「うたをうたえば」 米村裕美
「うたをうたえば」 (1993 マイカルハミングバード)
米村裕美:vocal・keyboards・background vocals

1.「Hello!」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
2.「ドライブ」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
3.「冬の木洩れ日」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
4.「きれいになりたい」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
5.「せいいっぱい」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
6.「こどもはみんなあまがっぱ」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
7.「夢の贈り物 (Album version)」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
8.「Little Black Sambo」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
9.「よくあること・・」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
10.「うたをうたえば」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
11.「窓ガラスのメッセージ」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
12.「素直になりたい (Album version)」 詞・曲:米村裕美 編:渡辺格
<support musician>
梶原順:electric guitar
是永巧一:electric guitar
古川昌義:electric guitar・acoustic guitar
渡辺格:electric guitar・acoustic guitar・keyboards
笛吹利明:gut guitar
吉川忠英:pick guitar・acoustic guitar・mandolin・ukulele
上杉洋史:keyboards
重実徹:keyboards
RAJI:background vocals
木戸泰弘:background vocals
木村真紀:background vocals
比山貴咏史:background vocals
広谷順子:background vocals
亀田誠治:computer programming・electric bass
北城浩志:synthesizer operate
高橋章:synthesizer operate
produced by 米村裕美
sound produced by 亀田誠治
engineered by 藁谷義徳
● サウンドも軽やか!亀田誠治のセンスと米村裕美のほのぼのメロディの集大成的3rdアルバム
1990年代に入りメロディ志向のシンガーソングライターがもてはやされる中デビューしたノスタルジックPOPSの担い手である米村裕美は、1stや2ndアルバムのジャケからも推測されるようなメルヘンチックな世界観とそれを表現して余りあるキュートなウィスパーヴォイスで着実にファンを増やしつつありました。特にCMソングとなった「Treasure」は当時はテレビからもよくそのメロディが流れ、知名度は低いもののある程度の市民権は得ていたのではないかと思われます。このような順調な流れからリリースされた3rdアルバムが本作というわけですが、ここで彼女はサウンド面でマイナーチェンジを図ります。これまでは懐かしさ重視の泣きのメロディが特徴で生演奏にうっすら打ち込みを交えるようなサウンドであったのが、本作ではこれまでの路線上にある楽曲と共にチープなシンセが前面に押し出された楽曲も加わり、夢見心地であったサウンドから等身大のおしゃれPOPSへと脱皮した印象の作品となっています。
1曲目の「Hello!」こそ心温まるジャズテイストの楽曲ですが、「ドライブ」「きれいになりたい」「うたをうたえば」などはシンセベースが活躍するリズムボックスも軽やかなポップソングで、まさに新境地を見せています。サウンドプロデュースは前作までと同じく若かりし日の亀田誠治(ex.東京事変)ですが、これまでのノスタルジーからの脱却・変身によって新たなサウンドセンスの側面を発揮しています。このイメージチェンジは明らかにCG仕事というべき立花ハジメデザインのジャケ(当時は酷評されましたが)からも容易に気付くことでしょう。もちろん彼女の楽曲において最大の魅力である美メロ満載のバラードソングは健在で、「冬の木洩れ日」「せいいっぱい」「夢の贈り物」はどれもクオリティの高さがうかがえる出来で、その意味ではしっかり安心できる完成度の作品であると言えるでしょう。前作までよりそのサウンドのチープさから少し肩の力が抜けた印象でそこは賛否両論でしたが、この爽やかでシンプルなメロディ重視の楽曲群が収録されている本作は、90年代の1つの形として心にとどめておく必要がありそうです(しかし廃盤ですが・・)。
<Favorite Songs>
・「冬の木洩れ日」
米村裕美の十八番ともいうべき泣きメロディのバラード。シンプルかつきらびやかな音色を使用したサウンドが冬という季節によく似合っています。また、亀田のフレットレスベースもその隙間の多いサウンドの中により生かされています。
・「夢の贈り物 (Album version)」
彼女の楽曲には意外となかったクリスマスソングシングル。リバーブの効いた音色やコーラスがまさしくクリスマス仕様ですが、やはり魅力はサビのメロディで、その安定感は才能そのものと言えるでしょう。
・「窓ガラスのメッセージ」
こうした小作品のバラードにも全く手を抜かないところにも彼女の安定感が感じられます。シンプルなエレピによる弾き語りにリズムボックスやシンセをかぶせていく構成で、特に間奏のピアノフレーズは1つ1つの音を大切にしていて好感が持てます。
<評点>
・サウンド ★ (極力シンプルなシンセの使用が低予算ととられるかも)
・メロディ ★★★ (バラードの存在感は抜群だが若干波も見られる)
・リズム ★ (リズムボックスの多用が印象をさらにチープに)
・曲構成 ★★ (冬リリースということから大人しい抑えめの曲が多い)
・個性 ★ (新境地に挑戦したが前作路線への未練がバラツキに)
総合評点: 6点
米村裕美:vocal・keyboards・background vocals

1.「Hello!」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
2.「ドライブ」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
3.「冬の木洩れ日」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
4.「きれいになりたい」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
5.「せいいっぱい」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
6.「こどもはみんなあまがっぱ」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
7.「夢の贈り物 (Album version)」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
8.「Little Black Sambo」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
9.「よくあること・・」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
10.「うたをうたえば」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
11.「窓ガラスのメッセージ」 詞・曲:米村裕美 編:亀田誠治
12.「素直になりたい (Album version)」 詞・曲:米村裕美 編:渡辺格
<support musician>
梶原順:electric guitar
是永巧一:electric guitar
古川昌義:electric guitar・acoustic guitar
渡辺格:electric guitar・acoustic guitar・keyboards
笛吹利明:gut guitar
吉川忠英:pick guitar・acoustic guitar・mandolin・ukulele
上杉洋史:keyboards
重実徹:keyboards
RAJI:background vocals
木戸泰弘:background vocals
木村真紀:background vocals
比山貴咏史:background vocals
広谷順子:background vocals
亀田誠治:computer programming・electric bass
北城浩志:synthesizer operate
高橋章:synthesizer operate
produced by 米村裕美
sound produced by 亀田誠治
engineered by 藁谷義徳
● サウンドも軽やか!亀田誠治のセンスと米村裕美のほのぼのメロディの集大成的3rdアルバム
1990年代に入りメロディ志向のシンガーソングライターがもてはやされる中デビューしたノスタルジックPOPSの担い手である米村裕美は、1stや2ndアルバムのジャケからも推測されるようなメルヘンチックな世界観とそれを表現して余りあるキュートなウィスパーヴォイスで着実にファンを増やしつつありました。特にCMソングとなった「Treasure」は当時はテレビからもよくそのメロディが流れ、知名度は低いもののある程度の市民権は得ていたのではないかと思われます。このような順調な流れからリリースされた3rdアルバムが本作というわけですが、ここで彼女はサウンド面でマイナーチェンジを図ります。これまでは懐かしさ重視の泣きのメロディが特徴で生演奏にうっすら打ち込みを交えるようなサウンドであったのが、本作ではこれまでの路線上にある楽曲と共にチープなシンセが前面に押し出された楽曲も加わり、夢見心地であったサウンドから等身大のおしゃれPOPSへと脱皮した印象の作品となっています。
1曲目の「Hello!」こそ心温まるジャズテイストの楽曲ですが、「ドライブ」「きれいになりたい」「うたをうたえば」などはシンセベースが活躍するリズムボックスも軽やかなポップソングで、まさに新境地を見せています。サウンドプロデュースは前作までと同じく若かりし日の亀田誠治(ex.東京事変)ですが、これまでのノスタルジーからの脱却・変身によって新たなサウンドセンスの側面を発揮しています。このイメージチェンジは明らかにCG仕事というべき立花ハジメデザインのジャケ(当時は酷評されましたが)からも容易に気付くことでしょう。もちろん彼女の楽曲において最大の魅力である美メロ満載のバラードソングは健在で、「冬の木洩れ日」「せいいっぱい」「夢の贈り物」はどれもクオリティの高さがうかがえる出来で、その意味ではしっかり安心できる完成度の作品であると言えるでしょう。前作までよりそのサウンドのチープさから少し肩の力が抜けた印象でそこは賛否両論でしたが、この爽やかでシンプルなメロディ重視の楽曲群が収録されている本作は、90年代の1つの形として心にとどめておく必要がありそうです(しかし廃盤ですが・・)。
<Favorite Songs>
・「冬の木洩れ日」
米村裕美の十八番ともいうべき泣きメロディのバラード。シンプルかつきらびやかな音色を使用したサウンドが冬という季節によく似合っています。また、亀田のフレットレスベースもその隙間の多いサウンドの中により生かされています。
・「夢の贈り物 (Album version)」
彼女の楽曲には意外となかったクリスマスソングシングル。リバーブの効いた音色やコーラスがまさしくクリスマス仕様ですが、やはり魅力はサビのメロディで、その安定感は才能そのものと言えるでしょう。
・「窓ガラスのメッセージ」
こうした小作品のバラードにも全く手を抜かないところにも彼女の安定感が感じられます。シンプルなエレピによる弾き語りにリズムボックスやシンセをかぶせていく構成で、特に間奏のピアノフレーズは1つ1つの音を大切にしていて好感が持てます。
<評点>
・サウンド ★ (極力シンプルなシンセの使用が低予算ととられるかも)
・メロディ ★★★ (バラードの存在感は抜群だが若干波も見られる)
・リズム ★ (リズムボックスの多用が印象をさらにチープに)
・曲構成 ★★ (冬リリースということから大人しい抑えめの曲が多い)
・個性 ★ (新境地に挑戦したが前作路線への未練がバラツキに)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「From the Tea-rooms of Mars ....」 LANDSCAPE
「From the Tea-rooms of Mars ....」(1981 BMG)
LANDSCAPE

<members>
Richard James Burgess:vocals・Roland MC-8 computer programming・Simmons SDS-V electronic drums・Burgess Amplified Percussion・Roland System 100 Modular Synths・drums・Simmons Claptrap
Christopher Heaton:Yamaha CS-80・piano・Fender Rhodes piano with ring modulator and effects・Casiotone 201・Minimoog・Roland Vocoders・vocals
Andy Pask:bass・fretless bass・bass synthesizers・vocals・Yamaha CS-80・Roland Pro Mars
Peter Thoms:electronic trombone・trombone・vocals・Roland Pitch/Voltage synthesizer
John Walters:Roland MC-8 computer programming・Computone wind synthesizer driver and Lyricon1・soprano sax・vocals・Roland ProMars・Roland System 100 synthesizers and vocoder
1.「European Man」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
2.「Shake The West Awake」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/John Walters/Peter Thoms
3.「Computer Person」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
4.「Alpine Tragedy~Sisters」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
5.「Face Of The 80’s」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/John Walters/Peter Thoms
6.「New Religion」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/John Walters/Peter Thoms
7.「Einstein A Go-Go」
John Walters/Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thomas
8.「Norman Bates」
John Walters/Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thomas
9.「The Doll’s House」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
10.「From the Tea-rooms of Mars .... To The Hell Holes Of Uranus」
“Beguine” Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
“Mambo” Richard James Burgess/Christopher Heaton/John Walters/
“Tango” Richard James Burgess/John Walters/Andy Pask/Peter Thoms
<support musician>
Mary Baird:screams
Peter Marinker:narration
produced by LANDSCAPE・Colin Thurston
engineered by John Etchells・John Hudson・Brian Tench・Huge Padgham・Andy Jackson・Peter Walsh・Rafe McKenna・Peter Smith・Steve Rance・Graeme Jackson・Rick Walton・Dave Hunt・David Baker・Colin Thurston・LANDSCAPE
● 惜しげもなく電子楽器を使用した一発屋B級エレクトロポップバンドのコンセプト主義を漂わす迷盤
1970年代末からフュージョン畑で活動し、メンバーそれぞれが手練のプレイヤーであったLANDSCAPEは、80年代に入ってニューロマンティクス・ニューウェーブの波に華麗に便乗し、シンセポップグループとして生まれ変わりました。初期Spandau BalletをプロデュースしたドラマーRichard James Burgessを中心としたこのグループは、80年代初頭でありながら電子楽器を思う存分多用し、自分たちのエレクトロポップ化を心底楽しんでいるかのようなマシナリーでスペイシーな楽曲を生み出していきます。そして81年にはシングル「Einstein A Go-Go」がUKチャートでトップ10に入る大ヒットとなり一躍注目を浴びました。その勢いでリリースされた彼ら最大のヒット作であり傑作である作品が本作です。
当時音楽界を席巻していたシーケンサーの代名詞Roland MC-8でプログラミングされたシーケンス(&ボコーダーサウンド)は、それだけでも80年代初頭にタイムスリップできるほどの独特の味がありますが、何よりも注目すべき点はRichard James BurgessがDave Simmonsと開発した、後に世界中に大きな影響を与えた電子ドラムの元祖、Simmons SDS-Vが大々的に使用されていることでしょう。その六角形の斬新なデザインによるエレクトリックドラムがBurgessによって世に送り出されたことだけでもこのグループの、そして本作の価値があるというものです。しかし、これだけシンセを多用してエレクトロポップ化を目指しながらどこか懐かしさを感じてしまうのは、楽曲の構成や彼らの演奏力にそこはかとなく感じられ、どうしても抜けきれないフュージョン臭さにあるのではないかと思います。そのあたりが彼らのシンセポップとしての知名度をいまいち低くさせているのかもしれません。ブームの終焉と共に活動を自然消滅させていったことも彼らの一発屋としての側面に拍車をかけていますが、個人的には前述のようにSimmonsドラム使用の先駆的作品として重要であると感じています。
<Favorite Songs>
・「European Man」
サックスが絡む大ヒット前夜のシングルカット曲。電子音を強調したリズムにシーケンスが絡み合い切迫感のあるテクノポップに仕上がっていますが、バンドサウンドとしてもしっかり楽しめる作りになっているのが彼らの特徴です。
・「Computer Person」
チープなリズムボックスにシンプルなシーケンスがキュートな典型的なシンセポップ。ボコーダーによるヴォーカルの余りに機械的な印象に、彼らのストイックな一面を感じざるを得ません。
・「Einstein A Go-Go」
大ヒットしたシンセポップの1つの完成形とも言える楽曲。曲調は比較的単調とも言えますが、シンプルで牧歌的なメロディと無機質なシンセ音の混ざり具合が本作の秀逸な点であると思います。
<評点>
・サウンド ★★★ (これでもかとシンセや電子音を強調し力が入っている)
・メロディ ★ (お世辞にもポップとはいえない凡庸なメロに終始)
・リズム ★★ (SIMMONSの使い方はまだまだ試行錯誤の感が否めず)
・曲構成 ★ (コンセプト作品ではあるが凡庸な楽曲が多く印象薄)
・個性 ★ (ブームに乗ったもののタイミングを間違えた感も)
総合評点: 6点
LANDSCAPE

