「RAYVE」 Ray
「RAYVE」(2013 ジェネオン)
Ray:vocals・chorus

1.「Over ride」 詞:川田まみ・Ray 曲・編:中沢伴行
2.「告白」 詞:KOTOKO 曲:折戸伸治 編:高瀬一矢
3.「Party Time!」 詞:PA-NON 曲・編:高瀬一矢
4.「sign」 詞:KOTOKO 曲:折戸伸治 編:高瀬一矢
5.「向日葵」 詞:川田まみ 曲・編:C.G mix
6.「ひかり」 詞:黒崎真音 曲・編:中沢伴行
7.「凪-nagi-」 詞:川田まみ 曲:中沢伴行 編:中沢伴行・尾崎武士
8.「楽園PROJECT」 詞:PA-NON 曲・編:高瀬一矢
9.「baby♡macaron」 詞:KOTOKO 曲・編:C.G mix
10.「Sweet Days」 詞:PA-NON 曲・編:尾崎武士
11.「Recall」 詞:川田まみ 曲・編:井内舞子
12.「Altair」 詞:川田まみ 曲・編:中沢伴行
13.「As for me」 詞:KOTOKO 曲・編:高瀬一矢
<support musician>
尾崎武士:guitar
チャーリー田中:guitar
produced by 西村潤
sound produced by 高瀬一矢・I’ve sound
engineered by 高瀬一矢・中沢伴行・尾崎武士・井内舞子
● I’ve人脈が全面バックアップした新人ヴォーカリストのカラフルなシンセが飛び交うはじけるダンサブルポップアルバム
テクノ&トランスといったドラッギーなエレクトリックミュージックを基調とした楽曲でゲームやアニメ界隈の音楽シーンを席巻、KOTOKOや川田まみ等の実力派ヴォーカリストを育て上げた北海道の音楽制作集団「I've」の新たな歌姫として、2012年にシングル「sign」でデビューしたRay。アニメソングタイアップに恵まれた爽やかエレクトロな楽曲でその存在を認識された彼女は、「楽園PROJECT」「Recall」と一貫してI'veバックアップによる高品質なサウンドをバックに歌い手としての実力を発揮してきました。そして翌2013年には遂に1stアルバムをリリースすることになります。とはいってもそれまでにアニメやゲームの主題歌やイメージソングとして披露された楽曲も13曲中6曲と約半数を占め、本作はデビューからアルバムまでの軌跡を辿るデビュー作にして早くも集大成的な印象の作品と言えるでしょう。
とにもかくにもI've全面バックアップのこの作品、タイトル通りレイヴでかけられても不思議でないほどの電子音と四つ打ちで彩られたエレクトリックダンスミュージックで攻めまくります。しかしそこはI'veの独特のポップセンスが生きており、Aメロで電子音バリバリのクールで攻撃的なリズムで聴き手を魅了し、Bメロは我に返ったようにいなたい歌謡メロディで繋ぎに徹し、サビでは突き抜けたようなキャッチーで覚えやすいフレーズでポップセンス全開という黄金律による楽曲がこれでもかと収録されており、それゆえの安定感があります。高瀬一矢・中沢伴行・C.G mix・井内舞子・尾崎武士がクリエイターとして参加、作詞にはKOTOKOや川田まみ、黒崎真音らが参加する豪華メンバー、特にリーダー格の高瀬一矢の参加楽曲が多いことからもRayに対する期待度の高さが窺えますが、ダンサブルに特化せず、ポップチューンに偏り過ぎない、良い意味での中庸性を持ち合わせていることが逆に魅力の1つになっています。それでいて尾崎武士のロックな「Sweet Days」や井内舞子のインダストリアル調の「Recall」等クリエイターの個性がにじみ出ている楽曲もしっかり歌いこなしているのは本人の実力の賜物でしょう。本人の真骨頂は「baby♡macaron」のようなはじけるようなポップチューンに答えがありそうですが、今後の成長を見守っていきたいと思います。
<Favorite Songs>
・「sign」
きらびやかなイントロに期待感たっぷりの折戸伸治&高瀬一矢コンビ入魂のデビュー曲。Aメロのくぐもったような電子フレーズの太さがアクセントになっています。これだけキラキラサウンドを多用しながらも嫌みに聴こえないのはI'veサウンドの成せる業かもしれません。
・「baby♡macaron」
軽快な四つ打ちに乗ったあざとさ全開のエレポップチューン。畳み掛けるフレーズに跳ねまくるリズムをバックにキュートなヴォーカルがはじける完成度の高い楽曲で、彼女のポテンシャルを最も発揮できるタイプの楽曲であると思います。
・「As for me」
ジャカジャカした攻撃的なイントロから流麗なメロディアスなAメロへとつながっていくピアノが印象的なラストナンバー。ストリングスも加わってゴージャスなアレンジですが、ポイントは歌謡メロディと四つ打ちリズム(onストリングス)の絶妙なマッチングです。
<評点>
・サウンド ★★ (音数も多くシンセの壁で埋める音像はI've的かも)
・メロディ ★★ (I'veのサビのバタ臭さは相変わらずだが魅力的とも)
・リズム ★ (基本は四つ打ちシーケンスなので冒険も欲しい)
・曲構成 ★ (似た印象の楽曲も多いため楽曲を絞ることが必要)
・個性 ★ (I've作品はどうしても歌手の個性が希薄になりがち)
総合評点: 6点
Ray:vocals・chorus

1.「Over ride」 詞:川田まみ・Ray 曲・編:中沢伴行
2.「告白」 詞:KOTOKO 曲:折戸伸治 編:高瀬一矢
3.「Party Time!」 詞:PA-NON 曲・編:高瀬一矢
