れそう」 Kei-Tee
「頭が割れそう」(1994 ビクター)
Kei-Tee:vocal

1.「発熱39°」 詞:Kei-Tee 曲:和田克彦 編:本田恭之
2.「Baby Angel」 詞:Kei-Tee 曲・編:土橋安騎夫
3.「虚飾のアイドル」 詞:Kei-Tee 曲・編:本田恭之
4.「クッセツBaby」 詞:Kei-Tee 曲:大友悟 編:西田信哉
5.「Lovin’ Like Ice Cream」 詞:Kei-Tee 曲:関口賢一 編:本田恭之
6.「男・オオカミ/女・バンパイア」 詞:Kei-Tee 曲・編:本田恭之
7.「BADなあなた〜YOU’RE IN A BAD WAY〜[Wild Mix]」
詞・曲:Sarah Cracknell・Bob Stanley・Pete Wiggs 訳詞:Kei-Tee・帆苅伸子 編:本田恭之
8.「DAIキ・ラ・イ」 詞・曲:Kei-Tee 編:本田恭之
9.「心はシェイク」 詞・曲:大友悟 編:本田恭之
<support musician>
関口賢一:guitars
西田信哉:guitars
青木智仁:bass
小宮信彦:bass
楠 均:drums
土橋安騎夫:keyboards
本田恭之:keyboards
produced by Kei-Tee
co-produced by 飯沼ヒロユキ
sound produced by 本田恭之・土橋安騎夫・西田信哉
mixing engineered by 天童淳
recording engineered by 中原正幸・天童淳・伊東俊郎・比留間整・永見竜生
● 小生意気系コンサバアイドルを本田恭之がサウンドプロデュース!ニューウェーブを通過したガールズロックで責め立てるデビュー作
実業家・角川春樹を父に持つ角川慶子は短大在学中の1993年にKei-Teeという芸名でアイドル活動を開始します。そして翌年には早速シングル「Baby Angel」で歌手デビューを果たすわけですが、さすがは角川の娘ということでプロデュースには元レベッカの土橋安騎夫を迎え、まさしくNokko然としたはじけるようなガールズポップなサウンドで、その歯に衣着せぬ言動とボディコンシャスな容姿から、パンクな森高千里という声も多方面で囁かれるなど、良くも悪くも強引に売り出しにかかっていた印象を当時は受けました。そしてシングルリリースの1ヶ月後には早々にフルアルバムである本作を発表し、その野心を露にしていきますが、そのアクの強さもあって非常に好みが分かれるタイプのシンガーにカテゴライズされてしまったことは不運であったかもしれません。
そんな彼女の1stアルバムを全面的にサウンドプロデュースしたのは何と元GRASS VALLEYのキーボーディスト本田恭之(現:本田海月)です。数曲を除く全曲の編曲を手がけるなど八面六臂の活躍を見せる本田恭之ですが、彼らしいロマンティックなシンセワークというよりは、多彩なシンセギミックが飛び交うキッチュでポップな音を聴かせており、比較的彼のプロデュース作品の中では珍しい部類という印象です。基本はガールズロック系なのでギターもしっかフィーチャーされているわけですが、本田恭之は相棒ギタリストとしてGRASS VALLEYの盟友西田信哉を迎え、このGVコンビで本作のサウンドを支えています(しかも1曲は西田にサウンドプロデュースを任せるという仲間思いの側面も)。その他ゲストミュージシャンとしても、日本初のシューゲイザーバンドといわれたpaint in watercolourの関口賢一、くじらの楠均、はたまた角松バンドの超絶ベーシスト青木智仁まで参加するなど、意外とそのメンツは豪華です。本田本来のサウンドデザインが生かされるタイプの楽曲が少ないため、音世界の構築にはなかなか苦心している跡が見え隠れしていますが、彼が生み出した名作の数々とは異なるアプローチでのシンセ遊び全開のサウンドワークを楽しめる点では貴重な作品と言えるかもしれません。
そのアクの強いキャラクターのためか想像以上に売れ線とは無縁になったKei-Teeですが、なんと同年にはいまみちともたかと上領亘(御存じとは思いますが彼も元GRASS VALLEY)と共に、ストレートなロックンロールを志向するLove Dynamitesを結成し路線変更を図り、シングルとアルバムを1枚づつリリースしますが、結局歌手活動はそこまでにとどまり、現在はタレントやライター、実業家としてしぶとく活動中です。
<Favorite Songs>
・「虚飾のアイドル」
本田恭之作編曲ということもあり、後期GRASS VALLEYの匂いを感じさせるニューウェーブ歌謡。Bメロでスッと入ってくる白玉パッドの響きは流石のセンスです。間奏ではベンドを巧みに使ったギターライクなシンセソロも堪能できます。
・「クッセツBaby」
GRASS VALLEY解散後の稀少な西田信哉のプロデュース曲。GV後期は完全にハードギタリストの体をなしていた西田には似つかわしくないチープなシンセもフィーチャーされたガールポップで、エフェクティブな多彩なギター音色に、西田のギタリストとしてのセンスをつぎ込んでいます。
・「男・オオカミ/女・バンパイア」
本作中の本田作編曲その2。ハードなディストーションギターとタメを張るうねりまくるシンセフレーズが特徴です。ギターに埋もれがちなシンセも後半に進むにしたがって主張が激しくなり最後にはテンションを上げてくる、そのノリの良さはライブ向きかもしれません。
<評点>
・サウンド ★★★ (本田作品としてはチープで多彩な音色を多用)
・メロディ ★ (どこかポップに成りきれないサブカル臭も漂う)
・リズム ★★ (ベースラインも動き回るがドラムは冒険は少ない)
・曲構成 ★ (ハイライトとなる楽曲が少ないため平坦な印象)
・個性 ★ (歌にクセはあるもののアイドル歌手としては難しい)
総合評点: 6点
Kei-Tee:vocal

1.「発熱39°」 詞:Kei-Tee 曲:和田克彦 編:本田恭之
2.「Baby Angel」 詞:Kei-Tee 曲・編:土橋安騎夫
