「盗んだバイクで天城越え」 ロマンポルシェ。
「盗んだバイクで天城越え」(2010 ミュージックマイン)
ロマンポルシェ。

<members>
ロマン優光:delay・instruments
掟ポルシェ:vocal・instruments
1.「ハイスクールララバイ(featuring バニラビーンズ)」
詞:松本隆 曲:細野晴臣 編:NEWDEAL
2.「The Park」 詞:掟ポルシェ 曲・編:NARASAKI
3.「珍・ポタージュ」 詞・曲・編:掟ポルシェ
4.「ハガキスターの悲劇」 詞・曲・編:掟ポルシェ
5.「盗んだバイクで天城越え」 詞:掟ポルシェ 曲・編:サワサキヨシヒロ
6.「尿素配合」 詞:掟ポルシェ 曲・編:大森琢磨
7.「ワルのテーマ」 詞:山川啓介 曲:いずみたく 編:Tatsuya Oe
8.「一杯のかけそば」 詞:掟ポルシェ 曲・編:大森琢磨
9.「愛の面白半分実験料理」 詞:掟ポルシェ 曲・編:ロマン優光
10.「100%他力本願宣言」 詞:掟ポルシェ 曲・編:risu
11.「24時間プロレスショップ」 詞:掟ポルシェ 曲・編:risu
12.「男は薄着」 詞:掟ポルシェ 曲・編:ロマン優光
<support musician>
NARASAKI:instruments
NEWDEAL:instruments
risu:instruments
Tatsuya Oe:instruments
大森琢磨:instruments
サワサキヨシヒロ:instruments
テクマ!:additional instruments
バニラビーンズ:chorus
produced by 掟ポルシェ
mixing engineered by 林田涼太・NEWDEAL・NARASAKI・Tatsuya Oe
recording engineered by 林田涼太
● 多彩なゲストを迎えながらも相変わらずのナンセンスな世界観で安心させる満を持した脱力作品
外部クリエイターが活躍し強烈な個性を放つキャラクターに音楽性が追随した傑作「おうちが火事だよ!ロマンポルシェ。」から、次のオリジナルアルバム完成まで6年の歳月が流れました。しかしその間にはテレビ番組のコーナーとのコラボシングル「男は橋を渡らない」(カップリングの「LOVE ME TO DEATH」「はじめまして!不審者です!」は名曲!)やベストアルバム「もう少しまじめにやっておくべきだった」のリリースなど散発的に忘れられないようにしぶとく活動を続けていました。そんな緩やかでかつ自由なペースの彼らの活動ですが、2010年遂に6年ぶりとなるアルバムである本作がリリースされたというわけです。ミュージカル「CATS」風のジャケや彼ららしいナンセンスなタイトルなどパロディ臭の強い装丁の作品ではありますが、12曲という十分な収録曲数でありながら全くブレないニューウェーブ道が感じられる期待を裏切らない「ロマンポルシェ。な」好作品に仕上げられています。
NARASAKIや大森琢磨の起用によって音楽性を格段に向上させた彼らでしたが、本作では彼らの他にさらに外部クリエイター陣を増やしてバリエーションを高めています。のっけから始まるテクノ歌謡の名曲「ハイスクールララバイ」のリメイクを手掛けたテクノクリエイターNEWDEAL、キラーチューンでは必ず彼に依頼される往年のテクノマスターサワサキヨシヒロ!、グラム&ニューウェーブ女性シンガーのrisu、言わずと知れたTatsuya Oeといった豊富な制作陣が、それぞれの特徴を生かしてロマンポルシェ。という強烈な素材を料理して楽しんでいるかのようなトラックを作り上げています。そしてそれを向こうに張った掟ポルシェとロマン優光のトラックは、他のクリエイターに触発されたかのように細部でレベルが上がっており、彼らならではの粗さと逸脱感はそのままに、他の楽曲とも違和感なく溶け込んでいるところが前作より進歩したというところであると思います。惜しむらくはNARASAKI楽曲(と掟ポルシェの説教)がもう少し欲しかったところですが、6年経っても勢いは衰えることなく元気な楽曲を聴かせてくれたことに安心した次第です。何年後になるかはわかりませんがエレクトリックで楽しい作品を期待しています。
<Favorite Songs>
・「The Park」
多数のクリエイター陣の楽曲の中でも貫禄の違いを見せつけたNARASAKIプロデュースのダークニューウェーブ風ナンバー。ウネリを加えた16ビートのシーケンスはいやがおうにもテンションが高くなりますが、ポイントはサビの哀愁シンセパッドで、このシンセを入れるセンスが他と一線を画すところと言えるかもしれません。
・「盗んだバイクで天城越え」
わかりやすい(ともすれば売れ線な?)楽曲を一様に手掛けるサワサキヨシヒロ!プロデュースのタイトルチューン。バイクを題材にしたハードロックな側面と石川さゆりの名曲「天城越え」をドッキングさせたナンセンスな世界観とまっとうな歌謡曲に仕上げる構成力は彼ららしいとも言えますが、それ以上に心の叫びが(ディレイで増幅して)熱いですw
・「尿素配合」
不思議フレーズ全開の大森琢磨楽曲。どうでもよい葛藤と切迫感がお下劣なテーマのエレクトロパンクですが、なんといってもイントロのグニャグニャしたフレーズを考えた時点でこの楽曲の勝ちが決まったようなものです。目の前が歪んでいくような素晴らしい入り方だと思います。
<評点>
・サウンド ★★★ (随所にフレーズに歪みが増して質が上がった印象)
・メロディ ★ (キャッチーなメロもあるが地味なものも増えたか)
・リズム ★ (一貫してチープなリズムで攻めまくる芸風に変化なし)
・曲構成 ★ (全編NARASAKIプロデュースの作品も聴いてみたい)
・個性 ★★ (質は上がったが前作より楽曲の出来の差も広がった?)
