「COLORS」 SAWA
「COLORS」(2008 サイクロップス)
SAWA:vocal

1.「ManyColors」 詞・曲・編:半沢武志
2.「Blue」 詞・曲・編:半沢武志
3.「Yellow」 詞・曲・編:半沢武志
4.「Pink」 詞・曲・編:半沢武志
5.「Green」 詞・曲・編:半沢武志
<support musician>
半沢武志:computer programming
sound produced by 半沢武志
engineered by 高山浩也
● 洗練されたハウス女子シンガーをFree TEMPO半沢武志が爽やかにプロデュースした五色の輝きを放つデビューミニアルバム
クラブミュージックを基本としたオシャレな楽曲をありそうでなかなかないキュートな声質で歌う女性シンガーであったSAWAがデビューしたのが2008年。その後は福富幸宏やRAM RIDER、中塚武といったその道の優れたサウンドメイカー達の楽曲を華麗にこなしながら、2010年の1stフルアルバム「Welcome to Sa-World」以降は作詞作曲も手掛けるなどシンガーソングライターへの道を歩んでいきます。Especiaへ提供した「ミッドナイトConfusion」に代表されるきらめき感倍増のキャッチーなポップ感覚が魅力の彼女ですが、デビュー作である本作はまだまだアーティストとしては駆け出しということで、キュートヴォイスのシンガーに専念して魅力的な楽曲を真摯にこなしている姿勢が感じられます。
本作をサウンドプロデュースしたのはSAWA自身もファンであったハウスミュージックユニットFreeTEMPOの主宰者である半沢武志で、ハウス特有の軽さを感じさせない丁寧で緻密な構築がなされたリズムトラックと楽曲を単調なものにしないためのコード展開の工夫などに一日の長がある彼ならではの鮮やかなメロディラインで、新人シンガーの魅力を巧みに引き立てています。4色の「色」をそのままタイトルにしてそれぞれ色のイメージを楽曲スタイルに反映するなど、さまざまなアプローチからSAWAの個性を生かそうという試みは面白いのですが、全体に共通しているのはその爽やかさ。疾走感溢れる「Blue」、ベッドルーム的なシンプルリズムが心地良い「Yellow」、コーラスとヴォーカルがばっちり融合した「Pink」、他の楽曲とは異色のド直球ボサノヴァ「Green」、そしてメインテーマでもある泣きの名曲「ManyColors」がまとめる中で、メロディの訴求力とSAWAの個性を反映したふんわり感覚は、どれをとっても癒しのある爽快感を醸し出しています。オシャレ過ぎてさらっと流されがちな楽曲群ですが、シンガーの個性を生かした丁寧なプロデュースには好感を持てる作品であり、現在のサウンドクリエイターとしても自立した感のある彼女にも多大な影響を与えているのではないかと推測される作品です。
<Favorite Songs>
・「ManyColors」
キレのあるリズムと叙情的なコードワークで聴き手を魅了するメインテーマソング。ねちっこいリフも良いのですが、全体的に白玉の音色の爽快感が独特で、メロディもしっかり泣きを忘れないという、非常に完成度の高い楽曲です。
・「Pink」
美しいメロディラインが印象的なメジャー感たっぷりのポップチューン。ヴォーカルもしっかり前に出て来て声質も魅力的、コーラスとも絶妙に混ざり合って持ち前の爽やかさに拍車をかけています。スプラッシュサウンドの過剰さもインパクトあります。
<評点>
・サウンド ★★ (必要最小限の中でもメリハリの効いた音づくり)
・メロディ ★★★ (懐かしさと爽やかさを同居させた鮮やかな旋律)
・リズム ★★ (丁寧に構築されてはいるが派手さはなく堅実な仕事)
・曲構成 ★ (まずは小手始め的な楽曲も多いがレベルは高い)
・個性 ★ (本人の音楽的な色はまだまだ出し切っていない感あり)
総合評点: 7点
SAWA:vocal

1.「ManyColors」 詞・曲・編:半沢武志
2.「Blue」 詞・曲・編:半沢武志
3.「Yellow」 詞・曲・編:半沢武志
4.「Pink」 詞・曲・編:半沢武志
5.「Green」 詞・曲・編:半沢武志
<support musician>
半沢武志:computer programming
sound produced by 半沢武志
engineered by 高山浩也
● 洗練されたハウス女子シンガーをFree TEMPO半沢武志が爽やかにプロデュースした五色の輝きを放つデビューミニアルバム
クラブミュージックを基本としたオシャレな楽曲をありそうでなかなかないキュートな声質で歌う女性シンガーであったSAWAがデビューしたのが2008年。その後は福富幸宏やRAM RIDER、中塚武といったその道の優れたサウンドメイカー達の楽曲を華麗にこなしながら、2010年の1stフルアルバム「Welcome to Sa-World」以降は作詞作曲も手掛けるなどシンガーソングライターへの道を歩んでいきます。Especiaへ提供した「ミッドナイトConfusion」に代表されるきらめき感倍増のキャッチーなポップ感覚が魅力の彼女ですが、デビュー作である本作はまだまだアーティストとしては駆け出しということで、キュートヴォイスのシンガーに専念して魅力的な楽曲を真摯にこなしている姿勢が感じられます。
