「JPN」 Perfume
「JPN」(2011 徳間ジャパン)
Perfume

<members>
西脇綾香:vocals
樫野有香:vocals
大本彩乃:vocals
1.「The Opening」 曲・編:中田ヤスタカ
2.「レーザービーム (Album-mix)」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
3.「GLITTER (Album-mix)」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
4.「ナチュラルに恋して」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
5.「MY COLOR」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
6.「時の針」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
7.「ねぇ」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
8.「微かなカオリ」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
9.「575」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
10.「VOICE」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
11.「心のスポーツ」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
12.「Have a Stroll」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
13.「不自然なガール」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
14.「スパイス」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
<support musician>
中田ヤスタカ:synthesizer & computer programming
produced by 中田ヤスタカ
engineered by 中田ヤスタカ
● 過剰な前2作からスッキリさせた電子音でクオリティが復活!完全にスターダムにのし上がったアイドルトリオの4thアルバム
メジャーデビュー以来、近未来感溢れるエレクトリックサウンドと軽快なダンスパフォーマンス、そして精力的なプロモーションの賜物によりアイドルファンのみならず音楽好きリスナーの心をつかみブレイクを果たしたPerfumeは、数々のシングルヒットを放ちながら、「GAME」「⊿(トライアングル)」といったアルバムではエッジの効いたアイドルらしからぬサウンドを引っさげて音楽的にウルサイリスナー層にもしっかりアピールするなど、綿密なイメージ戦略がハマって日本はおろか世界へとその活動の場を広げています。2011年にリリースされた4thアルバムである本作は、世界進出前の最後のアルバムということで、これまでの数々の成功と栄光に包まれたPerfumeサウンドの集大成というべき作品で、シングル収録曲が実に9曲にも上るなどほぼベスト盤といってもよい内容ながら、歌モノとして洗練されたポップソングに回帰したような印象を受ける好盤です。
名盤であった初期のベスト盤「Perfume〜Complete Best」の素朴かつキュートなテクノポップが、ブレイク以降のアルバム2枚では、制作側とリスナー側の気合いが空回りしたかのように音の密度が濃過ぎてしまい消化不良を起こしてしまった感がありましたが、本作では本来の中田ヤスタカの持ち味である薄っぺらいチープなDTMサウンドが復活して、持ち前のメロディセンスを際立たせることに成功しています。特に音の長さや音数を上手く調整した結果(1トラック音を抜くだけでも相当違う)音の隙間を生み出し、本来彼女たちの楽曲の魅力でもあったキュートなエレクトリック+ポップ精神が復活した感があります。彼女たちにしては(ファンやスタッフも)必要以上に背伸びしていた前2作での息苦しさがここでは解消され、本作では等身大のPerfumeをやっと見つけることができています。決して初期の回帰的なものではなく、大人へと成長した結果として本作のようなスッキリしたシンセポップサウンドが彼女たちにハマったと言えるでしょう。また、「心のスポーツ」「Have a Stroll」といったアルバム用新曲もこれまでの作品とは異なる肌触りの良い上品な仕上がりで、そのクオリティの高さも本作の評価を上げている要素の1つでもあります。このようなサウンド面での変化も顕著となったアルバムですが、あくまで個人的な感覚として、これまでプロデュース過多気味な作品が多かった中で、本作はPerfumeを彼女たちの手に戻すことができた大切な作品ではないかと思っています。
<Favorite Songs>
・「レーザービーム (Album-mix)」
チープなシンセリフとスピード感溢れるシーケンスで突っ走る13thシングル曲。アルバムのためにremixが施され細かく切り刻まれた音の洪水をこれでもかと浴びせかけてきます。このせわしなさは本アルバムにおいて欠かせないカラーとなっています。
・「575」
アルバムタイトルを意識した和のテイストを感じさせるミディアムチューン。少ない音数でゆったりと流れるオリエンタルテクノポップですが、(好き嫌いは激しいと思いますが)途中でラップを挿入したり、これまでにない音色を使用したり仕掛けも豊富で飽きさせない楽曲です。
・「スパイス」
遂にドラマ主題歌にも抜擢されたファンタジックな14thシングル曲。万華鏡のようなサスペンチックなアルペジオイントロのつかみが全てと言ってもよい楽曲で、これまでには余り見られなかった展開の楽曲に期待感が煽られる名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (これまでとは比較にならないほど少ない音数ですっきり)
