「ACROSS THE UNIVERSE」 NICE MUSIC
「ACROSS THE UNIVERSE」 (1994 ビクター)
NICE MUSIC

<members>
佐藤清喜:vocal・acoustic guitar・electric guitar・MC-500 mkII
清水雄史:chorus・acoustic piano・melodion・keyboards
1.「Future Song」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
2.「Space Ship Goes On (album Mix)」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
3.「恋の窓」 詞・曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
4.「新・海へ急ごう」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
5.「休日」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
6.「アンテナ」 詞・曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
7.「Across The Universe」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
8.「タイムカプセル」 詞:佐藤清喜 曲・編:NICE MUSIC
9.「星に願いを」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
10.「星と僕等はつながれてる」 詞・曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
11.「静かの海」 曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
<support musician>
ナラハラレイコ:vocal
I-GON:electric guitar・electric sitar
桜井芳樹:acoustic guitar・ukulele・mandolin
駒沢裕城:pedal steel guitar
渡辺貴浩:Rhodes
浦山秀彦:theremin
水江"YOKAN"洋一郎:flugel horn・mute trumpet・flute・trombone
Karla Dennis:universal weather report
produced by NICE MUSIC
engineered by 土井章嗣
● レトロな未来へのオマージュ!卓越したメロディと純正シンセサウンドが融合した珠玉の名盤
アコースティック寄りの2ndアルバム「NICE MUSIC NOW!」のリリース後、本来の持ち味であるシンセポップへの原点回帰を目指すべくこれまで以上に未来的で宇宙的なスペイシーポップシングル「Space Ship Goes On!」をリリースしたnice musicでしたが、このシングルで手応えを感じた彼らはすぐに3rdアルバムの制作にとりかかります。レトロフューチャーをテーマにビジュアルからサウンドまで徹底して作り込んでいきながら完成させた本作は、期待に違わない純度の高いシンセサウンドとノスタルジックでドリーミーな切ないメロディで一躍彼らの実力を示した代表作の名にふさわしい傑作です。
良くも悪くも今まで目立っていたアコギサウンドは一部にとどめられ、フレーズにも効果音的にも大胆に使用される電子音が満載、非常にエレクトリック度の高い作品であることは言うまでもないのですが、そこには当時流行のクラブで踊らせるためのスピリチュアルで本能的かつ扇情的なTECHNOは存在せず、根底のあるノスタルジックなPOPSへの欲求を素直にさらけ出した類稀なポップセンスを生かした土台があってこそ、その楽曲に色彩を加えるがごとく組み込まれる緻密なシンセフレーズと音色・サウンドが生きてくるわけです。レトロフューチャーだけあってリズム・シンセ共に非常にチープなサウンドに終始していますが、これも楽曲を引き立てる雰囲気作りとしては、結局近未来的というよりは現代から見た憧れの宇宙というイメージに落ち着いた本作にあって成功していると言えるでしょう。それにしても後半に進むに従ってその郷愁を誘うメロディの切なさに心を動かされるのは彼らの丁寧に作り込まれたメロディと音づくりに原因があるのでしょう。これぞどこか不安いっぱいな現在の生活に必要な「癒し」の要素であり、その力がこの珠玉の名盤に宿っていると思うのです。
<Favorite Songs>
・「恋の窓」
メルヘンティックな印象すら持たせる夢見がちなミディアムシンセポップ。正確なリズムと王道シーケンスベースによってエレポップの真髄な構成と言えますが、出色なのは切ないサビの裏で流れていくきらびやかなシンセフレーズで、あのキラキラした音色が本作のすべてと言ってもよいです。
・「アンテナ」
アップテンポのジャストリズムが気持ちよいこれぞ典型的なテクノポップと言える名曲。レゾナンスの効いたシンセベースやシンセドラム、そんなテクノ度満点のサウンドと朴訥で優し過ぎるヴォーカルの対比がたまりません。楽曲の構成的に最後の転調とエンディングも完璧です。
・「タイムカプセル」
nice musicが得意とする心温まるエレクトリックバラード。Aメロ終了後に入ってくるシンセソロ&ストリングスが涙を誘います。それを挟んでBメロに入る構成がまた良いのです。しかも1周だけというシンプルな構成なのにこれだけ聴かせるところが彼らの素晴らしい才能です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(このチープなシンセが古き良き近未来の象徴)
・メロディ ★★★★★(音に精通しつつメロ重視のセンスが半端じゃない)
・リズム ★★★ (チープながら緻密に作り込まれているのがわかる)
・曲構成 ★★★★★(ジャケも含めてコンセプトが貫かれた感動的な世界観)
・個性 ★★★★★(少なくとも当時彼らのようなタイプはいなかった)
総合評点: 10点
NICE MUSIC

<members>
佐藤清喜:vocal・acoustic guitar・electric guitar・MC-500 mkII
清水雄史:chorus・acoustic piano・melodion・keyboards
1.「Future Song」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
2.「Space Ship Goes On (album Mix)」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
3.「恋の窓」 詞・曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
4.「新・海へ急ごう」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
5.「休日」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
6.「アンテナ」 詞・曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
7.「Across The Universe」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
8.「タイムカプセル」 詞:佐藤清喜 曲・編:NICE MUSIC
9.「星に願いを」 詞・曲:佐藤清喜 編:NICE MUSIC
10.「星と僕等はつながれてる」 詞・曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
11.「静かの海」 曲:清水雄史 編:NICE MUSIC
<support musician>
ナラハラレイコ:vocal
I-GON:electric guitar・electric sitar
桜井芳樹:acoustic guitar・ukulele・mandolin
駒沢裕城:pedal steel guitar
渡辺貴浩:Rhodes
浦山秀彦:theremin
水江"YOKAN"洋一郎:flugel horn・mute trumpet・flute・trombone
Karla Dennis:universal weather report
produced by NICE MUSIC
engineered by 土井章嗣
● レトロな未来へのオマージュ!卓越したメロディと純正シンセサウンドが融合した珠玉の名盤
アコースティック寄りの2ndアルバム「NICE MUSIC NOW!」のリリース後、本来の持ち味であるシンセポップへの原点回帰を目指すべくこれまで以上に未来的で宇宙的なスペイシーポップシングル「Space Ship Goes On!」をリリースしたnice musicでしたが、このシングルで手応えを感じた彼らはすぐに3rdアルバムの制作にとりかかります。レトロフューチャーをテーマにビジュアルからサウンドまで徹底して作り込んでいきながら完成させた本作は、期待に違わない純度の高いシンセサウンドとノスタルジックでドリーミーな切ないメロディで一躍彼らの実力を示した代表作の名にふさわしい傑作です。
良くも悪くも今まで目立っていたアコギサウンドは一部にとどめられ、フレーズにも効果音的にも大胆に使用される電子音が満載、非常にエレクトリック度の高い作品であることは言うまでもないのですが、そこには当時流行のクラブで踊らせるためのスピリチュアルで本能的かつ扇情的なTECHNOは存在せず、根底のあるノスタルジックなPOPSへの欲求を素直にさらけ出した類稀なポップセンスを生かした土台があってこそ、その楽曲に色彩を加えるがごとく組み込まれる緻密なシンセフレーズと音色・サウンドが生きてくるわけです。レトロフューチャーだけあってリズム・シンセ共に非常にチープなサウンドに終始していますが、これも楽曲を引き立てる雰囲気作りとしては、結局近未来的というよりは現代から見た憧れの宇宙というイメージに落ち着いた本作にあって成功していると言えるでしょう。それにしても後半に進むに従ってその郷愁を誘うメロディの切なさに心を動かされるのは彼らの丁寧に作り込まれたメロディと音づくりに原因があるのでしょう。これぞどこか不安いっぱいな現在の生活に必要な「癒し」の要素であり、その力がこの珠玉の名盤に宿っていると思うのです。
<Favorite Songs>
・「恋の窓」
メルヘンティックな印象すら持たせる夢見がちなミディアムシンセポップ。正確なリズムと王道シーケンスベースによってエレポップの真髄な構成と言えますが、出色なのは切ないサビの裏で流れていくきらびやかなシンセフレーズで、あのキラキラした音色が本作のすべてと言ってもよいです。
・「アンテナ」
アップテンポのジャストリズムが気持ちよいこれぞ典型的なテクノポップと言える名曲。レゾナンスの効いたシンセベースやシンセドラム、そんなテクノ度満点のサウンドと朴訥で優し過ぎるヴォーカルの対比がたまりません。楽曲の構成的に最後の転調とエンディングも完璧です。
・「タイムカプセル」
nice musicが得意とする心温まるエレクトリックバラード。Aメロ終了後に入ってくるシンセソロ&ストリングスが涙を誘います。それを挟んでBメロに入る構成がまた良いのです。しかも1周だけというシンプルな構成なのにこれだけ聴かせるところが彼らの素晴らしい才能です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(このチープなシンセが古き良き近未来の象徴)
・メロディ ★★★★★(音に精通しつつメロ重視のセンスが半端じゃない)
・リズム ★★★ (チープながら緻密に作り込まれているのがわかる)
・曲構成 ★★★★★(ジャケも含めてコンセプトが貫かれた感動的な世界観)
・個性 ★★★★★(少なくとも当時彼らのようなタイプはいなかった)
総合評点: 10点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「SPACE DREAM BATHROOM」 エイプリルズ
「SPACE DREAM BATHROOM」(2005 SOFTLY)
エイプリルズ

<members>
イマイケンタロウ:vocal・guitar・bass
イグチミホ:vocal・synthesizer
ショトクジユウキ:drums
1.「THE BATHROOM SYMPHONY - Opening」 詞・曲:エイプリルズ 編:エイプリルズ・YMCK
2.「キ・ラ・メ・キ・ムーンダイバー」 詞:エイプリルズ・Satsuki Twinkle 曲・編:エイプリルズ
3.「COSMO’80s」 詞・曲・編:エイプリルズ
4.「タイム・アフター・タイム」 詞・曲・編:エイプリルズ
5.「ADVENTURES IN SPACE」 曲・編:エイプリルズ
6.「虹の惑星」 詞:エイプリルズ・Satsuki Twinkle 曲・編:エイプリルズ
7.「世界を越えて」 詞・曲・編:エイプリルズ
8.「END OF DREAM - Closing」 曲:エイプリルズ 編:エイプリルズ・YMCK
<support musician>
ヤマキリュウ:guitar
ワキヤタケシ:guitar
井手野敦:percussion
Fetta Fawashima:chorus
YUPPA:computer manipulate
ハヤシベトモノリ: computer manipulate
produced by エイプリルズ
engineered by ハヤシベトモノリ
● エレポップmeetsギターポップをわかりやすく伝える2000年代ならではのスペースポップユニットの会心作
いわゆる渋谷系と呼ばれた爽やかギターポップ系の音楽からの影響と、80'sの雰囲気漂うスペイシーなシンセサウンドをミックスした、自身の音楽的ルーツをわかりやすく伝えている00年代フューチャーポップの代表的グループであるエイプリルズが本格的に活動を始めたのがちょうど21世紀に突入した時期ということもあって、まさに00年代POPSの申し子というべきグループですが、そのいいとこどりで爽やかなヴォーカルとカラフルでキャッチーなポップセンスは、彼らの親しみやすいヴィジュアルもあって当時の音楽シーンにあって光るものがありました。「ASTRO」「パン・ダ」という2枚のアルバムはそんな00年代の時代の流れを敏感に察知した近未来感覚のキュートPOPS作品でしたが、この手のジャンルはなかなか正統に評価されにくいことが多く、このバンドもそういう範疇に入ってしまっていました。それでも彼らはコンスタントに作品をリリースし、2005年には3rdアルバムの本作を発表します。
イマイのFlipper's Guitar直系のファニーな高音ヴォーカルとイグチの透明感のあるキュートなヴォーカルのツインヴォーカルスタイルも板についてきた中での作品ですが、ここに来て楽曲の質がグッと上がった印象を受けます。前作に引き続きチップチューンの代表的ユニットYMCKをゲストに迎えるなど、チープなシーケンスを多用するこれまでのスタイルは不変ながらも、本作では従来のわかりやすいメロディラインがより一層強化された感があり、順調に成長の跡が見られます。そして何よりもこの手のグループにありがちなどこか斜に構えた部分がなく、メロディは直球過ぎるほどストレートで、こういった音楽が好きなんだ!という楽しさが伝わってくる楽曲で聴き手を和ませてくれます。ここまで自分たちの音楽的影響をあからさまにするバンドも珍しいのですが、彼らの作品には特有の嫌みがなくどこか許される可愛げのあるところに好感が持てるのです。結果的に本作によって自身のルーツたちにある程度の決着をつけた感のある彼らは、やや活動ペースを緩やかにしていき、次回作には5年の歳月を要することになります。
<Favorite Songs>
・「キ・ラ・メ・キ・ムーンダイバー」
お得意のピコピコシーケンスにアコースティックギターが絡むスペイシーネオアコ調のポップナンバー。80's的なノスタルジーを感じさせる王道のコードワークをふんだんに使いながらも、シーケンスによる心地良いスピード感がこの楽曲の命です。
・「タイム・アフター・タイム」
シンセストリングスと電子シーケンスの旨味が生かされたファンタジックなポップチューン。ドリーミーな世界観を持ち前の爽やかさで見事に表現、スペイシーな音色をこれでもかと多用してメルヘン成分もたっぷり含まれています。
<評点>
・サウンド ★★★ (相変わらずネオアコ+スペイシー音の親和性は高い)
・メロディ ★★★ (とにかくメジャーな明るいメロディで押しまくる)
・リズム ★★ (打ち込みに走りがちの中しっかり生ドラムなのも評価)
・曲構成 ★ (キラーソングも備えているがもう少し数がほしい)
・個性 ★★ (キラキラポップチューンにある種の完成を見る)
総合評点: 7点
エイプリルズ

