「MEMORY THEATRE」 高橋鮎生
「MEMORY THEATRE」(1985 ミディ)
高橋鮎生:vocals・guitar・bass・keyboards・piano・woodstock chime

1.「City In The Sky」 詞・曲・編:高橋鮎生
2.「夏の終わりに」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
3.「光の中へ」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
4.「月の庭」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
5.「水色の鏡」 曲・編:高橋鮎生
6.「不思議な夜」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
7.「ながれる」 詞:如月小春 曲:高橋鮎生・如月小春・近藤達郎 編:高橋鮎生
8.「こもりうた」 詞:George Buchner 曲:Alban Berg 編:高橋鮎生
9.「讃歌」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
10.「ことばのあいだに」 詞・曲・編:高橋鮎生
<support musician>
EPO:vocal・voice
西村卓也:bass
鈴木さえ子:drums
近藤達郎:keyboards
坂本龍一:piano
竹田賢一:大正琴
小山景子:background vocals
大貫妙子:voice
如月小春:voice・percussion
遠山淳:synthesizer programming
produced by 高橋鮎生
engineered by 野村昌之・河野英之・森本信・滝瀬茂
● 古楽から現代音楽にまで通じるプログレッシブなマルチアーティストが如月小春とのコラボにより作り上げた牧歌的でドリーミーな作品
世界的なピアニストである高橋悠治を父に持つ高橋鮎生は、さまざまな種類の楽器を演奏できるマルチアーティストです。欧米で育ち60〜70年代のサイケ・プログレ全盛時代のロックシーンに影響を受けてきた彼は、まだ10代であった70年代後半には早くもミュージシャンとして活動を開始、84年にアルバム「CARMINA」でデビューした後、YMO散開後に坂本龍一らが新たに設立したMIDIレコードに参画し、同84年に2ndアルバム「Silent Film」をリリースします。POPSとクラシックの融合を図った海外録音のこの作品は、ポストニューウェーブなミュージシャンが多かった初期MIDIレコードの面々にあって異彩を放っていましたが、前作から1年経た後本作をリリースすることになります。
クラシック要素の強かった前作と比較して本作はロック&POPSに軸を移した印象で、特に多重録音された多彩なギターフレーズと、エフェクト&シンセサウンドによる独特のファンタジックでメランコリックな世界観が特徴です。特にエフェクターを駆使して前衛的なフレーズを繰り出すギターフレーズは彼の音楽家としてのセンスと実験性の高さの証明となっていますし、決して早いテンポの勢いに任せた楽曲ではなくゆるやかな曲調であってもプログレッシブさの中に中世ヨーロッパのトラッドミュージックへの造詣を強く感じる独自のロックへの探究心を露にしています。決して全体としては派手な作品でもありませんし、どちらかといえばアンビエントミュージックのような雰囲気重視のサウンドメイクがなされていますので、いかにロック&POPSに軸を移したといってもスノッブさとは全く縁がなく、音楽家としての基軸がしっかり出来上がっているという印象を強く受けることができる作品です。その後の彼の(決して派手ではない)ワールドワイドな活躍を予見できる完成度ですし、現在でも和洋問わず古楽をロックと融合させた新たな試みを忘れない高橋鮎生のアーティスト性はさらに評価されるべきでしょう。
<Favorite Songs>
・「City In The Sky」
エフェクトを駆使した多彩なギター音色を聴かせるオープニングチューン。ファンタジックなシンセフレーズ以上に持続するサスティンが印象的なギターがこの楽曲の最大の聴き所と言えるでしょう。気怠いヴォーカルも雰囲気が良く出ているロックチューンです。
・「光の中へ」
リバーブ成分多めのミニマルなシンセリフが特徴的なファンタジー性あふれるミディアムチューン。音数が少ない中でも硬軟織り交ぜた音色と朴訥なヴォーカルで幻想的な世界を演出しています。
・「ながれる」
静謐さに満ちたアンビエント性豊かな楽曲。EPOのヴォーカル等にかかるロングリバーブが幻想性を深めています。このような余韻を残すエフェクティブなサウンドが本作の魅力の1つとも言えます。
<評点>
・サウンド ★★ (緻密なギターサウンドの音像が素晴らしい)
・メロディ ★ (一般的に認知されるようなメロの作りではない)
・リズム ★ (この時代にあってドラムに派手な装飾はなし)
・曲構成 ★★ (全編前衛的なサウンドで冒険しても許されるが)
・個性 ★★ (下手にロックに近づかず実験性に専念した方がよい)
総合評点: 6点
高橋鮎生:vocals・guitar・bass・keyboards・piano・woodstock chime

1.「City In The Sky」 詞・曲・編:高橋鮎生
2.「夏の終わりに」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
3.「光の中へ」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
4.「月の庭」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
5.「水色の鏡」 曲・編:高橋鮎生
6.「不思議な夜」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
7.「ながれる」 詞:如月小春 曲:高橋鮎生・如月小春・近藤達郎 編:高橋鮎生
8.「こもりうた」 詞:George Buchner 曲:Alban Berg 編:高橋鮎生
