「LABYRINTH」 郷ひろみ
「LABYRINTH」(1985 CBSソニー)
郷ひろみ:vocal・chorus・chorus arrangement

1.「Cool」 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
2.「I Love Youの香り」 詞:松井五郎 曲・編:大村雅朗
3.「サファイア・ブルー」 詞:松本隆 曲:井上陽水 編:大村雅朗
4.「LABYRINTH」 詞:松井五郎 曲:郷ひろみ 編:大村雅朗
5.「サーティーズ・スコッチ」 詞:売野雅勇 曲:原田真二 編:大村雅朗
6.「The Heart Beats」 詞:来生えつこ 曲:山本達彦 編:大村雅朗
7.「イージー・ハンター」 詞:来生えつこ 曲・編:大村雅朗
8.「ぎりぎり燃えて」 詞:来生えつこ 曲:原田真二 編:大村雅朗
9.「Deep」 詞:松井五郎 曲:郷ひろみ 編:大村雅朗
10.「バラードで泣かせて」 詞:売野雅勇 曲:安藤まさひろ 編:大村雅朗
<support musician>
今 剛:guitar
鳥山雄司:guitar
松原正樹:guitar
伊藤広規:bass
高水健司:bass
美久月千晴:bass
島村英二:drums
渡嘉敷祐一:drums
大村雅朗:keyboards
富樫春生:keyboards
斎藤ノブ:percussion
Jake H. Concepcion:sax
衛藤幸雄:flute
八木のぶお:harmonica
加藤JOE:strings
木戸泰弘:chorus
新倉芳美:chorus
浦田恵司:synthesizer operate
松武秀樹:synthesizer operate
sound produced by 大村雅朗
engineered by 鈴木智雄・芳川勇人
● 大人の色香を漂わすクールでイケメンな世界観を稀代のアレンジャーが表現した国民的歌手の意欲作
国民的アイドルとして注目を浴び続けてきた郷ひろみは、80年代に入ると徐々にアイーティスティックな側面を垣間見せ始め作詞はもちろん、作曲までこなした楽曲もアルバムに収録されるなど、決してキャラクターだけではない部分をアピールしていきます。坂本龍一をプロデュースに迎えた「比呂魅卿の犯罪」はそんなアーティスト性を加速させる名盤といえるものでしたが、その後も年2枚のハイペースでアルバムをリリースする彼は、84年末のアルバム「ALLUSION」では遂にヘンリー浜口名義でセルフプロデュースを敢行し、一皮むけたニューロマ風味のエレポップ路線でこれまでのイメージを払拭すべく新境地を開拓していきました。そして間隔を空けずに85年にリリースされた本作はそのエレクトロ歌謡路線をアダルトにまとめ上げた傑作となり、郷ひろみとしてのアーティスト性を知らしめることに成功はしたものの、スターダムな人気からは落ち着いたものとなり、以降は作品のリリースペースも徐々に落ちていくことになるわけです。
さて、本作のサウンドプロデュースは80年代を代表するアレンジャーであり、80年代中期当時は吉川晃司や太田裕美等で硬質なエレクトリックサウンドを得意としていた大村雅朗が務めています。前作「ALLUSION」でも全編アレンジを手掛けた彼ですが、本作でも松武秀樹や浦田恵司のプログラミングを中心にキレのあるデジタルサウンドで聴き手を魅了しています。前作の大沢誉志幸や玉置浩二らに引き続き、大江千里や原田真二(前作も参加)、山本達彦といった80年代を彩るシンガーソングライターを作曲に起用しているところにも、このエレポップ路線で勝負するぞ、という意志表明が感じられるわけですが、それに応じて楽曲自体はかなりアダルト感覚で、いかにも80年代ニューミュージック的なバタ臭い歌謡メロディ色が満載です。しかしこの時期の大村アレンジですから、とにかくギミックかつエフェクティブなリズムが攻撃的で、YMOファミリーが参加した「比呂魅卿の犯罪」よりも本作の方がTECHNOLOGYな印象を受けるでしょう。このようにサウンド面でタイトル通り「COOL」なイメージを緻密かつ大胆に補完することに成功した本作は、郷ひろみにとってこのエレクトリック路線の郷ひろみの集大成と言っても差し支えない重要作品と言えると思います。
<Favorite Songs>
・「Cool」
大江千里&大村雅朗の黄金コンビによるタイトルチューン。冷ややかなデジタルシンセによる音像が素晴らしく、タイトル通りのかっこいいエレポップに仕上がっています。チョッパー&エレドラという当時のエレクトロサウンドをしっかり取り入れつつ盛り上がらず爽やかになり過ぎない大人の緻密なサウンドメイクが嬉しいです。
・「The Heart Beats」
シンセによる効果音のギミックが独特な後半の最初を飾るアッパーチューン。余り使われないようなアトモスフィアなシンセパッド、細かく入るエレドラなどサウンド面での実験が顕著です。ラストに驚くほどの爆音リズムで終わるのも意外性があります。
・「ぎりぎり燃えて」
本作において全編にわたりフィーチャーされる哀愁メロディが目立つ歌謡POPS。リズムボックスまで取り入れたミディアムテンポのファンキーリズム、尺八ライクな音色のシンセが個性的です。サビでメジャーに転調するアクセントもなかなか良いです。
<評点>
・サウンド ★★ (イメージ戦略として冷ややかなデジタルシンセを多用)
・メロディ ★ (サウンドで冒険もメロディはバタ臭い哀愁歌謡曲路線)
・リズム ★★★ (音色やプレイなどリズム隊が非常に目立つ構成になっている)
・曲構成 ★★ (トータルコンセプトをサウンド面でも統一させていて好感)
・個性 ★★ (この時期の郷ひろみはエレクトリック面での充実ぶりが◯)
総合評点: 7点
郷ひろみ:vocal・chorus・chorus arrangement

1.「Cool」 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
2.「I Love Youの香り」 詞:松井五郎 曲・編:大村雅朗
3.「サファイア・ブルー」 詞:松本隆 曲:井上陽水 編:大村雅朗
4.「LABYRINTH」 詞:松井五郎 曲:郷ひろみ 編:大村雅朗
5.「サーティーズ・スコッチ」 詞:売野雅勇 曲:原田真二 編:大村雅朗
6.「The Heart Beats」 詞:来生えつこ 曲:山本達彦 編:大村雅朗
7.「イージー・ハンター」 詞:来生えつこ 曲・編:大村雅朗
8.「ぎりぎり燃えて」 詞:来生えつこ 曲:原田真二 編:大村雅朗
9.「Deep」 詞:松井五郎 曲:郷ひろみ 編:大村雅朗
10.「バラードで泣かせて」 詞:売野雅勇 曲:安藤まさひろ 編:大村雅朗