<members>
イマイケンタロウ:vocal・guitar・bass
イグチミホ:vocal・synthesizer
ショトクジユウキ:drums
1.「THE BATHROOM SYMPHONY - Opening」 詞・曲:エイプリルズ 編:エイプリルズ・YMCK
2.「キ・ラ・メ・キ・ムーンダイバー」 詞:エイプリルズ・Satsuki Twinkle 曲・編:エイプリルズ
3.「COSMO’80s」 詞・曲・編:エイプリルズ
4.「タイム・アフター・タイム」 詞・曲・編:エイプリルズ
5.「ADVENTURES IN SPACE」 曲・編:エイプリルズ
6.「虹の惑星」 詞:エイプリルズ・Satsuki Twinkle 曲・編:エイプリルズ
7.「世界を越えて」 詞・曲・編:エイプリルズ
8.「END OF DREAM - Closing」 曲:エイプリルズ 編:エイプリルズ・YMCK
<support musician>
ヤマキリュウ:guitar
ワキヤタケシ:guitar
井手野敦:percussion
Fetta Fawashima:chorus
YUPPA:computer manipulate
ハヤシベトモノリ: computer manipulate
produced by エイプリルズ
engineered by ハヤシベトモノリ
● エレポップmeetsギターポップをわかりやすく伝える2000年代ならではのスペースポップユニットの会心作
いわゆる渋谷系と呼ばれた爽やかギターポップ系の音楽からの影響と、80'sの雰囲気漂うスペイシーなシンセサウンドをミックスした、自身の音楽的ルーツをわかりやすく伝えている00年代フューチャーポップの代表的グループであるエイプリルズが本格的に活動を始めたのがちょうど21世紀に突入した時期ということもあって、まさに00年代POPSの申し子というべきグループですが、そのいいとこどりで爽やかなヴォーカルとカラフルでキャッチーなポップセンスは、彼らの親しみやすいヴィジュアルもあって当時の音楽シーンにあって光るものがありました。「ASTRO」「パン・ダ」という2枚のアルバムはそんな00年代の時代の流れを敏感に察知した近未来感覚のキュートPOPS作品でしたが、この手のジャンルはなかなか正統に評価されにくいことが多く、このバンドもそういう範疇に入ってしまっていました。それでも彼らはコンスタントに作品をリリースし、2005年には3rdアルバムの本作を発表します。
イマイのFlipper's Guitar直系のファニーな高音ヴォーカルとイグチの透明感のあるキュートなヴォーカルのツインヴォーカルスタイルも板についてきた中での作品ですが、ここに来て楽曲の質がグッと上がった印象を受けます。前作に引き続きチップチューンの代表的ユニットYMCKをゲストに迎えるなど、チープなシーケンスを多用するこれまでのスタイルは不変ながらも、本作では従来のわかりやすいメロディラインがより一層強化された感があり、順調に成長の跡が見られます。そして何よりもこの手のグループにありがちなどこか斜に構えた部分がなく、メロディは直球過ぎるほどストレートで、こういった音楽が好きなんだ!という楽しさが伝わってくる楽曲で聴き手を和ませてくれます。ここまで自分たちの音楽的影響をあからさまにするバンドも珍しいのですが、彼らの作品には特有の嫌みがなくどこか許される可愛げのあるところに好感が持てるのです。結果的に本作によって自身のルーツたちにある程度の決着をつけた感のある彼らは、やや活動ペースを緩やかにしていき、次回作には5年の歳月を要することになります。
<Favorite Songs>
・「キ・ラ・メ・キ・ムーンダイバー」
お得意のピコピコシーケンスにアコースティックギターが絡むスペイシーネオアコ調のポップナンバー。80's的なノスタルジーを感じさせる王道のコードワークをふんだんに使いながらも、シーケンスによる心地良いスピード感がこの楽曲の命です。
・「タイム・アフター・タイム」
シンセストリングスと電子シーケンスの旨味が生かされたファンタジックなポップチューン。ドリーミーな世界観を持ち前の爽やかさで見事に表現、スペイシーな音色をこれでもかと多用してメルヘン成分もたっぷり含まれています。
<評点>
・サウンド ★★★ (相変わらずネオアコ+スペイシー音の親和性は高い)
・メロディ ★★★ (とにかくメジャーな明るいメロディで押しまくる)
・リズム ★★ (打ち込みに走りがちの中しっかり生ドラムなのも評価)
・曲構成 ★ (キラーソングも備えているがもう少し数がほしい)
・個性 ★★ (キラキラポップチューンにある種の完成を見る)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「SECRET」 Classix Nouveaux
「SECRET」 (1983 Liberty)
Classix Nouveaux

<members>
Sal Solo:vox・keyboard・synthesizers・guitar
Mik Sweeney:bass・keyboard・synthesizers・backing vox
B. P. Hurding:drums・electronic percussion・backing vox
Jimi Sumen:guitar・backing vox
1.「All around the world」 Classix Nouveaux
2.「Manitou」 Classix Nouveaux
3.「Heart from the start」 Classix Nouveaux
4.「The Fire inside」 Classix Nouveaux
5.「Forever and a day」 Classix Nouveaux
6.「Never never comes」 Classix Nouveaux
7.「The Unloved」 Classix Nouveaux
8.「When they all have gone」 Classix Nouveaux
9.「No other way」 Classix Nouveaux
<support musician>
Andrew Prince:stick bass
Adrian Lee:keyboards
Jack Waldman:keyboards
Nick Campey:keyboards
S. Paul Wilson:keyboards
David Vorhaus:Fairlight CMI
Pandit Dinesh:percussion
Gary Barnacle:sax
Anne Dudley:strings arrangement
produced by Alex Sadkin
engineered by Phil Thornally・Femi Steve Churchyard
● 典型的ニューロマヴォーカルは健在!Fairlightを大胆に導入したサウンドが力強い集大成作
スキンヘッドの妖艶なヴォーカリストSal Soloのヴィジュアルが強烈なインパクトを与えたClassix Nouveauxは1980年のデビュー以降、82年には「Is It A Dream」が自己最高のスマッシュヒットとなるなど2枚のアルバムを残しつつニューロマンティクスの一翼を担ってまいりました。しかしブームも下火になってくるとその勢いも徐々に衰えてくることは自然の摂理であって、まさに「Is It A Dream(邦題:夢のまた夢)」という状況になりつつありました。そこで起死回生を試みるためDuran DuranやThompson Twinsなどを手掛けた敏腕プロデューサーAlex Sadkinを迎え、マンネリズムを感じ始めていた楽曲に喝を入れるかのような大胆なサウンドにも挑戦した3rdアルバムをリリースすることになります。
もちろん前作までのNouveaux節は健在でキャッチーでマイナーポップなメロディは非常に聴きやすく、特に日本人好きする歌謡曲的フレーズで聴き手を安心させてくれます。しかし83年ともなるとサウンドにも厚みが増してきます。Alex Sadkin流のカラフルなサウンドメイクに当時最新鋭の元祖サンプラーFairlight CMIの利用による斬新かつ冒険的な音への追求が見られ、シーケンスの多用により従来より機械的な印象すら受けることができます。このようにサウンドの幅は明らかに広がりましたが、肝心の彼らの楽曲は進化したかというとそこは彼らの圧倒的な個性、サンプラーを導入しようがシーケンスを多用しようが全くもって彼らの楽曲の色は褪せることがありません。ニューロマ特有の哀愁フレーズとおどろおどろしいSal Soloの歌唱スタイル、Mik Sweeneyの随所で光るフレットレスベースなど彼らの個性は十分に残しつつ新境地に挑戦する意欲を見せたところに本作の価値があったと思われます。しかし失った流れは取り戻せるはずもなく、結局彼らは時代の役目を終えて解散することになってしまいます。
<Favorite Songs>
・「Heart from the start」
「Guilty」のような明るめの曲調に長閑さすら感じさせる彼らにとって珍しいタイプのポップソング。しかしシンセ&シーケンスの多用とサビの豪勢なオケヒットの導入など見せ場を用意したアレンジに新しい挑戦を感じさせます。
・「Forever and a day」
シングルカットされた彼らにとって王道のマイナーとメジャーを行き来する王道ソング。のちにThe Art Of Noiseのメンバーとして活躍するAnne Dudleyのストリングスアレンジがキャッチー過ぎる楽曲を荘厳に盛り上げていきます。スラップショット的なリズムもかっこいいです。
・「The Unloved」
サンプラーによるメタリックなリズムにサウンド面では新境地に挑むも、楽曲はいつものNouveaux節という楽曲。流れるようなリズムに任せた快活なナンバーですが、随所に導入されるリバースオケヒットがいい味を出しています。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラー導入による飛び道具を巧みに利用)
・メロディ ★★★ (当たり外れあるこのジャンルではメロディ力高し)
・リズム ★★★ (相変わらずベースとドラムの絡みには一目置ける)
・曲構成 ★★ (楽曲サウンド両面で緩急をつけるなど工夫するが)
・個性 ★★ (前2作と比較すると進歩しつつも雰囲気は不変)
総合評点: 8点
Classix Nouveaux

<members>
Sal Solo:vox・keyboard・synthesizers・guitar
Mik Sweeney:bass・keyboard・synthesizers・backing vox
B. P. Hurding:drums・electronic percussion・backing vox
Jimi Sumen:guitar・backing vox
1.「All around the world」 Classix Nouveaux
2.「Manitou」 Classix Nouveaux
3.「Heart from the start」 Classix Nouveaux
4.「The Fire inside」 Classix Nouveaux
5.「Forever and a day」 Classix Nouveaux
6.「Never never comes」 Classix Nouveaux
7.「The Unloved」 Classix Nouveaux
8.「When they all have gone」 Classix Nouveaux
9.「No other way」 Classix Nouveaux
<support musician>
Andrew Prince:stick bass
Adrian Lee:keyboards
Jack Waldman:keyboards
Nick Campey:keyboards
S. Paul Wilson:keyboards
David Vorhaus:Fairlight CMI
Pandit Dinesh:percussion
Gary Barnacle:sax
Anne Dudley:strings arrangement
produced by Alex Sadkin
engineered by Phil Thornally・Femi Steve Churchyard
● 典型的ニューロマヴォーカルは健在!Fairlightを大胆に導入したサウンドが力強い集大成作
スキンヘッドの妖艶なヴォーカリストSal Soloのヴィジュアルが強烈なインパクトを与えたClassix Nouveauxは1980年のデビュー以降、82年には「Is It A Dream」が自己最高のスマッシュヒットとなるなど2枚のアルバムを残しつつニューロマンティクスの一翼を担ってまいりました。しかしブームも下火になってくるとその勢いも徐々に衰えてくることは自然の摂理であって、まさに「Is It A Dream(邦題:夢のまた夢)」という状況になりつつありました。そこで起死回生を試みるためDuran DuranやThompson Twinsなどを手掛けた敏腕プロデューサーAlex Sadkinを迎え、マンネリズムを感じ始めていた楽曲に喝を入れるかのような大胆なサウンドにも挑戦した3rdアルバムをリリースすることになります。
もちろん前作までのNouveaux節は健在でキャッチーでマイナーポップなメロディは非常に聴きやすく、特に日本人好きする歌謡曲的フレーズで聴き手を安心させてくれます。しかし83年ともなるとサウンドにも厚みが増してきます。Alex Sadkin流のカラフルなサウンドメイクに当時最新鋭の元祖サンプラーFairlight CMIの利用による斬新かつ冒険的な音への追求が見られ、シーケンスの多用により従来より機械的な印象すら受けることができます。このようにサウンドの幅は明らかに広がりましたが、肝心の彼らの楽曲は進化したかというとそこは彼らの圧倒的な個性、サンプラーを導入しようがシーケンスを多用しようが全くもって彼らの楽曲の色は褪せることがありません。ニューロマ特有の哀愁フレーズとおどろおどろしいSal Soloの歌唱スタイル、Mik Sweeneyの随所で光るフレットレスベースなど彼らの個性は十分に残しつつ新境地に挑戦する意欲を見せたところに本作の価値があったと思われます。しかし失った流れは取り戻せるはずもなく、結局彼らは時代の役目を終えて解散することになってしまいます。
<Favorite Songs>
・「Heart from the start」
「Guilty」のような明るめの曲調に長閑さすら感じさせる彼らにとって珍しいタイプのポップソング。しかしシンセ&シーケンスの多用とサビの豪勢なオケヒットの導入など見せ場を用意したアレンジに新しい挑戦を感じさせます。
・「Forever and a day」
シングルカットされた彼らにとって王道のマイナーとメジャーを行き来する王道ソング。のちにThe Art Of Noiseのメンバーとして活躍するAnne Dudleyのストリングスアレンジがキャッチー過ぎる楽曲を荘厳に盛り上げていきます。スラップショット的なリズムもかっこいいです。
・「The Unloved」
サンプラーによるメタリックなリズムにサウンド面では新境地に挑むも、楽曲はいつものNouveaux節という楽曲。流れるようなリズムに任せた快活なナンバーですが、随所に導入されるリバースオケヒットがいい味を出しています。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラー導入による飛び道具を巧みに利用)
・メロディ ★★★ (当たり外れあるこのジャンルではメロディ力高し)
・リズム ★★★ (相変わらずベースとドラムの絡みには一目置ける)
・曲構成 ★★ (楽曲サウンド両面で緩急をつけるなど工夫するが)
・個性 ★★ (前2作と比較すると進歩しつつも雰囲気は不変)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「NACHTFLUG」 FALCO
「NACHTFLUG」(1992 EMI Electrola)
FALCO:vocals・rap