9.「讃歌」 詞:如月小春 曲・編:高橋鮎生
10.「ことばのあいだに」 詞・曲・編:高橋鮎生
<support musician>
EPO:vocal・voice
西村卓也:bass
鈴木さえ子:drums
近藤達郎:keyboards
坂本龍一:piano
竹田賢一:大正琴
小山景子:background vocals
大貫妙子:voice
如月小春:voice・percussion
遠山淳:synthesizer programming
produced by 高橋鮎生
engineered by 野村昌之・河野英之・森本信・滝瀬茂
● 古楽から現代音楽にまで通じるプログレッシブなマルチアーティストが如月小春とのコラボにより作り上げた牧歌的でドリーミーな作品
世界的なピアニストである高橋悠治を父に持つ高橋鮎生は、さまざまな種類の楽器を演奏できるマルチアーティストです。欧米で育ち60〜70年代のサイケ・プログレ全盛時代のロックシーンに影響を受けてきた彼は、まだ10代であった70年代後半には早くもミュージシャンとして活動を開始、84年にアルバム「CARMINA」でデビューした後、YMO散開後に坂本龍一らが新たに設立したMIDIレコードに参画し、同84年に2ndアルバム「Silent Film」をリリースします。POPSとクラシックの融合を図った海外録音のこの作品は、ポストニューウェーブなミュージシャンが多かった初期MIDIレコードの面々にあって異彩を放っていましたが、前作から1年経た後本作をリリースすることになります。
クラシック要素の強かった前作と比較して本作はロック&POPSに軸を移した印象で、特に多重録音された多彩なギターフレーズと、エフェクト&シンセサウンドによる独特のファンタジックでメランコリックな世界観が特徴です。特にエフェクターを駆使して前衛的なフレーズを繰り出すギターフレーズは彼の音楽家としてのセンスと実験性の高さの証明となっていますし、決して早いテンポの勢いに任せた楽曲ではなくゆるやかな曲調であってもプログレッシブさの中に中世ヨーロッパのトラッドミュージックへの造詣を強く感じる独自のロックへの探究心を露にしています。決して全体としては派手な作品でもありませんし、どちらかといえばアンビエントミュージックのような雰囲気重視のサウンドメイクがなされていますので、いかにロック&POPSに軸を移したといってもスノッブさとは全く縁がなく、音楽家としての基軸がしっかり出来上がっているという印象を強く受けることができる作品です。その後の彼の(決して派手ではない)ワールドワイドな活躍を予見できる完成度ですし、現在でも和洋問わず古楽をロックと融合させた新たな試みを忘れない高橋鮎生のアーティスト性はさらに評価されるべきでしょう。
<Favorite Songs>
・「City In The Sky」
エフェクトを駆使した多彩なギター音色を聴かせるオープニングチューン。ファンタジックなシンセフレーズ以上に持続するサスティンが印象的なギターがこの楽曲の最大の聴き所と言えるでしょう。気怠いヴォーカルも雰囲気が良く出ているロックチューンです。
・「光の中へ」
リバーブ成分多めのミニマルなシンセリフが特徴的なファンタジー性あふれるミディアムチューン。音数が少ない中でも硬軟織り交ぜた音色と朴訥なヴォーカルで幻想的な世界を演出しています。
・「ながれる」
静謐さに満ちたアンビエント性豊かな楽曲。EPOのヴォーカル等にかかるロングリバーブが幻想性を深めています。このような余韻を残すエフェクティブなサウンドが本作の魅力の1つとも言えます。
<評点>
・サウンド ★★ (緻密なギターサウンドの音像が素晴らしい)
・メロディ ★ (一般的に認知されるようなメロの作りではない)
・リズム ★ (この時代にあってドラムに派手な装飾はなし)
・曲構成 ★★ (全編前衛的なサウンドで冒険しても許されるが)
・個性 ★★ (下手にロックに近づかず実験性に専念した方がよい)
総合評点: 6点
「人間と動物」 電気グルーヴ
「人間と動物」 (2013 キューン)
電気グルーヴ

<members>
石野卓球:vocal・synthesizers・guitar・bass・percussion
ピエール瀧:vocal・percussion・Taki
<electric instruments>
Roland TR-707・Roland TR-727・Roland TR-808・Roland TR-909・LINN LM2・Elektron Machine Drum・Casio RZ-1・Oberheim DMX・Zunashimaschinen TR-909090909・Sequencial Circuit Pro One・Studio Electronics MIDI Mini ・Clavia Nord Lead3・Korg MS-20・Roland TB-303・Roland SH-2・Roland Gaia・Casio CZ101・Yamaha DX100・Retro Future Revolution・EMS Vocoder2000
1.「The Big Shirts」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
2.「Missing Beatz (album version)」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
3.「Shameful (album version)」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
4.「P」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
5.「Slow Motion」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
6.「Prof. Radio」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
7.「Upside Down (album version)」 詞・曲・編:石野卓球 弦編:弦一徹