本作をサウンドプロデュースしたのはSAWA自身もファンであったハウスミュージックユニットFreeTEMPOの主宰者である半沢武志で、ハウス特有の軽さを感じさせない丁寧で緻密な構築がなされたリズムトラックと楽曲を単調なものにしないためのコード展開の工夫などに一日の長がある彼ならではの鮮やかなメロディラインで、新人シンガーの魅力を巧みに引き立てています。4色の「色」をそのままタイトルにしてそれぞれ色のイメージを楽曲スタイルに反映するなど、さまざまなアプローチからSAWAの個性を生かそうという試みは面白いのですが、全体に共通しているのはその爽やかさ。疾走感溢れる「Blue」、ベッドルーム的なシンプルリズムが心地良い「Yellow」、コーラスとヴォーカルがばっちり融合した「Pink」、他の楽曲とは異色のド直球ボサノヴァ「Green」、そしてメインテーマでもある泣きの名曲「ManyColors」がまとめる中で、メロディの訴求力とSAWAの個性を反映したふんわり感覚は、どれをとっても癒しのある爽快感を醸し出しています。オシャレ過ぎてさらっと流されがちな楽曲群ですが、シンガーの個性を生かした丁寧なプロデュースには好感を持てる作品であり、現在のサウンドクリエイターとしても自立した感のある彼女にも多大な影響を与えているのではないかと推測される作品です。
<Favorite Songs>
・「ManyColors」
キレのあるリズムと叙情的なコードワークで聴き手を魅了するメインテーマソング。ねちっこいリフも良いのですが、全体的に白玉の音色の爽快感が独特で、メロディもしっかり泣きを忘れないという、非常に完成度の高い楽曲です。
・「Pink」
美しいメロディラインが印象的なメジャー感たっぷりのポップチューン。ヴォーカルもしっかり前に出て来て声質も魅力的、コーラスとも絶妙に混ざり合って持ち前の爽やかさに拍車をかけています。スプラッシュサウンドの過剰さもインパクトあります。
<評点>
・サウンド ★★ (必要最小限の中でもメリハリの効いた音づくり)
・メロディ ★★★ (懐かしさと爽やかさを同居させた鮮やかな旋律)
・リズム ★★ (丁寧に構築されてはいるが派手さはなく堅実な仕事)
・曲構成 ★ (まずは小手始め的な楽曲も多いがレベルは高い)
・個性 ★ (本人の音楽的な色はまだまだ出し切っていない感あり)
総合評点: 7点
「PREMIER」 畠田理恵
「PREMIER」(1987 ワーナーパイオニア)
畠田理恵:vocal

1.「いっそあなたに」 詞:来生えつこ 曲:来生たかお 編:萩田光雄
2.「渚のスカウト」 詞:田口俊 曲・編:津垣博通
3.「七夕の夜に」 詞:麻生圭子 曲:佐藤健 編:中村哲
4.「夜明けの月に悲しみを」 詞:田口俊 曲:KEN SHIMA 編:中村哲
5.「プラス・マイナス・ゼロ」 詞:許瑛子 曲:安藤まさひろ 編:椎名和夫
6.「SATISFACTION」 詞:小林和子 曲:和泉常寛 編:椎名和夫
7.「ここだけの話〜オフレコ〜」 詞:麻生圭子 曲:山本達彦 編:中村哲
8.「季節にブレイク」 詞:来生えつこ 曲:来生たかお 編:萩田光雄
9.「反レトロ」 詞:麻生圭子 曲:佐藤健 編:中村哲
10.「マグネティックトワイライト」 詞:森田由美 曲:安藤まさひろ 編:椎名和夫
● 背伸びしたマイナー歌謡路線に80’s特有の音の壁を装った渋い仕上がりの清純派アイドルデビューアルバム
お人形さんみたいなルックスでモモコクラブの中でもデビューが渇望されていた畠田理恵がデビューしたのが1987年。メルヘンティックなルックスとは裏腹に中森明菜系マイナー路線な曲調を、シティポップの貴公子と呼ばれた山本達彦が手掛けた1stシングル「ここだけの話〜オフレコ〜」は、エレガントなストリングスとズシッとくるPCMドラムマシンの響きのコントラストが美しい名曲で、まさに人形としての矜持を全うするかのごとく淡々と歌い切っていたわけですが、ほどなく初のアルバムである本作がリリースされ、そのフランス語が冠された上品なタイトルからも想像できるような少し背伸びした大人らしい陰のあるマイナーチューンてんこもりの作品は、彼女のその後の歌手人生を良くも悪くも左右してしまったと言えるかもしれません(結果的に女優としても一時期成功し、一世一代の天才棋士と結婚できたのだから幸運といえば幸運なのですが)。
まず1曲目の「いっそあなたに」から来生たかお楽曲の渋いマイナー歌謡で、スタートからアイドルのデビュー盤とすれば地味な印象を抱かれがちですが、そこはレイト80'sということもありきらびやかなデジタルシンセが全面的にまぶされており、中村哲や萩田光雄、椎名和夫といった手練の編曲陣の堅実な仕事ぶりもあって、サウンド面では80'sマナーを外さない時代の音を楽しむことができます。むしろ本作のポイントはハートカクテルのサントラ等で当時人気を博していたピアニスト島健やT-SQUAREのリーダー安藤まさひろといったジャズ・フュージョン畑の余りアイドルソングには起用されることのないプレイヤーを作曲に迎えた点で、このあたりにも同時期にデビューした他のアイドルとは一線を画したい意図が見え隠れしています。通常最初に配置しがちな「プラス・マイナス・ゼロ」「SATISFACTION」といった比較的ハードめの楽曲を、中盤に集中させるやや珍しい収録楽曲の構成を施すなど、実は結構地味にセオリーから外した作りとなっていますし、スタートこそ地味で勘違いされやすいのですが、アップテンポな楽曲はなかなかのバキバキなエレクトリック歌謡なので、80's特有の派手な音を求めている方にも収穫があるのではないかと思います。とはいえ緩急ははっきりしているので好き嫌いははっきりすると言えなくもないわけですが。