<members>
Richard James Burgess:vocals・Roland MC-8 computer programming・Simmons SDS-V electronic drums・Burgess Amplified Percussion・Roland System 100 Modular Synths・drums・Simmons Claptrap
Christopher Heaton:Yamaha CS-80・piano・Fender Rhodes piano with ring modulator and effects・Casiotone 201・Minimoog・Roland Vocoders・vocals
Andy Pask:bass・fretless bass・bass synthesizers・vocals・Yamaha CS-80・Roland Pro Mars
Peter Thoms:electronic trombone・trombone・vocals・Roland Pitch/Voltage synthesizer
John Walters:Roland MC-8 computer programming・Computone wind synthesizer driver and Lyricon1・soprano sax・vocals・Roland ProMars・Roland System 100 synthesizers and vocoder
1.「European Man」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
2.「Shake The West Awake」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/John Walters/Peter Thoms
3.「Computer Person」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
4.「Alpine Tragedy~Sisters」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
5.「Face Of The 80’s」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/John Walters/Peter Thoms
6.「New Religion」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/John Walters/Peter Thoms
7.「Einstein A Go-Go」
John Walters/Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thomas
8.「Norman Bates」
John Walters/Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thomas
9.「The Doll’s House」
Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
10.「From the Tea-rooms of Mars .... To The Hell Holes Of Uranus」
“Beguine” Richard James Burgess/Christopher Heaton/Andy Pask/Peter Thoms/John Walters
“Mambo” Richard James Burgess/Christopher Heaton/John Walters/
“Tango” Richard James Burgess/John Walters/Andy Pask/Peter Thoms
<support musician>
Mary Baird:screams
Peter Marinker:narration
produced by LANDSCAPE・Colin Thurston
engineered by John Etchells・John Hudson・Brian Tench・Huge Padgham・Andy Jackson・Peter Walsh・Rafe McKenna・Peter Smith・Steve Rance・Graeme Jackson・Rick Walton・Dave Hunt・David Baker・Colin Thurston・LANDSCAPE
● 惜しげもなく電子楽器を使用した一発屋B級エレクトロポップバンドのコンセプト主義を漂わす迷盤
1970年代末からフュージョン畑で活動し、メンバーそれぞれが手練のプレイヤーであったLANDSCAPEは、80年代に入ってニューロマンティクス・ニューウェーブの波に華麗に便乗し、シンセポップグループとして生まれ変わりました。初期Spandau BalletをプロデュースしたドラマーRichard James Burgessを中心としたこのグループは、80年代初頭でありながら電子楽器を思う存分多用し、自分たちのエレクトロポップ化を心底楽しんでいるかのようなマシナリーでスペイシーな楽曲を生み出していきます。そして81年にはシングル「Einstein A Go-Go」がUKチャートでトップ10に入る大ヒットとなり一躍注目を浴びました。その勢いでリリースされた彼ら最大のヒット作であり傑作である作品が本作です。
当時音楽界を席巻していたシーケンサーの代名詞Roland MC-8でプログラミングされたシーケンス(&ボコーダーサウンド)は、それだけでも80年代初頭にタイムスリップできるほどの独特の味がありますが、何よりも注目すべき点はRichard James BurgessがDave Simmonsと開発した、後に世界中に大きな影響を与えた電子ドラムの元祖、Simmons SDS-Vが大々的に使用されていることでしょう。その六角形の斬新なデザインによるエレクトリックドラムがBurgessによって世に送り出されたことだけでもこのグループの、そして本作の価値があるというものです。しかし、これだけシンセを多用してエレクトロポップ化を目指しながらどこか懐かしさを感じてしまうのは、楽曲の構成や彼らの演奏力にそこはかとなく感じられ、どうしても抜けきれないフュージョン臭さにあるのではないかと思います。そのあたりが彼らのシンセポップとしての知名度をいまいち低くさせているのかもしれません。ブームの終焉と共に活動を自然消滅させていったことも彼らの一発屋としての側面に拍車をかけていますが、個人的には前述のようにSimmonsドラム使用の先駆的作品として重要であると感じています。
<Favorite Songs>
・「European Man」
サックスが絡む大ヒット前夜のシングルカット曲。電子音を強調したリズムにシーケンスが絡み合い切迫感のあるテクノポップに仕上がっていますが、バンドサウンドとしてもしっかり楽しめる作りになっているのが彼らの特徴です。
・「Computer Person」
チープなリズムボックスにシンプルなシーケンスがキュートな典型的なシンセポップ。ボコーダーによるヴォーカルの余りに機械的な印象に、彼らのストイックな一面を感じざるを得ません。
・「Einstein A Go-Go」
大ヒットしたシンセポップの1つの完成形とも言える楽曲。曲調は比較的単調とも言えますが、シンプルで牧歌的なメロディと無機質なシンセ音の混ざり具合が本作の秀逸な点であると思います。
<評点>
・サウンド ★★★ (これでもかとシンセや電子音を強調し力が入っている)
・メロディ ★ (お世辞にもポップとはいえない凡庸なメロに終始)
・リズム ★★ (SIMMONSの使い方はまだまだ試行錯誤の感が否めず)
・曲構成 ★ (コンセプト作品ではあるが凡庸な楽曲が多く印象薄)
・個性 ★ (ブームに乗ったもののタイミングを間違えた感も)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「超時空コロダスタン旅行記」 アポジー&ペリジー
「超時空コロダスタン旅行記」 (1984 アルファ)
アポジー&ペリジー

<members>
アポジー(三宅裕司):vocal
ペリジー(戸川純):vocal
1.「プロローグ」 曲・編:Testpattern ナレーション:篠崎光正
2.「月世界旅行」
詞:松本隆 曲:細野晴臣 編:細野晴臣・国本佳宏 歌:アポジー(三宅裕司)&ペリジー(戸川純)
3.「プロフェッサー・パーセク」
詞:大野方栄 曲・編:上野耕路 歌:プロフェッサー・パーセク(山上浩史)
4.「アニマロイド・MV II~Tragic-Comedie~」
詞・曲・編:越美晴 歌:アニマロイドMV II(越美晴)
5.「逆さ賢人・イーガス~侏儒迷宮~」 詞・曲・編:越美晴 歌:オーガス(森の木合唱団)
6.「アポジーのテーマ~スペース・フォクロア~」
詞:沙帆咏児 曲・編:福岡裕 歌:アポジー(三宅裕司)&福岡ユタカ
7.「クイーン・グレイシャー」
詞:沙帆咏児 曲・編:増田隆宣 歌:クイーン・グレイシャー(橋本みゆき)
8.「ペリジーのテーマ」 詞:大野方栄 曲・編:吉川洋一郎 歌:ペリジー(戸川純)
9.「真空キッス」 詞:松本隆 曲・編:細野晴臣 歌:アポジー(三宅裕司)&ペリジー(戸川純)
10.「HOPE」 曲・編:Testpattern
produced by 小尾一介
engineered by 寺田康彦・飯尾芳史・土井章嗣・野村昌之
● 当時の若きテクノ界隈の才能が結集!企画盤の殻をかぶったYENレーベルの隠れた傑作
レトロロボットがもてはやされた80年代、折しも筑波科学万博で科学技術に対する機運が高まりつつあったこの1984年という時期は、音楽においてもテクノミュージックのような機械的な手法が一般化となりつつありましたが、そのブームの中核を担ったYMO周辺のグループが集まったYENレーベルはその役割を終えつつありました。そんな末期にあって突如リリースされた企画アルバムが本作です。ウィスキーのCMにも登場したロボット、アポジーとペリジーが歌うというコンセプトでシングル「月世界旅行」がリリース、CMソングということもあって多少話題にもなりましたが、彼ら(ロボットですが)のストーリーをモチーフにしたイメージアルバムとしてYENレーベルゆかりのアーティストが結集し、最後の力を振り絞るように作品を残してしまったわけです。
美しいクリーンテクノグループTestpatternの名曲「HOPE」がオープニングとエンディングを務める本作の魅力は、細野晴臣楽曲である先行シングル「月世界旅行」「真空キッス」という申し分ないキャッチーなテクノ歌謡がどうしても目立つものの、その他の楽曲がそれら以上に気合いが入っています。特にこの1984年自身のソロ作品やPINK TANKなどへの楽曲提供でテクノな才能を一気に開花させた越美晴の仕事ぶりが尋常でなく、「アニマロイド・MV II」や「逆さ賢人・イーガス」の堂々たる純度の高いテクノポップとしての完成度は師匠の細野に負けずとも劣らないものがあります。その他も上野耕路や福岡ユタカ、吉川洋一郎といった戸川純つながりの人脈が活躍、後にB'zのサポートとして長年活動している増田隆宣の楽曲だけがモロにハードロックでさすがに浮いているものの、基本はYEN式テクノポップな楽曲でSF&ファンタジーな世界観を表現したコンセプトアルバムに仕上げています。再発CDが既にプレミアがつくほどの隠れた名作である本作ですが、こういった世界観が好みの方々にとってはストライクなサウンドでありコンセプトでもあるので、機会がある方はぜひ手に入れてほしい作品であると思います。
<Favorite Songs>
・「プロフェッサー・パーセク」
既存のPOPSにとらわれない構成と複雑なシンセフレーズと金属的な音色が不気味な上野耕路楽曲。さすがはあのゲルニカのサウンドメイカーというべき奇妙な曲調と彼にしては比較的きらびやかな音使いが、どこかしら宇宙空間を想像させます。
・「アニマロイド・MV II~Tragic-Comedie~」
ほとんど彼女のソロと言ってもよい越美晴テイスト満載の楽曲。傑作アルバム「Parallelism」に収録されていても全く違和感のないストレートなテクノポップで、ハンドクラップを交えたPCMリズムマシンの正確なリズムパターンがエフェクティブで心地良い名曲です。
・「逆さ賢人・イーガス~侏儒迷宮~」
ソロも含めた越美晴の楽曲中でも傑作の部類に入るスペイシー童謡。淡々としたリズムですが音色が非常に良く、マリンバ系のシンセフレーズやシンセベースも柔らかく仕上げられています。子供コーラスで全編を通していくのも、楽曲が持つファンタジックなイメージを考えれば絶妙なマッチングではないでしょうか。
<評点>
・サウンド ★★★★★(ただのスペイシーなテクノでなく美しさを追求)
・メロディ ★★★★ (どれもキャッチーで覚えやすくマニアックになり過ぎず)
・リズム ★★★★ (PCMリズムマシンが大活躍でそのキレの良さが魅力的)
・曲構成 ★★ (どうしても「クイーン・グレイシャー」が理解できない)
・個性 ★★★ (Testpatternの「HOPE」だけでもその起用は大当たり)
総合評点: 9点
アポジー&ペリジー

<members>
アポジー(三宅裕司):vocal
ペリジー(戸川純):vocal
1.「プロローグ」 曲・編:Testpattern ナレーション:篠崎光正
2.「月世界旅行」
詞:松本隆 曲:細野晴臣 編:細野晴臣・国本佳宏 歌:アポジー(三宅裕司)&ペリジー(戸川純)
3.「プロフェッサー・パーセク」
詞:大野方栄 曲・編:上野耕路 歌:プロフェッサー・パーセク(山上浩史)
4.「アニマロイド・MV II~Tragic-Comedie~」
詞・曲・編:越美晴 歌:アニマロイドMV II(越美晴)
5.「逆さ賢人・イーガス~侏儒迷宮~」 詞・曲・編:越美晴 歌:オーガス(森の木合唱団)
6.「アポジーのテーマ~スペース・フォクロア~」
詞:沙帆咏児 曲・編:福岡裕 歌:アポジー(三宅裕司)&福岡ユタカ
7.「クイーン・グレイシャー」
詞:沙帆咏児 曲・編:増田隆宣 歌:クイーン・グレイシャー(橋本みゆき)
8.「ペリジーのテーマ」 詞:大野方栄 曲・編:吉川洋一郎 歌:ペリジー(戸川純)
9.「真空キッス」 詞:松本隆 曲・編:細野晴臣 歌:アポジー(三宅裕司)&ペリジー(戸川純)
10.「HOPE」 曲・編:Testpattern
produced by 小尾一介
engineered by 寺田康彦・飯尾芳史・土井章嗣・野村昌之
● 当時の若きテクノ界隈の才能が結集!企画盤の殻をかぶったYENレーベルの隠れた傑作
レトロロボットがもてはやされた80年代、折しも筑波科学万博で科学技術に対する機運が高まりつつあったこの1984年という時期は、音楽においてもテクノミュージックのような機械的な手法が一般化となりつつありましたが、そのブームの中核を担ったYMO周辺のグループが集まったYENレーベルはその役割を終えつつありました。そんな末期にあって突如リリースされた企画アルバムが本作です。ウィスキーのCMにも登場したロボット、アポジーとペリジーが歌うというコンセプトでシングル「月世界旅行」がリリース、CMソングということもあって多少話題にもなりましたが、彼ら(ロボットですが)のストーリーをモチーフにしたイメージアルバムとしてYENレーベルゆかりのアーティストが結集し、最後の力を振り絞るように作品を残してしまったわけです。
美しいクリーンテクノグループTestpatternの名曲「HOPE」がオープニングとエンディングを務める本作の魅力は、細野晴臣楽曲である先行シングル「月世界旅行」「真空キッス」という申し分ないキャッチーなテクノ歌謡がどうしても目立つものの、その他の楽曲がそれら以上に気合いが入っています。特にこの1984年自身のソロ作品やPINK TANKなどへの楽曲提供でテクノな才能を一気に開花させた越美晴の仕事ぶりが尋常でなく、「アニマロイド・MV II」や「逆さ賢人・イーガス」の堂々たる純度の高いテクノポップとしての完成度は師匠の細野に負けずとも劣らないものがあります。その他も上野耕路や福岡ユタカ、吉川洋一郎といった戸川純つながりの人脈が活躍、後にB'zのサポートとして長年活動している増田隆宣の楽曲だけがモロにハードロックでさすがに浮いているものの、基本はYEN式テクノポップな楽曲でSF&ファンタジーな世界観を表現したコンセプトアルバムに仕上げています。再発CDが既にプレミアがつくほどの隠れた名作である本作ですが、こういった世界観が好みの方々にとってはストライクなサウンドでありコンセプトでもあるので、機会がある方はぜひ手に入れてほしい作品であると思います。
<Favorite Songs>
・「プロフェッサー・パーセク」
既存のPOPSにとらわれない構成と複雑なシンセフレーズと金属的な音色が不気味な上野耕路楽曲。さすがはあのゲルニカのサウンドメイカーというべき奇妙な曲調と彼にしては比較的きらびやかな音使いが、どこかしら宇宙空間を想像させます。
・「アニマロイド・MV II~Tragic-Comedie~」
ほとんど彼女のソロと言ってもよい越美晴テイスト満載の楽曲。傑作アルバム「Parallelism」に収録されていても全く違和感のないストレートなテクノポップで、ハンドクラップを交えたPCMリズムマシンの正確なリズムパターンがエフェクティブで心地良い名曲です。
・「逆さ賢人・イーガス~侏儒迷宮~」
ソロも含めた越美晴の楽曲中でも傑作の部類に入るスペイシー童謡。淡々としたリズムですが音色が非常に良く、マリンバ系のシンセフレーズやシンセベースも柔らかく仕上げられています。子供コーラスで全編を通していくのも、楽曲が持つファンタジックなイメージを考えれば絶妙なマッチングではないでしょうか。
<評点>
・サウンド ★★★★★(ただのスペイシーなテクノでなく美しさを追求)
・メロディ ★★★★ (どれもキャッチーで覚えやすくマニアックになり過ぎず)
・リズム ★★★★ (PCMリズムマシンが大活躍でそのキレの良さが魅力的)
・曲構成 ★★ (どうしても「クイーン・グレイシャー」が理解できない)
・個性 ★★★ (Testpatternの「HOPE」だけでもその起用は大当たり)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Betty」 小泉今日子
「Betty」(1984 ビクター)
小泉今日子:vocal・chorus