4.「sign」 詞:KOTOKO 曲:折戸伸治 編:高瀬一矢
5.「向日葵」 詞:川田まみ 曲・編:C.G mix
6.「ひかり」 詞:黒崎真音 曲・編:中沢伴行
7.「凪-nagi-」 詞:川田まみ 曲:中沢伴行 編:中沢伴行・尾崎武士
8.「楽園PROJECT」 詞:PA-NON 曲・編:高瀬一矢
9.「baby♡macaron」 詞:KOTOKO 曲・編:C.G mix
10.「Sweet Days」 詞:PA-NON 曲・編:尾崎武士
11.「Recall」 詞:川田まみ 曲・編:井内舞子
12.「Altair」 詞:川田まみ 曲・編:中沢伴行
13.「As for me」 詞:KOTOKO 曲・編:高瀬一矢
<support musician>
尾崎武士:guitar
チャーリー田中:guitar
produced by 西村潤
sound produced by 高瀬一矢・I’ve sound
engineered by 高瀬一矢・中沢伴行・尾崎武士・井内舞子
● I’ve人脈が全面バックアップした新人ヴォーカリストのカラフルなシンセが飛び交うはじけるダンサブルポップアルバム
テクノ&トランスといったドラッギーなエレクトリックミュージックを基調とした楽曲でゲームやアニメ界隈の音楽シーンを席巻、KOTOKOや川田まみ等の実力派ヴォーカリストを育て上げた北海道の音楽制作集団「I've」の新たな歌姫として、2012年にシングル「sign」でデビューしたRay。アニメソングタイアップに恵まれた爽やかエレクトロな楽曲でその存在を認識された彼女は、「楽園PROJECT」「Recall」と一貫してI'veバックアップによる高品質なサウンドをバックに歌い手としての実力を発揮してきました。そして翌2013年には遂に1stアルバムをリリースすることになります。とはいってもそれまでにアニメやゲームの主題歌やイメージソングとして披露された楽曲も13曲中6曲と約半数を占め、本作はデビューからアルバムまでの軌跡を辿るデビュー作にして早くも集大成的な印象の作品と言えるでしょう。
とにもかくにもI've全面バックアップのこの作品、タイトル通りレイヴでかけられても不思議でないほどの電子音と四つ打ちで彩られたエレクトリックダンスミュージックで攻めまくります。しかしそこはI'veの独特のポップセンスが生きており、Aメロで電子音バリバリのクールで攻撃的なリズムで聴き手を魅了し、Bメロは我に返ったようにいなたい歌謡メロディで繋ぎに徹し、サビでは突き抜けたようなキャッチーで覚えやすいフレーズでポップセンス全開という黄金律による楽曲がこれでもかと収録されており、それゆえの安定感があります。高瀬一矢・中沢伴行・C.G mix・井内舞子・尾崎武士がクリエイターとして参加、作詞にはKOTOKOや川田まみ、黒崎真音らが参加する豪華メンバー、特にリーダー格の高瀬一矢の参加楽曲が多いことからもRayに対する期待度の高さが窺えますが、ダンサブルに特化せず、ポップチューンに偏り過ぎない、良い意味での中庸性を持ち合わせていることが逆に魅力の1つになっています。それでいて尾崎武士のロックな「Sweet Days」や井内舞子のインダストリアル調の「Recall」等クリエイターの個性がにじみ出ている楽曲もしっかり歌いこなしているのは本人の実力の賜物でしょう。本人の真骨頂は「baby♡macaron」のようなはじけるようなポップチューンに答えがありそうですが、今後の成長を見守っていきたいと思います。
<Favorite Songs>
・「sign」
きらびやかなイントロに期待感たっぷりの折戸伸治&高瀬一矢コンビ入魂のデビュー曲。Aメロのくぐもったような電子フレーズの太さがアクセントになっています。これだけキラキラサウンドを多用しながらも嫌みに聴こえないのはI'veサウンドの成せる業かもしれません。
・「baby♡macaron」
軽快な四つ打ちに乗ったあざとさ全開のエレポップチューン。畳み掛けるフレーズに跳ねまくるリズムをバックにキュートなヴォーカルがはじける完成度の高い楽曲で、彼女のポテンシャルを最も発揮できるタイプの楽曲であると思います。
・「As for me」
ジャカジャカした攻撃的なイントロから流麗なメロディアスなAメロへとつながっていくピアノが印象的なラストナンバー。ストリングスも加わってゴージャスなアレンジですが、ポイントは歌謡メロディと四つ打ちリズム(onストリングス)の絶妙なマッチングです。
<評点>
・サウンド ★★ (音数も多くシンセの壁で埋める音像はI've的かも)
・メロディ ★★ (I'veのサビのバタ臭さは相変わらずだが魅力的とも)
・リズム ★ (基本は四つ打ちシーケンスなので冒険も欲しい)
・曲構成 ★ (似た印象の楽曲も多いため楽曲を絞ることが必要)
・個性 ★ (I've作品はどうしても歌手の個性が希薄になりがち)
総合評点: 6点
「THE GARDEN」 John Foxx
「THE GARDEN」(1981 Virgin)
John Foxx:vocals・electric guitar・acoustic guitar・drum programming・piano・synthesizers・toms

1.「EUROPE AFTER THE RAIN」 John Foxx
2.「SYSTEMS OF ROMANCE」 John Foxx
3.「WHEN I WAS A MAN AND YOU WERE A WOMAN」 John Foxx