<support musician>
今 剛:guitar
鳥山雄司:guitar
松原正樹:guitar
伊藤広規:bass
高水健司:bass
美久月千晴:bass
島村英二:drums
渡嘉敷祐一:drums
大村雅朗:keyboards
富樫春生:keyboards
斎藤ノブ:percussion
Jake H. Concepcion:sax
衛藤幸雄:flute
八木のぶお:harmonica
加藤JOE:strings
木戸泰弘:chorus
新倉芳美:chorus
浦田恵司:synthesizer operate
松武秀樹:synthesizer operate
sound produced by 大村雅朗
engineered by 鈴木智雄・芳川勇人
● 大人の色香を漂わすクールでイケメンな世界観を稀代のアレンジャーが表現した国民的歌手の意欲作
国民的アイドルとして注目を浴び続けてきた郷ひろみは、80年代に入ると徐々にアイーティスティックな側面を垣間見せ始め作詞はもちろん、作曲までこなした楽曲もアルバムに収録されるなど、決してキャラクターだけではない部分をアピールしていきます。坂本龍一をプロデュースに迎えた「比呂魅卿の犯罪」はそんなアーティスト性を加速させる名盤といえるものでしたが、その後も年2枚のハイペースでアルバムをリリースする彼は、84年末のアルバム「ALLUSION」では遂にヘンリー浜口名義でセルフプロデュースを敢行し、一皮むけたニューロマ風味のエレポップ路線でこれまでのイメージを払拭すべく新境地を開拓していきました。そして間隔を空けずに85年にリリースされた本作はそのエレクトロ歌謡路線をアダルトにまとめ上げた傑作となり、郷ひろみとしてのアーティスト性を知らしめることに成功はしたものの、スターダムな人気からは落ち着いたものとなり、以降は作品のリリースペースも徐々に落ちていくことになるわけです。
さて、本作のサウンドプロデュースは80年代を代表するアレンジャーであり、80年代中期当時は吉川晃司や太田裕美等で硬質なエレクトリックサウンドを得意としていた大村雅朗が務めています。前作「ALLUSION」でも全編アレンジを手掛けた彼ですが、本作でも松武秀樹や浦田恵司のプログラミングを中心にキレのあるデジタルサウンドで聴き手を魅了しています。前作の大沢誉志幸や玉置浩二らに引き続き、大江千里や原田真二(前作も参加)、山本達彦といった80年代を彩るシンガーソングライターを作曲に起用しているところにも、このエレポップ路線で勝負するぞ、という意志表明が感じられるわけですが、それに応じて楽曲自体はかなりアダルト感覚で、いかにも80年代ニューミュージック的なバタ臭い歌謡メロディ色が満載です。しかしこの時期の大村アレンジですから、とにかくギミックかつエフェクティブなリズムが攻撃的で、YMOファミリーが参加した「比呂魅卿の犯罪」よりも本作の方がTECHNOLOGYな印象を受けるでしょう。このようにサウンド面でタイトル通り「COOL」なイメージを緻密かつ大胆に補完することに成功した本作は、郷ひろみにとってこのエレクトリック路線の郷ひろみの集大成と言っても差し支えない重要作品と言えると思います。
<Favorite Songs>
・「Cool」
大江千里&大村雅朗の黄金コンビによるタイトルチューン。冷ややかなデジタルシンセによる音像が素晴らしく、タイトル通りのかっこいいエレポップに仕上がっています。チョッパー&エレドラという当時のエレクトロサウンドをしっかり取り入れつつ盛り上がらず爽やかになり過ぎない大人の緻密なサウンドメイクが嬉しいです。
・「The Heart Beats」
シンセによる効果音のギミックが独特な後半の最初を飾るアッパーチューン。余り使われないようなアトモスフィアなシンセパッド、細かく入るエレドラなどサウンド面での実験が顕著です。ラストに驚くほどの爆音リズムで終わるのも意外性があります。
・「ぎりぎり燃えて」
本作において全編にわたりフィーチャーされる哀愁メロディが目立つ歌謡POPS。リズムボックスまで取り入れたミディアムテンポのファンキーリズム、尺八ライクな音色のシンセが個性的です。サビでメジャーに転調するアクセントもなかなか良いです。
<評点>
・サウンド ★★ (イメージ戦略として冷ややかなデジタルシンセを多用)
・メロディ ★ (サウンドで冒険もメロディはバタ臭い哀愁歌謡曲路線)
・リズム ★★★ (音色やプレイなどリズム隊が非常に目立つ構成になっている)
・曲構成 ★★ (トータルコンセプトをサウンド面でも統一させていて好感)
・個性 ★★ (この時期の郷ひろみはエレクトリック面での充実ぶりが◯)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「愛がなくちゃね。」 矢野顕子
「愛がなくちゃね。」(1982 徳間ジャパン)
矢野顕子:vocal・keyboards

1.「愛がなくちゃね」
詞:矢野顕子・Peter Barakan 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
2.「悲しくてやりきれない」
詞:サトウハチロー 曲:加藤和彦 編:坂本龍一・矢野顕子
3.「What’s Got In Your Eyes」
詞:矢野顕子・Peter Barakan 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
4.「おいしい生活」 詞:糸井重里・矢野顕子 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
5.「みちでバッタリ」 詞:岡真史 曲:高橋悠治 編:坂本龍一・矢野顕子
6.「女たちよ 男たちよ」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
7.「あいするひとよ」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
8.「Sleep On My Baby」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
9.「Another Wedding Song」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
10.「どんなときも どんなときも どんなときも」
詞:矢野顕子・糸井重里 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
11.「Good Night」
詞:矢野顕子・Peter Barakan 曲:高橋悠治 編:坂本龍一・矢野顕子