1.「素敵にNight Clubbing」 詞:森雪之丞 曲:筒美京平 編:船山基紀
2.「天然色のロケット」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:船山基紀
3.「夜風にコールミー 素肌にコールガール」
詞:銀色夏生 曲:筒美京平 編:船山基紀
4.「哀愁ボーイ」 詞:銀色夏生 曲:筒美京平 編:船山基紀
5.「13日の金曜日」 詞:森雪之丞 曲:筒美京平 編:船山基紀
6.「今をいじめて泣かないで」 詞:銀色夏生 曲:筒美京平 編:船山基紀
7.「プレゼンテーション」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
8.「好きにして」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
9.「ラブコールをアンコール」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
10.「バナナムーンで会いましょう」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
produced by 樋口紀男
mixing engineered by 高田英男
recording engineered by 高田英男・田辺章男・秋元秀之・中村三郎・相茶紀緒
● 筒美+船山黄金コンビが贈るデジタルサウンド満載のアイドルPOPS名盤
5thシングル「まっ赤な女の子」でそれまでのステレオタイプな80'sアイドルから見事に脱却、「艶姿ナミダ娘」「渚のはいから人魚」などといったいわゆる「ハジケた」楽曲を連発してその存在価値を高めていった小泉今日子は、1984年テクノ歌謡史に残るスペイシーな名曲「迷宮のアンドローラ」で「渚の~」に続くオリコン1位を獲得、トップアイドルに駆け上がっていきました。その勢いのままいリースされた5thアルバムが本作ですが、驚きなのはシングルカットされた楽曲が1曲も収録されていないことで、それだけでも当時としては非常に冒険的な作品であったと言えるでしょう。後年、中森明菜もノンシングルカットのアルバム「不思議」を絶頂期にリリースしていますが、中森のそれも本作も作品に絶対的な自信がなければここまで勝負できないはずで、本作は既に怖いモノなしの領域に入りつつあった小泉の勢いがそのまま表れた意欲作と解釈できます。
さて本作のアレンジャーは折しもFairlightの海外修行から帰国してさらにデジタル化に磨きがかかった頃の船山基紀で、柏原芳恵「Luster」と並んで80年代中期特有のFairlight&LINN Drumの黄金コンビによるデジタルサウンドを惜しげもなく披露しています。「迷宮のアンドローラ」路線を継承したといえる本作の注目すべき部分は何といっても大胆なFairlightのサウンドエフェクトで、残響成分の多いミックスに低音に特徴があるLINN Drumの個性的な響きとのマッチングは絶妙です。また全曲の作曲を担当するのは大御所筒美京平で、彼の熟練の歌謡メロディを当時としては未来派アレンジともいえる船山編曲で楽曲の幅を広げることによって、楽曲のクオリティを非常に個性的なものにしていると思います。筒美&船山コンビが全曲担当することによってトータル的に見ても統一感のあるサウンドに仕上がっているのも魅力的であると言えるでしょう。その結果本作のような冒険作によって彼女の勢いはさらに加速していくことになり、その後「ヤマトナデシコ七変化」「The Stardust Memory」で連続1位を獲得、トップアイドルの座を不動のものにしていくのです。
<Favorite Songs>
・「天然色のロケット」
飛び交うシーケンスに乗る本作の中でも最もキャッチーで爽やかなテクノ歌謡の名曲。Fairlightによる効果音を十二分にフィーチャーしており、間奏のメタリックなボイス変調の後は効果音もさらに派手になっていくのが楽しいです。
・「13日の金曜日」
Michael Jackson「Thriller」を意識したと思われるゾンビソング。叫ぶようなギターフレーズや金属的なリズムはイメージ通りスリリングです。途中のイコライズされたナレーションはYMO「中国女」のソレを思い起こさせます。
・「ラブコールをアンコール」
デジタル仕様の比較的ロック調の楽曲。余りにデジタル臭いサウンド構成のためにロックに感じにくいところが評価の分かれるところですが、サビでは不釣り合いな電子音が妙な感覚でそれはそれで興味深いと言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (シーケンスとサンプリングの多用で遊び心満載)
・メロディ ★★★ (未来的なサウンドに臆しない王道の歌謡メロディ)
・リズム ★★ (LINN Drumの低く乾いた音質は時代を感じさせる)
・曲構成 ★★ (全曲同じ作編曲コンビということで安定感あり)
・個性 ★★ (シングルなしという挑戦は認めるが後半は弱いか)
総合評点: 7点
小泉今日子:vocal・chorus

1.「素敵にNight Clubbing」 詞:森雪之丞 曲:筒美京平 編:船山基紀
2.「天然色のロケット」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:船山基紀
3.「夜風にコールミー 素肌にコールガール」
詞:銀色夏生 曲:筒美京平 編:船山基紀
4.「哀愁ボーイ」 詞:銀色夏生 曲:筒美京平 編:船山基紀
5.「13日の金曜日」 詞:森雪之丞 曲:筒美京平 編:船山基紀
6.「今をいじめて泣かないで」 詞:銀色夏生 曲:筒美京平 編:船山基紀
7.「プレゼンテーション」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
8.「好きにして」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
9.「ラブコールをアンコール」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
10.「バナナムーンで会いましょう」 詞:康珍化 曲:筒美京平 編:船山基紀
produced by 樋口紀男
mixing engineered by 高田英男
recording engineered by 高田英男・田辺章男・秋元秀之・中村三郎・相茶紀緒
● 筒美+船山黄金コンビが贈るデジタルサウンド満載のアイドルPOPS名盤
5thシングル「まっ赤な女の子」でそれまでのステレオタイプな80'sアイドルから見事に脱却、「艶姿ナミダ娘」「渚のはいから人魚」などといったいわゆる「ハジケた」楽曲を連発してその存在価値を高めていった小泉今日子は、1984年テクノ歌謡史に残るスペイシーな名曲「迷宮のアンドローラ」で「渚の~」に続くオリコン1位を獲得、トップアイドルに駆け上がっていきました。その勢いのままいリースされた5thアルバムが本作ですが、驚きなのはシングルカットされた楽曲が1曲も収録されていないことで、それだけでも当時としては非常に冒険的な作品であったと言えるでしょう。後年、中森明菜もノンシングルカットのアルバム「不思議」を絶頂期にリリースしていますが、中森のそれも本作も作品に絶対的な自信がなければここまで勝負できないはずで、本作は既に怖いモノなしの領域に入りつつあった小泉の勢いがそのまま表れた意欲作と解釈できます。
さて本作のアレンジャーは折しもFairlightの海外修行から帰国してさらにデジタル化に磨きがかかった頃の船山基紀で、柏原芳恵「Luster」と並んで80年代中期特有のFairlight&LINN Drumの黄金コンビによるデジタルサウンドを惜しげもなく披露しています。「迷宮のアンドローラ」路線を継承したといえる本作の注目すべき部分は何といっても大胆なFairlightのサウンドエフェクトで、残響成分の多いミックスに低音に特徴があるLINN Drumの個性的な響きとのマッチングは絶妙です。また全曲の作曲を担当するのは大御所筒美京平で、彼の熟練の歌謡メロディを当時としては未来派アレンジともいえる船山編曲で楽曲の幅を広げることによって、楽曲のクオリティを非常に個性的なものにしていると思います。筒美&船山コンビが全曲担当することによってトータル的に見ても統一感のあるサウンドに仕上がっているのも魅力的であると言えるでしょう。その結果本作のような冒険作によって彼女の勢いはさらに加速していくことになり、その後「ヤマトナデシコ七変化」「The Stardust Memory」で連続1位を獲得、トップアイドルの座を不動のものにしていくのです。
<Favorite Songs>
・「天然色のロケット」
飛び交うシーケンスに乗る本作の中でも最もキャッチーで爽やかなテクノ歌謡の名曲。Fairlightによる効果音を十二分にフィーチャーしており、間奏のメタリックなボイス変調の後は効果音もさらに派手になっていくのが楽しいです。
・「13日の金曜日」
Michael Jackson「Thriller」を意識したと思われるゾンビソング。叫ぶようなギターフレーズや金属的なリズムはイメージ通りスリリングです。途中のイコライズされたナレーションはYMO「中国女」のソレを思い起こさせます。
・「ラブコールをアンコール」
デジタル仕様の比較的ロック調の楽曲。余りにデジタル臭いサウンド構成のためにロックに感じにくいところが評価の分かれるところですが、サビでは不釣り合いな電子音が妙な感覚でそれはそれで興味深いと言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (シーケンスとサンプリングの多用で遊び心満載)
・メロディ ★★★ (未来的なサウンドに臆しない王道の歌謡メロディ)
・リズム ★★ (LINN Drumの低く乾いた音質は時代を感じさせる)
・曲構成 ★★ (全曲同じ作編曲コンビということで安定感あり)
・個性 ★★ (シングルなしという挑戦は認めるが後半は弱いか)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「GREATEST HITS 1989-1999」 DATE OF BIRTH
「GREATEST HITS 1989-1999」 (1989 キティ)
DATE OF BIRTH

<members>
Norico:vocal
重藤功:guitars・bass・keyboards
重藤進:drums・percussion
重藤賢一:harmonica・direction
1.「嘘つきリンダ Somebody Called Tonight」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
2.「愛の出来事 Love Affair」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
3.「人生の交差点 Cross Walk Of Life」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
4.「目覚めの時 Real Dawn」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
5.「ようこそ!ネヴァーランド Welcome To Neverland」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
6.「瞳の中にヘヴン Heaven In Your Eyes」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
7.「ハロー!ハロー!ハロー! Hello! Hello! Hello!」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
8.「ありふれた恋 Passion Move」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
9.「デイジー・チェイン Daisy Chain」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
10.「君は恋人 Imaginary Lover」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
11.「テレフォン・ゴッド Telephone God」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
12.「君は僕のもの Believin' You're Mine」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
13.「ジャックのさよなら Jack's Good-bye」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
<support musician>
原カツハル:percussion
Neal Kranz:voice
produced by DATE OF BIRTH
engineered by DATE OF BIRTH
● 今回は70'sPOPS名曲集?洋楽と見まがうソングライティングの職人芸が光る名盤
福岡で活動していたインディーズ時代に海外で評価されるほど名を馳せ、12インチシングル「思い出の瞳」でデビュー、1stアルバム「夢と涙の日々」ではエヴァーグリーンなソフトロックテイストの純度の高いPOPSをサンプラーを駆使したデジタルサウンドで料理しマニアックな評価を得ていたDATE OF BIRTHは、それから3年もの間鳴りを潜め忘れ去られた存在となりつつありました。しかし1989年遂に2ndアルバムをリリースします。それが本作というわけですが、前作の雰囲気とはガラリと趣を変えて全曲英語詞、ギターサウンドを表に出したサイケデリックな70's POPSに変身、聴き手を戸惑わせました。しかし楽曲のクオリティはすこぶる高く、しかもタイトルではベスト盤のようにうたうなど、その自信のほどを隠しもしない大作に仕上がり、彼らの才能に魅了される作品となっています。
サンプリングを表現方法の1つとして積極的に利用した美しいメロディが基調であった前作の楽曲スタイルをあっさりと切り捨て、オマージュたっぷりの70's洋楽POPS志向(しかもどことなくフェイク)に方針転換したことは、思い切ったというよりもともと彼らの音楽的ベースに備わっていたもので、それを披露することによってサウンドメイカーである重藤功の多彩なセンスと手数の多さを知らしめるという点では成功であったと思われます。自信満々のタイトルとはいえ、結局売れ線には乗らなかった本作ですが、POPS職人としてのマニアックな評価は前作よりもさらに高まったと言えるでしょう。サウンド面では格段に生演奏が多くなりギターを前面に押し出したラフな印象が強くなっていますが、派手な装飾に貢献しているブラスやストリングスはサンプリングを使用、前作のサンプリング実験の成果をここで垣間見せています。もちろん前作譲りの美メロはタイプは違えども健在であり、名曲集というタイトルに恥じない捨て曲のない楽曲で占めている充実した含蓄のある作品であると言っても過言ではないと思います。
<Favorite Songs>
・「目覚めの時 Real Dawn」
夏を感じさせる爽やかPOPS。本作の中でも打ち込み度が高い楽曲でうすっぺらいシンセパッドのコード感は癒しを感じさせてくれます。このあっさり感は濃い味の多い本作の中にあってオアシスとなり得ますが、結局ラストはそうはさせてくれない展開が待っています。
・「デイジー・チェイン Daisy Chain」
本作中最も美しいメロディを持っている名曲。Aメロ+Bメロというシンプルな構成であるが浮遊感のあるフレーズが滑らかに推移しているので引っかかりは全くありません。シンセのポルタメントが良いアクセントとなり、前作譲りのオケヒットサウンドも楽しむことができます。間奏からの後半の盛り上げ方もGood。
・「君は僕のもの Believin' You're Mine」
夕暮れが似合う哀愁美メロのミディアムバラード。それにしてもNoricoの違和感のない英語歌唱もあって日本のPOPSを聴いている気がしないほどの強烈な洋楽テイストが感じられます。アウトロが疑似ライブバージョンになって最後の楽曲につなげるミックス感覚にもセンスを感じます。
<評点>
・サウンド ★★ (ギターを表に出して粗さを演出するがコクのある音に)
・メロディ ★★★ (極端な洋楽志向のメロディであるがわかりやすく好感)
・リズム ★ (前作までの多彩な音色に比べるとオーソドックスに)
・曲構成 ★★★ (楽曲数が多いもののストーリー性も感じられる)
・個性 ★★ (前作とは全く違う側面を見せるが自信と余裕を感じる)
総合評点: 7点
DATE OF BIRTH