4.「DANCING LIKE A GUN」 John Foxx
5.「PATER NOSTER」 John Foxx
6.「NIGHT SUIT」 John Foxx
7.「YOU WERE THERE」 John Foxx
8.「FUSION/FISSION」 John Foxx
9.「WALK AWAY」 John Foxx
10.「THE GARDEN」 John Foxx
<support musician>
Robin Simon:guitar
Duncan Bridgeman:bass・bongoes・brass・cymbals・percussion・piano・sequencer・synthesizers・toms
Jake Durant:bass
Jo Dworniak:bass
Philip Roberts:drums
Gareth Jones:percussion
produced by John Foxx
engineered by Gareth Jones
● 前作と打って変わってバンド色を強くしたニューウェーブを志向する肉感的な中にひんやりした空気感が同居する2ndアルバム
70年代末から80年代前半にかけてのニューウェーブムーブメントにおける最重要バンドの1つであるUltravox!のフロントマンであり、ブームの火付け役の1つとなった傑作「Systems of Romance」リリース後スター街道の日の目を見ることもなく脱退しソロに転向したJohn Foxx。語尾が下がる特徴的な歌唱とシンセサイザーや電子音響を多用したストイックかつクールな作風は、数々のニューロマ〜ニューウェーブのアーティストに影響を与えました。特に1stアルバム「Metamatic」は無機質な電子音をこれでもかと使いこなした真性エレクトロポップ作品であり、その後何十年もエレクトリックサウンド信奉者に愛されることになりますが、John Foxx本人はこの路線を1stアルバムで潔く捨て去り、2ndアルバムである本作からはバンドサウンドの中でのエレクトリックサウンドの混ぜ込み方に関心があったのか、1stと比べるとより肉感的な、人間味に近づいたような作風となっています。
日本ではCMソングとなったシングルカット曲のオープニングナンバー「EUROPE AFTER THE RAIN」から生ベースにアコースティックなギターの響きが目立つ哀愁ナンバーで、前作のようなストイックに満ちたサイバーな世界観は奥に引っ込めた感があります。しかし随所で電子的な音響をスパイス的に挿入させていることからもわかるように、電子音を脇役的に使用することでよりそのサウンドを際立たせる手法の違いということであって、斜に構えたクールなエレクトロロックという点では実は前作とはそれほど異なっていはいないようにも見受けられます。特にポルタメントを多用したねちっこいシンセソロフレーズや、モジュレーション系エフェクト好きが高じたようなギターフレーズへのギミック等は、もはやFoxx節と言える程の個性的な音色であり、ともすればシンプルで薄っぺらい音色とも受け取られかねないシンセの使い方ながら、その効果は絶大です。吐き捨てるような語尾下げ歌唱やうねるシンセフレーズ等のねちっこさは好き嫌いが分かれる部分ですが、ソロ活動を始めてからは孤独で静謐な印象のあった彼がバンドを従えて生き生きとした表情を音楽からも感じ取れるのは好印象です。その後はますますポップにスノッブになっていくJohn Foxxですが、後年は電子音に回帰、Louis GordonやBengeといったパートナーと共にストイックなエレクトリックポップを追求していくことになります。
<Favorite Songs>
・「SYSTEMS OF ROMANCE」
あの名盤と同タイトルを冠したUltravox時代を彷佛とさせる熱気溢れるロックナンバー。全編にわたり直線的な高速シーケンスをまとい、ギター中心のサウンドで朗々と歌い上げるテンションの高い作風で、バンドサウンドの回帰の中で最も勢いのある楽曲に仕上げています。
・「DANCING LIKE A GUN」
2ndシングルカット曲だけあって、わかりやすいメロディラインにエッジの効いたサウンドが魅力的なニューウェーブチューン。シンセの割合も高く、特にポルタメントを少し効かせた効果的なソロフレーズには前作の名残すら感じさせます。
・「YOU WERE THERE」
尖ったベースラインが目立つ哀愁ニューロマンティックナンバー。ドラムは全く表に出て来なくても粒の立ったベースとエッジを効かせたギターで曲全体を引っ張っています。シンセのポルタメントも印象的ですが、ピアノの効果的な挿入がさらに物悲しさを増長させます。
<評点>
・サウンド ★★ (チープなシンセとエフェクティブなギターに確かな個性)
・メロディ ★ (独特の哀愁旋律は持っているがパターンは豊富ではない)
・リズム ★ (ヒューマンなノリも加わったが音に迫力はまだない)
・曲構成 ★ (芸風が広いタイプではないので似たような作風が並ぶ)
・個性 ★★ (生楽器への回帰で電子音の効果的な利用にいち早く開眼)
総合評点: 6点
John Foxx:vocals・electric guitar・acoustic guitar・drum programming・piano・synthesizers・toms

1.「EUROPE AFTER THE RAIN」 John Foxx
