「SWITCHED ON CYBORG」 CYBORG '80s
「SWITCHED ON CYBORG」(2002 スーパースウィープ)
CYBORG '80s

<members>
zunba:vocal・synthesizer・computer programming
1.「Change! Cyborg」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
2.「あいしてるでゴーゴー」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
3.「My Cyborg〜feat.tomoko,Sachiko&Mie(jellyfish)」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi
4.「HAKKA〜feat.Magnaroid」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
5.「HACKER」 曲・編:Zunba Kobayashi
6.「TECHNOTICA EXOTICA」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
7.「トワイライト」 曲・編:Zunba Kobayashi
8.「Interlude」 曲・編:HeartBe@t ANI
9.「Love Sports」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
10.「In the mirror〜feat.Lie Inomata」 詞:石垣三詠 曲・編:Zunba Kobayashi
11.「ミスルージュ」 詞:Zunba Kobayashi 曲:Paul Frank 編:Zunba Kobayashi
12.「夢心地〜feat.Tomoko Ishizaki」
詞:石垣三詠 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
13.「The garden in the air」 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
14.「shut down」 曲・編:Zunba Kobayashi
15.「Love Sports〜ヴォルシェビッキ mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
16.「Change! Cyborg〜1-2-3 mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
<support musician>
Magnaroid:vocal・voice・robot voice samples
石崎智子:vocal
石垣三詠:vocal
山川佐智子:vocal
猪俣リエ:vocal
Hinako Love*9:back vocal
produced by 細江慎治
mixing engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog
recording engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog・野川靖友
● ソロ時代よりテクノなコンセプトをさらに推し進めネット仲間と共に作り上げたSFコンセプトユニットのデビュー作
歌人として活躍する笹公人の音楽ユニットであった宇宙ヤングのサウンドクリエイターとして名盤「宇宙ヤング」を制作するなど、ノスタルジックなテクノポップを得意としたサウンドメイクに定評のあった小林和博が、Zunba Kobayashiと名乗ってリリースしたのが99年のソロアルバム「Techno The Future」。レトロフューチャーをこよなく愛する彼の懐古趣味的なシンセサイザーサウンドはこの作品でも結実されていますが、21世紀に入って新たなテクノポップユニットとしてCYBORG '80sを結成し、2002年に本作がリリースされることになります。ジャケを見ていただいてもわかるようにまずはコンセプチュアルな世界観で魅了しながら、実際のサウンドは「Techno The Future」の延長線上にあるかのような歌モノPOPSあり、ラウンジミュージックあり、ダンサブルなクラブを意識したエレクトリックポップありのZunbaサウンドを、気の合う仲間達などの多彩なゲストを迎えながら和気あいあいと作り上げていますが、全体としてはこれ以上ない直球テクノポップ作品に仕上がっていると言えるでしょう。
直球、というだけあってまさにグループ名通り80年代テクノポップのフォーマットにのっとったサウンドデザインが本作の核となっています。当然のことながらメインとなるのは多彩で電子音まみれなシンセサウンド&ボコーダーで、これらがフィーチャーされた「Change! Cyborg」や「あいしてるでゴーゴー」はCYBORG 80'sの真骨頂とも言えると思います。しかし本作には前述の通り多彩なゲストも制作に加わり、特に女子テクノポップユニットとして当時ニッチな人気を博していたJellyfishの参加が、マニアックになりがちな作品の雰囲気に華やかな彩りを加えていることも見逃せません。特にJellyfishのお友達がヴォーカルをとる「In the mirror」やJellyfishのメインコンポーザー&ヴォーカルの石崎智子がフィーチャーされた「夢心地」といった女性ヴォーカルモノは楽曲としてのクオリティも高く、親しみやすくも懐かしいメロディラインも相まって、一般的にもアピールできるポップネスを楽しむことができる名曲達です。そして相変わらずの細部にわたって作り込まれたZunbaサウンドは、シンセパッドのゆらぎやバスドラの響かせ方、アルトサウンドを模したかのようなシンドラリズム、ビット数の低いボコーダーの濁し方など、80'sテクノポッパー垂涎の音づくり(君に、胸キュン。のイントロパロディもあり)で聴き手を幻惑させており、その愚直なまでのこだわりには感心させられます。
結局その後路線を変えて1枚アルバムを残した後は目立った活動を行っていないこのユニットですが、またこのストレートなシンセポップミュージックを堪能したいものです。
<Favorite Songs>
・「Change! Cyborg」
オープニングにふさわしい軽快かつクールなテクノチューン。お約束の渋いボコーダーボイスがニクいくらいにハマっています。メインリフのサイン派からフィルターで尖らせていくシーケンスが、わかってはいるものの味のあるフレージングで納得させられます。電子音満載でもしつこさを感じさせないのが良いです。
