「ANYWHERE」 NEW MUSIK
「ANYWHERE」(1981 GTO)
NEW MUSIK

<members>
Tony Mansfield:vocals・guitars・keyboards
Tony Hibbert:bass
Clive Gates:keyboards
Phil Towner:drums・percussion
1.「They All Run After The Carving Knife」 Tony Mansfield
2.「Areas」 Tony Mansfield
3.「Churches」 Tony Mansfield
4.「This World Of Walter」 Tony Mansfield
5.「Luxury」 Tony Mansfield
6.「While You Wait」 Tony Mansfield
7.「Changing Minds」 Tony Mansfield
8.「Peace」 Tony Mansfield
9.「Design」 Tony Mansfield
10.「Traps」 Tony Mansfield
11.「Division」 Tony Mansfield
12.「Back To Room One」 Tony Mansfield
produced by Tony Mansfield
engineered by Peter Hammond
● 前作よりシンセ&プログラミング率がアップ!メロディセンスはそのままに実験的要素も見せた2ndアルバム
1979年にシングル「Straight Line」でデビューした稀代のプロデューサーTony Mansfield率いるNEW MUZIKは、プレネオアコな美メロ中心の爽やかな1stアルバム「From A to B」をリリース、ギター中心でありながら随所に電子的な音色および音響を使用した新感覚サウンドで一定の評価を得ましたが、その後tony Mansfieldのエレクトリックなサウンド、とりわけシンセサイザーへの造詣はますます深くなり、その傾倒のあまり楽曲の傾向は徐々にマニアックなものになっていきました。そのような中81年にリリースされた2ndアルバムである本作は、前作のギターサウンドを継承(もちろん異様にわかりやすいネイティブな発音も)しつつエレクトリカルな実験的要素を多く取り込んだ作品となり、12曲という当時にしては楽曲の充実度は非常に高いものの、本作自体はヒットチャートに上りながら、シングルカットされた「Luxury」「While You Wait」は圏外になるなど商業的には失敗となりました。しかしながら、その音楽的なクオリティがヒットチャートと比例するとは限らないという典型的な作品とも言えると思います。
彼のシンセサイザーへのこだわりは1曲目の「They All Run After The Carving Knife」において既に理解できると思いますが、イントロで延々とシンセサウンドで引っ張り、「From A to B」路線のギター中心の本編の後もアウトロは機械的な電子サウンドで引っ張るという構成に、彼のエレクトリックサウンドへの愛が感じられます。1曲目だけでなく以降の楽曲も1stアルバムのアコースティックに電子サウンドが乗っかっているという構成ではなく、リズムボックスやボコーダー、そしてシンセによるエレクトリックサウンドにアコースティック性を付加しているという構成に楽曲の仕組み自体がガラリと変化しており、まさにこの1年でTony Mansfieldの音楽制作手法やその考え方が進化していったと言えるのではないでしょうか。翌年にリリースされる3rdアルバム「WARP」までになると電子サウンドへの傾倒ぶりが頂点に達し、物好きにしか到達しないマニアックな世界になってしまいますが、本作は過渡期だけあって、1stと3rdの良いとこ取りをしたようなサウンドに仕上がっておりまだ一般にも受け入れられる要素が残っている反面、中途半端さも災いしてとっつきにくくなってしまったのかもしれません。
<Favorite Songs>
・「Churches」
柔らかいProphet5の音色を中心としたファンタジックなシンセサウンド中心の楽曲。くぐもり気味のサウンドに温かさも感じます。もちろん爽やかなわかりやすいメロディはそのままで、楽曲として完成されているところはトニマンマジックといったところでしょうか。
・「While You Wait」
シングルカットもされたNEW MUZIKのテクノサウンドが本格化した名曲。Tonyの代名詞ともいえる洞窟(Cave)サウンドが大活躍し、ベースはシンセベースに任せられ、コーラスに逆回転を使用するなど音響面でも実験的な要素が満載です。1フレーズ勝負ながらTonyらしく哀愁のメロディも健在なのも嬉しいです。
・「Design」
爽やかなAメロがすべての本作の路線を如実にあらわしたポップチューン。AメロのフレーズとBメロの繰り返しによる構成というミニマル構造の楽曲ですが、テクノ的な直線的ベースラインがフィーチャーされていることもあって違和感はまるでありません。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセマニアぶりを存分に発揮し才能は開花寸前)
・メロディ ★★ (サウンド志向の余り1stのような訴求力はない)
・リズム ★ (リズムボックスの導入で新機軸を見せるも安っぽく)
・曲構成 ★ (創作意欲が感じられる多作傾向だがもっと凝縮すべき)
・個性 ★★ (1stの継承も感じられるが音づくりの傾向は正反対)
総合評点: 7点
NEW MUSIK

<members>
Tony Mansfield:vocals・guitars・keyboards
Tony Hibbert:bass
Clive Gates:keyboards
Phil Towner:drums・percussion
1.「They All Run After The Carving Knife」 Tony Mansfield
2.「Areas」 Tony Mansfield
3.「Churches」 Tony Mansfield
4.「This World Of Walter」 Tony Mansfield
5.「Luxury」 Tony Mansfield
6.「While You Wait」 Tony Mansfield
7.「Changing Minds」 Tony Mansfield
8.「Peace」 Tony Mansfield
9.「Design」 Tony Mansfield
10.「Traps」 Tony Mansfield
11.「Division」 Tony Mansfield
12.「Back To Room One」 Tony Mansfield
produced by Tony Mansfield
engineered by Peter Hammond
● 前作よりシンセ&プログラミング率がアップ!メロディセンスはそのままに実験的要素も見せた2ndアルバム
1979年にシングル「Straight Line」でデビューした稀代のプロデューサーTony Mansfield率いるNEW MUZIKは、プレネオアコな美メロ中心の爽やかな1stアルバム「From A to B」をリリース、ギター中心でありながら随所に電子的な音色および音響を使用した新感覚サウンドで一定の評価を得ましたが、その後tony Mansfieldのエレクトリックなサウンド、とりわけシンセサイザーへの造詣はますます深くなり、その傾倒のあまり楽曲の傾向は徐々にマニアックなものになっていきました。そのような中81年にリリースされた2ndアルバムである本作は、前作のギターサウンドを継承(もちろん異様にわかりやすいネイティブな発音も)しつつエレクトリカルな実験的要素を多く取り込んだ作品となり、12曲という当時にしては楽曲の充実度は非常に高いものの、本作自体はヒットチャートに上りながら、シングルカットされた「Luxury」「While You Wait」は圏外になるなど商業的には失敗となりました。しかしながら、その音楽的なクオリティがヒットチャートと比例するとは限らないという典型的な作品とも言えると思います。
彼のシンセサイザーへのこだわりは1曲目の「They All Run After The Carving Knife」において既に理解できると思いますが、イントロで延々とシンセサウンドで引っ張り、「From A to B」路線のギター中心の本編の後もアウトロは機械的な電子サウンドで引っ張るという構成に、彼のエレクトリックサウンドへの愛が感じられます。1曲目だけでなく以降の楽曲も1stアルバムのアコースティックに電子サウンドが乗っかっているという構成ではなく、リズムボックスやボコーダー、そしてシンセによるエレクトリックサウンドにアコースティック性を付加しているという構成に楽曲の仕組み自体がガラリと変化しており、まさにこの1年でTony Mansfieldの音楽制作手法やその考え方が進化していったと言えるのではないでしょうか。翌年にリリースされる3rdアルバム「WARP」までになると電子サウンドへの傾倒ぶりが頂点に達し、物好きにしか到達しないマニアックな世界になってしまいますが、本作は過渡期だけあって、1stと3rdの良いとこ取りをしたようなサウンドに仕上がっておりまだ一般にも受け入れられる要素が残っている反面、中途半端さも災いしてとっつきにくくなってしまったのかもしれません。
<Favorite Songs>
・「Churches」
柔らかいProphet5の音色を中心としたファンタジックなシンセサウンド中心の楽曲。くぐもり気味のサウンドに温かさも感じます。もちろん爽やかなわかりやすいメロディはそのままで、楽曲として完成されているところはトニマンマジックといったところでしょうか。
・「While You Wait」
シングルカットもされたNEW MUZIKのテクノサウンドが本格化した名曲。Tonyの代名詞ともいえる洞窟(Cave)サウンドが大活躍し、ベースはシンセベースに任せられ、コーラスに逆回転を使用するなど音響面でも実験的な要素が満載です。1フレーズ勝負ながらTonyらしく哀愁のメロディも健在なのも嬉しいです。
・「Design」
爽やかなAメロがすべての本作の路線を如実にあらわしたポップチューン。AメロのフレーズとBメロの繰り返しによる構成というミニマル構造の楽曲ですが、テクノ的な直線的ベースラインがフィーチャーされていることもあって違和感はまるでありません。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセマニアぶりを存分に発揮し才能は開花寸前)
・メロディ ★★ (サウンド志向の余り1stのような訴求力はない)
・リズム ★ (リズムボックスの導入で新機軸を見せるも安っぽく)
・曲構成 ★ (創作意欲が感じられる多作傾向だがもっと凝縮すべき)
・個性 ★★ (1stの継承も感じられるが音づくりの傾向は正反対)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「カメラ=万年筆」 MOON RIDERS
「カメラ=万年筆」(1980 クラウン)
MOON RIDERS

<members>
鈴木慶一:vocal・manual effects
岡田徹:keyboards
武川雅寛:violin・vocal
橿渕哲郎:drums
白井良明:guitars
鈴木博文:electric bass
1.「彼女について知っている二、三の事柄」
詞:鈴木博文 曲:鈴木慶一 編:MOON RIDERS
2.「第三の男」 曲:Anton Karas 編:MOON RIDERS
3.「無防備都市」 詞・曲:鈴木博文 編:MOON RIDERS
4.「アルファビル」 詞・曲:白井良明 編:MOON RIDERS
5.「24時間の情事」 詞:橿渕哲郎・鈴木慶一 曲・編:MOON RIDERS
6.「インテリア」 詞・曲:鈴木博文 編:MOON RIDERS
7.「沈黙」 詞:鈴木博文 曲:岡田徹 編:MOON RIDERS
8.「幕間」 詞・曲:佐藤奈々子 編:MOON RIDERS
9.「太陽の下の18才」
詞:Luciano Salce(訳詞:音羽たかし) 曲:Ennio Morricone
編:MOON RIDERS
10.「水の中のナイフ」 詞:鈴木博文 曲:岡田徹 編:MOON RIDERS
11.「ロリータ・ヤ・ヤ」 曲:Nelson Riddle・Bob Harris 編:MOON RIDERS
12.「狂ったバカンス」 詞・曲:橿渕哲郎 編:MOON RIDERS
13.「欲望」 詞・曲:鈴木慶一 編:MOON RIDERS
14.「大人は判ってくれない」 詞:鈴木慶一 曲・編:MOON RIDERS
15.「大都会交響楽」 曲・編:MOON RIDERS
<support musician>
佐藤奈々子:vocal・chorus
Anton Karas:zither
国吉静治:tenor sax
チャーリー中田:chorus
櫻林美佐:lolita
produced by MOON RIDERS
engineered by 田中信一
● 新たな発想でみずからの楽曲を再構築!コラージュ感覚が刺激的で姿勢がテクノな実験作
1970年半ばから活動する日本最古のロックバンドであるMOONRIDERSは、4thアルバム「ヌーベル・バーグ」においていち早くシンセサイザーを導入しその先見性を垣間見せていましたが、世界を席巻するニューウェーブブームに敏感に反応する形で79年「モダーン・ミュージック」でDEVOスタイルに身を包み、完全胃ニューウェーブへサウンドを転換しました。そしてその勢いのまま翌80年には本作がリリースされるわけですが、既存の楽曲を換骨奪胎して再構築するという手法によりその実験精神は極限に達し、映画のタイトルを引用したオリジナル楽曲による架空のサウンドトラック的なコンセプトアルバムとして語られることの多い作品となっています。
本作ではまだシーケンサーは導入されてはいないものの、サンプリング&コラージュの手法を取り入れた実験的サウンドは当時のニューウェーブシーンにおいても先進性を感じさせるものであり、その類稀な音楽センスが本作において一気に開花した感があります。ニューウェーブといってもスタイリッシュさは感じさせずあくまでロック的な曲調が基本であり、その原曲をエフェクトやフレーズの再構築で新たな別の楽曲に作り上げるというダブ的手法には、一種のマッドサイエンティスト的な狂気を感じさせます。しかしそこには新たなサウンド手法とそれを実現する最先端の機材とその応用を極力楽しむ姿勢が見られることも事実です。それが本作を彼らの作品の中でも最も斬新で攻撃的、そしてニューウェーブ精神にあふれた名盤として評価される理由なのではないかと思えるのです。その後彼らはレコード会社移籍を機にシーケンサーMC-4を導入し、テクノポップへと進化し、ますます実験精神を発揮していくことになります。
<Favorite Songs>
・「彼女について知っている二、三の事柄」
3拍子のリズムに乗るスパイダンディな曲調のシングルカット曲。ギターのちょっとした壊れ具合にニューウェーブ精神を感じます。しつこいI love youの繰り返しにも本作全体に漂う狂気を垣間見せています。
・「アルファビル」
フレーズコラージュを散りばめたスピード感のある狂気の楽曲。ただでさえはっちゃけたような演奏に鈴木慶一のしゃくり上げヴォーカルが自由奔放に暴れ回っています。それでも混沌とはならずにしっかり楽曲としてまとめ上げるところが彼らのセンスの賜物でしょう。
・「水の中のナイフ」
本作の中でもわかりやすいタイプの楽曲。SE的音色と乾いたギターサウンドとアヴァンギャルドなフレーズが目立つものの、他の楽曲に比べると実験性は抑え気味で、比較的聴きやすく仕上げられています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (細かい音の1つ1つに無機質で実験的な精神を感じる)
・メロディ ★ (基本POPSの体を成しているがキャッチーではない)
・リズム ★ (冒険的な楽曲の中で前衛性を感じるものの音に軽さも)
・曲構成 ★★★ (普通の曲は少ないが全体的にコンセプチュアルな構成)
・個性 ★★★ (ただのロックバンドではない強烈な個性を手に入れる)
総合評点: 7点
MOON RIDERS