3.「虚飾のアイドル」 詞:Kei-Tee 曲・編:本田恭之
4.「クッセツBaby」 詞:Kei-Tee 曲:大友悟 編:西田信哉
5.「Lovin’ Like Ice Cream」 詞:Kei-Tee 曲:関口賢一 編:本田恭之
6.「男・オオカミ/女・バンパイア」 詞:Kei-Tee 曲・編:本田恭之
7.「BADなあなた〜YOU’RE IN A BAD WAY〜[Wild Mix]」
詞・曲:Sarah Cracknell・Bob Stanley・Pete Wiggs 訳詞:Kei-Tee・帆苅伸子 編:本田恭之
8.「DAIキ・ラ・イ」 詞・曲:Kei-Tee 編:本田恭之
9.「心はシェイク」 詞・曲:大友悟 編:本田恭之
<support musician>
関口賢一:guitars
西田信哉:guitars
青木智仁:bass
小宮信彦:bass
楠 均:drums
土橋安騎夫:keyboards
本田恭之:keyboards
produced by Kei-Tee
co-produced by 飯沼ヒロユキ
sound produced by 本田恭之・土橋安騎夫・西田信哉
mixing engineered by 天童淳
recording engineered by 中原正幸・天童淳・伊東俊郎・比留間整・永見竜生
● 小生意気系コンサバアイドルを本田恭之がサウンドプロデュース!ニューウェーブを通過したガールズロックで責め立てるデビュー作
実業家・角川春樹を父に持つ角川慶子は短大在学中の1993年にKei-Teeという芸名でアイドル活動を開始します。そして翌年には早速シングル「Baby Angel」で歌手デビューを果たすわけですが、さすがは角川の娘ということでプロデュースには元レベッカの土橋安騎夫を迎え、まさしくNokko然としたはじけるようなガールズポップなサウンドで、その歯に衣着せぬ言動とボディコンシャスな容姿から、パンクな森高千里という声も多方面で囁かれるなど、良くも悪くも強引に売り出しにかかっていた印象を当時は受けました。そしてシングルリリースの1ヶ月後には早々にフルアルバムである本作を発表し、その野心を露にしていきますが、そのアクの強さもあって非常に好みが分かれるタイプのシンガーにカテゴライズされてしまったことは不運であったかもしれません。
そんな彼女の1stアルバムを全面的にサウンドプロデュースしたのは何と元GRASS VALLEYのキーボーディスト本田恭之(現:本田海月)です。数曲を除く全曲の編曲を手がけるなど八面六臂の活躍を見せる本田恭之ですが、彼らしいロマンティックなシンセワークというよりは、多彩なシンセギミックが飛び交うキッチュでポップな音を聴かせており、比較的彼のプロデュース作品の中では珍しい部類という印象です。基本はガールズロック系なのでギターもしっかフィーチャーされているわけですが、本田恭之は相棒ギタリストとしてGRASS VALLEYの盟友西田信哉を迎え、このGVコンビで本作のサウンドを支えています(しかも1曲は西田にサウンドプロデュースを任せるという仲間思いの側面も)。その他ゲストミュージシャンとしても、日本初のシューゲイザーバンドといわれたpaint in watercolourの関口賢一、くじらの楠均、はたまた角松バンドの超絶ベーシスト青木智仁まで参加するなど、意外とそのメンツは豪華です。本田本来のサウンドデザインが生かされるタイプの楽曲が少ないため、音世界の構築にはなかなか苦心している跡が見え隠れしていますが、彼が生み出した名作の数々とは異なるアプローチでのシンセ遊び全開のサウンドワークを楽しめる点では貴重な作品と言えるかもしれません。
そのアクの強いキャラクターのためか想像以上に売れ線とは無縁になったKei-Teeですが、なんと同年にはいまみちともたかと上領亘(御存じとは思いますが彼も元GRASS VALLEY)と共に、ストレートなロックンロールを志向するLove Dynamitesを結成し路線変更を図り、シングルとアルバムを1枚づつリリースしますが、結局歌手活動はそこまでにとどまり、現在はタレントやライター、実業家としてしぶとく活動中です。
<Favorite Songs>
・「虚飾のアイドル」
本田恭之作編曲ということもあり、後期GRASS VALLEYの匂いを感じさせるニューウェーブ歌謡。Bメロでスッと入ってくる白玉パッドの響きは流石のセンスです。間奏ではベンドを巧みに使ったギターライクなシンセソロも堪能できます。
・「クッセツBaby」
GRASS VALLEY解散後の稀少な西田信哉のプロデュース曲。GV後期は完全にハードギタリストの体をなしていた西田には似つかわしくないチープなシンセもフィーチャーされたガールポップで、エフェクティブな多彩なギター音色に、西田のギタリストとしてのセンスをつぎ込んでいます。
・「男・オオカミ/女・バンパイア」
本作中の本田作編曲その2。ハードなディストーションギターとタメを張るうねりまくるシンセフレーズが特徴です。ギターに埋もれがちなシンセも後半に進むにしたがって主張が激しくなり最後にはテンションを上げてくる、そのノリの良さはライブ向きかもしれません。
<評点>
・サウンド ★★★ (本田作品としてはチープで多彩な音色を多用)
・メロディ ★ (どこかポップに成りきれないサブカル臭も漂う)
・リズム ★★ (ベースラインも動き回るがドラムは冒険は少ない)
・曲構成 ★ (ハイライトとなる楽曲が少ないため平坦な印象)
・個性 ★ (歌にクセはあるもののアイドル歌手としては難しい)
総合評点: 6点
「エレキング」 CARNATION
「エレキング」(1990 徳間ジャパン)
CARNATION

<members>
直枝政太郎:vocals・acoustic 6&12guitars・electric guitars
鳥羽修:electric 6&12guitars・acoustic guitars
馬田裕次:electric bass