・「In the mirror」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その1。バスドラのつんのめり方が絶妙です。基本的にドリーミーな音色で彩ったシンセをバックに、輪郭の丸い性質のヴォーカルが絡む癒し系の楽曲で、ポルタメントのかかった白玉パッドのにじみ方も「わかってる」感じです。
・「夢心地」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その2。オリエンタルなメロディ&音色が80年代の化粧品CMソングを彷佛とさせます。特徴的なリズム音色と琴フレーズが耳を魅かれますが、全体を漂うドリーミーでノスタルジックな雰囲気はもはや彼の芸風と言ってもよいでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (80'sシンセの見本市のような細部にこだわる音づくり)
・メロディ ★ (特にひねりは感じられないものの堅実なポップ風味)
・リズム ★★ (多彩な音色でこだわりを見せるが軽さも気になるところ)
・曲構成 ★★ (前半をテクノラウンジ、後半をテクノ歌謡で飽きさせず)
・個性 ★ (新ユニットになっても懐古テクノな芸風は変わらず)
総合評点: 7点
CYBORG '80s

<members>
zunba:vocal・synthesizer・computer programming
1.「Change! Cyborg」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
2.「あいしてるでゴーゴー」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
3.「My Cyborg〜feat.tomoko,Sachiko&Mie(jellyfish)」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi
4.「HAKKA〜feat.Magnaroid」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
5.「HACKER」 曲・編:Zunba Kobayashi
6.「TECHNOTICA EXOTICA」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
7.「トワイライト」 曲・編:Zunba Kobayashi
8.「Interlude」 曲・編:HeartBe@t ANI
9.「Love Sports」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
10.「In the mirror〜feat.Lie Inomata」 詞:石垣三詠 曲・編:Zunba Kobayashi
11.「ミスルージュ」 詞:Zunba Kobayashi 曲:Paul Frank 編:Zunba Kobayashi
12.「夢心地〜feat.Tomoko Ishizaki」
詞:石垣三詠 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
13.「The garden in the air」 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
14.「shut down」 曲・編:Zunba Kobayashi
15.「Love Sports〜ヴォルシェビッキ mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
16.「Change! Cyborg〜1-2-3 mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
<support musician>
Magnaroid:vocal・voice・robot voice samples
石崎智子:vocal
石垣三詠:vocal
山川佐智子:vocal
猪俣リエ:vocal
Hinako Love*9:back vocal
produced by 細江慎治
mixing engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog
recording engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog・野川靖友
● ソロ時代よりテクノなコンセプトをさらに推し進めネット仲間と共に作り上げたSFコンセプトユニットのデビュー作
歌人として活躍する笹公人の音楽ユニットであった宇宙ヤングのサウンドクリエイターとして名盤「宇宙ヤング」を制作するなど、ノスタルジックなテクノポップを得意としたサウンドメイクに定評のあった小林和博が、Zunba Kobayashiと名乗ってリリースしたのが99年のソロアルバム「Techno The Future」。レトロフューチャーをこよなく愛する彼の懐古趣味的なシンセサイザーサウンドはこの作品でも結実されていますが、21世紀に入って新たなテクノポップユニットとしてCYBORG '80sを結成し、2002年に本作がリリースされることになります。ジャケを見ていただいてもわかるようにまずはコンセプチュアルな世界観で魅了しながら、実際のサウンドは「Techno The Future」の延長線上にあるかのような歌モノPOPSあり、ラウンジミュージックあり、ダンサブルなクラブを意識したエレクトリックポップありのZunbaサウンドを、気の合う仲間達などの多彩なゲストを迎えながら和気あいあいと作り上げていますが、全体としてはこれ以上ない直球テクノポップ作品に仕上がっていると言えるでしょう。