・メロディ ★★★ (サウンドが洗練されて質の高いメロディラインが強調される)
・リズム ★★ (しつこいほどにギミックを多用し機械的なノリを演出)
・曲構成 ★ (やはり14曲は多過ぎ、せっかくの良曲の印象が薄まる)
・個性 ★★ (年齢的にも音楽的にもこのぐらいが彼女たちの等身大)
総合評点: 7点
Perfume

<members>
西脇綾香:vocals
樫野有香:vocals
大本彩乃:vocals
1.「The Opening」 曲・編:中田ヤスタカ
2.「レーザービーム (Album-mix)」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
3.「GLITTER (Album-mix)」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
4.「ナチュラルに恋して」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
5.「MY COLOR」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
6.「時の針」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
7.「ねぇ」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
8.「微かなカオリ」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
9.「575」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
10.「VOICE」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
11.「心のスポーツ」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
12.「Have a Stroll」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
13.「不自然なガール」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
14.「スパイス」 詞・曲・編:中田ヤスタカ
<support musician>
中田ヤスタカ:synthesizer & computer programming
produced by 中田ヤスタカ
engineered by 中田ヤスタカ
● 過剰な前2作からスッキリさせた電子音でクオリティが復活!完全にスターダムにのし上がったアイドルトリオの4thアルバム
メジャーデビュー以来、近未来感溢れるエレクトリックサウンドと軽快なダンスパフォーマンス、そして精力的なプロモーションの賜物によりアイドルファンのみならず音楽好きリスナーの心をつかみブレイクを果たしたPerfumeは、数々のシングルヒットを放ちながら、「GAME」「⊿(トライアングル)」といったアルバムではエッジの効いたアイドルらしからぬサウンドを引っさげて音楽的にウルサイリスナー層にもしっかりアピールするなど、綿密なイメージ戦略がハマって日本はおろか世界へとその活動の場を広げています。2011年にリリースされた4thアルバムである本作は、世界進出前の最後のアルバムということで、これまでの数々の成功と栄光に包まれたPerfumeサウンドの集大成というべき作品で、シングル収録曲が実に9曲にも上るなどほぼベスト盤といってもよい内容ながら、歌モノとして洗練されたポップソングに回帰したような印象を受ける好盤です。
名盤であった初期のベスト盤「Perfume〜Complete Best」の素朴かつキュートなテクノポップが、ブレイク以降のアルバム2枚では、制作側とリスナー側の気合いが空回りしたかのように音の密度が濃過ぎてしまい消化不良を起こしてしまった感がありましたが、本作では本来の中田ヤスタカの持ち味である薄っぺらいチープなDTMサウンドが復活して、持ち前のメロディセンスを際立たせることに成功しています。特に音の長さや音数を上手く調整した結果(1トラック音を抜くだけでも相当違う)音の隙間を生み出し、本来彼女たちの楽曲の魅力でもあったキュートなエレクトリック+ポップ精神が復活した感があります。彼女たちにしては(ファンやスタッフも)必要以上に背伸びしていた前2作での息苦しさがここでは解消され、本作では等身大のPerfumeをやっと見つけることができています。決して初期の回帰的なものではなく、大人へと成長した結果として本作のようなスッキリしたシンセポップサウンドが彼女たちにハマったと言えるでしょう。また、「心のスポーツ」「Have a Stroll」といったアルバム用新曲もこれまでの作品とは異なる肌触りの良い上品な仕上がりで、そのクオリティの高さも本作の評価を上げている要素の1つでもあります。このようなサウンド面での変化も顕著となったアルバムですが、あくまで個人的な感覚として、これまでプロデュース過多気味な作品が多かった中で、本作はPerfumeを彼女たちの手に戻すことができた大切な作品ではないかと思っています。
<Favorite Songs>
・「レーザービーム (Album-mix)」
チープなシンセリフとスピード感溢れるシーケンスで突っ走る13thシングル曲。アルバムのためにremixが施され細かく切り刻まれた音の洪水をこれでもかと浴びせかけてきます。このせわしなさは本アルバムにおいて欠かせないカラーとなっています。
・「575」
アルバムタイトルを意識した和のテイストを感じさせるミディアムチューン。少ない音数でゆったりと流れるオリエンタルテクノポップですが、(好き嫌いは激しいと思いますが)途中でラップを挿入したり、これまでにない音色を使用したり仕掛けも豊富で飽きさせない楽曲です。
・「スパイス」