<support musician>
David Sylvian:vocal
David Rhodes:guitar
Robbie Mackintosh:guitar
大村憲司:guitar
駒沢裕城:steel guitar
Mick Karn:bass
細野晴臣:bass
Steve Jansen:drums
高橋幸宏:drums
坂本龍一:keyboards
浜口茂外也:percussion
produced by 坂本龍一・矢野顕子
mixing engineered by Steve Nye・坂本龍一・田中信一
recording engineered by Steve Nye・田中信一
● JAPANとのコラボによって日本を再認識したニューウェーブ期に輝くカリスマ女性ヴォーカリストロンドン録音の傑作
1976年のデビューよりその独創性あふれる音楽スタイルで現在もファンの心を掴んで離さない女性シンガーソングライターの重鎮、矢野顕子は、ソロ活動のかたわら70年代末には2度にわたりYMOのワールドツアーにサポート参加、その紅一点ぶりとプレイが評価され海外にも名を知られるようになります。もともと早くから電子楽器を取り入れた楽曲を制作していた彼女は、YMOのサポート活動により80年代初頭からは必然的に電子音の比重が高い楽曲をリリースしていきますが、当時の世界的なニューウェーブムーブメントにタメを張ったYMOのサウンドメイクと自身の類稀な歌唱&メロディメイク、そして海外のミュージシャンを引きつけてやまない天性のキャラクター&才能で、日本のニューミュージックな体裁をとりながらも世界レベルのクオリティを持つ数少ない日本人であったと思います。本作はそんな彼女の6枚目にあたる作品で、YMOが全面参加した「ごはんができたよ」、大ヒットとなったシングル「春咲小紅」を収録した「ただいま。」に続いて、坂本龍一をはじめとしたYMOメンバーに加えて、親交の深かったニューウェーブ化して進境著しかったUKバンドJAPANのメンバーも参加した、豪華なアルバムとなっています。
JAPANの世紀の名盤「Tin Drum」のエンジニアSteve Nyeも参加するなど本気のロンドン録音を含む本作ですが、単純に洋楽化することなく、日本の民謡や童謡、唱歌などをエッセンスとしたオリエンタルPOPSを当時最先端のエレクトリックサウンドを織り交ぜながら表現しています。また、いわゆるテクノ・ニューウェーブの影響下にあったYMOやJAPANが参加しながら、テクノな面影はそれほど感じさせず、どちらかといえば彼らのプレイヤーとしての技術を評価したバンド演奏を主体として、実は比率の多いシンセサウンドがあくまで演奏の一部として扱っているように見えるのも矢野顕子というアーティスト性が彼らに引けをとらない表れとも言えるでしょう。豪華なゲストの割には楽曲が少々地味で小曲も多い本作であるがゆえに、サウンド面での実験性やこだわりがほどよく感じられるのが嬉しい、音楽性の高さが際立つ彼女のアルバムの中でも1、2を争う名盤であると思います。
<Favorite Songs>
・「愛がなくちゃね」
東洋的なシンセフレーズとふわふわしたベースラインが魅力のタイトルチューン。Steve JansenとMick KarnのJAPANリズム隊の個性的なプレイも良いですが、彼らの素朴な日本語コーラスも感慨深いです。また、1回りしてから本格的に盛り上がる構成も単純に上手いと思います。
・「あいするひとよ」
浮遊するシーケンスがうっすらとバックを流れる本作中最もテクノポップな楽曲。生楽器はドラムのみという潔さに、くぐもった不安定なシンセフレーズや尖ったシンセパッド、ラジオのカットアップなども取り入れて、しかし歌のメロディはオリエンタルというなんとも不思議な名曲です。
・「どんなときも どんなときも どんなときも」
優しいメロディが身にしみるニューミュージック色の強い人気の高い名曲。繰り返しの多いAメロを中心に、後半はガラリと変えてくる2部構成のような楽曲で、バラードっぽくもありながら演奏としての見せ場もある、そういった部分に矢野顕子のセンスが感じられます。
<評点>
・サウンド ★★★ (音色だけで聴かせるいかにも坂本らしいシンセは多彩)
・メロディ ★★ (光る楽曲はあるが本作のメロディ自体は地味な部類に)
・リズム ★★★★ (洋邦のセンス溢れるリズム隊を贅沢にも従える)
・曲構成 ★ (小曲も多くアルバム全体としては物足りなさも残る)
・個性 ★★ (大ヒット後の作品の余裕が音的には実験性が強い)
総合評点: 7点
矢野顕子:vocal・keyboards

1.「愛がなくちゃね」
詞:矢野顕子・Peter Barakan 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
2.「悲しくてやりきれない」
詞:サトウハチロー 曲:加藤和彦 編:坂本龍一・矢野顕子
3.「What’s Got In Your Eyes」
詞:矢野顕子・Peter Barakan 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
4.「おいしい生活」 詞:糸井重里・矢野顕子 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
5.「みちでバッタリ」 詞:岡真史 曲:高橋悠治 編:坂本龍一・矢野顕子
6.「女たちよ 男たちよ」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
7.「あいするひとよ」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
8.「Sleep On My Baby」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
9.「Another Wedding Song」 詞・曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
10.「どんなときも どんなときも どんなときも」
詞:矢野顕子・糸井重里 曲:矢野顕子 編:坂本龍一・矢野顕子
11.「Good Night」
詞:矢野顕子・Peter Barakan 曲:高橋悠治 編:坂本龍一・矢野顕子
<support musician>
David Sylvian:vocal
David Rhodes:guitar
Robbie Mackintosh:guitar
大村憲司:guitar
駒沢裕城:steel guitar
Mick Karn:bass
細野晴臣:bass
Steve Jansen:drums
高橋幸宏:drums
