「性善説」 hi-posi
「性善説」(2000 コロムビア)
hi-posi

<members>
もりばやしみほ:vocal・keyboard・organ・whistle・chorus
1.「性善説」 詞:もりばやしみほ 曲:もりばやしみほ・松江潤 編:松江潤
2.「ジェニーはご機嫌ななめ」
詞:沖山優司 曲:近田春夫 編:もりばやしみほ・熊原正幸
3.「そなえよつねに」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・熊原正幸
4.「CORE」 詞・曲:もりばやしみほ 編:松江潤・もりばやしみほ
5.「光のコートをきて」 詞・曲:もりばやしみほ 編:成田真樹・もりばやしみほ
6.「いらないものリスト」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・成田真樹
7.「最大限の愛の証」 詞・曲:もりばやしみほ 編:成田真樹・もりばやしみほ
8.「きみのすきなかたち」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・松江潤
9.「でんき」 詞・曲・編:もりばやしみほ
10.「ごめんだわ」 詞・曲:もりばやしみほ 編:成田真樹・もりばやしみほ
11.「たこあげ」 詞・曲:もりばやしみほ 編:松江潤・もりばやしみほ
12.「あたしのselect」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・成田真樹
13.「性善説 again」 詞・曲:もりばやしみほ 編:松江潤
<support musician>
近藤研二:guitar・vocoder
松江潤:guitar・synthesizer・computer programming
栗原正己:bass
夏秋文尚:V-drums
ナオミ:keyboard・organ
The Clovers:”Nippon”chorus
熊原正幸:computer programming
成田真樹:computer programming
大光ワタル:beats programming・rhythm programming
sound produced by もりばやしみほ
mixing engineered by 日下貴世志・高山徹
recording engineered by 日下貴世志・宮原弘貴・池内亮・高山徹・高桑ケイスケ・近藤研二
● 実質的なソロユニットとなりSPOOZYSのサポートを得てネオニューウェーブ路線を突き詰めた話題作
1999年のアルバム「4 N 5」がニューウェーブリバイバルを意識したエレクトリックポップな好作品に仕上がったものの、長年パートナーとして活動してきた近藤研二が脱退してしまったhi-posi。遂にソロユニット(+犬1匹)となったhi-posiですが、翌年2000年には開き直ったかのように往年のテクノ名曲「ジェニーはご機嫌ななめ」をリメイク、折しも世紀末に市民権を得つつあったPOLYSICSらのTOKYO NEW WAVE OF NEW WAVEムーブメントが多大な影響を与えたかのような疾走感溢れる尖ったこのリメイクは、もりばやしみほ1人となったhi-posiサウンドの方向性を激しくアピールするものでした。本作はこの名リメイクを収録したサウンド面での新展開を試みたわけですが、ガレージ風ニューウェーブバンドとして異色の活動を繰り広げていた松江潤率いるSPOOZYSをサポートに迎えた意欲的な作品となっています。
そんなニューウェーブ魂全開の本作ですが、とにかく「粗い(荒い)」の一言です。松江潤らの荒々しいギタープレイとそれを前面に押し出した音処理が光ります。ガリガリしたノイジーギターにもりばやしの特徴的なファニーボイスとのコントラストは本作の決定的な個性となっていますが、まるでソロになったことでデュオ時代に抑制されていた激しい音楽性が開放されたかのようにその攻撃的サウンドはある種の驚きがありました。ソロアーティストとしての実績もある松江潤や新鋭プログラマー成田真樹らによるアレンジ面での貢献も見事なもので、とにかく耳障りなほどに強引なギター&シンセサウンドで押しに押しまくる本作の勢いに圧倒されます。とはいうものの、もともともりばやしみほの強烈な個性が牽引してきたグループということもあって、凡百の音であれば沈んでしまうようなこの激しいサウンドに楽曲が埋もれないところはさすがです。なお、余りに開き直り過ぎたのか突き抜け過ぎたのかわかりませんが本作をもってhi-posiとしての新作はリリースされていません。しかしいまだ活動は継続中のようですので、いつか忘れた頃に作品がリリースされたりすると(今の時代だからこそ)興味深いかもしれません。
<Favorite Songs>
・「そなえよつねに」
「ジェニーはご機嫌ななめ」に続いてシングルカットされた攻撃的ニューウェーブソング。轟音ギターのイントロに高速シーケンスで疾走感は抜群です。煩わしいくらいの音の密度が尋常ではなく、開き直りともいえるやり過ぎ感が印象に残るハイパーチューンです。
・「光のコートをきて」
ハウスなリズムに乗ったミニマル要素たっぷりのダンスチューン。ふんだんに音遊びを取り入れながらも流し聴きできるダラッとした構成が意外とクセになります。
・「ごめんだわ」
電子音とノイズでリズム&シーケンスを作り出した本作の中でも実験的という言葉がふさわしいエレクトロニカチューン。通常POPSでは絶対使用しないような電子音フレーズと効果音的アルペジオをバックに淡々と歌い上げていますが、全体的にメタリックなサウンドによって世界観は混沌としています。
<評点>
・サウンド ★★ (荒々しいギター&シンセでグイグイ引っ張っていく)
・メロディ ★ (リピートが多いミニマル系メロディだが聴きやすさも)
・リズム ★★ (大光ワタルの参加でリズム全体に芯ができたような印象)
・曲構成 ★ (勢いと良い意味での粗さが残る楽曲揃いだが勢いが目立つ)
・個性 ★★ (1人になっても改めてもりばやしの存在感を再確認)
総合評点: 6点
hi-posi