<members>
Norico:vocal
重藤功:guitars・bass・keyboards
重藤進:drums・percussion
重藤賢一:harmonica・direction
1.「嘘つきリンダ Somebody Called Tonight」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
2.「愛の出来事 Love Affair」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
3.「人生の交差点 Cross Walk Of Life」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
4.「目覚めの時 Real Dawn」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
5.「ようこそ!ネヴァーランド Welcome To Neverland」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
6.「瞳の中にヘヴン Heaven In Your Eyes」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
7.「ハロー!ハロー!ハロー! Hello! Hello! Hello!」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
8.「ありふれた恋 Passion Move」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
9.「デイジー・チェイン Daisy Chain」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
10.「君は恋人 Imaginary Lover」 詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
11.「テレフォン・ゴッド Telephone God」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
12.「君は僕のもの Believin' You're Mine」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
13.「ジャックのさよなら Jack's Good-bye」
詞:Norico 曲:重藤功 編:DATE OF BIRTH
<support musician>
原カツハル:percussion
Neal Kranz:voice
produced by DATE OF BIRTH
engineered by DATE OF BIRTH
● 今回は70'sPOPS名曲集?洋楽と見まがうソングライティングの職人芸が光る名盤
福岡で活動していたインディーズ時代に海外で評価されるほど名を馳せ、12インチシングル「思い出の瞳」でデビュー、1stアルバム「夢と涙の日々」ではエヴァーグリーンなソフトロックテイストの純度の高いPOPSをサンプラーを駆使したデジタルサウンドで料理しマニアックな評価を得ていたDATE OF BIRTHは、それから3年もの間鳴りを潜め忘れ去られた存在となりつつありました。しかし1989年遂に2ndアルバムをリリースします。それが本作というわけですが、前作の雰囲気とはガラリと趣を変えて全曲英語詞、ギターサウンドを表に出したサイケデリックな70's POPSに変身、聴き手を戸惑わせました。しかし楽曲のクオリティはすこぶる高く、しかもタイトルではベスト盤のようにうたうなど、その自信のほどを隠しもしない大作に仕上がり、彼らの才能に魅了される作品となっています。
サンプリングを表現方法の1つとして積極的に利用した美しいメロディが基調であった前作の楽曲スタイルをあっさりと切り捨て、オマージュたっぷりの70's洋楽POPS志向(しかもどことなくフェイク)に方針転換したことは、思い切ったというよりもともと彼らの音楽的ベースに備わっていたもので、それを披露することによってサウンドメイカーである重藤功の多彩なセンスと手数の多さを知らしめるという点では成功であったと思われます。自信満々のタイトルとはいえ、結局売れ線には乗らなかった本作ですが、POPS職人としてのマニアックな評価は前作よりもさらに高まったと言えるでしょう。サウンド面では格段に生演奏が多くなりギターを前面に押し出したラフな印象が強くなっていますが、派手な装飾に貢献しているブラスやストリングスはサンプリングを使用、前作のサンプリング実験の成果をここで垣間見せています。もちろん前作譲りの美メロはタイプは違えども健在であり、名曲集というタイトルに恥じない捨て曲のない楽曲で占めている充実した含蓄のある作品であると言っても過言ではないと思います。
<Favorite Songs>
・「目覚めの時 Real Dawn」
夏を感じさせる爽やかPOPS。本作の中でも打ち込み度が高い楽曲でうすっぺらいシンセパッドのコード感は癒しを感じさせてくれます。このあっさり感は濃い味の多い本作の中にあってオアシスとなり得ますが、結局ラストはそうはさせてくれない展開が待っています。
・「デイジー・チェイン Daisy Chain」
本作中最も美しいメロディを持っている名曲。Aメロ+Bメロというシンプルな構成であるが浮遊感のあるフレーズが滑らかに推移しているので引っかかりは全くありません。シンセのポルタメントが良いアクセントとなり、前作譲りのオケヒットサウンドも楽しむことができます。間奏からの後半の盛り上げ方もGood。
・「君は僕のもの Believin' You're Mine」
夕暮れが似合う哀愁美メロのミディアムバラード。それにしてもNoricoの違和感のない英語歌唱もあって日本のPOPSを聴いている気がしないほどの強烈な洋楽テイストが感じられます。アウトロが疑似ライブバージョンになって最後の楽曲につなげるミックス感覚にもセンスを感じます。
<評点>
・サウンド ★★ (ギターを表に出して粗さを演出するがコクのある音に)
・メロディ ★★★ (極端な洋楽志向のメロディであるがわかりやすく好感)
・リズム ★ (前作までの多彩な音色に比べるとオーソドックスに)
・曲構成 ★★★ (楽曲数が多いもののストーリー性も感じられる)
・個性 ★★ (前作とは全く違う側面を見せるが自信と余裕を感じる)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Romantic」 アイリーン・フォーリーン
「Romantic」 (1986 ビクター)
アイリーン・フォーリーン

<members>
安岡孝章:vocal・keyboards
堀麻夫:vocal・guitar
有沢佳晃:guitar
桑本勲:bass
中越五雄:drums
1.「瞳の中のStranger」 詞:堀麻夫・安岡孝章 曲:安岡孝章 編:小林武史
2.「Night Walker」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
3.「Just One」 詞:堀麻夫・安岡孝章 曲:安岡孝章 編:小林武史
4.「You're the No.1」 詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:小林武史
5.「遠い夏」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
6.「Swept Away」 曲:安岡孝章 編:小林武史
7.「Lonely Man」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
8.「Magic」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
9.「Damageは蜜の味」 詞:松井五郎 曲:安岡孝章 編:奥慶一
10.「Star Dust」 詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:小林武史
<support musician>
迫田到:synthesizer manipulate
深沢順:synthesizer manipulate
produced by 小林武史・アイリーンフォーリーン
mixing engineered by 梅津達男
recording engineered by 石橋守・小泉マサヒロ
● 小林武史編曲により安岡メロディにさらに磨きがかかった期待を裏切らない2ndアルバム
高知県からはるばる東京へ進出、メジャーデビューを果たした80年代中期特有のエレクトリックなシティPOPSバンド、アイリーン・フォーリーンは傑作アルバム「PLASTIC GENERATION」に引き続き翌年には2ndアルバムである本作をリリースします。CMソングにもなった「Just One」でも垣間見せていたように前作までのどこか冷ややかでデジタルな音色からは格段に柔らかくなったサウンドを手掛けたのは、本作のプロデュースを務める若き日の小林武史で、フロントマンである安岡孝章の本来のメロディメイカーとしての才能をさらに生かしていくために、控えめながらもタイトル通りロマンティックに、そしてAORと思わせるほどの大人の渋みすら感じさせる落ち着きのあるサウンドで、彼らの楽曲を支えています。
余分な音を排除して隙間のあるサウンドに進化した結果、楽曲自体もゆったりめの落ち着いた曲調が多くなっていますが、シンプルだからこその力強さも感じられます。特にサンプリングとおぼしきシンセブラスが要所を締めており、サックスの導入(クレジットはされていませんが)によるムーディーな感覚も相まって、そのオシャレでセンチメンタルなメロディ&ヴォーカルが一層引き立っています。また、前作とは異なりリリース時期が初夏ということもあって、ジャケからも想像される通りリゾートミュージックとしても通用する季節感のある爽やかな曲調の楽曲も多く収録、バラードなどはエレクトリックな要素を極力排除し、シンプルにメロディを伝えようとする意志が垣間見えます。本作のようなキャッチーなメロディと時流に乗ったサウンドは売れ線に乗ってもおかしくないクオリティのものでしたが、結局80年代の怒濤の作品群の中に埋もれるような形で結果は出せず、半数以上のメンバーが脱退、安岡と堀のツインヴォーカルだけが残り、ギタリスト小倉博和を迎えて再起を図ることとなります。
<Favorite Songs>
・「Just One」
シャッフル気味なリズムに乗る幸福感のある神戸ポートピアCMソングにも起用されたこの楽曲は、安岡のセンスが遺憾なく発揮されたメロディ志向が強く、サウンドも奇をてらわずストレートに、そしてサビでは安岡の高音ヴォーカルが美しく響く名曲に仕上がっています。
・「Magic」
哀愁のメロディが美しい安岡メロディが光る楽曲。マイナーとメジャーが行き来する絶妙のフレーズにシンセブラスが派手に装飾され、後半はラテン風味の入ったピアノフレーズにジャジーなギターソロが加わる大人な仕上がりです。
・「Damageは蜜の味」
本作の世界観からは異色なドラマ主題歌になってもよいほどのポップな楽曲。本作中唯一の奥慶一アレンジで音もドライなミックスがなされ、特にスネアの個性的な音色は聴き所の1つです。メロディもあざといほどの歌謡曲テイストです。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラーでこしらえたブラスサウンドがインパクトあり)
・メロディ ★★★★ (類稀なメロディセンスは相変わらずで安定感は抜群)
・リズム ★★ (前作ほど音色に派手さはないが適度に力強く安心感あり)
・曲構成 ★★★ (前作と比べると地味な楽曲が多いが捨て曲はなし)
・個性 ★★ (サウンドが落ち着いているがそこが物足りなくもあり)
総合評点: 8点
アイリーン・フォーリーン

<members>
安岡孝章:vocal・keyboards
堀麻夫:vocal・guitar
有沢佳晃:guitar
桑本勲:bass
中越五雄:drums
1.「瞳の中のStranger」 詞:堀麻夫・安岡孝章 曲:安岡孝章 編:小林武史
2.「Night Walker」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
3.「Just One」 詞:堀麻夫・安岡孝章 曲:安岡孝章 編:小林武史
4.「You're the No.1」 詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:小林武史
5.「遠い夏」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
6.「Swept Away」 曲:安岡孝章 編:小林武史
7.「Lonely Man」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
8.「Magic」 詞・曲:安岡孝章 編:小林武史
9.「Damageは蜜の味」 詞:松井五郎 曲:安岡孝章 編:奥慶一
10.「Star Dust」 詞:堀麻夫 曲:安岡孝章 編:小林武史
<support musician>
迫田到:synthesizer manipulate
深沢順:synthesizer manipulate
produced by 小林武史・アイリーンフォーリーン
mixing engineered by 梅津達男
recording engineered by 石橋守・小泉マサヒロ
● 小林武史編曲により安岡メロディにさらに磨きがかかった期待を裏切らない2ndアルバム
高知県からはるばる東京へ進出、メジャーデビューを果たした80年代中期特有のエレクトリックなシティPOPSバンド、アイリーン・フォーリーンは傑作アルバム「PLASTIC GENERATION」に引き続き翌年には2ndアルバムである本作をリリースします。CMソングにもなった「Just One」でも垣間見せていたように前作までのどこか冷ややかでデジタルな音色からは格段に柔らかくなったサウンドを手掛けたのは、本作のプロデュースを務める若き日の小林武史で、フロントマンである安岡孝章の本来のメロディメイカーとしての才能をさらに生かしていくために、控えめながらもタイトル通りロマンティックに、そしてAORと思わせるほどの大人の渋みすら感じさせる落ち着きのあるサウンドで、彼らの楽曲を支えています。
余分な音を排除して隙間のあるサウンドに進化した結果、楽曲自体もゆったりめの落ち着いた曲調が多くなっていますが、シンプルだからこその力強さも感じられます。特にサンプリングとおぼしきシンセブラスが要所を締めており、サックスの導入(クレジットはされていませんが)によるムーディーな感覚も相まって、そのオシャレでセンチメンタルなメロディ&ヴォーカルが一層引き立っています。また、前作とは異なりリリース時期が初夏ということもあって、ジャケからも想像される通りリゾートミュージックとしても通用する季節感のある爽やかな曲調の楽曲も多く収録、バラードなどはエレクトリックな要素を極力排除し、シンプルにメロディを伝えようとする意志が垣間見えます。本作のようなキャッチーなメロディと時流に乗ったサウンドは売れ線に乗ってもおかしくないクオリティのものでしたが、結局80年代の怒濤の作品群の中に埋もれるような形で結果は出せず、半数以上のメンバーが脱退、安岡と堀のツインヴォーカルだけが残り、ギタリスト小倉博和を迎えて再起を図ることとなります。
<Favorite Songs>
・「Just One」
シャッフル気味なリズムに乗る幸福感のある神戸ポートピアCMソングにも起用されたこの楽曲は、安岡のセンスが遺憾なく発揮されたメロディ志向が強く、サウンドも奇をてらわずストレートに、そしてサビでは安岡の高音ヴォーカルが美しく響く名曲に仕上がっています。
・「Magic」
哀愁のメロディが美しい安岡メロディが光る楽曲。マイナーとメジャーが行き来する絶妙のフレーズにシンセブラスが派手に装飾され、後半はラテン風味の入ったピアノフレーズにジャジーなギターソロが加わる大人な仕上がりです。
・「Damageは蜜の味」
本作の世界観からは異色なドラマ主題歌になってもよいほどのポップな楽曲。本作中唯一の奥慶一アレンジで音もドライなミックスがなされ、特にスネアの個性的な音色は聴き所の1つです。メロディもあざといほどの歌謡曲テイストです。
<評点>
・サウンド ★★★ (サンプラーでこしらえたブラスサウンドがインパクトあり)
・メロディ ★★★★ (類稀なメロディセンスは相変わらずで安定感は抜群)
・リズム ★★ (前作ほど音色に派手さはないが適度に力強く安心感あり)
・曲構成 ★★★ (前作と比べると地味な楽曲が多いが捨て曲はなし)
・個性 ★★ (サウンドが落ち着いているがそこが物足りなくもあり)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Digiryzm Mutation」 Iceman
「Digiryzm Mutation」(1998 エピックソニー)
Iceman