8.「Oyster(私は牡蠣になりたい)」 詞・曲・編:石野卓球
9.「電気グルーヴのSteppin’ Stone」
詞・曲:Tommy Boyce・Bobby Hart 日本語作詞・編:石野卓球
<support musician>
Kaori:vocal
笹沼位吉:bass
弦一徹ストリングス:strings
牛尾憲輔:production assist・additional productions
produced by 石野卓球
engineered by 渡部高士・松本靖雄
● ますます80’sへ回帰しながらシンセ音色を1つ1つ噛み締めるような職人芸を発揮する熟し切った好作品
2008年に活動再開してからの電気グルーヴは、「J-POP」「YELLOW」「20」と20周年に向けてコンスタントに作品をリリースしていきましたが、全盛期のアヴァンギャルドで先鋭的なテクノサウンドと比較すると年相応に落ち着いたシンプルな電子音を基調とした大人のエレポップといった風情で、ファンの間では賛否両論はあったもののサウンド面でのクオリティはしっかり保ち、そのあたりは黎明期からの日本のテクノシーンを支えた大物ユニットの面目躍如だったと思われます。そして「20」のリリースから3年たった2013年に新たな古アルバムとして本作が発表されたわけですが、前作までのナチュラルテクノサウンドは踏襲したまま、よりキャッチーに基軸を寄せていった感のある楽曲が多く収録され、ピエール瀧の俳優としてのブレイクも気にならないほどの相変わらずの電グル節を聴かせてくれる作品となりました。
ソフトシンセ全盛時代にハード機器を惜しげもなく使い倒した本作は、そのオールドスクールなリズムマシンサウンドによる朴訥かつジャストなリズムトラックを中心に、音数は少ないながらも音の置き所を心得たプログラミングが光ります。一聴して淡々と進行していくように見えて実は緻密に構築された打ち込みのフレージングに年輪というか年相応の深みが備わってきているのがわかります。ノンストップで最後まで貫く構成ということで、全編ミニマルな歌モノテクノと言えますが、テクノならではの細かいシーケンスにプラスされている音の長いパッド系の音色も多用され、その渋いコード感覚も本作の魅力の1つとなっています。生ベースも交えたグルーヴィーなノリも垣間見せるなど、ベテランの味と安定感が楽しめる好作品としてまだまだ目の離せないユニットであることを再確認させられます。
<Favorite Songs>
・「The Big Shirts」
軽快なギターとベースラインによるダンサブルなオープニングナンバー。シンセパートは最小限に抑えながらも音の隙間でノリを作り出す円熟のプログラミングは、さんざんやんちゃを繰り返してきた彼らといえども年齢を感じさせます。
・「Shameful (album version)」
TB-303のアシッドベースが懐かしい先行シングル。前2曲からノンストップということもあってその攻撃的なダンスビートには否が応にもアガります。「Vitamin」や「Dragon」時代の勢いがあった頃の空気を感じます。
・「Slow Motion」
ゆったりと進んでいくもののマイナー歌謡なメロディが染みるミディアムチューン。間奏の執拗なハンドクラップや滲むシンセフレーズなど哀愁ロマンティックな演出に余念がありません。
<評点>
・サウンド ★★ (音の並べ方はさすがに円熟の域に達している)
・メロディ ★ (大人の枯れ具合を表現するわかりやすいメロディ)
・リズム ★★ (独特のコシのあるリズムマシン音色がポイント)
・曲構成 ★ (ノンストップであるがゆえに後半マンネリ感も)
・個性 ★ (さすがに尖りは失ったが安定感を手に入れる)
総合評点: 6点
電気グルーヴ

<members>
石野卓球:vocal・synthesizers・guitar・bass・percussion
ピエール瀧:vocal・percussion・Taki
<electric instruments>
Roland TR-707・Roland TR-727・Roland TR-808・Roland TR-909・LINN LM2・Elektron Machine Drum・Casio RZ-1・Oberheim DMX・Zunashimaschinen TR-909090909・Sequencial Circuit Pro One・Studio Electronics MIDI Mini ・Clavia Nord Lead3・Korg MS-20・Roland TB-303・Roland SH-2・Roland Gaia・Casio CZ101・Yamaha DX100・Retro Future Revolution・EMS Vocoder2000
1.「The Big Shirts」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
2.「Missing Beatz (album version)」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
3.「Shameful (album version)」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
4.「P」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
5.「Slow Motion」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
6.「Prof. Radio」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲・編:石野卓球
7.「Upside Down (album version)」 詞・曲・編:石野卓球 弦編:弦一徹
8.「Oyster(私は牡蠣になりたい)」 詞・曲・編:石野卓球
9.「電気グルーヴのSteppin’ Stone」
詞・曲:Tommy Boyce・Bobby Hart 日本語作詞・編:石野卓球
<support musician>
Kaori:vocal
笹沼位吉:bass
弦一徹ストリングス:strings