<members>
鈴木慶一:vocal・manual effects
岡田徹:keyboards
武川雅寛:violin・vocal
橿渕哲郎:drums
白井良明:guitars
鈴木博文:electric bass
1.「彼女について知っている二、三の事柄」
詞:鈴木博文 曲:鈴木慶一 編:MOON RIDERS
2.「第三の男」 曲:Anton Karas 編:MOON RIDERS
3.「無防備都市」 詞・曲:鈴木博文 編:MOON RIDERS
4.「アルファビル」 詞・曲:白井良明 編:MOON RIDERS
5.「24時間の情事」 詞:橿渕哲郎・鈴木慶一 曲・編:MOON RIDERS
6.「インテリア」 詞・曲:鈴木博文 編:MOON RIDERS
7.「沈黙」 詞:鈴木博文 曲:岡田徹 編:MOON RIDERS
8.「幕間」 詞・曲:佐藤奈々子 編:MOON RIDERS
9.「太陽の下の18才」
詞:Luciano Salce(訳詞:音羽たかし) 曲:Ennio Morricone
編:MOON RIDERS
10.「水の中のナイフ」 詞:鈴木博文 曲:岡田徹 編:MOON RIDERS
11.「ロリータ・ヤ・ヤ」 曲:Nelson Riddle・Bob Harris 編:MOON RIDERS
12.「狂ったバカンス」 詞・曲:橿渕哲郎 編:MOON RIDERS
13.「欲望」 詞・曲:鈴木慶一 編:MOON RIDERS
14.「大人は判ってくれない」 詞:鈴木慶一 曲・編:MOON RIDERS
15.「大都会交響楽」 曲・編:MOON RIDERS
<support musician>
佐藤奈々子:vocal・chorus
Anton Karas:zither
国吉静治:tenor sax
チャーリー中田:chorus
櫻林美佐:lolita
produced by MOON RIDERS
engineered by 田中信一
● 新たな発想でみずからの楽曲を再構築!コラージュ感覚が刺激的で姿勢がテクノな実験作
1970年半ばから活動する日本最古のロックバンドであるMOONRIDERSは、4thアルバム「ヌーベル・バーグ」においていち早くシンセサイザーを導入しその先見性を垣間見せていましたが、世界を席巻するニューウェーブブームに敏感に反応する形で79年「モダーン・ミュージック」でDEVOスタイルに身を包み、完全胃ニューウェーブへサウンドを転換しました。そしてその勢いのまま翌80年には本作がリリースされるわけですが、既存の楽曲を換骨奪胎して再構築するという手法によりその実験精神は極限に達し、映画のタイトルを引用したオリジナル楽曲による架空のサウンドトラック的なコンセプトアルバムとして語られることの多い作品となっています。
本作ではまだシーケンサーは導入されてはいないものの、サンプリング&コラージュの手法を取り入れた実験的サウンドは当時のニューウェーブシーンにおいても先進性を感じさせるものであり、その類稀な音楽センスが本作において一気に開花した感があります。ニューウェーブといってもスタイリッシュさは感じさせずあくまでロック的な曲調が基本であり、その原曲をエフェクトやフレーズの再構築で新たな別の楽曲に作り上げるというダブ的手法には、一種のマッドサイエンティスト的な狂気を感じさせます。しかしそこには新たなサウンド手法とそれを実現する最先端の機材とその応用を極力楽しむ姿勢が見られることも事実です。それが本作を彼らの作品の中でも最も斬新で攻撃的、そしてニューウェーブ精神にあふれた名盤として評価される理由なのではないかと思えるのです。その後彼らはレコード会社移籍を機にシーケンサーMC-4を導入し、テクノポップへと進化し、ますます実験精神を発揮していくことになります。
<Favorite Songs>
・「彼女について知っている二、三の事柄」
3拍子のリズムに乗るスパイダンディな曲調のシングルカット曲。ギターのちょっとした壊れ具合にニューウェーブ精神を感じます。しつこいI love youの繰り返しにも本作全体に漂う狂気を垣間見せています。
・「アルファビル」
フレーズコラージュを散りばめたスピード感のある狂気の楽曲。ただでさえはっちゃけたような演奏に鈴木慶一のしゃくり上げヴォーカルが自由奔放に暴れ回っています。それでも混沌とはならずにしっかり楽曲としてまとめ上げるところが彼らのセンスの賜物でしょう。
・「水の中のナイフ」
本作の中でもわかりやすいタイプの楽曲。SE的音色と乾いたギターサウンドとアヴァンギャルドなフレーズが目立つものの、他の楽曲に比べると実験性は抑え気味で、比較的聴きやすく仕上げられています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (細かい音の1つ1つに無機質で実験的な精神を感じる)
・メロディ ★ (基本POPSの体を成しているがキャッチーではない)
・リズム ★ (冒険的な楽曲の中で前衛性を感じるものの音に軽さも)
・曲構成 ★★★ (普通の曲は少ないが全体的にコンセプチュアルな構成)
・個性 ★★★ (ただのロックバンドではない強烈な個性を手に入れる)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「GUTS FOR LOVE」 blue tonic
「GUTS FOR LOVE」(1988 テイチク)
blue tonic

<members>
井上富雄:vocal・guitar
田中元尚:drums
冷牟田竜之:bass・chorus
木原龍太郎:keyboards
1.「Start of love」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
2.「激しく長い夜」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
3.「A girl like you」 詞・曲:Felix Cavaliere・Eddie Brigati 編:blue tonic
4.「パラダイス」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
5.「After wave」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
6.「Happy ending」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
7.「真昼のビジョン」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
8.「Faded violet」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
9.「Groovy day」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
10.「Last dream in blue」 曲:木原龍太郎 編:blue tonic
<support musician>
Steve Nieve:organ・vibraphone・piano
後藤輝夫:tenor sax
桜井鉄太郎:harmonica・electric sitar・chorus
produced by 桜井鉄太郎
mixing engineered by 大川正義
recording engineered by 三上義英・薮原正史
● 漂う大人のムード!格段にメロディ・サウンドとも進歩を遂げたプレ渋谷系バンドの快心作
The Roosterzのベーシスト井上富雄が結成したホワイトソウルな4人組バンドblue tonicは、2枚の12インチシングルとアルバム「Moods Of Modern」をリリースし順調に活動を続けていましたが、渋谷系前夜ともいうべき横ノリのグルーヴィーなサウンドは当時では余り見られなかった音楽性であり、それなりに個性的ではあったものの確固たる知名度を得るには至りませんでした。しかし、そのスタイリッシュな演奏と楽曲のテンションは一部で評価され、1988年には2ndアルバムである本作をリリースすることになります。まだ平面的であった1stアルバムのサウンドから、サックスに導入により大人のムードを醸し出すダンディーな楽曲による玄人はだしなサウンドが目立つようになった本作は、これまでの作品より格段に深みを増した傑作となっています。
都会の夜によく似合うシティポップとしても十分過ぎるほど楽しむことができる本作ですが、生演奏主体の楽曲にあってギターやベースが前面に出ていると思いきや、実はサウンド面でイニシアチブをとっているのは木原龍太郎のオルガンやシンセなどのキーボードです。ブラスセクションをシンセで代用しているためか生のグルーヴの中にほどよくデジタルな成分が注入され、そのバランスがちょうどよく作用しているように感じられます。そしてこうしたサウンドを生かすのが、井上富雄によって書かれている非常にキャッチーなメロディであり、前作でもそのポップセンスは垣間見せていましたが、本作では才能が完全に開花したかのように口当たりの良いフレーズを連発しています。後に渋谷系の牽引役となる桜井鉄太郎のプロデュース力のおかげもあり、blue tonicはこのように美しいメロディとスマートで都会派なサウンドを持ち合わせた良質なグループでしたが、それでも時代のタイミングというべきか、登場するのが少し早かったある意味不遇なバンドと言えるでしょう。本作のようなクオリティであればもっとスターダムにのし上がる可能性はあったはずだと思うのです。
<Favorite Songs>
・「Start of love」
泣きのサックスが入るイントロから一気に流れをつかんだオープニングナンバー。オルガンやシンセブラスなどが随所に光る秀作ですが、何よりもメロディの構成に隙がないポップ性抜群の楽曲であることが嬉しいです。後半の転調から入ってくるサックスとフェイクがスタイリッシュ過ぎます。
・「激しく長い夜」
Steve Nieveのピアノが活躍するこれもテンションの高いグルーヴナンバー。イントロや間奏のフレーズのタイミングが絶妙で、ピアノソロ→シンセソロと続いて最初に戻る、といったフレーズのまとめ方にセンスを感じます。この楽曲もラストのフェイクからギターソロ、そしてエンディングがキマリ過ぎです。
・「Last dream in blue」
ラストを飾る木原龍太郎のダンディ&ムーディーなインスト。シンセによるブラスとオルガンという本作でも中心となったサウンドが全面的にフィーチャーされ、ギターとサックスがそこに色を加えることによって最後のインストにしてゴージャズな名曲に仕上がっています。
<評点>
・サウンド ★★★ (手弾きのシンセブラスのフレーズが随所で光る)
・メロディ ★★★★ (基本的にこのバンドは美メロ重視であることがわかる)
・リズム ★★★ (ダンサブルなリズムワークは彼らの個性の1つ)
・曲構成 ★★★ (捨て曲はなく安定感抜群の構成で最後のインストも◯)
・個性 ★★★ (最後のスタジオ盤にしてポテンシャルを十二分に発揮)
総合評点: 8点
blue tonic

<members>
井上富雄:vocal・guitar
田中元尚:drums
冷牟田竜之:bass・chorus
木原龍太郎:keyboards
1.「Start of love」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
2.「激しく長い夜」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
3.「A girl like you」 詞・曲:Felix Cavaliere・Eddie Brigati 編:blue tonic
4.「パラダイス」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
5.「After wave」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
6.「Happy ending」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
7.「真昼のビジョン」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
8.「Faded violet」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
9.「Groovy day」 詞・曲:井上富雄 編:blue tonic
10.「Last dream in blue」 曲:木原龍太郎 編:blue tonic
<support musician>
Steve Nieve:organ・vibraphone・piano
後藤輝夫:tenor sax
桜井鉄太郎:harmonica・electric sitar・chorus
produced by 桜井鉄太郎
mixing engineered by 大川正義
recording engineered by 三上義英・薮原正史
● 漂う大人のムード!格段にメロディ・サウンドとも進歩を遂げたプレ渋谷系バンドの快心作
The Roosterzのベーシスト井上富雄が結成したホワイトソウルな4人組バンドblue tonicは、2枚の12インチシングルとアルバム「Moods Of Modern」をリリースし順調に活動を続けていましたが、渋谷系前夜ともいうべき横ノリのグルーヴィーなサウンドは当時では余り見られなかった音楽性であり、それなりに個性的ではあったものの確固たる知名度を得るには至りませんでした。しかし、そのスタイリッシュな演奏と楽曲のテンションは一部で評価され、1988年には2ndアルバムである本作をリリースすることになります。まだ平面的であった1stアルバムのサウンドから、サックスに導入により大人のムードを醸し出すダンディーな楽曲による玄人はだしなサウンドが目立つようになった本作は、これまでの作品より格段に深みを増した傑作となっています。
都会の夜によく似合うシティポップとしても十分過ぎるほど楽しむことができる本作ですが、生演奏主体の楽曲にあってギターやベースが前面に出ていると思いきや、実はサウンド面でイニシアチブをとっているのは木原龍太郎のオルガンやシンセなどのキーボードです。ブラスセクションをシンセで代用しているためか生のグルーヴの中にほどよくデジタルな成分が注入され、そのバランスがちょうどよく作用しているように感じられます。そしてこうしたサウンドを生かすのが、井上富雄によって書かれている非常にキャッチーなメロディであり、前作でもそのポップセンスは垣間見せていましたが、本作では才能が完全に開花したかのように口当たりの良いフレーズを連発しています。後に渋谷系の牽引役となる桜井鉄太郎のプロデュース力のおかげもあり、blue tonicはこのように美しいメロディとスマートで都会派なサウンドを持ち合わせた良質なグループでしたが、それでも時代のタイミングというべきか、登場するのが少し早かったある意味不遇なバンドと言えるでしょう。本作のようなクオリティであればもっとスターダムにのし上がる可能性はあったはずだと思うのです。
<Favorite Songs>
・「Start of love」
泣きのサックスが入るイントロから一気に流れをつかんだオープニングナンバー。オルガンやシンセブラスなどが随所に光る秀作ですが、何よりもメロディの構成に隙がないポップ性抜群の楽曲であることが嬉しいです。後半の転調から入ってくるサックスとフェイクがスタイリッシュ過ぎます。
・「激しく長い夜」
Steve Nieveのピアノが活躍するこれもテンションの高いグルーヴナンバー。イントロや間奏のフレーズのタイミングが絶妙で、ピアノソロ→シンセソロと続いて最初に戻る、といったフレーズのまとめ方にセンスを感じます。この楽曲もラストのフェイクからギターソロ、そしてエンディングがキマリ過ぎです。
・「Last dream in blue」
ラストを飾る木原龍太郎のダンディ&ムーディーなインスト。シンセによるブラスとオルガンという本作でも中心となったサウンドが全面的にフィーチャーされ、ギターとサックスがそこに色を加えることによって最後のインストにしてゴージャズな名曲に仕上がっています。
<評点>
・サウンド ★★★ (手弾きのシンセブラスのフレーズが随所で光る)
・メロディ ★★★★ (基本的にこのバンドは美メロ重視であることがわかる)
・リズム ★★★ (ダンサブルなリズムワークは彼らの個性の1つ)
・曲構成 ★★★ (捨て曲はなく安定感抜群の構成で最後のインストも◯)
・個性 ★★★ (最後のスタジオ盤にしてポテンシャルを十二分に発揮)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「HELLO WORLD:)」 戸田誠司
「HELLO WORLD:)」 (1995 シックスティ)
戸田誠司: computer programming・synthesizer・vox・guitar

<electric instruments>
Alfa Juno 1&2・System 100M・System 700M・SH-2・TB-303・TR-909・TR-808・MKS-70・JD-800・Sample Cell II・Audio Media II・S1000 ・DR4D・Oscar・SY99・FB-01・MAQ3/16・Studio Vocalist・Moog・M1R・Wave Station A/D・Micro Wave・Q-Sound System
1.「HELLO WORLD:)」 詞・曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
2.「REALITY ENGINE」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
3.「MEMORY」 詞・曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
4.「SMALL TALK」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
5.「MOSAIC」 曲・編:戸田誠司・渡部高士
6.「DEFAULT」 詞:掛川陽介 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
7.「RAY TRACE」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
8.「WIZ」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
9.「PONTA DE AREIA」 詞・曲:Milton Nasciment 編:戸田誠司・渡部高士
10.「TELE-EXISTENCE」 詞:戸田誠司・掛川陽介 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
<support musician>
渡部高士:synthesizer・computer programming
Michele Brooks:talk
produced by 戸田誠司
mixing engineered by 飯尾芳史・渡部高士
recording engineered by 飯尾芳史
● PCを駆使したPOPSの先駆者による純度の高いプログラミングサウンドが期待を裏切らないソロデビュー作
SHI-SHONEN、REAL FISH、そしてFAIRCHILDと一貫してバンドサウンドにコンピュータープログラミングを融合させたポストニューウェーブPOPSを繰り広げてきた稀代のクリエイター戸田誠司は、1993年のFAIRCHILD解散後は一旦アーティスト活動としてのペースを落とし、ゲームプロデュースも手掛けるなど音楽以外にも活動の幅を広げていきます。しかしほどなく自身のソロアルバムの制作にとりかかり、95年には純粋なプログラミングのみで作られた本作においてソロデビューを果たします。本作は彼が得意としてきたコンピューターベースの打ち込みスタイルの究極の姿ともいうべきデジタルの肌触りが感じられる仕上がりになっており、90年代半ばという時代にあって遂に妥協しない彼の音楽性が本領発揮された作品とも言えるのではないでしょうか。
全面的にPCベースで制作された作品というだけあって音源だけでなくCD-ROMとの2枚組仕様となっており(SHI-SHONENやFAIRCHILDの貴重な資料価値あり)、時代の先取り感はただものではありません。90年代以降のクラブ系テクノミュージックの隆盛によって、こうしたサウンドはダンサブル(クラブ仕様)でなければならないような風潮がありましたが、本作はどちらかといえば音色と空間処理で聴かせるようなサウンドであり、アップテンポの楽曲であってもPCベースであるがゆえの「軽さ」やデジタル特有の近未来感が前面に押し出されているため、テクノというカテゴリーに分類されないしたたかさを持ち合わせているように思います。サウンドとしては90年代特有のTB-303系のアシッドシーケンスやフィルター操作によるエフェクト効果が施されたミニマル系シーケンスなどを多用し時代を感じさせますが、さすがはコンピュータープログラミングPOPSの職人芸は健在で、その神経質で緻密なフレーズ構成は彼の真骨頂と言えるでしょう。また、後にoverrocketで名を馳せるエンジニアの渡部高士によるサポートも功を奏しており、こうした若手との仕事によって相互影響がもたらされた結果、錚々たるキャリアに恥じない遅過ぎたソロアルバムが完成できたのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「HELLO WORLD:)」
本作のテーマソングともいうべき純度の高いコンピューターポップの金字塔。あえてダンサブルというよりはファンタジックな音づくりがなされており、電脳空間を這いずり回るような高速シーケンスはそのまま彼の個性として捉えるべきでしょう。
・「SMALL TALK」
戸田誠司のメロディメイカーたるゆえんが発揮されたインスト曲。彼の強みはこうした電子音まみれな楽曲であっても決してマニアックにはならずに、気の利いたフレーズでポップに仕上げられるセンスにあると思います。
・「PONTA DE AREIA」
Milton Nascimentの名曲をドリーミーなエレクトリックポップにリメイク。無機質なプログラミングサウンドなのにどこか温かい雰囲気に包まれます。特に間奏の小刻みなシーケンスによるコード感覚と未来感はこれぞアレンジの妙というものではないでしょうか。
<評点>
・サウンド ★★ (緻密に作られているがフルデジタルで平面的に)
・メロディ ★ (メロディのイギリスっぽさが少し鼻につくが・・)
・リズム ★ (90年代らしいチープで軽いリズムトラックはご愛嬌)
・曲構成 ★ (中盤少し中だるみを感じるのはインストの多さからか)
・個性 ★★ (ソロになったとしても戸田作品とわかってしまう)
総合評点: 6点
戸田誠司: computer programming・synthesizer・vox・guitar