棚谷祐一:keyboards・vocals・strings arrangement・horn arrangement・computer programming・chorus
矢部浩志:drums・percussions
1.「からまわる世界」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
2.「パーキング・メーター」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
3.「ビッグ」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
4.「テレフォン・ガール」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
5.「マイ・フェイヴァリット・ボート」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
6.「はだかにはさせない−はだかにはならない−」
詞:森高千里 かえ詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
7.「ロック・ゾンビ」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
8.「悲しきめまい」 詞:直枝政太郎 曲:矢部浩志 編:CARNATION
9.「ハレハレハレ−偉大なる夜明けの前に−」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
10.「王様の庭」 詞:直枝政太郎 曲:棚谷祐一 編:CARNATION
11.「モーレツな人 モーレツな恋−うちにかぎってそんなことはないはず−」
詞:森高千里 かえ詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
<support musician>
森高千里:vocals
桝田順子:tenor sax
秋山法:baliton sax・alto sax
美尾洋乃:violin・chorus
鈴木千夏:viola
今井協子:spanish hand clap
斎藤美和子:chorus
produced by CARNATION
engineered by 内海幸雄
● ギタリストの変更によりニューウェーブからロックサウンドへシフトチェンジした過渡期の意欲作
MOON RIDERS人脈から連なるポストニューウェーブの旗手として知る人ぞ知る玄人好みのバンドとして、1988年にインディーズのメロトロンレコードから「YOUNG WISE MEN」、徳間ジャパンにメジャー移籍して「GONG SHOW」と2枚のアルバムをリリースした直枝政太郎(現:直枝政広)率いるCARNATIONでしたが、その後2年間は過渡期に入ります。89年には森高千里の歌手としてのブレイクへの転機となったアルバム「非実力派宣言」への参加によってライトな層にもその名を知られるようになりましたが、90年には初期CARNATIONサウンドをニューウェーブな方面に引っ張ってきたギターの坂東次郎が脱退、バンドとしての方針転換を余儀なくされます。そこで加入したのがメロトロン人脈から2人組ユニット、モスキートの鳥羽修で、鳥羽の豪快なギタープレイは新生CARNATIONに多大な影響を与え、91年にようやく3rdアルバムである本作をリリースするに至るわけです。
前述の森高千里のサポートにより提供した2曲をリメイクするのみならず、森高本人までゲスト参加させるという話題性もさることながら、これまでのどこか斜に構えたひねたポップセンスを持つニューウェーブ系バンドとしてのバンドカラーは影を潜め、大胆にもディストーションが強調されたロックギターを前面に押し出したパワフルな演奏力(特に本作で脱退する馬田裕次の良く動くベースフレーズが大活躍)をフィーチャーした本作は、泥臭さすら感じさせる作品に仕上がっています。しかしながら彼ら特有の気怠さを携えつつもPOPSとして十分に耐え得るメロディセンスは健在で、ともすれば前2作よりも歌メロの聴きやすさという点では上回っているという印象も拭えません。もちろん彼らのニューウェーブ性が完全に失ったというわけではなくて、随所で棚谷のキーボードプレイが光っていて(というよりむしろ電子音のギミックまでもシンプルかつ効果的に使用されている)、そのあたりが鳥羽加入による泥臭いギターサウンドを適度に中和するどころか、ある種のケミストリーを起こしていることから考えると、この方針転換は吉と出たのではないかと思われます。「EDO RIVER」を始めとする日本コロムビア期後のプチブレイクが重要な彼らの転換点であることは確かですが、試行錯誤期といわれる本作と次作の名盤「天国と地獄」の実験とポップとロッックが入り混じった混沌としながらも高品質な作品群は、その後のCARNATIONサウンドの確固たる礎になっているはずです。
<Favorite Songs>
・「パーキング・メーター」
軽やかにカッティングを刻むギターワークが印象的なポップセンス溢れるロックナンバー。骨太な鳥羽のギターワークも棚谷のオルガンを中心としたキーボードプレイに中和されて、非常にバランスのとれた良曲になっています。間奏のギターソロとオルガンソロのフレーズはどれも素晴らしい。
・「テレフォン・ガール」
ニューウェーブな出自らしく打ち込みやギミックを駆使した不思議なAメロと対照的なこれぞキャッチーの権化というべき必殺のサビメロディが炸裂する名曲。ギターもベースもフレーズが動き回るし、ただただロックに舵を切るだけでない、相変わらずのひねたセンスが全開です。
・「ロック・ゾンビ」
元々アルバムタイトルであったといういわく通りの本作のサウンドを象徴する最もロック魂を感じるナンバー。美尾洋乃&斉藤美和子の玄人っぽくないカラッとしたコーラスも、ハードな演奏の中で輝いて聴こえます。
<評点>