1.「TITANIC」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
2.「MONARCHY NOW」 Harald Kloser/FALCO
3.「DANCE MEPHISTO」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
4.「PSYCHOS」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
5.「S.C.A.N.D.A.L.」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
6.「PROPAGANDA」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
7.「YAH-VIBRATION」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
8.「TIME」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
9.「CADILLAC HOTEL」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
10.「NACHTFLUG」 Harald Kloser/FALCO
<support musician>
Bert Meulendijk:acoustic guitar・electric guitar
Ferdi Bolland:keyboards・synthesizers・samplers・bass・percussion・grand pianos・backing vocals
Rob Bolland:keyboards・synthesizers・samplers・bass・percussion・grand pianos・backing vocals
Hans "Woody" Weekhout:keyboards・samplers・computer programming
Jan Hollander:trumpet
produced by Rob Bolland・Ferdi Bolland
mixing engineered by Rob Bolland・Ferdi Bolland
recording engineered by Hans "Woody" Weekhout・John "Zobra" Kriek
● 一世を風靡した独英チャンポンRAPは健在!随所に佳曲を揃えアルバムとしては自身最高傑作の名盤
80'sの象徴ともいえる1985年の大ヒット曲「Rock Me Amadeus」で有名なオーストリア出身のポップシンガーFALCOはそのインパクトから一発屋と誤解されている節もありますが、それ以前にも81年の「Der Kommissar」でUKを除く欧州を中心に大ヒットを飛ばしており、それなりに欧州では名の知られたアーティストでした。それがRob&FerdiのBolland兄弟をサウンドプロデュースに迎え、時代を見据えたサウンドに乗った「Rock Me Amadeus」で欧米を席巻し、3rdアルバム「Falco3」から「Emotional」「Wiener Blut」とドイツ語圏を中心に一気にスターダムにのし上がります。しかし原点に帰るべく1stおよび2ndアルバムのプロデューサーRobert Pongerを迎えた6thアルバム「Data de Groove」は時代遅れな音もあってか完全にハズしてしまい、再びBolland兄弟のサポートを得て全盛期の夢を再び追った作品が7thアルバムである本作です。
ご存じの通り彼のアーティストとしての生命線となっているのは英語とドイツ語が入り混じった攻撃的なラップです。ヒップホップが主流となる以前から既に自身のラップスタイルを確立しており、わかりやすい英語とどこか尖った印象のあるドイツ語の特徴を生かしてキレの良い語感を生み出した独自のラップを生み出しています。これは後のあらゆるラップグループを凌駕するほどの完成された彼の十八番であり、もっと評価されて良い優れた技巧であると思います。また、本作で息を吹き返させたBolland兄弟の貢献度も見逃せません。既に92年となった当時において見事に全盛期のテイストを甦らせつつ、ギターサウンドの使用頻度を上げることによって年齢に応じた落ち着きを抑えてキレのあるラップを取り戻させたプロデュース能力はさすがと言えるでしょう。陥っていたマンネリ度も逆に大ヒット時代への原点に帰り、しかも執拗にオーケストラヒットを鳴らしまくった「DANCE MEPHISTO」のように開けっ広げな80'sリスペクト(するのが早いですがw)に、Bolland兄弟とFALCOの意地を見たような気がします。しかし本作の復活ヒットにより誇りを取り戻した彼は、6年後の98年アルバム「Out of the Dark (Into the Light)」をリリースした直後、不慮の事故で亡くなってしまいました。唯一無二の稀有なアーティストだっただけに残念です。
<Favorite Songs>
・「TITANIC」
荘厳なストリングスサンプルから始まる全盛期を彷佛とさせるドイツ語圏での大ヒット曲。ギターフレーズの効果的な導入によってさらにカッコよさを増したラップに、どこか哀愁すら漂わせるキャッチーなサビ、相変わらずのエレクトリックなフィルインのリズムトラック・・・彼の後期代表曲と言っても過言ではないでしょう。
・「DANCE MEPHISTO」
ベタベタなオーケストラヒットが目立ちまくるまさかのタンゴ&ラップ曲。しかしこのタンゴが彼のドイツ語ラップに見事にはまっており、本来のいかがわしさが増幅されて熱く盛り上がります。それにしてもオケヒットをここまであからさまに連発する楽曲も珍しいです。
・「S.C.A.N.D.A.L.」
ギターサウンドを前面に押し出したハードなロック(&ラップ)ナンバー。ギターソロを流しまくった硬派な曲調に硬派なラップが絡み、間奏ではオケヒットでフレーズを刻むなど躍動感が随所に感じられる熱い楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (音色1つ1つに90年代らしからぬ直球の姿勢を感じる)
・メロディ ★★ (ラップが目立つがサビのポップセンスが彼の真骨頂)
・リズム ★★★★ (少しハウスも導入しつつも不変のスタイルに安心感)
・曲構成 ★★★ (湿ったバラードも少なく攻めまくり若さを取り戻す)
・個性 ★★★ (全盛期を思わせるスタイルに力強さも加わり傑作に)
総合評点: 8点
FALCO:vocals・rap

1.「TITANIC」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
2.「MONARCHY NOW」 Harald Kloser/FALCO
3.「DANCE MEPHISTO」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
4.「PSYCHOS」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
5.「S.C.A.N.D.A.L.」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
6.「PROPAGANDA」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
7.「YAH-VIBRATION」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
8.「TIME」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
9.「CADILLAC HOTEL」 Rob Bolland/Ferdi Bolland/FALCO
10.「NACHTFLUG」 Harald Kloser/FALCO
<support musician>
Bert Meulendijk:acoustic guitar・electric guitar
Ferdi Bolland:keyboards・synthesizers・samplers・bass・percussion・grand pianos・backing vocals
Rob Bolland:keyboards・synthesizers・samplers・bass・percussion・grand pianos・backing vocals
Hans "Woody" Weekhout:keyboards・samplers・computer programming
Jan Hollander:trumpet
produced by Rob Bolland・Ferdi Bolland
mixing engineered by Rob Bolland・Ferdi Bolland
recording engineered by Hans "Woody" Weekhout・John "Zobra" Kriek
● 一世を風靡した独英チャンポンRAPは健在!随所に佳曲を揃えアルバムとしては自身最高傑作の名盤
80'sの象徴ともいえる1985年の大ヒット曲「Rock Me Amadeus」で有名なオーストリア出身のポップシンガーFALCOはそのインパクトから一発屋と誤解されている節もありますが、それ以前にも81年の「Der Kommissar」でUKを除く欧州を中心に大ヒットを飛ばしており、それなりに欧州では名の知られたアーティストでした。それがRob&FerdiのBolland兄弟をサウンドプロデュースに迎え、時代を見据えたサウンドに乗った「Rock Me Amadeus」で欧米を席巻し、3rdアルバム「Falco3」から「Emotional」「Wiener Blut」とドイツ語圏を中心に一気にスターダムにのし上がります。しかし原点に帰るべく1stおよび2ndアルバムのプロデューサーRobert Pongerを迎えた6thアルバム「Data de Groove」は時代遅れな音もあってか完全にハズしてしまい、再びBolland兄弟のサポートを得て全盛期の夢を再び追った作品が7thアルバムである本作です。
ご存じの通り彼のアーティストとしての生命線となっているのは英語とドイツ語が入り混じった攻撃的なラップです。ヒップホップが主流となる以前から既に自身のラップスタイルを確立しており、わかりやすい英語とどこか尖った印象のあるドイツ語の特徴を生かしてキレの良い語感を生み出した独自のラップを生み出しています。これは後のあらゆるラップグループを凌駕するほどの完成された彼の十八番であり、もっと評価されて良い優れた技巧であると思います。また、本作で息を吹き返させたBolland兄弟の貢献度も見逃せません。既に92年となった当時において見事に全盛期のテイストを甦らせつつ、ギターサウンドの使用頻度を上げることによって年齢に応じた落ち着きを抑えてキレのあるラップを取り戻させたプロデュース能力はさすがと言えるでしょう。陥っていたマンネリ度も逆に大ヒット時代への原点に帰り、しかも執拗にオーケストラヒットを鳴らしまくった「DANCE MEPHISTO」のように開けっ広げな80'sリスペクト(するのが早いですがw)に、Bolland兄弟とFALCOの意地を見たような気がします。しかし本作の復活ヒットにより誇りを取り戻した彼は、6年後の98年アルバム「Out of the Dark (Into the Light)」をリリースした直後、不慮の事故で亡くなってしまいました。唯一無二の稀有なアーティストだっただけに残念です。
<Favorite Songs>
・「TITANIC」
荘厳なストリングスサンプルから始まる全盛期を彷佛とさせるドイツ語圏での大ヒット曲。ギターフレーズの効果的な導入によってさらにカッコよさを増したラップに、どこか哀愁すら漂わせるキャッチーなサビ、相変わらずのエレクトリックなフィルインのリズムトラック・・・彼の後期代表曲と言っても過言ではないでしょう。
・「DANCE MEPHISTO」
ベタベタなオーケストラヒットが目立ちまくるまさかのタンゴ&ラップ曲。しかしこのタンゴが彼のドイツ語ラップに見事にはまっており、本来のいかがわしさが増幅されて熱く盛り上がります。それにしてもオケヒットをここまであからさまに連発する楽曲も珍しいです。
・「S.C.A.N.D.A.L.」
ギターサウンドを前面に押し出したハードなロック(&ラップ)ナンバー。ギターソロを流しまくった硬派な曲調に硬派なラップが絡み、間奏ではオケヒットでフレーズを刻むなど躍動感が随所に感じられる熱い楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (音色1つ1つに90年代らしからぬ直球の姿勢を感じる)
・メロディ ★★ (ラップが目立つがサビのポップセンスが彼の真骨頂)
・リズム ★★★★ (少しハウスも導入しつつも不変のスタイルに安心感)
・曲構成 ★★★ (湿ったバラードも少なく攻めまくり若さを取り戻す)
・個性 ★★★ (全盛期を思わせるスタイルに力強さも加わり傑作に)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「FRIDAY,I’M IN LOVE」 ROUND TABLE
「FRIDAY,I’M IN LOVE」(2009 ハピネス)
ROUND TABLE

<members>
北川勝利:vocal・guitar・tambourine・triangle・tree chimes・chorus
伊藤利恵子:vocal・piano・electric piano・organ・chorus
1.「Try A Little Happiness」 詞・曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
2.「My Girl」 詞:伊藤利恵子・北川勝利 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
3.「Under The Moonlight」
詞:伊藤利恵子・北川勝利 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE・長谷泰宏
4.「遠い街角」 詞・曲:伊藤利恵子 編:ROUND TABLE
5.「Faraway」 詞・曲:伊藤利恵子 編:ROUND TABLE・長谷泰宏
6.「Friday Night」 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
7.「Summer Days」 詞:伊藤利恵子・北川勝利 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
8.「鳴り響く鐘」 詞・曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
9.「愛の行方」 詞・曲:伊藤利恵子 編:ROUND TABLE
10.「Dancin’ All Night」 詞:伊藤利恵子 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
11.「Let’s Stay Together」 詞・曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
12.「Dance With Me」 詞・曲:Johanna Hall・John Hall 編:桜井康史・ROUND TABLE
<support musician>
山之内俊夫:guitar
小山晃一:bass
千ヶ崎学:bass
宮田繁男:drums
末永華子:piano・electric piano・chorus
長谷泰宏:piano・glocken・strings arrangement
山口敬文:Hammond organ
平野栄二:percussion
福和誠司:percussion
渡辺雅美:vibraphone
島裕介:trumpet
村田陽一:trombone・trombone recorded
ヤマカミヒトミ:sax・flute
Nick Green:chorus
Nino:chorus
Tommy:chorus
新居学:chorus
高山奈帆子:chorus
渡辺俊二:chorus
桜井康史:computer programming
produced by ROUND TABLE
engineered by 荒井哲・平野栄二・桜井康史
● feat. Ninoで培った極上のポップセンスを還元!帰って来たポスト渋谷系のためのPOPSセレクション
1997年遅れてきた渋谷系グループとしてミニアルバム「WORLD'S END」でデビューしたROUND TABLEは、北川勝利と伊藤利恵子の男女ユニットとして活発に活動していた約6年間でフルアルバムを4枚、ミニアルバムを実に7枚という多作ぶりを見せつけ、その楽曲生産能力としての力量を存分に披露していましたが、2002年からは女性ヴォーカリストNinoを迎え、ROUND TABLE featuring Ninoとして3人組となり、アニメソングを中心としてさらにPOPSとしてのグレードアップを目指し次々と名曲を生み出していきました。この活動は彼らにとって音楽性の幅とさまざまな場面や状況の中で最適な楽曲を生み出す経験を培う上で非常に大きな役割を果たし、数々のシングル曲のほか3枚ものアルバムをリリース、そのポップセンスは高い評価を受けています。そして久方振りにリリースされたROUND TABLEとしての本作では、feat.Nino時代に鍛え上げられた極上のメロディ構築力を還元して、ソウルフルなサウンドに生かし、安定感のある好作品に仕上げています。
さて肝心のサウンドですが、これが至って直球の熟練した生演奏で、美しいメロディをふんだんに使ったソウルフルなポップミュージックで、テクノ的な要素はほとんど感じさせません。若干打ち込み要素を隠そうとしなかったfeat.Ninoとは異なり、そのあたりは非常に徹底した姿勢を見せています。この手のサウンドで思い出させるのがPizzicato Five「Bellissima!」や初期Original Loveといった田島貴男の90年代初頭作品ですが、それらの作品も田島の類稀なメロディセンスの賜物であったわけですから、北川と伊藤という強力なメロディメイカーに成長した2人であるROUND TABLEが、その空気感を演出していることは全く不思議ではありません。特にアニメソングや他人への提供曲で辣腕を振るった北川勝利のメロディセンスの成長は著しく、その安定感たるや既に00年代POP界を代表する作曲家と言ってもよいクオリティを誇っています(もちろん作品中必ず1曲はキラーソングを持ってくる伊藤利恵子のセンスもただものではないのですが)。そのメロディの質ゆえにサウンドにコクがあり過ぎるという難点もありますが、それを言っては贅沢と言えるでしょう。メロディの素晴らしさがその他の要素をねじ伏せる力を持つ作品にはそうは出会えませんし、このアルバムにはそういった力が備わっていると思われるのです。
<Favorite Songs>
・「Under The Moonlight」
ストリングスの流れるようなフレーズが爽やかな涼しげPOPS。落ち着きのあるギターサウンドもテンポの良いリズムも何もかも爽やか。そしてストリングスに溶け込むようなギターソロに熟練の技を感じます。
・「Faraway」
60年代の香り豊かなソフトロック仕様の珠玉の美メロPOPS。ビブラフォンやフルートなどPOPSとしての贅を尽くしたサウンド構成に、トランペットやストリングスなど交えてこの楽曲も爽やか度は青天井です。
・「愛の行方」
エレピとスラップベースを下敷きに落ち着きのある曲調が心に染みる優しきポップソング。演奏陣の確かな技術、特にこの楽曲に限ってはドラムの存在感がスゴい。
<評点>
・サウンド ★★ (良くも悪くも冒険はないものの良質な仕事ぶり)
・メロディ ★★★★ (2人ともメロディに厚みが感じられ成長著しい)
・リズム ★★ (安定感抜群の円熟味溢れる演奏力と含蓄ある音色)
・曲構成 ★★ (長めの楽曲を多数収録し全体的に濃い味の作品)
・個性 ★★ (カラフルというまではいかないが熟練した傑作)
総合評点: 7点
ROUND TABLE