坂本龍一:keyboards
浜口茂外也:percussion
produced by 坂本龍一・矢野顕子
mixing engineered by Steve Nye・坂本龍一・田中信一
recording engineered by Steve Nye・田中信一
● JAPANとのコラボによって日本を再認識したニューウェーブ期に輝くカリスマ女性ヴォーカリストロンドン録音の傑作
1976年のデビューよりその独創性あふれる音楽スタイルで現在もファンの心を掴んで離さない女性シンガーソングライターの重鎮、矢野顕子は、ソロ活動のかたわら70年代末には2度にわたりYMOのワールドツアーにサポート参加、その紅一点ぶりとプレイが評価され海外にも名を知られるようになります。もともと早くから電子楽器を取り入れた楽曲を制作していた彼女は、YMOのサポート活動により80年代初頭からは必然的に電子音の比重が高い楽曲をリリースしていきますが、当時の世界的なニューウェーブムーブメントにタメを張ったYMOのサウンドメイクと自身の類稀な歌唱&メロディメイク、そして海外のミュージシャンを引きつけてやまない天性のキャラクター&才能で、日本のニューミュージックな体裁をとりながらも世界レベルのクオリティを持つ数少ない日本人であったと思います。本作はそんな彼女の6枚目にあたる作品で、YMOが全面参加した「ごはんができたよ」、大ヒットとなったシングル「春咲小紅」を収録した「ただいま。」に続いて、坂本龍一をはじめとしたYMOメンバーに加えて、親交の深かったニューウェーブ化して進境著しかったUKバンドJAPANのメンバーも参加した、豪華なアルバムとなっています。
JAPANの世紀の名盤「Tin Drum」のエンジニアSteve Nyeも参加するなど本気のロンドン録音を含む本作ですが、単純に洋楽化することなく、日本の民謡や童謡、唱歌などをエッセンスとしたオリエンタルPOPSを当時最先端のエレクトリックサウンドを織り交ぜながら表現しています。また、いわゆるテクノ・ニューウェーブの影響下にあったYMOやJAPANが参加しながら、テクノな面影はそれほど感じさせず、どちらかといえば彼らのプレイヤーとしての技術を評価したバンド演奏を主体として、実は比率の多いシンセサウンドがあくまで演奏の一部として扱っているように見えるのも矢野顕子というアーティスト性が彼らに引けをとらない表れとも言えるでしょう。豪華なゲストの割には楽曲が少々地味で小曲も多い本作であるがゆえに、サウンド面での実験性やこだわりがほどよく感じられるのが嬉しい、音楽性の高さが際立つ彼女のアルバムの中でも1、2を争う名盤であると思います。
<Favorite Songs>
・「愛がなくちゃね」
東洋的なシンセフレーズとふわふわしたベースラインが魅力のタイトルチューン。Steve JansenとMick KarnのJAPANリズム隊の個性的なプレイも良いですが、彼らの素朴な日本語コーラスも感慨深いです。また、1回りしてから本格的に盛り上がる構成も単純に上手いと思います。
・「あいするひとよ」
浮遊するシーケンスがうっすらとバックを流れる本作中最もテクノポップな楽曲。生楽器はドラムのみという潔さに、くぐもった不安定なシンセフレーズや尖ったシンセパッド、ラジオのカットアップなども取り入れて、しかし歌のメロディはオリエンタルというなんとも不思議な名曲です。
・「どんなときも どんなときも どんなときも」
優しいメロディが身にしみるニューミュージック色の強い人気の高い名曲。繰り返しの多いAメロを中心に、後半はガラリと変えてくる2部構成のような楽曲で、バラードっぽくもありながら演奏としての見せ場もある、そういった部分に矢野顕子のセンスが感じられます。
<評点>
・サウンド ★★★ (音色だけで聴かせるいかにも坂本らしいシンセは多彩)
・メロディ ★★ (光る楽曲はあるが本作のメロディ自体は地味な部類に)
・リズム ★★★★ (洋邦のセンス溢れるリズム隊を贅沢にも従える)
・曲構成 ★ (小曲も多くアルバム全体としては物足りなさも残る)
・個性 ★★ (大ヒット後の作品の余裕が音的には実験性が強い)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「PEAKS」 face to ace
「PEAKS」(2009 ティー・アンド・エム)
face to ace

<members>
ACE:vocal・guitar・chorus
本田海月:synthesizer・computer programming・chorus
1.「SONIC TRAIL」 詞・曲:ACE 編:本田海月
2.「慟哭のDISTANCE」 詞・曲:ACE 編:本田海月
3.「wing archiver I」 詞・曲・編:本田海月
4.「月華抄」 詞・曲:ACE 編:本田海月
5.「SCUDERIA VINTAGE」 詞・曲・編:本田海月
6.「SISTER ROOSTER」 詞:ACE 曲・編:本田海月
7.「ON YOUR FEET」 詞・曲:ACE 編:本田海月
8.「コヨーテ」 詞:ACE 曲・編:本田海月
9.「wing archiver II」 詞:ACE・本田海月 曲・編:本田海月
<support musician>
YANZ:bass・guitar
西川貴博:drums
produced by face to ace
mixing engineered by 本田海月
recording engineered by 元倉宏・北岡健・青木久能・渡辺久幸・山口護・佐保田潤・滝沢光啓
● face to ace史上最もロックに接近しながらメロウなメロディは健在のオリジナル5thアルバム
00年代を代表する名盤と言ってもよい完成度を誇った「NOSTALGIA」からミニアルバム「風と貝がら」を挟んで2年が経過した2009年、いまやPOPS職人という名がふさわしくなったACEと本田海月の旅情エレクトロユニット、face to aceは5枚目のオリジナルアルバムをリリースすることになります。あれほどの完成度を誇った前作であったため、その期待とプレッシャーは尋常ではなかったかと思われますが、本作ではやはり方向性を若干変更してロックスピリッツをアピールするかのようなギター重視の楽曲を多く収録するなど、硬派な側面を前面に押し出した作風となっています。もちろん彼らならではのメロディアスなミディアムテンポの楽曲も取り揃えていますので、全体としてはメリハリの効いた作品と言えるかもしれません。