・サウンド ★★ (粗さの残るギターの裏で細かい作り込みも光る)
・メロディ ★★★ (わかりやすさ全開のサビが多く聴き手を飽きさせず)
・リズム ★★★ (独特のタイトなドラミングでボトムの安定に成功)
・曲構成 ★★ (全編にわたり力強く楽曲に安定感がある)
・個性 ★★ (骨太なギターを手に入れて無二の立ち入りを模索)
総合評点: 7点
CARNATION

<members>
直枝政太郎:vocals・acoustic 6&12guitars・electric guitars
鳥羽修:electric 6&12guitars・acoustic guitars
馬田裕次:electric bass
棚谷祐一:keyboards・vocals・strings arrangement・horn arrangement・computer programming・chorus
矢部浩志:drums・percussions
1.「からまわる世界」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
2.「パーキング・メーター」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
3.「ビッグ」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
4.「テレフォン・ガール」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
5.「マイ・フェイヴァリット・ボート」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
6.「はだかにはさせない−はだかにはならない−」
詞:森高千里 かえ詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
7.「ロック・ゾンビ」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
8.「悲しきめまい」 詞:直枝政太郎 曲:矢部浩志 編:CARNATION
9.「ハレハレハレ−偉大なる夜明けの前に−」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
10.「王様の庭」 詞:直枝政太郎 曲:棚谷祐一 編:CARNATION
11.「モーレツな人 モーレツな恋−うちにかぎってそんなことはないはず−」
詞:森高千里 かえ詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
<support musician>
森高千里:vocals
桝田順子:tenor sax
秋山法:baliton sax・alto sax
美尾洋乃:violin・chorus
鈴木千夏:viola
今井協子:spanish hand clap
斎藤美和子:chorus
produced by CARNATION
engineered by 内海幸雄
● ギタリストの変更によりニューウェーブからロックサウンドへシフトチェンジした過渡期の意欲作
MOON RIDERS人脈から連なるポストニューウェーブの旗手として知る人ぞ知る玄人好みのバンドとして、1988年にインディーズのメロトロンレコードから「YOUNG WISE MEN」、徳間ジャパンにメジャー移籍して「GONG SHOW」と2枚のアルバムをリリースした直枝政太郎(現:直枝政広)率いるCARNATIONでしたが、その後2年間は過渡期に入ります。89年には森高千里の歌手としてのブレイクへの転機となったアルバム「非実力派宣言」への参加によってライトな層にもその名を知られるようになりましたが、90年には初期CARNATIONサウンドをニューウェーブな方面に引っ張ってきたギターの坂東次郎が脱退、バンドとしての方針転換を余儀なくされます。そこで加入したのがメロトロン人脈から2人組ユニット、モスキートの鳥羽修で、鳥羽の豪快なギタープレイは新生CARNATIONに多大な影響を与え、91年にようやく3rdアルバムである本作をリリースするに至るわけです。
前述の森高千里のサポートにより提供した2曲をリメイクするのみならず、森高本人までゲスト参加させるという話題性もさることながら、これまでのどこか斜に構えたひねたポップセンスを持つニューウェーブ系バンドとしてのバンドカラーは影を潜め、大胆にもディストーションが強調されたロックギターを前面に押し出したパワフルな演奏力(特に本作で脱退する馬田裕次の良く動くベースフレーズが大活躍)をフィーチャーした本作は、泥臭さすら感じさせる作品に仕上がっています。しかしながら彼ら特有の気怠さを携えつつもPOPSとして十分に耐え得るメロディセンスは健在で、ともすれば前2作よりも歌メロの聴きやすさという点では上回っているという印象も拭えません。もちろん彼らのニューウェーブ性が完全に失ったというわけではなくて、随所で棚谷のキーボードプレイが光っていて(というよりむしろ電子音のギミックまでもシンプルかつ効果的に使用されている)、そのあたりが鳥羽加入による泥臭いギターサウンドを適度に中和するどころか、ある種のケミストリーを起こしていることから考えると、この方針転換は吉と出たのではないかと思われます。「EDO RIVER」を始めとする日本コロムビア期後のプチブレイクが重要な彼らの転換点であることは確かですが、試行錯誤期といわれる本作と次作の名盤「天国と地獄」の実験とポップとロッックが入り混じった混沌としながらも高品質な作品群は、その後のCARNATIONサウンドの確固たる礎になっているはずです。
<Favorite Songs>
・「パーキング・メーター」
軽やかにカッティングを刻むギターワークが印象的なポップセンス溢れるロックナンバー。骨太な鳥羽のギターワークも棚谷のオルガンを中心としたキーボードプレイに中和されて、非常にバランスのとれた良曲になっています。間奏のギターソロとオルガンソロのフレーズはどれも素晴らしい。