遂にドラマ主題歌にも抜擢されたファンタジックな14thシングル曲。万華鏡のようなサスペンチックなアルペジオイントロのつかみが全てと言ってもよい楽曲で、これまでには余り見られなかった展開の楽曲に期待感が煽られる名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (これまでとは比較にならないほど少ない音数ですっきり)
・メロディ ★★★ (サウンドが洗練されて質の高いメロディラインが強調される)
・リズム ★★ (しつこいほどにギミックを多用し機械的なノリを演出)
・曲構成 ★ (やはり14曲は多過ぎ、せっかくの良曲の印象が薄まる)
・個性 ★★ (年齢的にも音楽的にもこのぐらいが彼女たちの等身大)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「ロマンチック」 RIKA
「ロマンチック」(1987 ポニーキャニオン)
RIKA:vocal・voice

1.「地下水道を走れ!」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
2.「それでも君は眠れない」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
3.「ひまわり」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
4.「雨の中で僕は」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
5.「恋人」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
6.「東京オクトパス」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
7.「ロマンチック」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
8.「日曜日の悲劇」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
9.「タダノトモダチ」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
10.「海百合の庭園で」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
<support musician>
名取豊広:electric guitar
五十嵐洋:acoustic guitar・steel drum・chorus
栗原正己:recorder・bass
立岡トシマサ:drums
鳩野信二:keyboards・chorus
佐藤公彦:alto sax
中西俊博:violins
前田信吉:bassoon
前田美智子:soprano
福島トシカツ:voice
produced by RIKA・臼井正樹
engineered by 石塚良一・掛潤一・佐藤晴彦・市川高信
● ヨーロピアンニューウェーブを下地にしたガールポップを独特のセンスで料理した女性アーティストのデビューアルバム
電子楽器が身近になり自主的な多重録音によるデモテープ作りに勤しむ少年少女も急激に増えてきた80年代中盤ともなると、その家内制手工業的な音楽観が生み出す独特の存在感が評価されて、デビューを果たす新感覚のソロアーティストも現れ始めました。RIKAもそのような出自を持つシンガーソングライターの1人で、そのような音楽的背景からテクノ・ニューウェーブを通過してアレしたヒネクレ感覚が曲者の雰囲気を醸し出すものの、メジャー特有の保守構造に中和されて、一般人にも取っつきやすい、しかしどこか引っかかりのあるPOPSを短い活動期間の間に産み落としていきました。シングル「ファイブ・シャドウ」でデビュー、ポプコン優秀賞の2ndシングル「雨の中で僕は」に続く1stアルバムである本作は、そんな彼女の世界観を完全とはいかないまでもアピールすることのできた良作として、一部で語り継がれている作品です。
作詞作曲はともかくアレンジも手掛ける自己完結型シンガーのRIKAですが、本作では後に栗コーダーカルテットとして一部の人気を獲得する栗原正己との共同アレンジという形をとっています。ニューウェーブとしてはいささか親しみやすいポップ感覚、ニューミュージックというには音色の使い方や前衛性に富んだアレンジが目立つ作風で、結果としてそのどちらにも属さない立ち位置が個性となっているような印象を受けます。特に「雨の中で僕は」のカオスな間奏や、「恋人」の何とも言えない場末の昭和レトロな情景のシンセ&サンプラーでの表現、「海百合の庭園で」のようなバラードでもこれみよがしな幻想的なシンセプログラミングを聴かせるような女性アーティストに、普通の感性を期待すること自体が野暮なことぐらい自明の理なわけで、全編にわたってPOPSの殻をかぶったストレンジニューウェーブな楽曲で自己主張しています。結局この微妙な立ち位置がメジャーフィールドには似つかわしくなかったのか、シングル「ようこそシネマハウスへ」のリリース後には音楽活動の表舞台から一歩引く形となります。しかしその後さっぽろももこ名義でゲームクリエイターとしてしっかりその尖った感性を生かされている場を切り開いて活躍中です。
<Favorite Songs>
・「地下水道を走れ!」
流れるような打ち込みシーケンスにディレイがかったギター、アヴァンギャルドなサックスプレイなど躍動感溢れる曲調のオープニングナンバー。微妙にノリを加えたリズムパターンの構築に非凡なものを感じます。
・「ひまわり」
シンセベースと連打クラップの絡みも軽快なキュートな打ち込みPOPS。栗原のリコーダーフレーズにノスタルジーを感じさせながらも適度に攻撃的なプログラミングにテクノな魂を注入している部分も微笑ましいです。
・「タダノトモダチ」
軽やかなベースラインとリズムのプログラミングの妙が光る切ないポップソング。音数が多い方ではないが各パートの空間処理に優れているため、物足りなさは感じさせません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (ギターやリズムの空間処理で打ち込みの魅力を再確認)
・メロディ ★ (親しみやすくもあるが実はキャッチーとは言い難い)