<members>
北川勝利:vocal・guitar・tambourine・triangle・tree chimes・chorus
伊藤利恵子:vocal・piano・electric piano・organ・chorus
1.「Try A Little Happiness」 詞・曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
2.「My Girl」 詞:伊藤利恵子・北川勝利 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
3.「Under The Moonlight」
詞:伊藤利恵子・北川勝利 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE・長谷泰宏
4.「遠い街角」 詞・曲:伊藤利恵子 編:ROUND TABLE
5.「Faraway」 詞・曲:伊藤利恵子 編:ROUND TABLE・長谷泰宏
6.「Friday Night」 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
7.「Summer Days」 詞:伊藤利恵子・北川勝利 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
8.「鳴り響く鐘」 詞・曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
9.「愛の行方」 詞・曲:伊藤利恵子 編:ROUND TABLE
10.「Dancin’ All Night」 詞:伊藤利恵子 曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
11.「Let’s Stay Together」 詞・曲:北川勝利 編:ROUND TABLE
12.「Dance With Me」 詞・曲:Johanna Hall・John Hall 編:桜井康史・ROUND TABLE
<support musician>
山之内俊夫:guitar
小山晃一:bass
千ヶ崎学:bass
宮田繁男:drums
末永華子:piano・electric piano・chorus
長谷泰宏:piano・glocken・strings arrangement
山口敬文:Hammond organ
平野栄二:percussion
福和誠司:percussion
渡辺雅美:vibraphone
島裕介:trumpet
村田陽一:trombone・trombone recorded
ヤマカミヒトミ:sax・flute
Nick Green:chorus
Nino:chorus
Tommy:chorus
新居学:chorus
高山奈帆子:chorus
渡辺俊二:chorus
桜井康史:computer programming
produced by ROUND TABLE
engineered by 荒井哲・平野栄二・桜井康史
● feat. Ninoで培った極上のポップセンスを還元!帰って来たポスト渋谷系のためのPOPSセレクション
1997年遅れてきた渋谷系グループとしてミニアルバム「WORLD'S END」でデビューしたROUND TABLEは、北川勝利と伊藤利恵子の男女ユニットとして活発に活動していた約6年間でフルアルバムを4枚、ミニアルバムを実に7枚という多作ぶりを見せつけ、その楽曲生産能力としての力量を存分に披露していましたが、2002年からは女性ヴォーカリストNinoを迎え、ROUND TABLE featuring Ninoとして3人組となり、アニメソングを中心としてさらにPOPSとしてのグレードアップを目指し次々と名曲を生み出していきました。この活動は彼らにとって音楽性の幅とさまざまな場面や状況の中で最適な楽曲を生み出す経験を培う上で非常に大きな役割を果たし、数々のシングル曲のほか3枚ものアルバムをリリース、そのポップセンスは高い評価を受けています。そして久方振りにリリースされたROUND TABLEとしての本作では、feat.Nino時代に鍛え上げられた極上のメロディ構築力を還元して、ソウルフルなサウンドに生かし、安定感のある好作品に仕上げています。
さて肝心のサウンドですが、これが至って直球の熟練した生演奏で、美しいメロディをふんだんに使ったソウルフルなポップミュージックで、テクノ的な要素はほとんど感じさせません。若干打ち込み要素を隠そうとしなかったfeat.Ninoとは異なり、そのあたりは非常に徹底した姿勢を見せています。この手のサウンドで思い出させるのがPizzicato Five「Bellissima!」や初期Original Loveといった田島貴男の90年代初頭作品ですが、それらの作品も田島の類稀なメロディセンスの賜物であったわけですから、北川と伊藤という強力なメロディメイカーに成長した2人であるROUND TABLEが、その空気感を演出していることは全く不思議ではありません。特にアニメソングや他人への提供曲で辣腕を振るった北川勝利のメロディセンスの成長は著しく、その安定感たるや既に00年代POP界を代表する作曲家と言ってもよいクオリティを誇っています(もちろん作品中必ず1曲はキラーソングを持ってくる伊藤利恵子のセンスもただものではないのですが)。そのメロディの質ゆえにサウンドにコクがあり過ぎるという難点もありますが、それを言っては贅沢と言えるでしょう。メロディの素晴らしさがその他の要素をねじ伏せる力を持つ作品にはそうは出会えませんし、このアルバムにはそういった力が備わっていると思われるのです。
<Favorite Songs>
・「Under The Moonlight」
ストリングスの流れるようなフレーズが爽やかな涼しげPOPS。落ち着きのあるギターサウンドもテンポの良いリズムも何もかも爽やか。そしてストリングスに溶け込むようなギターソロに熟練の技を感じます。
・「Faraway」
60年代の香り豊かなソフトロック仕様の珠玉の美メロPOPS。ビブラフォンやフルートなどPOPSとしての贅を尽くしたサウンド構成に、トランペットやストリングスなど交えてこの楽曲も爽やか度は青天井です。
・「愛の行方」
エレピとスラップベースを下敷きに落ち着きのある曲調が心に染みる優しきポップソング。演奏陣の確かな技術、特にこの楽曲に限ってはドラムの存在感がスゴい。
<評点>
・サウンド ★★ (良くも悪くも冒険はないものの良質な仕事ぶり)
・メロディ ★★★★ (2人ともメロディに厚みが感じられ成長著しい)
・リズム ★★ (安定感抜群の円熟味溢れる演奏力と含蓄ある音色)
・曲構成 ★★ (長めの楽曲を多数収録し全体的に濃い味の作品)
・個性 ★★ (カラフルというまではいかないが熟練した傑作)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Adventures In Modern Recording」 THE BUGGLES
「Adventures In Modern Recording」(1981 Island)
THE BUGGLES

<members>
Trevor Horn:vocals・bass・guitar・electronic drum machine
Geoffrey Downes:Fairlight・keyboards・electronic drum machine
1.「Adventures In Modern Recording」 Trevor Horn/Bruce Woolley/Simon Darlow
2.「Beatnik」 Trevor Horn
3.「Vermillion Sands」 Trevor Horn/Geoffrey Downes
4.「I Am A Camera」 Trevor Horn/Geoffrey Downes
5.「On TV」 Trevor Horn /Bruce Woolley/Rod Thompson
6.「Inner City」 Trevor Horn /Simon Darlow
7.「Lenny」 Trevor Horn/Geoffrey Downes
8.「Rainbow Warrior」 Trevor Horn /Simon Darlow/John Sinclair
9.「Adventures In Modern Recording [Reprise]」
Trevor Horn /Bruce Woolley/Simon Darlow
<support musician>
Simon Darlow:guitars・keyboards
John Sinclair:electronic drum machine・cymbals・additional guitar・additional vocals
Bruce Woolley:additional vocals
Anne Dudlley:additional keyboards
Danny Schogger:additional keyboards
Rod Thompson:additional keyboards
Louis Jardim:additional percussion
Chris Squire:sound effects
produced by Trevor Horn・John Sinclair・Geoffrey Downes
engineered by Gary Langan・Julian Mendelsohn
● いち早くFairlightを取り入れ未来型レコーディングの礎を築いた短命シンセポップユニットのラスト作
シングル「Video Killed The Radio Star」の大ヒット、アルバム「The Age of Plastic」のリリースと、ニューウェーブが急速に広がり始めた音楽シーンの中で重要な地位を占めていたTHE BUGGLESの2人は、その実績を引っさげる形で大物プログレバンドYESに加入します。同じ事務所という縁からの加入でしたが、結局このプロジェクトは不調に終わり、フロントマンに迎えられたTrevor Hornは脱退となりますが、これがTHE BUGGLESの運命をも変えてしまいます。2人はTHE BUGGLESとして2ndアルバムの制作にとりかかりますが、制作途中でDownesはASIA結成のため脱退、後半はHornのソロユニットとなり、半ば空中分解の形で本作がリリースされることになります。しかしこのアルバムは常に先進的なサウンドを探求し続けるHornのプロデュース能力が遺憾なく発揮された作品であり、サンプラー1号機Fairlightを使用した斬新なサウンドで先見性を見せつけた作品でもあります。
前作の突き抜けたポップセンスが出色なだけに本作はやはりマイナーなイメージを持たれがちですが、前作より1年しか経っていないにもかかわらず音像面では格段な進歩を遂げています。まずなんといってもFairlightによるサンプリング音が効果的で、特に「Vermillion Sands」のシンセブラスのキレは特筆モノです。また、前作と全く異なるのはエレドラを多用したリズムトラックの充実ぶりです。実はFairlightの導入よりも重要であるエレクトリックドラムの音色は本作におけるサウンドの方向性を決定づけるほどの強烈な音の質を聴かせてくれます。このリズム音へのこだわりは、後にThe Art Of Noiseで革新的なドラムを披露するTrevor Hornであれば驚くことでもありませんし、既に彼らしさが本作で表れていると言って良いでしょう。また、いわゆるメロディアスな曲調である「I Am A Camera」「Lenny」といった楽曲にGeoffrey Downesがかかわっていることから、彼らのポップセンスはDownesが担っていたと解釈することもでき、だからこそTrevor Hornのサウンドクリエイトぶりが対照的に浮かび上がってくる興味深い作品でもあるわけです。
<Favorite Songs>
・「Adventures In Modern Recording」
エレクトリックドラムの響きも嬉しいタイトルナンバー。YESのChris Squireがsound effectsが参加しているところは皮肉めいたものを感じますが、曲調はアメリカンな明るさをイメージさせるものでここぞという場面で使用されるハンドクラップのインパクトも抜群です。
・「I Am A Camera」
YESのアルバム「Drama」に収録された「Into the Lens」のリメイク。本作中最もメロディアス&ロマンティックな曲調で、そのフレーズはさながらTony Mansfieldのようです。ボコーダーコーラスやリズムボックスの淡々としたトラック、そして叙情的なピアノが絡み合う見事なTHE BUGGLES最高傑作です。
・「On TV」
まるで3年先をいくかのようなキレの良いシーケンス&リズムトラックを聴かせてくれるテクノポップチューン。機械による跳ねるリズムがデジタルファンクの隆盛をも予見させてくれます。シンセベースとスネアの音色だけでも聴いていられる楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (Fairlightを中心に音にもコクとキレを感じさせる)
・メロディ ★★ (Downes参加曲で1stの残り香を見せるがサウンド志向)
・リズム ★★★★ (80年代初期にしては革新的なリズム音のキレが眩しい)
・曲構成 ★ (やはり最後までDownesには参加してほしかった)
・個性 ★★ (1stとは格段に音が違い録音技術の日進月歩が伺える)
総合評点: 7点
THE BUGGLES

<members>
Trevor Horn:vocals・bass・guitar・electronic drum machine
Geoffrey Downes:Fairlight・keyboards・electronic drum machine
1.「Adventures In Modern Recording」 Trevor Horn/Bruce Woolley/Simon Darlow
2.「Beatnik」 Trevor Horn
3.「Vermillion Sands」 Trevor Horn/Geoffrey Downes
4.「I Am A Camera」 Trevor Horn/Geoffrey Downes
5.「On TV」 Trevor Horn /Bruce Woolley/Rod Thompson
6.「Inner City」 Trevor Horn /Simon Darlow
7.「Lenny」 Trevor Horn/Geoffrey Downes
8.「Rainbow Warrior」 Trevor Horn /Simon Darlow/John Sinclair
9.「Adventures In Modern Recording [Reprise]」
Trevor Horn /Bruce Woolley/Simon Darlow
<support musician>
Simon Darlow:guitars・keyboards
John Sinclair:electronic drum machine・cymbals・additional guitar・additional vocals
Bruce Woolley:additional vocals
Anne Dudlley:additional keyboards
Danny Schogger:additional keyboards
Rod Thompson:additional keyboards
Louis Jardim:additional percussion
Chris Squire:sound effects
produced by Trevor Horn・John Sinclair・Geoffrey Downes
engineered by Gary Langan・Julian Mendelsohn
● いち早くFairlightを取り入れ未来型レコーディングの礎を築いた短命シンセポップユニットのラスト作
シングル「Video Killed The Radio Star」の大ヒット、アルバム「The Age of Plastic」のリリースと、ニューウェーブが急速に広がり始めた音楽シーンの中で重要な地位を占めていたTHE BUGGLESの2人は、その実績を引っさげる形で大物プログレバンドYESに加入します。同じ事務所という縁からの加入でしたが、結局このプロジェクトは不調に終わり、フロントマンに迎えられたTrevor Hornは脱退となりますが、これがTHE BUGGLESの運命をも変えてしまいます。2人はTHE BUGGLESとして2ndアルバムの制作にとりかかりますが、制作途中でDownesはASIA結成のため脱退、後半はHornのソロユニットとなり、半ば空中分解の形で本作がリリースされることになります。しかしこのアルバムは常に先進的なサウンドを探求し続けるHornのプロデュース能力が遺憾なく発揮された作品であり、サンプラー1号機Fairlightを使用した斬新なサウンドで先見性を見せつけた作品でもあります。
前作の突き抜けたポップセンスが出色なだけに本作はやはりマイナーなイメージを持たれがちですが、前作より1年しか経っていないにもかかわらず音像面では格段な進歩を遂げています。まずなんといってもFairlightによるサンプリング音が効果的で、特に「Vermillion Sands」のシンセブラスのキレは特筆モノです。また、前作と全く異なるのはエレドラを多用したリズムトラックの充実ぶりです。実はFairlightの導入よりも重要であるエレクトリックドラムの音色は本作におけるサウンドの方向性を決定づけるほどの強烈な音の質を聴かせてくれます。このリズム音へのこだわりは、後にThe Art Of Noiseで革新的なドラムを披露するTrevor Hornであれば驚くことでもありませんし、既に彼らしさが本作で表れていると言って良いでしょう。また、いわゆるメロディアスな曲調である「I Am A Camera」「Lenny」といった楽曲にGeoffrey Downesがかかわっていることから、彼らのポップセンスはDownesが担っていたと解釈することもでき、だからこそTrevor Hornのサウンドクリエイトぶりが対照的に浮かび上がってくる興味深い作品でもあるわけです。
<Favorite Songs>
・「Adventures In Modern Recording」
エレクトリックドラムの響きも嬉しいタイトルナンバー。YESのChris Squireがsound effectsが参加しているところは皮肉めいたものを感じますが、曲調はアメリカンな明るさをイメージさせるものでここぞという場面で使用されるハンドクラップのインパクトも抜群です。
・「I Am A Camera」
YESのアルバム「Drama」に収録された「Into the Lens」のリメイク。本作中最もメロディアス&ロマンティックな曲調で、そのフレーズはさながらTony Mansfieldのようです。ボコーダーコーラスやリズムボックスの淡々としたトラック、そして叙情的なピアノが絡み合う見事なTHE BUGGLES最高傑作です。
・「On TV」
まるで3年先をいくかのようなキレの良いシーケンス&リズムトラックを聴かせてくれるテクノポップチューン。機械による跳ねるリズムがデジタルファンクの隆盛をも予見させてくれます。シンセベースとスネアの音色だけでも聴いていられる楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (Fairlightを中心に音にもコクとキレを感じさせる)
・メロディ ★★ (Downes参加曲で1stの残り香を見せるがサウンド志向)
・リズム ★★★★ (80年代初期にしては革新的なリズム音のキレが眩しい)
・曲構成 ★ (やはり最後までDownesには参加してほしかった)
・個性 ★★ (1stとは格段に音が違い録音技術の日進月歩が伺える)
総合評点: 7点
「旋律のフレア」 CooRie
「旋律のフレア」(2008 ランティス)
CooRie