・「テレフォン・ガール」
ニューウェーブな出自らしく打ち込みやギミックを駆使した不思議なAメロと対照的なこれぞキャッチーの権化というべき必殺のサビメロディが炸裂する名曲。ギターもベースもフレーズが動き回るし、ただただロックに舵を切るだけでない、相変わらずのひねたセンスが全開です。
・「ロック・ゾンビ」
元々アルバムタイトルであったといういわく通りの本作のサウンドを象徴する最もロック魂を感じるナンバー。美尾洋乃&斉藤美和子の玄人っぽくないカラッとしたコーラスも、ハードな演奏の中で輝いて聴こえます。
<評点>
・サウンド ★★ (粗さの残るギターの裏で細かい作り込みも光る)
・メロディ ★★★ (わかりやすさ全開のサビが多く聴き手を飽きさせず)
・リズム ★★★ (独特のタイトなドラミングでボトムの安定に成功)
・曲構成 ★★ (全編にわたり力強く楽曲に安定感がある)
・個性 ★★ (骨太なギターを手に入れて無二の立ち入りを模索)
総合評点: 7点
「perspective」 soyuz project
「perspective」 (2012 ビートサーファーズ)
soyuz project

<members>
福間創:vocal・guitar・electronics
<electric instruments(Hardware)>
Teenage Engineering OP-1・Dave Smith Instruments Prophet’08・Dave Smith Instruments Mopho・Will Systems MAB-303・Roland JP-8000・KORG Polysix・Elektron Sid Station・Waldorf Microwave・KORG Mono/Poly・EMS Synthi-A・Jomox MBase01・Sequencial TOM ・Roland TR-808・Jomox M.Brane11・Doepfer Dark Time・Doepfer MAQ16/3・Roland VP-330・Roland CR-8000・Doepfer R2M・Jomox T-Resonator・MFB Drumcomputer MFB-503・テクノフォン
<electric instruments(Software)>
Access Virus・Native Instruments FM-8・Native Instruments Battery3・KORG Legacy Collection・waldorf Attack・Native Instruments Kontakt4・TC PowerCore01・reFX PlastiCZ!・MOTU BassLine・impOSCar・BestService ENGINE・Native Instruments Finger・Native Instruments The Mouth・FlexibeatzII Paint2Sound・speech manager
1.「Compensation」 詞・曲・編:福間創
2.「Larus Song」 曲・編:福間創
3.「Timeline」 詞・曲・編:福間創
4.「Motion」 曲・編:福間創
5.「Hysteresis」 曲・編:福間創
6.「Forfeiture」 詞・曲・編:福間創
7.「Waves」 曲・編:福間創
8.「Fairy Tail」 曲・編:福間創
<support musician>
nOrikO:voice
produced by 福間創・三浦俊一
engineered by 福間創
● 新旧シンセサイザーを巧みに操るポップ精神を忘れないテクノクリエイターのソロユニットが放つ才気ほとばしる3rdアルバム
稲見淳率いる関西界隈で知られたニューウェーブバンドControlled Voltageでキャリアを開始、P-MODELのメンバーとして表舞台に立った福間創は、電子楽器全般における豊富な知識に裏打ちされた手堅いプログラミングとシンセサウンドへの造詣の深さから、P-MODEL活動休止後も戸川純率いるYAPOOSや、ケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰のザ・シンセサイザーズへの参加等、ニューウェーブ界隈の重要バンドに必要とされてきました。その傍らソロ活動ユニットとして始めたsoyuz projectでは「Elettrico Strada CD」「bellissima」とクラブ&フロア対応ながら80'sニューウェーブの残り香漂うポップな作風が他の同類作品との差別化に成功し、エレクトリックミュージシャンの実力への評価と立ち位置をほぼ不動のものにしてきたわけです。そして「bellissima」のリリースから5年が経過し待ちに待った新作としてリリースされた本作では、さらに熟成された電子音の美しさに焦点を当てた緻密な仕事ぶりが光る作品として、さらなる成長の跡を見せつけています。
使用機材を惜しげもなく披露しつつその電子楽器への愛情を隠そうとしない潔さも彼の魅力の1つではありますが、本作ではボトムの効いた4つ打ちビートが目立っていた過去2作と比較すると、リズムはやや軽めとはいえ緻密に構成されているのに加えて、音色自体の作り込みにもこだわりが見え隠れしており、電子音楽としての「深さ」をより追求した仕上がりとなっています。リズムよりも電子音に比重を置いた結果感じさせるより繊細なシンセサウンドへの欲求が高まっている様子がひしひしと感じさせられますが、ストイックさが増すほど彼の中にあるロマンティックなポップテイストが垣間見えるのも興味深い部分ではあります。本作において大活躍しているスウェーデン生まれの新兵器Teenage Engineering OP-1をはじめとした数々の古今東西ハード&ソフトシンセ&リズムマシンを駆使しながら、Poison Girl FriendのnOrikOをゲストヴォーカルに迎えながらもまともには歌わせずに変調しまくりに料理してしまう八面六臂の電子音職人ぶりには、もはや音に対する献身的というか求道的な側面を感じざるを得ません。