・リズム ★★★ (深いリバーブのタムや微妙にノリを作り出す打ち込みが◯)
・曲構成 ★ (一癖あるアレンジが目立つが抜きん出る楽曲も少ない)
・個性 ★★ (ポプコン出身という肩書きが音楽性の足を引っ張ったか)
総合評点: 7点
RIKA:vocal・voice

1.「地下水道を走れ!」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
2.「それでも君は眠れない」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
3.「ひまわり」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
4.「雨の中で僕は」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
5.「恋人」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
6.「東京オクトパス」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
7.「ロマンチック」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
8.「日曜日の悲劇」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
9.「タダノトモダチ」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
10.「海百合の庭園で」 詞・曲:RIKA 編:栗原正己・RIKA
<support musician>
名取豊広:electric guitar
五十嵐洋:acoustic guitar・steel drum・chorus
栗原正己:recorder・bass
立岡トシマサ:drums
鳩野信二:keyboards・chorus
佐藤公彦:alto sax
中西俊博:violins
前田信吉:bassoon
前田美智子:soprano
福島トシカツ:voice
produced by RIKA・臼井正樹
engineered by 石塚良一・掛潤一・佐藤晴彦・市川高信
● ヨーロピアンニューウェーブを下地にしたガールポップを独特のセンスで料理した女性アーティストのデビューアルバム
電子楽器が身近になり自主的な多重録音によるデモテープ作りに勤しむ少年少女も急激に増えてきた80年代中盤ともなると、その家内制手工業的な音楽観が生み出す独特の存在感が評価されて、デビューを果たす新感覚のソロアーティストも現れ始めました。RIKAもそのような出自を持つシンガーソングライターの1人で、そのような音楽的背景からテクノ・ニューウェーブを通過してアレしたヒネクレ感覚が曲者の雰囲気を醸し出すものの、メジャー特有の保守構造に中和されて、一般人にも取っつきやすい、しかしどこか引っかかりのあるPOPSを短い活動期間の間に産み落としていきました。シングル「ファイブ・シャドウ」でデビュー、ポプコン優秀賞の2ndシングル「雨の中で僕は」に続く1stアルバムである本作は、そんな彼女の世界観を完全とはいかないまでもアピールすることのできた良作として、一部で語り継がれている作品です。
作詞作曲はともかくアレンジも手掛ける自己完結型シンガーのRIKAですが、本作では後に栗コーダーカルテットとして一部の人気を獲得する栗原正己との共同アレンジという形をとっています。ニューウェーブとしてはいささか親しみやすいポップ感覚、ニューミュージックというには音色の使い方や前衛性に富んだアレンジが目立つ作風で、結果としてそのどちらにも属さない立ち位置が個性となっているような印象を受けます。特に「雨の中で僕は」のカオスな間奏や、「恋人」の何とも言えない場末の昭和レトロな情景のシンセ&サンプラーでの表現、「海百合の庭園で」のようなバラードでもこれみよがしな幻想的なシンセプログラミングを聴かせるような女性アーティストに、普通の感性を期待すること自体が野暮なことぐらい自明の理なわけで、全編にわたってPOPSの殻をかぶったストレンジニューウェーブな楽曲で自己主張しています。結局この微妙な立ち位置がメジャーフィールドには似つかわしくなかったのか、シングル「ようこそシネマハウスへ」のリリース後には音楽活動の表舞台から一歩引く形となります。しかしその後さっぽろももこ名義でゲームクリエイターとしてしっかりその尖った感性を生かされている場を切り開いて活躍中です。
<Favorite Songs>
・「地下水道を走れ!」
流れるような打ち込みシーケンスにディレイがかったギター、アヴァンギャルドなサックスプレイなど躍動感溢れる曲調のオープニングナンバー。微妙にノリを加えたリズムパターンの構築に非凡なものを感じます。
・「ひまわり」
シンセベースと連打クラップの絡みも軽快なキュートな打ち込みPOPS。栗原のリコーダーフレーズにノスタルジーを感じさせながらも適度に攻撃的なプログラミングにテクノな魂を注入している部分も微笑ましいです。
・「タダノトモダチ」
軽やかなベースラインとリズムのプログラミングの妙が光る切ないポップソング。音数が多い方ではないが各パートの空間処理に優れているため、物足りなさは感じさせません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (ギターやリズムの空間処理で打ち込みの魅力を再確認)
・メロディ ★ (親しみやすくもあるが実はキャッチーとは言い難い)
・リズム ★★★ (深いリバーブのタムや微妙にノリを作り出す打ち込みが◯)
・曲構成 ★ (一癖あるアレンジが目立つが抜きん出る楽曲も少ない)
・個性 ★★ (ポプコン出身という肩書きが音楽性の足を引っ張ったか)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「大ピース」 パール兄弟
「大ピース」(1992 ワーナー)
パール兄弟

<members>
サエキけんぞう:voices・chorus
松永俊弥:drums・voices・chorus