<members>
rino:vocal
1.「旋律のフレア」 詞・曲:rino 編:中西亮輔
2.「クロス*ハート」 詞・曲:rino 編:海星響
3.「Spring has come」 詞・曲:rino 編:大久保薫
4.「ウソツキ」 詞・曲:rino 編:大久保薫
5.「Sweetest」 詞・曲:rino 編:宅見将典
6.「君DK」 詞・曲:rino 編:佐藤Fisher五魚
7.「探し物」 詞・曲:rino 編:佐藤Fisher五魚
8.「桜の羽根~Endless memory~」 詞・曲:rino 編:大久保薫
9.「水玉」 詞・曲:rino 編:大久保薫
10.「リトル・モア」 詞・曲:rino 編:chokix
11.「優しさは雨のように」 詞・曲:rino 編:大久保薫
12.「想い」 詞・曲:rino 編:今泉洋
<support musician>
飯室博:guitar
今泉洋:guitar
菊谷知樹:guitar
高山一也:guitar
宅見将典:guitar
古川昌義:guitar
入江太郎:bass
宮田繁男:drums
柴田俊文:piano
須藤賢一:piano
永田エルトン一郎:piano
泰輝:piano
三沢またろう:percussion
CHIKA:violin
小池弘之:violin
大先生室屋:violin
CHIKAストリングス:strings
金原ストリングス:strings
弦一徹ストリングス:strings
小池ストリングス:strings
大先生室屋ストリングス:strings
produced by 伊藤善之
mixing engineered by 小林敦・浅野浩伸
recording engineered by 小林敦・白井康裕・関朋充・森田信之
● アニメソングでソングライティング能力を鍛えられた感動系ポップシンガーの3rdアルバム
80年代のアイドルソングがサウンドクリエイターたちの実験場であったのと同じように、現在はその役割をアニメーションやゲーム音楽に使用される楽曲が担っていると言っても過言ではなく、このCooRieも純度の高いシンガーソングライターとしての力量をアニメ&ゲーム音楽のフィールドで様々なシチューエーションによる作品に関わる楽曲を手掛けることで、着実に蓄積しその才能を開花させたアーティストです。長田直之との2人組ユニットとしてデビューしたため、よくある女性シンガー・男性クリエイタータイプのグループと思われがちですが、実は後に長田の脱退によりソロユニットとなってからがrinoの才能が本格化し、「センチメンタル」(アニメ「美鳥の日々」主題歌)や「いろは」(アニメ「びんちょうタン」主題歌)といった名曲を生み出すなど、その成長には著しいものがありました。そして2008年リリースされた本作は、前年リリースされた充実のシングル群をはじめとした既発表曲とそれに劣らないクオリティを誇るオリジナル楽曲が収録された3rdアルバムとして、2nd「トレモロ」よりも一段上のレベルに達した貫禄すら感じさせる優れたPOPS作品に仕上がっています。
彼女の楽曲の魅力といえばキャッチーで覚えやすいメロディとそれを盛り上げる流麗なストリングス、そして随所で隠し味的役割を果たす電子音です。この訴求力の高いメロディセンスであればシンプルなアレンジでも十分映えると思われるのですが、ゴージャスにストリングスで着飾りつつ躊躇なくデジタルサウンドも取り入れる柔軟性で見事に楽曲に「色」を加えています。既存楽曲を集めているため、参加ミュージシャンも多彩で演奏面でも全く問題がなくある意味贅沢とも言えるラインナップですが、それもrinoの作り出す瑞々しいポップセンスと00年代POPS界の重要クリエイターとも言える大久保薫をはじめとしたアレンジャー陣(特に海星響には驚かされました)の力量の賜物であり、本作はベスト盤的要素もありながらアルバムとしての統一感も感じられます。アニメやゲーム界隈で楽しむだけではもったいない純粋なPOPS名盤として語られるべき作品であると思います。
<Favorite Songs>
・「クロス*ハート」
アニメ「京四郎と永遠の空」主題歌としてシングルカットされたアップテンポなストリングスPOPS。うっすら電子シーケンスに乗るピチカートの多用など派手過ぎるほどのストリングスアレンジが眩し過ぎます。アレンジャーの海星響は謎が多い編曲家ですが(著名クリエイターのペンネーム?)、凄まじいセンスです。2周目のAメロ終わりのシンドラのフィルインが素晴らしい。
・「水玉」
午後の昼下がりがよく似合う流麗なストリングスが特徴のミディアムバラード。癒し系なメロディにグルーヴ感たっぷりなリズム隊の演奏も楽しめます。少し泣きの入った高音フレーズはCooRieの得意とするところでしょう。
・「優しさは雨のように」
アニメ「D.C.II」エンディング主題歌となったストリングスPOPS魔人大久保薫渾身アレンジの名曲バラード。Aメロのうっすら電子音とイントロのTony Mansfieldばりの「コーンッ」というソナー音が地味に嬉しいところです。また感動的なサビのキラーフレーズはrino本人のセンスと力量をそのまま物語っています。
<評点>
・サウンド ★★★ (ストリングスと電子音の相性は抜群だが大げさ過ぎか)
・メロディ ★★★★ (多様な作品を手掛け鍛えられた美しいメロディの貫禄)
・リズム ★★ (リズムトラックというより音符のタイミングが秀逸)
・曲構成 ★★ (寄せ集めともいえるのにCooRie色が確立されている)
・個性 ★★ (本作から徐々にアーティストとしての自我が芽生える)
総合評点: 7点
CooRie

<members>
rino:vocal
1.「旋律のフレア」 詞・曲:rino 編:中西亮輔
2.「クロス*ハート」 詞・曲:rino 編:海星響
3.「Spring has come」 詞・曲:rino 編:大久保薫
4.「ウソツキ」 詞・曲:rino 編:大久保薫
5.「Sweetest」 詞・曲:rino 編:宅見将典
6.「君DK」 詞・曲:rino 編:佐藤Fisher五魚
7.「探し物」 詞・曲:rino 編:佐藤Fisher五魚
8.「桜の羽根~Endless memory~」 詞・曲:rino 編:大久保薫
9.「水玉」 詞・曲:rino 編:大久保薫
10.「リトル・モア」 詞・曲:rino 編:chokix
11.「優しさは雨のように」 詞・曲:rino 編:大久保薫
12.「想い」 詞・曲:rino 編:今泉洋
<support musician>
飯室博:guitar
今泉洋:guitar
菊谷知樹:guitar
高山一也:guitar
宅見将典:guitar
古川昌義:guitar
入江太郎:bass
宮田繁男:drums
柴田俊文:piano
須藤賢一:piano
永田エルトン一郎:piano
泰輝:piano
三沢またろう:percussion
CHIKA:violin
小池弘之:violin
大先生室屋:violin
CHIKAストリングス:strings
金原ストリングス:strings
弦一徹ストリングス:strings
小池ストリングス:strings
大先生室屋ストリングス:strings
produced by 伊藤善之
mixing engineered by 小林敦・浅野浩伸
recording engineered by 小林敦・白井康裕・関朋充・森田信之
● アニメソングでソングライティング能力を鍛えられた感動系ポップシンガーの3rdアルバム
80年代のアイドルソングがサウンドクリエイターたちの実験場であったのと同じように、現在はその役割をアニメーションやゲーム音楽に使用される楽曲が担っていると言っても過言ではなく、このCooRieも純度の高いシンガーソングライターとしての力量をアニメ&ゲーム音楽のフィールドで様々なシチューエーションによる作品に関わる楽曲を手掛けることで、着実に蓄積しその才能を開花させたアーティストです。長田直之との2人組ユニットとしてデビューしたため、よくある女性シンガー・男性クリエイタータイプのグループと思われがちですが、実は後に長田の脱退によりソロユニットとなってからがrinoの才能が本格化し、「センチメンタル」(アニメ「美鳥の日々」主題歌)や「いろは」(アニメ「びんちょうタン」主題歌)といった名曲を生み出すなど、その成長には著しいものがありました。そして2008年リリースされた本作は、前年リリースされた充実のシングル群をはじめとした既発表曲とそれに劣らないクオリティを誇るオリジナル楽曲が収録された3rdアルバムとして、2nd「トレモロ」よりも一段上のレベルに達した貫禄すら感じさせる優れたPOPS作品に仕上がっています。
彼女の楽曲の魅力といえばキャッチーで覚えやすいメロディとそれを盛り上げる流麗なストリングス、そして随所で隠し味的役割を果たす電子音です。この訴求力の高いメロディセンスであればシンプルなアレンジでも十分映えると思われるのですが、ゴージャスにストリングスで着飾りつつ躊躇なくデジタルサウンドも取り入れる柔軟性で見事に楽曲に「色」を加えています。既存楽曲を集めているため、参加ミュージシャンも多彩で演奏面でも全く問題がなくある意味贅沢とも言えるラインナップですが、それもrinoの作り出す瑞々しいポップセンスと00年代POPS界の重要クリエイターとも言える大久保薫をはじめとしたアレンジャー陣(特に海星響には驚かされました)の力量の賜物であり、本作はベスト盤的要素もありながらアルバムとしての統一感も感じられます。アニメやゲーム界隈で楽しむだけではもったいない純粋なPOPS名盤として語られるべき作品であると思います。
<Favorite Songs>
・「クロス*ハート」
アニメ「京四郎と永遠の空」主題歌としてシングルカットされたアップテンポなストリングスPOPS。うっすら電子シーケンスに乗るピチカートの多用など派手過ぎるほどのストリングスアレンジが眩し過ぎます。アレンジャーの海星響は謎が多い編曲家ですが(著名クリエイターのペンネーム?)、凄まじいセンスです。2周目のAメロ終わりのシンドラのフィルインが素晴らしい。
・「水玉」
午後の昼下がりがよく似合う流麗なストリングスが特徴のミディアムバラード。癒し系なメロディにグルーヴ感たっぷりなリズム隊の演奏も楽しめます。少し泣きの入った高音フレーズはCooRieの得意とするところでしょう。
・「優しさは雨のように」
アニメ「D.C.II」エンディング主題歌となったストリングスPOPS魔人大久保薫渾身アレンジの名曲バラード。Aメロのうっすら電子音とイントロのTony Mansfieldばりの「コーンッ」というソナー音が地味に嬉しいところです。また感動的なサビのキラーフレーズはrino本人のセンスと力量をそのまま物語っています。
<評点>
・サウンド ★★★ (ストリングスと電子音の相性は抜群だが大げさ過ぎか)
・メロディ ★★★★ (多様な作品を手掛け鍛えられた美しいメロディの貫禄)
・リズム ★★ (リズムトラックというより音符のタイミングが秀逸)
・曲構成 ★★ (寄せ集めともいえるのにCooRie色が確立されている)
・個性 ★★ (本作から徐々にアーティストとしての自我が芽生える)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Dimanche」 dimanche
「Dimanche」 (1991 WEA)
dimanche

<members>
柴田真里:keyboards
東美江:vocals
1.「哀しいオール」 詞:石川あゆ子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
2.「Winter Roses」 詞:及川眠子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
3.「Touch My Soul」 詞:及川眠子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
4.「Feel My Eyes」 詞:石川あゆ子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
5.「Chinese Boy」 詞:東美江 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
6.「夏の永遠~Somewhere in My Heart~」
詞:及川眠子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
7.「Mother」 詞・曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
8.「青春の光と影(Both Sides Now)」
詞・曲:Joni Mitchel 編:松武秀樹・柿崎譲二・dimanche
9.「The Garden」 詞・曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
10.「River」 詞・曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
<support musician>
樋口シュウイチ:guitars・voices
笛吹利明:acoustic guitar
柿崎譲二:synthesizer’s bass
produced by 松武秀樹・柿崎譲二・dimanche
mixing engineered by 森本信
recording engineered by 松田龍太
● 松武秀樹プロデュースによる欧州感覚あふれる打ち込みエレポップを得意とした女性2人組のデビュー作
学生時代に日の丸ファクトリー名義でゲームソフトの音楽を手掛けていた柴田真里と東美江の2人組は、その後ユニット名をdimancheと改称し、1991年シングル「Feel My Eys」でデビュー、c/wがJoni Mitchelの「青春の光と影(Both Sides Now)」のリメイクということでも一部で話題となりましたが、1ヶ月後にはユニット名をタイトルに冠したデビューアルバムをリリースします。シンセサイザープログラマーとしては第1人者である松武秀樹が珍しくサウンドプロデュースを手掛けた本作は、そのアンニュイなユニット名、女性デュオという艶かしさを表現したヨーロピアン風味の楽曲を松武お得意のテクノサウンドで料理した、どこかアンバランスな印象がクセとなる、ある意味個性的な作品でしたが、彼女達が持つ控えめで穏やかな雰囲気が柔らかな影に潜む過激な音楽性を隠れ蓑にしているといった印象は否めません。
そんな彼女達の特徴の1つが余計な不純物を取り除いたかのようなストレートな美声ヴォーカル&コーラスワークです。この朴訥なヴォーカルを生かすために意識的に高音フレーズをメロディの中に織り込む部分に彼女達のセンスの一端が垣間見えます。このような欧州の牧歌POPSともいうべき音楽性と呼ぶこともできる楽曲が並ぶ中、アクセントとなっているのが当然のことながら松武秀樹のテクノ直系のサウンドメイキングで、この手の楽曲には一見不釣り合いのように思える攻撃的なリズムトラックを随所に配置し(特に「The Garden」のマシナリーサウンドは圧巻)、さらにストリングスも生っぽさは排除して、いかにもシンセ&サンプラー音色の1つとして扱っているところに匠の技と潔さを感じます。もちろんLogic Systemのような純粋なテクノポップを期待するのは誤りで、90年型のデジタルサウンドを松武流に解釈したアレンジになっていますが、テクノの伝道師としては十分アピールするに値する隠れた好盤であると思われます。翌年も松武がバックアップし2ndアルバム「Hide and Seek」をリリースしますが、松武のほかにMark Goldenburgを起用した結果、本作のような攻撃性は失われエレクトリック度は減退しています。
<Favorite Songs>
・「Touch My Soul」
緩やかな曲調が多いdimancheの楽曲の中でも「Chinese Boy」と並んで最もスピード豊かなエレクトロポップ。流麗なシーケンスに力強い打ち込みドラム、しかし牧歌的な印象は崩さないというdimancheの魅力を巧みに伝え切った楽曲です。
・「Feel My Eyes」
随所にクラシカルなストリングスを導入しながら基本はバリバリの打ち込みという1stシングル。間奏のトロピカル調のギターソロとヨーロピアンな曲調との相性も良いのですが、こうした曲調は打ち込みでなくても成立するところをわざわざエレクトリックに仕立てる部分は評価できます。
・「The Garden」
まるでZTTレーベルから飛び出したかのようなマシナリーエレクトロポップ。女声と男声の掛け合いが続く単調なAメロの緊張感が尋常ではありません。1度だけ登場するオケヒットのタイミングや緻密に構築されたリズムとその音色も素晴らしく彼女達のその他の楽曲とは一線を画した感があります。
<評点>
・サウンド ★★★ (派手な音色は抑えられているが全面的にシンセ大活躍)
・メロディ ★ (穏やかでフォーキーな曲調でお世辞にも刺激は少ない)
・リズム ★★★ (打ち込みながら芯のある力強い印象のスネアドラム)
・曲構成 ★★ (ミディアムな曲調と激しい曲調を織り交ぜ緩急自在)
・個性 ★ (編曲の力強さは定評があるが本人達の顔が見えづらい)
総合評点: 7点
dimanche