<electric instruments>
Alfa Juno 1&2・System 100M・System 700M・SH-2・TB-303・TR-909・TR-808・MKS-70・JD-800・Sample Cell II・Audio Media II・S1000 ・DR4D・Oscar・SY99・FB-01・MAQ3/16・Studio Vocalist・Moog・M1R・Wave Station A/D・Micro Wave・Q-Sound System
1.「HELLO WORLD:)」 詞・曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
2.「REALITY ENGINE」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
3.「MEMORY」 詞・曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
4.「SMALL TALK」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
5.「MOSAIC」 曲・編:戸田誠司・渡部高士
6.「DEFAULT」 詞:掛川陽介 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
7.「RAY TRACE」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
8.「WIZ」 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
9.「PONTA DE AREIA」 詞・曲:Milton Nasciment 編:戸田誠司・渡部高士
10.「TELE-EXISTENCE」 詞:戸田誠司・掛川陽介 曲:戸田誠司 編:戸田誠司・渡部高士
<support musician>
渡部高士:synthesizer・computer programming
Michele Brooks:talk
produced by 戸田誠司
mixing engineered by 飯尾芳史・渡部高士
recording engineered by 飯尾芳史
● PCを駆使したPOPSの先駆者による純度の高いプログラミングサウンドが期待を裏切らないソロデビュー作
SHI-SHONEN、REAL FISH、そしてFAIRCHILDと一貫してバンドサウンドにコンピュータープログラミングを融合させたポストニューウェーブPOPSを繰り広げてきた稀代のクリエイター戸田誠司は、1993年のFAIRCHILD解散後は一旦アーティスト活動としてのペースを落とし、ゲームプロデュースも手掛けるなど音楽以外にも活動の幅を広げていきます。しかしほどなく自身のソロアルバムの制作にとりかかり、95年には純粋なプログラミングのみで作られた本作においてソロデビューを果たします。本作は彼が得意としてきたコンピューターベースの打ち込みスタイルの究極の姿ともいうべきデジタルの肌触りが感じられる仕上がりになっており、90年代半ばという時代にあって遂に妥協しない彼の音楽性が本領発揮された作品とも言えるのではないでしょうか。
全面的にPCベースで制作された作品というだけあって音源だけでなくCD-ROMとの2枚組仕様となっており(SHI-SHONENやFAIRCHILDの貴重な資料価値あり)、時代の先取り感はただものではありません。90年代以降のクラブ系テクノミュージックの隆盛によって、こうしたサウンドはダンサブル(クラブ仕様)でなければならないような風潮がありましたが、本作はどちらかといえば音色と空間処理で聴かせるようなサウンドであり、アップテンポの楽曲であってもPCベースであるがゆえの「軽さ」やデジタル特有の近未来感が前面に押し出されているため、テクノというカテゴリーに分類されないしたたかさを持ち合わせているように思います。サウンドとしては90年代特有のTB-303系のアシッドシーケンスやフィルター操作によるエフェクト効果が施されたミニマル系シーケンスなどを多用し時代を感じさせますが、さすがはコンピュータープログラミングPOPSの職人芸は健在で、その神経質で緻密なフレーズ構成は彼の真骨頂と言えるでしょう。また、後にoverrocketで名を馳せるエンジニアの渡部高士によるサポートも功を奏しており、こうした若手との仕事によって相互影響がもたらされた結果、錚々たるキャリアに恥じない遅過ぎたソロアルバムが完成できたのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「HELLO WORLD:)」
本作のテーマソングともいうべき純度の高いコンピューターポップの金字塔。あえてダンサブルというよりはファンタジックな音づくりがなされており、電脳空間を這いずり回るような高速シーケンスはそのまま彼の個性として捉えるべきでしょう。
・「SMALL TALK」
戸田誠司のメロディメイカーたるゆえんが発揮されたインスト曲。彼の強みはこうした電子音まみれな楽曲であっても決してマニアックにはならずに、気の利いたフレーズでポップに仕上げられるセンスにあると思います。
・「PONTA DE AREIA」
Milton Nascimentの名曲をドリーミーなエレクトリックポップにリメイク。無機質なプログラミングサウンドなのにどこか温かい雰囲気に包まれます。特に間奏の小刻みなシーケンスによるコード感覚と未来感はこれぞアレンジの妙というものではないでしょうか。
<評点>
・サウンド ★★ (緻密に作られているがフルデジタルで平面的に)
・メロディ ★ (メロディのイギリスっぽさが少し鼻につくが・・)
・リズム ★ (90年代らしいチープで軽いリズムトラックはご愛嬌)
・曲構成 ★ (中盤少し中だるみを感じるのはインストの多さからか)
・個性 ★★ (ソロになったとしても戸田作品とわかってしまう)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「THE WORDS」 NOVELA
「THE WORDS」(1986 キング)
NOVELA

<members>
宮本敦:voice
平山照継:guitar・keyboards
岡本優史:keyboards
笹井りゅうじ:bass
西田竜一:drums
1.「MY LOVE IN YOU」 詞・曲:平山照継 編:NOVELA
2.「BEGAN THE DAY FOR END」 詞:平山照継 曲:西田竜一・平山照継 編:NOVELA
3.「傾く日射しに・・・」 詞:宮本敦 曲:宮本敦・岡本優史 編:NOVELA
4.「GLOOMY PAIN」 詞:宮本敦 曲:岡本優史 編:NOVELA
5.「THE WORDS」 詞:平山照継 曲:岡本優史 編:NOVELA
6.「REVERIE」 詞:平山照継 曲:笹井りゅうじ 編:NOVELA
7.「LABYRINTH」 詞・曲:平山照継 編:NOVELA
8.「GOING TO THE KINGDOM」 詞:平山照継 曲:笹井りゅうじ 編:NOVELA
<support musician>
中林アキ:poem reading
sound produced by NOVELA
mixing engineered by Michael Zimmerling
recording engineered by 今野健司
● ジャパニーズプログレの雄の末期を飾った試行錯誤のニューウェーブミックスサウンド集大成アルバム
関西のプログレッシブバンドSHEHERAZADEのメンバーであった五十嵐久勝と平山照継を中心に結成された、日本で初めてメジャーフィールドで活躍したプログレ界の雄NOVELAは、80年代前半に「魅惑劇」など評価の高い作品をリリースしていましたが、寄せ集め的なバンド構成のためメンバー脱退が相次ぎ、遂にはヴォーカルの五十嵐とサウンドの中心的な役割を担っていたキーボードの永川敏郎まで脱退、遂にオリジナルメンバーは平山ただ1人となってしまいました。しかし平山は新しいヴォーカルとキーボードを加入させ、そしてプログレスタイルからもとわかりやすくポップで親しみやすいサウンドに方針転換し1985年にアルバム「Brain Of Balance(均衡の脳)」をリリース、ポストニューウェーブに狙いを定めたその作品は従来のファンの中でも賛否両論を巻き起こしました。それまでのNOVELAとは全く別物と呼ばれるまでの変化を遂げた彼らは、それでも今までのイメージを払拭するかのように次作の制作にとりかかり、翌86年に彼ら最後のオリジナル作品となる本作をリリースします。
前作「Brain Of Balance」は余りにも急激なニューウェーブの傾倒の割には楽曲としての完成度がいまいちに感じられましたが、本作ではニューウェーブの香りを漂わせながらも持ち前のプログレ的な展開もフィーチャーして、プログレバンドの生命線である幽玄で壮大な世界観を生み出すことに成功しています。楽曲の長さは飽きさせないようにコンパクトにまとめられており(とはいえ5分近くになっていますが)、POPSとしての楽曲構成の中に劇的な展開を見せる間奏部分(なんといってもシンセソロの活躍が嬉しい)を挿入することでプログレ魂を開放しているような印象を受けます。それにしても本作は各フレーズの輪郭が際立って聴こえるようなイメージがありますが、ミックスを布袋寅泰やURBAN DANCEを手掛けたMichael Zimmerlingが手掛けており、その尖った音響術とセンスに納得させられます。結局このニューウェーブ路線は古くからのファンの心はつかめず新たなファンの獲得にも至らず、NOVELAの活動は終止符を打たれることになりますが、本作はプログレ時代の栄光を意識しなければもっと評価されても良い作品なのではないかと個人的には思います。
<Favorite Songs>
・「MY LOVE IN YOU」
攻撃的なドラムのイントロからオケヒットをふんだんに使ったシンセリフが楽しいオープニングナンバー。手弾きにより彩られたシンセフレーズもキレがあり、ハンドクラップや間奏の逆回転音など音響面でも冒険心が感じられます。
・「GLOOMY PAIN」
スピード感で勝負するハードプログレナンバー。とはいえ楽曲の長さは適度に凝縮され非常に聴きやすくなっています。間奏の複雑なフレーズからの豪快な早弾きシンセソロは本作における聴き所の1つです。
・「REVERIE」
冷んやりとしたデジタル系シンセフレーズと音の粒が立ったギターが絡む怜悧な印象の楽曲。安定したリズム隊も含め演奏力が前面に押し出されたスマートなニューウェーブ(+ちょっとプログレ)な好楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (演奏面では頑張った印象であるが目新しさもないか)
・メロディ ★ (ポップにシフトしたとはいえ気難しさは残る)
・リズム ★★ (ゲートリバーブのドラム音はキレが感じられるが・・)
・曲構成 ★ (サウンド面は凝るもののキラー曲がもう少しあれば)
・個性 ★ (過去の歴史を意識しないとB級ニューウェーブバンドに)
総合評点: 6点
NOVELA

<members>
宮本敦:voice
平山照継:guitar・keyboards
岡本優史:keyboards
笹井りゅうじ:bass
西田竜一:drums
1.「MY LOVE IN YOU」 詞・曲:平山照継 編:NOVELA
2.「BEGAN THE DAY FOR END」 詞:平山照継 曲:西田竜一・平山照継 編:NOVELA
3.「傾く日射しに・・・」 詞:宮本敦 曲:宮本敦・岡本優史 編:NOVELA
4.「GLOOMY PAIN」 詞:宮本敦 曲:岡本優史 編:NOVELA
5.「THE WORDS」 詞:平山照継 曲:岡本優史 編:NOVELA
6.「REVERIE」 詞:平山照継 曲:笹井りゅうじ 編:NOVELA
7.「LABYRINTH」 詞・曲:平山照継 編:NOVELA
8.「GOING TO THE KINGDOM」 詞:平山照継 曲:笹井りゅうじ 編:NOVELA
<support musician>
中林アキ:poem reading
sound produced by NOVELA
mixing engineered by Michael Zimmerling
recording engineered by 今野健司
● ジャパニーズプログレの雄の末期を飾った試行錯誤のニューウェーブミックスサウンド集大成アルバム
関西のプログレッシブバンドSHEHERAZADEのメンバーであった五十嵐久勝と平山照継を中心に結成された、日本で初めてメジャーフィールドで活躍したプログレ界の雄NOVELAは、80年代前半に「魅惑劇」など評価の高い作品をリリースしていましたが、寄せ集め的なバンド構成のためメンバー脱退が相次ぎ、遂にはヴォーカルの五十嵐とサウンドの中心的な役割を担っていたキーボードの永川敏郎まで脱退、遂にオリジナルメンバーは平山ただ1人となってしまいました。しかし平山は新しいヴォーカルとキーボードを加入させ、そしてプログレスタイルからもとわかりやすくポップで親しみやすいサウンドに方針転換し1985年にアルバム「Brain Of Balance(均衡の脳)」をリリース、ポストニューウェーブに狙いを定めたその作品は従来のファンの中でも賛否両論を巻き起こしました。それまでのNOVELAとは全く別物と呼ばれるまでの変化を遂げた彼らは、それでも今までのイメージを払拭するかのように次作の制作にとりかかり、翌86年に彼ら最後のオリジナル作品となる本作をリリースします。
前作「Brain Of Balance」は余りにも急激なニューウェーブの傾倒の割には楽曲としての完成度がいまいちに感じられましたが、本作ではニューウェーブの香りを漂わせながらも持ち前のプログレ的な展開もフィーチャーして、プログレバンドの生命線である幽玄で壮大な世界観を生み出すことに成功しています。楽曲の長さは飽きさせないようにコンパクトにまとめられており(とはいえ5分近くになっていますが)、POPSとしての楽曲構成の中に劇的な展開を見せる間奏部分(なんといってもシンセソロの活躍が嬉しい)を挿入することでプログレ魂を開放しているような印象を受けます。それにしても本作は各フレーズの輪郭が際立って聴こえるようなイメージがありますが、ミックスを布袋寅泰やURBAN DANCEを手掛けたMichael Zimmerlingが手掛けており、その尖った音響術とセンスに納得させられます。結局このニューウェーブ路線は古くからのファンの心はつかめず新たなファンの獲得にも至らず、NOVELAの活動は終止符を打たれることになりますが、本作はプログレ時代の栄光を意識しなければもっと評価されても良い作品なのではないかと個人的には思います。
<Favorite Songs>
・「MY LOVE IN YOU」
攻撃的なドラムのイントロからオケヒットをふんだんに使ったシンセリフが楽しいオープニングナンバー。手弾きにより彩られたシンセフレーズもキレがあり、ハンドクラップや間奏の逆回転音など音響面でも冒険心が感じられます。
・「GLOOMY PAIN」
スピード感で勝負するハードプログレナンバー。とはいえ楽曲の長さは適度に凝縮され非常に聴きやすくなっています。間奏の複雑なフレーズからの豪快な早弾きシンセソロは本作における聴き所の1つです。
・「REVERIE」
冷んやりとしたデジタル系シンセフレーズと音の粒が立ったギターが絡む怜悧な印象の楽曲。安定したリズム隊も含め演奏力が前面に押し出されたスマートなニューウェーブ(+ちょっとプログレ)な好楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (演奏面では頑張った印象であるが目新しさもないか)
・メロディ ★ (ポップにシフトしたとはいえ気難しさは残る)
・リズム ★★ (ゲートリバーブのドラム音はキレが感じられるが・・)
・曲構成 ★ (サウンド面は凝るもののキラー曲がもう少しあれば)
・個性 ★ (過去の歴史を意識しないとB級ニューウェーブバンドに)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「ELECTRIC CAFE」 KRAFTWERK
「ELECTRIC CAFE」(1986 EMI)
KRAFTWERK