矢代恒彦:keyboards・synthesizer solo・guitars・chorus
1.「君にマニョマニョ」 詞:サエキけんぞう 曲:松永俊弥 編:白井良明
2.「ホログラフ」 詞:サエキけんぞう 曲:矢代恒彦 編:岡田徹
3.「秒速ラブ」 詞:サエキけんぞう 曲:井上ヨシマサ 編:パール兄弟・井上ヨシマサ
4.「POMPだ!」 詞:サエキけんぞう 曲:近田春夫 編:近田春夫
5.「恋は(ローラー)²」 詞:サエキけんぞう 曲:戸田誠司 編:戸田誠司
6.「CANDYへ」 詞:サエキけんぞう 曲:奥居香 編:戸田誠司
7.「親指トム」 詞・曲:サエキけんぞう 編:武部聡志
8.「ラティン・マン」 詞:サエキけんぞう 曲:井上ヨシマサ 編:小西康陽
9.「AV」 詞:サエキけんぞう 曲:松永俊弥 編:岡田徹
10.「太陽ソース」 詞:サエキけんぞう 曲:沖山優司 編:白井良明
<support musician>
江蔵浩一:guitars
小倉博和:guitars
白井良明:guitars・chorus
戸田誠司:guitars・keyboards
森初子:guitars
山田直毅:guitars
神保伸太郎:bass
小西康陽:keyboards
武部聡志:keyboards
川瀬正人:percussions
松田幸一:harp
A.K.I:chorus
Joey McCoy:chorus
美尾洋乃:chorus
大竹徹夫:synthesizer operate
木島由紀洋:synthesizer operate
国友孝純:synthesizer operate
久保幹一郎:synthesizer operate
坂元俊介:synthesizer operate
遠山淳:synthesizer operate
produced by 白井良明・岡田徹・井上ヨシマサ・近田春夫・戸田誠司・武部聡志・小西康陽・パール兄弟
co-produced by パール兄弟
mixing engineered by 内沼映二
recording engineered by 古川誠・酒井崇裕・高山徹・中村充時
● メンバーチェンジを経て外部作家にプロデュースを委ね歌謡POPS路線にシフトしたバンド史上きってのポップ作品
5thアルバム「六本木島」を最後に、兄弟の片割れであり楽曲・サウンド共にバンドの要であった窪田晴男が脱退(当時は勘当という言葉が使われた)、続いて長年バンドのボトムを支えてきたベースのバカボン鈴木も相次いで脱退するなど、パール兄弟は大きな転換期を迎えることとなります。サエキと松永の2名となったパール兄弟は、サポートキーボーディストとしてその役割を高めていた矢代恒彦を正式メンバーに加え3人組として再スタートを図りますが、方向性の転換は余儀なくされる中で、1992年レコード会社も移籍して本作がリリースされます。多彩な楽曲を揃えながらサエキけんぞう色の強いポップな作風に転換した本作ですが、窪田の脱退によって懸念された楽曲のクオリティは豊富な人脈からの外部作編曲家によって保たれるなど、タイプは違えどもその職人気質なセンスはしっかり引き継いでいる良作となっています。
アレンジャーがそれぞれの楽曲をプロデュースという外部分業制ともいうべき本作には、白井良明や岡田徹といったMOON RIDERS勢や80年代を代表する編曲家である武部聡志、近田春夫や戸田誠司、小西康陽といったバンドと近しい戦友といってもよい曲者クリエイター、そして井上ヨシマサ、奥居香といった(当時の)若手メロディメイカーを惜しみなく参加させており、そしてそれぞれ持ち味を十二分に発揮した彼らにより丁寧に作り上げられた楽曲の質にはとやかく述べる隙間を与えられません。これまでサウンド面で余りにも大きな影響力を誇示してきた窪田晴男の脱退によりギターサウンドの比率は後退し、バカボン鈴木が抜けたことにより味わい深いベースプレイも堪能することができませんが、その代わりシンセフレーズは格段とサウンドの核として配置されています。これは新加入の矢代恒彦のお披露目的な部分もあるかもしれませんが、窪田のギターに代わる矢代のテクニカルなシンセワーク(特にシンセソロ)は凄まじく、本作から始まる後期パール兄弟のストロングポイントとなっていきます。このように楽曲やサウンドの大幅な転換によって賛否両論分かれた本作ですが、それでも全体的にパール兄弟としての矜持を保っていられるのは、揺るぎないサエキけんぞうの歌詞による世界観の構築ぶりによるものが大きく、それは再結成した現在においても不変の才能であると思います。
<Favorite Songs>
・「君にマニョマニョ」
白井良明プロデュースの底抜けに明るいロックチューン。リフレインする「マニョマニョ〜♪」に代表される脱力系の歌詞を巧みに表現する楽天的な楽曲スタイルですが、矢代恒彦の随所で逸脱するようなシンセソロがなかなか熱くて痺れます。
・「秒速ラブ」
今をときめく売れっ子作編曲家井上ヨシマサとパール兄弟の共同プロデュースによるバラードソング。全体をシンセで埋め尽くしたアレンジに時報をメトロノーム代わりにするアイデア、ポルタメントを上手く使って歪みを効果的にもたらすなど、随所に凝ったギミックで楽しませてくれます。
・「恋は(ローラー)²」
テクノなベースラインが疾走する爽やかな満点のポップチューン。深みのあるシンセパッドにキレのあるシンセブラス、これらを機械的なベースフレーズで直進的に突っ切る潔さがこの楽曲の魅力と言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ中心にシフトしたが多彩なゲストの作風がサポート)
・メロディ ★★ (良曲は生み出すが窪田のような引っかかりは少なくなる)
・リズム ★★ (窪田在籍時の存在感は薄れたがこれは時代によるものか)
・曲構成 ★ (バラエティに富んだ楽曲を上手くまとめたがラスト2曲が・・)
・個性 ★★ (多くのゲストを迎えた結果バンドとしての個性は薄まったか)
総合評点: 7点
パール兄弟

<members>
サエキけんぞう:voices・chorus
松永俊弥:drums・voices・chorus
矢代恒彦:keyboards・synthesizer solo・guitars・chorus