<members>
柴田真里:keyboards
東美江:vocals
1.「哀しいオール」 詞:石川あゆ子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
2.「Winter Roses」 詞:及川眠子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
3.「Touch My Soul」 詞:及川眠子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
4.「Feel My Eyes」 詞:石川あゆ子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
5.「Chinese Boy」 詞:東美江 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
6.「夏の永遠~Somewhere in My Heart~」
詞:及川眠子 曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
7.「Mother」 詞・曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
8.「青春の光と影(Both Sides Now)」
詞・曲:Joni Mitchel 編:松武秀樹・柿崎譲二・dimanche
9.「The Garden」 詞・曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
10.「River」 詞・曲:柴田真里 編:dimanche・松武秀樹
<support musician>
樋口シュウイチ:guitars・voices
笛吹利明:acoustic guitar
柿崎譲二:synthesizer’s bass
produced by 松武秀樹・柿崎譲二・dimanche
mixing engineered by 森本信
recording engineered by 松田龍太
● 松武秀樹プロデュースによる欧州感覚あふれる打ち込みエレポップを得意とした女性2人組のデビュー作
学生時代に日の丸ファクトリー名義でゲームソフトの音楽を手掛けていた柴田真里と東美江の2人組は、その後ユニット名をdimancheと改称し、1991年シングル「Feel My Eys」でデビュー、c/wがJoni Mitchelの「青春の光と影(Both Sides Now)」のリメイクということでも一部で話題となりましたが、1ヶ月後にはユニット名をタイトルに冠したデビューアルバムをリリースします。シンセサイザープログラマーとしては第1人者である松武秀樹が珍しくサウンドプロデュースを手掛けた本作は、そのアンニュイなユニット名、女性デュオという艶かしさを表現したヨーロピアン風味の楽曲を松武お得意のテクノサウンドで料理した、どこかアンバランスな印象がクセとなる、ある意味個性的な作品でしたが、彼女達が持つ控えめで穏やかな雰囲気が柔らかな影に潜む過激な音楽性を隠れ蓑にしているといった印象は否めません。
そんな彼女達の特徴の1つが余計な不純物を取り除いたかのようなストレートな美声ヴォーカル&コーラスワークです。この朴訥なヴォーカルを生かすために意識的に高音フレーズをメロディの中に織り込む部分に彼女達のセンスの一端が垣間見えます。このような欧州の牧歌POPSともいうべき音楽性と呼ぶこともできる楽曲が並ぶ中、アクセントとなっているのが当然のことながら松武秀樹のテクノ直系のサウンドメイキングで、この手の楽曲には一見不釣り合いのように思える攻撃的なリズムトラックを随所に配置し(特に「The Garden」のマシナリーサウンドは圧巻)、さらにストリングスも生っぽさは排除して、いかにもシンセ&サンプラー音色の1つとして扱っているところに匠の技と潔さを感じます。もちろんLogic Systemのような純粋なテクノポップを期待するのは誤りで、90年型のデジタルサウンドを松武流に解釈したアレンジになっていますが、テクノの伝道師としては十分アピールするに値する隠れた好盤であると思われます。翌年も松武がバックアップし2ndアルバム「Hide and Seek」をリリースしますが、松武のほかにMark Goldenburgを起用した結果、本作のような攻撃性は失われエレクトリック度は減退しています。
<Favorite Songs>
・「Touch My Soul」
緩やかな曲調が多いdimancheの楽曲の中でも「Chinese Boy」と並んで最もスピード豊かなエレクトロポップ。流麗なシーケンスに力強い打ち込みドラム、しかし牧歌的な印象は崩さないというdimancheの魅力を巧みに伝え切った楽曲です。
・「Feel My Eyes」
随所にクラシカルなストリングスを導入しながら基本はバリバリの打ち込みという1stシングル。間奏のトロピカル調のギターソロとヨーロピアンな曲調との相性も良いのですが、こうした曲調は打ち込みでなくても成立するところをわざわざエレクトリックに仕立てる部分は評価できます。
・「The Garden」
まるでZTTレーベルから飛び出したかのようなマシナリーエレクトロポップ。女声と男声の掛け合いが続く単調なAメロの緊張感が尋常ではありません。1度だけ登場するオケヒットのタイミングや緻密に構築されたリズムとその音色も素晴らしく彼女達のその他の楽曲とは一線を画した感があります。
<評点>
・サウンド ★★★ (派手な音色は抑えられているが全面的にシンセ大活躍)
・メロディ ★ (穏やかでフォーキーな曲調でお世辞にも刺激は少ない)
・リズム ★★★ (打ち込みながら芯のある力強い印象のスネアドラム)
・曲構成 ★★ (ミディアムな曲調と激しい曲調を織り交ぜ緩急自在)
・個性 ★ (編曲の力強さは定評があるが本人達の顔が見えづらい)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「I wish it could be Christmas everyday」 鈴木さえ子
「I wish it could be Christmas everyday」(1983 RVC)
鈴木さえ子:vocals・drums・acoustic piano・electric & acoustic guitars・cheresta・marimba・vibraphone・glocken・Prophet 5・Emulator・LINN Drum・percussions・soprano sax

1.「夜のウイウイ」 詞:佐伯健三 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:鈴木慶一
2.「I wish it could be Christmas everyday」
詞・曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
3.「蒸気のたつ町」 詞:鈴木博文 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
4.「ガールスカウト」
詞:鈴木慶一 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
5.「夏の豆博士」 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
6.「バオバブ人」 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
7.「ジュラルミンの飛行船」 詞:鈴木博文 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
8.「アメリカのELECTRICITY CO.」
詞:鈴木慶一 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
9.「フィラデルフィア」 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
10.「朝のマリンバ」 詞:鈴木慶一 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
<support musician>
鈴木慶一:electric & acoustic guitars・percussions・Prophet 5・Emulator・recorder
produced by 鈴木慶一・鈴木さえ子
engineered by 田中信一・林雅之・後村孝広・宮田繁樹・中里正男
● 鈴木慶一との共同制作で培った独特のPOP感覚を垣間見せるキュートなデビューアルバム
早過ぎたUK POPSバンドであったシネマの本格派女性ドラマーであり、坂本龍一のバックバンド(ex.B-2 UNITS)でも叩いていた鈴木さえ子は、当時よりその存在感は群を抜いておりシネマ解散後は当然のようにソロデビューに至ります。そして1983年に本作でデビューを果たした彼女がパートナーに選んだのは、80年代に入って先鋭的にニューウェーブ化したMOONRIDERSのリーダー鈴木慶一で、その後公私共に二人三脚で鈴木さえ子のソロ作品をリリースし続ける彼は、彼女とのサウンドチームPSYCHO PERCHIESを結成し、彼女の音世界を表現するために電子楽器と生楽器を巧みに使い分けた先進的なサウンドと、UKポップに影響されたひねくれたメロディ感覚で、彼女の1stアルバムとしては非常に個性的な、名刺代わりの1枚として記憶に残る完成度となりました。
その叙情的でメルヘンティックな作風から「ロック印象派」とも呼ばれた鈴木さえ子の音楽観を表現するのに欠かせないPSYCHO PERCHIESのサウンド手法として、EmulatorやLINN Drumの積極的な導入があります。当時MOONRIDERSにおいては名盤「マニア・マニエラ」でシーケンサーMC4を積極利用していた鈴木慶一が関わるからこそのエレクトリックなサウンドですが、あながちテクノとも言えないような音に仕上がっているのは、鈴木さえ子のマルチプレイヤーぶりにあると思われます。ドラムのほかにもギター、キーボード、マリンバなど自由自在に使いこなす多彩な音楽的素養が、つかみどころのない、それでいてポップ性を外さない作風に表れているわけです。特に「夏の豆博士」「バオバブ人」(斬新なサウンドとサビの転調が秀逸!)、「フィラデルフィア」といったインスト楽曲では彼女のセンスが爆発しており、ただのシンガーソングライターではなくプレイヤー&クリエイターとしても一流であることをデビューアルバムにして証明してしまっているところにも驚きです。加えて歌モノではメランコリックでキュートな側面も見せるという大変欲張りな作品とも言え、デビュー作にして最高傑作という呼び声もうなずけるアルバムと言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「夜のウイウイ」
ドラマー出身らしくリズムにパンチの効いたオープニングナンバー。Emulatorのボイスサンプリングを効果的に使いながら、そのおとぎ話のような世界を表現しています。
・「蒸気のたつ町」
裏ぶれた寂寥感漂う歌詞を真摯で歌い上げる哀愁ポップ。カチッとしたドラミングがそこはかとなくニューウェーブ臭がしますが、リズムは結構攻撃的なのに全体的な寂しさは崩さない堅固な世界観があります。
・「アメリカのELECTRICITY CO.」
メルヘンティックでおとなしめの曲調に音遊びをふんだんに取り入れたワルツ調の不思議楽曲。歯車をセットするようなノイズの存在感が素晴らしく、そして後半のメリーゴーランド音楽調の可愛らしさといったら・・。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラー導入でマシナリーでデジタルな側面も)
・メロディ ★★★ (歌モノがほのぼの覚えやすくインストもキャッチー)
・リズム ★★★★ (ドラマー出身ということもありリズムに芯がある)
・曲構成 ★★★ (歌モノとインストのバランスが絶妙で音楽性を高める)
・個性 ★★★ (クールなだけではないテクノPOPSの可能性も提示)
総合評点: 8点
鈴木さえ子:vocals・drums・acoustic piano・electric & acoustic guitars・cheresta・marimba・vibraphone・glocken・Prophet 5・Emulator・LINN Drum・percussions・soprano sax

1.「夜のウイウイ」 詞:佐伯健三 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:鈴木慶一
2.「I wish it could be Christmas everyday」
詞・曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
3.「蒸気のたつ町」 詞:鈴木博文 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
4.「ガールスカウト」
詞:鈴木慶一 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
5.「夏の豆博士」 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
6.「バオバブ人」 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
7.「ジュラルミンの飛行船」 詞:鈴木博文 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
8.「アメリカのELECTRICITY CO.」
詞:鈴木慶一 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
9.「フィラデルフィア」 曲:鈴木さえ子・鈴木慶一 編:PSYCHO PERCHIES
10.「朝のマリンバ」 詞:鈴木慶一 曲:鈴木さえ子 編:PSYCHO PERCHIES
<support musician>
鈴木慶一:electric & acoustic guitars・percussions・Prophet 5・Emulator・recorder
produced by 鈴木慶一・鈴木さえ子
engineered by 田中信一・林雅之・後村孝広・宮田繁樹・中里正男
● 鈴木慶一との共同制作で培った独特のPOP感覚を垣間見せるキュートなデビューアルバム
早過ぎたUK POPSバンドであったシネマの本格派女性ドラマーであり、坂本龍一のバックバンド(ex.B-2 UNITS)でも叩いていた鈴木さえ子は、当時よりその存在感は群を抜いておりシネマ解散後は当然のようにソロデビューに至ります。そして1983年に本作でデビューを果たした彼女がパートナーに選んだのは、80年代に入って先鋭的にニューウェーブ化したMOONRIDERSのリーダー鈴木慶一で、その後公私共に二人三脚で鈴木さえ子のソロ作品をリリースし続ける彼は、彼女とのサウンドチームPSYCHO PERCHIESを結成し、彼女の音世界を表現するために電子楽器と生楽器を巧みに使い分けた先進的なサウンドと、UKポップに影響されたひねくれたメロディ感覚で、彼女の1stアルバムとしては非常に個性的な、名刺代わりの1枚として記憶に残る完成度となりました。
その叙情的でメルヘンティックな作風から「ロック印象派」とも呼ばれた鈴木さえ子の音楽観を表現するのに欠かせないPSYCHO PERCHIESのサウンド手法として、EmulatorやLINN Drumの積極的な導入があります。当時MOONRIDERSにおいては名盤「マニア・マニエラ」でシーケンサーMC4を積極利用していた鈴木慶一が関わるからこそのエレクトリックなサウンドですが、あながちテクノとも言えないような音に仕上がっているのは、鈴木さえ子のマルチプレイヤーぶりにあると思われます。ドラムのほかにもギター、キーボード、マリンバなど自由自在に使いこなす多彩な音楽的素養が、つかみどころのない、それでいてポップ性を外さない作風に表れているわけです。特に「夏の豆博士」「バオバブ人」(斬新なサウンドとサビの転調が秀逸!)、「フィラデルフィア」といったインスト楽曲では彼女のセンスが爆発しており、ただのシンガーソングライターではなくプレイヤー&クリエイターとしても一流であることをデビューアルバムにして証明してしまっているところにも驚きです。加えて歌モノではメランコリックでキュートな側面も見せるという大変欲張りな作品とも言え、デビュー作にして最高傑作という呼び声もうなずけるアルバムと言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「夜のウイウイ」
ドラマー出身らしくリズムにパンチの効いたオープニングナンバー。Emulatorのボイスサンプリングを効果的に使いながら、そのおとぎ話のような世界を表現しています。
・「蒸気のたつ町」
裏ぶれた寂寥感漂う歌詞を真摯で歌い上げる哀愁ポップ。カチッとしたドラミングがそこはかとなくニューウェーブ臭がしますが、リズムは結構攻撃的なのに全体的な寂しさは崩さない堅固な世界観があります。
・「アメリカのELECTRICITY CO.」
メルヘンティックでおとなしめの曲調に音遊びをふんだんに取り入れたワルツ調の不思議楽曲。歯車をセットするようなノイズの存在感が素晴らしく、そして後半のメリーゴーランド音楽調の可愛らしさといったら・・。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラー導入でマシナリーでデジタルな側面も)
・メロディ ★★★ (歌モノがほのぼの覚えやすくインストもキャッチー)
・リズム ★★★★ (ドラマー出身ということもありリズムに芯がある)
・曲構成 ★★★ (歌モノとインストのバランスが絶妙で音楽性を高める)
・個性 ★★★ (クールなだけではないテクノPOPSの可能性も提示)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「in・Fin・ity」 大沢誉志幸
「in・Fin・ity」(1985 エピックソニー)
大沢誉志幸:vocal・chorus