牛尾憲輔:production assist・additional productions
produced by 石野卓球
engineered by 渡部高士・松本靖雄
● ますます80’sへ回帰しながらシンセ音色を1つ1つ噛み締めるような職人芸を発揮する熟し切った好作品
2008年に活動再開してからの電気グルーヴは、「J-POP」「YELLOW」「20」と20周年に向けてコンスタントに作品をリリースしていきましたが、全盛期のアヴァンギャルドで先鋭的なテクノサウンドと比較すると年相応に落ち着いたシンプルな電子音を基調とした大人のエレポップといった風情で、ファンの間では賛否両論はあったもののサウンド面でのクオリティはしっかり保ち、そのあたりは黎明期からの日本のテクノシーンを支えた大物ユニットの面目躍如だったと思われます。そして「20」のリリースから3年たった2013年に新たな古アルバムとして本作が発表されたわけですが、前作までのナチュラルテクノサウンドは踏襲したまま、よりキャッチーに基軸を寄せていった感のある楽曲が多く収録され、ピエール瀧の俳優としてのブレイクも気にならないほどの相変わらずの電グル節を聴かせてくれる作品となりました。
ソフトシンセ全盛時代にハード機器を惜しげもなく使い倒した本作は、そのオールドスクールなリズムマシンサウンドによる朴訥かつジャストなリズムトラックを中心に、音数は少ないながらも音の置き所を心得たプログラミングが光ります。一聴して淡々と進行していくように見えて実は緻密に構築された打ち込みのフレージングに年輪というか年相応の深みが備わってきているのがわかります。ノンストップで最後まで貫く構成ということで、全編ミニマルな歌モノテクノと言えますが、テクノならではの細かいシーケンスにプラスされている音の長いパッド系の音色も多用され、その渋いコード感覚も本作の魅力の1つとなっています。生ベースも交えたグルーヴィーなノリも垣間見せるなど、ベテランの味と安定感が楽しめる好作品としてまだまだ目の離せないユニットであることを再確認させられます。
<Favorite Songs>
・「The Big Shirts」
軽快なギターとベースラインによるダンサブルなオープニングナンバー。シンセパートは最小限に抑えながらも音の隙間でノリを作り出す円熟のプログラミングは、さんざんやんちゃを繰り返してきた彼らといえども年齢を感じさせます。
・「Shameful (album version)」
TB-303のアシッドベースが懐かしい先行シングル。前2曲からノンストップということもあってその攻撃的なダンスビートには否が応にもアガります。「Vitamin」や「Dragon」時代の勢いがあった頃の空気を感じます。
・「Slow Motion」
ゆったりと進んでいくもののマイナー歌謡なメロディが染みるミディアムチューン。間奏の執拗なハンドクラップや滲むシンセフレーズなど哀愁ロマンティックな演出に余念がありません。
<評点>
・サウンド ★★ (音の並べ方はさすがに円熟の域に達している)
・メロディ ★ (大人の枯れ具合を表現するわかりやすいメロディ)
・リズム ★★ (独特のコシのあるリズムマシン音色がポイント)
・曲構成 ★ (ノンストップであるがゆえに後半マンネリ感も)
・個性 ★ (さすがに尖りは失ったが安定感を手に入れる)
総合評点: 6点
「floating pupa」 pupa
「floating pupa」(2008 EMI)
pupa

<members>
高橋幸宏:vocal・chorus・drums・ keyboards・electric bagpipe・computer programming・voice
原田知世: vocal・chorus・electric bagpipe
高野寛: vocal・electric guitar・acoustic guitar・12strings acoustic guitar・electric sitar・electric bass・keyboards・bass melodion・computer programming・ chorus
高田漣: vocal・electric guitar・slide guitar・acoustic guitar・weissenborn・bouzouki・mandolin・pedal steel・E-Bow・electric bass・Omnichord・Casiotone701・SW Dual Conversion System・SE・chorus
堀江博久: vocal・keyboards・piano・organ・Rhodes・Wurlitzer・Prophet-5・Omnichord・CS01・EMS Synthi A・Violyre・glockenspiel・ melodion・kalimba・computer programming・chorus
権藤知彦:euphonium・flugel horn・trombone・keyboards・Prophet-5・melodion・glockenspiel・computer programming・editing・chorus
1.「Jargon −What’s pupa−」 曲:権藤知彦 編:pupa
2.「At Dawn」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:権藤知彦・高橋幸宏 編:pupa
3.「Creaks」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:高橋幸宏 編:pupa
4.「Anywhere」 詞:原田知世 曲:堀江博久 編:pupa
5.「Tameiki」 詞・曲:高野寛 編:pupa
6.「Unfixed Stars」 曲:高野寛 編:pupa
7.「Glass」 詞:高田漣・天辰京子 曲:高田漣 編:pupa
8.「How?」 詞:高野寛・天辰京子 曲:高野寛 編:pupa
9.「Laika」 詞:高橋幸宏・天辰京子・柴岡千穂 曲:権藤知彦 編:pupa
10.「floating pupa」 曲:高橋幸宏 編:pupa
11.「marimo」 詞:原田知世 曲:高田漣 編:pupa