<Favorite Songs>
・「SATISFACTION」
強烈なシンセブラスとジャストなリズムパターンのノリも鮮やかな本作随一のハードナンバー。前述のように派手に動き回るブラスフレーズが最大の特徴で、間奏ではサックスソロを導入しマイナーど真ん中のクール路線に拍車をかけています。
・「ここだけの話〜オフレコ〜」
山本達彦作曲の記念すべきデビューシングル。美しいストリングスに耳を奪われがちですが、本作で最も興味深いのは2拍目4拍目のスネアのゲートの長さで、Low-bitなエフェクトが施されたこのスネアサウンドが実に素晴らしい。ラストのストリングスからギターフレーズへの流れも秀逸です。
・「反レトロ」
タイトルからしていかにも不良路線まっしぐらなデジタルハードマイナー歌謡。いかにも「少女A」期の中森明菜路線の楽曲で、雰囲気抜群の白玉パッドと派手なロック系カッティングギター、サビではスラップも交えてガンガン攻めてきます。オケヒットで終わるという大胆さも激しくて良いです。
<評点>
・サウンド ★★ (80'sなきらびやかさと豪快さを併せ持つ堅実な仕事)
・メロディ ★ (コンセプトを意識し過ぎてどうしても地味な印象に)
・リズム ★★★ (打ち込みのリズムのキレと音色がなかなか良い)
・曲構成 ★ (前半は地味な曲が続くだけに乗り切れなさも漂う)
・個性 ★ (方向性の選択は面白いが時勢を読み切れなかったか)
総合評点: 6点
畠田理恵:vocal

1.「いっそあなたに」 詞:来生えつこ 曲:来生たかお 編:萩田光雄
2.「渚のスカウト」 詞:田口俊 曲・編:津垣博通
3.「七夕の夜に」 詞:麻生圭子 曲:佐藤健 編:中村哲
4.「夜明けの月に悲しみを」 詞:田口俊 曲:KEN SHIMA 編:中村哲
5.「プラス・マイナス・ゼロ」 詞:許瑛子 曲:安藤まさひろ 編:椎名和夫
6.「SATISFACTION」 詞:小林和子 曲:和泉常寛 編:椎名和夫
7.「ここだけの話〜オフレコ〜」 詞:麻生圭子 曲:山本達彦 編:中村哲
8.「季節にブレイク」 詞:来生えつこ 曲:来生たかお 編:萩田光雄
9.「反レトロ」 詞:麻生圭子 曲:佐藤健 編:中村哲
10.「マグネティックトワイライト」 詞:森田由美 曲:安藤まさひろ 編:椎名和夫
● 背伸びしたマイナー歌謡路線に80’s特有の音の壁を装った渋い仕上がりの清純派アイドルデビューアルバム
お人形さんみたいなルックスでモモコクラブの中でもデビューが渇望されていた畠田理恵がデビューしたのが1987年。メルヘンティックなルックスとは裏腹に中森明菜系マイナー路線な曲調を、シティポップの貴公子と呼ばれた山本達彦が手掛けた1stシングル「ここだけの話〜オフレコ〜」は、エレガントなストリングスとズシッとくるPCMドラムマシンの響きのコントラストが美しい名曲で、まさに人形としての矜持を全うするかのごとく淡々と歌い切っていたわけですが、ほどなく初のアルバムである本作がリリースされ、そのフランス語が冠された上品なタイトルからも想像できるような少し背伸びした大人らしい陰のあるマイナーチューンてんこもりの作品は、彼女のその後の歌手人生を良くも悪くも左右してしまったと言えるかもしれません(結果的に女優としても一時期成功し、一世一代の天才棋士と結婚できたのだから幸運といえば幸運なのですが)。
まず1曲目の「いっそあなたに」から来生たかお楽曲の渋いマイナー歌謡で、スタートからアイドルのデビュー盤とすれば地味な印象を抱かれがちですが、そこはレイト80'sということもありきらびやかなデジタルシンセが全面的にまぶされており、中村哲や萩田光雄、椎名和夫といった手練の編曲陣の堅実な仕事ぶりもあって、サウンド面では80'sマナーを外さない時代の音を楽しむことができます。むしろ本作のポイントはハートカクテルのサントラ等で当時人気を博していたピアニスト島健やT-SQUAREのリーダー安藤まさひろといったジャズ・フュージョン畑の余りアイドルソングには起用されることのないプレイヤーを作曲に迎えた点で、このあたりにも同時期にデビューした他のアイドルとは一線を画したい意図が見え隠れしています。通常最初に配置しがちな「プラス・マイナス・ゼロ」「SATISFACTION」といった比較的ハードめの楽曲を、中盤に集中させるやや珍しい収録楽曲の構成を施すなど、実は結構地味にセオリーから外した作りとなっていますし、スタートこそ地味で勘違いされやすいのですが、アップテンポな楽曲はなかなかのバキバキなエレクトリック歌謡なので、80's特有の派手な音を求めている方にも収穫があるのではないかと思います。とはいえ緩急ははっきりしているので好き嫌いははっきりすると言えなくもないわけですが。
<Favorite Songs>
・「SATISFACTION」
強烈なシンセブラスとジャストなリズムパターンのノリも鮮やかな本作随一のハードナンバー。前述のように派手に動き回るブラスフレーズが最大の特徴で、間奏ではサックスソロを導入しマイナーど真ん中のクール路線に拍車をかけています。