直球、というだけあってまさにグループ名通り80年代テクノポップのフォーマットにのっとったサウンドデザインが本作の核となっています。当然のことながらメインとなるのは多彩で電子音まみれなシンセサウンド&ボコーダーで、これらがフィーチャーされた「Change! Cyborg」や「あいしてるでゴーゴー」はCYBORG 80'sの真骨頂とも言えると思います。しかし本作には前述の通り多彩なゲストも制作に加わり、特に女子テクノポップユニットとして当時ニッチな人気を博していたJellyfishの参加が、マニアックになりがちな作品の雰囲気に華やかな彩りを加えていることも見逃せません。特にJellyfishのお友達がヴォーカルをとる「In the mirror」やJellyfishのメインコンポーザー&ヴォーカルの石崎智子がフィーチャーされた「夢心地」といった女性ヴォーカルモノは楽曲としてのクオリティも高く、親しみやすくも懐かしいメロディラインも相まって、一般的にもアピールできるポップネスを楽しむことができる名曲達です。そして相変わらずの細部にわたって作り込まれたZunbaサウンドは、シンセパッドのゆらぎやバスドラの響かせ方、アルトサウンドを模したかのようなシンドラリズム、ビット数の低いボコーダーの濁し方など、80'sテクノポッパー垂涎の音づくり(君に、胸キュン。のイントロパロディもあり)で聴き手を幻惑させており、その愚直なまでのこだわりには感心させられます。
結局その後路線を変えて1枚アルバムを残した後は目立った活動を行っていないこのユニットですが、またこのストレートなシンセポップミュージックを堪能したいものです。
<Favorite Songs>
・「Change! Cyborg」
オープニングにふさわしい軽快かつクールなテクノチューン。お約束の渋いボコーダーボイスがニクいくらいにハマっています。メインリフのサイン派からフィルターで尖らせていくシーケンスが、わかってはいるものの味のあるフレージングで納得させられます。電子音満載でもしつこさを感じさせないのが良いです。
・「In the mirror」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その1。バスドラのつんのめり方が絶妙です。基本的にドリーミーな音色で彩ったシンセをバックに、輪郭の丸い性質のヴォーカルが絡む癒し系の楽曲で、ポルタメントのかかった白玉パッドのにじみ方も「わかってる」感じです。
・「夢心地」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その2。オリエンタルなメロディ&音色が80年代の化粧品CMソングを彷佛とさせます。特徴的なリズム音色と琴フレーズが耳を魅かれますが、全体を漂うドリーミーでノスタルジックな雰囲気はもはや彼の芸風と言ってもよいでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (80'sシンセの見本市のような細部にこだわる音づくり)
・メロディ ★ (特にひねりは感じられないものの堅実なポップ風味)
・リズム ★★ (多彩な音色でこだわりを見せるが軽さも気になるところ)
・曲構成 ★★ (前半をテクノラウンジ、後半をテクノ歌謡で飽きさせず)
・個性 ★ (新ユニットになっても懐古テクノな芸風は変わらず)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「アスファルトの天使たち」 勇直子
「アスファルトの天使たち」(1986 RCA)
勇直子:vocal・chorus

1.「彼のビートで動き出す」 詞:松本一起 曲:原田真二 編:西平彰 コーラス編:135
2.「ナーバスにならないで」 詞:秋元康 曲:松尾一彦 編:西平彰
3.「Don’t Go -少年の痛みを-」
詞:松本一起 曲:久保田利伸 編:西平彰 コーラス編:135
4.「センターラインが終わるとき」 詞:秋元康 曲:松尾一彦 編:矢島賢
5.「スタイルのあった恋」 詞:松本一起 曲:松尾一彦 編:西平彰
6.「Just a Beatnik」 詞:川村真澄 曲:羽田一郎 編:西平彰 コーラス編:135
7.「トランシーバー・LOVE」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:平田謙吾 コーラス編:135
8.「少女の瞳」 詞:松本一起 曲:羽田一郎 編:西平彰
9.「Never Need Yesterday」 詞:松本一起 曲:原田真二 編:矢島賢 コーラス編:135
10.「想い出して」 詞:小林和子 曲:藤村一清 編:西平彰
<support musician>
北島健二:guitar
佐橋佳幸:guitar
土方隆行:guitar
矢島賢:guitar・keyboards・computer programming
平田謙吾:bass
大間ジロー:drums
エルトン永田:keyboards
西平彰:keyboards
矢島マキ:keyboards
Jake H.Concepcion:sax
矢口博康:sax
135:chorus・chorus arrangement
木戸やすひろ:chorus
新倉良美:chorus
比山貴咏史:chorus
平塚文子:chorus
松井隆雄:computer programming
● ロック色を前面に押し出し攻撃性のあるリズムに乗った女性アイドルの力の入ったデビュー作
1986年ドラマ「夏・体験物語2」で女優デビューした勇直子は、中山美穂路線を意識したダンスビートを基調とした音楽性で期待されたアイドルで、シングル「センターラインが終わるとき」でデビュー、2ndシングル「ナーバスにならないで」に続いて、早くも1stアルバムである本作をリリースします。80'sアイドルのスタンダードなタイプの1つであるいわゆるツッパリ路線ともいえる彼女のイメージそのままに、当時歌謡界にも市民権を得つつあったロック風味のサウンドが生かされた楽曲は、彼女のヴォーカルスタイルともマッチしていて、そのクオリティは決して低いものではありませんでした。本作はそんな彼女の他のアイドルとはひと味違ったテイストで個性をアピールした意欲作となっています。
さて、本作はボトムを効かせた強烈なスネアドラムに代表されるダンスビートが基本となっており、そのストレートな感覚と随所で披露されるギターソロからは確かにロック魂を感じさせます。10曲中7曲のアレンジを担当するのは当時売れっ子編曲家の1人で元EXOTICSの西平彰で、彼の真骨頂である強力なデジタルビートとキレのあるシンセワークはここでも健在です。特に目立つのは彼女の楽曲の代名詞ともいえる連打を多用するゲートの効いたバスドラムとエフェクティブなスネアドラムによるリズムトラックで、ロックな直線的ベースラインも相まって歌謡フィールドにロック式のアレンジを果敢に取り入れようとする意志が見え隠れします。作曲もオフコースの松尾一彦や原田真二、久保田利伸やその相棒だった羽田一郎など、ロック&POPS界隈からの実力者と若手期待株を起用、このあたりからもメロディにアイドルソングらしくないソリッドな風味を感じさせます。前述のように細かい譜割のリズム隊が全体のスピード感を支えているため、全体的にも飽きさせない好作品となっているわけですが、このジャストなビート感覚は翌年リリースの角松敏生プロデュース「BOOM BOOM BOOM」で最高潮に達していきます。