総合評点: 6点
ロマンポルシェ。

<members>
ロマン優光:delay・instruments
掟ポルシェ:vocal・instruments
1.「ハイスクールララバイ(featuring バニラビーンズ)」
詞:松本隆 曲:細野晴臣 編:NEWDEAL
2.「The Park」 詞:掟ポルシェ 曲・編:NARASAKI
3.「珍・ポタージュ」 詞・曲・編:掟ポルシェ
4.「ハガキスターの悲劇」 詞・曲・編:掟ポルシェ
5.「盗んだバイクで天城越え」 詞:掟ポルシェ 曲・編:サワサキヨシヒロ
6.「尿素配合」 詞:掟ポルシェ 曲・編:大森琢磨
7.「ワルのテーマ」 詞:山川啓介 曲:いずみたく 編:Tatsuya Oe
8.「一杯のかけそば」 詞:掟ポルシェ 曲・編:大森琢磨
9.「愛の面白半分実験料理」 詞:掟ポルシェ 曲・編:ロマン優光
10.「100%他力本願宣言」 詞:掟ポルシェ 曲・編:risu
11.「24時間プロレスショップ」 詞:掟ポルシェ 曲・編:risu
12.「男は薄着」 詞:掟ポルシェ 曲・編:ロマン優光
<support musician>
NARASAKI:instruments
NEWDEAL:instruments
risu:instruments
Tatsuya Oe:instruments
大森琢磨:instruments
サワサキヨシヒロ:instruments
テクマ!:additional instruments
バニラビーンズ:chorus
produced by 掟ポルシェ
mixing engineered by 林田涼太・NEWDEAL・NARASAKI・Tatsuya Oe
recording engineered by 林田涼太
● 多彩なゲストを迎えながらも相変わらずのナンセンスな世界観で安心させる満を持した脱力作品
外部クリエイターが活躍し強烈な個性を放つキャラクターに音楽性が追随した傑作「おうちが火事だよ!ロマンポルシェ。」から、次のオリジナルアルバム完成まで6年の歳月が流れました。しかしその間にはテレビ番組のコーナーとのコラボシングル「男は橋を渡らない」(カップリングの「LOVE ME TO DEATH」「はじめまして!不審者です!」は名曲!)やベストアルバム「もう少しまじめにやっておくべきだった」のリリースなど散発的に忘れられないようにしぶとく活動を続けていました。そんな緩やかでかつ自由なペースの彼らの活動ですが、2010年遂に6年ぶりとなるアルバムである本作がリリースされたというわけです。ミュージカル「CATS」風のジャケや彼ららしいナンセンスなタイトルなどパロディ臭の強い装丁の作品ではありますが、12曲という十分な収録曲数でありながら全くブレないニューウェーブ道が感じられる期待を裏切らない「ロマンポルシェ。な」好作品に仕上げられています。
NARASAKIや大森琢磨の起用によって音楽性を格段に向上させた彼らでしたが、本作では彼らの他にさらに外部クリエイター陣を増やしてバリエーションを高めています。のっけから始まるテクノ歌謡の名曲「ハイスクールララバイ」のリメイクを手掛けたテクノクリエイターNEWDEAL、キラーチューンでは必ず彼に依頼される往年のテクノマスターサワサキヨシヒロ!、グラム&ニューウェーブ女性シンガーのrisu、言わずと知れたTatsuya Oeといった豊富な制作陣が、それぞれの特徴を生かしてロマンポルシェ。という強烈な素材を料理して楽しんでいるかのようなトラックを作り上げています。そしてそれを向こうに張った掟ポルシェとロマン優光のトラックは、他のクリエイターに触発されたかのように細部でレベルが上がっており、彼らならではの粗さと逸脱感はそのままに、他の楽曲とも違和感なく溶け込んでいるところが前作より進歩したというところであると思います。惜しむらくはNARASAKI楽曲(と掟ポルシェの説教)がもう少し欲しかったところですが、6年経っても勢いは衰えることなく元気な楽曲を聴かせてくれたことに安心した次第です。何年後になるかはわかりませんがエレクトリックで楽しい作品を期待しています。
<Favorite Songs>
・「The Park」
多数のクリエイター陣の楽曲の中でも貫禄の違いを見せつけたNARASAKIプロデュースのダークニューウェーブ風ナンバー。ウネリを加えた16ビートのシーケンスはいやがおうにもテンションが高くなりますが、ポイントはサビの哀愁シンセパッドで、このシンセを入れるセンスが他と一線を画すところと言えるかもしれません。
・「盗んだバイクで天城越え」
わかりやすい(ともすれば売れ線な?)楽曲を一様に手掛けるサワサキヨシヒロ!プロデュースのタイトルチューン。バイクを題材にしたハードロックな側面と石川さゆりの名曲「天城越え」をドッキングさせたナンセンスな世界観とまっとうな歌謡曲に仕上げる構成力は彼ららしいとも言えますが、それ以上に心の叫びが(ディレイで増幅して)熱いですw
・「尿素配合」
不思議フレーズ全開の大森琢磨楽曲。どうでもよい葛藤と切迫感がお下劣なテーマのエレクトロパンクですが、なんといってもイントロのグニャグニャしたフレーズを考えた時点でこの楽曲の勝ちが決まったようなものです。目の前が歪んでいくような素晴らしい入り方だと思います。
<評点>
・サウンド ★★★ (随所にフレーズに歪みが増して質が上がった印象)
・メロディ ★ (キャッチーなメロもあるが地味なものも増えたか)
・リズム ★ (一貫してチープなリズムで攻めまくる芸風に変化なし)
・曲構成 ★ (全編NARASAKIプロデュースの作品も聴いてみたい)
・個性 ★★ (質は上がったが前作より楽曲の出来の差も広がった?)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「青空百景」 MOON RIDERS
「青空百景」(1982 ジャパン)
MOON RIDERS

<members>
鈴木慶一:vocal・guitars・electric bass・keyboards
岡田徹:keyboards・guitars・strange sound effect・MC-4 programming・glass drums・chorus
橿渕哲郎:drums・keyboards・glass drums・guitars・chorus
白井良明:guitars・guitar synthesizer・改造guitars・chorus
鈴木博文:vocal・electric bass・guitars・bassline programming・chorus
武川雅寛:vocal・guitars・amp-case・keyboards・trumpet・chorus
1.「僕はスーパーフライ」 詞・曲:鈴木慶一 編:Moon Riders
2.「青空のマリー」 詞:佐伯健三・Moon Riders 曲:白井良明 編:Moon Riders
3.「霧の10�」 詞・曲:鈴木博文 編:Moon Riders
4.「真夜中の玉子」 詞:鈴木博文 曲:鈴木慶一 編:Moon Riders
5.「トンピクレンッ子」 詞:白井良明 曲:白井良明・Moon Riders 編:Moon Riders
6.「二十世紀鋼鉄の男」 詞:橿渕哲郎 曲:橿渕哲郎・Moon Riders 編:Moon Riders
7.「アケガラス」 詞:鈴木博文 曲:岡田徹 編:Moon Riders
8.「O・K,パ・ド・ドゥ」 詞:橿渕哲郎 曲:岡田徹・橿渕哲郎・鈴木慶一 編:Moon Riders
9.「物は壊れる、人は死ぬ、三つ数えて、眼をつぶれ」
詞:鈴木慶一 曲:岡田徹 編:Moon Riders
10.「くれない埠頭」 詞・曲:鈴木博文 編:Moon Riders