<members>
もりばやしみほ:vocal・keyboard・organ・whistle・chorus
1.「性善説」 詞:もりばやしみほ 曲:もりばやしみほ・松江潤 編:松江潤
2.「ジェニーはご機嫌ななめ」
詞:沖山優司 曲:近田春夫 編:もりばやしみほ・熊原正幸
3.「そなえよつねに」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・熊原正幸
4.「CORE」 詞・曲:もりばやしみほ 編:松江潤・もりばやしみほ
5.「光のコートをきて」 詞・曲:もりばやしみほ 編:成田真樹・もりばやしみほ
6.「いらないものリスト」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・成田真樹
7.「最大限の愛の証」 詞・曲:もりばやしみほ 編:成田真樹・もりばやしみほ
8.「きみのすきなかたち」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・松江潤
9.「でんき」 詞・曲・編:もりばやしみほ
10.「ごめんだわ」 詞・曲:もりばやしみほ 編:成田真樹・もりばやしみほ
11.「たこあげ」 詞・曲:もりばやしみほ 編:松江潤・もりばやしみほ
12.「あたしのselect」 詞・曲:もりばやしみほ 編:もりばやしみほ・成田真樹
13.「性善説 again」 詞・曲:もりばやしみほ 編:松江潤
<support musician>
近藤研二:guitar・vocoder
松江潤:guitar・synthesizer・computer programming
栗原正己:bass
夏秋文尚:V-drums
ナオミ:keyboard・organ
The Clovers:”Nippon”chorus
熊原正幸:computer programming
成田真樹:computer programming
大光ワタル:beats programming・rhythm programming
sound produced by もりばやしみほ
mixing engineered by 日下貴世志・高山徹
recording engineered by 日下貴世志・宮原弘貴・池内亮・高山徹・高桑ケイスケ・近藤研二
● 実質的なソロユニットとなりSPOOZYSのサポートを得てネオニューウェーブ路線を突き詰めた話題作
1999年のアルバム「4 N 5」がニューウェーブリバイバルを意識したエレクトリックポップな好作品に仕上がったものの、長年パートナーとして活動してきた近藤研二が脱退してしまったhi-posi。遂にソロユニット(+犬1匹)となったhi-posiですが、翌年2000年には開き直ったかのように往年のテクノ名曲「ジェニーはご機嫌ななめ」をリメイク、折しも世紀末に市民権を得つつあったPOLYSICSらのTOKYO NEW WAVE OF NEW WAVEムーブメントが多大な影響を与えたかのような疾走感溢れる尖ったこのリメイクは、もりばやしみほ1人となったhi-posiサウンドの方向性を激しくアピールするものでした。本作はこの名リメイクを収録したサウンド面での新展開を試みたわけですが、ガレージ風ニューウェーブバンドとして異色の活動を繰り広げていた松江潤率いるSPOOZYSをサポートに迎えた意欲的な作品となっています。
そんなニューウェーブ魂全開の本作ですが、とにかく「粗い(荒い)」の一言です。松江潤らの荒々しいギタープレイとそれを前面に押し出した音処理が光ります。ガリガリしたノイジーギターにもりばやしの特徴的なファニーボイスとのコントラストは本作の決定的な個性となっていますが、まるでソロになったことでデュオ時代に抑制されていた激しい音楽性が開放されたかのようにその攻撃的サウンドはある種の驚きがありました。ソロアーティストとしての実績もある松江潤や新鋭プログラマー成田真樹らによるアレンジ面での貢献も見事なもので、とにかく耳障りなほどに強引なギター&シンセサウンドで押しに押しまくる本作の勢いに圧倒されます。とはいうものの、もともともりばやしみほの強烈な個性が牽引してきたグループということもあって、凡百の音であれば沈んでしまうようなこの激しいサウンドに楽曲が埋もれないところはさすがです。なお、余りに開き直り過ぎたのか突き抜け過ぎたのかわかりませんが本作をもってhi-posiとしての新作はリリースされていません。しかしいまだ活動は継続中のようですので、いつか忘れた頃に作品がリリースされたりすると(今の時代だからこそ)興味深いかもしれません。
<Favorite Songs>
・「そなえよつねに」
「ジェニーはご機嫌ななめ」に続いてシングルカットされた攻撃的ニューウェーブソング。轟音ギターのイントロに高速シーケンスで疾走感は抜群です。煩わしいくらいの音の密度が尋常ではなく、開き直りともいえるやり過ぎ感が印象に残るハイパーチューンです。
・「光のコートをきて」
ハウスなリズムに乗ったミニマル要素たっぷりのダンスチューン。ふんだんに音遊びを取り入れながらも流し聴きできるダラッとした構成が意外とクセになります。
・「ごめんだわ」
電子音とノイズでリズム&シーケンスを作り出した本作の中でも実験的という言葉がふさわしいエレクトロニカチューン。通常POPSでは絶対使用しないような電子音フレーズと効果音的アルペジオをバックに淡々と歌い上げていますが、全体的にメタリックなサウンドによって世界観は混沌としています。
<評点>
・サウンド ★★ (荒々しいギター&シンセでグイグイ引っ張っていく)
・メロディ ★ (リピートが多いミニマル系メロディだが聴きやすさも)
・リズム ★★ (大光ワタルの参加でリズム全体に芯ができたような印象)
・曲構成 ★ (勢いと良い意味での粗さが残る楽曲揃いだが勢いが目立つ)
・個性 ★★ (1人になっても改めてもりばやしの存在感を再確認)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「ビストロン」 核P-MODEL
「ビストロン」(2004 ケイオスユニオン)