・「ここだけの話〜オフレコ〜」
山本達彦作曲の記念すべきデビューシングル。美しいストリングスに耳を奪われがちですが、本作で最も興味深いのは2拍目4拍目のスネアのゲートの長さで、Low-bitなエフェクトが施されたこのスネアサウンドが実に素晴らしい。ラストのストリングスからギターフレーズへの流れも秀逸です。
・「反レトロ」
タイトルからしていかにも不良路線まっしぐらなデジタルハードマイナー歌謡。いかにも「少女A」期の中森明菜路線の楽曲で、雰囲気抜群の白玉パッドと派手なロック系カッティングギター、サビではスラップも交えてガンガン攻めてきます。オケヒットで終わるという大胆さも激しくて良いです。
<評点>
・サウンド ★★ (80'sなきらびやかさと豪快さを併せ持つ堅実な仕事)
・メロディ ★ (コンセプトを意識し過ぎてどうしても地味な印象に)
・リズム ★★★ (打ち込みのリズムのキレと音色がなかなか良い)
・曲構成 ★ (前半は地味な曲が続くだけに乗り切れなさも漂う)
・個性 ★ (方向性の選択は面白いが時勢を読み切れなかったか)
総合評点: 6点
「SHOUT」 柴田恭兵
「SHOUT」(1987 フォーライフ)
柴田恭兵:vocal

1.「SHAKE YOU TO BITS」 詞:園部和範 曲:タケカワユキヒデ 編:瀬尾一三
2.「WAR」 詞:さがらよしあき 曲:深町栄 編:松本健
3.「BLACKJACK DANDY」 詞:安藤芳彦 曲:深町栄 編:瀬尾一三
4.「EDGE OF NIGHT」 詞:柳川英巳 曲:羽田一郎 編:瀬尾一三
5.「MISS YOU」 詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:瀬尾一三
6.「FUGITIVE」 詞:谷穂ちろる 曲:羽田一郎 編:瀬尾一三
7.「BABY LOVE」 詞:庄司明弘 曲:羽場仁志 編:瀬尾一三
8.「ALL OR NOTHING」 詞:さがらよしあき 曲:深町栄 編:瀬尾一三
9.「DON’T WORRY」 詞:園部和範 曲:タケカワユキヒデ 編:瀬尾一三
10.「RUNNING SHOT」 詞:吉松隆・門間裕 曲・編:吉松隆
<support musician>
大村憲司:electric guitar
今 剛:electric guitar
鈴木茂:electric guitar
土方隆行:electric guitar
松原正樹:electric guitar
笛吹利明:acoustic guitar
松原秀樹:electric bass
美久月千晴:electric bass
青山純:drums
長谷部徹:drums
国吉良一:keyboards
富樫春生:keyboards
浜口茂外也:percussions
兼崎順一:trumpet
西沢健二:trombone
向井滋春:trombone
中村哲:sax
古村敏比古:sax
友田グループ:strings
EVE:chorus
香川喜章:chorus
浜田良美:chorus
浦田恵司:synthesizer programming
瀬尾一三:synthesizer programming
● 男のダンディズムを見事に開放!刑事役で人気を博したニヒルな俳優がヒット曲を引っさげて発表した1stアルバム
ミュージカル劇団「東京キッドブラザーズ」に入団し舞台俳優を志していた柴田恭兵は70年代後半から主に刑事役が人気を博しテレビに進出、俳優としての基盤を着々と固めつつありました。それに並行して片手間といっては語弊がありますが歌手としても79年にデビューしており、81年のシングル「なんとなく、クリスタル」では田中康夫作詞、近田春夫作曲という話題性もあってなんとなくヒットし、しばらく彼の代表曲となっていました。しかし彼の最大の大ヒットは86年に俳優としての最高の当たり役と同時にやってまいります。ドラマ「あぶない刑事」のコミカルダンディなユージ役は大人気となり一躍本格的にスターダムにのし上がりましたが、挿入歌であった久しぶりのシングル「ランニング・ショット」もスマッシュヒットとなり、86年は彼の俳優としての成功を決定づける年になったのでした。そしてその勢いを駆り遂に彼の1stアルバムがリリースされることになります。それが今回取り上げる本作です。
どうしてもクラシックの殻を被ったプログレ魔神吉松隆が手掛けた稀代の名曲「RUNNING SHOT」に目がいってしまう本作ですが、本作のほとんどの編曲は、中島みゆきや長渕剛、チャゲ&飛鳥など濃い目の大御所からの信頼が厚い瀬尾一三が手掛けています。フォーク界出身の彼も80年代後半は尖ったシンセサウンドを引き出しの1つとしていましたが、本作でも彼の派手目なサウンドメイクを楽しむことができます。「あぶない刑事」のユージ役をイメージされて制作されたアルバムらしく、激しいアクションとメロウなダンディズムが交差し合う世界観が形づくられていますが、そこはやはり80年代後期の作品ということで、声質の弱い柴田のダンディなヴォーカルが聴こえにくくなるくらいこれでもかと目立つスネアを始めとしたサウンドの音圧で聴き手を圧倒します。バブリーな時代だからこその勢いとパワーはドラムだけでなく「WAR」「FUGITIVE」等でのEVEの下世話コーラスの大活躍ぶりにも感じられ(コーラスの壁から柴田が見え隠れする)、その傾向は満を持してラストを飾る「RUNNING SHOT」におけるコーラスと主役を逆転する斬新なサビに帰結します。それでいて本作が柴田恭兵のキャラクター性を失わないということは、よほどサウンドメイカーが柴田(ユージ?)のキャラを理解しているからこそであり、本作の完成度の高さは作詞・作曲・編曲他制作陣全員のバックアップあってのこそであると思われます。まさに当時最も輝いていた柴田にとって眩しかった時代であったと言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「SHAKE YOU TO BITS」