しかしながらロック寄りといっても類稀なメロディセンスを持ち合わせた彼らですから、いくら激しい楽曲に仕上げようとも勢いだけではなく、楽曲の構成はしっかり組み立てられ、サビにはしっかり哀愁成分を忍ばせたりと、いわゆる聴かせるフレーズが満載です。とはいうもののやはり前作よりは緩急併せ持ったギターサウンドが目立つ本作であり、これまで以上にACEの熟練のギターワークがフィーチャーされているのも本作ならではの特徴です。しかしながらそのバックで控えめに支えている柔らかいシンセパッド、シンセという楽器を知り尽くしているかのようなあの繊細な音づくりによる微妙な音色が、本田海月お得意のコードワークと溶け合った瞬間に楽曲が魔法をかけられたように魅力的になるのがいつもながら感嘆してしまいます。ロックを意識して新境地を目指したため多少こなれていない感がある作品ですが、キラリと光る楽曲はしっかり存在していることもあって、信頼できるユニットであることを再確認させられる好盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「SONIC TRAIL」
爽やかなコーラスからアコギのフレーズも軽やかなオープニングナンバー。突き抜けるような瑞々しさとリゾートPOPSかと思わせるような流麗なメロディラインが往年のニューミュージック全盛時代に引き戻してくれます。
・「wing archiver I」
本田海月真骨頂のコードワークで聴かせる滲むような叙情性を感じるミディアムバラード。独特の柔らかいシンセパッドとロマンティックなサビの展開など相変わらずの匠の技が光ります。アウトロのコード展開だけで聴かせるところも何とも言えません。
・「コヨーテ」
ギターロック風楽曲が多い中で最も激しい部類の疾走するロックナンバー。シンセソロも良い感じに歪みまくっています(本田らしくないマッドなフレーズ)。しかしこういったタイプの楽曲でもシンセをしっかり聴かせてしまうのが彼らの素晴らしいところです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ギターから出るノイズをシンセが柔らかく包み込む)
・メロディ ★★★★ (全ての楽曲ではないがセンスが炸裂するメロは健在)
・リズム ★ (生ドラムも多くテクニックも確かだが派手さはない)
・曲構成 ★★ (楽曲の緩急はついているがそれが逆に統一感を揺るがす)
・個性 ★★ (新機軸に挑戦しようとしたが捨てきれない部分も)
総合評点: 7点
face to ace

<members>
ACE:vocal・guitar・chorus
本田海月:synthesizer・computer programming・chorus
1.「SONIC TRAIL」 詞・曲:ACE 編:本田海月
2.「慟哭のDISTANCE」 詞・曲:ACE 編:本田海月
3.「wing archiver I」 詞・曲・編:本田海月
4.「月華抄」 詞・曲:ACE 編:本田海月
5.「SCUDERIA VINTAGE」 詞・曲・編:本田海月
6.「SISTER ROOSTER」 詞:ACE 曲・編:本田海月
7.「ON YOUR FEET」 詞・曲:ACE 編:本田海月
8.「コヨーテ」 詞:ACE 曲・編:本田海月
9.「wing archiver II」 詞:ACE・本田海月 曲・編:本田海月
<support musician>
YANZ:bass・guitar
西川貴博:drums
produced by face to ace
mixing engineered by 本田海月
recording engineered by 元倉宏・北岡健・青木久能・渡辺久幸・山口護・佐保田潤・滝沢光啓
● face to ace史上最もロックに接近しながらメロウなメロディは健在のオリジナル5thアルバム
00年代を代表する名盤と言ってもよい完成度を誇った「NOSTALGIA」からミニアルバム「風と貝がら」を挟んで2年が経過した2009年、いまやPOPS職人という名がふさわしくなったACEと本田海月の旅情エレクトロユニット、face to aceは5枚目のオリジナルアルバムをリリースすることになります。あれほどの完成度を誇った前作であったため、その期待とプレッシャーは尋常ではなかったかと思われますが、本作ではやはり方向性を若干変更してロックスピリッツをアピールするかのようなギター重視の楽曲を多く収録するなど、硬派な側面を前面に押し出した作風となっています。もちろん彼らならではのメロディアスなミディアムテンポの楽曲も取り揃えていますので、全体としてはメリハリの効いた作品と言えるかもしれません。
しかしながらロック寄りといっても類稀なメロディセンスを持ち合わせた彼らですから、いくら激しい楽曲に仕上げようとも勢いだけではなく、楽曲の構成はしっかり組み立てられ、サビにはしっかり哀愁成分を忍ばせたりと、いわゆる聴かせるフレーズが満載です。とはいうもののやはり前作よりは緩急併せ持ったギターサウンドが目立つ本作であり、これまで以上にACEの熟練のギターワークがフィーチャーされているのも本作ならではの特徴です。しかしながらそのバックで控えめに支えている柔らかいシンセパッド、シンセという楽器を知り尽くしているかのようなあの繊細な音づくりによる微妙な音色が、本田海月お得意のコードワークと溶け合った瞬間に楽曲が魔法をかけられたように魅力的になるのがいつもながら感嘆してしまいます。ロックを意識して新境地を目指したため多少こなれていない感がある作品ですが、キラリと光る楽曲はしっかり存在していることもあって、信頼できるユニットであることを再確認させられる好盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「SONIC TRAIL」
爽やかなコーラスからアコギのフレーズも軽やかなオープニングナンバー。突き抜けるような瑞々しさとリゾートPOPSかと思わせるような流麗なメロディラインが往年のニューミュージック全盛時代に引き戻してくれます。
・「wing archiver I」
本田海月真骨頂のコードワークで聴かせる滲むような叙情性を感じるミディアムバラード。独特の柔らかいシンセパッドとロマンティックなサビの展開など相変わらずの匠の技が光ります。アウトロのコード展開だけで聴かせるところも何とも言えません。
・「コヨーテ」
ギターロック風楽曲が多い中で最も激しい部類の疾走するロックナンバー。シンセソロも良い感じに歪みまくっています(本田らしくないマッドなフレーズ)。しかしこういったタイプの楽曲でもシンセをしっかり聴かせてしまうのが彼らの素晴らしいところです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ギターから出るノイズをシンセが柔らかく包み込む)
・メロディ ★★★★ (全ての楽曲ではないがセンスが炸裂するメロは健在)