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「二重展望3」 曲・編:平沢進
2.「Big Brother」 詞・曲・編:平沢進
3.「アンチ・ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
4.「崇めよ我はTVなり」 詞・曲・編:平沢進
5.「巡航プシクラオン」 詞・曲・編:平沢進
6.「暗黒πドゥアイ」 詞・曲・編:平沢進
7.「パラ・ユニフス」 詞・曲・編:平沢進
8.「Space hook」 詞・曲・編:平沢進
9.「ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
10.「アンチモネシア」 詞・曲・編:平沢進
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 痙攣するシンセ!飛び散る電子音!よりエレクトリックに傾倒した培養中ソロP-MODELの名盤
20世紀末に「培養期」と称して長年にわたる活動を凍結した稀代のテクノ・ニューウェーブバンドP-MODEL。その後完全にソロに転じた平沢進は、ソロアルバムのほか太陽光発電により音楽制作を行うプロジェクトHirasawa Energy WorksやNHKの幼児向け番組に「地球ネコ」を提供するなど多彩な活動を繰り広げていきますが、2004年にP-MODELの名前を冠した新たな企画を開始します。「核P-MODEL」と名付けられたそのプロジェクトはその名のとおり「P-MODELの核」である平沢進のソロユニットであり(この際アシュオンの核の能動的活動とかどうとかの設定はもはやどうでもよい)、その鷹揚たる音楽性が確立しつつあった平沢ソロ作品とは異なったより攻撃的な電子的サウンドアプローチは、P-MODELという一癖も二癖もあるカリスマグループの名を冠するにふさわしいと言えるでしょう。そんな核P-MODELが残した現在唯一のアルバムが本作というわけです。
先行配信曲「Big Brother」でその過激な電子サウンドの片鱗を見せつけていた本作ですが、期待に違わず攻撃的で刺激的なシンセフレーズでかつての解凍P-MODELファンにとってはこれ以上ない電子音の雨を降らせてくれます。倍音により歪ませた音色を多用したリフや、平沢本人やサンプリング素材を加工した過激な変調ボイス、執拗に繰り返されるアシッドなシーケンス、そして平沢サウンドの十八番であるシャウトや奇天烈ギターフレーズが楽曲を盛り上げ、終始にわたって作品のテンションを維持させることに成功しています。同じく強力な電子音が全体を支配した解凍P-MODEL(「P-MODEL」「Big Body」時代)と比較すると、サウンド自体は細くなった印象もあるものの鋭利な刃物のように尖った音色で聴き手を突き刺していく感覚が、本作の攻撃性を如実に表していると言えるでしょう。そして何よりも細かい譜割を高速で動かすことで電子音を1曲の中にぎっしり詰め込んだ圧迫感が凄まじく、とにかく安心感を与えないサウンドデザインで疲労感すら覚える本作の異質な完成度は他に類を見ないものであるように思えます。P-MODELを冠したソロユニットだからこそ歯止めが効かずに衝動的にさらけ出した電子音への欲求と、持ち前の過激でひねくれた世界観が、これまでのソロ活動を通して確立された自身の音楽性により絶妙にまとめ上げられた突然変異的名作として、(次回作が生まれるまでは)最大級の評価を惜しむことはないでしょう。
<Favorite Songs>
・「Big Brother」
先行無料配信でその過激なサウンドが鮮烈な印象を残した本作のリード曲。とにかく全編にわたり高速につんのめるシンセリフが凄まじく、それが非常に緊張感を高めています。軽めなリズムも連打を多用し攻撃的。苛烈な電子音で聴き手を驚かせます。
・「暗黒πドゥアイ」
サスペンチックなイントロからメジャー調で展開、そして壮大なオペラへとさらに変化を遂げる過激なエレクトリックチューン。サビ前のカウントからのシャウトの間で風向きが変わっていくかのような調の変化を見せる部分が秀逸です。
・「パラ・ユニフス」
細かく絡み合ったシーケンスでこれでもかと責めまくる高速テクノポップ。とにかく音がぎっしり詰め込まれ息のつく間も与えてくれない膨満感が尋常ではありません。途中挿入されるノイジーな変調ボイスのギミックも奇妙でアクセントとして抜群です。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (全編電子音とはいえなにより音が刺激的で熱い)
・メロディ ★★★ (過激過ぎる音に対してもポップ性を維持する)
・リズム ★★★★ (細かく執拗に連打されるリズム&ベースが強烈)
・曲構成 ★★★★★ (全編にわたるテンションの高さで聴き手を圧倒)
・個性 ★★★★★ (ソロでもバンドでもない圧倒的な電子的世界観)
総合評点: 10点
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「二重展望3」 曲・編:平沢進
2.「Big Brother」 詞・曲・編:平沢進
3.「アンチ・ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
4.「崇めよ我はTVなり」 詞・曲・編:平沢進
5.「巡航プシクラオン」 詞・曲・編:平沢進
6.「暗黒πドゥアイ」 詞・曲・編:平沢進
7.「パラ・ユニフス」 詞・曲・編:平沢進
8.「Space hook」 詞・曲・編:平沢進
9.「ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
10.「アンチモネシア」 詞・曲・編:平沢進
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 痙攣するシンセ!飛び散る電子音!よりエレクトリックに傾倒した培養中ソロP-MODELの名盤