<members>
浅倉大介:keyboards・chorus
伊藤賢一:guitars・vocals・chorus
黒田倫弘:vocals
1.「L.a.r.v.a.e」 曲・編:浅倉大介
2.「CYCLONE MUTANT」 詞:伊藤賢一・麻倉真琴 曲・編:浅倉大介
3.「8番目の罪~COMPRESSED MIX」 詞:Iceman 曲・編:浅倉大介
4.「BEAUTY SITE」 詞・曲:伊藤賢一 編:浅倉大介
5.「tearless~あの頃の君を探して」 詞:黒田倫弘 曲・編:浅倉大介
6.「SweetJank, SweetGap」 詞:黒田倫弘 曲・編:浅倉大介
7.「Harmit and Milk」 詞・曲:伊藤賢一 編:浅倉大介
8.「E.v.o.l.u.t.i.o.n」 曲・編:浅倉大介
9.「GALAXY GANG~COMPRESSED MIX」 詞:伊藤賢一 曲・編:浅倉大介
10.「FINAL PRAYER~COMPRESSED MIX」 詞:井上秋緒 曲・編:浅倉大介
11.「BEAT MY LIFE」 詞:黒田倫弘・麻倉真琴 曲・編:浅倉大介
12.「Image of Tomorrow」 詞:浅倉大介・麻倉真琴 曲・編:浅倉大介
13.「LOST COMPLEX~COMPRESSED MIX」 詞:Iceman 曲・編:浅倉大介
14.「W.o.r.l.d Λ」 曲・編:浅倉大介
<support musician>
葛城哲哉:guitars
白須衛治:chorus
produced by 浅倉大介
mixing engineered by Phil Kaffel
recording engineered by 中村悦弘・佐々木志了・香椎茂樹・生戸タカシ
● シンセの洪水が激しくキャッチー!浅倉サウンドに苛烈さを求めたデジポップユニットの2nd
accessとしての活動が一段落し活動を休止させた後の浅倉大介は心機一転、黒田倫弘と伊藤賢一の若手2人を誘い浅倉サウンドの実験場としてIcemanを結成します。access時代からTM NETWORK系のシンセPOPSを志向しながらもより攻撃的なエッジの効いた音色を多用していた浅倉ですが、1996年にシングル「DARK HALF~TOUCH YOUR DARKNESS」でデビューしたこのIcemanでは、当時流行の一端を担っていたヴィジュアル系バンド特有のメロディラインを彷佛とさせるポップなフレーズに、お得意の高速シンセシーケンスでゴリゴリに攻めていくスタイルで、若さ溢れるデジポップユニットとしてある程度の人気を博しました。そして1stアルバム「POWER SCALE」のリリース後も順調にシングルをリリースした後、本作が発表されたわけです。
2ndになっても当然浅倉大介のあのシンセサウンドは全くもって不変なわけですが、Icemanはギタリストを加入させていることもあって、ハードエッジなギターを取り入れることによりこれまで以上に硬質な音使いを中心としています。本作でも1stからさらにその傾向は強くなり、さらに歪んだギターを散りばめることで躍動感を楽曲に与えることに成功、シンセ音色もそれに呼応するかのように、歪みを多用した過剰ともいえるデジタルでアナログモデリングな質感が強くなっています。サウンド的には浅倉自身が「音の実験場」と称しているように非常に凝っていて丁寧に作り上げている印象があるのですが、作曲における手グセなのかセンスなのか非常に歌謡曲的なポップセンスを発揮してしまうため、中途半端にメジャーフィールドで通用する楽曲を生み出してしまい、それが彼らの立ち位置を微妙なものにしているとも言えます。J-POPフィールドでもエレクトロなフィールドでも正当な評価がいまだ得られていないのもそのあたりに原因があるのかもしれません。しかしその後の「GATE」シリーズのマニアックで完成度の高いデジロックサウンドに移行していく下地は既に本作で用意されていたと言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「8番目の罪~COMPRESSED MIX」
レゾナンスがうねるシーケンスのイントロが印象的な5thシングル。デジタルダンサブルな曲調ながらキャッチーなサビではハードなギターが攻撃的です。間奏のギターソロもうねりまくっていて熱く燃えてきます。
・「FINAL PRAYER~COMPRESSED MIX」
売れ線を狙えたはずのサマーデジタルPOPSの4thシングル。スピード感のある曲調にキャッチーなメロディが全体的に埋め尽くしているので非常に覚えやすく、ギターも目立っているので浅倉信者だけでなく一般的なリスナーにも親しみやすい楽曲であると思います。
・「LOST COMPLEX~COMPRESSED MIX」
結果的にラストシングルとなった彼らの代表曲と言ってもよい高速デジロックナンバー。ピアノソロから高速シーケンスが入ってくる部分はエキサイティングです。この楽曲以降Icemanはさらに極限に達する超高速のデジロックに傾倒していきます。
<評点>
・サウンド ★★ (洪水のように音数を使い分厚いサウンドを形成)
・メロディ ★★ (歌謡センスを発揮するがシングル曲のようには・・)
・リズム ★★ (高速ブレイクビーツを多用して工夫も感じられるが)
・曲構成 ★ (他の楽曲と違い過ぎるバラードは浅倉の悪いクセ)
・個性 ★ (曲数が多い割にパターンが限られているのが難点)
総合評点: 6点
Iceman

<members>
浅倉大介:keyboards・chorus
伊藤賢一:guitars・vocals・chorus
黒田倫弘:vocals
1.「L.a.r.v.a.e」 曲・編:浅倉大介
2.「CYCLONE MUTANT」 詞:伊藤賢一・麻倉真琴 曲・編:浅倉大介
3.「8番目の罪~COMPRESSED MIX」 詞:Iceman 曲・編:浅倉大介
4.「BEAUTY SITE」 詞・曲:伊藤賢一 編:浅倉大介
5.「tearless~あの頃の君を探して」 詞:黒田倫弘 曲・編:浅倉大介
6.「SweetJank, SweetGap」 詞:黒田倫弘 曲・編:浅倉大介
7.「Harmit and Milk」 詞・曲:伊藤賢一 編:浅倉大介
8.「E.v.o.l.u.t.i.o.n」 曲・編:浅倉大介
9.「GALAXY GANG~COMPRESSED MIX」 詞:伊藤賢一 曲・編:浅倉大介
10.「FINAL PRAYER~COMPRESSED MIX」 詞:井上秋緒 曲・編:浅倉大介
11.「BEAT MY LIFE」 詞:黒田倫弘・麻倉真琴 曲・編:浅倉大介
12.「Image of Tomorrow」 詞:浅倉大介・麻倉真琴 曲・編:浅倉大介
13.「LOST COMPLEX~COMPRESSED MIX」 詞:Iceman 曲・編:浅倉大介
14.「W.o.r.l.d Λ」 曲・編:浅倉大介
<support musician>
葛城哲哉:guitars
白須衛治:chorus
produced by 浅倉大介
mixing engineered by Phil Kaffel
recording engineered by 中村悦弘・佐々木志了・香椎茂樹・生戸タカシ
● シンセの洪水が激しくキャッチー!浅倉サウンドに苛烈さを求めたデジポップユニットの2nd
accessとしての活動が一段落し活動を休止させた後の浅倉大介は心機一転、黒田倫弘と伊藤賢一の若手2人を誘い浅倉サウンドの実験場としてIcemanを結成します。access時代からTM NETWORK系のシンセPOPSを志向しながらもより攻撃的なエッジの効いた音色を多用していた浅倉ですが、1996年にシングル「DARK HALF~TOUCH YOUR DARKNESS」でデビューしたこのIcemanでは、当時流行の一端を担っていたヴィジュアル系バンド特有のメロディラインを彷佛とさせるポップなフレーズに、お得意の高速シンセシーケンスでゴリゴリに攻めていくスタイルで、若さ溢れるデジポップユニットとしてある程度の人気を博しました。そして1stアルバム「POWER SCALE」のリリース後も順調にシングルをリリースした後、本作が発表されたわけです。
2ndになっても当然浅倉大介のあのシンセサウンドは全くもって不変なわけですが、Icemanはギタリストを加入させていることもあって、ハードエッジなギターを取り入れることによりこれまで以上に硬質な音使いを中心としています。本作でも1stからさらにその傾向は強くなり、さらに歪んだギターを散りばめることで躍動感を楽曲に与えることに成功、シンセ音色もそれに呼応するかのように、歪みを多用した過剰ともいえるデジタルでアナログモデリングな質感が強くなっています。サウンド的には浅倉自身が「音の実験場」と称しているように非常に凝っていて丁寧に作り上げている印象があるのですが、作曲における手グセなのかセンスなのか非常に歌謡曲的なポップセンスを発揮してしまうため、中途半端にメジャーフィールドで通用する楽曲を生み出してしまい、それが彼らの立ち位置を微妙なものにしているとも言えます。J-POPフィールドでもエレクトロなフィールドでも正当な評価がいまだ得られていないのもそのあたりに原因があるのかもしれません。しかしその後の「GATE」シリーズのマニアックで完成度の高いデジロックサウンドに移行していく下地は既に本作で用意されていたと言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「8番目の罪~COMPRESSED MIX」
レゾナンスがうねるシーケンスのイントロが印象的な5thシングル。デジタルダンサブルな曲調ながらキャッチーなサビではハードなギターが攻撃的です。間奏のギターソロもうねりまくっていて熱く燃えてきます。
・「FINAL PRAYER~COMPRESSED MIX」
売れ線を狙えたはずのサマーデジタルPOPSの4thシングル。スピード感のある曲調にキャッチーなメロディが全体的に埋め尽くしているので非常に覚えやすく、ギターも目立っているので浅倉信者だけでなく一般的なリスナーにも親しみやすい楽曲であると思います。
・「LOST COMPLEX~COMPRESSED MIX」
結果的にラストシングルとなった彼らの代表曲と言ってもよい高速デジロックナンバー。ピアノソロから高速シーケンスが入ってくる部分はエキサイティングです。この楽曲以降Icemanはさらに極限に達する超高速のデジロックに傾倒していきます。
<評点>
・サウンド ★★ (洪水のように音数を使い分厚いサウンドを形成)
・メロディ ★★ (歌謡センスを発揮するがシングル曲のようには・・)
・リズム ★★ (高速ブレイクビーツを多用して工夫も感じられるが)
・曲構成 ★ (他の楽曲と違い過ぎるバラードは浅倉の悪いクセ)
・個性 ★ (曲数が多い割にパターンが限られているのが難点)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「CONSTRUCTION TIME AGAIN」 DEPECHE MODE
「CONSTRUCTION TIME AGAIN」(1983 Mute)
DEPECHE MODE

<members>
Andrew Flecher:synthesizer
David Gahan:vocal
Martin Gore:synthesizer
Alan Wilder:synthesizer
1.「LOVE IN ITSELF」 Martin Gore
2.「MORE THAN A PARTY」 Martin Gore
3.「PIPELINE」 Martin Gore
4.「EVERYTHING COUNTS」 Martin Gore
5.「TWO MINUTE WARNING」 Alan Wilder
6.「SHAME」 Martin Gore
7.「THE LANDSCAPE IS CHANGING」 Alan Wilder
8.「TOLD YOU SO」 Martin Gore
9.「AND THEN...」 Martin Gore
produced by Daniel Miller・DEPECHE MODE・Gareth Jones
engineered by Gareth Jones
● ダークな質感とインダストリアルを巧みに取り入れた世界観を築く先駆けとなった名盤
その若さ溢れるルックスによるアイドル的人気とキュートなエレポップサウンドでデビューしてからソングライターであったVince Clarkeが脱退し、前作「A Broken Frame」からMartin Goreが作曲を担当、陰りのある渋いメロディが顕著となるなどデビュー2作目にして方向転換を迫られることとなったDEPECHE MODEですが、Vinceが抜けて3人となっていたメンバーにAlan Wilderが加入、シングル「Get the Balance Right!」を経てリリースされた本作から彼らのサウンドは一気に硬質化し、前作からのマイナー調のメロディと相まって独特のメタリックかつインダストリアルなエレポップへの道を歩んでいくことになります。
きっかけはやはりAlanの加入によるEinsturzende Neubautenばりの金属的なパーカッションの大胆な導入にあります。PCMリズムマシンに粗さの残るシンセフレーズが当時の持ち味であった彼らのサウンドに肉感的なイメージを持ち込んだのもこのメタリックパーカッションと当時はまだ斬新であったサンプリングサウンドのおかげでもありますが、次作「Some Great Reward」の過激なインダストリアルリズムに乗ってスターダムを駆け上がっていく彼らのまさしく基礎となり土台となった作品であることに間違いはないことは衆目の一致するところでしょう。また、この硬質な音像が独特の低音を持つDavid Gahanのヴォーカルを一段と引き立たせることによって、他のニューウェーブバンドの一角でしかなかったDEPECHE MODEを、一段階上のレベルに引き上げていったことも事実であり、ある意味勝負作ともいえる本作の重要性は計り知れないものがあります。彼らがDEPECHE MODEという看板を背負っていくための絶対的な自信となった名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「PIPELINE」
淡々としたメロディにサンプリング音を重ねていく一見地味な楽曲。圧巻なのは卓球をサンプリングしリズムに再構築するセンスで、この楽曲が本作のコンセプトの大部分を表しているように思えます。
・「EVERYTHING COUNTS」
シングルカットされた彼らを代表する名曲の1つ。粗さの目立つベースラインにMartinお得意のマイナーメロディが乗る典型的な十八番楽曲ですが、柔らかい牧歌的なフレーズのサビとそこに入る場面が切り替わる直前のメタリック音とのコントラストが興味深いです。
・「TOLD YOU SO」
「EVERYTHING COUNTS」と並んで本作中最もポップなメロディを持つ楽曲。キャッチーなダンサブルなイントロに陰りのあるメロディ、そして耳につく金属系音色と本作において主張されたサウンドのオンパレードとも言える楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (シンプルであるがゆえに音色の工夫はあと少し)
・メロディ ★★ (DEPECHE MODEの色を確立したマイナー調旋律)
・リズム ★★★★ (サンプラーやPCMなど多種多様なリズム音色が秀逸)
・曲構成 ★★★ (コンセプトとも言える統一感は前作までとは異なる)
・個性 ★★ (インダストリアルにはまだ取り組み始めたばかり)
総合評点: 7点
DEPECHE MODE