<support musician>
松尾清憲:vocal・chorus
矢口博康:tenor sax・alto sax
美尾洋乃:violin・viola
堺安志:cello
中田隆士:chorus
produced by MOON RIDERS
mixing engineered by 田中信一
recording engineered by 林雅之・鈴木博文
● 「マニア・マニエラ」と対を成すポップ全開作品ながら音づくりはなんともストレンジな確信犯的アルバム
本格的に電子楽器を導入しマシナリーかつエレクトリックなサウンドに変貌したものの、あまりにも尖り過ぎたために1982年リリースのはずがレコード会社が難色を示し、まさかの(当時普及には程遠かった)CDのみのリリースとなったいわくつきのアルバム「マニア・マニエラ」。日本のめまぐるしく変化するサウンド手法に対するアレルギーが蔓延していた時代だからこそのエピソードですが、そこで開き直って求められているような直球POPSアルバムを速攻で作り上げてしまうのが彼らのポテンシャルの高さというところでしょう。そのような経緯から生まれた本作は、見事わかりやすくキャッチーなメロディを備え外部の要求に応えた作品と言えるわけですが、「マニア・マニエラ」で味を占めたサウンド手法を大きく変えることがなかったのは当然であり、結果的にポップの殻をかぶりながらエレクトリックな不思議サウンドが散りばめられた興味深い作品となっています。
「マニア・マニエラ」で大活躍したシーケンサーMC-4は本作でも活躍、エンジニアによる実験的なミキシング、ニューウェーブ直系の変態的なギターフレーズ・・・ポップを標榜しながらも、やってることは酷評された「マニア~」と何一つ変わっていません。変わったのはその曲調というか作風ではないでしょうか。本作では比較的突き抜けた明るい雰囲気を持つ楽曲が多く、それが全体的に灰色でダークな埃の中から聴こえてくるような楽曲が多かった「マニア~」と異なる点であると言えます。実験サウンドをかぶったPOPS作品とPOPSの殻をかぶった実験作品・・それぞれ対照的な作品でありながら結果的に生まれたサウンドには同類項であるという、まさに兄弟作の典型的な例と言えると思います。今になってしまえば何が違ったのかとも思える両作品ですが、いつの時代も「わかりやすさ」が求められがちな中にあって、そうした風潮に真っ向からぶつかって勝負を仕掛けた、類稀なセンスと実力を備えているからこそ生み出せた作品ではないかと思われます。
<Favorite Songs>
・「真夜中の玉子」
ニューウェーブ路線をしっかり継承したスピードチューン。特徴的なドラムサウンドによるせわしないリズムにシンセやトランペットによる無国籍なフレーズ、全編にわたってかき鳴らされるギターなど詰め込み過ぎなサウンドも楽しい実験曲です。
・「トンピクレンッ子」
タイトルにより想起されるがごとくすべてにおいて突き抜けたストレンジライトチューン。フェイザーをかけたようなドラムに逆回転を利用したフレーズなどエフェクトを多用した実験的なサウンド、それらを明るく勢いで突っ走る若さ溢れる白井良明の先鋭化を感じさせる名曲です。
・「くれない埠頭」
最後を飾る彼らの楽曲の中でも名曲の1つに数えられるバラードソング。とはいえバックのサウンドは本作でも最上位に位置するほどエレクトリック。サンプリングを駆使したりリバーブがかったシンセフレーズで楽曲に奥行きを持たせているため、個人的にはメロディよりも音に耳がいって仕方がない楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (不思議音響とテクニックを同居させ新しいサウンドを構築)
・メロディ ★★ (わかりやすさはあるがそれほどキャッチーであるとも・・)
・リズム ★★★ (音色が多彩で飽きさせず実験要素がここに表出している)
・曲構成 ★ (まとまってはいるがさすがに突貫で作った寄せ集め感も)
・個性 ★★ (要求を満たしつつ手法を変えない彼らの意地も見える)
総合評点: 7点
MOON RIDERS

<members>
鈴木慶一:vocal・guitars・electric bass・keyboards
岡田徹:keyboards・guitars・strange sound effect・MC-4 programming・glass drums・chorus
橿渕哲郎:drums・keyboards・glass drums・guitars・chorus
白井良明:guitars・guitar synthesizer・改造guitars・chorus
鈴木博文:vocal・electric bass・guitars・bassline programming・chorus
武川雅寛:vocal・guitars・amp-case・keyboards・trumpet・chorus
1.「僕はスーパーフライ」 詞・曲:鈴木慶一 編:Moon Riders
2.「青空のマリー」 詞:佐伯健三・Moon Riders 曲:白井良明 編:Moon Riders
3.「霧の10�」 詞・曲:鈴木博文 編:Moon Riders
4.「真夜中の玉子」 詞:鈴木博文 曲:鈴木慶一 編:Moon Riders
5.「トンピクレンッ子」 詞:白井良明 曲:白井良明・Moon Riders 編:Moon Riders
6.「二十世紀鋼鉄の男」 詞:橿渕哲郎 曲:橿渕哲郎・Moon Riders 編:Moon Riders
7.「アケガラス」 詞:鈴木博文 曲:岡田徹 編:Moon Riders
8.「O・K,パ・ド・ドゥ」 詞:橿渕哲郎 曲:岡田徹・橿渕哲郎・鈴木慶一 編:Moon Riders
9.「物は壊れる、人は死ぬ、三つ数えて、眼をつぶれ」
詞:鈴木慶一 曲:岡田徹 編:Moon Riders
10.「くれない埠頭」 詞・曲:鈴木博文 編:Moon Riders
<support musician>
松尾清憲:vocal・chorus
矢口博康:tenor sax・alto sax
美尾洋乃:violin・viola
堺安志:cello
中田隆士:chorus
produced by MOON RIDERS
mixing engineered by 田中信一
recording engineered by 林雅之・鈴木博文
● 「マニア・マニエラ」と対を成すポップ全開作品ながら音づくりはなんともストレンジな確信犯的アルバム
本格的に電子楽器を導入しマシナリーかつエレクトリックなサウンドに変貌したものの、あまりにも尖り過ぎたために1982年リリースのはずがレコード会社が難色を示し、まさかの(当時普及には程遠かった)CDのみのリリースとなったいわくつきのアルバム「マニア・マニエラ」。日本のめまぐるしく変化するサウンド手法に対するアレルギーが蔓延していた時代だからこそのエピソードですが、そこで開き直って求められているような直球POPSアルバムを速攻で作り上げてしまうのが彼らのポテンシャルの高さというところでしょう。そのような経緯から生まれた本作は、見事わかりやすくキャッチーなメロディを備え外部の要求に応えた作品と言えるわけですが、「マニア・マニエラ」で味を占めたサウンド手法を大きく変えることがなかったのは当然であり、結果的にポップの殻をかぶりながらエレクトリックな不思議サウンドが散りばめられた興味深い作品となっています。