1.「君にマニョマニョ」 詞:サエキけんぞう 曲:松永俊弥 編:白井良明
2.「ホログラフ」 詞:サエキけんぞう 曲:矢代恒彦 編:岡田徹
3.「秒速ラブ」 詞:サエキけんぞう 曲:井上ヨシマサ 編:パール兄弟・井上ヨシマサ
4.「POMPだ!」 詞:サエキけんぞう 曲:近田春夫 編:近田春夫
5.「恋は(ローラー)²」 詞:サエキけんぞう 曲:戸田誠司 編:戸田誠司
6.「CANDYへ」 詞:サエキけんぞう 曲:奥居香 編:戸田誠司
7.「親指トム」 詞・曲:サエキけんぞう 編:武部聡志
8.「ラティン・マン」 詞:サエキけんぞう 曲:井上ヨシマサ 編:小西康陽
9.「AV」 詞:サエキけんぞう 曲:松永俊弥 編:岡田徹
10.「太陽ソース」 詞:サエキけんぞう 曲:沖山優司 編:白井良明
<support musician>
江蔵浩一:guitars
小倉博和:guitars
白井良明:guitars・chorus
戸田誠司:guitars・keyboards
森初子:guitars
山田直毅:guitars
神保伸太郎:bass
小西康陽:keyboards
武部聡志:keyboards
川瀬正人:percussions
松田幸一:harp
A.K.I:chorus
Joey McCoy:chorus
美尾洋乃:chorus
大竹徹夫:synthesizer operate
木島由紀洋:synthesizer operate
国友孝純:synthesizer operate
久保幹一郎:synthesizer operate
坂元俊介:synthesizer operate
遠山淳:synthesizer operate
produced by 白井良明・岡田徹・井上ヨシマサ・近田春夫・戸田誠司・武部聡志・小西康陽・パール兄弟
co-produced by パール兄弟
mixing engineered by 内沼映二
recording engineered by 古川誠・酒井崇裕・高山徹・中村充時
● メンバーチェンジを経て外部作家にプロデュースを委ね歌謡POPS路線にシフトしたバンド史上きってのポップ作品
5thアルバム「六本木島」を最後に、兄弟の片割れであり楽曲・サウンド共にバンドの要であった窪田晴男が脱退(当時は勘当という言葉が使われた)、続いて長年バンドのボトムを支えてきたベースのバカボン鈴木も相次いで脱退するなど、パール兄弟は大きな転換期を迎えることとなります。サエキと松永の2名となったパール兄弟は、サポートキーボーディストとしてその役割を高めていた矢代恒彦を正式メンバーに加え3人組として再スタートを図りますが、方向性の転換は余儀なくされる中で、1992年レコード会社も移籍して本作がリリースされます。多彩な楽曲を揃えながらサエキけんぞう色の強いポップな作風に転換した本作ですが、窪田の脱退によって懸念された楽曲のクオリティは豊富な人脈からの外部作編曲家によって保たれるなど、タイプは違えどもその職人気質なセンスはしっかり引き継いでいる良作となっています。
アレンジャーがそれぞれの楽曲をプロデュースという外部分業制ともいうべき本作には、白井良明や岡田徹といったMOON RIDERS勢や80年代を代表する編曲家である武部聡志、近田春夫や戸田誠司、小西康陽といったバンドと近しい戦友といってもよい曲者クリエイター、そして井上ヨシマサ、奥居香といった(当時の)若手メロディメイカーを惜しみなく参加させており、そしてそれぞれ持ち味を十二分に発揮した彼らにより丁寧に作り上げられた楽曲の質にはとやかく述べる隙間を与えられません。これまでサウンド面で余りにも大きな影響力を誇示してきた窪田晴男の脱退によりギターサウンドの比率は後退し、バカボン鈴木が抜けたことにより味わい深いベースプレイも堪能することができませんが、その代わりシンセフレーズは格段とサウンドの核として配置されています。これは新加入の矢代恒彦のお披露目的な部分もあるかもしれませんが、窪田のギターに代わる矢代のテクニカルなシンセワーク(特にシンセソロ)は凄まじく、本作から始まる後期パール兄弟のストロングポイントとなっていきます。このように楽曲やサウンドの大幅な転換によって賛否両論分かれた本作ですが、それでも全体的にパール兄弟としての矜持を保っていられるのは、揺るぎないサエキけんぞうの歌詞による世界観の構築ぶりによるものが大きく、それは再結成した現在においても不変の才能であると思います。
<Favorite Songs>
・「君にマニョマニョ」
白井良明プロデュースの底抜けに明るいロックチューン。リフレインする「マニョマニョ〜♪」に代表される脱力系の歌詞を巧みに表現する楽天的な楽曲スタイルですが、矢代恒彦の随所で逸脱するようなシンセソロがなかなか熱くて痺れます。
・「秒速ラブ」
今をときめく売れっ子作編曲家井上ヨシマサとパール兄弟の共同プロデュースによるバラードソング。全体をシンセで埋め尽くしたアレンジに時報をメトロノーム代わりにするアイデア、ポルタメントを上手く使って歪みを効果的にもたらすなど、随所に凝ったギミックで楽しませてくれます。
・「恋は(ローラー)²」
テクノなベースラインが疾走する爽やかな満点のポップチューン。深みのあるシンセパッドにキレのあるシンセブラス、これらを機械的なベースフレーズで直進的に突っ切る潔さがこの楽曲の魅力と言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ中心にシフトしたが多彩なゲストの作風がサポート)
・メロディ ★★ (良曲は生み出すが窪田のような引っかかりは少なくなる)
・リズム ★★ (窪田在籍時の存在感は薄れたがこれは時代によるものか)
・曲構成 ★ (バラエティに富んだ楽曲を上手くまとめたがラスト2曲が・・)
・個性 ★★ (多くのゲストを迎えた結果バンドとしての個性は薄まったか)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「copine.」 大貫妙子
「copine.」(1985 ミディ)
大貫妙子:vocal・background vocals