<members>
Andrew Flecher:synthesizer
David Gahan:vocal
Martin Gore:synthesizer
Alan Wilder:synthesizer
1.「LOVE IN ITSELF」 Martin Gore
2.「MORE THAN A PARTY」 Martin Gore
3.「PIPELINE」 Martin Gore
4.「EVERYTHING COUNTS」 Martin Gore
5.「TWO MINUTE WARNING」 Alan Wilder
6.「SHAME」 Martin Gore
7.「THE LANDSCAPE IS CHANGING」 Alan Wilder
8.「TOLD YOU SO」 Martin Gore
9.「AND THEN...」 Martin Gore
produced by Daniel Miller・DEPECHE MODE・Gareth Jones
engineered by Gareth Jones
● ダークな質感とインダストリアルを巧みに取り入れた世界観を築く先駆けとなった名盤
その若さ溢れるルックスによるアイドル的人気とキュートなエレポップサウンドでデビューしてからソングライターであったVince Clarkeが脱退し、前作「A Broken Frame」からMartin Goreが作曲を担当、陰りのある渋いメロディが顕著となるなどデビュー2作目にして方向転換を迫られることとなったDEPECHE MODEですが、Vinceが抜けて3人となっていたメンバーにAlan Wilderが加入、シングル「Get the Balance Right!」を経てリリースされた本作から彼らのサウンドは一気に硬質化し、前作からのマイナー調のメロディと相まって独特のメタリックかつインダストリアルなエレポップへの道を歩んでいくことになります。
きっかけはやはりAlanの加入によるEinsturzende Neubautenばりの金属的なパーカッションの大胆な導入にあります。PCMリズムマシンに粗さの残るシンセフレーズが当時の持ち味であった彼らのサウンドに肉感的なイメージを持ち込んだのもこのメタリックパーカッションと当時はまだ斬新であったサンプリングサウンドのおかげでもありますが、次作「Some Great Reward」の過激なインダストリアルリズムに乗ってスターダムを駆け上がっていく彼らのまさしく基礎となり土台となった作品であることに間違いはないことは衆目の一致するところでしょう。また、この硬質な音像が独特の低音を持つDavid Gahanのヴォーカルを一段と引き立たせることによって、他のニューウェーブバンドの一角でしかなかったDEPECHE MODEを、一段階上のレベルに引き上げていったことも事実であり、ある意味勝負作ともいえる本作の重要性は計り知れないものがあります。彼らがDEPECHE MODEという看板を背負っていくための絶対的な自信となった名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「PIPELINE」
淡々としたメロディにサンプリング音を重ねていく一見地味な楽曲。圧巻なのは卓球をサンプリングしリズムに再構築するセンスで、この楽曲が本作のコンセプトの大部分を表しているように思えます。
・「EVERYTHING COUNTS」
シングルカットされた彼らを代表する名曲の1つ。粗さの目立つベースラインにMartinお得意のマイナーメロディが乗る典型的な十八番楽曲ですが、柔らかい牧歌的なフレーズのサビとそこに入る場面が切り替わる直前のメタリック音とのコントラストが興味深いです。
・「TOLD YOU SO」
「EVERYTHING COUNTS」と並んで本作中最もポップなメロディを持つ楽曲。キャッチーなダンサブルなイントロに陰りのあるメロディ、そして耳につく金属系音色と本作において主張されたサウンドのオンパレードとも言える楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★ (シンプルであるがゆえに音色の工夫はあと少し)
・メロディ ★★ (DEPECHE MODEの色を確立したマイナー調旋律)
・リズム ★★★★ (サンプラーやPCMなど多種多様なリズム音色が秀逸)
・曲構成 ★★★ (コンセプトとも言える統一感は前作までとは異なる)
・個性 ★★ (インダストリアルにはまだ取り組み始めたばかり)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「THE MIX」 KRAFTWERK
「THE MIX」(1991 EMI)
KRAFTWERK

<members>
Ralf Hutter:voice・electronics
Florian Schneider:electronics
1.「THE ROBOTS」 KRAFTWERK
2.「COMPUTERLOVE」 KRAFTWERK
3.「POCKET CALCULATOR」 KRAFTWERK
4.「DENTAKU」 KRAFTWERK
5.「AUTOBAHN」 KRAFTWERK
6.「RADIOACTIVITY」 KRAFTWERK
7.「TRANS EUROPE EXPRESS」 KRAFTWERK
8.「ABZUG」 KRAFTWERK
9.「METAL ON METAL」 KRAFTWERK
10.「HOMECOMPUTER」 KRAFTWERK
11.「MUSIQUE NON STOP」 KRAFTWERK
produced by KRAFTWERK
engineered by Ralf Hutter・Florian Schneider・Fritz Hilpert
● ハウスのリズムを大胆に導入!過去の名曲を華麗にリメイクした限りなく新作に近い名ベスト盤
言わずと知れた「テクノ・ゴッド」KRAFTWERKはそのマイペースな活動ぶりで80年代に残した作品は「Computer World」とシングル「Tour de France」、そして1986年の「Electric Cafe」(リマスター化の際に「Techno Pop」と改名)にとどまり、彼らの先進的な電子サウンドは時代に追いつかれ追い越されたという評価をされつつありました。その後、一般的にデジタルサウンドが氾濫していく中で彼らの活動意義が薄まっていくことを感じ取ったのか、彼らの活動ペースはさらに落ちていくわけですが、80年代末から世界的に広まりつつあったクラブ系テクノ~ハウスミュージックの流れの中でKRAFTWERKは再評価され、彼らの活動再開の気運が高まっていきました。そこで重い腰を上げた彼らが世間に提示した回答が、過去の作品をリメイクした本作です。
Wolfgang FlurとKarl Bartos(本作途中までは参加)がその活動ペースに業を煮やして脱退しオリジナルメンバーの2人による制作となった本作ですが、ベスト盤というよりは過去の作品のリミックスならぬリメイク作品です。リミックスというにはオリジナルに忠実ですが、当時のハウスリズムを過去の楽曲に大胆に導入しダンサブルに変身させ、見事に既にチープ化していた過去の楽曲を甦らせることに成功しています。KRAFTWERKとしての質感はそのままに、音源を追加し再構築したそのサウンドはまさにリミックスではなし得ない、本人達でしか完成し得ない素晴らしいリメイク作品であると思います。また、驚くべきはハウス的リズムとの抜群の相性で、ダンサブルなリズムを追加することでこれほどまでに楽曲が生き生きするのかと感心させられます。こうしたテクノポップ、TECHNOLOGY POPSにおけるリズムの重要性を再認識させるアルバムでもあるのです。
<Favorite Songs>
・「COMPUTERLOVE」
アルバム「Coputer World」収録のヴォーカルナンバー。ゆったりめのストイックなオリジナルと比較しても格段にリズム感が向上、それに伴い楽曲そのものが持ち合わせていたポップ性まで際立たせています。ダンサブルなリズムと彼ら独特の電子音との相性の良さが再確認できる1曲です。
・「POCKET CALCULATOR」~「DENTAKU」
これも「Coputer World」収録の人気ナンバーのリメイク。従前の彼らの楽曲ではあり得なかったようなはじけたリズム感が特徴で、特に縦横無尽に飛び交う電子音ソロは圧巻で、リバーブの使い方も絶妙です。「DENTAKU」へのつなげ方も日本人にはうれしいところです。
・「RADIOACTIVITY」
1975年のアルバム「Radioactivity」からタイトル曲のダンサブルバージョン。この楽曲もオリジナルのどす黒いイメージの陰鬱なサウンドから跳ねるリズムによるノリノリのダンス系リメイクのより一気のポップ化しています。エンディングをしっかり完結させているのも余韻があって良いです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (オリジナルの音色の良さを生かして見事に甦らせた)
・メロディ ★★ (実は聞きやすいメロディで彼らのポップ性が滲み出る)
・リズム ★★★★ (ハウスムーブメントに呼応したリズムトラックも絶妙)
・曲構成 ★ (楽曲をもう少しコンパクトにするともっと聴きやすい)
・個性 ★★★ (いわゆるリメイク物の中では抜群の完成度を誇る)
総合評点: 8点
KRAFTWERK

<members>
Ralf Hutter:voice・electronics
Florian Schneider:electronics
1.「THE ROBOTS」 KRAFTWERK
2.「COMPUTERLOVE」 KRAFTWERK
3.「POCKET CALCULATOR」 KRAFTWERK
4.「DENTAKU」 KRAFTWERK
5.「AUTOBAHN」 KRAFTWERK
6.「RADIOACTIVITY」 KRAFTWERK
7.「TRANS EUROPE EXPRESS」 KRAFTWERK
8.「ABZUG」 KRAFTWERK
9.「METAL ON METAL」 KRAFTWERK
10.「HOMECOMPUTER」 KRAFTWERK
11.「MUSIQUE NON STOP」 KRAFTWERK
produced by KRAFTWERK
engineered by Ralf Hutter・Florian Schneider・Fritz Hilpert
● ハウスのリズムを大胆に導入!過去の名曲を華麗にリメイクした限りなく新作に近い名ベスト盤
言わずと知れた「テクノ・ゴッド」KRAFTWERKはそのマイペースな活動ぶりで80年代に残した作品は「Computer World」とシングル「Tour de France」、そして1986年の「Electric Cafe」(リマスター化の際に「Techno Pop」と改名)にとどまり、彼らの先進的な電子サウンドは時代に追いつかれ追い越されたという評価をされつつありました。その後、一般的にデジタルサウンドが氾濫していく中で彼らの活動意義が薄まっていくことを感じ取ったのか、彼らの活動ペースはさらに落ちていくわけですが、80年代末から世界的に広まりつつあったクラブ系テクノ~ハウスミュージックの流れの中でKRAFTWERKは再評価され、彼らの活動再開の気運が高まっていきました。そこで重い腰を上げた彼らが世間に提示した回答が、過去の作品をリメイクした本作です。
Wolfgang FlurとKarl Bartos(本作途中までは参加)がその活動ペースに業を煮やして脱退しオリジナルメンバーの2人による制作となった本作ですが、ベスト盤というよりは過去の作品のリミックスならぬリメイク作品です。リミックスというにはオリジナルに忠実ですが、当時のハウスリズムを過去の楽曲に大胆に導入しダンサブルに変身させ、見事に既にチープ化していた過去の楽曲を甦らせることに成功しています。KRAFTWERKとしての質感はそのままに、音源を追加し再構築したそのサウンドはまさにリミックスではなし得ない、本人達でしか完成し得ない素晴らしいリメイク作品であると思います。また、驚くべきはハウス的リズムとの抜群の相性で、ダンサブルなリズムを追加することでこれほどまでに楽曲が生き生きするのかと感心させられます。こうしたテクノポップ、TECHNOLOGY POPSにおけるリズムの重要性を再認識させるアルバムでもあるのです。
<Favorite Songs>
・「COMPUTERLOVE」
アルバム「Coputer World」収録のヴォーカルナンバー。ゆったりめのストイックなオリジナルと比較しても格段にリズム感が向上、それに伴い楽曲そのものが持ち合わせていたポップ性まで際立たせています。ダンサブルなリズムと彼ら独特の電子音との相性の良さが再確認できる1曲です。
・「POCKET CALCULATOR」~「DENTAKU」
これも「Coputer World」収録の人気ナンバーのリメイク。従前の彼らの楽曲ではあり得なかったようなはじけたリズム感が特徴で、特に縦横無尽に飛び交う電子音ソロは圧巻で、リバーブの使い方も絶妙です。「DENTAKU」へのつなげ方も日本人にはうれしいところです。
・「RADIOACTIVITY」
1975年のアルバム「Radioactivity」からタイトル曲のダンサブルバージョン。この楽曲もオリジナルのどす黒いイメージの陰鬱なサウンドから跳ねるリズムによるノリノリのダンス系リメイクのより一気のポップ化しています。エンディングをしっかり完結させているのも余韻があって良いです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (オリジナルの音色の良さを生かして見事に甦らせた)
・メロディ ★★ (実は聞きやすいメロディで彼らのポップ性が滲み出る)
・リズム ★★★★ (ハウスムーブメントに呼応したリズムトラックも絶妙)
・曲構成 ★ (楽曲をもう少しコンパクトにするともっと聴きやすい)
・個性 ★★★ (いわゆるリメイク物の中では抜群の完成度を誇る)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「閃の夢、凛の愛」 The ALPHA
「閃の夢、凛の愛」(1986 メルダック)
The ALPHA