12.「Sunny Day Blue」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:堀江博久 編:pupa
13.「New Order」 詞:原田知世 曲:権藤知彦・高橋幸宏 編:pupa
14.「Home Of My Heart」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:高橋幸宏 編:pupa
15.「Cicada」 曲:堀江博久 編:pupa
<support musician>
柴岡千穂:voice
produced by pupa
mixing engineered by 権藤知彦
recording engineered by 飯尾芳史・近藤真奈美・権藤知彦
● 個性的かつ豪華なメンバーによるエレクトロニカ寄りにかつポップなサウンドを追求した大物新バンドのデビュー作
00年代に入ってからの高橋幸宏は、エレクトロニカという新しいおもちゃを手にして大人の枯れたPOPS路線を封印して再び冒険的なサウンド構築を開始、細野晴臣とのSKETCH SHOW、そして自身のソロアルバム「BLUE MOON BLUE」においてエレクトロニカの幸宏風POPS解釈によるサウンドを実践し一定の評価が得られました。このエレクトロニカな時期から高橋をデジタル面で支えてきたのが音楽ユニットanonymassのeuphonium奏者であった権藤知彦で、現在に至るまで高橋の片腕として彼のサウンドを支え続けています。やがて高橋と権藤のグループワークはバンド構想へと発展し、2007年に高橋の呼びかけにより、権藤と高野寛、高田漣といったYMOチルドレンや、小山田圭吾を長年サウンド面で支え続けるキーボーディスト堀江博久、そして女優ながら一貫してオシャレで高品質な音楽を提供し続けてきた原田知世の6名が集まって、pupaというスーパーバンドが生まれました。そして翌年、待望のデビュー作として生まれたのが本作というわけです。
当時の高橋のサウンド傾向からしてエレクトロニカ寄りの音になることはある意味予想されていたわけですが、蓋を開けてみれば意外なほどポップ路線に振り切っていたという印象があります。そのあたりはギタリストである前に良質なメロディメイカーでもある高野寛や、メジャーフィールドで活躍してきた原田知世や堀江博久といったバンドメンバーとの相乗効果という面も感じられます。もちろんサウンド面では電子音が満載。高橋より一世代後のメンバー達の参加によりプログラミングにも心なしか若さと躍動感を感じますが、リズムにしてもSEにしても非常に緻密に作り込まれており、高橋幸宏のリーダーバンドとして恥ずかしくないクオリティは当然のごとくクリアしているといった印象です。ただし余りに作り込まれているがゆえに楽曲としてはゆったりとしたエレクトロニカAORといった風情のものが多く、そのあたりが聴き手を持て余してしまうきらいもありますが、じっくり聴き込むタイプのリスナーにとっては聴き込むごとに新しい音が発見できるほどの深みが感じられる作品と言えるでしょう。15曲という曲数もあって非常に満腹感を与えてくれる充実作です。
<Favorite Songs>
・「Creaks」
高橋幸宏ソロとしても通用するかのように彼の得意なUK色が強いポップソング。全体を包むような荒涼感を表現するようなバグパイプ音と高田漣のギターワークが良い味を出しています。
・「Tameiki」
これもまた高野寛ソロ楽曲と言っても過言ではないような彼らしい瑞々しいPOPS。ゆったりした空気感の中に逆回転を織り交ぜたエレクトリックサウンドが効果的に使用されています。
・「Glass」
高田漣作曲のどこかAORを彷佛とさせる渋めの大人のコンテンポラリーロック。そこにエレクトロニカなノイズや権藤のeuphoniumなど一見似つかわしくないような音を自然と染み込ませているのは経験豊富な彼らならではのサウンド構築術のおかげでもあります。
<評点>
・サウンド ★★★ (音のバリエーションが豊かでなかなか飽きさせない)
・メロディ ★ (高野以外の楽曲は単調なメロの応酬にピンと来ず)
・リズム ★★ (細かい構築術はさすが大御所だが音の軽さも目立つ)
・曲構成 ★ (後半へ進むにつれて紋切り型の楽曲が気になるかも)
・個性 ★ (結果的には高橋ソロ楽曲の延長線上という解釈が自然)
総合評点: 6点
pupa

<members>
高橋幸宏:vocal・chorus・drums・ keyboards・electric bagpipe・computer programming・voice
原田知世: vocal・chorus・electric bagpipe
高野寛: vocal・electric guitar・acoustic guitar・12strings acoustic guitar・electric sitar・electric bass・keyboards・bass melodion・computer programming・ chorus
高田漣: vocal・electric guitar・slide guitar・acoustic guitar・weissenborn・bouzouki・mandolin・pedal steel・E-Bow・electric bass・Omnichord・Casiotone701・SW Dual Conversion System・SE・chorus
堀江博久: vocal・keyboards・piano・organ・Rhodes・Wurlitzer・Prophet-5・Omnichord・CS01・EMS Synthi A・Violyre・glockenspiel・ melodion・kalimba・computer programming・chorus
権藤知彦:euphonium・flugel horn・trombone・keyboards・Prophet-5・melodion・glockenspiel・computer programming・editing・chorus
1.「Jargon −What’s pupa−」 曲:権藤知彦 編:pupa