<Favorite Songs>
・「彼のビートで動き出す」
のっけから重心の効いたビートにロックなギターリフで攻めてくる原田真二作曲のオープニングチューン。うねりを効かせたギターソロからアウトロではサックスソロを挿入するなど、デビューアルバムにしてアダルトな雰囲気を纏った彼女の音楽性を早速発揮している楽曲です。
・「Don’t Go -少年の痛みを-」
暴れ回るシンセブラスに連打するバスドラ、アクセントとなるギミカルなエディットでスピード感を演出する楽曲。西平らしい派手なシンセフレーズを基調とした音数の多いサウンドで、本作前半のハイライトとなっています。
・「トランシーバー・LOVE」
イントロのマシンドラムがカッコ良い本作では珍しいタイプの爽やかポップチューン。元一風堂の平田謙吾アレンジということで平田本人の珍しくも軽快なスラップを聴くことができる跳ねまくりのデジタルファンクです。
<評点>
・サウンド ★★ (随所に挿入されるマシナリーなギミックが嬉しい)
・メロディ ★★ (キラーメロディには遠いが歌謡曲とは一線を画す)
・リズム ★★ (強烈なドラムサウンドに直線的ベースが潔い)
・曲構成 ★ (最後バラードで占めるのが予定調和で残念)
・個性 ★ (ロック路線は新しかったが本人自体の存在感は薄い)
総合評点: 6点
勇直子:vocal・chorus

1.「彼のビートで動き出す」 詞:松本一起 曲:原田真二 編:西平彰 コーラス編:135
2.「ナーバスにならないで」 詞:秋元康 曲:松尾一彦 編:西平彰
3.「Don’t Go -少年の痛みを-」
詞:松本一起 曲:久保田利伸 編:西平彰 コーラス編:135
4.「センターラインが終わるとき」 詞:秋元康 曲:松尾一彦 編:矢島賢
5.「スタイルのあった恋」 詞:松本一起 曲:松尾一彦 編:西平彰
6.「Just a Beatnik」 詞:川村真澄 曲:羽田一郎 編:西平彰 コーラス編:135
7.「トランシーバー・LOVE」 詞:川村真澄 曲:久保田利伸 編:平田謙吾 コーラス編:135
8.「少女の瞳」 詞:松本一起 曲:羽田一郎 編:西平彰
9.「Never Need Yesterday」 詞:松本一起 曲:原田真二 編:矢島賢 コーラス編:135
10.「想い出して」 詞:小林和子 曲:藤村一清 編:西平彰
<support musician>
北島健二:guitar
佐橋佳幸:guitar
土方隆行:guitar
矢島賢:guitar・keyboards・computer programming
平田謙吾:bass
大間ジロー:drums
エルトン永田:keyboards
西平彰:keyboards
矢島マキ:keyboards
Jake H.Concepcion:sax
矢口博康:sax
135:chorus・chorus arrangement
木戸やすひろ:chorus
新倉良美:chorus
比山貴咏史:chorus
平塚文子:chorus
松井隆雄:computer programming
● ロック色を前面に押し出し攻撃性のあるリズムに乗った女性アイドルの力の入ったデビュー作
1986年ドラマ「夏・体験物語2」で女優デビューした勇直子は、中山美穂路線を意識したダンスビートを基調とした音楽性で期待されたアイドルで、シングル「センターラインが終わるとき」でデビュー、2ndシングル「ナーバスにならないで」に続いて、早くも1stアルバムである本作をリリースします。80'sアイドルのスタンダードなタイプの1つであるいわゆるツッパリ路線ともいえる彼女のイメージそのままに、当時歌謡界にも市民権を得つつあったロック風味のサウンドが生かされた楽曲は、彼女のヴォーカルスタイルともマッチしていて、そのクオリティは決して低いものではありませんでした。本作はそんな彼女の他のアイドルとはひと味違ったテイストで個性をアピールした意欲作となっています。
さて、本作はボトムを効かせた強烈なスネアドラムに代表されるダンスビートが基本となっており、そのストレートな感覚と随所で披露されるギターソロからは確かにロック魂を感じさせます。10曲中7曲のアレンジを担当するのは当時売れっ子編曲家の1人で元EXOTICSの西平彰で、彼の真骨頂である強力なデジタルビートとキレのあるシンセワークはここでも健在です。特に目立つのは彼女の楽曲の代名詞ともいえる連打を多用するゲートの効いたバスドラムとエフェクティブなスネアドラムによるリズムトラックで、ロックな直線的ベースラインも相まって歌謡フィールドにロック式のアレンジを果敢に取り入れようとする意志が見え隠れします。作曲もオフコースの松尾一彦や原田真二、久保田利伸やその相棒だった羽田一郎など、ロック&POPS界隈からの実力者と若手期待株を起用、このあたりからもメロディにアイドルソングらしくないソリッドな風味を感じさせます。前述のように細かい譜割のリズム隊が全体のスピード感を支えているため、全体的にも飽きさせない好作品となっているわけですが、このジャストなビート感覚は翌年リリースの角松敏生プロデュース「BOOM BOOM BOOM」で最高潮に達していきます。
<Favorite Songs>
・「彼のビートで動き出す」
のっけから重心の効いたビートにロックなギターリフで攻めてくる原田真二作曲のオープニングチューン。うねりを効かせたギターソロからアウトロではサックスソロを挿入するなど、デビューアルバムにしてアダルトな雰囲気を纏った彼女の音楽性を早速発揮している楽曲です。
・「Don’t Go -少年の痛みを-」
暴れ回るシンセブラスに連打するバスドラ、アクセントとなるギミカルなエディットでスピード感を演出する楽曲。西平らしい派手なシンセフレーズを基調とした音数の多いサウンドで、本作前半のハイライトとなっています。
・「トランシーバー・LOVE」
イントロのマシンドラムがカッコ良い本作では珍しいタイプの爽やかポップチューン。元一風堂の平田謙吾アレンジということで平田本人の珍しくも軽快なスラップを聴くことができる跳ねまくりのデジタルファンクです。
<評点>
・サウンド ★★ (随所に挿入されるマシナリーなギミックが嬉しい)
・メロディ ★★ (キラーメロディには遠いが歌謡曲とは一線を画す)
・リズム ★★ (強烈なドラムサウンドに直線的ベースが潔い)
・曲構成 ★ (最後バラードで占めるのが予定調和で残念)
・個性 ★ (ロック路線は新しかったが本人自体の存在感は薄い)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「FAMILY GENESIS」 YMCK