大胆にもオケヒット連発のリフで華やかに幕を開けるビバップスタイルのオープニングナンバー。ジャジーな構成なのに暴れ回るオケヒットのおかげで物凄くマシナリー。そして派手なサウンドに完全に押され気味な柴田のヴォーカルはご愛嬌。
・「WAR」
パワフルなリズムに乗ったロックテイストで攻めるドラマの挿入歌にもなったシングルカット曲。ゴージャスなブラスセクションとバブリーな女性コーラスで彩ったサウンドに、サビ前の「ふざけるなぁ」のブレイクで脱力するのがこの楽曲の楽しみ方と言えるでしょう。
・「RUNNING SHOT」
もはや何も言うことはない80's歌謡史に残る大名曲。各パートそれぞれがテクニックと冒険心に満ちており、フリーダムなギター&ベースやゲートリバーブで四つ打ちを刻むバスドラがバックを支え、サビではEVEのコーラスと柴田のフェイクにディレイがかまされて幻想的な世界を創出、こんな派手で前衛性に満ちたサウンドなのにダンディズムを貫く柴田恭兵というキャラクターが最も表出された楽曲です。これをラストに持ってくるところもニクいです。
<評点>
・サウンド ★★ (各パートにおいて分離が良く鋭さを感じる潔さ)
・メロディ ★★ (アクション度の高い羽田一郎曲が良い仕事ぶり)
・リズム ★★★ (パワフルなリズム隊が楽曲そのものを飽きさせない)
・曲構成 ★★ (緩急もつく良い構成だが分厚い楽曲群に食傷気味も)
・個性 ★★ (大ヒットのあの曲に負けず柴田の世界観も理解)
総合評点: 7点
柴田恭兵:vocal

1.「SHAKE YOU TO BITS」 詞:園部和範 曲:タケカワユキヒデ 編:瀬尾一三
2.「WAR」 詞:さがらよしあき 曲:深町栄 編:松本健
3.「BLACKJACK DANDY」 詞:安藤芳彦 曲:深町栄 編:瀬尾一三
4.「EDGE OF NIGHT」 詞:柳川英巳 曲:羽田一郎 編:瀬尾一三
5.「MISS YOU」 詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 編:瀬尾一三
6.「FUGITIVE」 詞:谷穂ちろる 曲:羽田一郎 編:瀬尾一三
7.「BABY LOVE」 詞:庄司明弘 曲:羽場仁志 編:瀬尾一三
8.「ALL OR NOTHING」 詞:さがらよしあき 曲:深町栄 編:瀬尾一三
9.「DON’T WORRY」 詞:園部和範 曲:タケカワユキヒデ 編:瀬尾一三
10.「RUNNING SHOT」 詞:吉松隆・門間裕 曲・編:吉松隆
<support musician>
大村憲司:electric guitar
今 剛:electric guitar
鈴木茂:electric guitar
土方隆行:electric guitar
松原正樹:electric guitar
笛吹利明:acoustic guitar
松原秀樹:electric bass
美久月千晴:electric bass
青山純:drums
長谷部徹:drums
国吉良一:keyboards
富樫春生:keyboards
浜口茂外也:percussions
兼崎順一:trumpet
西沢健二:trombone
向井滋春:trombone
中村哲:sax
古村敏比古:sax
友田グループ:strings
EVE:chorus
香川喜章:chorus
浜田良美:chorus
浦田恵司:synthesizer programming
瀬尾一三:synthesizer programming
● 男のダンディズムを見事に開放!刑事役で人気を博したニヒルな俳優がヒット曲を引っさげて発表した1stアルバム
ミュージカル劇団「東京キッドブラザーズ」に入団し舞台俳優を志していた柴田恭兵は70年代後半から主に刑事役が人気を博しテレビに進出、俳優としての基盤を着々と固めつつありました。それに並行して片手間といっては語弊がありますが歌手としても79年にデビューしており、81年のシングル「なんとなく、クリスタル」では田中康夫作詞、近田春夫作曲という話題性もあってなんとなくヒットし、しばらく彼の代表曲となっていました。しかし彼の最大の大ヒットは86年に俳優としての最高の当たり役と同時にやってまいります。ドラマ「あぶない刑事」のコミカルダンディなユージ役は大人気となり一躍本格的にスターダムにのし上がりましたが、挿入歌であった久しぶりのシングル「ランニング・ショット」もスマッシュヒットとなり、86年は彼の俳優としての成功を決定づける年になったのでした。そしてその勢いを駆り遂に彼の1stアルバムがリリースされることになります。それが今回取り上げる本作です。