このソロユニットとしてのサウンドを突き詰めた結果なのか、本作をもってこのユニット名を解消して現在は心境も環境も新たに本名名義での活動をメインに行っていますが、美しき電子音への追求はとどまることをしらずクオリティは進化していますので、今後の活躍がさらに期待できるはずです。
<Favorite Songs>
・「Timeline」
レゾナンスの効いたアシッドベースと深みのあるボコーダーを交差するお得意の電力まみれなテクノチューン。ディレイをふんだんに使用することによる幻惑作用がクセになります。彼らしいロマンティックなコード感覚によるアルペジオに主張しまくりのハンドクラップが妙に映えるのが嬉しいです。
・「Motion」
4つ打ちテクノではあるものの、ボトムは軽く電子音は重い本作を象徴するかのような楽曲。グイグイ攻めるというよりは繊細さを感じる音づくりには彼の音志向のかすかな変化が感じ取ることができるダンサブルチューンです。
・「Fairy Tail」
前曲から続くカットアップからの荘厳な境界録音のオルガンサウンドによってより神秘性を増したラストチューン。後の本名名義のソロ活動におけるサウンドを予見させるような神々しさと美しさを纏った実験作です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (アルペジオやディレイを駆使した幻想空間は白眉)
・メロディ ★ (メロディアスな部分は比較的廃した結果神秘性は増す)
・リズム ★★ (緻密ではあるがフロアへの意識は多少引っ込んだ感も)
・曲構成 ★★ (今まで以上にコンセプトが徹底され統一感が向上)
・個性 ★★ (ますます電子音にのめりこんで悟りを開いたかのよう)
総合評点: 7点
soyuz project

<members>
福間創:vocal・guitar・electronics
<electric instruments(Hardware)>
Teenage Engineering OP-1・Dave Smith Instruments Prophet’08・Dave Smith Instruments Mopho・Will Systems MAB-303・Roland JP-8000・KORG Polysix・Elektron Sid Station・Waldorf Microwave・KORG Mono/Poly・EMS Synthi-A・Jomox MBase01・Sequencial TOM ・Roland TR-808・Jomox M.Brane11・Doepfer Dark Time・Doepfer MAQ16/3・Roland VP-330・Roland CR-8000・Doepfer R2M・Jomox T-Resonator・MFB Drumcomputer MFB-503・テクノフォン
<electric instruments(Software)>
Access Virus・Native Instruments FM-8・Native Instruments Battery3・KORG Legacy Collection・waldorf Attack・Native Instruments Kontakt4・TC PowerCore01・reFX PlastiCZ!・MOTU BassLine・impOSCar・BestService ENGINE・Native Instruments Finger・Native Instruments The Mouth・FlexibeatzII Paint2Sound・speech manager
1.「Compensation」 詞・曲・編:福間創
2.「Larus Song」 曲・編:福間創
3.「Timeline」 詞・曲・編:福間創
4.「Motion」 曲・編:福間創
5.「Hysteresis」 曲・編:福間創
6.「Forfeiture」 詞・曲・編:福間創
7.「Waves」 曲・編:福間創
8.「Fairy Tail」 曲・編:福間創
<support musician>
nOrikO:voice
produced by 福間創・三浦俊一
engineered by 福間創
● 新旧シンセサイザーを巧みに操るポップ精神を忘れないテクノクリエイターのソロユニットが放つ才気ほとばしる3rdアルバム
稲見淳率いる関西界隈で知られたニューウェーブバンドControlled Voltageでキャリアを開始、P-MODELのメンバーとして表舞台に立った福間創は、電子楽器全般における豊富な知識に裏打ちされた手堅いプログラミングとシンセサウンドへの造詣の深さから、P-MODEL活動休止後も戸川純率いるYAPOOSや、ケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰のザ・シンセサイザーズへの参加等、ニューウェーブ界隈の重要バンドに必要とされてきました。その傍らソロ活動ユニットとして始めたsoyuz projectでは「Elettrico Strada CD」「bellissima」とクラブ&フロア対応ながら80'sニューウェーブの残り香漂うポップな作風が他の同類作品との差別化に成功し、エレクトリックミュージシャンの実力への評価と立ち位置をほぼ不動のものにしてきたわけです。そして「bellissima」のリリースから5年が経過し待ちに待った新作としてリリースされた本作では、さらに熟成された電子音の美しさに焦点を当てた緻密な仕事ぶりが光る作品として、さらなる成長の跡を見せつけています。