・リズム ★ (生ドラムも多くテクニックも確かだが派手さはない)
・曲構成 ★★ (楽曲の緩急はついているがそれが逆に統一感を揺るがす)
・個性 ★★ (新機軸に挑戦しようとしたが捨てきれない部分も)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「太陽さん TAIYO・SUN」 立花ハジメ
「太陽さん TAIYO・SUN」(1985 ミディ)
立花ハジメ:vocal・guitar

1.「FATHER・SUN」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
2.「CHICKEN CONSOMME」 曲・編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
3.「MODERN THINGS」
詞・曲:Charly Brown・Myke Reilly・Gary Miles
編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
4.「XP41」
曲:Mark Mothersbaugh・Robert Williams
編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
5.「COMME DE TAIYO・SUN」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
6.「IL Y A DES POMMES SUR LA TABLE」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
7.「TAIYO・SUN」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
8.「HOGONOMO (FOR GO NO MORE)」
曲:立花ハジメ・Mark Mothersbaugh
編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
9.「MOTHER・SUN」 曲:立花ハジメ 編:矢口博康
<support musician>
塚田嗣人:guitars
沢村満:alto sax
藤井丈司:FairlightCMI・MC-4 programming
飯尾芳史:LD II & SSL programming
produced by 立花ハジメ・藤井丈司
co-produced by 飯尾芳史
engineered by 飯尾芳史
● 稀代のアートミュージックマエストロが放つ過激なリズムが特徴的な80’sテクノの1つの到達形
グラフィックデザイナーとしても著名な元PLASTICSの立花ハジメが、そのエキセントリックなキャラクターを生かしつつ自作楽器を駆使した音楽活動をコンスタントに行っていたのが80年代前半から中期にかけてですが、2ndアルバムまでのヘタウマサックスプレイを中心としたオリジナリティを感じさせる軽音楽から、3rd「テッキー君とキップルちゃん」からはテクノポップの再認識に至り、しかも電子楽器の技術革新が顕著な流行にあって、さらに過激なマシナリーミュージックへと移行していきます。そんな中レコード会社をミディに移籍して心機一転リリースされた1985年発表の本作は、テクノポップの過激性を頂点まで極めたかのような、角張ったリズムとロボ然としたイメージを前面に押し出した強烈なサウンドで既に斜陽化の一途をたどっていたテクノポップムーブメントに最後のインパクトを与えたと言ってもよい作品でした。
完全テクノ化にあたって立花が共犯者に指名したのがYMO周辺仕事で名を馳せたプログラマー藤井丈司とエンジニア飯尾芳史で、彼ら3人の共同体を「TECHIES」と名付けて制作を手掛けています。まず本作で語らなければならないのは当然バッキバキのマシナリードラムでしょう。打ち込みとはいえ多彩なエフェクトを駆使してタイトな音色を作り上げ、さらにリリースを短めにすることにより音の空白部分を上手く使うことで得られる独特のノリの良さを演出するサウンド作りは、こうしたエレクトリックな音楽制作に精通していなければ得られない経験から来るものと思われます。そんな過激さの中で「COMME DE TAIYO・SUN」「MOTHER・SUN」のようなざらっとしたシンセパッドで聴かせるところも実にニクいです。折しもFairlightCMI全盛時代だからこそ得られるデジタル&サンプリングによるハッキリクッキリ(ちょいざらつき)サウンドをここまで追求した作品も少なかったのではないでしょうか。多彩な表情を見せるリズムトラック主役の本作ですが、結果的に本作によって立花ハジメのテクノ道は頂点に達したと言ってもよく、そこにやり切った充足感が感じられます。結果として本作は上昇志向にあった80年代中期を象徴するバブリーで過激なサウンドメイクが楽しめる名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「CHICKEN CONSOMME」
ジャストなリズムをマシナリーかつダンサブルに叩き出す本作のサウンドを強烈にアピールした楽曲。なんといってもドラムの音処理が多彩かつパワフルで、しかも強力にエフェクト処理されているため飽きさせません。リズムだけでずっと聴いていられる稀有な名曲です。
・「XP41」
親交のあるDEVOのMark Mothersbaughが作曲を手掛けた、これもバキバキドラム中心インスト。残響音をスッパリ切ったようなスネアが、独特の東洋的メロディに乗って絶妙のリズム感を演出しています。後半音場と音圧の広がりで盛り上げるミキシングもさすがです。
・「TAIYO・SUN」
タイトルチューンらしく本作の過激さが最も表面化したマシナリーインスト。完全なるリズム先行型で、バスドラもスネアもタムも執拗に連打を多用し、音空間に混沌を作り出しています。
<評点>
・サウンド ★★ (ドラムが前面に出過ぎてサウンド自体はシンプル)
・メロディ ★ (基本的に繰り返しのフレーズ多用で起伏は乏しい)
・リズム ★★★★★ (個性的な打ち込みドラムは作風が変わっても変化なし)
・曲構成 ★ (本作のコンセプトであれば歌モノ2曲は必要なかったか)
・個性 ★★★ (過激性を表に出したのは良いがもっと徹底しても良い)
総合評点: 7点
立花ハジメ:vocal・guitar

1.「FATHER・SUN」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
2.「CHICKEN CONSOMME」 曲・編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