「マニア・マニエラ」で大活躍したシーケンサーMC-4は本作でも活躍、エンジニアによる実験的なミキシング、ニューウェーブ直系の変態的なギターフレーズ・・・ポップを標榜しながらも、やってることは酷評された「マニア~」と何一つ変わっていません。変わったのはその曲調というか作風ではないでしょうか。本作では比較的突き抜けた明るい雰囲気を持つ楽曲が多く、それが全体的に灰色でダークな埃の中から聴こえてくるような楽曲が多かった「マニア~」と異なる点であると言えます。実験サウンドをかぶったPOPS作品とPOPSの殻をかぶった実験作品・・それぞれ対照的な作品でありながら結果的に生まれたサウンドには同類項であるという、まさに兄弟作の典型的な例と言えると思います。今になってしまえば何が違ったのかとも思える両作品ですが、いつの時代も「わかりやすさ」が求められがちな中にあって、そうした風潮に真っ向からぶつかって勝負を仕掛けた、類稀なセンスと実力を備えているからこそ生み出せた作品ではないかと思われます。
<Favorite Songs>
・「真夜中の玉子」
ニューウェーブ路線をしっかり継承したスピードチューン。特徴的なドラムサウンドによるせわしないリズムにシンセやトランペットによる無国籍なフレーズ、全編にわたってかき鳴らされるギターなど詰め込み過ぎなサウンドも楽しい実験曲です。
・「トンピクレンッ子」
タイトルにより想起されるがごとくすべてにおいて突き抜けたストレンジライトチューン。フェイザーをかけたようなドラムに逆回転を利用したフレーズなどエフェクトを多用した実験的なサウンド、それらを明るく勢いで突っ走る若さ溢れる白井良明の先鋭化を感じさせる名曲です。
・「くれない埠頭」
最後を飾る彼らの楽曲の中でも名曲の1つに数えられるバラードソング。とはいえバックのサウンドは本作でも最上位に位置するほどエレクトリック。サンプリングを駆使したりリバーブがかったシンセフレーズで楽曲に奥行きを持たせているため、個人的にはメロディよりも音に耳がいって仕方がない楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (不思議音響とテクニックを同居させ新しいサウンドを構築)
・メロディ ★★ (わかりやすさはあるがそれほどキャッチーであるとも・・)
・リズム ★★★ (音色が多彩で飽きさせず実験要素がここに表出している)
・曲構成 ★ (まとまってはいるがさすがに突貫で作った寄せ集め感も)
・個性 ★★ (要求を満たしつつ手法を変えない彼らの意地も見える)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Miracle of Love」 安岡孝章
「Miracle of Love」 (1990 テイチク)
安岡孝章:vocal・keyboards

1.「Paradise」 詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
2.「Miracle of Love」
詞:安岡孝章・小倉博和・堀麻夫 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
3.「Sir Duke」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
4.「Just now, Go! Go! Go! 真夜中をぶっとばせ」
詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
5.「Stay over Night」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
6.「In Your Eyes キャンドルの炎」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
7.「Foreigner」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
8.「Break The Motion」
詞:綾野ユキヒロ 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
9.「Love Change Everything」
詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
<support musician>
小倉博和:guitars
西込加久見:bass・synthesizer
近沢一正:drums
野呂尚史:drums
工藤健:keyboards
古川初穂:keyboards
齋藤昇:sax
野木美也子:background vocal
堀麻夫:background vocal
MIO:background vocal
Farra西込:voice
produced by 安岡孝章・西込加久見
engineered by 西込加久見
● 訴求力のあるヴォーカルと光るメロディセンスをいかんなく発揮した少し大人でAORな初ソロアルバム
1985年のシングル「スローなDanceは踊れない」のデビュー以降、ヒットとはいかないまでもその優れたメロディセンスと爽やかな優男風な歌唱に定評があったアイリーン・フォーリーン。彼らはメンバーチェンジなどを経ながら3枚のアルバムと1枚のベストアルバムを残し88年に活動を休止します。しかし他者への楽曲提供など作曲家としても活動していたフロントマンにしてヴォーカルの安岡孝章は、ごく自然に2年後の1990年、待望のソロアルバムをリリースします。その透明感のあるヴォーカルが健在な本作は、期待に違わず相変わらずのメロディ構築能力に優れ、しかも少し大人に成長したかのような渋みと安定感を感じさせる佳作に仕上げられています。
とはいえ本作は後期アイリーン・フォーリーンの傑作「Body & Voice」に引き続き安岡と西込加久見の共同プロデュースで、しかもアレンジには全編にわたって後期アイリーン・フォーリーンの盟友であった小倉博和も加わっており(しかももう1人のメンバー堀麻夫もしっかり作詞で参加)、確実にこれはアイリーン・フォーリーンの4thアルバムといっても違和感のない作風です。衰えることのない泣きのフレーズもさることながら、いまや日本を代表するギタリストの1人と言ってもよい小倉博和の味わい深いギターワークは健在で、楽曲の完成度としては全く問題ありません。しかし90年代に突入した時代もあってパワフルなドラム処理の時代を通過したためか、サウンドの肌触りとしては柔らかで喉越しが良いものに変化しています。それは「Sir Duke」「In Your Eyes」「Foreigner」といったムーディーなAORソングに顕著で、そのあたりがソロになってPOPSシンガーとして目指した方向性であったのではないかと思われます。その才能とは裏腹に本作も期待したほどの評価を得られなかった彼は、非常に残念ではありますが結局第一線からは身を引いていくことになります。
<Favorite Songs>
・「Miracle of Love」
タイトルチューンらしくアイリーン・フォーリーンから微塵も揺るがないお得意のメロディ回しが巧み過ぎる貫禄のポップソング。あの名曲「Just One」を彷佛とさせるノスタルジーとセンチメンタルが同居した青春のメロディラインが泣けます。
・「Just now, Go! Go! Go! 真夜中をぶっとばせ」
後期アイリーンで垣間見せたハードボイルドな側面の延長線上にあるスピードチューン。とはいえ大切にされているのは澱みないメロディで、力強さを前面に押し出した楽曲の中、サラッと聴くことができるのはこのメロディのおかげです。こうしたサウンドで映える小倉のギターの暴れっぷりも聴き所の1つです。
・「Stay over Night」
前曲とのつながりが違和感のないシンセと生のベースがファンキーな楽曲。軽めのピアノ&オルガン音色が時代の空気を感じさせますが、大人の表情をここでも読み取ることができます。