<members>
Ralf Hutter:voice・vocoder・keyboards・electronics
Florian Schneider:vocoder・speech synthesis・electronics
Karl Bartos:voice・electronics drums
Wolfgang Flur:electronics percussion
<electric instruments>
E-mu Emulator II・LINN LM-1・Roland TR-808・Synclavier・YAMAHA DX-7
1.「BOING BOOM TSCHAK」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
2.「TECHNO POP」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos/Emil Schult
3.「MUSIQUE NON STOP」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
4.「THE TELEPHONE CALL」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
5.「SEX OBJECT」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
6.「ELECTRIC CAFE」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos/Maxime Schmitt
produced by KRAFTWERK
mixing engineered by KRAFTWERK・Francois Kevorkian・Ralf Hutter・Ron Saint Germain
recording engineered by Joachim Dehmann・Henning Schmitz・Bill Miranda
● PCMドラムとFMシンセサウンドで当時最先端を目指すも独自のロボ的世界観は変わらないテクノゴッドの傑作
70年代にマニアックで前衛的な存在であった電子音楽をPOPSの範疇で語ることを可能にしたテクノ界の神的グループKRAFTWERKは、1981年のアルバム「Computer World」において確かなコンセプトとストイックなまでの機械っぷりでその健在ぶりをアピールしましたが、その後アルバム「TECHNO POP」の制作にとりかかるものの83年リリースの先行シングル「Tour de France」後はその活動のペースを落とし寡作のグループとなります。その間にアルバム「TECHNO POP」はいくつかの変遷を経て「ELECTRIC CAFE」とタイトルを変え、先行12インチ「MUSIQUE NON STOP」を従えて86年にやっとのことでリリースにこぎ着けました。電子機材の進化は日進月歩で彼らが歩みを止めている間にデジタルシンセが瞬く間に普及し、ドラム音色はリズムボックス的なものからPCMサウンドを主としたパワフルなものに進化しており、本作においては今まで時代の先端を歩んでいた彼らの音楽性とは異なり、時代の空気を上手く取り込んだ彼らなりのテクノロジーPOPSへの回答といった趣の作品と解釈できると思います。
KRAFTWERK特有の無機質でミニマルな構成はこれまでの作品通りですが、過去の作品とは劇的なサウンドの変化を感じることができます。まずはDX-7を代表するデジタルシンセの大胆な導入、そしてアナログとPCMを織り交ぜてゲートリバーブを効かせたクッキリしたリズムトラックが、その変化の要因と言えるでしょう。もちろん彼らの特徴の1つとも言えるマシン&ロボボイスは本作でも効果的かつ唯一無二の存在感を生み出していますが、本作においての主役は何といってもドラムサウンドとそのプログラミングにほかなりません。PCMだからこそパワフルに前へ出てくる、そしてノングルーヴの打ち込みだからこそ生まれるダイナミクスはこれまでの作品になかったもので、サンプラーを駆使したストリングスやスラップベース、ボイスサンプルが表面的には目立っているとしても、このリズムトラックなしには成立するのは難しいと思わせるほど、無機質なKRAFTWERKの楽曲に力強く正確な、そしてデジタルファンキーなこのリズムは素晴らしい相性を感じさせてくれます。時代が追いついたともいえる本作から次作まではかなり間があくことになりますが、それは彼らが電子音楽POPSの流れを先導する立場からその流れの中で柔軟においしい部分を取り入れていく作風になっていく過程であり、本作はこうした転換のきっかけとなった記念碑的な作品とも言えるかもしれません(2009年に本来のタイトル「TECHNO POP」を冠して一部リニューアルしてリマスター再発されました。音質が素晴らしい!)。
<Favorite Songs>
・「TECHNO POP」
タイトルチューンとなるはずだった唯我独尊を感じさせる自信満々のタイトルを冠した楽曲。前後の曲とノンストップの構成でありながら何とも言えない味のあるRalfのヴォーカルやメタリックなリズムトラック、エフェクティブな空間処理など、あくまでエレクトリックな面で「聴かせる」内容です。
・「THE TELEPHONE CALL」
彼らの歴史の中でも最もポップと言えるこれぞテクノロジーPOPSの鑑的な名曲。唯一Karl Bartosがヴォーカルをとり神経質なフロントマン2人よりもポップセンスに優れたKarlが主導権をとったからこそ生まれるPOPSとしての旨味が感じられます。機械だからこそ生み出せるマシナリーファンクなリズムと世界各地の電話サンプリングのアイデアが光ります。
・「SEX OBJECT」
ストリングスやベースなどヒンヤリした空気感の中でも生っぽい要素も含ませた彼らにとっては異色の楽曲。特に奇をてらわない剥き出しのプリセットかと思わせる単純な音色を使用していても、そのストイックな世界観は失わないという典型的な楽曲と言えます。
<評点>
・サウンド ★★★★★(クッキリした輪郭と絶妙な音の空間処理が素晴らしい)
・メロディ ★★ (ミニマルな反復が多い中飽きさせないのがポップ性)
・リズム ★★★★★(PCMドラムのキレの良さの魅力を十二分に発揮)
・曲構成 ★★★★ (前半ノンストップの構成がピタリとはまっている)
・個性 ★★★★★(サウンドが進化しようとも根本的な部分は不変)
総合評点: 9点
KRAFTWERK

<members>
Ralf Hutter:voice・vocoder・keyboards・electronics
Florian Schneider:vocoder・speech synthesis・electronics
Karl Bartos:voice・electronics drums
Wolfgang Flur:electronics percussion
<electric instruments>
E-mu Emulator II・LINN LM-1・Roland TR-808・Synclavier・YAMAHA DX-7
1.「BOING BOOM TSCHAK」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
2.「TECHNO POP」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos/Emil Schult
3.「MUSIQUE NON STOP」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
4.「THE TELEPHONE CALL」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
5.「SEX OBJECT」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos
6.「ELECTRIC CAFE」 Ralf Hutter/Florian Schneider/Karl Bartos/Maxime Schmitt
produced by KRAFTWERK
mixing engineered by KRAFTWERK・Francois Kevorkian・Ralf Hutter・Ron Saint Germain
recording engineered by Joachim Dehmann・Henning Schmitz・Bill Miranda
● PCMドラムとFMシンセサウンドで当時最先端を目指すも独自のロボ的世界観は変わらないテクノゴッドの傑作
70年代にマニアックで前衛的な存在であった電子音楽をPOPSの範疇で語ることを可能にしたテクノ界の神的グループKRAFTWERKは、1981年のアルバム「Computer World」において確かなコンセプトとストイックなまでの機械っぷりでその健在ぶりをアピールしましたが、その後アルバム「TECHNO POP」の制作にとりかかるものの83年リリースの先行シングル「Tour de France」後はその活動のペースを落とし寡作のグループとなります。その間にアルバム「TECHNO POP」はいくつかの変遷を経て「ELECTRIC CAFE」とタイトルを変え、先行12インチ「MUSIQUE NON STOP」を従えて86年にやっとのことでリリースにこぎ着けました。電子機材の進化は日進月歩で彼らが歩みを止めている間にデジタルシンセが瞬く間に普及し、ドラム音色はリズムボックス的なものからPCMサウンドを主としたパワフルなものに進化しており、本作においては今まで時代の先端を歩んでいた彼らの音楽性とは異なり、時代の空気を上手く取り込んだ彼らなりのテクノロジーPOPSへの回答といった趣の作品と解釈できると思います。
KRAFTWERK特有の無機質でミニマルな構成はこれまでの作品通りですが、過去の作品とは劇的なサウンドの変化を感じることができます。まずはDX-7を代表するデジタルシンセの大胆な導入、そしてアナログとPCMを織り交ぜてゲートリバーブを効かせたクッキリしたリズムトラックが、その変化の要因と言えるでしょう。もちろん彼らの特徴の1つとも言えるマシン&ロボボイスは本作でも効果的かつ唯一無二の存在感を生み出していますが、本作においての主役は何といってもドラムサウンドとそのプログラミングにほかなりません。PCMだからこそパワフルに前へ出てくる、そしてノングルーヴの打ち込みだからこそ生まれるダイナミクスはこれまでの作品になかったもので、サンプラーを駆使したストリングスやスラップベース、ボイスサンプルが表面的には目立っているとしても、このリズムトラックなしには成立するのは難しいと思わせるほど、無機質なKRAFTWERKの楽曲に力強く正確な、そしてデジタルファンキーなこのリズムは素晴らしい相性を感じさせてくれます。時代が追いついたともいえる本作から次作まではかなり間があくことになりますが、それは彼らが電子音楽POPSの流れを先導する立場からその流れの中で柔軟においしい部分を取り入れていく作風になっていく過程であり、本作はこうした転換のきっかけとなった記念碑的な作品とも言えるかもしれません(2009年に本来のタイトル「TECHNO POP」を冠して一部リニューアルしてリマスター再発されました。音質が素晴らしい!)。
<Favorite Songs>
・「TECHNO POP」
タイトルチューンとなるはずだった唯我独尊を感じさせる自信満々のタイトルを冠した楽曲。前後の曲とノンストップの構成でありながら何とも言えない味のあるRalfのヴォーカルやメタリックなリズムトラック、エフェクティブな空間処理など、あくまでエレクトリックな面で「聴かせる」内容です。
・「THE TELEPHONE CALL」
彼らの歴史の中でも最もポップと言えるこれぞテクノロジーPOPSの鑑的な名曲。唯一Karl Bartosがヴォーカルをとり神経質なフロントマン2人よりもポップセンスに優れたKarlが主導権をとったからこそ生まれるPOPSとしての旨味が感じられます。機械だからこそ生み出せるマシナリーファンクなリズムと世界各地の電話サンプリングのアイデアが光ります。
・「SEX OBJECT」
ストリングスやベースなどヒンヤリした空気感の中でも生っぽい要素も含ませた彼らにとっては異色の楽曲。特に奇をてらわない剥き出しのプリセットかと思わせる単純な音色を使用していても、そのストイックな世界観は失わないという典型的な楽曲と言えます。
<評点>
・サウンド ★★★★★(クッキリした輪郭と絶妙な音の空間処理が素晴らしい)
・メロディ ★★ (ミニマルな反復が多い中飽きさせないのがポップ性)
・リズム ★★★★★(PCMドラムのキレの良さの魅力を十二分に発揮)
・曲構成 ★★★★ (前半ノンストップの構成がピタリとはまっている)
・個性 ★★★★★(サウンドが進化しようとも根本的な部分は不変)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「BEAUTY & HAPPY」 立花ハジメ
「BEAUTY & HAPPY」(1987 ミディ)
立花ハジメ:vocal・chorus

1.「WORLD-WIDE TAIYO・SUN」
詞:立花ハジメ 曲:Mark Mothersbaugh 編:Mark Mothersbaugh・戸田誠司
2.「SHOOT」
詞:鈴木慶一・立花ハジメ 曲:Bob Mothersbaugh・立花ハジメ
編:藤井丈司・戸田誠司
3.「STARFIRE」 曲:Benny Golson 編:近藤達郎
4.「BEAUTY」 詞:小林克也・立花ハジメ 曲:立花ハジメ 編:藤井丈司
5.「THE THEME FROM '64」 曲:立花ハジメ 編:Mark Mothersbaugh・近藤達郎
6.「'64」
詞:鈴木慶一・立花ハジメ 曲:立花ハジメ 編:Mark Mothersbaugh・藤井丈司
7.「DEEP RIVER MANSION」 曲・編:近藤達郎
8.「HAPPY」 詞・曲:立花ハジメ 編:戸田誠司
9.「TON KOU」
詞:矢野顕子・立花ハジメ 曲:Mark Mothersbaugh
編:Mark Mothersbaugh・戸田誠司
10.「THEME FROM FUJI AV LIVE」 曲:立花ハジメ・藤井丈司 編:藤井丈司
11.「THE JUNGLE QUEEN OF BORNEO ISL.」
詞:Mark Mothersbaugh 曲:立花ハジメ・藤井丈司
編:矢口博康・藤井丈司・戸田誠司
12.「BQ」 曲:立花ハジメ 編:近藤達郎
13.「BEAUTY '87」
詞:小林克也・立花ハジメ 曲:立花ハジメ 編:Mark Mothersbaugh
<support musician>
矢野顕子:vocal
小倉博和:guitar
白井良明:guitar
塚田嗣人:guitar
近藤達郎:keyboards
福原まり:keyboards・chorus
Whacho:percussion・chorus
矢口博康:sax・chorus
美尾洋乃:violin
鈴木慶一:chorus
鈴木博文:chorus
Mark Mothersbaugh:computer & synthesizers programming
飯尾芳史:computer & synthesizers programming
戸田誠司:computer & synthesizers programming・chorus
藤井丈司:computer & synthesizers programming・chorus
produced by 立花ハジメ
recording produced by 藤井丈司・戸田誠司・飯尾芳史
sound produced by Mark mothersbaugh
mixing engineered by 飯尾芳史・山口州治・土井章嗣
recording engineered by 飯尾芳史
● DEVO vs テクノクリエイター3人衆のデジタル戦争!立花ハジメ流歌モノPOPSの名盤
テクノポップ御三家としてノンミュージシャンを中心に構成されたスタイリッシュなバンドPLASTICSのギタリストとして、本職のデザイナー業の傍らミュージシャンとして活動していた立花ハジメは、PLASTICS解散後は高橋幸宏のツアー等でサックスを片手に存在感を発揮し、YMOに近しい個性的なアーティストとしてさらにその名を知られることになります。そして遂には高橋幸宏と細野晴臣の共同プロデュースによるYENレーベルより、アルバム「H」にてソロデビューを果たしましたが、サックスと自作楽器アルプスシリーズを携えたジャズでもフュージョンでもない軽音楽的個性的なインスト集は、当時においても異彩を放っていました。その後同路線のアルバム「Hm」をリリース後、3rd「テッキー君とキップルちゃん」からはより機械的にプログラムされたテクノインストに方向性をチェンジし、YEN解散後坂本龍一を中心としたミディレコードに移籍してからも、さらに過激にマシナリーに進化したアルバム「太陽さん」をリリースし、インパクトを与えていました。しかし、ここで彼の音楽性は重要な転換を見せ、なんとここでいきなり歌モノPOPS路線に挑戦、みずから踊りながら歌う「Beauty & Modern things」(片面は手塚治虫氏のイラストをレコード盤に刻み込んだもの)と「Happy」という12インチシングルを立て続けにリリース、そしてこの路線の集大成として本作がリリースされるわけです。
共同プロデューサーにプログラマーの藤井丈司、アレンジャーの戸田誠司、そしてエンジニアの飯尾芳史というテクノ界隈の重要人物トリオを迎え万全の体制で制作に臨みながら、それに飽き足らずDEVOのMark Mothersbaughも巻き込んでFairlight特有のサンプラー&デジタル色が全開の歌モノテクノポップ作品に仕上がっています。アルバム全体の構成としては藤井+戸田+飯尾のサウンドチームを中心としてDEVO勢とFD(時代を感じる)で音源をやりとりしてサウンドを構築した楽曲群の間に、元チャクラの近藤達郎によるサントラ的な小インストを挟むという方法をとったコンセプトアルバムの様相であり、数々のコンセプチュアルな作品を提供してきた立花ハジメらしい仕掛けの多い作品でもあります。そして以前からの彼の手掛ける音楽の特徴でもある強烈なリズムトラックは健在で、本作でもその部分をSHI-SHONENやREAL FISHでもその独特のコンピューターリズムを構築する戸田誠司によって色濃く反映されています。この目立ち過ぎともいえるリズムトラックはもはや立花ハジメの代名詞とも言ってよいと思います。しかし結局こうした歌モノ路線は本作で終了、以後は本業の合間にいくつかのバンドを結成したりしながら気ままに音楽活動を楽しんでいるようです。
<Favorite Songs>
・「SHOOT」
本当の意味での楽天的なテクノポップ。藤井丈司と戸田誠司という2人のプログラマーによる抜けの良い音の輪郭がデジタル満開で心地良いです。フワフワした立花のヴォーカルもコミカルで小馬鹿にしたような楽曲の雰囲気に溶け込んでいます。間奏の打ち込みドラムソロもかっこいいです。
・「BEAUTY」
先行シングルカットされた衝撃の立花流歌モノPOPS。白井良明のファジーなギターとコクのある音色のリズム、矢口博康と美尾洋乃のREAL FISH組による間奏も滑らか。ゆったりとしながらもなぜかダンサブルで、合いの手のタイミングも良く楽しい気分にさせられる名曲です。
・「TON KOU」
「太陽さん」を想起させる派手なリズムトラックによるオリエンタルデジタルテクノ。潔いほどまでのデジタルなサウンドは、さすがFairlight全盛期のDEVO仕様で、間奏のシンセソロの素っ頓狂なフレーズも彼ららしいという印象です。そして何よりも後半の矢野顕子とのデュエットの力の抜け具合が絶妙で、ディレイを多用したしっちゃかめっちゃかなリズムトラックとのコントラストが興味深いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (質は高いがコンピューターが前面に出過ぎかも)
・メロディ ★★ (歌モノなだけに過去の彼の作品よりは断然聴きやすい)
・リズム ★★★ (個性的な打ち込みドラムは作風が変わっても変化なし)
・曲構成 ★★ (コンセプトは明確であるがラスト曲は必要ないかも)
・個性 ★★ (脱力系のヴォーカルは好き嫌いの分かれるところか)
総合評点: 7点
立花ハジメ:vocal・chorus