<members>
村上啓介:vocal・guitar
後藤郁美:piano・vocal
矢賀部竜成:synthesizer・computer programming
高浜輝夫:bass
佐藤邦治:drums
1.「はじまりはバラッド」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
2.「SHADOW DANCE」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
3.「憂鬱なパドゥドゥ」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
4.「ガラスの迷宮」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
5.「眠る兎」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
6.「少しLonely Night」 詞:澤地隆 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
7.「トリックスター」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
8.「ジュリエッタの小夜曲」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
9.「水のナイフ」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
10.「WHY STILL LOVE」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
produced by The ALPHA・日浅ユキオ
engineered by 石塚良一
● 熱唱型のボーカルとソリッドなシンセ&ギターに鋭さが増したデジタル歌謡ロックの傑作
村上啓介率いるTHE ALPHAは、小森田実&ALPHAとしてメジャーデビューを果たし2枚のシングルをリリース、その後THE ALPHAとして単独自立し活動を始め、1984年からはロック化のタイミングを図っていたチャゲ&飛鳥のサポートを始めました。そして翌年チャゲ&飛鳥の「モーニングムーン」がスマッシュヒットとなる直前にシングル「夢じかけロマンス」、1stアルバム「Sensation」をリリースしますが、こちらはヒットとはいかず、さらに高みを目指して楽曲を洗練させていくことになります。そのような中、翌86年には「閃-SEN-」「凛-RIN-」という2枚のミニアルバムをリリースし、チャゲアスのサポートと並行して精力的に活動していきますが、この2枚をドッキングさせ2枚目のフルアルバムとしてCDリリースしました。それが10曲入りの本作です。
男気と色気が入り混じったアダルトな演奏力が個性であるTHE ALPHAですが、比較的にクールにキめた1stアルバムからは確実に含蓄のあるサウンドに変身、それでいてもともとがスタイリッシュなサウンドを軸にしつつAOR的な歌謡メロディを乗せていくことを得意としていた彼らならではの味を大切にしています。村上啓介のギタープレイはますます奔放になり、キレの良いシンセやマシナリーなシーケンスなどデジタル&テクノロジー面を担当する矢賀部竜成のセンスが際立つサウンドの中、本作は後藤郁美のピアノソロも存分にフィーチャーされ、ミディアムバラードなど比較的ゆっくりめの楽曲も多数収録されています。アップテンポな楽曲の演奏のキレで勝負するバンドという印象を持っているため個人的には歓迎すべき傾向ではないのですが、アップテンポ曲のデジタルで機械的なノリと肉感的なギターとヴォーカルの融合は前作に増して完成度が高くなっており、バンドとしての充実ぶりが感じられる作品となっています。結局その後はシングルを1枚リリースして活動休止となるTHE ALPHAですが、80年代中期ならではのヒンヤリとしたデジタルシンセやドラムサウンドを楽しめる彼らの音楽性は今だからこそ評価されるべきかもしれません。
<Favorite Songs>
・「はじまりはバラッド」
夜明けのような緩やかなスタートから激しいオケヒット&ギターで勢い良く進んでいくハイパーチューン。7分にも及ぶ大作で、力の入ったヴォーカルとグイグイ引っ張るギターテクを中心としたプログレ的なドラマティックな構成が魅力的です。
・「SHADOW DANCE」
高速シーケンスとエフェクティブなリズムがかっこいいデジタルロックで彼らの代表曲と言ってもよい名曲。爽やかなサマーソングと硬質なテクノポップを合わせたようなサウンドですが、濁声を使用する力の入りようと後半のシンセとギターのしつこすぎるほどの熱いソロパートが素晴らしいの一言です。
・「トリックスター」
オケヒットも目立ちまくるデジタルファンクの逸品。なんといってもLo-Fiエフェクティブなスネアの音色が良過ぎます。本作中でも多彩なシンセサウンドが楽しめ、しつこいくらいのデジタルシンセが目立つ典型的な80年代的デジタリックシティポップです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (多彩なシンセワークは80'sバンドの中でも評価すべき)
・メロディ ★★ (歌謡曲の構成を持つメロディラインが逆に弱い部分も)
・リズム ★★★★ (音色も変化に富み力強く非常に頑張って好印象)
・曲構成 ★★★ (2枚のアルバムを合わせても意外と違和感はなし)
・個性 ★★ (前作ほどのクールな印象は薄れバンドマンの魂を感じる)
総合評点: 8点
The ALPHA

<members>
村上啓介:vocal・guitar
後藤郁美:piano・vocal
矢賀部竜成:synthesizer・computer programming
高浜輝夫:bass
佐藤邦治:drums
1.「はじまりはバラッド」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
2.「SHADOW DANCE」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
3.「憂鬱なパドゥドゥ」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
4.「ガラスの迷宮」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
5.「眠る兎」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
6.「少しLonely Night」 詞:澤地隆 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
7.「トリックスター」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
8.「ジュリエッタの小夜曲」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
9.「水のナイフ」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「閃-SEN-」)
10.「WHY STILL LOVE」 詞:實川翔 曲:村上啓介 編:The ALPHA (「凛-RIN-」)
produced by The ALPHA・日浅ユキオ
engineered by 石塚良一
● 熱唱型のボーカルとソリッドなシンセ&ギターに鋭さが増したデジタル歌謡ロックの傑作
村上啓介率いるTHE ALPHAは、小森田実&ALPHAとしてメジャーデビューを果たし2枚のシングルをリリース、その後THE ALPHAとして単独自立し活動を始め、1984年からはロック化のタイミングを図っていたチャゲ&飛鳥のサポートを始めました。そして翌年チャゲ&飛鳥の「モーニングムーン」がスマッシュヒットとなる直前にシングル「夢じかけロマンス」、1stアルバム「Sensation」をリリースしますが、こちらはヒットとはいかず、さらに高みを目指して楽曲を洗練させていくことになります。そのような中、翌86年には「閃-SEN-」「凛-RIN-」という2枚のミニアルバムをリリースし、チャゲアスのサポートと並行して精力的に活動していきますが、この2枚をドッキングさせ2枚目のフルアルバムとしてCDリリースしました。それが10曲入りの本作です。
男気と色気が入り混じったアダルトな演奏力が個性であるTHE ALPHAですが、比較的にクールにキめた1stアルバムからは確実に含蓄のあるサウンドに変身、それでいてもともとがスタイリッシュなサウンドを軸にしつつAOR的な歌謡メロディを乗せていくことを得意としていた彼らならではの味を大切にしています。村上啓介のギタープレイはますます奔放になり、キレの良いシンセやマシナリーなシーケンスなどデジタル&テクノロジー面を担当する矢賀部竜成のセンスが際立つサウンドの中、本作は後藤郁美のピアノソロも存分にフィーチャーされ、ミディアムバラードなど比較的ゆっくりめの楽曲も多数収録されています。アップテンポな楽曲の演奏のキレで勝負するバンドという印象を持っているため個人的には歓迎すべき傾向ではないのですが、アップテンポ曲のデジタルで機械的なノリと肉感的なギターとヴォーカルの融合は前作に増して完成度が高くなっており、バンドとしての充実ぶりが感じられる作品となっています。結局その後はシングルを1枚リリースして活動休止となるTHE ALPHAですが、80年代中期ならではのヒンヤリとしたデジタルシンセやドラムサウンドを楽しめる彼らの音楽性は今だからこそ評価されるべきかもしれません。
<Favorite Songs>
・「はじまりはバラッド」
夜明けのような緩やかなスタートから激しいオケヒット&ギターで勢い良く進んでいくハイパーチューン。7分にも及ぶ大作で、力の入ったヴォーカルとグイグイ引っ張るギターテクを中心としたプログレ的なドラマティックな構成が魅力的です。
・「SHADOW DANCE」
高速シーケンスとエフェクティブなリズムがかっこいいデジタルロックで彼らの代表曲と言ってもよい名曲。爽やかなサマーソングと硬質なテクノポップを合わせたようなサウンドですが、濁声を使用する力の入りようと後半のシンセとギターのしつこすぎるほどの熱いソロパートが素晴らしいの一言です。
・「トリックスター」
オケヒットも目立ちまくるデジタルファンクの逸品。なんといってもLo-Fiエフェクティブなスネアの音色が良過ぎます。本作中でも多彩なシンセサウンドが楽しめ、しつこいくらいのデジタルシンセが目立つ典型的な80年代的デジタリックシティポップです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (多彩なシンセワークは80'sバンドの中でも評価すべき)
・メロディ ★★ (歌謡曲の構成を持つメロディラインが逆に弱い部分も)
・リズム ★★★★ (音色も変化に富み力強く非常に頑張って好印象)
・曲構成 ★★★ (2枚のアルバムを合わせても意外と違和感はなし)
・個性 ★★ (前作ほどのクールな印象は薄れバンドマンの魂を感じる)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「automatic」 SHARPE+NUMAN
「automatic」 (1989 Polydor)
SHARPE+NUMAN

<members>
Bill Sharpe:keyboards
Gary Numan:vocals
1.「Change Your Mind」 Bill Sharpe/Roger Odell
2.「Turn Off The World」 Bill Sharpe/Gary Numan
3.「No More Lies ('89 Mix)」 Bill Sharpe/Gary Numan
4.「Breathe In Emotion」 Bill Sharpe/Gary Numan
5.「Some New Game」 Bill Sharpe/Gary Numan
6.「I'm On Automatic」 Bill Sharpe/Gary Numan
7.「Rip It Up」 Bill Sharpe/Gary Numan
8.「Welcome To Love」 Bill Sharpe/Gary Numan
9.「Voices」 Bill Sharpe/Gary Numan/Roger Odell
10.「Nightlife」 Bill Sharpe/Gary Numan
11.「No More Lies (Original 12" Mix)」 Bill Sharpe/Gary Numan
12.「I'm On Automatic (12" Mix)」 Bill Sharpe/Gary Numan
<support musician>
Mitch Dalton:guitar
Roger Odell:drums
Linda Taylor:backing vocals
Tessa Niles:backing vocals
John Davies:synthesizer programming
produced by Bill Sharpe
mixing engineered by Nick Smith・Wally Brill
recording engineered by Nick Smith・John Davies
● 異なるジャンルから夢のタッグが実現!独特のボーカルと技巧派キーボードが妙にマッチしたエレポップ名盤
1980年代のニューウェーブムーブメントの黎明期からそのアンドロイド然とした風貌と爬虫類系の個性的ボイスで一躍スターダムにのし上がったGary Numanは、83年までメジャーシーンで活動するものの翌年メジャーレーベルとの契約満了後、自身が設立したNUMAレコードから音源をリリース、髪を青色に染め顔面も白塗りに変身し、イメチェンとともに再出発を図ります。しかしニューウェーブの王道を歩むソロとは別に全く異なるジャンルのアーティストとの共同作業を始めました。それがこのSHARPE+NUMANです。SHARPEとはイギリスのフュージョンバンドで日本においても人気を博したShakatakのキーボーディストであるBill Sharpeで、ニューウェーブシーンとは無縁の彼とその世界にどっぷり浸かったNumanとのコラボは注目を浴び、1stシングル「Change Your Mind」はスマッシュヒットを放ちました。その後彼らは緩やかに活動を続け、80年代も終わりに近づいた89年に待望の1stアルバムである本作をリリースするに至ります。
フロントマンのGary Numanが目立ってしまうため彼主導のユニットと思われがちですが、本作を聴いた印象としては、サウンド全体を仕切っているBill SharpeのソロプロジェクトにNumanをヴォーカリストに迎えていると言っても過言ではないでしょう。Shakatakでは都会的なインストで名を馳せたSharpeの楽曲は、このユニットでは意外なほど直球なエレポップに徹底されており、Numanのソロで同時期に志向していたひねりのある硬質なデジタルサウンドと比較しても、起承転結のはっきりした構成にフュージョン特有の温かみのあるシンセサウンドが目立つ、人間味のある作風になっています。どぎつい単音を多用してインパクトで勝負するNumanソロに対する和音を基調にした安定感のあるシンセPOPSといったところでしょうか。本格的なキーボーディストの参加によって厚みを得ることと引き換えに、飛び抜けたショッキングなサウンドはなく安定感を選択したとも言える本作ですが、ヴォーカリストに徹したNumanとPOPSの世界で注目されたいSharpeの思惑が一致した興味深い作品であると思います(なお廃盤後再発もされていません)。
<Favorite Songs>
・「Change Your Mind」
記念すべきデビューシングル。唯一のGary Numan白塗り時代の楽曲で、Bill SharpeのFairlightの響きも豊かなキャッチーなエレポップに仕上がっています。陰鬱なサビのフレーズにニューロマの香りが漂い、個性的な音色のシンセソロで聴き手を注目させてくれます。
・「No More Lies ('89 Mix)」
都会感覚満点の2ndシングル。ひねりも全くないストレートなシンセパッドに潔さを感じます。微妙に跳ねるシンセベースのノリに乗ったキャッチーなサビが命の典型的なシティ派エレポップです。
・「I'm On Automatic」
ほぼタイトルチューンと言ってもよい3rdシングル。前2作と同様の哀愁のフレーズを忍び込ませた直球エレポップですが、この頃には少々スノッブな一面も垣間見えており、デビュー直後のインパクトは消えつつあります。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセによる和音の響かせ方はさすがフュージョン畑の業)
・メロディ ★★ (ポップセンスをよく理解しているがワンパターンな面も)
・リズム ★★ (力強いスネア音色を多用しているが目新しさもない)
・曲構成 ★ (後半は似たような楽曲が並び飽きが来てしまう恐れも)
・個性 ★★ (各々の主たる活動とはそれぞれ異なった側面を披露した)
総合評点: 7点
SHARPE+NUMAN