<評点>
・サウンド ★ (バンド時代の熱量からは一歩冷めた感もある)
・メロディ ★★★★ (類稀なポップセンスを埋もれさすには惜しいほど)
・リズム ★ (一時期に比べるとやはりアッサリ感は否めない)
・曲構成 ★ (前半に佳曲が並ぶが後半はスローテンポで固める)
・個性 ★ (ソロシンガーとしてもう少し作品を聴きたかった)
総合評点: 7点
安岡孝章:vocal・keyboards

1.「Paradise」 詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
2.「Miracle of Love」
詞:安岡孝章・小倉博和・堀麻夫 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
3.「Sir Duke」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
4.「Just now, Go! Go! Go! 真夜中をぶっとばせ」
詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
5.「Stay over Night」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
6.「In Your Eyes キャンドルの炎」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
7.「Foreigner」 詞・曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
8.「Break The Motion」
詞:綾野ユキヒロ 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
9.「Love Change Everything」
詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:安岡孝章・小倉博和・西込加久見
<support musician>
小倉博和:guitars
西込加久見:bass・synthesizer
近沢一正:drums
野呂尚史:drums
工藤健:keyboards
古川初穂:keyboards
齋藤昇:sax
野木美也子:background vocal
堀麻夫:background vocal
MIO:background vocal
Farra西込:voice
produced by 安岡孝章・西込加久見
engineered by 西込加久見
● 訴求力のあるヴォーカルと光るメロディセンスをいかんなく発揮した少し大人でAORな初ソロアルバム
1985年のシングル「スローなDanceは踊れない」のデビュー以降、ヒットとはいかないまでもその優れたメロディセンスと爽やかな優男風な歌唱に定評があったアイリーン・フォーリーン。彼らはメンバーチェンジなどを経ながら3枚のアルバムと1枚のベストアルバムを残し88年に活動を休止します。しかし他者への楽曲提供など作曲家としても活動していたフロントマンにしてヴォーカルの安岡孝章は、ごく自然に2年後の1990年、待望のソロアルバムをリリースします。その透明感のあるヴォーカルが健在な本作は、期待に違わず相変わらずのメロディ構築能力に優れ、しかも少し大人に成長したかのような渋みと安定感を感じさせる佳作に仕上げられています。
とはいえ本作は後期アイリーン・フォーリーンの傑作「Body & Voice」に引き続き安岡と西込加久見の共同プロデュースで、しかもアレンジには全編にわたって後期アイリーン・フォーリーンの盟友であった小倉博和も加わっており(しかももう1人のメンバー堀麻夫もしっかり作詞で参加)、確実にこれはアイリーン・フォーリーンの4thアルバムといっても違和感のない作風です。衰えることのない泣きのフレーズもさることながら、いまや日本を代表するギタリストの1人と言ってもよい小倉博和の味わい深いギターワークは健在で、楽曲の完成度としては全く問題ありません。しかし90年代に突入した時代もあってパワフルなドラム処理の時代を通過したためか、サウンドの肌触りとしては柔らかで喉越しが良いものに変化しています。それは「Sir Duke」「In Your Eyes」「Foreigner」といったムーディーなAORソングに顕著で、そのあたりがソロになってPOPSシンガーとして目指した方向性であったのではないかと思われます。その才能とは裏腹に本作も期待したほどの評価を得られなかった彼は、非常に残念ではありますが結局第一線からは身を引いていくことになります。
<Favorite Songs>
・「Miracle of Love」
タイトルチューンらしくアイリーン・フォーリーンから微塵も揺るがないお得意のメロディ回しが巧み過ぎる貫禄のポップソング。あの名曲「Just One」を彷佛とさせるノスタルジーとセンチメンタルが同居した青春のメロディラインが泣けます。
・「Just now, Go! Go! Go! 真夜中をぶっとばせ」
後期アイリーンで垣間見せたハードボイルドな側面の延長線上にあるスピードチューン。とはいえ大切にされているのは澱みないメロディで、力強さを前面に押し出した楽曲の中、サラッと聴くことができるのはこのメロディのおかげです。こうしたサウンドで映える小倉のギターの暴れっぷりも聴き所の1つです。
・「Stay over Night」
前曲とのつながりが違和感のないシンセと生のベースがファンキーな楽曲。軽めのピアノ&オルガン音色が時代の空気を感じさせますが、大人の表情をここでも読み取ることができます。
<評点>
・サウンド ★ (バンド時代の熱量からは一歩冷めた感もある)
・メロディ ★★★★ (類稀なポップセンスを埋もれさすには惜しいほど)
・リズム ★ (一時期に比べるとやはりアッサリ感は否めない)
・曲構成 ★ (前半に佳曲が並ぶが後半はスローテンポで固める)
・個性 ★ (ソロシンガーとしてもう少し作品を聴きたかった)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「VOICE」 横山輝一
「VOICE」 (1987 ファンハウス)
横山輝一:vocal・backing vocals

1.「Freedom」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
2.「Rainy Day」 詞:神沢礼江 曲:横山輝一 編:笹岡知之
3.「恋をしようぜ」 詞:神沢礼江 曲:横山輝一 編:松浦晃久
4.「Husky Heart」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
5.「Just Moonlight」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
6.「Space of Love」 詞:許瑛子 曲:横山輝一 編:笹岡知之
7.「Girl」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
8.「Get It On」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
9.「想い出のDown Town Stardust Band」 詞:神沢礼江 曲:横山輝一 編:松浦晃久
10.「My Love」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