1.「WORLD-WIDE TAIYO・SUN」
詞:立花ハジメ 曲:Mark Mothersbaugh 編:Mark Mothersbaugh・戸田誠司
2.「SHOOT」
詞:鈴木慶一・立花ハジメ 曲:Bob Mothersbaugh・立花ハジメ
編:藤井丈司・戸田誠司
3.「STARFIRE」 曲:Benny Golson 編:近藤達郎
4.「BEAUTY」 詞:小林克也・立花ハジメ 曲:立花ハジメ 編:藤井丈司
5.「THE THEME FROM '64」 曲:立花ハジメ 編:Mark Mothersbaugh・近藤達郎
6.「'64」
詞:鈴木慶一・立花ハジメ 曲:立花ハジメ 編:Mark Mothersbaugh・藤井丈司
7.「DEEP RIVER MANSION」 曲・編:近藤達郎
8.「HAPPY」 詞・曲:立花ハジメ 編:戸田誠司
9.「TON KOU」
詞:矢野顕子・立花ハジメ 曲:Mark Mothersbaugh
編:Mark Mothersbaugh・戸田誠司
10.「THEME FROM FUJI AV LIVE」 曲:立花ハジメ・藤井丈司 編:藤井丈司
11.「THE JUNGLE QUEEN OF BORNEO ISL.」
詞:Mark Mothersbaugh 曲:立花ハジメ・藤井丈司
編:矢口博康・藤井丈司・戸田誠司
12.「BQ」 曲:立花ハジメ 編:近藤達郎
13.「BEAUTY '87」
詞:小林克也・立花ハジメ 曲:立花ハジメ 編:Mark Mothersbaugh
<support musician>
矢野顕子:vocal
小倉博和:guitar
白井良明:guitar
塚田嗣人:guitar
近藤達郎:keyboards
福原まり:keyboards・chorus
Whacho:percussion・chorus
矢口博康:sax・chorus
美尾洋乃:violin
鈴木慶一:chorus
鈴木博文:chorus
Mark Mothersbaugh:computer & synthesizers programming
飯尾芳史:computer & synthesizers programming
戸田誠司:computer & synthesizers programming・chorus
藤井丈司:computer & synthesizers programming・chorus
produced by 立花ハジメ
recording produced by 藤井丈司・戸田誠司・飯尾芳史
sound produced by Mark mothersbaugh
mixing engineered by 飯尾芳史・山口州治・土井章嗣
recording engineered by 飯尾芳史
● DEVO vs テクノクリエイター3人衆のデジタル戦争!立花ハジメ流歌モノPOPSの名盤
テクノポップ御三家としてノンミュージシャンを中心に構成されたスタイリッシュなバンドPLASTICSのギタリストとして、本職のデザイナー業の傍らミュージシャンとして活動していた立花ハジメは、PLASTICS解散後は高橋幸宏のツアー等でサックスを片手に存在感を発揮し、YMOに近しい個性的なアーティストとしてさらにその名を知られることになります。そして遂には高橋幸宏と細野晴臣の共同プロデュースによるYENレーベルより、アルバム「H」にてソロデビューを果たしましたが、サックスと自作楽器アルプスシリーズを携えたジャズでもフュージョンでもない軽音楽的個性的なインスト集は、当時においても異彩を放っていました。その後同路線のアルバム「Hm」をリリース後、3rd「テッキー君とキップルちゃん」からはより機械的にプログラムされたテクノインストに方向性をチェンジし、YEN解散後坂本龍一を中心としたミディレコードに移籍してからも、さらに過激にマシナリーに進化したアルバム「太陽さん」をリリースし、インパクトを与えていました。しかし、ここで彼の音楽性は重要な転換を見せ、なんとここでいきなり歌モノPOPS路線に挑戦、みずから踊りながら歌う「Beauty & Modern things」(片面は手塚治虫氏のイラストをレコード盤に刻み込んだもの)と「Happy」という12インチシングルを立て続けにリリース、そしてこの路線の集大成として本作がリリースされるわけです。
共同プロデューサーにプログラマーの藤井丈司、アレンジャーの戸田誠司、そしてエンジニアの飯尾芳史というテクノ界隈の重要人物トリオを迎え万全の体制で制作に臨みながら、それに飽き足らずDEVOのMark Mothersbaughも巻き込んでFairlight特有のサンプラー&デジタル色が全開の歌モノテクノポップ作品に仕上がっています。アルバム全体の構成としては藤井+戸田+飯尾のサウンドチームを中心としてDEVO勢とFD(時代を感じる)で音源をやりとりしてサウンドを構築した楽曲群の間に、元チャクラの近藤達郎によるサントラ的な小インストを挟むという方法をとったコンセプトアルバムの様相であり、数々のコンセプチュアルな作品を提供してきた立花ハジメらしい仕掛けの多い作品でもあります。そして以前からの彼の手掛ける音楽の特徴でもある強烈なリズムトラックは健在で、本作でもその部分をSHI-SHONENやREAL FISHでもその独特のコンピューターリズムを構築する戸田誠司によって色濃く反映されています。この目立ち過ぎともいえるリズムトラックはもはや立花ハジメの代名詞とも言ってよいと思います。しかし結局こうした歌モノ路線は本作で終了、以後は本業の合間にいくつかのバンドを結成したりしながら気ままに音楽活動を楽しんでいるようです。
<Favorite Songs>
・「SHOOT」
本当の意味での楽天的なテクノポップ。藤井丈司と戸田誠司という2人のプログラマーによる抜けの良い音の輪郭がデジタル満開で心地良いです。フワフワした立花のヴォーカルもコミカルで小馬鹿にしたような楽曲の雰囲気に溶け込んでいます。間奏の打ち込みドラムソロもかっこいいです。
・「BEAUTY」
先行シングルカットされた衝撃の立花流歌モノPOPS。白井良明のファジーなギターとコクのある音色のリズム、矢口博康と美尾洋乃のREAL FISH組による間奏も滑らか。ゆったりとしながらもなぜかダンサブルで、合いの手のタイミングも良く楽しい気分にさせられる名曲です。
・「TON KOU」
「太陽さん」を想起させる派手なリズムトラックによるオリエンタルデジタルテクノ。潔いほどまでのデジタルなサウンドは、さすがFairlight全盛期のDEVO仕様で、間奏のシンセソロの素っ頓狂なフレーズも彼ららしいという印象です。そして何よりも後半の矢野顕子とのデュエットの力の抜け具合が絶妙で、ディレイを多用したしっちゃかめっちゃかなリズムトラックとのコントラストが興味深いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (質は高いがコンピューターが前面に出過ぎかも)
・メロディ ★★ (歌モノなだけに過去の彼の作品よりは断然聴きやすい)
・リズム ★★★ (個性的な打ち込みドラムは作風が変わっても変化なし)
・曲構成 ★★ (コンセプトは明確であるがラスト曲は必要ないかも)
・個性 ★★ (脱力系のヴォーカルは好き嫌いの分かれるところか)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「LITTLE GANG OF THE UNIVERSE」 Instant Cytron
「LITTLE GANG OF THE UNIVERSE」(2000 ドリームスヴィル)
Instant Cytron

<members>
片岡知子:vocal・keyboards・toy piano・pianoforte・melodica・Moog sonic 6・percussions・slide whistle・stylophone・xylophone・tambourine・cymbals・pseudo-theremin・computer programming・chorus
長瀬五郎:vocal・electric guitar・acoustic guitar・gut guitar・mandolin・bass・drums・percussions・snare・computer programming・chorus
1.「Ma petite Fille」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
2.「Little gang of the world」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
3.「Playtime'll be over」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
4.「Love your way」 詞:片岡知子・長瀬五郎 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
5.「Happy puppy in the desolation」
詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
6.「My melodies」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
7.「Christmas kills me」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
8.「Stylissimo!」 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
9.「Good day broken heart」 詞・曲:片岡知子 編:Instant Cytron
10.「Jolly fellows」 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
11.「Lullaby in winter」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
12.「Sing along (with your heart)」
詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
<support musician>
橋爪哲生:bass・chorus
Tom Ardolino:drums
岡田崇:drums
高見一成:drums
Terry Adams:pianoforte・japanese organ・toy piano・clavinet+pianet
produced by Instant Cytron
engineered by 永野カズオ・松本俊行・Instant Cytron
● さらにアコースティックなおもちゃ箱ミュージックに進化し極上ポップアルバムに仕上がった3rdアルバム
1stアルバムにして名盤の呼び声が高い「Change Thie World」でメジャーデビューを果たした日本有数のノスタルジックポップユニットInstant Cytronでしたが、2nd「Cheerful Monsters」をリリース後早々にメジャーのフィールドから退場し、インディーズに活動の場を戻すことになります。結局自らの志向する音楽性を表現するにはメジャーシーンは窮屈過ぎたのか、それとも時代が追いつけなかったのかはわかりませんが、インディーズでの彼らはますますキュートでノスタルジー感覚の強いアットホームなポップソングにシフトしていきました。20世紀最後を飾るこの3rdアルバム(エチケットレコードからリリースされた本作は1週間後いきなり廃盤になり、その後ドリームスヴィルレコードから再発されるというオマケ付き)でもそうした傾向は顕著であり、なんとアメリカの老舗ロックバンドNRBQのメンバーをサポートに迎えサウンドの温かさが深まり、長瀬五郎のメロディセンスも存分に発揮された、Instant Cytronの真骨頂を見ることができる作品となっています。
もちろん彼らの最大の特徴である片岡の壊れそうなウィスパーヴォイスは健在ですが、メジャー時代におけるゴージャスともいえるストリングス基調のポップチューンからは非常にシンプルなものに移行しており、トイ楽器を多用した可愛らしい楽曲が並びます。しかしそのシンプルさがゆえにつ1つのフレーズが際立っていて、特にヴィンテージシンセMoog sonic 6の響きが各楽曲において妙にアクセントになっており本作の特徴にもなっています。全体的にウォーミーでファニー&キュートなサウンドにあって、無機質ともいえるMoogのフレーズは甘ったるい楽曲のスパイスとなっており、見事に味を引き立たせていると思います。メジャー時代よりシンセなどの電子楽器を違和感なく使いこなす自由でハッピーな雰囲気を感じさせるこの音楽性は、その後の彼らの何枚かのアルバムにおいても継承されていくことになります。
<Favorite Songs>
・「Little gang of the world」
Aメロから泣きのフレーズを聴かせてくれるタイトルチューン。特別凝ったサウンドを施していはいませんが(サビの剥き出しのシンセフレーズはアクセントになっていますが)、メロディの動きだけで「聴かせる」のは彼らの楽曲の個性でもあります。
・「Love your way」
深みのある優しさに満ちあふれた本作随一の名曲。トイピアノのアクセントがキュートで、コーラスもとにかく温かい。そしてコーラスフレーズの間奏からの滑らかなAメロの入りが素晴らしいです。この部分だけでもメシが食えます。
・「Christmas kills me」
本作の中でも最も電子音響が目立つクリスマスソング。とはいえサウンドの構造は至ってシンプル。延々と刻む鈴の音に雪がしんしんと降ってくるようなシンプルな電波音ともいえるシンセフレーズが美しいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (バンドサウンドへの電子音の絡ませ具合がセンス抜群)
・メロディ ★★★★★(ノスタルジックなメロディを書かせると右に出る者なし)
・リズム ★★ (シンプルなリズムを叩くがどこか温かい気分にさせる)
・曲構成 ★★★ (後半はインストも織り交ぜ自由過ぎるほどの詰め合わせ)
・個性 ★★★ (唯一無二の音楽性を本作において見事に確立した)
総合評点: 8点
Instant Cytron

<members>
片岡知子:vocal・keyboards・toy piano・pianoforte・melodica・Moog sonic 6・percussions・slide whistle・stylophone・xylophone・tambourine・cymbals・pseudo-theremin・computer programming・chorus
長瀬五郎:vocal・electric guitar・acoustic guitar・gut guitar・mandolin・bass・drums・percussions・snare・computer programming・chorus
1.「Ma petite Fille」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
2.「Little gang of the world」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
3.「Playtime'll be over」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
4.「Love your way」 詞:片岡知子・長瀬五郎 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
5.「Happy puppy in the desolation」
詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
6.「My melodies」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
7.「Christmas kills me」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
8.「Stylissimo!」 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
9.「Good day broken heart」 詞・曲:片岡知子 編:Instant Cytron
10.「Jolly fellows」 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
11.「Lullaby in winter」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
12.「Sing along (with your heart)」
詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
<support musician>
橋爪哲生:bass・chorus
Tom Ardolino:drums
岡田崇:drums
高見一成:drums
Terry Adams:pianoforte・japanese organ・toy piano・clavinet+pianet
produced by Instant Cytron
engineered by 永野カズオ・松本俊行・Instant Cytron
● さらにアコースティックなおもちゃ箱ミュージックに進化し極上ポップアルバムに仕上がった3rdアルバム
1stアルバムにして名盤の呼び声が高い「Change Thie World」でメジャーデビューを果たした日本有数のノスタルジックポップユニットInstant Cytronでしたが、2nd「Cheerful Monsters」をリリース後早々にメジャーのフィールドから退場し、インディーズに活動の場を戻すことになります。結局自らの志向する音楽性を表現するにはメジャーシーンは窮屈過ぎたのか、それとも時代が追いつけなかったのかはわかりませんが、インディーズでの彼らはますますキュートでノスタルジー感覚の強いアットホームなポップソングにシフトしていきました。20世紀最後を飾るこの3rdアルバム(エチケットレコードからリリースされた本作は1週間後いきなり廃盤になり、その後ドリームスヴィルレコードから再発されるというオマケ付き)でもそうした傾向は顕著であり、なんとアメリカの老舗ロックバンドNRBQのメンバーをサポートに迎えサウンドの温かさが深まり、長瀬五郎のメロディセンスも存分に発揮された、Instant Cytronの真骨頂を見ることができる作品となっています。
もちろん彼らの最大の特徴である片岡の壊れそうなウィスパーヴォイスは健在ですが、メジャー時代におけるゴージャスともいえるストリングス基調のポップチューンからは非常にシンプルなものに移行しており、トイ楽器を多用した可愛らしい楽曲が並びます。しかしそのシンプルさがゆえにつ1つのフレーズが際立っていて、特にヴィンテージシンセMoog sonic 6の響きが各楽曲において妙にアクセントになっており本作の特徴にもなっています。全体的にウォーミーでファニー&キュートなサウンドにあって、無機質ともいえるMoogのフレーズは甘ったるい楽曲のスパイスとなっており、見事に味を引き立たせていると思います。メジャー時代よりシンセなどの電子楽器を違和感なく使いこなす自由でハッピーな雰囲気を感じさせるこの音楽性は、その後の彼らの何枚かのアルバムにおいても継承されていくことになります。
<Favorite Songs>
・「Little gang of the world」
Aメロから泣きのフレーズを聴かせてくれるタイトルチューン。特別凝ったサウンドを施していはいませんが(サビの剥き出しのシンセフレーズはアクセントになっていますが)、メロディの動きだけで「聴かせる」のは彼らの楽曲の個性でもあります。
・「Love your way」
深みのある優しさに満ちあふれた本作随一の名曲。トイピアノのアクセントがキュートで、コーラスもとにかく温かい。そしてコーラスフレーズの間奏からの滑らかなAメロの入りが素晴らしいです。この部分だけでもメシが食えます。
・「Christmas kills me」
本作の中でも最も電子音響が目立つクリスマスソング。とはいえサウンドの構造は至ってシンプル。延々と刻む鈴の音に雪がしんしんと降ってくるようなシンプルな電波音ともいえるシンセフレーズが美しいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (バンドサウンドへの電子音の絡ませ具合がセンス抜群)
・メロディ ★★★★★(ノスタルジックなメロディを書かせると右に出る者なし)
・リズム ★★ (シンプルなリズムを叩くがどこか温かい気分にさせる)
・曲構成 ★★★ (後半はインストも織り交ぜ自由過ぎるほどの詰め合わせ)
・個性 ★★★ (唯一無二の音楽性を本作において見事に確立した)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Adi」 Adi
「Adi」(1992 ビクター)
Adi