「FAMILY GENESIS」(2008 エイベックス)
YMCK

<members>
除村武志:all instruments
栗原みどり:vocal
中村智之:movie
1.「プロローグ」 曲・編:除村武志
2.「錆びた扉の第8天国」 詞:除村武志 曲:中村智之 編:除村武志
3.「プレアデス」 詞:除村武志 曲:栗原みどり・除村武志 編:除村武志
4.「Starlight」 詞・曲・編:除村武志
5.「何方(いずかた)の笛」 曲・編:除村武志
6.「Carving the Rock」 詞・曲・編:除村武志
7.「フューチャー・インヴェージョン」 詞・曲・編:除村武志
8.「Rain」 詞・曲・編:除村武志
9.「システム・リブート」 曲・編:除村武志
10.「Floor 99」 詞・曲・編:除村武志
11.「Major Swing」 詞・曲・編:除村武志
12.「8番目の虹」 詞:除村武志 曲:栗原みどり・除村武志 編:除村武志
13.「時代遅れの空」 詞・曲・編:除村武志
14.「フィナーレ〜Welcome to the 8bit world〜」 詞・曲・編:除村武志
produced by YMCK
engineered by 除村武志
● 国産チップチューンユニットの代表格が遂にメジャーデビュー!壮大な大作で挑んだ頑なな8bitワールドの傑作
革命的な家庭用ゲーム機であった任天堂「ファミリーコンピュータ」のBGMに代表される8bitサウンド。PSGやSIDに代表されるこのシンプルな音源はチープでありながらもどこか温かみがあり、キュートな側面も感じられる独特なサウンドにより、80年代のファミコンブームに一役買っていました。しかしその音楽部分はその後独自の進化を遂げ、そのジャンルはチップチューンと名付けられ、00年代から今日に至るまで一定の評価を得ながら根強いファンを獲得しています。日本では古くはEXPOが名盤「エキスポの万国大戦略」において、またパラペッツ一派のくるくるメカがオムニバス収録の「夢見るメカ」等においてこのPSG音源によるサウンドをポップに再構築した楽曲を発表していましたが、本格的にチップチューンを世に知らしめたのは2003年に自主制作されたYMCKの1stアルバム「FAMILY MUSIC」でした。ジャズの手法を取り入れた軽妙な8bitミュージックを奏でる彼らのサウンドは、かわいらしい歌モノであることも相まって好事家の間に瞬く間に浸透し、話題を呼んだ彼らは、2枚のアルバムを残してメジャーに進出、一気に勝負をかけた3rdアルバムである本作をリリースしたわけです。
その音楽だけでなくアーティストイメージも解像度の低いドット絵を貫くというブレないコンセプトが魅力の彼らですが、その8bitサウンドへのこだわりは尋常ではありません。「Magical 8bit Plug」というPSG音源のソフトシンセを開発するなど、全方位的にチップチューンの普及に全力を傾ける姿勢には敬服に値します。肝心の3作目である本作においても、3部作の集大成という位置づけから14曲の大作となっており、ラストへ向かっての壮大な盛り上がりはさながら使い古されたRPGゲームのエンディングのようです。1stから匂わせるジャズテイストを随所に散りばめながらも単なるフェイクにとどまらないのが彼らの長所で、もともとレトロゲームに相性が良かった音階が上下するベースの動きやインプロヴィゼーションと思わせるほど自由奔放なフレージング、そして電子音ならではの逸脱したSE音が、上手くジャズの方法論にハマったという印象があります。チープで軽いPSGならではのリズムも、ジャズテイストとの親和性が高い理由の1つに挙げられると思います。当然出せる音が限られるためマンネリ感を引き起こしやすいジャンルではありますが、YMCKはあくまでメロディでも勝負できるだけの質の高さがあり、このあたりがチップチューンの代表的グループと呼ばれるゆえんでしょう。
<Favorite Songs>
・「プレアデス」
細かいシーケンスで音の洪水を聴かせながら、メロディはノスタルジックなポップチューン。YMCKの音楽自体がほとんど前述のような特徴を持っているわけですが、この楽曲はその中でも代表的なものであると言えます。上がりすぎず下がりすぎないメロディが実に聴きやすく処理されています。
・「Starlight」
彼らの特徴はそのままに、何度もコインが獲得できる複雑なドラムンベース的リズムワークが魅力のスペイシーポップ。目まぐるしく走り回る間奏では8bitならではの自由奔放さを堪能できます。
・「Rain」
イントロの味わい深いフレーズが「聴かせる」ロマンティックポップ。控えめながら複雑に絡み合うフレーズに、ニューミュージック要素を含む哀愁のコード進行で魅了します。
<評点>
・サウンド ★★ (全編これでもかの音数の多い高速フレーズでかき回す)
・メロディ ★★ (サウンド抜きにしても普通のポップソングとして聴ける)
・リズム ★★ (ファミコン音源による複雑なリズムメイクが大活躍)
・曲構成 ★ (努力しているがサウンドのタイプ的に大作向きではない)
・個性 ★ (実はチップチューンである必要もないかもしれない)
総合評点: 6点
YMCK

<members>
除村武志:all instruments
栗原みどり:vocal
中村智之:movie
1.「プロローグ」 曲・編:除村武志
2.「錆びた扉の第8天国」 詞:除村武志 曲:中村智之 編:除村武志
3.「プレアデス」 詞:除村武志 曲:栗原みどり・除村武志 編:除村武志
4.「Starlight」 詞・曲・編:除村武志
5.「何方(いずかた)の笛」 曲・編:除村武志
6.「Carving the Rock」 詞・曲・編:除村武志
7.「フューチャー・インヴェージョン」 詞・曲・編:除村武志
8.「Rain」 詞・曲・編:除村武志
9.「システム・リブート」 曲・編:除村武志
10.「Floor 99」 詞・曲・編:除村武志
11.「Major Swing」 詞・曲・編:除村武志
12.「8番目の虹」 詞:除村武志 曲:栗原みどり・除村武志 編:除村武志
13.「時代遅れの空」 詞・曲・編:除村武志
14.「フィナーレ〜Welcome to the 8bit world〜」 詞・曲・編:除村武志
produced by YMCK
engineered by 除村武志
● 国産チップチューンユニットの代表格が遂にメジャーデビュー!壮大な大作で挑んだ頑なな8bitワールドの傑作