11.「Falling In Love」 詞:竹花いち子 曲:横山輝一 編:松浦晃久
<support musician>
久保田邦夫:guitars
河合徹三:bass
土岐英史:alto sax
笹岡知之:keyboards・all devices
松浦晃久:keyboards・acoustic piano・all devices・backing vocals
高杉登:percussions
Suzi Kim:backing vocals
奥野恵:backing vocals
杉本和代:backing vocals
鈴木智佳:backing vocals
高橋香代子:backing vocals
森崎ベラ:backing vocals
produced by 五十嵐弘之
engineered by 藤田厚生・大里正毅
● 1stよりスタイリッシュにキレを増した楽曲を引っさげメロディメイカーとしての本領も発揮した2ndアルバム
北海道からCBSソニーオーディションで最優秀賞を獲得したのが1981年。それから長らく寝かせられて5年後にようやくシングル「ブギー・ウォーキン」でデビューを果たしたのが1986年。まさに満を持した感のあった横山輝一は、ブラコン風味溢れるメロディメイカー&シンガーです。ニューウェーブやデジタルファンクなマシナリーサウンドが席巻した80年代前半を避けてのデビューは、時機を逸したというよりは久保田利伸や岡村靖幸らの新世代のブラコン影響下にあったシンガーが台頭して来た時代に偶然か必然かはわかりませんが、結果的にマッチしたものであったと言えるでしょう。しかしながら1stアルバム「I LIKE IT」では派手で過剰なサウンドが好まれていた当時にあって生演奏中心で勝負するなど意気込みは感じられたものの、そのおかっぱなヘアスタイル以上には印象としては地味さは拭いきれませんでした。ところが翌87年の4thシングル「HUSKY HEART」では少し趣向を変えてデジタル面も取り入れた硬派なサウンドに進化し、髪型もサッパリしてオシャレ感も増して、彼なりのポップセンスを散りばめた本領発揮の2ndアルバムをリリースします。それが本作というわけです。
1曲目の「Freedom」を聴いてもわかるように明らかに力強さを増したサウンドが光る本作は、持ち前のよく伸びる横山のヴォーカルが生かされてその開放感は段違いに感じられます。アレンジャーとして加わった松浦晃久は横山の楽曲に新たな息吹を与え、デジタルサウンドを強調しても彼のブラコンテイストを殺すことなく上手にマッチングできることを証明しています。結果的に完成されたサウンドは、当時この路線では最先端を走っていた角松敏生に追随するかのような、特徴のあるコード進行と女性コーラス、シンセ中心にフュージョンっぽさも感じさせるシティポップ・・というものでした。しかし角松のような耳に残る濃い味のヴォーカルスタイルとは異なり、どちらかというと爽やかで伸びやかな声質を持つ横山ならではのオリジナリティは確保しており、特に軽めのポップソングにそれが生かされているような印象があります。その後「Lovin' You」でその声質を生かしたヒットソングを飛ばす彼のスタイルは本作によって歩み出したと言ってもよく、その意味では彼のメロディセンスを楽しむには持ってこいの作品と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「Rainy Day」
まるで角松敏生を彷佛とさせる曲調とアレンジの先行シングルカット曲。ダンサブルなベースライン、シンセブラスのシャープなフレーズ、女性コーラスの掛け合い、サックスの入り方など、これは角松風なフュージョンPOPSとしか言いようがありません(誉め言葉です)。
・「Husky Heart」
歪んだギターで早くも新境地を見せた先行シングル。コード進行や女性コーラスのフレーズなどこの楽曲もどこか角松敏生を感じさせますが、味わい深いシンセソロや大活躍するギターなど聴き所も多くテンションも高まる名曲です。
・「Get It On」
マシナリーな連打バスドラが嬉しい激しいビートに乗ったこれもロック調のダンサブルチューン。サビ前のドリルドラムロールがかっこいいです。やり過ぎと思えるほどのギミックに溢れる間奏もこの楽曲のハイライトで、彼なりの「熱さ」を感じる好楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (前作とは比較できないほどパワーを感じさせる)
・メロディ ★★ (バラードも含めて流石のポップセンスを見せる)
・リズム ★★ (この時期の音色らしく随所で激しさをプラス)
・曲構成 ★ (ラスト3曲で勢いが弱まってくるのが残念)
・個性 ★ (よくできたPOPS集だが彼なりの特徴はまだ薄い)
総合評点: 6点
横山輝一:vocal・backing vocals

1.「Freedom」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
2.「Rainy Day」 詞:神沢礼江 曲:横山輝一 編:笹岡知之
3.「恋をしようぜ」 詞:神沢礼江 曲:横山輝一 編:松浦晃久
4.「Husky Heart」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
5.「Just Moonlight」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
6.「Space of Love」 詞:許瑛子 曲:横山輝一 編:笹岡知之
7.「Girl」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
8.「Get It On」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
9.「想い出のDown Town Stardust Band」 詞:神沢礼江 曲:横山輝一 編:松浦晃久
10.「My Love」 詞・曲:横山輝一 編:松浦晃久
11.「Falling In Love」 詞:竹花いち子 曲:横山輝一 編:松浦晃久
<support musician>
久保田邦夫:guitars
河合徹三:bass
土岐英史:alto sax
笹岡知之:keyboards・all devices
松浦晃久:keyboards・acoustic piano・all devices・backing vocals
高杉登:percussions
Suzi Kim:backing vocals
奥野恵:backing vocals
杉本和代:backing vocals
鈴木智佳:backing vocals
高橋香代子:backing vocals
森崎ベラ:backing vocals
produced by 五十嵐弘之
engineered by 藤田厚生・大里正毅
● 1stよりスタイリッシュにキレを増した楽曲を引っさげメロディメイカーとしての本領も発揮した2ndアルバム