2.「SYSTEMS OF ROMANCE」 John Foxx
3.「WHEN I WAS A MAN AND YOU WERE A WOMAN」 John Foxx
4.「DANCING LIKE A GUN」 John Foxx
5.「PATER NOSTER」 John Foxx
6.「NIGHT SUIT」 John Foxx
7.「YOU WERE THERE」 John Foxx
8.「FUSION/FISSION」 John Foxx
9.「WALK AWAY」 John Foxx
10.「THE GARDEN」 John Foxx
<support musician>
Robin Simon:guitar
Duncan Bridgeman:bass・bongoes・brass・cymbals・percussion・piano・sequencer・synthesizers・toms
Jake Durant:bass
Jo Dworniak:bass
Philip Roberts:drums
Gareth Jones:percussion
produced by John Foxx
engineered by Gareth Jones
● 前作と打って変わってバンド色を強くしたニューウェーブを志向する肉感的な中にひんやりした空気感が同居する2ndアルバム
70年代末から80年代前半にかけてのニューウェーブムーブメントにおける最重要バンドの1つであるUltravox!のフロントマンであり、ブームの火付け役の1つとなった傑作「Systems of Romance」リリース後スター街道の日の目を見ることもなく脱退しソロに転向したJohn Foxx。語尾が下がる特徴的な歌唱とシンセサイザーや電子音響を多用したストイックかつクールな作風は、数々のニューロマ〜ニューウェーブのアーティストに影響を与えました。特に1stアルバム「Metamatic」は無機質な電子音をこれでもかと使いこなした真性エレクトロポップ作品であり、その後何十年もエレクトリックサウンド信奉者に愛されることになりますが、John Foxx本人はこの路線を1stアルバムで潔く捨て去り、2ndアルバムである本作からはバンドサウンドの中でのエレクトリックサウンドの混ぜ込み方に関心があったのか、1stと比べるとより肉感的な、人間味に近づいたような作風となっています。
日本ではCMソングとなったシングルカット曲のオープニングナンバー「EUROPE AFTER THE RAIN」から生ベースにアコースティックなギターの響きが目立つ哀愁ナンバーで、前作のようなストイックに満ちたサイバーな世界観は奥に引っ込めた感があります。しかし随所で電子的な音響をスパイス的に挿入させていることからもわかるように、電子音を脇役的に使用することでよりそのサウンドを際立たせる手法の違いということであって、斜に構えたクールなエレクトロロックという点では実は前作とはそれほど異なっていはいないようにも見受けられます。特にポルタメントを多用したねちっこいシンセソロフレーズや、モジュレーション系エフェクト好きが高じたようなギターフレーズへのギミック等は、もはやFoxx節と言える程の個性的な音色であり、ともすればシンプルで薄っぺらい音色とも受け取られかねないシンセの使い方ながら、その効果は絶大です。吐き捨てるような語尾下げ歌唱やうねるシンセフレーズ等のねちっこさは好き嫌いが分かれる部分ですが、ソロ活動を始めてからは孤独で静謐な印象のあった彼がバンドを従えて生き生きとした表情を音楽からも感じ取れるのは好印象です。その後はますますポップにスノッブになっていくJohn Foxxですが、後年は電子音に回帰、Louis GordonやBengeといったパートナーと共にストイックなエレクトリックポップを追求していくことになります。
<Favorite Songs>
・「SYSTEMS OF ROMANCE」
あの名盤と同タイトルを冠したUltravox時代を彷佛とさせる熱気溢れるロックナンバー。全編にわたり直線的な高速シーケンスをまとい、ギター中心のサウンドで朗々と歌い上げるテンションの高い作風で、バンドサウンドの回帰の中で最も勢いのある楽曲に仕上げています。
・「DANCING LIKE A GUN」
2ndシングルカット曲だけあって、わかりやすいメロディラインにエッジの効いたサウンドが魅力的なニューウェーブチューン。シンセの割合も高く、特にポルタメントを少し効かせた効果的なソロフレーズには前作の名残すら感じさせます。
・「YOU WERE THERE」
尖ったベースラインが目立つ哀愁ニューロマンティックナンバー。ドラムは全く表に出て来なくても粒の立ったベースとエッジを効かせたギターで曲全体を引っ張っています。シンセのポルタメントも印象的ですが、ピアノの効果的な挿入がさらに物悲しさを増長させます。
<評点>
・サウンド ★★ (チープなシンセとエフェクティブなギターに確かな個性)
・メロディ ★ (独特の哀愁旋律は持っているがパターンは豊富ではない)
・リズム ★ (ヒューマンなノリも加わったが音に迫力はまだない)
・曲構成 ★ (芸風が広いタイプではないので似たような作風が並ぶ)
・個性 ★★ (生楽器への回帰で電子音の効果的な利用にいち早く開眼)
総合評点: 6点
「CD音源集」 新宿ゲバルト
「CD音源集」(2011 ゲバルト)
新宿ゲバルト

<members>