1.「彼女はfuture-rhythm」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
2.「Lady Vanish」 詞:銀色夏生 曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
3.「inFinity」 詞:銀色夏生 曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
4.「盗まれた週末」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
5.「Love study」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
6.「レプリカ・モデル」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
7.「最初の涙 最後の口吻」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
8.「熱にうかされて」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
9.「恋にjust can't wait」 詞:銀色夏生 曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
<support musician>
柴山和彦:guitar・chorus
原田末秋:guitar
岡野ハジメ:bass
矢壁カメオ:drums
ホッピー神山:keyboards・chorus
矢口博康:sax
KAZU:chorus
KEE:chorus
尾崎豊:chorus
松武秀樹:computer programming
produced by 大沢誉志幸
co-produced by 木崎賢治・小林和之
sound produced by ホッピー神山
mixing engineered by Bill Scheniman
recording engineered by 小池光夫
● PINKをバックに迎えよりFUNK性に磨きがかかったソリッドかつシャープな名盤
自身がヴォーカルを担当したロックバンド、クラウディ・スカイ解散後、沢田研二や中森明菜らに楽曲を提供し、職業作曲家としての活動を始めていた大沢誉志幸は、1983年シングル「彼女には判らない」でソロデビュー、3枚のソロアルバムを残しますが、84年のシングル「そして僕は途方に暮れる」がCMタイアップを獲得し大ヒット、一躍スターダムにのし上がります。それまでの作品は作詞を銀色夏生、編曲を大村雅朗が担当し、特に硬質なエレクトリックサウンドを特徴とした大村アレンジは大沢楽曲の個性を決定づけており、「そして僕は途方に暮れる」は大村サウンドの集大成とも言える究極のエレクトリックバラードとして後世に語り継がれる名曲と言えるでしょう。しかし、大沢はこうした大ヒット曲の後に続く展開として、安易に2匹目のドジョウを狙わずに片腕とも言えるアレンジャーを大村雅朗から、当時売り出し中の若手技巧派バンド、PINKのキーボーディスト、ホッピー神山に交代、大胆なサウンドイメージチェンジを図り、ダンサブルであるがキャッチーとは言えないシングル「彼女はfuture-rhythm」をリリース後まもなく発表された本作は、ホッピー神山のアレンジをはじめサポートにPINKのメンバーを起用し、大ヒットしたが故にバラードシンガーとして高まった評価を覆す、ある種冒険的なアルバムとなっています。
大村雅朗アレンジ時代は、デビュー時の吉川晃司楽曲のごときゴリゴリしたデジタル的シーケンスとPCMドラムの響きが特徴でしたが、本作は、ニューウェーブ期の太田裕美のバックバンドに参加していたPINKメンバーの3名が参加していることでリズム隊が生になったことによるグルーヴ感が良い方に作用しています。もともとホッピー神山は個性的なフレーズを隙間を縫って使用することにより、楽曲全体の風通しが良くして他の楽器(特にギター)を生かす傾向にありますが、本作はプログラミングに松武秀樹が参加することでテクノ度も増しており、相互作用によってエレクトリックファンクPOPSとして高い水準に達している作品に仕上がっています。そして何よりも大沢自身が若手個性派ミュージシャンとの共同作業により、生き生きとしたヴォーカルを聴かせてくれるのが本作の魅力でもあります。本作においてホッピー神山との相性の良さを見せた大沢はしばらくの間PINKのメンバーを従えて良質なファンクPOPSを披露していくことになります。
<Favorite Songs>
・「彼女はfuture-rhythm」
岡野ハジメのベースフレーズが印象的なイントロで始まる6thシングル。大沢の持ち前のファンキーなリズム感が生かされた楽曲で、特にサビのドラムフィルインのキレの良さが秀逸です。
・「Lady Vanish」
前曲とつながる形でミックスされたスピード感抜群のデジタルファンク。咆哮するようなノイジーギターも切れ味抜群で、技巧的な演奏もあわせてまさにPINKの出張版といった印象です。おなじみの枯れた音色の矢口博康サックスもハマっています。
・「最初の涙 最後の口吻」
「そして僕は途方に暮れる」でバラードシンガーとしての評価も上がった大沢の面目躍如となったエレクトリックバラードソング。エフェクティブなリズムのイントロから爽やかなシンセリフが情景鮮やかです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (フレーズ音色共にホッピー色満載で切れ味鋭いサウンド)
・メロディ ★★★ (キャッチーな楽曲への期待には数曲でしっかり応える)
・リズム ★★★★★(強烈ドラム以上に生とシンセを使い分けるベースに注目)
・曲構成 ★★★ (バラードもシンセ満載でデジタルな肌触りに統一感)
・個性 ★★★★ (PINKサウンドとの相性が抜群で最も充実期にある作品)
総合評点: 9点
大沢誉志幸:vocal・chorus

1.「彼女はfuture-rhythm」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
2.「Lady Vanish」 詞:銀色夏生 曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
3.「inFinity」 詞:銀色夏生 曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
4.「盗まれた週末」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
5.「Love study」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
6.「レプリカ・モデル」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
7.「最初の涙 最後の口吻」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
8.「熱にうかされて」 詞・曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
9.「恋にjust can't wait」 詞:銀色夏生 曲:大沢誉志幸 編:ホッピー神山
<support musician>
柴山和彦:guitar・chorus
原田末秋:guitar
岡野ハジメ:bass
矢壁カメオ:drums
ホッピー神山:keyboards・chorus
矢口博康:sax
KAZU:chorus
KEE:chorus
尾崎豊:chorus
松武秀樹:computer programming
produced by 大沢誉志幸
co-produced by 木崎賢治・小林和之
sound produced by ホッピー神山
mixing engineered by Bill Scheniman
recording engineered by 小池光夫
● PINKをバックに迎えよりFUNK性に磨きがかかったソリッドかつシャープな名盤
自身がヴォーカルを担当したロックバンド、クラウディ・スカイ解散後、沢田研二や中森明菜らに楽曲を提供し、職業作曲家としての活動を始めていた大沢誉志幸は、1983年シングル「彼女には判らない」でソロデビュー、3枚のソロアルバムを残しますが、84年のシングル「そして僕は途方に暮れる」がCMタイアップを獲得し大ヒット、一躍スターダムにのし上がります。それまでの作品は作詞を銀色夏生、編曲を大村雅朗が担当し、特に硬質なエレクトリックサウンドを特徴とした大村アレンジは大沢楽曲の個性を決定づけており、「そして僕は途方に暮れる」は大村サウンドの集大成とも言える究極のエレクトリックバラードとして後世に語り継がれる名曲と言えるでしょう。しかし、大沢はこうした大ヒット曲の後に続く展開として、安易に2匹目のドジョウを狙わずに片腕とも言えるアレンジャーを大村雅朗から、当時売り出し中の若手技巧派バンド、PINKのキーボーディスト、ホッピー神山に交代、大胆なサウンドイメージチェンジを図り、ダンサブルであるがキャッチーとは言えないシングル「彼女はfuture-rhythm」をリリース後まもなく発表された本作は、ホッピー神山のアレンジをはじめサポートにPINKのメンバーを起用し、大ヒットしたが故にバラードシンガーとして高まった評価を覆す、ある種冒険的なアルバムとなっています。
大村雅朗アレンジ時代は、デビュー時の吉川晃司楽曲のごときゴリゴリしたデジタル的シーケンスとPCMドラムの響きが特徴でしたが、本作は、ニューウェーブ期の太田裕美のバックバンドに参加していたPINKメンバーの3名が参加していることでリズム隊が生になったことによるグルーヴ感が良い方に作用しています。もともとホッピー神山は個性的なフレーズを隙間を縫って使用することにより、楽曲全体の風通しが良くして他の楽器(特にギター)を生かす傾向にありますが、本作はプログラミングに松武秀樹が参加することでテクノ度も増しており、相互作用によってエレクトリックファンクPOPSとして高い水準に達している作品に仕上がっています。そして何よりも大沢自身が若手個性派ミュージシャンとの共同作業により、生き生きとしたヴォーカルを聴かせてくれるのが本作の魅力でもあります。本作においてホッピー神山との相性の良さを見せた大沢はしばらくの間PINKのメンバーを従えて良質なファンクPOPSを披露していくことになります。
<Favorite Songs>
・「彼女はfuture-rhythm」
岡野ハジメのベースフレーズが印象的なイントロで始まる6thシングル。大沢の持ち前のファンキーなリズム感が生かされた楽曲で、特にサビのドラムフィルインのキレの良さが秀逸です。
・「Lady Vanish」
前曲とつながる形でミックスされたスピード感抜群のデジタルファンク。咆哮するようなノイジーギターも切れ味抜群で、技巧的な演奏もあわせてまさにPINKの出張版といった印象です。おなじみの枯れた音色の矢口博康サックスもハマっています。
・「最初の涙 最後の口吻」
「そして僕は途方に暮れる」でバラードシンガーとしての評価も上がった大沢の面目躍如となったエレクトリックバラードソング。エフェクティブなリズムのイントロから爽やかなシンセリフが情景鮮やかです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (フレーズ音色共にホッピー色満載で切れ味鋭いサウンド)
・メロディ ★★★ (キャッチーな楽曲への期待には数曲でしっかり応える)
・リズム ★★★★★(強烈ドラム以上に生とシンセを使い分けるベースに注目)
・曲構成 ★★★ (バラードもシンセ満載でデジタルな肌触りに統一感)
・個性 ★★★★ (PINKサウンドとの相性が抜群で最も充実期にある作品)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「RAINBOW RAINBOW」 TM NETWORK
「RAINBOW RAINBOW」 (1984 エピックソニー)
TM NETWORK

<members>
小室哲哉:synthesizer・acoustic piano・Rhodes・background vocals
宇都宮隆:vocals・background vocals
木根尚登:acoustic guitars・acoustic piano・synthesizer・background vocals
1.「カリビアーナ・ハイ」 詞:麻生香太郎 曲・編:小室哲哉
2.「クロコダイル・ラップ (Get away)」 詞・曲・編:小室哲哉
3.「1/2の助走 (Just for you and me now)」
詞:西門加里 曲:木根尚登 編:小室哲哉
4.「1974(16光年の訪問者)」 詞:西門加里 曲・編:小室哲哉
5.「クリストファー」 詞:麻生香太郎 曲:木根尚登 編:小室哲哉
6.「イパネマ '84」 詞:西門加里 曲:小室哲哉・木根尚登 編:小室哲哉
7.「金曜日のライオン (Take it to the lucky)」 詞・曲・編:小室哲哉
8.「RAINBOW RAINBOW(陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜)」
詞:西門加里 曲・編:小室哲哉
9.「パノラマジック(アストロノーツの悲劇)」
詞:麻生香太郎 曲:木根尚登 編:小室哲哉
<support musician>
北島健二:electric guitars
山内薫:electric bass
阿部薫:drums・hi-hat・cymbals
浜口茂外也:percussions・tambourine・conga
中村哲:sax
小泉洋:computer programming・synthesizer operate
produced by 小室哲哉
engineered by 伊東俊郎
● ポップ性と宇宙観が垣間見える試行錯誤したデジタルサウンドが瑞々しいバンドデビュー作
80年代初頭に活動していたアメリカンロックバンドSPEEDWAYのメンバーであった小室哲哉と木根尚登、そして宇都宮隆が意気投合して結成した新グループであったTM NETWORKは、SPEEDWAYでは助っ人のような立場であった小室がイニシアチブをとったこともありフューチュアリスティックなシンセサウンドを中心としたPOPSバンドとしてメジャー契約、YMO散開の余韻も覚めやらぬ84年にシングル「金曜日のライオン」を、そしてデビューアルバムを同時リリースします。それが本作というわけですが、なにしろニューロマブームもやっと落ち着いた頃ということもあってヴィジュアルイメージは原色&長髪の派手志向(地味目な木根は影のメンバー扱い・・)、そして生み出された楽曲も明るめの能天気さすら感じさせる、どこかしら「軽い」イメージのものが並んでいるといった状態です。もちろんシンセ中心を標榜とすることもあってスペイシーなシンセによる近未来的エレクトリックサウンドが散りばめられていますが、前述の「軽さ」がYMOと似たような路線ながら、一線を引いたような評価をされてしまっているものと思われます。
とはいえ、そのシンセサウンドに賭ける本気度は本物です。小室哲哉というクリエイターは本当にシンセサイザーを「弾く」のが好きでたまらない、その意味においてはストイックな人物であると思っているのですが、本作でも「1974」「パノラマジック」といったスペイシーな楽曲では気持ちいいくらいの電子音色で弾きまくっています(エレドラの響きもなんとも心地良い)。そうした電子的な音の魅力にとりつかれたからこそ現在の小室哲哉があり、彼のサウンド面での音楽的基盤が本作に表れていると言っても過言ではありません。とは言っても本作はデビュー作というだけあってまだ小室も控え気味で、ロック的ではないとはいえリズミカルなギターも目立つ仕様となっており、そこにはまだまだ若さが感じられる仕上がりとなっています。そのため楽曲のクオリティにもばらつきがある本作ですが、垣間見せるエレクトリックのセンスはその後の活動を続けていくうちに、小室の作曲能力の向上も相まって徐々に開花していくことになります。
<Favorite Songs>
・「1974(16光年の訪問者)」
イントロのシーケンスとエレドラのフィルインが非常に重要な役割を担っている近未来シンセポップ。軽めの音ながら直線的なシンセベースがテクノを醸し出しています。秀逸なのはサビの出だしの甘ったるく哀しいメロディで、この部分だけでこの楽曲を名曲たらしめていると思います。
・「金曜日のライオン (Take it to the lucky)」
シングルバージョンよりやや長めのイントロの1stシングル。サバンナを思わせるパーカッションがこの楽曲のポイントですが、ファンクっぽいリズムのノリもよく、間奏のシンセソロも金属的な音色を混ぜたりと、なかなか挑戦的なサウンドです。全体的に細かく弾きまくりなところも気に入っています。
・「RAINBOW RAINBOW(陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜)」
彼らの代表曲の1つとも言えるタイトルチューン。目立ちまくるエレクトリック度の高いスネア音色、そしてイントロからAメロにかけてのシンセフレーズはインパクト十分です。個人の感想ですがメランコリックな間奏のチョッパーベースの入り方が非常に気に入っています。
<評点>
・サウンド ★★ (粗さが残るシンセサウンドに挑戦意欲が垣間見える)
・メロディ ★ (一瞬輝きを見せるもののまだ才能は蕾状態の模様)
・リズム ★★ (エレドラ使用楽曲のキレの良さは本作のハイライト)
・曲構成 ★ (光る楽曲とデモを抜け出せない楽曲とのギャップが)
・個性 ★ (デビュー当時の若さに溢れており全てはこれから)
総合評点: 6点
TM NETWORK