3.「MODERN THINGS」
詞・曲:Charly Brown・Myke Reilly・Gary Miles
編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
4.「XP41」
曲:Mark Mothersbaugh・Robert Williams
編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
5.「COMME DE TAIYO・SUN」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
6.「IL Y A DES POMMES SUR LA TABLE」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
7.「TAIYO・SUN」
曲:立花ハジメ 編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
8.「HOGONOMO (FOR GO NO MORE)」
曲:立花ハジメ・Mark Mothersbaugh
編:TECHIES(立花ハジメ・藤井丈司・飯尾芳史)
9.「MOTHER・SUN」 曲:立花ハジメ 編:矢口博康
<support musician>
塚田嗣人:guitars
沢村満:alto sax
藤井丈司:FairlightCMI・MC-4 programming
飯尾芳史:LD II & SSL programming
produced by 立花ハジメ・藤井丈司
co-produced by 飯尾芳史
engineered by 飯尾芳史
● 稀代のアートミュージックマエストロが放つ過激なリズムが特徴的な80’sテクノの1つの到達形
グラフィックデザイナーとしても著名な元PLASTICSの立花ハジメが、そのエキセントリックなキャラクターを生かしつつ自作楽器を駆使した音楽活動をコンスタントに行っていたのが80年代前半から中期にかけてですが、2ndアルバムまでのヘタウマサックスプレイを中心としたオリジナリティを感じさせる軽音楽から、3rd「テッキー君とキップルちゃん」からはテクノポップの再認識に至り、しかも電子楽器の技術革新が顕著な流行にあって、さらに過激なマシナリーミュージックへと移行していきます。そんな中レコード会社をミディに移籍して心機一転リリースされた1985年発表の本作は、テクノポップの過激性を頂点まで極めたかのような、角張ったリズムとロボ然としたイメージを前面に押し出した強烈なサウンドで既に斜陽化の一途をたどっていたテクノポップムーブメントに最後のインパクトを与えたと言ってもよい作品でした。
完全テクノ化にあたって立花が共犯者に指名したのがYMO周辺仕事で名を馳せたプログラマー藤井丈司とエンジニア飯尾芳史で、彼ら3人の共同体を「TECHIES」と名付けて制作を手掛けています。まず本作で語らなければならないのは当然バッキバキのマシナリードラムでしょう。打ち込みとはいえ多彩なエフェクトを駆使してタイトな音色を作り上げ、さらにリリースを短めにすることにより音の空白部分を上手く使うことで得られる独特のノリの良さを演出するサウンド作りは、こうしたエレクトリックな音楽制作に精通していなければ得られない経験から来るものと思われます。そんな過激さの中で「COMME DE TAIYO・SUN」「MOTHER・SUN」のようなざらっとしたシンセパッドで聴かせるところも実にニクいです。折しもFairlightCMI全盛時代だからこそ得られるデジタル&サンプリングによるハッキリクッキリ(ちょいざらつき)サウンドをここまで追求した作品も少なかったのではないでしょうか。多彩な表情を見せるリズムトラック主役の本作ですが、結果的に本作によって立花ハジメのテクノ道は頂点に達したと言ってもよく、そこにやり切った充足感が感じられます。結果として本作は上昇志向にあった80年代中期を象徴するバブリーで過激なサウンドメイクが楽しめる名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「CHICKEN CONSOMME」
ジャストなリズムをマシナリーかつダンサブルに叩き出す本作のサウンドを強烈にアピールした楽曲。なんといってもドラムの音処理が多彩かつパワフルで、しかも強力にエフェクト処理されているため飽きさせません。リズムだけでずっと聴いていられる稀有な名曲です。
・「XP41」
親交のあるDEVOのMark Mothersbaughが作曲を手掛けた、これもバキバキドラム中心インスト。残響音をスッパリ切ったようなスネアが、独特の東洋的メロディに乗って絶妙のリズム感を演出しています。後半音場と音圧の広がりで盛り上げるミキシングもさすがです。
・「TAIYO・SUN」
タイトルチューンらしく本作の過激さが最も表面化したマシナリーインスト。完全なるリズム先行型で、バスドラもスネアもタムも執拗に連打を多用し、音空間に混沌を作り出しています。
<評点>
・サウンド ★★ (ドラムが前面に出過ぎてサウンド自体はシンプル)
・メロディ ★ (基本的に繰り返しのフレーズ多用で起伏は乏しい)
・リズム ★★★★★ (個性的な打ち込みドラムは作風が変わっても変化なし)
・曲構成 ★ (本作のコンセプトであれば歌モノ2曲は必要なかったか)
・個性 ★★★ (過激性を表に出したのは良いがもっと徹底しても良い)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
2013年あけましておめでとうございます
当ブログ読者の皆様、2013年新年あけましておめでとうございます。
遂に6年目に入りました当ブログでございますが、昨年も多数の皆様にご愛顧いただき誠にありがとうございました。思えば自分の資料用にと始めたこのレビューブログですが、いろいろなシチュエーションで引用していただいたり、思わぬ方々から貴重なコメントをいただいたり、当初思いもしなかった展開で驚きと感謝の気持ちでいっぱいでございます。
今後もネタが続く限り続けていきたいと思います。しかしながら当初からはやはりペースも落ち気味でございますが、気にしないで下さい。ちょっと私生活に変化がありまして、いや、実は昨年結婚してしまいまして、まあいろいろと生活環境の変化があるものですから、それからは基本週一の更新とさせていただいている次第でございます。ただし、結構自由にさせてもらってますので今後もメシを食べるようにTECHNOLOGY POPSは喰い散らかしていきますので、よろしくお願いします!