戸田宏武:vocal・synthesizer・computer programming
清水良行:synthesizer
1.「新宿騒乱」 詞・曲・編:戸田宏武
2.「挽肉」 詞・曲・編:戸田宏武
3.「20時のパレイド」 詞・曲・編:戸田宏武
4.「さよならテント」 詞・曲・編:戸田宏武
5.「マドロスは赤くして狡猾」 詞・曲・編:戸田宏武
6.「咲けば雛罌粟主題曲「正午」」 曲・編:戸田宏武
7.「シグナス」 詞・曲・編:戸田宏武
8.「四畳半エレキテクニカ」 曲・編:戸田宏武
9.「ドヤ街、味噌、女子。」 詞・曲・編:戸田宏武
produced by 戸田宏武
engineerd by 戸田宏武
● ノスタルジー溢れるメロディを中心とした昭和を売りとする過激なエレポップ歌謡ユニットの音源を集めたベスト盤
昭和、軍服、学生運動、白塗り・・・見るからに濃厚なキーワードを背負って20世紀末に活動を開始したエレクトロポップユニット新宿ゲバルトは、地道な自主制作録音作品とライブ活動を続け、じわじわとシンパを増やしながら、90年代P-MODEL周辺の電子コラージュ的なテクノポップを基調に、ノスタルジックな哀愁メロディで歌謡テイストを醸し出す異色ユニットとして、アンダーグラウンドなシーンにおいてその名を知られるようになりました。その長きにわたる活動の中で、中心人物の戸田宏武は白塗りニューウェーブの旗印的バンドであったメトロノームの小林写楽と、チープな電子音をポップなメロディに融合させたデュオユニットFLOPPYを結成しその存在をさらに知らしめるようになると、彼の本体的ユニットである新宿ゲバルトもさらに注目を集めることとなり、2011年にそれまでの自主制作音源「公式エミュレータ」「実録歌謡大全第弌集」「廃2(流行歌謡実験VER.1.0.2)」をまとめた入門編ベストとも言える集大成的な本作をリリースします。戸田なりのコンセプト及びサウンドへの美意識が切実に感じられる本作は、電子音楽マスターとして急速に脚光を浴びつつある彼の音楽的な礎ともいえる作品集と言えるのではないでしょうか。
ガチガチに固められたコンセプチュアルなユニットのため、ともすれば色モノの誹りも受けかねないユニットですが、緻密に構築された電子音&サウンドコラージュの嵐に、決して前には出て来ない変調させた戸田自身のヴォーカルをごった煮感覚で放り込んだ闇鍋状態の楽曲は、他に類を見ない個性に満ちあふれたものです。アプローチは違いもののその地下感覚は90年代前半のアングラニューウェーブを支えたパラペッツを彷佛とさせる部分もありますが、新宿ゲバルトはさらに過激に電子コラージュを撒き散らして騒擾感を演出するタイプで、より攻撃的とも言えるでしょう。本作では曲間もなくノンストップでこの騒乱状態が続いていくので、その音の洪水に埋もれがちではありますが、戸田の魅力はどうしてもサビに入れずにはいられない哀愁キラーメロディで、このセンスがあるからこそ、このユニットがただのコンセプトユニットだけで終わらない魅力を感じさせるのであると思われます。FLOPPYやNESSで活躍する戸田のみならず、相棒の清水良行もCOSMO-SHIKIで興味深い作品を連発するなど、各々の注目度も上がっている今だからこそ、さらなる音源リリースを期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「マドロスは赤くして狡猾」
チップチューン的フレーズに、昭和歌謡メロディが乗るお得意の戸田節ポップチューン。Aメロの場末の酒場感からサビのクライマックス感のあるメロディラインが秀逸です。そしてアウトロのラジオチューニングな電子音もテンションが上がります。
・「シグナス」
キュートな音色に爽やかな曲調のAメロと大陸的なサビで構成された戸田エレクトロ歌謡の代表的な楽曲。Aメロのキラキラサウンドの潔さが魅力ですが、相変わらずの疾走感のあるリズム&ベースに跳ねる電子音、間奏での混沌としたシンセソロなど、明暗緩急の付け方にセンスの良さが感じられます。
・「ドヤ街、味噌、女子。」
「廃2(流行歌謡実験VER.1.0.2)」収録の哀愁ポップチューンをリアレンジしたラストナンバー。本作の中で最も新しい録音のためかサウンドの切れが一段増しになっています。2周目の1拍音を消していくことでノリを生み出す妙な仕掛けも楽しめますが、やはり全体としては音数を過剰にかぶせた混沌のエレクトロサウンドで最後まで攻めまくりながら、泣きのサビも忘れないいかにも戸田楽曲と言える佳曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (荒々しい電子コラージュを無数に投げつけてくる)
・メロディ ★★ (混沌の中でもきっちりサビにはロマンチストの一面)
・リズム ★★ (軽快で高速のリズムパターンだがノリも忘れない)
・曲構成 ★ (ベスト盤とはいえノンストップの音の洪水で圧倒)
・個性 ★★ (現在の経験値であればさらに緻密な音構築が可能)
総合評点: 7点
入手したい方は公式通販、もしくは中野メカノで。
http://shinjukugewalt.com
新宿ゲバルト

<members>
戸田宏武:vocal・synthesizer・computer programming
清水良行:synthesizer
1.「新宿騒乱」 詞・曲・編:戸田宏武
2.「挽肉」 詞・曲・編:戸田宏武
3.「20時のパレイド」 詞・曲・編:戸田宏武
4.「さよならテント」 詞・曲・編:戸田宏武