どうしてもクラシックの殻を被ったプログレ魔神吉松隆が手掛けた稀代の名曲「RUNNING SHOT」に目がいってしまう本作ですが、本作のほとんどの編曲は、中島みゆきや長渕剛、チャゲ&飛鳥など濃い目の大御所からの信頼が厚い瀬尾一三が手掛けています。フォーク界出身の彼も80年代後半は尖ったシンセサウンドを引き出しの1つとしていましたが、本作でも彼の派手目なサウンドメイクを楽しむことができます。「あぶない刑事」のユージ役をイメージされて制作されたアルバムらしく、激しいアクションとメロウなダンディズムが交差し合う世界観が形づくられていますが、そこはやはり80年代後期の作品ということで、声質の弱い柴田のダンディなヴォーカルが聴こえにくくなるくらいこれでもかと目立つスネアを始めとしたサウンドの音圧で聴き手を圧倒します。バブリーな時代だからこその勢いとパワーはドラムだけでなく「WAR」「FUGITIVE」等でのEVEの下世話コーラスの大活躍ぶりにも感じられ(コーラスの壁から柴田が見え隠れする)、その傾向は満を持してラストを飾る「RUNNING SHOT」におけるコーラスと主役を逆転する斬新なサビに帰結します。それでいて本作が柴田恭兵のキャラクター性を失わないということは、よほどサウンドメイカーが柴田(ユージ?)のキャラを理解しているからこそであり、本作の完成度の高さは作詞・作曲・編曲他制作陣全員のバックアップあってのこそであると思われます。まさに当時最も輝いていた柴田にとって眩しかった時代であったと言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「SHAKE YOU TO BITS」
大胆にもオケヒット連発のリフで華やかに幕を開けるビバップスタイルのオープニングナンバー。ジャジーな構成なのに暴れ回るオケヒットのおかげで物凄くマシナリー。そして派手なサウンドに完全に押され気味な柴田のヴォーカルはご愛嬌。
・「WAR」
パワフルなリズムに乗ったロックテイストで攻めるドラマの挿入歌にもなったシングルカット曲。ゴージャスなブラスセクションとバブリーな女性コーラスで彩ったサウンドに、サビ前の「ふざけるなぁ」のブレイクで脱力するのがこの楽曲の楽しみ方と言えるでしょう。
・「RUNNING SHOT」
もはや何も言うことはない80's歌謡史に残る大名曲。各パートそれぞれがテクニックと冒険心に満ちており、フリーダムなギター&ベースやゲートリバーブで四つ打ちを刻むバスドラがバックを支え、サビではEVEのコーラスと柴田のフェイクにディレイがかまされて幻想的な世界を創出、こんな派手で前衛性に満ちたサウンドなのにダンディズムを貫く柴田恭兵というキャラクターが最も表出された楽曲です。これをラストに持ってくるところもニクいです。
<評点>
・サウンド ★★ (各パートにおいて分離が良く鋭さを感じる潔さ)
・メロディ ★★ (アクション度の高い羽田一郎曲が良い仕事ぶり)
・リズム ★★★ (パワフルなリズム隊が楽曲そのものを飽きさせない)
・曲構成 ★★ (緩急もつく良い構成だが分厚い楽曲群に食傷気味も)
・個性 ★★ (大ヒットのあの曲に負けず柴田の世界観も理解)
総合評点: 7点
「Prog-Roid」 School Food Punishment
「Prog-Roid」(2011 エピック)
School Food Punishment

<members>
内村友美:vocals
蓮尾理之:synthesizer
山崎英明:bass
比田井修:drums
1.「free quiet」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
2.「RPG」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
3.「in bloom」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
4.「ウツロウ、サンガツ」
詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
5.「≠」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
6.「are」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
7.「Ura Omote」
詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
8.「ハレーション」
詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
9.「flashback trip syndrome」
詞:内村友美 曲:school food punishment 編:江口亮・岸利至
10.「光」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
11.「Y/N」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
<support musician>
江口亮:all instruments