1.「Les aventures de TINTIN」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
2.「ベジタブル」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
3.「春の嵐」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
4.「Siena」 詞・曲:大貫妙子 編:清水靖晃
5.「Amico,sei felice?」 詞:大貫妙子・Angela Piva 曲:大貫妙子 編:坂本龍一
6.「OUT OF AFRICA」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
7.「Leave me alone」 詞・曲:大貫妙子 編:清水信之
8.「Jacques-Henri Lartigue」 詞・曲:大貫妙子 編:清水信之
9.「しあわせな男達へ」 詞・曲:大貫妙子 編:清水信之
10.「野辺」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
<support musician>
坂本龍一:synthesizer・Rhodes・all instruments
清水信之:guitar・synthesizer・all instruments
清水靖晃:all instruments
Huge McCracken:guitar
大村憲司:guitar
Will Lee:bass
伊藤広規:bass
Omar Hakim:drums
Steve Ferrone:drums
Don Grolnick:acoustic piano
Mino Cinelu:percussion
浜口茂外也:percussion
Randy Brecker:trumpet
Michael Brecker:tenor sax・alto sax・synthesized woodwind
Gene Orloff:strings concert master
加藤JOEグループ:strings
EPO:background vocals
梅野貴典:computer programming
遠山淳:computer programming
produced by 大貫妙子・宮田繁樹
mixing engineered by 大川正義・坂本龍一・清水信之
recording engineered by 大川正義・滝瀬茂・森本信・Paul Wickiffe・Josh Abbey
● 円熟味を増した大貫ワールドを堪能できる坂本龍一バックアップの集大成的作品
1976年のデビュー以来アレンジャーとして、またプロデューサーとして坂本龍一のサポートを受けてきた大貫妙子は、80年代半ばには既にベテランの域に達し他の歌手への作詞作曲の提供も多くなり、アーティストとして確固たる地位を確立してきました。そんな高品質のソングライティング能力もさることながら、やはり彼女の魅力といえばその独特の声質による歌唱であり、それが遺憾なく発揮されるのはソロ活動というわけで、80年代に入っても順調に毎年1枚のペースで作品をリリースしてきました。そして85年リリースされた本作では、これまでと同様に坂本龍一や清水信之らのバックアップを得ながら、次作以降のアコースティック路線の匂いもほのかに感じさせる集大成でありながら、過渡期ともいえる作品となっています。
繊細で儚げな大貫ヴォーカルを支えるのに似つかわしくないシンセ&サンプラーによる機械的なサウンドに加えて美しいストリングスに導かれる壮大なアレンジは、前作までに引き続き彼女の作品のストロングポイントですが、ア素晴らしいのはやはり絶妙な音数の間引き方で、シーケンスにしても生演奏にしてもその楽曲に必要な音色やフレーズをしっかりと選別して生かされることによってできる音の隙間が巧みに利用されています。このあたりはさすが彼女の楽曲の酸いも甘いも知り尽くした坂本龍一と清水信之、そして本作では「Siena」1曲のみ参加でも存在感を発揮している清水靖晃のサウンドセンスの賜物でしょう。よりゴージャスになったヨーロピアンサウンドにTECHNOLOGY POPS的にはいかにもシンセといったフレーズをベースや上モノ問わず取り入れてくれるところが嬉しい限りですが、とにかくバランス感覚が優れているためか決してそのデジタルっぽさが鼻につかない仕上がりになっていることにも、本作の質の高さが表れており、そのあたりがこのサウンドチームによる集大成作品と言われるゆえんかもしれません。
<Favorite Songs>
・「Les aventures de TINTIN」
伊藤広規のスラップとリズムマシンによる独特の機械なノリが秀逸なオープニングナンバー。Fairlightとおぼしきサンプリングサウンドがコラージュ的に散りばめられたゴリゴリのテクノサウンドですが、音数少なめな中での空間処理が素晴らしいです。
・「ベジタブル」
シングルカットされた化粧品CMソングのヒット曲。ストリングスフレーズも流麗なゆったり楽曲ですが、デジタルシンセ&サンプラーによるサウンドデザインの計算高さが良い味を出しています。特にタムのゲートリバーブの響きが心地良いです。終わり方もまさに坂本エンディングな乙なコード感です。
・「Siena」
牧歌的な曲調に機械的なシーケンスというアンバランスさを醸し出す、80年代ならではのサウンドが光る清水靖晃アレンジ曲。リズムのアクセントに合わせたシンセパッドがポイントです。清水の自由なサックスプレイも味わい深いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (生音と電子音の絶妙なバランスはさすがは匠の技)
・メロディ ★★ (オシャレなメロディ過ぎてサビでもあっさり感が強い)
・リズム ★★★ (外国勢のさすがの演奏力と緻密な打ち込みドラム共に秀逸)
・曲構成 ★ (後半に進みに従い落ち着きを増したが最後に大波が欲しい)
・個性 ★★ (坂本+清水路線はこれ以上は望めなかったのもまた事実)
総合評点: 7点
大貫妙子:vocal・background vocals