2.「At Dawn」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:権藤知彦・高橋幸宏 編:pupa
3.「Creaks」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:高橋幸宏 編:pupa
4.「Anywhere」 詞:原田知世 曲:堀江博久 編:pupa
5.「Tameiki」 詞・曲:高野寛 編:pupa
6.「Unfixed Stars」 曲:高野寛 編:pupa
7.「Glass」 詞:高田漣・天辰京子 曲:高田漣 編:pupa
8.「How?」 詞:高野寛・天辰京子 曲:高野寛 編:pupa
9.「Laika」 詞:高橋幸宏・天辰京子・柴岡千穂 曲:権藤知彦 編:pupa
10.「floating pupa」 曲:高橋幸宏 編:pupa
11.「marimo」 詞:原田知世 曲:高田漣 編:pupa
12.「Sunny Day Blue」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:堀江博久 編:pupa
13.「New Order」 詞:原田知世 曲:権藤知彦・高橋幸宏 編:pupa
14.「Home Of My Heart」 詞:高橋幸宏・天辰京子 曲:高橋幸宏 編:pupa
15.「Cicada」 曲:堀江博久 編:pupa
<support musician>
柴岡千穂:voice
produced by pupa
mixing engineered by 権藤知彦
recording engineered by 飯尾芳史・近藤真奈美・権藤知彦
● 個性的かつ豪華なメンバーによるエレクトロニカ寄りにかつポップなサウンドを追求した大物新バンドのデビュー作
00年代に入ってからの高橋幸宏は、エレクトロニカという新しいおもちゃを手にして大人の枯れたPOPS路線を封印して再び冒険的なサウンド構築を開始、細野晴臣とのSKETCH SHOW、そして自身のソロアルバム「BLUE MOON BLUE」においてエレクトロニカの幸宏風POPS解釈によるサウンドを実践し一定の評価が得られました。このエレクトロニカな時期から高橋をデジタル面で支えてきたのが音楽ユニットanonymassのeuphonium奏者であった権藤知彦で、現在に至るまで高橋の片腕として彼のサウンドを支え続けています。やがて高橋と権藤のグループワークはバンド構想へと発展し、2007年に高橋の呼びかけにより、権藤と高野寛、高田漣といったYMOチルドレンや、小山田圭吾を長年サウンド面で支え続けるキーボーディスト堀江博久、そして女優ながら一貫してオシャレで高品質な音楽を提供し続けてきた原田知世の6名が集まって、pupaというスーパーバンドが生まれました。そして翌年、待望のデビュー作として生まれたのが本作というわけです。
当時の高橋のサウンド傾向からしてエレクトロニカ寄りの音になることはある意味予想されていたわけですが、蓋を開けてみれば意外なほどポップ路線に振り切っていたという印象があります。そのあたりはギタリストである前に良質なメロディメイカーでもある高野寛や、メジャーフィールドで活躍してきた原田知世や堀江博久といったバンドメンバーとの相乗効果という面も感じられます。もちろんサウンド面では電子音が満載。高橋より一世代後のメンバー達の参加によりプログラミングにも心なしか若さと躍動感を感じますが、リズムにしてもSEにしても非常に緻密に作り込まれており、高橋幸宏のリーダーバンドとして恥ずかしくないクオリティは当然のごとくクリアしているといった印象です。ただし余りに作り込まれているがゆえに楽曲としてはゆったりとしたエレクトロニカAORといった風情のものが多く、そのあたりが聴き手を持て余してしまうきらいもありますが、じっくり聴き込むタイプのリスナーにとっては聴き込むごとに新しい音が発見できるほどの深みが感じられる作品と言えるでしょう。15曲という曲数もあって非常に満腹感を与えてくれる充実作です。
<Favorite Songs>
・「Creaks」
高橋幸宏ソロとしても通用するかのように彼の得意なUK色が強いポップソング。全体を包むような荒涼感を表現するようなバグパイプ音と高田漣のギターワークが良い味を出しています。
・「Tameiki」
これもまた高野寛ソロ楽曲と言っても過言ではないような彼らしい瑞々しいPOPS。ゆったりした空気感の中に逆回転を織り交ぜたエレクトリックサウンドが効果的に使用されています。
・「Glass」
高田漣作曲のどこかAORを彷佛とさせる渋めの大人のコンテンポラリーロック。そこにエレクトロニカなノイズや権藤のeuphoniumなど一見似つかわしくないような音を自然と染み込ませているのは経験豊富な彼らならではのサウンド構築術のおかげでもあります。
<評点>
・サウンド ★★★ (音のバリエーションが豊かでなかなか飽きさせない)
・メロディ ★ (高野以外の楽曲は単調なメロの応酬にピンと来ず)
・リズム ★★ (細かい構築術はさすが大御所だが音の軽さも目立つ)
・曲構成 ★ (後半へ進むにつれて紋切り型の楽曲が気になるかも)
・個性 ★ (結果的には高橋ソロ楽曲の延長線上という解釈が自然)
総合評点: 6点
「Wonder Wonderful」 伊藤真澄
「Wonder Wonderful」(2012 ランティス)
伊藤真澄:vocals・keyboard・piano・computer programming

1.「はじまりのとびら」 詞:hiraku・伊藤真澄 曲・編:伊藤真澄
2.「ユメのなかノわたしのユメ」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
3.「Wonder Wonderful」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
4.「宙時計」 詞:hiraku・伊藤真澄 曲:伊藤真澄 編:オオニシユウスケ・伊藤真澄
5.「無限の旋律」 詞:micco・伊藤真澄 曲・編:伊藤真澄
6.「空耳ケーキ (Wonderful ver.)」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