三井律郎:guitar
セクシーパスタ林三:violin
柳瀬貴俊:violin
松本恭輔:viola
小池功一:cello
sound produced by 江口亮
engineered by 奥田裕亮
● 洗練されたサウンドメイクは残しながらポップソングへの追求にシフトした当代きってのハイセンスバンドのメジャー2ndアルバム
2009年のメジャーデビュー以来疾走感のあるリズムワークとノイジーなシンセを多用した斬新なサウンドメイクで確かな個性を放っていたschool food punishmentは、タイアップ曲を多数収録した1stアルバム「amp-reflection」の成功によって一躍気鋭のロックバンドとしてその名を知られることになりました。しかし彼らはその上昇気流に安易に乗せられることはなく、方向性再確認のための冷却期間を置いた後、2011年には「2ndフェイズ」と銘打ってバンド名を大文字を絡ませた「School Food Punishment」に変更し、2ndアルバムの本作をリリースします。彼らの新境地を見せてくれるという本作ということで、ある意味リスナーとしても期待と不安に満ちた作品であったと言えるでしょう。
そんなバンドとしての先へ進もうとした本作ですが、変化のありようは楽曲にしっかりと表れています。まずはヒリヒリとしていて棘のあるサウンドを身にまとっていた初期からメジャー1stアルバムと比べると、楽曲は比較的柔らかく丸みを帯びた印象となり、スピード感のあふれていたBPMもミディアムベースに転換してきているのがわかります。しかしこのあえて遅くしたBPMも彼らのサウンドの要でもある個性的なノイジーシンセフレーズ、そして美しい白玉シンセをより生かすことに成功しており、音数が比較的少ない中で蓮尾理之の奏でる電子音がより深く堪能できることは、本作の最大の魅力と言えるでしょう。また、バンドを支える生演奏部分、とりわけピアノやギターの独特なフレーズとベースやドラムといったリズム隊の堅実さの中で冒険心も感じさせる意欲的な構築ぶりには相変わらず驚かされると共に、ほぼ全曲にわたってサウンド面に関わっている江口亮の絶妙なエッセンスの注入が非常に効いていて、プロデューサーという立場ながらもはや第5のメンバーという存在になっていると思います。このようにそれまでの鋭利なセンスを研ぎ澄ました00年型ロックバンドから、ポップネスを兼ね備えたアヴァンギャルド電子ポップグループへと進化を遂げた彼らでしたが、本作のような完成度で作品を作ってしまうとやり終えた感が強くなってしまったのか、翌2012年にシングル1枚を残しバンドは解散に至ってしまいました。期待されていただけに、メジャー進出後2枚のアルバムでグループの使命が終わってしまったのはやはり残念です。
<Favorite Songs>
・「RPG」
余り使われないタイプのシンセ音色によるフレーズと生々しいピアノやギター、ストリングスが掛け合わされた意欲的なサウンドを聴かせるシングルタイアップ楽曲。ほどよい音数の少なさが独特のノリを作り出しています。後半の複雑なリズム構築はさすが彼らならではの味です。
・「are」
四つ打ちの打ち込みサウンドに挑戦した意欲的な楽曲。蓮尾シンセがこれでもかと楽しめますが、リズムにしてもシンセにしても全てに電子ノイズを忘れないストイックさは微笑ましいほどです。しかも楽曲自体はオシャレPOPSを出ない絶妙なキャッチー性という優れモノの楽曲です。
・「Ura Omote」
「are」に引き続きシンセサウンド中心のエレクトリックPOPS。雰囲気たっぷりのシンセパッド音色が美しいです。シンセソロにエフェクトギミックたっぷりの間奏部分に続く、ジャズテイストを含んだサビを持ってくる仕掛けも面白いし、ラストのアルペジオでの締め方も巧いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (各々のフレーズの応酬に効果的過ぎるシンセが光る)
・メロディ ★★ (前作よりも聴かせるメロディも多くなり成長を感じる)
・リズム ★★★ (派手さはないものの複雑なパターンをなんなくこなす)
・曲構成 ★★★ (楽曲の幅も広がるも45分に収まる理想的な収録時間)
・個性 ★★ (ポップ性とギミックが巧みに絡む技巧派だっただけに)
総合評点: 7点
School Food Punishment

<members>
内村友美:vocals
蓮尾理之:synthesizer
山崎英明:bass
比田井修:drums
1.「free quiet」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
2.「RPG」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
3.「in bloom」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
4.「ウツロウ、サンガツ」
詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
5.「≠」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
6.「are」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