20世紀末に「培養期」と称して長年にわたる活動を凍結した稀代のテクノ・ニューウェーブバンドP-MODEL。その後完全にソロに転じた平沢進は、ソロアルバムのほか太陽光発電により音楽制作を行うプロジェクトHirasawa Energy WorksやNHKの幼児向け番組に「地球ネコ」を提供するなど多彩な活動を繰り広げていきますが、2004年にP-MODELの名前を冠した新たな企画を開始します。「核P-MODEL」と名付けられたそのプロジェクトはその名のとおり「P-MODELの核」である平沢進のソロユニットであり(この際アシュオンの核の能動的活動とかどうとかの設定はもはやどうでもよい)、その鷹揚たる音楽性が確立しつつあった平沢ソロ作品とは異なったより攻撃的な電子的サウンドアプローチは、P-MODELという一癖も二癖もあるカリスマグループの名を冠するにふさわしいと言えるでしょう。そんな核P-MODELが残した現在唯一のアルバムが本作というわけです。
先行配信曲「Big Brother」でその過激な電子サウンドの片鱗を見せつけていた本作ですが、期待に違わず攻撃的で刺激的なシンセフレーズでかつての解凍P-MODELファンにとってはこれ以上ない電子音の雨を降らせてくれます。倍音により歪ませた音色を多用したリフや、平沢本人やサンプリング素材を加工した過激な変調ボイス、執拗に繰り返されるアシッドなシーケンス、そして平沢サウンドの十八番であるシャウトや奇天烈ギターフレーズが楽曲を盛り上げ、終始にわたって作品のテンションを維持させることに成功しています。同じく強力な電子音が全体を支配した解凍P-MODEL(「P-MODEL」「Big Body」時代)と比較すると、サウンド自体は細くなった印象もあるものの鋭利な刃物のように尖った音色で聴き手を突き刺していく感覚が、本作の攻撃性を如実に表していると言えるでしょう。そして何よりも細かい譜割を高速で動かすことで電子音を1曲の中にぎっしり詰め込んだ圧迫感が凄まじく、とにかく安心感を与えないサウンドデザインで疲労感すら覚える本作の異質な完成度は他に類を見ないものであるように思えます。P-MODELを冠したソロユニットだからこそ歯止めが効かずに衝動的にさらけ出した電子音への欲求と、持ち前の過激でひねくれた世界観が、これまでのソロ活動を通して確立された自身の音楽性により絶妙にまとめ上げられた突然変異的名作として、(次回作が生まれるまでは)最大級の評価を惜しむことはないでしょう。
<Favorite Songs>
・「Big Brother」
先行無料配信でその過激なサウンドが鮮烈な印象を残した本作のリード曲。とにかく全編にわたり高速につんのめるシンセリフが凄まじく、それが非常に緊張感を高めています。軽めなリズムも連打を多用し攻撃的。苛烈な電子音で聴き手を驚かせます。
・「暗黒πドゥアイ」
サスペンチックなイントロからメジャー調で展開、そして壮大なオペラへとさらに変化を遂げる過激なエレクトリックチューン。サビ前のカウントからのシャウトの間で風向きが変わっていくかのような調の変化を見せる部分が秀逸です。
・「パラ・ユニフス」
細かく絡み合ったシーケンスでこれでもかと責めまくる高速テクノポップ。とにかく音がぎっしり詰め込まれ息のつく間も与えてくれない膨満感が尋常ではありません。途中挿入されるノイジーな変調ボイスのギミックも奇妙でアクセントとして抜群です。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (全編電子音とはいえなにより音が刺激的で熱い)
・メロディ ★★★ (過激過ぎる音に対してもポップ性を維持する)
・リズム ★★★★ (細かく執拗に連打されるリズム&ベースが強烈)
・曲構成 ★★★★★ (全編にわたるテンションの高さで聴き手を圧倒)
・個性 ★★★★★ (ソロでもバンドでもない圧倒的な電子的世界観)
総合評点: 10点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「SYNPHOBEAT」 Sense Of Wonder
「SYNPHOBEAT」 (1987 RVC)
Sense Of Wonder

<members>
難波弘之:vocal・keyboards
小室和之:vocal・bass
鈴木”RIKA”徹:vocal・drums
<electric instruments>
Casio:CZ-1・CZ-5000・AZ-1・FZ-1
Korg:700S・800DV・Λ・POLY-6・DVP-1・CX-3
Emulator II・DX-7・Prophet-5・Oberheim Matrix12・Kurzwell250 Expander・Mini Moog・Hammond B III ・Fender Rhodes mark II・clavinet
1.「メビウスナイト」 詞:有働ゆかり 曲・編:Sense Of Wonder
2.「都市迷宮」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
3.「Rain」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
4.「碧い星で」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
5.「万華鏡(カレイドスコープ)」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
6.「Moon Water」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
7.「Windy Symphony」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
8.「オーニソプター」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
<support musician>
後藤慶一:synthesizer programming
林秀幸:synthesizer programming
produced by Sense Of Wonder