5.「マドロスは赤くして狡猾」 詞・曲・編:戸田宏武
6.「咲けば雛罌粟主題曲「正午」」 曲・編:戸田宏武
7.「シグナス」 詞・曲・編:戸田宏武
8.「四畳半エレキテクニカ」 曲・編:戸田宏武
9.「ドヤ街、味噌、女子。」 詞・曲・編:戸田宏武
produced by 戸田宏武
engineerd by 戸田宏武
● ノスタルジー溢れるメロディを中心とした昭和を売りとする過激なエレポップ歌謡ユニットの音源を集めたベスト盤
昭和、軍服、学生運動、白塗り・・・見るからに濃厚なキーワードを背負って20世紀末に活動を開始したエレクトロポップユニット新宿ゲバルトは、地道な自主制作録音作品とライブ活動を続け、じわじわとシンパを増やしながら、90年代P-MODEL周辺の電子コラージュ的なテクノポップを基調に、ノスタルジックな哀愁メロディで歌謡テイストを醸し出す異色ユニットとして、アンダーグラウンドなシーンにおいてその名を知られるようになりました。その長きにわたる活動の中で、中心人物の戸田宏武は白塗りニューウェーブの旗印的バンドであったメトロノームの小林写楽と、チープな電子音をポップなメロディに融合させたデュオユニットFLOPPYを結成しその存在をさらに知らしめるようになると、彼の本体的ユニットである新宿ゲバルトもさらに注目を集めることとなり、2011年にそれまでの自主制作音源「公式エミュレータ」「実録歌謡大全第弌集」「廃2(流行歌謡実験VER.1.0.2)」をまとめた入門編ベストとも言える集大成的な本作をリリースします。戸田なりのコンセプト及びサウンドへの美意識が切実に感じられる本作は、電子音楽マスターとして急速に脚光を浴びつつある彼の音楽的な礎ともいえる作品集と言えるのではないでしょうか。
ガチガチに固められたコンセプチュアルなユニットのため、ともすれば色モノの誹りも受けかねないユニットですが、緻密に構築された電子音&サウンドコラージュの嵐に、決して前には出て来ない変調させた戸田自身のヴォーカルをごった煮感覚で放り込んだ闇鍋状態の楽曲は、他に類を見ない個性に満ちあふれたものです。アプローチは違いもののその地下感覚は90年代前半のアングラニューウェーブを支えたパラペッツを彷佛とさせる部分もありますが、新宿ゲバルトはさらに過激に電子コラージュを撒き散らして騒擾感を演出するタイプで、より攻撃的とも言えるでしょう。本作では曲間もなくノンストップでこの騒乱状態が続いていくので、その音の洪水に埋もれがちではありますが、戸田の魅力はどうしてもサビに入れずにはいられない哀愁キラーメロディで、このセンスがあるからこそ、このユニットがただのコンセプトユニットだけで終わらない魅力を感じさせるのであると思われます。FLOPPYやNESSで活躍する戸田のみならず、相棒の清水良行もCOSMO-SHIKIで興味深い作品を連発するなど、各々の注目度も上がっている今だからこそ、さらなる音源リリースを期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「マドロスは赤くして狡猾」
チップチューン的フレーズに、昭和歌謡メロディが乗るお得意の戸田節ポップチューン。Aメロの場末の酒場感からサビのクライマックス感のあるメロディラインが秀逸です。そしてアウトロのラジオチューニングな電子音もテンションが上がります。
・「シグナス」
キュートな音色に爽やかな曲調のAメロと大陸的なサビで構成された戸田エレクトロ歌謡の代表的な楽曲。Aメロのキラキラサウンドの潔さが魅力ですが、相変わらずの疾走感のあるリズム&ベースに跳ねる電子音、間奏での混沌としたシンセソロなど、明暗緩急の付け方にセンスの良さが感じられます。
・「ドヤ街、味噌、女子。」
「廃2(流行歌謡実験VER.1.0.2)」収録の哀愁ポップチューンをリアレンジしたラストナンバー。本作の中で最も新しい録音のためかサウンドの切れが一段増しになっています。2周目の1拍音を消していくことでノリを生み出す妙な仕掛けも楽しめますが、やはり全体としては音数を過剰にかぶせた混沌のエレクトロサウンドで最後まで攻めまくりながら、泣きのサビも忘れないいかにも戸田楽曲と言える佳曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (荒々しい電子コラージュを無数に投げつけてくる)
・メロディ ★★ (混沌の中でもきっちりサビにはロマンチストの一面)
・リズム ★★ (軽快で高速のリズムパターンだがノリも忘れない)
・曲構成 ★ (ベスト盤とはいえノンストップの音の洪水で圧倒)
・個性 ★★ (現在の経験値であればさらに緻密な音構築が可能)
総合評点: 7点
入手したい方は公式通販、もしくは中野メカノで。
http://shinjukugewalt.com
「Blue Planet」 Moskwa TV
「Blue Planet」 (1987 Westside)
Moskwa TV

<members>
Alexander Henninger:all instruments
Talla 2XLC:all instruments
Ion Javelin:vocal
1.「Moskwa Electronic」 Alexander Henninger/Andreas Tomalla
2.「Remember Russia」 John Watts
3.「Interface E」 Alexander Henninger
4.「Submarine」 Axel D’Ham