7.「Ura Omote」
詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
8.「ハレーション」
詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
9.「flashback trip syndrome」
詞:内村友美 曲:school food punishment 編:江口亮・岸利至
10.「光」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
11.「Y/N」 詞:内村友美・江口亮 曲:school food punishment・江口亮 編:江口亮
<support musician>
江口亮:all instruments
三井律郎:guitar
セクシーパスタ林三:violin
柳瀬貴俊:violin
松本恭輔:viola
小池功一:cello
sound produced by 江口亮
engineered by 奥田裕亮
● 洗練されたサウンドメイクは残しながらポップソングへの追求にシフトした当代きってのハイセンスバンドのメジャー2ndアルバム
2009年のメジャーデビュー以来疾走感のあるリズムワークとノイジーなシンセを多用した斬新なサウンドメイクで確かな個性を放っていたschool food punishmentは、タイアップ曲を多数収録した1stアルバム「amp-reflection」の成功によって一躍気鋭のロックバンドとしてその名を知られることになりました。しかし彼らはその上昇気流に安易に乗せられることはなく、方向性再確認のための冷却期間を置いた後、2011年には「2ndフェイズ」と銘打ってバンド名を大文字を絡ませた「School Food Punishment」に変更し、2ndアルバムの本作をリリースします。彼らの新境地を見せてくれるという本作ということで、ある意味リスナーとしても期待と不安に満ちた作品であったと言えるでしょう。
そんなバンドとしての先へ進もうとした本作ですが、変化のありようは楽曲にしっかりと表れています。まずはヒリヒリとしていて棘のあるサウンドを身にまとっていた初期からメジャー1stアルバムと比べると、楽曲は比較的柔らかく丸みを帯びた印象となり、スピード感のあふれていたBPMもミディアムベースに転換してきているのがわかります。しかしこのあえて遅くしたBPMも彼らのサウンドの要でもある個性的なノイジーシンセフレーズ、そして美しい白玉シンセをより生かすことに成功しており、音数が比較的少ない中で蓮尾理之の奏でる電子音がより深く堪能できることは、本作の最大の魅力と言えるでしょう。また、バンドを支える生演奏部分、とりわけピアノやギターの独特なフレーズとベースやドラムといったリズム隊の堅実さの中で冒険心も感じさせる意欲的な構築ぶりには相変わらず驚かされると共に、ほぼ全曲にわたってサウンド面に関わっている江口亮の絶妙なエッセンスの注入が非常に効いていて、プロデューサーという立場ながらもはや第5のメンバーという存在になっていると思います。このようにそれまでの鋭利なセンスを研ぎ澄ました00年型ロックバンドから、ポップネスを兼ね備えたアヴァンギャルド電子ポップグループへと進化を遂げた彼らでしたが、本作のような完成度で作品を作ってしまうとやり終えた感が強くなってしまったのか、翌2012年にシングル1枚を残しバンドは解散に至ってしまいました。期待されていただけに、メジャー進出後2枚のアルバムでグループの使命が終わってしまったのはやはり残念です。
<Favorite Songs>
・「RPG」
余り使われないタイプのシンセ音色によるフレーズと生々しいピアノやギター、ストリングスが掛け合わされた意欲的なサウンドを聴かせるシングルタイアップ楽曲。ほどよい音数の少なさが独特のノリを作り出しています。後半の複雑なリズム構築はさすが彼らならではの味です。
・「are」
四つ打ちの打ち込みサウンドに挑戦した意欲的な楽曲。蓮尾シンセがこれでもかと楽しめますが、リズムにしてもシンセにしても全てに電子ノイズを忘れないストイックさは微笑ましいほどです。しかも楽曲自体はオシャレPOPSを出ない絶妙なキャッチー性という優れモノの楽曲です。
・「Ura Omote」
「are」に引き続きシンセサウンド中心のエレクトリックPOPS。雰囲気たっぷりのシンセパッド音色が美しいです。シンセソロにエフェクトギミックたっぷりの間奏部分に続く、ジャズテイストを含んだサビを持ってくる仕掛けも面白いし、ラストのアルペジオでの締め方も巧いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (各々のフレーズの応酬に効果的過ぎるシンセが光る)
・メロディ ★★ (前作よりも聴かせるメロディも多くなり成長を感じる)
・リズム ★★★ (派手さはないものの複雑なパターンをなんなくこなす)
・曲構成 ★★★ (楽曲の幅も広がるも45分に収まる理想的な収録時間)
・個性 ★★ (ポップ性とギミックが巧みに絡む技巧派だっただけに)
総合評点: 7点
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