北海道からCBSソニーオーディションで最優秀賞を獲得したのが1981年。それから長らく寝かせられて5年後にようやくシングル「ブギー・ウォーキン」でデビューを果たしたのが1986年。まさに満を持した感のあった横山輝一は、ブラコン風味溢れるメロディメイカー&シンガーです。ニューウェーブやデジタルファンクなマシナリーサウンドが席巻した80年代前半を避けてのデビューは、時機を逸したというよりは久保田利伸や岡村靖幸らの新世代のブラコン影響下にあったシンガーが台頭して来た時代に偶然か必然かはわかりませんが、結果的にマッチしたものであったと言えるでしょう。しかしながら1stアルバム「I LIKE IT」では派手で過剰なサウンドが好まれていた当時にあって生演奏中心で勝負するなど意気込みは感じられたものの、そのおかっぱなヘアスタイル以上には印象としては地味さは拭いきれませんでした。ところが翌87年の4thシングル「HUSKY HEART」では少し趣向を変えてデジタル面も取り入れた硬派なサウンドに進化し、髪型もサッパリしてオシャレ感も増して、彼なりのポップセンスを散りばめた本領発揮の2ndアルバムをリリースします。それが本作というわけです。
1曲目の「Freedom」を聴いてもわかるように明らかに力強さを増したサウンドが光る本作は、持ち前のよく伸びる横山のヴォーカルが生かされてその開放感は段違いに感じられます。アレンジャーとして加わった松浦晃久は横山の楽曲に新たな息吹を与え、デジタルサウンドを強調しても彼のブラコンテイストを殺すことなく上手にマッチングできることを証明しています。結果的に完成されたサウンドは、当時この路線では最先端を走っていた角松敏生に追随するかのような、特徴のあるコード進行と女性コーラス、シンセ中心にフュージョンっぽさも感じさせるシティポップ・・というものでした。しかし角松のような耳に残る濃い味のヴォーカルスタイルとは異なり、どちらかというと爽やかで伸びやかな声質を持つ横山ならではのオリジナリティは確保しており、特に軽めのポップソングにそれが生かされているような印象があります。その後「Lovin' You」でその声質を生かしたヒットソングを飛ばす彼のスタイルは本作によって歩み出したと言ってもよく、その意味では彼のメロディセンスを楽しむには持ってこいの作品と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「Rainy Day」
まるで角松敏生を彷佛とさせる曲調とアレンジの先行シングルカット曲。ダンサブルなベースライン、シンセブラスのシャープなフレーズ、女性コーラスの掛け合い、サックスの入り方など、これは角松風なフュージョンPOPSとしか言いようがありません(誉め言葉です)。
・「Husky Heart」
歪んだギターで早くも新境地を見せた先行シングル。コード進行や女性コーラスのフレーズなどこの楽曲もどこか角松敏生を感じさせますが、味わい深いシンセソロや大活躍するギターなど聴き所も多くテンションも高まる名曲です。
・「Get It On」
マシナリーな連打バスドラが嬉しい激しいビートに乗ったこれもロック調のダンサブルチューン。サビ前のドリルドラムロールがかっこいいです。やり過ぎと思えるほどのギミックに溢れる間奏もこの楽曲のハイライトで、彼なりの「熱さ」を感じる好楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (前作とは比較できないほどパワーを感じさせる)
・メロディ ★★ (バラードも含めて流石のポップセンスを見せる)
・リズム ★★ (この時期の音色らしく随所で激しさをプラス)
・曲構成 ★ (ラスト3曲で勢いが弱まってくるのが残念)
・個性 ★ (よくできたPOPS集だが彼なりの特徴はまだ薄い)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「FATIMA DANCING」 北川晴美
「FATIMA DANCING」(1988 メルダック)
北川晴美:vocals

1.「MAKE ME UP」
詞:北川晴美 曲:鈴木さえ子 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
2.「HORIZON」
詞:北川晴美 曲:門倉聡 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
3.「太陽の系図」
詞:蓬田ひろか 曲:渡辺等 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
4.「甘い退屈」
詞:滋田みかよ 曲:矢口博康 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
5.「SACRIFICE」
詞:蓬田ひろか 曲:渡辺等 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
6.「SWEET TRAVEL」
詞:滋田みかよ 曲:矢口博康 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
7.「BLUE SEPTEMBER」
詞:滋田みかよ 曲:門倉聡 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
8.「霧色の埠頭」
詞:滋田みかよ 曲:鈴木さえ子 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
<support musician>
渡辺等:bass・guitar・ukulele
石坪信也:drums
寺谷誠一:drums
門倉聡:keyboards・chorus
矢口博康:sax・guitar・chorus
野宮真貴:chorus
本間哲子:chorus
藤井丈司:computer operate
関島雅樹:computer operate
produced by 矢口博康
engineered by 赤川新一
● 圧巻のツインドラム!躍動感溢れるリズムが無国籍感を増幅させる個性派ヴォーカリストのデビューアルバム
そのエキゾチックな顔立ちとヴォーカルスタイルを持ち味として、メルダックの新設レーベルトライエムよりデビューしたのが北川晴美です。80年代後半に女性ソロシンガーが次々とデビューを果たす中、他と比べて突出した個性が求められた作品が期待されていましたが、そんな彼女のデビュー作である本作をプロデュースしたのは当時売れっ子サックスプレイヤーとして、一聴して彼だとわかる非常に個性的な演奏と音色を誇った、メランコリックインストバンドREAL FISHの矢口博康でした。サックス吹きとしては珍しくジャズやフュージョンの匂いを感じさせないニューウェーブ人脈から現れてきた矢口プロデュースということもあり、この作品も売れ線を意識するというよりは、一筋縄ではいかない個性派路線を狙い打ちしたと言えるような方向性を感じさせます。
本作が他と比べて抜きん出ているのはなんといってもツインドラムの圧倒的な迫力です。本作はプロデューサーの矢口博康だけでなく、キーボードの門倉聡、REAL FISHの盟友である渡辺等、そのREAL FISHのアルバム「4」で華麗なドラムさばきを聴かせた石坪信也、URBAN DANCEなどでしっかりボトムを支えてきた寺谷誠一の両ドラマーといった、本作限定バンドによるアレンジが施され、手練であり曲者でもある彼らのセンスとテクニックに長けた演奏力が本作の肝となっていますが、その中でも石坪&寺谷のツインドラムは手数も多く音響面でもズッシリ来る強烈な存在感を放っています。それに加えて堅実なイメージがある渡辺等のベースプレイが良い意味ではじけていると共に重厚感も感じられ、彼らリズム隊の音処理も含めたコンディションの良さが印象的です。この圧倒的なリズムで攻めまくるプロデュースセンスを矢口博康が持ち合わせているとも言えるでしょう。蓬田ひろか(野宮真貴の変名)やタイツの滋田みかよの作詞参加や、野宮やデビュー直前の本間哲子(プラチナKIT)のコーラス参加などMOON RIDERS人脈で固められていることからもそのニューウェーブ度が理解できるというものですが、その後北川晴美が加藤和彦~ホッピー神山とアルバムごとにプロデューサーを渡り歩いて、90年代にホッピー率いるPUGSにHONEY☆Kとして参加する下地が作られたという点でも、彼女にとってのこのデビュー作の方向性と多彩な個性派ミュージシャンと共演した経験は非常に重要なファクターであったと思います。