使用機材を惜しげもなく披露しつつその電子楽器への愛情を隠そうとしない潔さも彼の魅力の1つではありますが、本作ではボトムの効いた4つ打ちビートが目立っていた過去2作と比較すると、リズムはやや軽めとはいえ緻密に構成されているのに加えて、音色自体の作り込みにもこだわりが見え隠れしており、電子音楽としての「深さ」をより追求した仕上がりとなっています。リズムよりも電子音に比重を置いた結果感じさせるより繊細なシンセサウンドへの欲求が高まっている様子がひしひしと感じさせられますが、ストイックさが増すほど彼の中にあるロマンティックなポップテイストが垣間見えるのも興味深い部分ではあります。本作において大活躍しているスウェーデン生まれの新兵器Teenage Engineering OP-1をはじめとした数々の古今東西ハード&ソフトシンセ&リズムマシンを駆使しながら、Poison Girl FriendのnOrikOをゲストヴォーカルに迎えながらもまともには歌わせずに変調しまくりに料理してしまう八面六臂の電子音職人ぶりには、もはや音に対する献身的というか求道的な側面を感じざるを得ません。
このソロユニットとしてのサウンドを突き詰めた結果なのか、本作をもってこのユニット名を解消して現在は心境も環境も新たに本名名義での活動をメインに行っていますが、美しき電子音への追求はとどまることをしらずクオリティは進化していますので、今後の活躍がさらに期待できるはずです。
<Favorite Songs>
・「Timeline」
レゾナンスの効いたアシッドベースと深みのあるボコーダーを交差するお得意の電力まみれなテクノチューン。ディレイをふんだんに使用することによる幻惑作用がクセになります。彼らしいロマンティックなコード感覚によるアルペジオに主張しまくりのハンドクラップが妙に映えるのが嬉しいです。
・「Motion」
4つ打ちテクノではあるものの、ボトムは軽く電子音は重い本作を象徴するかのような楽曲。グイグイ攻めるというよりは繊細さを感じる音づくりには彼の音志向のかすかな変化が感じ取ることができるダンサブルチューンです。
・「Fairy Tail」
前曲から続くカットアップからの荘厳な境界録音のオルガンサウンドによってより神秘性を増したラストチューン。後の本名名義のソロ活動におけるサウンドを予見させるような神々しさと美しさを纏った実験作です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (アルペジオやディレイを駆使した幻想空間は白眉)
・メロディ ★ (メロディアスな部分は比較的廃した結果神秘性は増す)
・リズム ★★ (緻密ではあるがフロアへの意識は多少引っ込んだ感も)
・曲構成 ★★ (今まで以上にコンセプトが徹底され統一感が向上)
・個性 ★★ (ますます電子音にのめりこんで悟りを開いたかのよう)
総合評点: 7点
「宴。」 ADAPTER。
「宴。」(2009 LINK.ID)
ADAPTER。

<members>
福助。:vocal・guitar・synthesizer programming
1.「コンニチワ」 曲・編:福助。
2.「ご自由にどうぞ」 詞・曲・編:福助。
3.「楽しんだモン勝ち」 詞・曲・編:福助。
4.「僕が君を忘れた時」 詞・曲・編:福助。
5.「祭り」 詞・曲・編:福助。
6.「僕の声」 詞・曲・編:福助。
7.「推論機構」 詞・曲・編:福助。
8.「はじめの一歩」 詞・曲・編:福助。
<support musician>
リウ:bass
ふーじ:drums
produced by ADAPTER。
mixing engineered by 磯村太郎
recording engineered by 磯村太郎・采原史明
● 和風メロディを多用したヴィジュアルロックをサイバーテクノに料理した異色ソロユニットの方向性を確立したミニアルバム
20世紀末から21世紀前半にかけてピコピコ電子音を多用したニューウェーブサウンドを旗印にしたつなぎ白塗りヴィジュアル系バンドとして存在感を放っていたメトロノーム。この4人組バンドにおいて小林写楽と共にバンド創設期からのメンバーであったギター担当の福田福助は、TALBOギターを愛用していることからもわかるように小林写楽同様P-MODEL〜有頂天直系の筋金入りテクノポップ&ニューウェーブ派というわけで、自身のソロユニットとして2005年に開始したADAPTER。でも当初はボコーダーにチープな電子音満載のニューウェーブサウンドを披露していました。しかしそれだけではその他大勢と同じく個性が埋もれてしまうと思ったのか、メトロノームが活動を休止する直前の08年の3rdミニアルバム「艶。」あたりから、そのヴィジュアルコンセプトと共に「和」のテイストをふんだんに盛り込んだ純和風ニューウェーブロックに高速ピコピコシーケンスを強引に合体させた、いわゆる「吹っ切れた」サウンドで一段階上の個性を手に入れることに成功しました。4thミニアルバムである本作は遂に本人もジャケに登場しその方向性を知らしめた、メトロノーム終了後に颯爽と独り立ちに成功するポイントとなった作品です。
ゲーム音楽ともおぼしきチープで近未来的なシーケンスとバタ臭い歌メロ&硬派ロックサウンドとのコントラストが魅力とも言えるADAPTER。サウンド。メトロノームの盟友である小林写楽のFLOPPYもチープテクノポップ&哀愁メロに定評があるユニットですが、ADAPTER。もそれと同系統のジャンルに属しながらも、歌謡曲的なメロディはむしろ演歌調と言ってもよいくらいの純日本製な感覚で、そこにギタリストたるゆえんであるいかにもロック的なディストーションサウンドで花を添えるわけですから、そのヴィジュアルサムライ的なルックスと相まって、単純にアーティスト的な立ち位置としても強烈なインパクトを聴き手に与えていると思います。その確立された和風メロディと攻撃的なシーケンス中心(特にイントロはどれも期待感溢れる飛び交う電子音で楽しさ満載)が一本調子過ぎるきらいはあるものの、特に僕シリーズの最高傑作とも言える「僕の声」などその方向性を決定づけるほどの完成度と勢いに任せた説得力を持った楽曲も多く、まさに本作はADAPTER。としての転換点であると同時に、(メトロノーム以降の独り立ちとしての)飛躍のきっかけとなった重要な作品と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「僕の声」