さて、恒例の2012年TECHNOLOGY POPS的ベストアルバム3枚をご紹介といきたいところですが、2012年はレビューできる作品はまあまあ多くあるのですが、突き抜けてるというか、9点〜10点レベルの超名盤のような作品には結局巡り会えませんでした(個人の感想なのですみません)。
レコード大賞で某氏が「これが音楽界の現状です」とかなんとかおっしゃったということを耳にしましたが、そこまで憂うという意識はないものの(売れたものだけが正義でもないので)、個人的にTECHNOLOGY POPS的にもう少し面白い作品があってもよかったなあと思うわけです。ちょっと期待はずれの作品も多かったというか・・。
それはともかくとして、そんな中での2012年ベスト3としては以下の3作品を挙げたいと思います。
binaria、anNinaといったユニット活動が主であったアルゼンチン人ハーフのAnnabelがシングル「My Heaven」でデビューしたのが2009年なので3年経って遂にリリースされた1stアルバム。refio、kukuiのmyuが全面的にサウンドプロデュースを担当していて、これが和風エレクトロニカからストリングスバラード、音響アコースティック、高速エレポップまで幅広い多彩な楽曲をこなしているのもさることながら(アニメやゲームのタイアップが多いこともあるが)、楽曲自体は地味なものもありますがそれらがすべてmyu編曲ということにも驚きです。myuはアニソン界隈のみならず現在に日本POPS界において最も評価が追いついていないクリエイターであると思います。Annabelも超強力なパートナーを得ることができたと思いますので、これからの期待を込めて2012年の1枚に挙げます。
2年前も挙げました札幌出身のエレクトロニカポップユニット木箱が自主レーベルkitorina recordsを立ち上げてのリリース作品。シンセを並べたアーティストイメージも素晴らしいですが(http://ongaku.do/interview/2012/08/5653/)、いまだ一本調子とはいえブレない世界観を持って、さらに完成度を高めた印象を受けました。特にリズムに力が入っているのが好印象です。ナチュラルで清涼感のあるイメージの裏で強い頑固さを感じるのも興味深いです。アコースティック中心になる前に取り上げたいということで(この手のユニットは次第に生楽器に移行する傾向があるので)。
なんだかんだいってこれなんですが、これは中田ヤスタカが00年代中頃のcapsuleの受け皿をここに持ってきてくれたこと、それが嬉しかったということです。コンセプトもしっかりしているし、やっぱり捨て曲がなかったというのが大きい。あえて流行だからといって外す理由は全くありません。ただ単純にクオリティが高くてキャッチーでエレクトリックな面でも満足できました。
以上、2012年のベストアルバムでした。
前述のように飛び抜けた作品はなく、他にもエスエフ「Sing Future」とか伊藤真澄「Wonder Wonderful」等々迷った作品はあります。
しかしやはり10点級のアルバムは1枚は欲しいなあ。
というわけで、今年も楽しめるTECHNOLOGY POPSの名盤に出会うことを心より願っております。
(特に洋邦問わず未CD化や埋もれている作品の再発を願いたいですね。)
それでは、本年もよろしくお願いいたします。
(次回から再び通常のレビューに戻ります)
遂に6年目に入りました当ブログでございますが、昨年も多数の皆様にご愛顧いただき誠にありがとうございました。思えば自分の資料用にと始めたこのレビューブログですが、いろいろなシチュエーションで引用していただいたり、思わぬ方々から貴重なコメントをいただいたり、当初思いもしなかった展開で驚きと感謝の気持ちでいっぱいでございます。
今後もネタが続く限り続けていきたいと思います。しかしながら当初からはやはりペースも落ち気味でございますが、気にしないで下さい。ちょっと私生活に変化がありまして、いや、実は昨年結婚してしまいまして、まあいろいろと生活環境の変化があるものですから、それからは基本週一の更新とさせていただいている次第でございます。ただし、結構自由にさせてもらってますので今後もメシを食べるようにTECHNOLOGY POPSは喰い散らかしていきますので、よろしくお願いします!
さて、恒例の2012年TECHNOLOGY POPS的ベストアルバム3枚をご紹介といきたいところですが、2012年はレビューできる作品はまあまあ多くあるのですが、突き抜けてるというか、9点〜10点レベルの超名盤のような作品には結局巡り会えませんでした(個人の感想なのですみません)。
レコード大賞で某氏が「これが音楽界の現状です」とかなんとかおっしゃったということを耳にしましたが、そこまで憂うという意識はないものの(売れたものだけが正義でもないので)、個人的にTECHNOLOGY POPS的にもう少し面白い作品があってもよかったなあと思うわけです。ちょっと期待はずれの作品も多かったというか・・。
それはともかくとして、そんな中での2012年ベスト3としては以下の3作品を挙げたいと思います。
![]() | miniascape(初回限定盤)(DVD付) (2012/11/28) Annabel 商品詳細を見る |
binaria、anNinaといったユニット活動が主であったアルゼンチン人ハーフのAnnabelがシングル「My Heaven」でデビューしたのが2009年なので3年経って遂にリリースされた1stアルバム。refio、kukuiのmyuが全面的にサウンドプロデュースを担当していて、これが和風エレクトロニカからストリングスバラード、音響アコースティック、高速エレポップまで幅広い多彩な楽曲をこなしているのもさることながら(アニメやゲームのタイアップが多いこともあるが)、楽曲自体は地味なものもありますがそれらがすべてmyu編曲ということにも驚きです。myuはアニソン界隈のみならず現在に日本POPS界において最も評価が追いついていないクリエイターであると思います。Annabelも超強力なパートナーを得ることができたと思いますので、これからの期待を込めて2012年の1枚に挙げます。
![]() | hometown (2012/07/11) 木箱 商品詳細を見る |
2年前も挙げました札幌出身のエレクトロニカポップユニット木箱が自主レーベルkitorina recordsを立ち上げてのリリース作品。シンセを並べたアーティストイメージも素晴らしいですが(http://ongaku.do/interview/2012/08/5653/)、いまだ一本調子とはいえブレない世界観を持って、さらに完成度を高めた印象を受けました。特にリズムに力が入っているのが好印象です。ナチュラルで清涼感のあるイメージの裏で強い頑固さを感じるのも興味深いです。アコースティック中心になる前に取り上げたいということで(この手のユニットは次第に生楽器に移行する傾向があるので)。
![]() | ぱみゅぱみゅレボリューション(通常盤) (2012/05/23) きゃりーぱみゅぱみゅ 商品詳細を見る |
なんだかんだいってこれなんですが、これは中田ヤスタカが00年代中頃のcapsuleの受け皿をここに持ってきてくれたこと、それが嬉しかったということです。コンセプトもしっかりしているし、やっぱり捨て曲がなかったというのが大きい。あえて流行だからといって外す理由は全くありません。ただ単純にクオリティが高くてキャッチーでエレクトリックな面でも満足できました。
以上、2012年のベストアルバムでした。
前述のように飛び抜けた作品はなく、他にもエスエフ「Sing Future」とか伊藤真澄「Wonder Wonderful」等々迷った作品はあります。
しかしやはり10点級のアルバムは1枚は欲しいなあ。
というわけで、今年も楽しめるTECHNOLOGY POPSの名盤に出会うことを心より願っております。
(特に洋邦問わず未CD化や埋もれている作品の再発を願いたいですね。)
それでは、本年もよろしくお願いいたします。
(次回から再び通常のレビューに戻ります)
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