5.「The Art Of Fashion」 Alexander Henninger/Jan Veil
6.「Interface F」 Alexander Henninger
7.「Lenin」 Alexander Henninger
8.「Tokyo Jam」 Axel D’Ham
9.「The Shelter Of Love」 Alexander Henninger/Jan Veil
10.「Interface G」 Alexander Henninger
11.「Utopia」 Axel D’Ham
12.「Brave New World」 Alexander Henninger/Jan Veil
<support musician>
Ken Taylor:bass
Stephan Lupp:keyboards
produced by Alexander Henninger・Westside
engineered by Alexander Henninger
● いかにもドイツらしい硬質な音づくりで音楽的な攻撃性を保ったメッセージ色の強い2ndアルバム
世界各地で電子楽器を利用したサウンドが市民権を得ていった80年代において、その分野ではCANやNEU!等のクラウトロックからKraftwerk等のテクノポップ、DAFやDER PLAN等のジャーマンニューウェーブへと連なる先進的な進化を遂げてきたドイツのエレクトリックムーブメントは抜群の個性を持ち合わせていました。今回取り上げるMoskwa TVもそんなドイツのエレポップシーンから生まれたユニットで、80年代初頭にAndreas Tomalla(Talla 2XLC)とAlexander Henningerを中心とした4人組として活動を開始、その後ヴォーカリストのIon Javelinを加えた5人組としてメジャーフィールドへ進出した彼らは、1985年のシングル「Generator 7/8」が当時のユーロビートシーンにおいて一躍注目を浴びる中、1stアルバム「Dynamics & Discipline」をリリースします。しかし程なく2名が脱退し、トリオ編成として再スタートしながらリリースされたアルバムが2ndアルバムの本作となります。
前作では含蓄ある電子音にイタロディスコ的ないなたいメロディが特徴的でしたが、本作はエレクトリックサウンドをさらに突き詰めていったかのように細部にわたり電子音の緻密な構築ぶりが窺えます。サンプラーの大幅な導入により音の1つ1つをとっても粒立ちが良くなり、歌モノはポップ性が増し、インストゥルメンタルでは大風呂敷を広げたかのような壮大な世界観をアピールしていますが、自身のバンド名の由来を元にMoskwaやRussia、Leninといったソビエト連邦関係のワードをタイトルにしていることから、ロシア方面を中心とした地球規模のメッセージ性を備えたコンセプチュアルな内容と思いきや、「Tokyo Jam」といった日本の首都をストレートに題材にしたり、その後の「The Shelter Of Love」では尺八の音をフィーチャーするなど、なぜか日本への憧憬を露にするなど、その一貫性のなさもなかなか微笑ましく感じられます。しかしコンセプト面はともかくサウンド面に関しては80年代後半にあって、アーリー80'sなニューウェーブなシンセ音色やフレットベースの艶やかなフレーズといった時代遅れ(誉め言葉です)な音が満載で、ある種の存在感を示していたことは否めません。この作品の後Moskwa TVは空中分解してJan Veilのソロユニットになってしまいますが、本作の輝きを凌駕するまでには至りませんでした。
<Favorite Songs>
・「Moskwa Electronic」
Kraftwerkチックなシンセコーラスにピチュンッなパーカッション、そしてレイト80'sなPCMスネアが融合した重厚感溢れるテクノチューン。87年という時期にここまでのサウンドとしてのテクノポップスタイルは珍しく、ボコーダーでの歌唱などノスタルジーすら感じさせます。
・「The Art Of Fashion」
哀愁マイナーメロの直球エレポップナンバー。ストレートに積み上げられたリズムにサンプリングを散りばめて曲調は実に軽快。メタリックなシンセリフも時代を感じさせます。ラストのミニマルリズムで収束していく構成は意外性があります。
・「Brave New World」
いかにもなベースラインに乗ったこれもド直球なエレポップチューン。単調なリズムパターンですがこのロマンティックな曲調ではかえって安心感があります。間奏では派手にオケヒットやサンプリングを多用して、後半はシャウトなボイスサンプルにリズムを合わせてガンガン盛り上げていきます。
<評点>
・サウンド ★★ (大胆で剥き出し感のある音色の使い方が楽しい)
・メロディ ★ (どうしても既聴感のある旋律であることは否めず)
・リズム ★★★ (サンプラーで作られた重厚な音色でボトムを固める)
・曲構成 ★ (インタールードを効果的に配置し飽きさせない工夫)
・個性 ★ (早過ぎたのか遅過ぎたのか登場した時代に不運が)
総合評点: 6点
Moskwa TV

<members>
Alexander Henninger:all instruments
Talla 2XLC:all instruments
Ion Javelin:vocal
1.「Moskwa Electronic」 Alexander Henninger/Andreas Tomalla