革命的な家庭用ゲーム機であった任天堂「ファミリーコンピュータ」のBGMに代表される8bitサウンド。PSGやSIDに代表されるこのシンプルな音源はチープでありながらもどこか温かみがあり、キュートな側面も感じられる独特なサウンドにより、80年代のファミコンブームに一役買っていました。しかしその音楽部分はその後独自の進化を遂げ、そのジャンルはチップチューンと名付けられ、00年代から今日に至るまで一定の評価を得ながら根強いファンを獲得しています。日本では古くはEXPOが名盤「エキスポの万国大戦略」において、またパラペッツ一派のくるくるメカがオムニバス収録の「夢見るメカ」等においてこのPSG音源によるサウンドをポップに再構築した楽曲を発表していましたが、本格的にチップチューンを世に知らしめたのは2003年に自主制作されたYMCKの1stアルバム「FAMILY MUSIC」でした。ジャズの手法を取り入れた軽妙な8bitミュージックを奏でる彼らのサウンドは、かわいらしい歌モノであることも相まって好事家の間に瞬く間に浸透し、話題を呼んだ彼らは、2枚のアルバムを残してメジャーに進出、一気に勝負をかけた3rdアルバムである本作をリリースしたわけです。
その音楽だけでなくアーティストイメージも解像度の低いドット絵を貫くというブレないコンセプトが魅力の彼らですが、その8bitサウンドへのこだわりは尋常ではありません。「Magical 8bit Plug」というPSG音源のソフトシンセを開発するなど、全方位的にチップチューンの普及に全力を傾ける姿勢には敬服に値します。肝心の3作目である本作においても、3部作の集大成という位置づけから14曲の大作となっており、ラストへ向かっての壮大な盛り上がりはさながら使い古されたRPGゲームのエンディングのようです。1stから匂わせるジャズテイストを随所に散りばめながらも単なるフェイクにとどまらないのが彼らの長所で、もともとレトロゲームに相性が良かった音階が上下するベースの動きやインプロヴィゼーションと思わせるほど自由奔放なフレージング、そして電子音ならではの逸脱したSE音が、上手くジャズの方法論にハマったという印象があります。チープで軽いPSGならではのリズムも、ジャズテイストとの親和性が高い理由の1つに挙げられると思います。当然出せる音が限られるためマンネリ感を引き起こしやすいジャンルではありますが、YMCKはあくまでメロディでも勝負できるだけの質の高さがあり、このあたりがチップチューンの代表的グループと呼ばれるゆえんでしょう。
<Favorite Songs>
・「プレアデス」
細かいシーケンスで音の洪水を聴かせながら、メロディはノスタルジックなポップチューン。YMCKの音楽自体がほとんど前述のような特徴を持っているわけですが、この楽曲はその中でも代表的なものであると言えます。上がりすぎず下がりすぎないメロディが実に聴きやすく処理されています。
・「Starlight」
彼らの特徴はそのままに、何度もコインが獲得できる複雑なドラムンベース的リズムワークが魅力のスペイシーポップ。目まぐるしく走り回る間奏では8bitならではの自由奔放さを堪能できます。
・「Rain」
イントロの味わい深いフレーズが「聴かせる」ロマンティックポップ。控えめながら複雑に絡み合うフレーズに、ニューミュージック要素を含む哀愁のコード進行で魅了します。
<評点>
・サウンド ★★ (全編これでもかの音数の多い高速フレーズでかき回す)
・メロディ ★★ (サウンド抜きにしても普通のポップソングとして聴ける)
・リズム ★★ (ファミコン音源による複雑なリズムメイクが大活躍)
・曲構成 ★ (努力しているがサウンドのタイプ的に大作向きではない)
・個性 ★ (実はチップチューンである必要もないかもしれない)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「36.5℃」 中島みゆき
「36.5℃」(1986 キャニオン)
中島みゆき:vocal・acoustic guitar・backing vocals

1.「あたいの夏休み」 詞・曲:中島みゆき 編:後藤次利
2.「最悪」 詞・曲:中島みゆき 編:久石譲
3.「F.O.」 詞・曲:中島みゆき 編:椎名和夫
4.「毒をんな」 詞・曲:中島みゆき 編:椎名和夫
5.「シーサイド・コーポラス」 詞・曲:中島みゆき
6.「やまねこ」 詞・曲:中島みゆき 編:船山基紀
7.「HALF」 詞・曲:中島みゆき 編:椎名和夫
8.「見返り美人」 詞・曲:中島みゆき 編:萩田光雄
9.「白鳥の歌が聴こえる」 詞・曲:中島みゆき 編:久石譲
<support musician>
北島健二:guitar
松原正樹:guitar
芳野藤丸:guitar
田中一郎:sampling guitar
伊藤広規:bass
岡沢茂:bass
後藤次利:bass
美久月千晴:bass
青山純:drums
上原裕:drums
渡嘉敷祐一:drums
山木秀夫:drums
倉田信雄:acoustic piano
Stevie Wonder:synthesizer
エルトン永田:synthesizer
上綱克彦:synthesizer・acoustic piano・ekectric piano
瀬川英二:synthesizer
難波正司:synthesizer
山田秀俊:synthesizer
富樫春生:electric piano
浜口茂外也:percussion
Jake H. Concepcion:alto sax
斉藤清:alto sax
杉本和世:backing vocals
EVE:backing vocals
木戸やすひろ:backing vocals
比山貴咏史:backing vocals
河合雅人:synthesizer programming
椎名和夫:synthesizer programming・sequencer programming・drum machine programming・chorus arrangement
助川宏:synthesizer programming
根岸貴幸:synthesizer programming・sequencer programming
久石譲:synthesizer programming・sequencer programming・drum machine programming
福岡康子:synthesizer programming・sequencer programming
船山基紀:synthesizer programming・sequencer programming・drum machine programming
松武秀樹:synthesizer programming・sequencer programming
produced by 甲斐よしひろ
co-produced by miss M.