<members>
金子飛鳥:violins・vocal
渡辺等:bass・stringed instruments・background vocal
塩谷哲:piano・synthesizers・background vocal
TECHIE:vocal
1.「アクルピーヤ」 曲:佐藤正治 編:Adi
2.「シストーレ」 詞・曲:金子飛鳥 編:Adi
3.「ADHISTA」 詞・曲:渡辺等 編:Adi
4.「グリモリウム・ヴェルム」 詞・曲:金子飛鳥 編:Adi
5.「Faltan」 曲:金子飛鳥 編:Adi
6.「Romantic Object-Chase to Moby Dick」 詞・曲:TECHIE 編:Adi
7.「ナゾの球体」 詞:TECHIE 曲:渡辺等 編:Adi
8.「Crossing」 詞・曲:金子飛鳥 編:Adi
9.「エネルギー新聞」 詞・曲:渡辺等 編:Adi
10.「Kingdom of Flowers」 詞:渡辺等 曲:TECHIE 編:Adi
11.「See Yah!」 曲:金子飛鳥 編:Adi
12.「小さいナゾの球体」 曲:渡辺等 編:Adi
<support musician>
佐藤正治:drums
仙波清彦:drums・percussion
produced by Adi
co-produced by 沢井宏始
engineered by 赤川新一
● 卓越した生演奏が織りなす架空の王国音楽!手練れのアーティストが集まった無国籍POPSの名盤
プログレバンド美狂乱のリーダー兼ドラマーであった佐藤正治が、飛鳥ストリングスを主宰し数々のアーティストのサポートをこなし注目を浴びていた新進気鋭の女性バイオリニスト金子飛鳥らを迎え結成された無国籍音楽集団が、Adiです。SHI-SHONEN、REAL FISHの渡辺等やオルケスタ・デ・ラ・ルスのピアニスト塩谷哲を加えた天才アーティスト集団であるこのグループは、演奏力に問題があるはずがなく、そのテクニカルなフレーズと意外にポップ志向なサウンドは、1990年の1stアルバム「HOME」でも認識されるところです。その2年後満を持して2ndアルバムである本作の制作にとりかかるわけですが、このレコーディング中にリーダーの佐藤が脱退し方針転換を余儀なくされ、ヴォーカルに元プラチナKITのTECHIEこと本間哲子が加入することによって、よりポップな歌モノ色が強くなり、結果的に非常に親しみやすい作品に仕上がっています。
まず本作が前作と劇的に異なる部分として、ヴォーカルの加入による「声」の質が強化されたことと、それによりサウンドの自由度が格段に上がったことが挙げられます。プログレに裏打ちされた複雑で大げさなリズムとフレーズの数々は、彼らのテクニカルという言葉も陳腐に聴こえるほどの超絶的な演奏力によって、その正確性からも彼ら自身が提唱していた「人力テクノ」という言葉に相応しいものがあります。バイオリンやピアノの各々のソロに代表されるキレの良さが、それぞれのフレーズに粒立ちを与え、それがアコースティックなのに逆に機械的な、いわゆるテクノロジー的な印象を与えているのでしょう。また、リーダーの佐藤正治が途中脱退ということで、佐藤のほかに、サポートドラマーとして和風パーカッショニストの重鎮である仙波清彦が参加しているおかげで、リズム面ではかえって強化される形になっており、本作もポップでありながらリズムに引っ張られる楽曲も多く、こうしたインスト志向グループにありがちな技巧に酔うこともなく、あくまでPOPSとしての楽曲を意識した、愛されるべき作品として語られるべきであると思います。本作のリリース後は2枚のアルバムを残して翌年にはAdiとしての活動を休止してしまいますが、メンバーのその後の活躍ぶりは言うまでもありません。
<Favorite Songs>
・「シストーレ」
南国的なサウンドにテクニカルなエレクトリックバイオリンが活躍する無国籍POPSの名曲。ここまでプログレッシブな演奏にポップな歌モノを乗せてくるセンスが楽しいです。とっ散らかったかのように分離のよいピアノのフレーズもリズミカルでかっこよいことこの上ありません。間奏のバイオリンソロのテンションも鬼気迫るものがあります。
・「ADHISTA」
ベースおよび弦楽器全般を担当する渡辺等のインスト部分が長い楽曲。REAL FISHとは一風違った森の中の奥深い情景が思い浮かぶような渋いサウンドを聴かせてくれます。この楽曲では塩谷にラテンピアノフレーズが大活躍で、ピアノソロに続くバイオリンとベースのユニゾンソロの超絶技巧は圧巻で言うことなしです。
・「Crossing」
情熱的なピアノ伴奏が印象的な泣きの入ったバラードソング。とはいっても湿っぽい部分は全くなく光が感じられるカラッとした印象です。とにかくピアノの響きが良く、間奏の壮大な世界観は演奏力で聴かせる彼らならではのものでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★★(複雑に絡み合ったフレーズをまとめ上げるこれも才能)
・メロディ ★★ (ポップ性が上がったとは言っても技術志向は隠せない)
・リズム ★★★★ (技巧抜群の2人のドラマーの攻撃的なリズムが心地良い)
・曲構成 ★★★ (歌モノとしてもインストとしても違和感なしの楽曲が並ぶ)
・個性 ★★★ (インストバンドでも通用するがあえてポップにこだわる)
総合評点: 8点
Adi

<members>
金子飛鳥:violins・vocal
渡辺等:bass・stringed instruments・background vocal
塩谷哲:piano・synthesizers・background vocal
TECHIE:vocal
1.「アクルピーヤ」 曲:佐藤正治 編:Adi
2.「シストーレ」 詞・曲:金子飛鳥 編:Adi
3.「ADHISTA」 詞・曲:渡辺等 編:Adi
4.「グリモリウム・ヴェルム」 詞・曲:金子飛鳥 編:Adi
5.「Faltan」 曲:金子飛鳥 編:Adi
6.「Romantic Object-Chase to Moby Dick」 詞・曲:TECHIE 編:Adi
7.「ナゾの球体」 詞:TECHIE 曲:渡辺等 編:Adi
8.「Crossing」 詞・曲:金子飛鳥 編:Adi
9.「エネルギー新聞」 詞・曲:渡辺等 編:Adi
10.「Kingdom of Flowers」 詞:渡辺等 曲:TECHIE 編:Adi
11.「See Yah!」 曲:金子飛鳥 編:Adi
12.「小さいナゾの球体」 曲:渡辺等 編:Adi
<support musician>
佐藤正治:drums
仙波清彦:drums・percussion
produced by Adi
co-produced by 沢井宏始
engineered by 赤川新一
● 卓越した生演奏が織りなす架空の王国音楽!手練れのアーティストが集まった無国籍POPSの名盤
プログレバンド美狂乱のリーダー兼ドラマーであった佐藤正治が、飛鳥ストリングスを主宰し数々のアーティストのサポートをこなし注目を浴びていた新進気鋭の女性バイオリニスト金子飛鳥らを迎え結成された無国籍音楽集団が、Adiです。SHI-SHONEN、REAL FISHの渡辺等やオルケスタ・デ・ラ・ルスのピアニスト塩谷哲を加えた天才アーティスト集団であるこのグループは、演奏力に問題があるはずがなく、そのテクニカルなフレーズと意外にポップ志向なサウンドは、1990年の1stアルバム「HOME」でも認識されるところです。その2年後満を持して2ndアルバムである本作の制作にとりかかるわけですが、このレコーディング中にリーダーの佐藤が脱退し方針転換を余儀なくされ、ヴォーカルに元プラチナKITのTECHIEこと本間哲子が加入することによって、よりポップな歌モノ色が強くなり、結果的に非常に親しみやすい作品に仕上がっています。
まず本作が前作と劇的に異なる部分として、ヴォーカルの加入による「声」の質が強化されたことと、それによりサウンドの自由度が格段に上がったことが挙げられます。プログレに裏打ちされた複雑で大げさなリズムとフレーズの数々は、彼らのテクニカルという言葉も陳腐に聴こえるほどの超絶的な演奏力によって、その正確性からも彼ら自身が提唱していた「人力テクノ」という言葉に相応しいものがあります。バイオリンやピアノの各々のソロに代表されるキレの良さが、それぞれのフレーズに粒立ちを与え、それがアコースティックなのに逆に機械的な、いわゆるテクノロジー的な印象を与えているのでしょう。また、リーダーの佐藤正治が途中脱退ということで、佐藤のほかに、サポートドラマーとして和風パーカッショニストの重鎮である仙波清彦が参加しているおかげで、リズム面ではかえって強化される形になっており、本作もポップでありながらリズムに引っ張られる楽曲も多く、こうしたインスト志向グループにありがちな技巧に酔うこともなく、あくまでPOPSとしての楽曲を意識した、愛されるべき作品として語られるべきであると思います。本作のリリース後は2枚のアルバムを残して翌年にはAdiとしての活動を休止してしまいますが、メンバーのその後の活躍ぶりは言うまでもありません。
<Favorite Songs>
・「シストーレ」
南国的なサウンドにテクニカルなエレクトリックバイオリンが活躍する無国籍POPSの名曲。ここまでプログレッシブな演奏にポップな歌モノを乗せてくるセンスが楽しいです。とっ散らかったかのように分離のよいピアノのフレーズもリズミカルでかっこよいことこの上ありません。間奏のバイオリンソロのテンションも鬼気迫るものがあります。
・「ADHISTA」
ベースおよび弦楽器全般を担当する渡辺等のインスト部分が長い楽曲。REAL FISHとは一風違った森の中の奥深い情景が思い浮かぶような渋いサウンドを聴かせてくれます。この楽曲では塩谷にラテンピアノフレーズが大活躍で、ピアノソロに続くバイオリンとベースのユニゾンソロの超絶技巧は圧巻で言うことなしです。
・「Crossing」
情熱的なピアノ伴奏が印象的な泣きの入ったバラードソング。とはいっても湿っぽい部分は全くなく光が感じられるカラッとした印象です。とにかくピアノの響きが良く、間奏の壮大な世界観は演奏力で聴かせる彼らならではのものでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★★(複雑に絡み合ったフレーズをまとめ上げるこれも才能)
・メロディ ★★ (ポップ性が上がったとは言っても技術志向は隠せない)
・リズム ★★★★ (技巧抜群の2人のドラマーの攻撃的なリズムが心地良い)
・曲構成 ★★★ (歌モノとしてもインストとしても違和感なしの楽曲が並ぶ)
・個性 ★★★ (インストバンドでも通用するがあえてポップにこだわる)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「WAVE」 CUTTING EDGE
「WAVE」(1991 アルファ)
CUTTING EDGE

<members>
柴田卓俊:vocals
内山肇:guitars
前田久史:bass
広瀬充寿:drums
山崎彩平:keyboards
1.「JAPANESE BOY」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
2.「HOLE」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇・柴田卓俊 編:CUTTING EDGE
3.「POWER」 詞:柴田卓俊 曲:広瀬充寿 編:CUTTING EDGE
4.「COSMOPOLITAN LOVERS」 詞:柴田卓俊 曲:前田久史 編:CUTTING EDGE
5.「ONE NIGHT LOVE」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
6.「HYPER SEXIEST」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
7.「JESUS CRISIS '99」 詞:柴田卓俊 曲:広瀬充寿 編:CUTTING EDGE
8.「FREE PAINTER」 詞:柴田卓俊 曲:山崎彩平 編:CUTTING EDGE
9.「GOD FLOWER」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
produced by CUTTING EDGE・加藤恭次
engineered by 寺田仁
● 疾走感豊かなニューウェーヴサウンド!ハードエッジな技巧派バンドのラストにして名盤
めんたいロックの雄と呼ばれた福岡県出身の名ロックバンドThe Roosterzのドラマーであった池畑潤二が、同バンドを脱退後に地元の若手を集めて結成したデジタル風味のスタイリッシュなバンドがZerospectreでしたが、3枚のアルバムを残した後、その池畑自身が布袋寅泰と吉川晃司のユニットCOMPLEXのサポートを務めることもありギターと共に脱退、残された3人のメンバーは新たにドラマーとして広瀬充寿を迎え4人編成となったのを機にバンド名も改称、CUTTING EDGEと名乗り、アルバム「CUTTING EDGE」をリリースするなど活動を再開しました。その後は元ショコラータの寺師徹がギターとして加入し、アルバム「All Or Nothing」をリリースするなどロック色を強めていきましたが、寺師もほどなく脱退、気づけばZerospectre時代のメンバーはヴォーカルの柴田とキーボードの山崎の2名だけとなりながら、最後の作品である本作をリリースします。
各メンバーが楽曲を持ち寄る中制作された本作は、ロック色を強めつつあった彼らのサウンドから再びポストニューウェーブなサウンドに立ち返ったかのようにデジタルなシンセサウンドが強調され、PINKを彷佛とさせるテクニカルな演奏とフレーズを組み立てるセンスが際立っており、前作までの作品からは一線を画した感があります。このサウンドの進化に貢献しているのは本作より加入したギターの内山肇とベースの前田久史で、彼ら弦楽器陣の確かな技巧に裏打ちされた奔放なフレーズセンスは、もっと評価されてもよいのではないでしょうか。もちろんZerospectre時代からの特徴的なサウンドを担ってきた山崎彩平のシンセフレーズも目立っていますが、これも内山と前田という実力派の2人に触発されたためであると言えるでしょう。90年代に入ってニューウェーブの灯火が消えかかっていた時代に、原点に立ち返るようなサウンドの進化はマンネリ化し始めていた楽曲のクオリティも甦らせ(特に楽曲面において内山の加入が非常に大きかった)、本作のような密度の濃い作品を生み出す力になったと思われます。内山肇はCM業界、前田は現在もプレイヤーとして、そして広瀬はも含めて音楽界でいまだにフィールドは違えども活躍していることを考えても、本作は再評価に値しますし(廃盤というのが残念)、ニューウェーブ好きにも堪え得る興味深い作品と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「HOLE」
スキー用品のCMソングにもなったスピード感あふれるシングルカット曲。彼らの代表曲といってよいこのニューウェーブロックチューンは、ノイジーに大活躍するギターにスラップを交えたねちっこいベース、そして電子音的なシンセフレーズ、疾走するドラミングなど、往年の伝説的バンドPINKに劣らないテンションが高く技巧的な名曲です。
・「POWER」
前曲に引き続きリズムで攻め立てるライブ映えするタイプの好楽曲。間奏の似非オリエンタルなギターソロや玄人はだしのベースフレーズに確かなテクニックを感じます。
・「HYPER SEXIEST」
SF的なイントロからハードなギターサウンドが絡んでいくダンサブルなロックチューン。とにかくギターとベースのリズム感が半端ではありません。サビのギターサウンドの電子的な余韻など、随所にニューウェーブの匂いを散りばめていて、そのテクニカルなセンスに脱帽です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (ストイックさを感じる突き詰めたサウンドセンス)
・メロディ ★★★ (サウンドの進化と共にわかりやすいメロも復活)
・リズム ★★★★ (Mick Karnの面影すら感じる奔放なベースプレイが白眉)
・曲構成 ★★★ (単純に1曲ごとの質が高くバランスが非常にとれている)
・個性 ★★★ (内山と前田の加入がもたらした演奏・楽曲の質が全て)
総合評点: 8点
CUTTING EDGE

<members>
柴田卓俊:vocals
内山肇:guitars
前田久史:bass
広瀬充寿:drums
山崎彩平:keyboards
1.「JAPANESE BOY」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
2.「HOLE」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇・柴田卓俊 編:CUTTING EDGE
3.「POWER」 詞:柴田卓俊 曲:広瀬充寿 編:CUTTING EDGE
4.「COSMOPOLITAN LOVERS」 詞:柴田卓俊 曲:前田久史 編:CUTTING EDGE
5.「ONE NIGHT LOVE」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
6.「HYPER SEXIEST」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
7.「JESUS CRISIS '99」 詞:柴田卓俊 曲:広瀬充寿 編:CUTTING EDGE
8.「FREE PAINTER」 詞:柴田卓俊 曲:山崎彩平 編:CUTTING EDGE
9.「GOD FLOWER」 詞:柴田卓俊 曲:内山肇 編:CUTTING EDGE
produced by CUTTING EDGE・加藤恭次
engineered by 寺田仁
● 疾走感豊かなニューウェーヴサウンド!ハードエッジな技巧派バンドのラストにして名盤
めんたいロックの雄と呼ばれた福岡県出身の名ロックバンドThe Roosterzのドラマーであった池畑潤二が、同バンドを脱退後に地元の若手を集めて結成したデジタル風味のスタイリッシュなバンドがZerospectreでしたが、3枚のアルバムを残した後、その池畑自身が布袋寅泰と吉川晃司のユニットCOMPLEXのサポートを務めることもありギターと共に脱退、残された3人のメンバーは新たにドラマーとして広瀬充寿を迎え4人編成となったのを機にバンド名も改称、CUTTING EDGEと名乗り、アルバム「CUTTING EDGE」をリリースするなど活動を再開しました。その後は元ショコラータの寺師徹がギターとして加入し、アルバム「All Or Nothing」をリリースするなどロック色を強めていきましたが、寺師もほどなく脱退、気づけばZerospectre時代のメンバーはヴォーカルの柴田とキーボードの山崎の2名だけとなりながら、最後の作品である本作をリリースします。
各メンバーが楽曲を持ち寄る中制作された本作は、ロック色を強めつつあった彼らのサウンドから再びポストニューウェーブなサウンドに立ち返ったかのようにデジタルなシンセサウンドが強調され、PINKを彷佛とさせるテクニカルな演奏とフレーズを組み立てるセンスが際立っており、前作までの作品からは一線を画した感があります。このサウンドの進化に貢献しているのは本作より加入したギターの内山肇とベースの前田久史で、彼ら弦楽器陣の確かな技巧に裏打ちされた奔放なフレーズセンスは、もっと評価されてもよいのではないでしょうか。もちろんZerospectre時代からの特徴的なサウンドを担ってきた山崎彩平のシンセフレーズも目立っていますが、これも内山と前田という実力派の2人に触発されたためであると言えるでしょう。90年代に入ってニューウェーブの灯火が消えかかっていた時代に、原点に立ち返るようなサウンドの進化はマンネリ化し始めていた楽曲のクオリティも甦らせ(特に楽曲面において内山の加入が非常に大きかった)、本作のような密度の濃い作品を生み出す力になったと思われます。内山肇はCM業界、前田は現在もプレイヤーとして、そして広瀬はも含めて音楽界でいまだにフィールドは違えども活躍していることを考えても、本作は再評価に値しますし(廃盤というのが残念)、ニューウェーブ好きにも堪え得る興味深い作品と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「HOLE」
スキー用品のCMソングにもなったスピード感あふれるシングルカット曲。彼らの代表曲といってよいこのニューウェーブロックチューンは、ノイジーに大活躍するギターにスラップを交えたねちっこいベース、そして電子音的なシンセフレーズ、疾走するドラミングなど、往年の伝説的バンドPINKに劣らないテンションが高く技巧的な名曲です。
・「POWER」
前曲に引き続きリズムで攻め立てるライブ映えするタイプの好楽曲。間奏の似非オリエンタルなギターソロや玄人はだしのベースフレーズに確かなテクニックを感じます。
・「HYPER SEXIEST」
SF的なイントロからハードなギターサウンドが絡んでいくダンサブルなロックチューン。とにかくギターとベースのリズム感が半端ではありません。サビのギターサウンドの電子的な余韻など、随所にニューウェーブの匂いを散りばめていて、そのテクニカルなセンスに脱帽です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (ストイックさを感じる突き詰めたサウンドセンス)
・メロディ ★★★ (サウンドの進化と共にわかりやすいメロも復活)
・リズム ★★★★ (Mick Karnの面影すら感じる奔放なベースプレイが白眉)
・曲構成 ★★★ (単純に1曲ごとの質が高くバランスが非常にとれている)
・個性 ★★★ (内山と前田の加入がもたらした演奏・楽曲の質が全て)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「NONA REEVES」 NONA REEVES
「NONA REEVES」(2002 コロムビア)
NONA REEVES