<members>
小室哲哉:synthesizer・acoustic piano・Rhodes・background vocals
宇都宮隆:vocals・background vocals
木根尚登:acoustic guitars・acoustic piano・synthesizer・background vocals
1.「カリビアーナ・ハイ」 詞:麻生香太郎 曲・編:小室哲哉
2.「クロコダイル・ラップ (Get away)」 詞・曲・編:小室哲哉
3.「1/2の助走 (Just for you and me now)」
詞:西門加里 曲:木根尚登 編:小室哲哉
4.「1974(16光年の訪問者)」 詞:西門加里 曲・編:小室哲哉
5.「クリストファー」 詞:麻生香太郎 曲:木根尚登 編:小室哲哉
6.「イパネマ '84」 詞:西門加里 曲:小室哲哉・木根尚登 編:小室哲哉
7.「金曜日のライオン (Take it to the lucky)」 詞・曲・編:小室哲哉
8.「RAINBOW RAINBOW(陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜)」
詞:西門加里 曲・編:小室哲哉
9.「パノラマジック(アストロノーツの悲劇)」
詞:麻生香太郎 曲:木根尚登 編:小室哲哉
<support musician>
北島健二:electric guitars
山内薫:electric bass
阿部薫:drums・hi-hat・cymbals
浜口茂外也:percussions・tambourine・conga
中村哲:sax
小泉洋:computer programming・synthesizer operate
produced by 小室哲哉
engineered by 伊東俊郎
● ポップ性と宇宙観が垣間見える試行錯誤したデジタルサウンドが瑞々しいバンドデビュー作
80年代初頭に活動していたアメリカンロックバンドSPEEDWAYのメンバーであった小室哲哉と木根尚登、そして宇都宮隆が意気投合して結成した新グループであったTM NETWORKは、SPEEDWAYでは助っ人のような立場であった小室がイニシアチブをとったこともありフューチュアリスティックなシンセサウンドを中心としたPOPSバンドとしてメジャー契約、YMO散開の余韻も覚めやらぬ84年にシングル「金曜日のライオン」を、そしてデビューアルバムを同時リリースします。それが本作というわけですが、なにしろニューロマブームもやっと落ち着いた頃ということもあってヴィジュアルイメージは原色&長髪の派手志向(地味目な木根は影のメンバー扱い・・)、そして生み出された楽曲も明るめの能天気さすら感じさせる、どこかしら「軽い」イメージのものが並んでいるといった状態です。もちろんシンセ中心を標榜とすることもあってスペイシーなシンセによる近未来的エレクトリックサウンドが散りばめられていますが、前述の「軽さ」がYMOと似たような路線ながら、一線を引いたような評価をされてしまっているものと思われます。
とはいえ、そのシンセサウンドに賭ける本気度は本物です。小室哲哉というクリエイターは本当にシンセサイザーを「弾く」のが好きでたまらない、その意味においてはストイックな人物であると思っているのですが、本作でも「1974」「パノラマジック」といったスペイシーな楽曲では気持ちいいくらいの電子音色で弾きまくっています(エレドラの響きもなんとも心地良い)。そうした電子的な音の魅力にとりつかれたからこそ現在の小室哲哉があり、彼のサウンド面での音楽的基盤が本作に表れていると言っても過言ではありません。とは言っても本作はデビュー作というだけあってまだ小室も控え気味で、ロック的ではないとはいえリズミカルなギターも目立つ仕様となっており、そこにはまだまだ若さが感じられる仕上がりとなっています。そのため楽曲のクオリティにもばらつきがある本作ですが、垣間見せるエレクトリックのセンスはその後の活動を続けていくうちに、小室の作曲能力の向上も相まって徐々に開花していくことになります。
<Favorite Songs>
・「1974(16光年の訪問者)」
イントロのシーケンスとエレドラのフィルインが非常に重要な役割を担っている近未来シンセポップ。軽めの音ながら直線的なシンセベースがテクノを醸し出しています。秀逸なのはサビの出だしの甘ったるく哀しいメロディで、この部分だけでこの楽曲を名曲たらしめていると思います。
・「金曜日のライオン (Take it to the lucky)」
シングルバージョンよりやや長めのイントロの1stシングル。サバンナを思わせるパーカッションがこの楽曲のポイントですが、ファンクっぽいリズムのノリもよく、間奏のシンセソロも金属的な音色を混ぜたりと、なかなか挑戦的なサウンドです。全体的に細かく弾きまくりなところも気に入っています。
・「RAINBOW RAINBOW(陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜)」
彼らの代表曲の1つとも言えるタイトルチューン。目立ちまくるエレクトリック度の高いスネア音色、そしてイントロからAメロにかけてのシンセフレーズはインパクト十分です。個人の感想ですがメランコリックな間奏のチョッパーベースの入り方が非常に気に入っています。
<評点>
・サウンド ★★ (粗さが残るシンセサウンドに挑戦意欲が垣間見える)
・メロディ ★ (一瞬輝きを見せるもののまだ才能は蕾状態の模様)
・リズム ★★ (エレドラ使用楽曲のキレの良さは本作のハイライト)
・曲構成 ★ (光る楽曲とデモを抜け出せない楽曲とのギャップが)
・個性 ★ (デビュー当時の若さに溢れており全てはこれから)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Do Do Do」 Shi-Shonen
「Do Do Do」 (1985 テイチク)
Shi-Shonen

<members>
戸田誠司:vocal・guitars・computer
福原まり:vocal・piano・synthesizer
渡辺等:vocal・bass・stringed instruments
友田真吾:drums
1.「瞳はサンセットグロウ」 詞:佐伯健三 曲:戸田誠司 編:Shi-Shonen
2.「5回目のキス」 詞:佐伯健三 曲:渡辺等 編:Shi-Shonen
3.「手編みの天使」 詞:佐伯健三 曲:福原まり 編:Shi-Shonen
4.「タイトロープ」 詞:佐伯健三 曲:戸田誠司 編:Shi-Shonen
<support musician>
矢口博康:sax
中西グループ:strings
美尾洋乃:background vocal
produced by 牧村憲一・戸田誠司
engineered by 寺田康彦
● タイトなドラムにより安定したサウンド!POPS路線にシフトした4曲捨て曲なしの名盤ミニアルバム
コロムビアから3枚のシングルをリリースしてきたSHI-SHONENが細野晴臣率いるポストテクノポップレーベル、Non Standardに移籍してきたのが1984年。翌85年には装いも新たにアルバム「Singin' Circuit」で再デビューを果たします。当時では珍しくいち早くシーケンサーにPersonal Computerを採用した先進的な手法で制作されたこの1stアルバムは、前衛的かつメランコリックな作風で次第に衰退しつつあったテクノキッズの溜飲を下げたわけですが、同年にはすかさず12インチによるミニアルバムの制作に入り、年末には4曲入りのアルバムとして本作がリリースされます。ところがこの作品、トレンドの先を行ったような前作と比較して一気にポップ路線へ方針転換しており、元々持ち合わせていたポップセンスが見事に開花した反面、プレイヤー気質であったリズム隊の2人、渡辺等や友田真吾にとっては戸惑いの残る作品になったと思われる、バンド間に微妙な雰囲気の残る作品となっています。
まさに青春真っ盛りソング「瞳はサンセットグロウ」の完成度にまず驚かされる本作は、そのわかりやす過ぎるメロディもさることながら、スネアドラムのキレと音圧が上がりデジタル時代の輪郭がクッキリしたサウンドを楽しむことができます。そんなバキバキした音と泣きの入ったキラーフレーズが融合することによって新感覚のデジタルPOPSの進化を目指すというのが本作により彼らが目指す方向性であったのかもしれませんが、余りにポップ路線へ舵を切り過ぎたことと、よりデジタル化を増した制作手法によりリズム隊の危機感が煽られてしまった結果、本作リリース後間もなくして渡辺と友田が脱退、戸田&福原という2人組としての活動を余儀なくされてしまいます。事実このグループにおけるコンピューターが占める役割は大きくなってしまい、リズム隊の不安感は頷けるものでありますが、演奏力抜群な彼らの生のグルーヴとPC等デジタル機材が織りなす機械的サウンドとのせめぎ合いが彼らの魅力の1つであっただけに、彼ら脱退後はよりサイバーな方向性へとサウンドが偏ってしまった面も否めません。本作は彼らのバンド形態をギリギリに保った緊張感あふれる、そしてそのせめぎ合いが極限にまで楽しめつつも非常にポップで聴きやすいということで、名盤たり得る作品と言うことができるというわけです。
<Favorite Songs>
・「瞳はサンセットグロウ」
戸田誠司のポップセンスを見せつけられるShi-Shonen最高のキラーノスタルジックソング。ピコピコシーケンスとストリングス、そして矢口博康の乾いたサックスで盛り上げるサビは絶品です。
・「5回目のキス」
渡辺等がみずから歌う彼にしては珍しいド直球のポップソング。「瞳はサンセットグロウ」に負けず劣らずノスタルジック感覚あふれるイントロにレゲエ調のリズムがよく似合います。サンプラーのストリングスのローファイ加減もいい味を出しています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (随所のシーケンスとサンプラーの使い方が絶妙)
・メロディ ★★★★★(3人各々のポップ感覚が反映された質の高い楽曲群)
・リズム ★★★★ (キレがありタイトなドラムが本作の核となっている)
・曲構成 ★★ (もしフルアルバム仕様であれば完璧なPOPS名盤に)
・個性 ★★★★ (デジタル感覚の中に「いい曲」を忍ばせるセンスの勝利)
総合評点: 9点
Shi-Shonen

<members>
戸田誠司:vocal・guitars・computer
福原まり:vocal・piano・synthesizer
渡辺等:vocal・bass・stringed instruments
友田真吾:drums
1.「瞳はサンセットグロウ」 詞:佐伯健三 曲:戸田誠司 編:Shi-Shonen
2.「5回目のキス」 詞:佐伯健三 曲:渡辺等 編:Shi-Shonen
3.「手編みの天使」 詞:佐伯健三 曲:福原まり 編:Shi-Shonen
4.「タイトロープ」 詞:佐伯健三 曲:戸田誠司 編:Shi-Shonen
<support musician>
矢口博康:sax
中西グループ:strings
美尾洋乃:background vocal
produced by 牧村憲一・戸田誠司
engineered by 寺田康彦
● タイトなドラムにより安定したサウンド!POPS路線にシフトした4曲捨て曲なしの名盤ミニアルバム
コロムビアから3枚のシングルをリリースしてきたSHI-SHONENが細野晴臣率いるポストテクノポップレーベル、Non Standardに移籍してきたのが1984年。翌85年には装いも新たにアルバム「Singin' Circuit」で再デビューを果たします。当時では珍しくいち早くシーケンサーにPersonal Computerを採用した先進的な手法で制作されたこの1stアルバムは、前衛的かつメランコリックな作風で次第に衰退しつつあったテクノキッズの溜飲を下げたわけですが、同年にはすかさず12インチによるミニアルバムの制作に入り、年末には4曲入りのアルバムとして本作がリリースされます。ところがこの作品、トレンドの先を行ったような前作と比較して一気にポップ路線へ方針転換しており、元々持ち合わせていたポップセンスが見事に開花した反面、プレイヤー気質であったリズム隊の2人、渡辺等や友田真吾にとっては戸惑いの残る作品になったと思われる、バンド間に微妙な雰囲気の残る作品となっています。
まさに青春真っ盛りソング「瞳はサンセットグロウ」の完成度にまず驚かされる本作は、そのわかりやす過ぎるメロディもさることながら、スネアドラムのキレと音圧が上がりデジタル時代の輪郭がクッキリしたサウンドを楽しむことができます。そんなバキバキした音と泣きの入ったキラーフレーズが融合することによって新感覚のデジタルPOPSの進化を目指すというのが本作により彼らが目指す方向性であったのかもしれませんが、余りにポップ路線へ舵を切り過ぎたことと、よりデジタル化を増した制作手法によりリズム隊の危機感が煽られてしまった結果、本作リリース後間もなくして渡辺と友田が脱退、戸田&福原という2人組としての活動を余儀なくされてしまいます。事実このグループにおけるコンピューターが占める役割は大きくなってしまい、リズム隊の不安感は頷けるものでありますが、演奏力抜群な彼らの生のグルーヴとPC等デジタル機材が織りなす機械的サウンドとのせめぎ合いが彼らの魅力の1つであっただけに、彼ら脱退後はよりサイバーな方向性へとサウンドが偏ってしまった面も否めません。本作は彼らのバンド形態をギリギリに保った緊張感あふれる、そしてそのせめぎ合いが極限にまで楽しめつつも非常にポップで聴きやすいということで、名盤たり得る作品と言うことができるというわけです。
<Favorite Songs>
・「瞳はサンセットグロウ」
戸田誠司のポップセンスを見せつけられるShi-Shonen最高のキラーノスタルジックソング。ピコピコシーケンスとストリングス、そして矢口博康の乾いたサックスで盛り上げるサビは絶品です。
・「5回目のキス」
渡辺等がみずから歌う彼にしては珍しいド直球のポップソング。「瞳はサンセットグロウ」に負けず劣らずノスタルジック感覚あふれるイントロにレゲエ調のリズムがよく似合います。サンプラーのストリングスのローファイ加減もいい味を出しています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (随所のシーケンスとサンプラーの使い方が絶妙)
・メロディ ★★★★★(3人各々のポップ感覚が反映された質の高い楽曲群)
・リズム ★★★★ (キレがありタイトなドラムが本作の核となっている)
・曲構成 ★★ (もしフルアルバム仕様であれば完璧なPOPS名盤に)
・個性 ★★★★ (デジタル感覚の中に「いい曲」を忍ばせるセンスの勝利)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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