mixing engineered by Larry Alexander・甲斐よしひろ
recording engineered by Bob Harlan・阿部保弘・伊藤猛・猪俣彰三・黒田勝也・斉藤浩・佐藤康夫
● 日本を代表する個性派フォークシンガーが前作に引き続き情念の赴くままにロックに挑戦したデジタル色の強い冒険作
日本を代表する女性シンガーソングライターの頂点を極めたといっても過言ではない中島みゆきの80年代は、特に1985年からの数年間にわたる「御乱心の時代」と呼ばれる(デジタル)ロックテイスト溢れるサウンドメイクが注目に値するところです。85年リリースのアルバム「miss.M」は後藤次利をプロデューサーに迎えましたが、自身のソロワークや吉川晃司等の仕事ぶりからも想像できるようにゴリゴリした感触のシーケンス多用の打ち込みロックで新境地を開拓、情念系のニューミュージック/フォークなイメージを払拭させる意欲作でした。そして同年リリースの12インチシングル「つめたい別れ」(名曲!)ではなんとStevie Wonderと共演を果たし海外(N.Y)の先端的サウンドへと接近、翌86年にはシングル2枚でこの路線をさらに推し進める形になったところで、リリースとなったアルバムが本作というわけです。
プロデューサーには甲斐バンドの甲斐よしひろを迎えるなどロック精神準備万端といった感じの作品ですが、ミキシングをNew York Power Station StudioのLarry Alexanderに任せるなど、そのサウンドへの冒険心は本物と言って過言ではないでしょう。ロックへ最接近したと評される本作ですが、結果として行き着いたのはシンセ&シーケンスが大胆にフィーチャーされたテクノ〜エレポップに近い肌触りで、ドラムやベースといったリズム隊に打ち込みを多用することで、クッキリしたデジタルなノリと相対する情念系中島みゆき節との絶妙なコントラストを生み出していて、この新鮮さが半端ではありません。前作のプロデューサー後藤次利や当時デジタルに傾倒していた久石譲や船山基紀をアレンジャーに起用していることからも、そのサウンド属性は予想されるものでしたが、特に「F.O.」「毒をんな」等の椎名和夫アレンジの楽曲はよりきらびやかなデジタルサウンドで健闘しており、アクの強い中島楽曲に新しい音世界の提供に成功しています。80年代にニューミュージック系歌手がハマることが多いデジタルへの傾倒はこの超大物歌手にとっても例外ではなかったわけですが、そんなサウンドの大胆な変化にも揺るぎない確固たる世界観が彼女の楽曲には存在しており、この彼女色に染めてしまう「楽曲力の高さ」こそ中島みゆきたるゆえんと言えます。奇をてらった中でも彼女のアーティスト性の高さが感じられる作品です。
<Favorite Songs>
・「あたいの夏休み」
前アルバム「miss.M」に引き続いての後藤次利アレンジの先行シングルカット曲。ズッシリ響く派手なリズムトラックにお約束のスラップを基調にしたミニマル要素をはらむベースライン、サンプリングギミックで装飾を施しStevie Wonderがシンセを弾くという非常に豪華でタイトなデジタルPOPSです。
・「最悪」
80年代中期の打ち込みサウンド全盛の久石譲アレンジの本作中最もハードな楽曲。ディストーションの効いたギターがフィーチャーされ、ゴリゴリの打ち込みベースとゲートリバーブなバスドラ連打がなんとも攻撃的です。
・「やまねこ」
リバーブの効いたエレクトリックタムの響きが心地良い力強さに魅かれる船山基紀アレンジのシングルカット曲。小気味よいギターのカッティングがバックを支え、訴求力のあるサビと熱のこもったコーラスの活躍ぶりが光ります。後半のサビ前の上昇ポルタメントの熱さがこの楽曲のハイライトです。
<評点>
・サウンド ★★★ (デジタルを大胆に使用したサウンド冒険は最高潮)
・メロディ ★★ (これだけ派手な音の中でも独自の旋律は非常に頑固)
・リズム ★★★ (エフェクトを施しまくったドラムは熱さをもたらす)
・曲構成 ★★ (途中弾き語りで一息つくが全体的に音が非常に濃密)
・個性 ★★ (サウンドに埋もれそうな部分でしっかり自我を保つ)
総合評点: 7点
中島みゆき:vocal・acoustic guitar・backing vocals

1.「あたいの夏休み」 詞・曲:中島みゆき 編:後藤次利
2.「最悪」 詞・曲:中島みゆき 編:久石譲
3.「F.O.」 詞・曲:中島みゆき 編:椎名和夫
4.「毒をんな」 詞・曲:中島みゆき 編:椎名和夫
5.「シーサイド・コーポラス」 詞・曲:中島みゆき
6.「やまねこ」 詞・曲:中島みゆき 編:船山基紀
7.「HALF」 詞・曲:中島みゆき 編:椎名和夫
8.「見返り美人」 詞・曲:中島みゆき 編:萩田光雄
9.「白鳥の歌が聴こえる」 詞・曲:中島みゆき 編:久石譲
<support musician>
北島健二:guitar
松原正樹:guitar
芳野藤丸:guitar
田中一郎:sampling guitar
伊藤広規:bass
岡沢茂:bass
後藤次利:bass
美久月千晴:bass
青山純:drums
上原裕:drums
渡嘉敷祐一:drums
山木秀夫:drums
倉田信雄:acoustic piano
Stevie Wonder:synthesizer
エルトン永田:synthesizer
上綱克彦:synthesizer・acoustic piano・ekectric piano
瀬川英二:synthesizer
難波正司:synthesizer
山田秀俊:synthesizer
富樫春生:electric piano
浜口茂外也:percussion
Jake H. Concepcion:alto sax
斉藤清:alto sax
杉本和世:backing vocals
EVE:backing vocals
木戸やすひろ:backing vocals
比山貴咏史:backing vocals
河合雅人:synthesizer programming
椎名和夫:synthesizer programming・sequencer programming・drum machine programming・chorus arrangement
助川宏:synthesizer programming
根岸貴幸:synthesizer programming・sequencer programming
久石譲:synthesizer programming・sequencer programming・drum machine programming
福岡康子:synthesizer programming・sequencer programming
船山基紀:synthesizer programming・sequencer programming・drum machine programming
松武秀樹:synthesizer programming・sequencer programming
produced by 甲斐よしひろ
co-produced by miss M.