7.「優しさに包まれるように」 詞:rino 曲・編:伊藤真澄
8.「ねむねむ天使」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
9.「すてきがそっと訪れる」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
10.「Silent Milk」 詞・曲・編:伊藤真澄
11.「Kiso Birdeto」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
12.「優しい忘却」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
13.「世界のしずく」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
<support musician>
オオニシユウスケ:electric guitar・acoustic guitar・gut guitar・synthesizer
渡辺等:electric bass・electric upright bass・wood bass
宮田繁男:drums
三沢またろう:percussion
佐々木史郎:trumpet
佐野聡:trombone
高橋英樹:trombone
宮内岳太郎:trombone
河野聡:bass trombone
本間将人:alto sax
竹野昌邦:tenor sax
吉田 治:tenor sax
宮本 大路:baritone sax
足立正:tuba
Bob Zung:flute
真部裕ストリングス:strings
KOKIA:chorus
produced by 伊藤善之
engineered by 白井康裕
● デジアナを見事に融合させた神々しい母性を発する高い音楽性の貫禄のヒーリングPOPS作品
アニメソング専門レコード会社として業界に新風を送り込んだランティスの副社長であり音楽ディレクターである伊藤善之と共に結成したアンビエントトラッドなグループmidoriでメジャーデビューを果たした新田真澄は、伊藤と結婚後夫姓を名乗り「伊藤真澄」としてアーティスト活動を開始、CMソングなどでその矢野顕子を彷佛とさせる独特な美声を聴かせながら21世紀に入ってからはアニメソングとその劇伴(「七瀬光」名義)においてその多彩な音楽性を惜しみなく披露しており、その道ではもはや重鎮と呼べるシンガーソングライターとなりました。ソロデビューは古くアルバム「Harmonies of heaven」でデビューしたのは1993年。その後00年代にリリースされた「花の音」「夢降る森へ」に続く4枚目のアルバムが彼女の音楽性の集大成とも言える本作です。
ヴォーカル・コーラスに加えて鍵盤楽器やプログラミングまでこなす多重録音系マルチアーティストでもある彼女ですが、クラシックやプログレ、ニューウェーブやアンビエントなど多彩なジャンルをファンタジックにごった煮にしたような独自のヒーリングな音楽性が光るアーティストなので、本作でも平均5分を超える楽曲を13曲も収録しその全体的な濃密空間には圧倒されるものがあります。とかくこのようなタイプのシンガーは弾き語りでも楽曲が成立するものですが、そこは上記のような出自も関係してか電子音や歌声への惜しみないエフェクトの行使などファンタジックな世界観を構築する術にテクノロジーを利用することに躊躇がない姿勢は、TECHNOLOGY POPS的にも評価すべき部分でしょう。しかも「わかりやすさ」を求められるアニメソングを通過したことによりポップネスも兼備したことで鬼に金棒となり、テクノカルで複雑な構成のマニアックになりがちな伊藤楽曲への壁を崩すことに成功しています。それにしてもこれだけプログラミングやエレクトロニクスを使用しながらもオーガニックの質感を演出できるのは伊藤真澄という音楽家の奥深さゆえんであると言えるわけで、これからの若手音楽家の手本となり得る存在であり、本作はそのような評価に恥じないなんとも濃厚で味わい深いサウンドとメロディに包まれた傑作と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「ユメのなかノわたしのユメ」
目まぐるしく転調していくテクニカルなフレージングが魅力的なアニメ「人類は衰退しました」エンディング主題歌。グイグイくる歪んだギターと流麗かつ大胆なストリングスに、場面転換が頻繁に行われるプログレッシブな構成は楽曲の印象とは裏腹になかなか豪快です。
・「空耳ケーキ (Wonderful ver.)」
アニメソング屈指の名曲である上野洋子とのユニットOrange & Lemons「空耳ケーキ」(アニメ「あずまんが大王」オープニング主題歌)のセルフカバー。原曲の恐ろしく意表を突かれるAメロはそのままにジャジーかつ大人なアレンジに大変身しています。渡辺等のベースラインも踊りまくっています。
・「ねむねむ天使」
「空耳ケーキ」と同時期に制作されながらなぜかアルバムには未収録であった本作随一のキャッチーなポップソング。アニメ「天使のしっぽChu!」エンディング主題歌であるこの楽曲は、お得意の流れるように駆け巡るストリングス+エレクトロニクスの融合の完成度が高い名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (生楽器とデジタルのブレンドが絶妙かつ濃厚)
・メロディ ★★★ (難解なのにポップ性は外さないバランス感覚)
・リズム ★★ (軽さは目立つものの細かく構築されたパターン)
・曲構成 ★★ (1曲1曲の味が濃いので後半やや疲労感すら感じる)
・個性 ★★★ (アニソン界隈のアーティストとして1つの金字塔)
総合評点: 8点
伊藤真澄:vocals・keyboard・piano・computer programming

1.「はじまりのとびら」 詞:hiraku・伊藤真澄 曲・編:伊藤真澄
2.「ユメのなかノわたしのユメ」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
3.「Wonder Wonderful」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