co-produced by 内沼映二
lyrics produced by 田口俊
mixing engineered by 内沼映二
recording engineered by 内沼映二・相原雅之・河合雄一
● ハイテクニックなプログレ志向のトリオバンドが歌モノに向き合ったエフェクティブリズムのPOPS路線作品
1970年代より金子マリや山下達郎等のキーボーディストとして活躍してきた難波弘之は、自身のバンドとして結成したSense Of Wonderを引っさげて、そのバンド名を冠したアルバムを難波自身のソロとしてリリースします。SF作家としての顔も持つ彼らしく、コンセプチュアルな側面とフュージョン〜プログレに大きく影響されたその作風は、キーボード&シンセサイザー弾きとしてのテクニックと意外にも美声のヴォーカルスタイルも相まって、一定の評価を得ることに成功しました。そして80年代中盤のNHK教育放映の音楽番組「ベストサウンド」における進行役によりメディアに露出し始めた彼は何枚かのソロ作で実績を積んだ後、遂に87年には満を持して難波弘之という冠に頼らない、バンド「Sense Of Wonder」として本作をリリースすることになるわけです。盟友のベーシスト小室和之と若手ドラマー鈴木徹とのトリオバンドである彼らは、ギターレスというバンド形態を逆手にとってキーボード主体のプログレサウンドをよりポップに仕上げており、TV等の露出が多かった難波のメディアへの意識の高さが窺われる作品となっています。
当然のことながら難波弘之のキーボードプレイが中心ではありますが、シーケンサーによる打ち込みは一切排除し生演奏にこだわるのがこのバンドのポリシーということで、3名のテクニカルな演奏力のぶつかり合いが魅力ではあります。しかし本作はそんな熱いバトルな作風ではなく、あくまでメロディアスなポップ路線であり、爽やかともいえるヴォーカルが全編を占め、プログレバンドとしての矜持はエッセンス程度にとどめた感じを受けます。とはいうもののサウンドに手を抜いているはずもなく、多種多様なシンセサイザー群を自在に操り楽曲に輪郭を持たせると、本作においてフィーチャーされたドラムのローファイでこもったようなエフェクト処理(ゲートリバーブ!)が楽曲全体にパワーと個性を与えています。また、ただでさえテクニックに定評がある小室和之のベースプレイにシンセベースを混ぜて厚みを持たせる大胆さもこだわりの一環と言えるでしょう。彼らからすればあえてPOPSに挑戦したとも言える本作は、プログレ本来の超絶技巧なドラマティックプレイを期待する方々にとっては物足りないかもしれませんが(ラストの「オーニソプター」で溜飲を下げることと思いますが)、演奏もさることながらどちらかといえばサウンド処理面でセンスを発揮したPOPSアルバムだからこその挑戦的な作品であると言えると思います。
<Favorite Songs>
・「メビウスナイト」
プログレらしからぬ大人のエレクトリックPOPS。レゾナンスの効いたシンセと生音の融合で太くなったベースラインとエフェクティブに処理されたドラム音にしびれます。音数が少ないながらも存在感のあるシンセフレーズの入れ方もさすがプロフェッショナルな構成です。
・「万華鏡(カレイドスコープ)」
これもドラム&ベースのリズム隊がこれでもかと前面に押し出されたポップチューン。淡々としながらもゲートリバーブだけでなく多彩な電子音で彩るドラムワークが嬉しいです。ポルタメントの効いたシンセのような小技も効いていてかゆいところに手が届く感じです。
・「オーニソプター」
ラストにして本領発揮の目まぐるしいフレーズの嵐で攻めまくるプログレッシブロック。変拍子満載のイントロから間奏のまさに超絶技巧というべき多彩な音色が入れ替わり立ち替わり登場する圧巻のシンセソロまで、最後まで気の抜けない緊張感たっぷりの力作です。ラストのソフトロックなエンディングも微笑ましいです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ゴージャスなシンセプレイと派手さが際立つ音処理)
・メロディ ★★ (精一杯ポップにしました感がプロフェッショナル)
・リズム ★★★★ (エフェクティブな処理でパワフルに暴れ回る強烈な音)
・曲構成 ★ (ユルい楽曲も多くもっと暴れ回ってほしかったかも)
・個性 ★ (余りにポップ路線に偏った結果没個性だが悪くない)
総合評点: 7点
Sense Of Wonder

<members>
難波弘之:vocal・keyboards
小室和之:vocal・bass
鈴木”RIKA”徹:vocal・drums
<electric instruments>
Casio:CZ-1・CZ-5000・AZ-1・FZ-1
Korg:700S・800DV・Λ・POLY-6・DVP-1・CX-3
Emulator II・DX-7・Prophet-5・Oberheim Matrix12・Kurzwell250 Expander・Mini Moog・Hammond B III ・Fender Rhodes mark II・clavinet
1.「メビウスナイト」 詞:有働ゆかり 曲・編:Sense Of Wonder
2.「都市迷宮」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
3.「Rain」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
4.「碧い星で」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
5.「万華鏡(カレイドスコープ)」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
6.「Moon Water」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
7.「Windy Symphony」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