mixing engineered by Larry Alexander・甲斐よしひろ
recording engineered by Bob Harlan・阿部保弘・伊藤猛・猪俣彰三・黒田勝也・斉藤浩・佐藤康夫
● 日本を代表する個性派フォークシンガーが前作に引き続き情念の赴くままにロックに挑戦したデジタル色の強い冒険作
日本を代表する女性シンガーソングライターの頂点を極めたといっても過言ではない中島みゆきの80年代は、特に1985年からの数年間にわたる「御乱心の時代」と呼ばれる(デジタル)ロックテイスト溢れるサウンドメイクが注目に値するところです。85年リリースのアルバム「miss.M」は後藤次利をプロデューサーに迎えましたが、自身のソロワークや吉川晃司等の仕事ぶりからも想像できるようにゴリゴリした感触のシーケンス多用の打ち込みロックで新境地を開拓、情念系のニューミュージック/フォークなイメージを払拭させる意欲作でした。そして同年リリースの12インチシングル「つめたい別れ」(名曲!)ではなんとStevie Wonderと共演を果たし海外(N.Y)の先端的サウンドへと接近、翌86年にはシングル2枚でこの路線をさらに推し進める形になったところで、リリースとなったアルバムが本作というわけです。
プロデューサーには甲斐バンドの甲斐よしひろを迎えるなどロック精神準備万端といった感じの作品ですが、ミキシングをNew York Power Station StudioのLarry Alexanderに任せるなど、そのサウンドへの冒険心は本物と言って過言ではないでしょう。ロックへ最接近したと評される本作ですが、結果として行き着いたのはシンセ&シーケンスが大胆にフィーチャーされたテクノ〜エレポップに近い肌触りで、ドラムやベースといったリズム隊に打ち込みを多用することで、クッキリしたデジタルなノリと相対する情念系中島みゆき節との絶妙なコントラストを生み出していて、この新鮮さが半端ではありません。前作のプロデューサー後藤次利や当時デジタルに傾倒していた久石譲や船山基紀をアレンジャーに起用していることからも、そのサウンド属性は予想されるものでしたが、特に「F.O.」「毒をんな」等の椎名和夫アレンジの楽曲はよりきらびやかなデジタルサウンドで健闘しており、アクの強い中島楽曲に新しい音世界の提供に成功しています。80年代にニューミュージック系歌手がハマることが多いデジタルへの傾倒はこの超大物歌手にとっても例外ではなかったわけですが、そんなサウンドの大胆な変化にも揺るぎない確固たる世界観が彼女の楽曲には存在しており、この彼女色に染めてしまう「楽曲力の高さ」こそ中島みゆきたるゆえんと言えます。奇をてらった中でも彼女のアーティスト性の高さが感じられる作品です。
<Favorite Songs>
・「あたいの夏休み」
前アルバム「miss.M」に引き続いての後藤次利アレンジの先行シングルカット曲。ズッシリ響く派手なリズムトラックにお約束のスラップを基調にしたミニマル要素をはらむベースライン、サンプリングギミックで装飾を施しStevie Wonderがシンセを弾くという非常に豪華でタイトなデジタルPOPSです。
・「最悪」
80年代中期の打ち込みサウンド全盛の久石譲アレンジの本作中最もハードな楽曲。ディストーションの効いたギターがフィーチャーされ、ゴリゴリの打ち込みベースとゲートリバーブなバスドラ連打がなんとも攻撃的です。
・「やまねこ」
リバーブの効いたエレクトリックタムの響きが心地良い力強さに魅かれる船山基紀アレンジのシングルカット曲。小気味よいギターのカッティングがバックを支え、訴求力のあるサビと熱のこもったコーラスの活躍ぶりが光ります。後半のサビ前の上昇ポルタメントの熱さがこの楽曲のハイライトです。
<評点>
・サウンド ★★★ (デジタルを大胆に使用したサウンド冒険は最高潮)
・メロディ ★★ (これだけ派手な音の中でも独自の旋律は非常に頑固)
・リズム ★★★ (エフェクトを施しまくったドラムは熱さをもたらす)
・曲構成 ★★ (途中弾き語りで一息つくが全体的に音が非常に濃密)
・個性 ★★ (サウンドに埋もれそうな部分でしっかり自我を保つ)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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