<members>
西寺郷太:vocals・rhythms・background vocals・rap
奥田健介:electric guitars・acoustic guitars・electric sitar・organ・piano・synthesizers・Melotoron・background vocals
小松茂:drums・electric drums・rhythms・background vocals
1.「初恋」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
2.「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME)」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
3.「TONIGHT~愛があった夕べ~」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
4.「欲望」 詞:西寺郷太 曲:西寺郷太・奥田健介 編:NONA REEVES・門倉聡
5.「HIPPOPOTAMUS」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
6.「IT'S A NEW DAY [BLOW]」 曲:NONA REEVES 編:NONA REEVES・門倉聡
7.「THE DEATH」 曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
8.「アルファベット・ボーイ」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
9.「GIMME GIMME」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
10.「IT'S A NEW DAY [QUIET STORM]」
曲:NONA REEVES 編:NONA REEVES・門倉聡
11.「HISTORY」
詞:西寺郷太 曲:西寺郷太・奥田健介 編:NONA REEVES・門倉聡
<support musician>
Donyale Renne:vocals
中澤真由:vocals
真城めぐみ:vocals
千ヶ崎学:bass・background vocals
門倉聡:electric piano・synthesizers・keyboards・computer programming・synthesizer manipulate・brass arrangement・strings arrangement
トミタユズル:piano・organ・electric piano・Moog
大石真理恵:percussions
大森はじめ:percussions
エリック宮城:trumpet
村田陽一:trombone
山本拓夫:sax
弦一徹:strings
produced by 門倉聡
mixing engineered by 滝沢武士
recording engineered by 滝沢武士・佐藤宏明・小林孝・高田浩太郎・門倉聡
● 古き良き時代のディスコ&ポップミュージック!抜群のセンスを発揮した実力派バンドの名盤
90年代から活動する日本が誇るソウルフルロックバンドであるNONA REEVESは、80'S洋楽POPS譲りのきらびやかでカラフルなポップセンスと、覚えやすく親しみやすいメロディライン、そしてヴォーカルの西寺郷太による爽やか過ぎるヴォーカルと円熟味溢れる演奏力が見事に融合された実力派グループですが、彼らの数ある作品の中でも最もそのダンサブルな80'フレーバーポップセンスが発揮されているのが、グループ名をタイトルに冠した本作です。もともと美しいメロディにこだわりのある彼らでしたが、レコード会社移籍第1弾となったこの4thアルバムでは70年代ディスコの黒っぽい雰囲気を存分に醸し出しつつ、ニューミュージック全盛時代のような美メロを連発、アップテンポもバラードも言葉のリズム感を交えて、非常にキャッチーな印象を与える楽曲が目白押しで、遂に本領発揮といった趣の名盤となっています。
このような真っ向ストレートなPOPSを支えるにはそれなりの演奏力に支えられたサウンドが必要不可欠であるのは自明の理でありますが、本作ではメンバーの奥田や小松をはじめ、サポートの千ヶ崎学や富田譲(トミタユズル)らの安定感たっぷりなテクニックによって、ポップソングの真髄を味わうことができます(特にインストの「The Death」などは渋い!)。しかしここまでの安定したサウンドを構築するには熟練のプロデューサーが陰で支えているわけで、本作では百戦錬磨の名アレンジャー門倉聡が全体をプロデュース、共同アレンジをこなしてただでさえクオリティの高い楽曲群に華を添えています。もちろん芯となるのは西寺の風通しの良いヴォーカル&メロディメイク能力ですが、この何とも言えない軽さと絶妙なストリングスの装飾による上品なサウンドは、門倉聡の貢献が大きいでしょう。本作によってある種の手応えを感じた彼らはその後も安定した活動と共に評価の高い作品をリリースし続けますが、本作ほど美しくポップ性にあふれた作品はいまだ生み出していないと個人的には思います。
<Favorite Songs>
・「初恋」
どこまでも軽快なカッティングギターが爽やかなオープニングナンバー。なんといっても良く伸びるヴォーカルと優しい癒し系コーラスが心地良過ぎます。機械っぽい打ち込みストリングスブレイクもキャッチーです。
・「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME)」
本作におけるキラーチューンで70年代ディスコチューンの00年代リメイク的ダンスナンバー。ワウワウギターのグルーヴとチープなエレドラフィルインが何とも言えないチープさ加減を醸し出しており見事なB級ディスコの再現率だと思います。
・「HISTORY」
シタールの響きも味わい深い珠玉の名バラード。特に特筆すべきギミックは使わなくてもここまで楽曲に引き込ませるのは、全く隙の感じられない完璧なメロディ構成と真摯なヴォーカル力によるものと言っても過言ではありません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (安定の温かいサウンドながら80'sっぽい機械っぽさも)
・メロディ ★★★★★(西寺の隙のないメロディ構築の才能は疑いのないところ)
・リズム ★★★ (良くも悪くも奇をてらわず落ち着いた渋いリズムキープ)
・曲構成 ★★★★ (要所要所をインストでつなぎ高品質の楽曲が占める)
・個性 ★★★ (こうしたストレートなポップバンドが最近少なく貴重)
総合評点: 9点
NONA REEVES

<members>
西寺郷太:vocals・rhythms・background vocals・rap
奥田健介:electric guitars・acoustic guitars・electric sitar・organ・piano・synthesizers・Melotoron・background vocals
小松茂:drums・electric drums・rhythms・background vocals
1.「初恋」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
2.「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME)」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
3.「TONIGHT~愛があった夕べ~」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
4.「欲望」 詞:西寺郷太 曲:西寺郷太・奥田健介 編:NONA REEVES・門倉聡
5.「HIPPOPOTAMUS」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
6.「IT'S A NEW DAY [BLOW]」 曲:NONA REEVES 編:NONA REEVES・門倉聡
7.「THE DEATH」 曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
8.「アルファベット・ボーイ」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
9.「GIMME GIMME」 詞・曲:西寺郷太 編:NONA REEVES・門倉聡
10.「IT'S A NEW DAY [QUIET STORM]」
曲:NONA REEVES 編:NONA REEVES・門倉聡
11.「HISTORY」
詞:西寺郷太 曲:西寺郷太・奥田健介 編:NONA REEVES・門倉聡
<support musician>
Donyale Renne:vocals
中澤真由:vocals
真城めぐみ:vocals
千ヶ崎学:bass・background vocals
門倉聡:electric piano・synthesizers・keyboards・computer programming・synthesizer manipulate・brass arrangement・strings arrangement
トミタユズル:piano・organ・electric piano・Moog
大石真理恵:percussions
大森はじめ:percussions
エリック宮城:trumpet
村田陽一:trombone
山本拓夫:sax
弦一徹:strings
produced by 門倉聡
mixing engineered by 滝沢武士
recording engineered by 滝沢武士・佐藤宏明・小林孝・高田浩太郎・門倉聡
● 古き良き時代のディスコ&ポップミュージック!抜群のセンスを発揮した実力派バンドの名盤
90年代から活動する日本が誇るソウルフルロックバンドであるNONA REEVESは、80'S洋楽POPS譲りのきらびやかでカラフルなポップセンスと、覚えやすく親しみやすいメロディライン、そしてヴォーカルの西寺郷太による爽やか過ぎるヴォーカルと円熟味溢れる演奏力が見事に融合された実力派グループですが、彼らの数ある作品の中でも最もそのダンサブルな80'フレーバーポップセンスが発揮されているのが、グループ名をタイトルに冠した本作です。もともと美しいメロディにこだわりのある彼らでしたが、レコード会社移籍第1弾となったこの4thアルバムでは70年代ディスコの黒っぽい雰囲気を存分に醸し出しつつ、ニューミュージック全盛時代のような美メロを連発、アップテンポもバラードも言葉のリズム感を交えて、非常にキャッチーな印象を与える楽曲が目白押しで、遂に本領発揮といった趣の名盤となっています。
このような真っ向ストレートなPOPSを支えるにはそれなりの演奏力に支えられたサウンドが必要不可欠であるのは自明の理でありますが、本作ではメンバーの奥田や小松をはじめ、サポートの千ヶ崎学や富田譲(トミタユズル)らの安定感たっぷりなテクニックによって、ポップソングの真髄を味わうことができます(特にインストの「The Death」などは渋い!)。しかしここまでの安定したサウンドを構築するには熟練のプロデューサーが陰で支えているわけで、本作では百戦錬磨の名アレンジャー門倉聡が全体をプロデュース、共同アレンジをこなしてただでさえクオリティの高い楽曲群に華を添えています。もちろん芯となるのは西寺の風通しの良いヴォーカル&メロディメイク能力ですが、この何とも言えない軽さと絶妙なストリングスの装飾による上品なサウンドは、門倉聡の貢献が大きいでしょう。本作によってある種の手応えを感じた彼らはその後も安定した活動と共に評価の高い作品をリリースし続けますが、本作ほど美しくポップ性にあふれた作品はいまだ生み出していないと個人的には思います。
<Favorite Songs>
・「初恋」
どこまでも軽快なカッティングギターが爽やかなオープニングナンバー。なんといっても良く伸びるヴォーカルと優しい癒し系コーラスが心地良過ぎます。機械っぽい打ち込みストリングスブレイクもキャッチーです。
・「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME)」
本作におけるキラーチューンで70年代ディスコチューンの00年代リメイク的ダンスナンバー。ワウワウギターのグルーヴとチープなエレドラフィルインが何とも言えないチープさ加減を醸し出しており見事なB級ディスコの再現率だと思います。
・「HISTORY」
シタールの響きも味わい深い珠玉の名バラード。特に特筆すべきギミックは使わなくてもここまで楽曲に引き込ませるのは、全く隙の感じられない完璧なメロディ構成と真摯なヴォーカル力によるものと言っても過言ではありません。
<評点>
・サウンド ★★★★ (安定の温かいサウンドながら80'sっぽい機械っぽさも)
・メロディ ★★★★★(西寺の隙のないメロディ構築の才能は疑いのないところ)
・リズム ★★★ (良くも悪くも奇をてらわず落ち着いた渋いリズムキープ)
・曲構成 ★★★★ (要所要所をインストでつなぎ高品質の楽曲が占める)
・個性 ★★★ (こうしたストレートなポップバンドが最近少なく貴重)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「VINTAGE」 南佳孝
「VINTAGE」 (1987 CBSソニー)
南佳孝:vocals

1.「Prom Night」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:清水信之
2.「Sweet Charity」 詞:高柳恋 曲:南佳孝 編:清水信之
3.「Taste Of Honey」 詞:小西康陽 曲:南佳孝 編:清水信之
4.「A Day」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:清水信之
5.「グラスの中のブルー・ノート」 詞:田口俊 曲・編:南佳孝
6.「斜めの街」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:大村雅朗
7.「Intro」 曲:南佳孝 編:清水信之
8.「Video City (Remix Version)」 詞:松本隆 曲:南佳孝 編:清水信之
9.「柔らかな午後」 詞:高柳恋 曲:南佳孝 編:井上鑑
10.「物語なき夏」 詞:小西康陽 曲:南佳孝 編:南佳孝・井上鑑
11.「Game & Dream」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:松浦雅也
12.「土曜・日曜」 詞:小西康陽 曲:南佳孝 編:松浦雅也
13.「Girl」 詞:松本隆 曲:南佳孝 編:清水信之
14.「S. E. from "タヒチアン・パラダイス:32DG-40"」
<support musician>
清水信之:all instruments
松浦雅也:all instruments
窪田晴男:guitar
今 剛:electric guitar
佐橋佳幸:guitar
鳥山雄司:guitar
松原正樹:guitar
笛吹利明:acoustic guitar
高水健司:bass
上原裕:drums
見砂和照:drums
村上秀一:drums
山木秀夫:drums
井上鑑:keyboards
笹路正徳:keyboards
富樫春生:keyboards
西本明:keyboards
浜口茂外也:percussion
ペッカー:percussion
数原晋:trumpet
Jake H. Concepcion:sax
後藤輝夫:sax
JOE Stringsグループ:strings
金子飛鳥グループ:strings
Chaka:chorus
EPO:chorus
岩本章江:chorus
飯田高広:synthesizer operate
迫田到:synthesizer operate
田端元:synthesizer operate
富田ヨシマサ:synthesizer operate
松田龍太:synthesizer operate
produced by 南佳孝
mixing engineered by Steve Rinkoff・田中信一
recording engineered by 大野邦彦・松浦雅也
● デジタルなサウンドがロマンティックな夏へ誘う大人のリゾート&シティミュージック集
70年代から80年代にかけてのニューミュージック系メロディメイカーの雄である天才的シンガーソングライター南佳孝は、個性的なヴォーカルスタイルとエレガントでダンディーな楽曲スタイルで多くのリスナーを獲得したアーティストですが、そのコンスタントな活動によりアルバムも数多くリリースされています。坂本龍一をアレンジに迎えた代表作「MONTAGE」や、壮大なアドベンチャーコンセプト作「冒険王」など優れたアルバムを世に送り出す中で、メロディ・サウンド共に充実した領域に達していたのが80年代後半に突入する時期にリリースされた本作です。カラフルでバブルの夜明けを感じていたこの時期だからこそ創り出せる、多彩なミュージシャン陣による力強い打ち込みサウンドと、リゾート感覚が突出した夏を感じさせるメロディラインが巧みに交差した楽曲が本作には多数収録されています。
既にキャリアは抜群で「スローなブギにしてくれ」などのヒット曲に恵まれた彼であるからこそ、余裕が感じられるメロディラインはどっしりした安定感を感じさせ、芯は全くブレることがありません。加えてこの80年代後期には積極的に打ち込みを中心としたデジタルサウンドを導入していきます。こうしたサウンドを支えるのが南が信頼を置く旧知のアレンジャー清水信之であり、当時のデジタル系アレンジでは第1人者とも呼べるクオリティを誇っていた清水サウンドによって料理された彼の楽曲は、そのエレガントさが鋭くなり楽曲としての輪郭がはっきりした感があります。また、新進気鋭のFairlight使いのクリエイター、PSY・Sの松浦雅也を2曲のアレンジに起用したことも、この作品のデジタル感覚からすると正解であったと思われます。南はその後も打ち込みをベースに作品をリリースしていきますが、本作ほどデジタル臭さを前面に押し出す作風ではなくなっていきますので、本作はそういう意味では同じくシンセサウンドが活躍した「冒険王」とは違った意味で南流デジタリアンPOPSの頂点とも言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「Prom Night」
ラテンフレーバー漂う打ち込みリゾートポップの頂点を極めた名曲。抜群のキレを持つシンセブラスに強烈なアタックのスネアドラムを中心とした絶妙なリズム感が全体を支配します。圧巻なのは途中から入ってくる高速シーケンスで、ラテンリズムにマシナリー感をプラスしてゴージャスさが増し、ラストのピアノソロも美しいです。
・「Video City (Remix Version)」
80年代的能天気さが前面に出ているシングルカットされたシティPOPS。「Prom Night」でも見られたリズミカルなシンセブラスがここでも活躍、そしてアタック感の強いドラムがズシッときます。底抜けに明るい曲調とダンディーなヴォーカルに心が躍るようです。
・「Game & Dream」
松浦雅也アレンジのテクニカルな打ち込みが光る楽曲。Fairlightと思われるギターやブラスのサンプリングが比較的シンプルなサウンドの中で異様に目立っています。特に間奏の奔放なサンプルギターソロは笑っちゃうくらい強烈な印象を受けます。
<評点>
・サウンド ★★★ (特にシンセブラスのタイミングが絶妙過ぎる)
・メロディ ★★ (クオリティは高いがややパターンが読まれる部分も)
・リズム ★★★★ (スネアドラムの音色は強烈で80'sの頂点とも言える)
・曲構成 ★ (CD収録を意識してか曲数が多いが逆に個性を希薄に)
・個性 ★★ (たとえデジタルな装飾を施しても譲れない音楽性)
総合評点: 7点
南佳孝:vocals