2.「Remember Russia」 John Watts
3.「Interface E」 Alexander Henninger
4.「Submarine」 Axel D’Ham
5.「The Art Of Fashion」 Alexander Henninger/Jan Veil
6.「Interface F」 Alexander Henninger
7.「Lenin」 Alexander Henninger
8.「Tokyo Jam」 Axel D’Ham
9.「The Shelter Of Love」 Alexander Henninger/Jan Veil
10.「Interface G」 Alexander Henninger
11.「Utopia」 Axel D’Ham
12.「Brave New World」 Alexander Henninger/Jan Veil
<support musician>
Ken Taylor:bass
Stephan Lupp:keyboards
produced by Alexander Henninger・Westside
engineered by Alexander Henninger
● いかにもドイツらしい硬質な音づくりで音楽的な攻撃性を保ったメッセージ色の強い2ndアルバム
世界各地で電子楽器を利用したサウンドが市民権を得ていった80年代において、その分野ではCANやNEU!等のクラウトロックからKraftwerk等のテクノポップ、DAFやDER PLAN等のジャーマンニューウェーブへと連なる先進的な進化を遂げてきたドイツのエレクトリックムーブメントは抜群の個性を持ち合わせていました。今回取り上げるMoskwa TVもそんなドイツのエレポップシーンから生まれたユニットで、80年代初頭にAndreas Tomalla(Talla 2XLC)とAlexander Henningerを中心とした4人組として活動を開始、その後ヴォーカリストのIon Javelinを加えた5人組としてメジャーフィールドへ進出した彼らは、1985年のシングル「Generator 7/8」が当時のユーロビートシーンにおいて一躍注目を浴びる中、1stアルバム「Dynamics & Discipline」をリリースします。しかし程なく2名が脱退し、トリオ編成として再スタートしながらリリースされたアルバムが2ndアルバムの本作となります。
前作では含蓄ある電子音にイタロディスコ的ないなたいメロディが特徴的でしたが、本作はエレクトリックサウンドをさらに突き詰めていったかのように細部にわたり電子音の緻密な構築ぶりが窺えます。サンプラーの大幅な導入により音の1つ1つをとっても粒立ちが良くなり、歌モノはポップ性が増し、インストゥルメンタルでは大風呂敷を広げたかのような壮大な世界観をアピールしていますが、自身のバンド名の由来を元にMoskwaやRussia、Leninといったソビエト連邦関係のワードをタイトルにしていることから、ロシア方面を中心とした地球規模のメッセージ性を備えたコンセプチュアルな内容と思いきや、「Tokyo Jam」といった日本の首都をストレートに題材にしたり、その後の「The Shelter Of Love」では尺八の音をフィーチャーするなど、なぜか日本への憧憬を露にするなど、その一貫性のなさもなかなか微笑ましく感じられます。しかしコンセプト面はともかくサウンド面に関しては80年代後半にあって、アーリー80'sなニューウェーブなシンセ音色やフレットベースの艶やかなフレーズといった時代遅れ(誉め言葉です)な音が満載で、ある種の存在感を示していたことは否めません。この作品の後Moskwa TVは空中分解してJan Veilのソロユニットになってしまいますが、本作の輝きを凌駕するまでには至りませんでした。
<Favorite Songs>
・「Moskwa Electronic」
Kraftwerkチックなシンセコーラスにピチュンッなパーカッション、そしてレイト80'sなPCMスネアが融合した重厚感溢れるテクノチューン。87年という時期にここまでのサウンドとしてのテクノポップスタイルは珍しく、ボコーダーでの歌唱などノスタルジーすら感じさせます。
・「The Art Of Fashion」
哀愁マイナーメロの直球エレポップナンバー。ストレートに積み上げられたリズムにサンプリングを散りばめて曲調は実に軽快。メタリックなシンセリフも時代を感じさせます。ラストのミニマルリズムで収束していく構成は意外性があります。
・「Brave New World」
いかにもなベースラインに乗ったこれもド直球なエレポップチューン。単調なリズムパターンですがこのロマンティックな曲調ではかえって安心感があります。間奏では派手にオケヒットやサンプリングを多用して、後半はシャウトなボイスサンプルにリズムを合わせてガンガン盛り上げていきます。
<評点>
・サウンド ★★ (大胆で剥き出し感のある音色の使い方が楽しい)
・メロディ ★ (どうしても既聴感のある旋律であることは否めず)
・リズム ★★★ (サンプラーで作られた重厚な音色でボトムを固める)
・曲構成 ★ (インタールードを効果的に配置し飽きさせない工夫)
・個性 ★ (早過ぎたのか遅過ぎたのか登場した時代に不運が)
総合評点: 6点
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