8.「オーニソプター」 詞:田口俊 曲・編:Sense Of Wonder
<support musician>
後藤慶一:synthesizer programming
林秀幸:synthesizer programming
produced by Sense Of Wonder
co-produced by 内沼映二
lyrics produced by 田口俊
mixing engineered by 内沼映二
recording engineered by 内沼映二・相原雅之・河合雄一
● ハイテクニックなプログレ志向のトリオバンドが歌モノに向き合ったエフェクティブリズムのPOPS路線作品
1970年代より金子マリや山下達郎等のキーボーディストとして活躍してきた難波弘之は、自身のバンドとして結成したSense Of Wonderを引っさげて、そのバンド名を冠したアルバムを難波自身のソロとしてリリースします。SF作家としての顔も持つ彼らしく、コンセプチュアルな側面とフュージョン〜プログレに大きく影響されたその作風は、キーボード&シンセサイザー弾きとしてのテクニックと意外にも美声のヴォーカルスタイルも相まって、一定の評価を得ることに成功しました。そして80年代中盤のNHK教育放映の音楽番組「ベストサウンド」における進行役によりメディアに露出し始めた彼は何枚かのソロ作で実績を積んだ後、遂に87年には満を持して難波弘之という冠に頼らない、バンド「Sense Of Wonder」として本作をリリースすることになるわけです。盟友のベーシスト小室和之と若手ドラマー鈴木徹とのトリオバンドである彼らは、ギターレスというバンド形態を逆手にとってキーボード主体のプログレサウンドをよりポップに仕上げており、TV等の露出が多かった難波のメディアへの意識の高さが窺われる作品となっています。
当然のことながら難波弘之のキーボードプレイが中心ではありますが、シーケンサーによる打ち込みは一切排除し生演奏にこだわるのがこのバンドのポリシーということで、3名のテクニカルな演奏力のぶつかり合いが魅力ではあります。しかし本作はそんな熱いバトルな作風ではなく、あくまでメロディアスなポップ路線であり、爽やかともいえるヴォーカルが全編を占め、プログレバンドとしての矜持はエッセンス程度にとどめた感じを受けます。とはいうもののサウンドに手を抜いているはずもなく、多種多様なシンセサイザー群を自在に操り楽曲に輪郭を持たせると、本作においてフィーチャーされたドラムのローファイでこもったようなエフェクト処理(ゲートリバーブ!)が楽曲全体にパワーと個性を与えています。また、ただでさえテクニックに定評がある小室和之のベースプレイにシンセベースを混ぜて厚みを持たせる大胆さもこだわりの一環と言えるでしょう。彼らからすればあえてPOPSに挑戦したとも言える本作は、プログレ本来の超絶技巧なドラマティックプレイを期待する方々にとっては物足りないかもしれませんが(ラストの「オーニソプター」で溜飲を下げることと思いますが)、演奏もさることながらどちらかといえばサウンド処理面でセンスを発揮したPOPSアルバムだからこその挑戦的な作品であると言えると思います。
<Favorite Songs>
・「メビウスナイト」
プログレらしからぬ大人のエレクトリックPOPS。レゾナンスの効いたシンセと生音の融合で太くなったベースラインとエフェクティブに処理されたドラム音にしびれます。音数が少ないながらも存在感のあるシンセフレーズの入れ方もさすがプロフェッショナルな構成です。
・「万華鏡(カレイドスコープ)」
これもドラム&ベースのリズム隊がこれでもかと前面に押し出されたポップチューン。淡々としながらもゲートリバーブだけでなく多彩な電子音で彩るドラムワークが嬉しいです。ポルタメントの効いたシンセのような小技も効いていてかゆいところに手が届く感じです。
・「オーニソプター」
ラストにして本領発揮の目まぐるしいフレーズの嵐で攻めまくるプログレッシブロック。変拍子満載のイントロから間奏のまさに超絶技巧というべき多彩な音色が入れ替わり立ち替わり登場する圧巻のシンセソロまで、最後まで気の抜けない緊張感たっぷりの力作です。ラストのソフトロックなエンディングも微笑ましいです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ゴージャスなシンセプレイと派手さが際立つ音処理)
・メロディ ★★ (精一杯ポップにしました感がプロフェッショナル)
・リズム ★★★★ (エフェクティブな処理でパワフルに暴れ回る強烈な音)
・曲構成 ★ (ユルい楽曲も多くもっと暴れ回ってほしかったかも)
・個性 ★ (余りにポップ路線に偏った結果没個性だが悪くない)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「ピーナツヘッド」 GNP
「ピーナツヘッド」 (1997 ヨロズ)
GNP

<members>
丸野浩一郎:vocal・synthesizer & computer programming・voice・chorus
尾関健治:vocal・synthesizer & computer programming・chorus
奥田桂三:vocal・rap・guitar
1.「INTRODUCTION」 曲:丸野浩一郎 編:GNP
2.「PEANUTS HEAD」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
3.「SYNCHRONISED WALKING」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
4.「NATURAL HIGH」 詞・曲:丸野浩一郎 編:西郷健
5.「MONA LISA OVERDRIVE」 曲:尾関健治 編:GNP
6.「CAFFEINE JUNKY」 詞・曲:丸野浩一郎 編:GNP
7.「37.4」 詞:丸野浩一郎 曲:尾関健治 編:GNP
8.「GREAT MAMBO CHICKEN」