<Favorite Songs>
・「MAKE ME UP」
乱れ打つツインドラムの嵐がグイグイ引っ張っていく鈴木さえ子作曲の本作のキラーチューン。サビのストリングスがかぶさる中でのオシャレなコード感がたまりませんが、そんな中での跳ねるようなベースラインがおもしろいです。
・「SACRIFICE」
ドラムソロのような乱れ打ちでイントロを形成しているかと思いきや、そのままのリズムで楽曲へなだれ込んでいく強烈なリズム楽曲。スピード感あふれる無国籍POPSですが、リズムは休みなく叩かれ続け左右に広がるミックスもあって、まさにリズムの総攻撃といった印象のインパクト楽曲です。
・「霧色の埠頭」
Aメロの不思議なシンセフレーズが印象的なラストナンバー。このあたりの味わいは鈴木さえ子楽曲らしい部分が感じられますが、相変わらず疲れ知らずの叩きまくりドラムと荒ぶるベースラインが強力にバックアップしています。
<評点>
・サウンド ★★ (音色面ではそれほどの驚きはないが演奏がセンスの塊)
・メロディ ★ (難しく考え過ぎなメロディという印象も受ける)
・リズム ★★★★ (ツインドラム&ベースが良い意味でやりたい放題)
・曲構成 ★ (それほどメリハリは感じられないが安定感は抜群)
・個性 ★ (惜しむらくは北川本人の本領はまだまだ未完成)
総合評点: 7点
北川晴美:vocals

1.「MAKE ME UP」
詞:北川晴美 曲:鈴木さえ子 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
2.「HORIZON」
詞:北川晴美 曲:門倉聡 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
3.「太陽の系図」
詞:蓬田ひろか 曲:渡辺等 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
4.「甘い退屈」
詞:滋田みかよ 曲:矢口博康 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
5.「SACRIFICE」
詞:蓬田ひろか 曲:渡辺等 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
6.「SWEET TRAVEL」
詞:滋田みかよ 曲:矢口博康 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
7.「BLUE SEPTEMBER」
詞:滋田みかよ 曲:門倉聡 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
8.「霧色の埠頭」
詞:滋田みかよ 曲:鈴木さえ子 編:矢口博康・門倉聡・渡辺等・石坪信也・寺谷誠一
<support musician>
渡辺等:bass・guitar・ukulele
石坪信也:drums
寺谷誠一:drums
門倉聡:keyboards・chorus
矢口博康:sax・guitar・chorus
野宮真貴:chorus
本間哲子:chorus
藤井丈司:computer operate
関島雅樹:computer operate
produced by 矢口博康
engineered by 赤川新一
● 圧巻のツインドラム!躍動感溢れるリズムが無国籍感を増幅させる個性派ヴォーカリストのデビューアルバム
そのエキゾチックな顔立ちとヴォーカルスタイルを持ち味として、メルダックの新設レーベルトライエムよりデビューしたのが北川晴美です。80年代後半に女性ソロシンガーが次々とデビューを果たす中、他と比べて突出した個性が求められた作品が期待されていましたが、そんな彼女のデビュー作である本作をプロデュースしたのは当時売れっ子サックスプレイヤーとして、一聴して彼だとわかる非常に個性的な演奏と音色を誇った、メランコリックインストバンドREAL FISHの矢口博康でした。サックス吹きとしては珍しくジャズやフュージョンの匂いを感じさせないニューウェーブ人脈から現れてきた矢口プロデュースということもあり、この作品も売れ線を意識するというよりは、一筋縄ではいかない個性派路線を狙い打ちしたと言えるような方向性を感じさせます。
本作が他と比べて抜きん出ているのはなんといってもツインドラムの圧倒的な迫力です。本作はプロデューサーの矢口博康だけでなく、キーボードの門倉聡、REAL FISHの盟友である渡辺等、そのREAL FISHのアルバム「4」で華麗なドラムさばきを聴かせた石坪信也、URBAN DANCEなどでしっかりボトムを支えてきた寺谷誠一の両ドラマーといった、本作限定バンドによるアレンジが施され、手練であり曲者でもある彼らのセンスとテクニックに長けた演奏力が本作の肝となっていますが、その中でも石坪&寺谷のツインドラムは手数も多く音響面でもズッシリ来る強烈な存在感を放っています。それに加えて堅実なイメージがある渡辺等のベースプレイが良い意味ではじけていると共に重厚感も感じられ、彼らリズム隊の音処理も含めたコンディションの良さが印象的です。この圧倒的なリズムで攻めまくるプロデュースセンスを矢口博康が持ち合わせているとも言えるでしょう。蓬田ひろか(野宮真貴の変名)やタイツの滋田みかよの作詞参加や、野宮やデビュー直前の本間哲子(プラチナKIT)のコーラス参加などMOON RIDERS人脈で固められていることからもそのニューウェーブ度が理解できるというものですが、その後北川晴美が加藤和彦~ホッピー神山とアルバムごとにプロデューサーを渡り歩いて、90年代にホッピー率いるPUGSにHONEY☆Kとして参加する下地が作られたという点でも、彼女にとってのこのデビュー作の方向性と多彩な個性派ミュージシャンと共演した経験は非常に重要なファクターであったと思います。
<Favorite Songs>
・「MAKE ME UP」
乱れ打つツインドラムの嵐がグイグイ引っ張っていく鈴木さえ子作曲の本作のキラーチューン。サビのストリングスがかぶさる中でのオシャレなコード感がたまりませんが、そんな中での跳ねるようなベースラインがおもしろいです。
・「SACRIFICE」
ドラムソロのような乱れ打ちでイントロを形成しているかと思いきや、そのままのリズムで楽曲へなだれ込んでいく強烈なリズム楽曲。スピード感あふれる無国籍POPSですが、リズムは休みなく叩かれ続け左右に広がるミックスもあって、まさにリズムの総攻撃といった印象のインパクト楽曲です。
・「霧色の埠頭」
Aメロの不思議なシンセフレーズが印象的なラストナンバー。このあたりの味わいは鈴木さえ子楽曲らしい部分が感じられますが、相変わらず疲れ知らずの叩きまくりドラムと荒ぶるベースラインが強力にバックアップしています。
<評点>
・サウンド ★★ (音色面ではそれほどの驚きはないが演奏がセンスの塊)
・メロディ ★ (難しく考え過ぎなメロディという印象も受ける)
・リズム ★★★★ (ツインドラム&ベースが良い意味でやりたい放題)
・曲構成 ★ (それほどメリハリは感じられないが安定感は抜群)
・個性 ★ (惜しむらくは北川本人の本領はまだまだ未完成)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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