ファミコン的チープシーケンスなイントロから四つ打ちノリノリに展開するADAPTER。の代表的な名曲。BメロではTB303的なフィルター開閉も鮮やかなアシッドベースを登場させたりと全編にわたりノリの良さは絶やさない勢いが魅力です。最後のタメも素晴らしい。
・「推論機構」
和メロ中心の本作にあって現代に舞い戻ったかのような哀愁メロ全開のロマンチックテクノポップ。粒の立ったシンセベースと全編にわたる緻密な打ち込みがこの曲調だと際立ってきます。この楽曲ではギターよりもファンタジックなシンセを比較的目立たせている(特にアウトロのベルサウンド等)のも楽曲の雰囲気づくりとしては成功しています。
<評点>
・サウンド ★★ (高速シーケンスと歪むギターはどれも攻撃的)
・メロディ ★★ (演歌で和の心を持つメロディが個性を演出)
・リズム ★ (全体としては四つ打ち中心で目新しさは少ない)
・曲構成 ★ (このユニットとしてはまだ緩急のある方かも)
・個性 ★ (和風ニューウェーブとしての方向性を見事確立)
総合評点: 6点
ADAPTER。

<members>
福助。:vocal・guitar・synthesizer programming
1.「コンニチワ」 曲・編:福助。
2.「ご自由にどうぞ」 詞・曲・編:福助。
3.「楽しんだモン勝ち」 詞・曲・編:福助。
4.「僕が君を忘れた時」 詞・曲・編:福助。
5.「祭り」 詞・曲・編:福助。
6.「僕の声」 詞・曲・編:福助。
7.「推論機構」 詞・曲・編:福助。
8.「はじめの一歩」 詞・曲・編:福助。
<support musician>
リウ:bass
ふーじ:drums
produced by ADAPTER。
mixing engineered by 磯村太郎
recording engineered by 磯村太郎・采原史明
● 和風メロディを多用したヴィジュアルロックをサイバーテクノに料理した異色ソロユニットの方向性を確立したミニアルバム
20世紀末から21世紀前半にかけてピコピコ電子音を多用したニューウェーブサウンドを旗印にしたつなぎ白塗りヴィジュアル系バンドとして存在感を放っていたメトロノーム。この4人組バンドにおいて小林写楽と共にバンド創設期からのメンバーであったギター担当の福田福助は、TALBOギターを愛用していることからもわかるように小林写楽同様P-MODEL〜有頂天直系の筋金入りテクノポップ&ニューウェーブ派というわけで、自身のソロユニットとして2005年に開始したADAPTER。でも当初はボコーダーにチープな電子音満載のニューウェーブサウンドを披露していました。しかしそれだけではその他大勢と同じく個性が埋もれてしまうと思ったのか、メトロノームが活動を休止する直前の08年の3rdミニアルバム「艶。」あたりから、そのヴィジュアルコンセプトと共に「和」のテイストをふんだんに盛り込んだ純和風ニューウェーブロックに高速ピコピコシーケンスを強引に合体させた、いわゆる「吹っ切れた」サウンドで一段階上の個性を手に入れることに成功しました。4thミニアルバムである本作は遂に本人もジャケに登場しその方向性を知らしめた、メトロノーム終了後に颯爽と独り立ちに成功するポイントとなった作品です。
ゲーム音楽ともおぼしきチープで近未来的なシーケンスとバタ臭い歌メロ&硬派ロックサウンドとのコントラストが魅力とも言えるADAPTER。サウンド。メトロノームの盟友である小林写楽のFLOPPYもチープテクノポップ&哀愁メロに定評があるユニットですが、ADAPTER。もそれと同系統のジャンルに属しながらも、歌謡曲的なメロディはむしろ演歌調と言ってもよいくらいの純日本製な感覚で、そこにギタリストたるゆえんであるいかにもロック的なディストーションサウンドで花を添えるわけですから、そのヴィジュアルサムライ的なルックスと相まって、単純にアーティスト的な立ち位置としても強烈なインパクトを聴き手に与えていると思います。その確立された和風メロディと攻撃的なシーケンス中心(特にイントロはどれも期待感溢れる飛び交う電子音で楽しさ満載)が一本調子過ぎるきらいはあるものの、特に僕シリーズの最高傑作とも言える「僕の声」などその方向性を決定づけるほどの完成度と勢いに任せた説得力を持った楽曲も多く、まさに本作はADAPTER。としての転換点であると同時に、(メトロノーム以降の独り立ちとしての)飛躍のきっかけとなった重要な作品と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「僕の声」
ファミコン的チープシーケンスなイントロから四つ打ちノリノリに展開するADAPTER。の代表的な名曲。BメロではTB303的なフィルター開閉も鮮やかなアシッドベースを登場させたりと全編にわたりノリの良さは絶やさない勢いが魅力です。最後のタメも素晴らしい。
・「推論機構」
和メロ中心の本作にあって現代に舞い戻ったかのような哀愁メロ全開のロマンチックテクノポップ。粒の立ったシンセベースと全編にわたる緻密な打ち込みがこの曲調だと際立ってきます。この楽曲ではギターよりもファンタジックなシンセを比較的目立たせている(特にアウトロのベルサウンド等)のも楽曲の雰囲気づくりとしては成功しています。
<評点>
・サウンド ★★ (高速シーケンスと歪むギターはどれも攻撃的)
・メロディ ★★ (演歌で和の心を持つメロディが個性を演出)
・リズム ★ (全体としては四つ打ち中心で目新しさは少ない)
・曲構成 ★ (このユニットとしてはまだ緩急のある方かも)
・個性 ★ (和風ニューウェーブとしての方向性を見事確立)
総合評点: 6点
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