詞:丸野浩一郎・尾関健治 曲:丸野浩一郎 編:GNP
9.「インチキ王ヒゲヒゲ」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
10.「SNAPSHOT」 曲・編:GNP
11.「80'S BOYS」 詞:GNP 曲:尾関健治・リュウライタ 編:GNP
12.「TWIN BOYS」 詞・曲:丸野浩一郎 編:GNP
13.「DISCOMMUNICATION」 詞:丸野浩一郎 曲:尾関健治・丸野浩一郎 編:GNP
14.「WATERSCAPE」 詞・曲:西郷健 編:GNP
15.「犬の部屋」 詞:丸野浩一郎 曲:丸野浩一郎・尾関健治 編:GNP
16.「モアレの空」 詞:奥田桂三 曲:丸野浩一郎 編:西郷健
17.「かるいかるいおとこのこ」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
18.「天文学」 曲:丸野浩一郎 編:GNP
<support musician>
シバヤマユキコ:vocal
渡辺タクジ:guitar・vocal
本多伸光:organ
西郷健:ambient SE
produced by GNP
engineered by GNP
● 80年代テクノポップと90年代テクノのおいしい部分をMIX!東海の重鎮テクノユニットの力作
80年代以降の音楽制作スタイルを大きく変えたと言われるYMOの遺伝子はいわゆるプロだけでなくアマチュアにも引き継がれていきました。その萌芽は80年代後半のテクノ冬の時代(というものはなかったと個人的には思いますが)と呼ばれる時期から既に現れていまして、東海地方において密かに活動を開始していた中学〜高校生ユニットFMOもその1つでした。デモテープレベルでの活動から90年代に入りGNPとバンド名を改称した彼らの楽曲は、当日としては珍しくテクノポップを取り上げる伝説的ラジオ番組「トロイの木馬」にて取り上げられ、中野テルヲや松前公高といったテクノ系ミュージシャンから、パラペッツ、Controlled Voltage、B-2Dep't、Instant Cytronなどその番組で取り上げられたソレ系の若手インディーズグループの貴重な楽曲を収録した同名オムニバスへの参加によってさらにその名を知られることになりました。そして東海地方の有志を集めたヨロズレーベルを立ち上げるなど精力的に活動を進めたGNPは1997年初のCDリリースとなる本作(3rdアルバム)を満を持してリリースすることになるわけです。
さて、本作は初のCDということでこれまでの創作意欲を存分に吐き出したのか全18曲という大作となっており、そして大作であるがゆえにGNPとしての音楽性をバラエティ豊かに表現した多彩なタイプの楽曲が数多く収録されています。「モアレの空」のようなYMOを意識した歌モノテクノポップ(少しヘタウマなヴォーカルスタイルまで表現)から「インチキ王ヒゲヒゲ」に代表される電気グルーヴに代表される90年代コミカルテクノの手法まで織り交ぜ、それこそ彼らの音楽的ルーツを辿る大旅行絵巻のような内容ですが、音を楽しむためのアイデア(アマチュアらしい学生っぽいノリも彼ららしい)や熟知されたシンセ(特にパッド系)やサンプラー&シーケンスの使い方も豊富で、そこにある種の鍛えられたオリジナリティを感じさせます。そして何よりもこの手のテクノグループが疎かになりがちな歌に(決して上手くはないが)一生懸命取り組んでいるのが微笑ましいというか「テクノポップ」に対する真摯な姿勢が感じられて好感が持てます。また、「SYNCHRONISED WALKING」や「80'S BOYS」のような強烈なスネアは80年代へのオマージュがよほど感じられていないと出せない音であると思いますし、90年代後半という80年代にダサさが感じられていた時代にそれを挑戦しているだけでも、その意欲を買いたいと思います。ほどなく活動は超スローペースになっていたGNPですが、また思い出したように作品をリリースしてくれることを期待しています。
<Favorite Songs>
・「37.4」
うねうね這い回る複数のシーケンスの絡み合いに爽やかなシンセパッドのコントラストが美しいアンビエントテクノ。剥き出しの電子音が心地良いインストナンバーと思いきや、坂本龍一を意識したような鬱なヴォーカルを挿入してくるところが彼ららしいというか微笑ましい好感の持てる楽曲です。
・「DISCOMMUNICATION」
あからさまにあの「TECHNODELIC」のケチャがサンプリングされたシーケンスも歌も何もかもが渋いシリアスチューン。金物系のシーケンスと強烈なスネア、気怠いヴォーカル、そして幸宏エンディングw に中期YMO魂を感じます。
・「モアレの空」
渋い哀愁テクノ歌謡が続く後半の中でもストレンジ成分が多めの楽曲。汽笛をサンプルに使ったようなパッドをバックに淡々と歌われるいかにもテクノポップな歌モノですが、そのヴォーカルスタイルにはその音の壁がよく似合います。
<評点>
・サウンド ★★★ (大胆なサンプリングと意外と緻密なシンセワークに脱帽)
・メロディ ★★ (特にミディアムテンポの楽曲に独特のメロディ感覚が)
・リズム ★★★ (こだわりを感じるアタックの強いスネアに80's魂を感じる)
・曲構成 ★★ (前半の畳み掛けが息切れして後半は哀愁のテクノ歌謡に)
・個性 ★★ (90年代テクノの影響の中でYMO色を残すイビツさが魅力)
総合評点: 7点
ショップメカノで売っているかも・・。
GNP

<members>
丸野浩一郎:vocal・synthesizer & computer programming・voice・chorus
尾関健治:vocal・synthesizer & computer programming・chorus
奥田桂三:vocal・rap・guitar
1.「INTRODUCTION」 曲:丸野浩一郎 編:GNP
2.「PEANUTS HEAD」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