1.「Les aventures de TINTIN」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
2.「ベジタブル」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
3.「春の嵐」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
4.「Siena」 詞・曲:大貫妙子 編:清水靖晃
5.「Amico,sei felice?」 詞:大貫妙子・Angela Piva 曲:大貫妙子 編:坂本龍一
6.「OUT OF AFRICA」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
7.「Leave me alone」 詞・曲:大貫妙子 編:清水信之
8.「Jacques-Henri Lartigue」 詞・曲:大貫妙子 編:清水信之
9.「しあわせな男達へ」 詞・曲:大貫妙子 編:清水信之
10.「野辺」 詞・曲:大貫妙子 編:坂本龍一
<support musician>
坂本龍一:synthesizer・Rhodes・all instruments
清水信之:guitar・synthesizer・all instruments
清水靖晃:all instruments
Huge McCracken:guitar
大村憲司:guitar
Will Lee:bass
伊藤広規:bass
Omar Hakim:drums
Steve Ferrone:drums
Don Grolnick:acoustic piano
Mino Cinelu:percussion
浜口茂外也:percussion
Randy Brecker:trumpet
Michael Brecker:tenor sax・alto sax・synthesized woodwind
Gene Orloff:strings concert master
加藤JOEグループ:strings
EPO:background vocals
梅野貴典:computer programming
遠山淳:computer programming
produced by 大貫妙子・宮田繁樹
mixing engineered by 大川正義・坂本龍一・清水信之
recording engineered by 大川正義・滝瀬茂・森本信・Paul Wickiffe・Josh Abbey
● 円熟味を増した大貫ワールドを堪能できる坂本龍一バックアップの集大成的作品
1976年のデビュー以来アレンジャーとして、またプロデューサーとして坂本龍一のサポートを受けてきた大貫妙子は、80年代半ばには既にベテランの域に達し他の歌手への作詞作曲の提供も多くなり、アーティストとして確固たる地位を確立してきました。そんな高品質のソングライティング能力もさることながら、やはり彼女の魅力といえばその独特の声質による歌唱であり、それが遺憾なく発揮されるのはソロ活動というわけで、80年代に入っても順調に毎年1枚のペースで作品をリリースしてきました。そして85年リリースされた本作では、これまでと同様に坂本龍一や清水信之らのバックアップを得ながら、次作以降のアコースティック路線の匂いもほのかに感じさせる集大成でありながら、過渡期ともいえる作品となっています。
繊細で儚げな大貫ヴォーカルを支えるのに似つかわしくないシンセ&サンプラーによる機械的なサウンドに加えて美しいストリングスに導かれる壮大なアレンジは、前作までに引き続き彼女の作品のストロングポイントですが、ア素晴らしいのはやはり絶妙な音数の間引き方で、シーケンスにしても生演奏にしてもその楽曲に必要な音色やフレーズをしっかりと選別して生かされることによってできる音の隙間が巧みに利用されています。このあたりはさすが彼女の楽曲の酸いも甘いも知り尽くした坂本龍一と清水信之、そして本作では「Siena」1曲のみ参加でも存在感を発揮している清水靖晃のサウンドセンスの賜物でしょう。よりゴージャスになったヨーロピアンサウンドにTECHNOLOGY POPS的にはいかにもシンセといったフレーズをベースや上モノ問わず取り入れてくれるところが嬉しい限りですが、とにかくバランス感覚が優れているためか決してそのデジタルっぽさが鼻につかない仕上がりになっていることにも、本作の質の高さが表れており、そのあたりがこのサウンドチームによる集大成作品と言われるゆえんかもしれません。
<Favorite Songs>
・「Les aventures de TINTIN」
伊藤広規のスラップとリズムマシンによる独特の機械なノリが秀逸なオープニングナンバー。Fairlightとおぼしきサンプリングサウンドがコラージュ的に散りばめられたゴリゴリのテクノサウンドですが、音数少なめな中での空間処理が素晴らしいです。
・「ベジタブル」
シングルカットされた化粧品CMソングのヒット曲。ストリングスフレーズも流麗なゆったり楽曲ですが、デジタルシンセ&サンプラーによるサウンドデザインの計算高さが良い味を出しています。特にタムのゲートリバーブの響きが心地良いです。終わり方もまさに坂本エンディングな乙なコード感です。
・「Siena」
牧歌的な曲調に機械的なシーケンスというアンバランスさを醸し出す、80年代ならではのサウンドが光る清水靖晃アレンジ曲。リズムのアクセントに合わせたシンセパッドがポイントです。清水の自由なサックスプレイも味わい深いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (生音と電子音の絶妙なバランスはさすがは匠の技)
・メロディ ★★ (オシャレなメロディ過ぎてサビでもあっさり感が強い)
・リズム ★★★ (外国勢のさすがの演奏力と緻密な打ち込みドラム共に秀逸)
・曲構成 ★ (後半に進みに従い落ち着きを増したが最後に大波が欲しい)
・個性 ★★ (坂本+清水路線はこれ以上は望めなかったのもまた事実)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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