1.「Prom Night」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:清水信之
2.「Sweet Charity」 詞:高柳恋 曲:南佳孝 編:清水信之
3.「Taste Of Honey」 詞:小西康陽 曲:南佳孝 編:清水信之
4.「A Day」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:清水信之
5.「グラスの中のブルー・ノート」 詞:田口俊 曲・編:南佳孝
6.「斜めの街」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:大村雅朗
7.「Intro」 曲:南佳孝 編:清水信之
8.「Video City (Remix Version)」 詞:松本隆 曲:南佳孝 編:清水信之
9.「柔らかな午後」 詞:高柳恋 曲:南佳孝 編:井上鑑
10.「物語なき夏」 詞:小西康陽 曲:南佳孝 編:南佳孝・井上鑑
11.「Game & Dream」 詞:来生えつ子 曲:南佳孝 編:松浦雅也
12.「土曜・日曜」 詞:小西康陽 曲:南佳孝 編:松浦雅也
13.「Girl」 詞:松本隆 曲:南佳孝 編:清水信之
14.「S. E. from "タヒチアン・パラダイス:32DG-40"」
<support musician>
清水信之:all instruments
松浦雅也:all instruments
窪田晴男:guitar
今 剛:electric guitar
佐橋佳幸:guitar
鳥山雄司:guitar
松原正樹:guitar
笛吹利明:acoustic guitar
高水健司:bass
上原裕:drums
見砂和照:drums
村上秀一:drums
山木秀夫:drums
井上鑑:keyboards
笹路正徳:keyboards
富樫春生:keyboards
西本明:keyboards
浜口茂外也:percussion
ペッカー:percussion
数原晋:trumpet
Jake H. Concepcion:sax
後藤輝夫:sax
JOE Stringsグループ:strings
金子飛鳥グループ:strings
Chaka:chorus
EPO:chorus
岩本章江:chorus
飯田高広:synthesizer operate
迫田到:synthesizer operate
田端元:synthesizer operate
富田ヨシマサ:synthesizer operate
松田龍太:synthesizer operate
produced by 南佳孝
mixing engineered by Steve Rinkoff・田中信一
recording engineered by 大野邦彦・松浦雅也
● デジタルなサウンドがロマンティックな夏へ誘う大人のリゾート&シティミュージック集
70年代から80年代にかけてのニューミュージック系メロディメイカーの雄である天才的シンガーソングライター南佳孝は、個性的なヴォーカルスタイルとエレガントでダンディーな楽曲スタイルで多くのリスナーを獲得したアーティストですが、そのコンスタントな活動によりアルバムも数多くリリースされています。坂本龍一をアレンジに迎えた代表作「MONTAGE」や、壮大なアドベンチャーコンセプト作「冒険王」など優れたアルバムを世に送り出す中で、メロディ・サウンド共に充実した領域に達していたのが80年代後半に突入する時期にリリースされた本作です。カラフルでバブルの夜明けを感じていたこの時期だからこそ創り出せる、多彩なミュージシャン陣による力強い打ち込みサウンドと、リゾート感覚が突出した夏を感じさせるメロディラインが巧みに交差した楽曲が本作には多数収録されています。
既にキャリアは抜群で「スローなブギにしてくれ」などのヒット曲に恵まれた彼であるからこそ、余裕が感じられるメロディラインはどっしりした安定感を感じさせ、芯は全くブレることがありません。加えてこの80年代後期には積極的に打ち込みを中心としたデジタルサウンドを導入していきます。こうしたサウンドを支えるのが南が信頼を置く旧知のアレンジャー清水信之であり、当時のデジタル系アレンジでは第1人者とも呼べるクオリティを誇っていた清水サウンドによって料理された彼の楽曲は、そのエレガントさが鋭くなり楽曲としての輪郭がはっきりした感があります。また、新進気鋭のFairlight使いのクリエイター、PSY・Sの松浦雅也を2曲のアレンジに起用したことも、この作品のデジタル感覚からすると正解であったと思われます。南はその後も打ち込みをベースに作品をリリースしていきますが、本作ほどデジタル臭さを前面に押し出す作風ではなくなっていきますので、本作はそういう意味では同じくシンセサウンドが活躍した「冒険王」とは違った意味で南流デジタリアンPOPSの頂点とも言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「Prom Night」
ラテンフレーバー漂う打ち込みリゾートポップの頂点を極めた名曲。抜群のキレを持つシンセブラスに強烈なアタックのスネアドラムを中心とした絶妙なリズム感が全体を支配します。圧巻なのは途中から入ってくる高速シーケンスで、ラテンリズムにマシナリー感をプラスしてゴージャスさが増し、ラストのピアノソロも美しいです。
・「Video City (Remix Version)」
80年代的能天気さが前面に出ているシングルカットされたシティPOPS。「Prom Night」でも見られたリズミカルなシンセブラスがここでも活躍、そしてアタック感の強いドラムがズシッときます。底抜けに明るい曲調とダンディーなヴォーカルに心が躍るようです。
・「Game & Dream」
松浦雅也アレンジのテクニカルな打ち込みが光る楽曲。Fairlightと思われるギターやブラスのサンプリングが比較的シンプルなサウンドの中で異様に目立っています。特に間奏の奔放なサンプルギターソロは笑っちゃうくらい強烈な印象を受けます。
<評点>
・サウンド ★★★ (特にシンセブラスのタイミングが絶妙過ぎる)
・メロディ ★★ (クオリティは高いがややパターンが読まれる部分も)
・リズム ★★★★ (スネアドラムの音色は強烈で80'sの頂点とも言える)
・曲構成 ★ (CD収録を意識してか曲数が多いが逆に個性を希薄に)
・個性 ★★ (たとえデジタルな装飾を施しても譲れない音楽性)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「4 -when the world was young-」 REAL FISH
「4 -when the world was young-」 (1987 ビクター)
REAL FISH

<members>
矢口博康:sax・clarinet
戸田誠司:guitar・computer
福原まり:piano・keyboard・synthesizer
渡辺等:bass・acoustic guitar
1.「junk」 曲:戸田誠司 編:REAL FISH
2.「a leaf of weapon」 曲:渡辺等 編:REAL FISH
3.「rendez-vous」 曲:福原まり 編:REAL FISH
4.「alligetor&cinema」 曲:矢口博康 編:REAL FISH
5.「idle」 曲:福原まり 編:REAL FISH
6.「solan」 曲:戸田誠司 編:REAL FISH
7.「tricky-coil」 曲:渡辺等 編:REAL FISH
8.「444bellboy」 曲:福原まり 編:REAL FISH
9.「as time-machine goes by」 曲:矢口博康 編:REAL FISH
10.「when the world was young」 曲:戸田誠司 編:REAL FISH
<support musician>
中牟礼貞則:guitar
宮之上貴昭:guitar
石坪信也:drums
寺谷誠一:drums
produced by 戸田誠司
engineered by 飯尾芳史・赤川新一
● 未来から俯瞰したジャズの記憶を映し出したSF JAZZを聞かせる80'sラウンジミュージックの傑作
日本が誇る大道芸的ポップインストバンドと呼ばれた実力派演奏集団REAL FISHは、1984年のメジャーデビュー後2枚のアルバムをリリースし、戸田誠司や福原まり他メンバー4名が結成していたポストニューウェーブバンドSHI-SHONENと並行する形で順調に活動を続けてきましたが、テクノロジーへの傾倒が如実に表れた2ndアルバム「TENON」を最後に、ドラムの友田真吾とバイオリンの美尾洋乃が脱退、コアメンバーとも言える4人編成となります。しかしその後にリリースされた12インチシングル「ジャンクビート東京」は桑田圭祐やいとうせいこう等を迎えたヒップホップで、おまけとは言いながら彼らのイメージとはかけ離れた楽曲であり、さすがの完成度ではあるもののREAL FISH名義というには疑問が残る楽曲でした。こうした方向性が迷走する中リリースされた本作は、顕著になったテクノロジーサウンドを生かしながら、アンチジャズを標榜してきた彼らが未来からもう1度ジャズを俯瞰するというコンセプトのもと作られた興味深い作品です。
強力なスネアドラムとドリーミーでファンタジックな曲調が遊星オーケストラという名にふさわしかった前作「TENON」と比べると、ポップ性は抑えられたものの、メンバー4人がそれぞれ手掛けた楽曲の個性が際立つことになり、よりテクノロジーと生演奏の融合が板についてきたという印象を受けます。SFジャズというだけあって「ジャズ」を下地にしながらもただ複雑な演奏力を見せつけるだけでなく、シンセベースや電子音を多用した未来を感じさせるサウンドを巧みに加えることによって、全く古臭さやノスタルジーは感じさせません。楽曲によってはラウンジミュージック感覚がひしひしと感じられる癒しテイストのものもありますが、どの楽曲もプレイヤーの演奏力を再確認させながらも電子音響的な部分はどうしても外せない、むしろそれが個性であることを主張しているかのような彼らのサウンドは、やはり同時代の他のグループにはなかった唯一無二のものではなかったかと思われます。本作をもって彼らは活動休止に至りますが、いまだに彼らのような個性的なノージャンルのインストグループはなかなか現れていないのが現状です。
<Favorite Songs>
・「junk」
サンプラーによる強烈なマシナリーリズムで幕を開けるテクノジャズ。剥き出しのコンピューター音によるシーケンスとシンセベースによるジャズフレーズが違和感を感じさせます。暴走するロボットのような制御しきれない感じがユーモラスです。
・「solan」
本作中最もポップで近未来、そしてファンタジックなサウンドを持つ名曲。コードを奏でる白玉パッドの落ち着きが何とも言えない味を醸し出しています。中盤のシンセブラスの目まぐるしいフレーズも様式美が感じられます。
・「444bellboy」
ホテルのBGMでかかるようなこれぞラウンジの元祖ともいうべき癒し楽曲。落ち着きのあるメインフレーズから広がりのあるBパートまで、その穏やかさと共に緻密さにも感心させられます。そしてこのかわいらしさとエレガンスさが福原まりの個性の1つであると再確認させられます。
<評点>
・サウンド ★★★ (混ぜ合わせてくる電子音とジャズの融合が非常に新鮮)
・メロディ ★★ (ジャズとはいえ覚えやすいフレーズでポップ性は失わず)
・リズム ★★★ (石坪と寺谷の2人のドラマーは友田の不在を感じさせず)
・曲構成 ★★ (後半は少し落ち着きが過ぎるのではないかとあえて注文)
・個性 ★★ (バンドとしての終末感は漂うが気持ちよく演奏が聴ける)
総合評点: 7点
REAL FISH

<members>
矢口博康:sax・clarinet
戸田誠司:guitar・computer
福原まり:piano・keyboard・synthesizer
渡辺等:bass・acoustic guitar
1.「junk」 曲:戸田誠司 編:REAL FISH
2.「a leaf of weapon」 曲:渡辺等 編:REAL FISH
3.「rendez-vous」 曲:福原まり 編:REAL FISH
4.「alligetor&cinema」 曲:矢口博康 編:REAL FISH
5.「idle」 曲:福原まり 編:REAL FISH
6.「solan」 曲:戸田誠司 編:REAL FISH
7.「tricky-coil」 曲:渡辺等 編:REAL FISH
8.「444bellboy」 曲:福原まり 編:REAL FISH
9.「as time-machine goes by」 曲:矢口博康 編:REAL FISH
10.「when the world was young」 曲:戸田誠司 編:REAL FISH
<support musician>
中牟礼貞則:guitar
宮之上貴昭:guitar
石坪信也:drums
寺谷誠一:drums
produced by 戸田誠司
engineered by 飯尾芳史・赤川新一
● 未来から俯瞰したジャズの記憶を映し出したSF JAZZを聞かせる80'sラウンジミュージックの傑作
日本が誇る大道芸的ポップインストバンドと呼ばれた実力派演奏集団REAL FISHは、1984年のメジャーデビュー後2枚のアルバムをリリースし、戸田誠司や福原まり他メンバー4名が結成していたポストニューウェーブバンドSHI-SHONENと並行する形で順調に活動を続けてきましたが、テクノロジーへの傾倒が如実に表れた2ndアルバム「TENON」を最後に、ドラムの友田真吾とバイオリンの美尾洋乃が脱退、コアメンバーとも言える4人編成となります。しかしその後にリリースされた12インチシングル「ジャンクビート東京」は桑田圭祐やいとうせいこう等を迎えたヒップホップで、おまけとは言いながら彼らのイメージとはかけ離れた楽曲であり、さすがの完成度ではあるもののREAL FISH名義というには疑問が残る楽曲でした。こうした方向性が迷走する中リリースされた本作は、顕著になったテクノロジーサウンドを生かしながら、アンチジャズを標榜してきた彼らが未来からもう1度ジャズを俯瞰するというコンセプトのもと作られた興味深い作品です。
強力なスネアドラムとドリーミーでファンタジックな曲調が遊星オーケストラという名にふさわしかった前作「TENON」と比べると、ポップ性は抑えられたものの、メンバー4人がそれぞれ手掛けた楽曲の個性が際立つことになり、よりテクノロジーと生演奏の融合が板についてきたという印象を受けます。SFジャズというだけあって「ジャズ」を下地にしながらもただ複雑な演奏力を見せつけるだけでなく、シンセベースや電子音を多用した未来を感じさせるサウンドを巧みに加えることによって、全く古臭さやノスタルジーは感じさせません。楽曲によってはラウンジミュージック感覚がひしひしと感じられる癒しテイストのものもありますが、どの楽曲もプレイヤーの演奏力を再確認させながらも電子音響的な部分はどうしても外せない、むしろそれが個性であることを主張しているかのような彼らのサウンドは、やはり同時代の他のグループにはなかった唯一無二のものではなかったかと思われます。本作をもって彼らは活動休止に至りますが、いまだに彼らのような個性的なノージャンルのインストグループはなかなか現れていないのが現状です。
<Favorite Songs>
・「junk」
サンプラーによる強烈なマシナリーリズムで幕を開けるテクノジャズ。剥き出しのコンピューター音によるシーケンスとシンセベースによるジャズフレーズが違和感を感じさせます。暴走するロボットのような制御しきれない感じがユーモラスです。
・「solan」
本作中最もポップで近未来、そしてファンタジックなサウンドを持つ名曲。コードを奏でる白玉パッドの落ち着きが何とも言えない味を醸し出しています。中盤のシンセブラスの目まぐるしいフレーズも様式美が感じられます。
・「444bellboy」
ホテルのBGMでかかるようなこれぞラウンジの元祖ともいうべき癒し楽曲。落ち着きのあるメインフレーズから広がりのあるBパートまで、その穏やかさと共に緻密さにも感心させられます。そしてこのかわいらしさとエレガンスさが福原まりの個性の1つであると再確認させられます。
<評点>
・サウンド ★★★ (混ぜ合わせてくる電子音とジャズの融合が非常に新鮮)
・メロディ ★★ (ジャズとはいえ覚えやすいフレーズでポップ性は失わず)
・リズム ★★★ (石坪と寺谷の2人のドラマーは友田の不在を感じさせず)
・曲構成 ★★ (後半は少し落ち着きが過ぎるのではないかとあえて注文)
・個性 ★★ (バンドとしての終末感は漂うが気持ちよく演奏が聴ける)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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