3.「SYNCHRONISED WALKING」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
4.「NATURAL HIGH」 詞・曲:丸野浩一郎 編:西郷健
5.「MONA LISA OVERDRIVE」 曲:尾関健治 編:GNP
6.「CAFFEINE JUNKY」 詞・曲:丸野浩一郎 編:GNP
7.「37.4」 詞:丸野浩一郎 曲:尾関健治 編:GNP
8.「GREAT MAMBO CHICKEN」
詞:丸野浩一郎・尾関健治 曲:丸野浩一郎 編:GNP
9.「インチキ王ヒゲヒゲ」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
10.「SNAPSHOT」 曲・編:GNP
11.「80'S BOYS」 詞:GNP 曲:尾関健治・リュウライタ 編:GNP
12.「TWIN BOYS」 詞・曲:丸野浩一郎 編:GNP
13.「DISCOMMUNICATION」 詞:丸野浩一郎 曲:尾関健治・丸野浩一郎 編:GNP
14.「WATERSCAPE」 詞・曲:西郷健 編:GNP
15.「犬の部屋」 詞:丸野浩一郎 曲:丸野浩一郎・尾関健治 編:GNP
16.「モアレの空」 詞:奥田桂三 曲:丸野浩一郎 編:西郷健
17.「かるいかるいおとこのこ」 詞・曲:尾関健治 編:GNP
18.「天文学」 曲:丸野浩一郎 編:GNP
<support musician>
シバヤマユキコ:vocal
渡辺タクジ:guitar・vocal
本多伸光:organ
西郷健:ambient SE
produced by GNP
engineered by GNP
● 80年代テクノポップと90年代テクノのおいしい部分をMIX!東海の重鎮テクノユニットの力作
80年代以降の音楽制作スタイルを大きく変えたと言われるYMOの遺伝子はいわゆるプロだけでなくアマチュアにも引き継がれていきました。その萌芽は80年代後半のテクノ冬の時代(というものはなかったと個人的には思いますが)と呼ばれる時期から既に現れていまして、東海地方において密かに活動を開始していた中学〜高校生ユニットFMOもその1つでした。デモテープレベルでの活動から90年代に入りGNPとバンド名を改称した彼らの楽曲は、当日としては珍しくテクノポップを取り上げる伝説的ラジオ番組「トロイの木馬」にて取り上げられ、中野テルヲや松前公高といったテクノ系ミュージシャンから、パラペッツ、Controlled Voltage、B-2Dep't、Instant Cytronなどその番組で取り上げられたソレ系の若手インディーズグループの貴重な楽曲を収録した同名オムニバスへの参加によってさらにその名を知られることになりました。そして東海地方の有志を集めたヨロズレーベルを立ち上げるなど精力的に活動を進めたGNPは1997年初のCDリリースとなる本作(3rdアルバム)を満を持してリリースすることになるわけです。
さて、本作は初のCDということでこれまでの創作意欲を存分に吐き出したのか全18曲という大作となっており、そして大作であるがゆえにGNPとしての音楽性をバラエティ豊かに表現した多彩なタイプの楽曲が数多く収録されています。「モアレの空」のようなYMOを意識した歌モノテクノポップ(少しヘタウマなヴォーカルスタイルまで表現)から「インチキ王ヒゲヒゲ」に代表される電気グルーヴに代表される90年代コミカルテクノの手法まで織り交ぜ、それこそ彼らの音楽的ルーツを辿る大旅行絵巻のような内容ですが、音を楽しむためのアイデア(アマチュアらしい学生っぽいノリも彼ららしい)や熟知されたシンセ(特にパッド系)やサンプラー&シーケンスの使い方も豊富で、そこにある種の鍛えられたオリジナリティを感じさせます。そして何よりもこの手のテクノグループが疎かになりがちな歌に(決して上手くはないが)一生懸命取り組んでいるのが微笑ましいというか「テクノポップ」に対する真摯な姿勢が感じられて好感が持てます。また、「SYNCHRONISED WALKING」や「80'S BOYS」のような強烈なスネアは80年代へのオマージュがよほど感じられていないと出せない音であると思いますし、90年代後半という80年代にダサさが感じられていた時代にそれを挑戦しているだけでも、その意欲を買いたいと思います。ほどなく活動は超スローペースになっていたGNPですが、また思い出したように作品をリリースしてくれることを期待しています。
<Favorite Songs>
・「37.4」
うねうね這い回る複数のシーケンスの絡み合いに爽やかなシンセパッドのコントラストが美しいアンビエントテクノ。剥き出しの電子音が心地良いインストナンバーと思いきや、坂本龍一を意識したような鬱なヴォーカルを挿入してくるところが彼ららしいというか微笑ましい好感の持てる楽曲です。
・「DISCOMMUNICATION」
あからさまにあの「TECHNODELIC」のケチャがサンプリングされたシーケンスも歌も何もかもが渋いシリアスチューン。金物系のシーケンスと強烈なスネア、気怠いヴォーカル、そして幸宏エンディングw に中期YMO魂を感じます。
・「モアレの空」
渋い哀愁テクノ歌謡が続く後半の中でもストレンジ成分が多めの楽曲。汽笛をサンプルに使ったようなパッドをバックに淡々と歌われるいかにもテクノポップな歌モノですが、そのヴォーカルスタイルにはその音の壁がよく似合います。
<評点>
・サウンド ★★★ (大胆なサンプリングと意外と緻密なシンセワークに脱帽)
・メロディ ★★ (特にミディアムテンポの楽曲に独特のメロディ感覚が)
・リズム ★★★ (こだわりを感じるアタックの強いスネアに80's魂を感じる)
・曲構成 ★★ (前半の畳み掛けが息切れして後半は哀愁のテクノ歌謡に)
・個性 ★★ (90年代テクノの影響の中でYMO色を残すイビツさが魅力)
総合評点: 7点
ショップメカノで売っているかも・・。
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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