4.「宙時計」 詞:hiraku・伊藤真澄 曲:伊藤真澄 編:オオニシユウスケ・伊藤真澄
5.「無限の旋律」 詞:micco・伊藤真澄 曲・編:伊藤真澄
6.「空耳ケーキ (Wonderful ver.)」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
7.「優しさに包まれるように」 詞:rino 曲・編:伊藤真澄
8.「ねむねむ天使」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
9.「すてきがそっと訪れる」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
10.「Silent Milk」 詞・曲・編:伊藤真澄
11.「Kiso Birdeto」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
12.「優しい忘却」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
13.「世界のしずく」 詞:畑亜貴 曲・編:伊藤真澄
<support musician>
オオニシユウスケ:electric guitar・acoustic guitar・gut guitar・synthesizer
渡辺等:electric bass・electric upright bass・wood bass
宮田繁男:drums
三沢またろう:percussion
佐々木史郎:trumpet
佐野聡:trombone
高橋英樹:trombone
宮内岳太郎:trombone
河野聡:bass trombone
本間将人:alto sax
竹野昌邦:tenor sax
吉田 治:tenor sax
宮本 大路:baritone sax
足立正:tuba
Bob Zung:flute
真部裕ストリングス:strings
KOKIA:chorus
produced by 伊藤善之
engineered by 白井康裕
● デジアナを見事に融合させた神々しい母性を発する高い音楽性の貫禄のヒーリングPOPS作品
アニメソング専門レコード会社として業界に新風を送り込んだランティスの副社長であり音楽ディレクターである伊藤善之と共に結成したアンビエントトラッドなグループmidoriでメジャーデビューを果たした新田真澄は、伊藤と結婚後夫姓を名乗り「伊藤真澄」としてアーティスト活動を開始、CMソングなどでその矢野顕子を彷佛とさせる独特な美声を聴かせながら21世紀に入ってからはアニメソングとその劇伴(「七瀬光」名義)においてその多彩な音楽性を惜しみなく披露しており、その道ではもはや重鎮と呼べるシンガーソングライターとなりました。ソロデビューは古くアルバム「Harmonies of heaven」でデビューしたのは1993年。その後00年代にリリースされた「花の音」「夢降る森へ」に続く4枚目のアルバムが彼女の音楽性の集大成とも言える本作です。
ヴォーカル・コーラスに加えて鍵盤楽器やプログラミングまでこなす多重録音系マルチアーティストでもある彼女ですが、クラシックやプログレ、ニューウェーブやアンビエントなど多彩なジャンルをファンタジックにごった煮にしたような独自のヒーリングな音楽性が光るアーティストなので、本作でも平均5分を超える楽曲を13曲も収録しその全体的な濃密空間には圧倒されるものがあります。とかくこのようなタイプのシンガーは弾き語りでも楽曲が成立するものですが、そこは上記のような出自も関係してか電子音や歌声への惜しみないエフェクトの行使などファンタジックな世界観を構築する術にテクノロジーを利用することに躊躇がない姿勢は、TECHNOLOGY POPS的にも評価すべき部分でしょう。しかも「わかりやすさ」を求められるアニメソングを通過したことによりポップネスも兼備したことで鬼に金棒となり、テクノカルで複雑な構成のマニアックになりがちな伊藤楽曲への壁を崩すことに成功しています。それにしてもこれだけプログラミングやエレクトロニクスを使用しながらもオーガニックの質感を演出できるのは伊藤真澄という音楽家の奥深さゆえんであると言えるわけで、これからの若手音楽家の手本となり得る存在であり、本作はそのような評価に恥じないなんとも濃厚で味わい深いサウンドとメロディに包まれた傑作と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「ユメのなかノわたしのユメ」
目まぐるしく転調していくテクニカルなフレージングが魅力的なアニメ「人類は衰退しました」エンディング主題歌。グイグイくる歪んだギターと流麗かつ大胆なストリングスに、場面転換が頻繁に行われるプログレッシブな構成は楽曲の印象とは裏腹になかなか豪快です。
・「空耳ケーキ (Wonderful ver.)」
アニメソング屈指の名曲である上野洋子とのユニットOrange & Lemons「空耳ケーキ」(アニメ「あずまんが大王」オープニング主題歌)のセルフカバー。原曲の恐ろしく意表を突かれるAメロはそのままにジャジーかつ大人なアレンジに大変身しています。渡辺等のベースラインも踊りまくっています。
・「ねむねむ天使」
「空耳ケーキ」と同時期に制作されながらなぜかアルバムには未収録であった本作随一のキャッチーなポップソング。アニメ「天使のしっぽChu!」エンディング主題歌であるこの楽曲は、お得意の流れるように駆け巡るストリングス+エレクトロニクスの融合の完成度が高い名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (生楽器とデジタルのブレンドが絶妙かつ濃厚)
・メロディ ★★★ (難解なのにポップ性は外さないバランス感覚)
・リズム ★★ (軽さは目立つものの細かく構築されたパターン)
・曲構成 ★★ (1曲1曲の味が濃いので後半やや疲労感すら感じる)
・個性 ★★★ (アニソン界隈のアーティストとして1つの金字塔)
総合評点: 8点
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