<members>
Bill Sharpe:keyboards
Gary Numan:vocals
1.「Change Your Mind」 Bill Sharpe/Roger Odell
2.「Turn Off The World」 Bill Sharpe/Gary Numan
3.「No More Lies ('89 Mix)」 Bill Sharpe/Gary Numan
4.「Breathe In Emotion」 Bill Sharpe/Gary Numan
5.「Some New Game」 Bill Sharpe/Gary Numan
6.「I'm On Automatic」 Bill Sharpe/Gary Numan
7.「Rip It Up」 Bill Sharpe/Gary Numan
8.「Welcome To Love」 Bill Sharpe/Gary Numan
9.「Voices」 Bill Sharpe/Gary Numan/Roger Odell
10.「Nightlife」 Bill Sharpe/Gary Numan
11.「No More Lies (Original 12" Mix)」 Bill Sharpe/Gary Numan
12.「I'm On Automatic (12" Mix)」 Bill Sharpe/Gary Numan
<support musician>
Mitch Dalton:guitar
Roger Odell:drums
Linda Taylor:backing vocals
Tessa Niles:backing vocals
John Davies:synthesizer programming
produced by Bill Sharpe
mixing engineered by Nick Smith・Wally Brill
recording engineered by Nick Smith・John Davies
● 異なるジャンルから夢のタッグが実現!独特のボーカルと技巧派キーボードが妙にマッチしたエレポップ名盤
1980年代のニューウェーブムーブメントの黎明期からそのアンドロイド然とした風貌と爬虫類系の個性的ボイスで一躍スターダムにのし上がったGary Numanは、83年までメジャーシーンで活動するものの翌年メジャーレーベルとの契約満了後、自身が設立したNUMAレコードから音源をリリース、髪を青色に染め顔面も白塗りに変身し、イメチェンとともに再出発を図ります。しかしニューウェーブの王道を歩むソロとは別に全く異なるジャンルのアーティストとの共同作業を始めました。それがこのSHARPE+NUMANです。SHARPEとはイギリスのフュージョンバンドで日本においても人気を博したShakatakのキーボーディストであるBill Sharpeで、ニューウェーブシーンとは無縁の彼とその世界にどっぷり浸かったNumanとのコラボは注目を浴び、1stシングル「Change Your Mind」はスマッシュヒットを放ちました。その後彼らは緩やかに活動を続け、80年代も終わりに近づいた89年に待望の1stアルバムである本作をリリースするに至ります。
フロントマンのGary Numanが目立ってしまうため彼主導のユニットと思われがちですが、本作を聴いた印象としては、サウンド全体を仕切っているBill SharpeのソロプロジェクトにNumanをヴォーカリストに迎えていると言っても過言ではないでしょう。Shakatakでは都会的なインストで名を馳せたSharpeの楽曲は、このユニットでは意外なほど直球なエレポップに徹底されており、Numanのソロで同時期に志向していたひねりのある硬質なデジタルサウンドと比較しても、起承転結のはっきりした構成にフュージョン特有の温かみのあるシンセサウンドが目立つ、人間味のある作風になっています。どぎつい単音を多用してインパクトで勝負するNumanソロに対する和音を基調にした安定感のあるシンセPOPSといったところでしょうか。本格的なキーボーディストの参加によって厚みを得ることと引き換えに、飛び抜けたショッキングなサウンドはなく安定感を選択したとも言える本作ですが、ヴォーカリストに徹したNumanとPOPSの世界で注目されたいSharpeの思惑が一致した興味深い作品であると思います(なお廃盤後再発もされていません)。
<Favorite Songs>
・「Change Your Mind」
記念すべきデビューシングル。唯一のGary Numan白塗り時代の楽曲で、Bill SharpeのFairlightの響きも豊かなキャッチーなエレポップに仕上がっています。陰鬱なサビのフレーズにニューロマの香りが漂い、個性的な音色のシンセソロで聴き手を注目させてくれます。
・「No More Lies ('89 Mix)」
都会感覚満点の2ndシングル。ひねりも全くないストレートなシンセパッドに潔さを感じます。微妙に跳ねるシンセベースのノリに乗ったキャッチーなサビが命の典型的なシティ派エレポップです。
・「I'm On Automatic」
ほぼタイトルチューンと言ってもよい3rdシングル。前2作と同様の哀愁のフレーズを忍び込ませた直球エレポップですが、この頃には少々スノッブな一面も垣間見えており、デビュー直後のインパクトは消えつつあります。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセによる和音の響かせ方はさすがフュージョン畑の業)
・メロディ ★★ (ポップセンスをよく理解しているがワンパターンな面も)
・リズム ★★ (力強いスネア音色を多用しているが目新しさもない)
・曲構成 ★ (後半は似たような楽曲が並び飽きが来てしまう恐れも)
・個性 ★★ (各々の主たる活動とはそれぞれ異なった側面を披露した)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「bulbous kitchen」 bulbous kitchen
「bulbous kitchen」(1995 バルバスキッチン)
bulbous kitchen

<members>
柏田眞志:keyboards
浜地淳:vocals・keyboards
吉田マサヤ:drums
松澤登:bass
1.「water proof」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
2.「bulbous planets」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
3.「the 3-pound universe」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
4.「age of electronic text」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
5.「bulbous planets」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
6.「inter communication」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
7.「water theater」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
8.「water」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
produced by bulbous kitchen・佐藤清喜
engineered by 佐藤清喜
● クリーンで懐かしいナチュラルシンセサウンドが美しい新しいエレクトリックPOPSの可能性を秘めた隠れた名盤
浅井企画の放送作家でもある柏田眞志が結成したクリーンテクノグループbulbous kitchenは、テクノミュージックが一般的に認知され、ダンサブルなテクノ、スピリチュアルなテクノ等電子音楽の可能性がクラブカルチャーを通して広がりつつあった時期に突如現れたメロディ重視のクリーンポップテクノを志向するユニットです。当時の4つ打ちテクノミュージックに足りなかったポップな部分、メロディアスな部分をノスタルジックに甦らせた爽やかで胸を打つフレーズが持ち味のこのグループは、細野晴臣のHYPER LOVEレーベルからシングル「CASPIAN LOVE」でデビュー(「L.S.I.L」は名曲!)、その後舞台を自主制作に移し1stフルアルバムである本作を満を持してリリースします。
メインのコード展開(これが抜群に良い)をモチーフにしたコンセプチュアルなアルバム構成となっている本作ですが、その抜きん出たクオリティを放つコード展開で勝負できるところは、Michael Fortunatiを彷彿させる部分もあります。しかし彼らの楽曲はそのコード感覚だけでなく丹精を込めて作り上げられた透明感のある電子音があって初めて生きてくるものであり、その個性は当時のインテリジェンステクノ等のスピリチュアルな電子音楽にはなかった要素でもあります。プロデューサーはnice musicで古き良きエレクトロポップミュージックの再発見を志向していた電子POPS職人佐藤清喜で、彼の参加があればこその納得できるポップ感覚であると思います。「YMO世代に贈るテクノポップの回答」というキャッチフレーズもあながち間違いでなく、YMOがそのサウンドだけでなく誰でも受け入れられる楽曲のポップ性の上に成り立っていることを再認識させるサウンドとメロディであるように感じられます。本業が忙しくなかなか新作が生まれないようですが、気長に待つ価値はあると思いますので、ぜひ再び表舞台に登場することを期待しています。
<Favorite Songs>
・「water proof」
浮遊感豊かなシンセパッドにクッキリした音の粒が心地良いシーケンスで魅了するオープニングチューン。シンプルであるが故に際立つフレーズの重ね合わせとドリーミーな音色が彼らの得意とするところでしょう。
・「bulbous planets」
澄み渡るコード感覚と清潔な音色が爽快感を助長させるこれぞクリーンテクノの逸品。ミニマルテクノの繰り返しの美学が堪能できますが、フレーズを手を替え品を替えることによってメインを生かしつつ飽きさせない構成になっています。
・「water theater」
ワンコードながらシーケンスフレーズの重ね合わせで世界観を広げる典型的なテクノミュージック。それでもキレイの一言でしか言い表せない音色のおかげで全く飽きることなく、音の波に身も心も委ねることができます。
<評点>
・サウンド ★★★ (よく練り上げられた凝り性のシンセ音色で清涼感を満喫)
・メロディ ★ (基本インストでワンフレーズ勝負のパターンミュージック)
・リズム ★ (リズム音色には工夫の跡が見られるが流し聴きに適する)
・曲構成 ★ (コンセプトとはいえもう少しバリエーションも欲しい)
・個性 ★★ (当時としては断トツの清潔感を演出した電子音楽)
総合評点: 6点
bulbous kitchen

<members>
柏田眞志:keyboards
浜地淳:vocals・keyboards
吉田マサヤ:drums
松澤登:bass
1.「water proof」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
2.「bulbous planets」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
3.「the 3-pound universe」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
4.「age of electronic text」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
5.「bulbous planets」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
6.「inter communication」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
7.「water theater」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
8.「water」 曲・編:柏田眞志・浜地淳
produced by bulbous kitchen・佐藤清喜
engineered by 佐藤清喜
● クリーンで懐かしいナチュラルシンセサウンドが美しい新しいエレクトリックPOPSの可能性を秘めた隠れた名盤
浅井企画の放送作家でもある柏田眞志が結成したクリーンテクノグループbulbous kitchenは、テクノミュージックが一般的に認知され、ダンサブルなテクノ、スピリチュアルなテクノ等電子音楽の可能性がクラブカルチャーを通して広がりつつあった時期に突如現れたメロディ重視のクリーンポップテクノを志向するユニットです。当時の4つ打ちテクノミュージックに足りなかったポップな部分、メロディアスな部分をノスタルジックに甦らせた爽やかで胸を打つフレーズが持ち味のこのグループは、細野晴臣のHYPER LOVEレーベルからシングル「CASPIAN LOVE」でデビュー(「L.S.I.L」は名曲!)、その後舞台を自主制作に移し1stフルアルバムである本作を満を持してリリースします。
メインのコード展開(これが抜群に良い)をモチーフにしたコンセプチュアルなアルバム構成となっている本作ですが、その抜きん出たクオリティを放つコード展開で勝負できるところは、Michael Fortunatiを彷彿させる部分もあります。しかし彼らの楽曲はそのコード感覚だけでなく丹精を込めて作り上げられた透明感のある電子音があって初めて生きてくるものであり、その個性は当時のインテリジェンステクノ等のスピリチュアルな電子音楽にはなかった要素でもあります。プロデューサーはnice musicで古き良きエレクトロポップミュージックの再発見を志向していた電子POPS職人佐藤清喜で、彼の参加があればこその納得できるポップ感覚であると思います。「YMO世代に贈るテクノポップの回答」というキャッチフレーズもあながち間違いでなく、YMOがそのサウンドだけでなく誰でも受け入れられる楽曲のポップ性の上に成り立っていることを再認識させるサウンドとメロディであるように感じられます。本業が忙しくなかなか新作が生まれないようですが、気長に待つ価値はあると思いますので、ぜひ再び表舞台に登場することを期待しています。
<Favorite Songs>
・「water proof」
浮遊感豊かなシンセパッドにクッキリした音の粒が心地良いシーケンスで魅了するオープニングチューン。シンプルであるが故に際立つフレーズの重ね合わせとドリーミーな音色が彼らの得意とするところでしょう。
・「bulbous planets」
澄み渡るコード感覚と清潔な音色が爽快感を助長させるこれぞクリーンテクノの逸品。ミニマルテクノの繰り返しの美学が堪能できますが、フレーズを手を替え品を替えることによってメインを生かしつつ飽きさせない構成になっています。
・「water theater」
ワンコードながらシーケンスフレーズの重ね合わせで世界観を広げる典型的なテクノミュージック。それでもキレイの一言でしか言い表せない音色のおかげで全く飽きることなく、音の波に身も心も委ねることができます。
<評点>
・サウンド ★★★ (よく練り上げられた凝り性のシンセ音色で清涼感を満喫)
・メロディ ★ (基本インストでワンフレーズ勝負のパターンミュージック)
・リズム ★ (リズム音色には工夫の跡が見られるが流し聴きに適する)
・曲構成 ★ (コンセプトとはいえもう少しバリエーションも欲しい)
・個性 ★★ (当時としては断トツの清潔感を演出した電子音楽)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Cutie MANIA」 Cutie Pai
「Cutie MANIA」(2008 Cutie Pai)
Cutie Pai

<members>
まゆちゃん:vocals・chorus・micro KORG
きわサン:vocals・chorus
チッチ:vocals・chorus
1.「小っちゃな翼」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
2.「たまにはこんな恋の始まり」 詞・曲:神崎真由美 編:pigmy with bitter ends
3.「ミュージック・ランデヴー」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
4.「70’」 詞・曲:神崎真由美 編: 神崎真由美・宇津山洋
5.「ノン・ノン・プレイボーイ」 詞・曲:神崎真由美 編:うつやまだひろしとヤングオーケストラ
6.「グラスター」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
7.「太陽になりたい」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
8.「美人形」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
9.「cosmic少女」 詞・曲:神崎真由美 編:篠原哲二郎・ 宇津山洋
10.「イエスノウ」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
11.「プラモガ」 詞・曲:神崎真由美 編: 篠原哲二郎・ 宇津山洋
produced by Cutie Pai
engineered by 宇津山洋
● アイドルの皮をかぶった類稀なセンスが光る自給自足ガールポップ注目株のベスト盤
00年代後期に入ってブレイクを果たしテクノポップの復権を担ったPerfumeは、そのブームがゆえに数々のフォロワーを生み出しました。そのフォロワー達(便宜上そう呼びます)は決してPerfumeの影響とは関係なくそれぞれの志向するエレクトロサウンドを発信すると主張することが多いものの、やはり彼女らのブレイクによる何らかの影響は与えられていたのではないかと思います。しかしその影響を隠さずともそれを上回るクオリティの作品を生み出せるというのは、センスと力量がある証拠なのです。Cutie Paiはそんな稀少なユニットの1つです。90年代に神咲まゆみとしてデビューしている実はベテランの中心人物であるまゆちゃんとマッキーのデュオとして2001年にスタートしたCutie Paiは、2006年にきわサンとチッチを加えたトリオとして再スタート、2007年にはシングルを毎月自主制作リリースするという「777」シリーズを敢行、その集大成としてベスト盤である本作をリリースします。
「ミュージック・ランデヴー」や「cosmic少女」などテクノポップアイドルな側面で評価されている本作ですが、基本となるのはアイドルポップ・歌謡曲・80'sロックであってエレクトロなサウンドはCutie Paiにとって1つの手法でしかありません。しかしもともとがテクノ的な素養のあったmicro KORGを巧みに操るまゆちゃんこと神崎真由美と宇津山洋のコラボによる楽曲はPerfumeブレイク以降の00年代的エレクトロサウンドを巧みに採り入れることによって明らかに楽曲の幅が広がっており、結局「777」シリーズでどれくらい歌謡曲や80'sロックなどの実験的に挑戦したとしてもそのテクノ感覚は非常に顕著なものになっています。アイドル歌謡という土台があってその上にテクノの殻をかぶせていたCutie Paiが、いつのまにかテクノポップを土台としてアイドルの皮を身につけているという逆転現象が感じられるのも本作の特徴かもしれません。それは本作における新曲であるチャイナテクノの「美人形」やロック風味のリズム音がなんとも良い感じの「イエスノウ」でも感じられる傾向であり、さらにやりたい放題に自由奔放なテクノサウンドになっているところも魅力的です。その後メンバーチェンジしてP-MODELの平沢進のごとくまゆちゃんのソロユニット化していくCutie Paiですが、オムニバス「空想活劇」収録の「SIGNAL」のような名曲も生み出すなどまだまだ才能は枯渇していません。
<Favorite Songs>
・「ミュージック・ランデヴー」
00年代エレクトロの特徴ともいえるブリブリとしたシンセベースが強調されたスペイシーポップ。ボコーダーをはじめとしたボイス変調をふんだんに使用してSF感を表現した重厚なサウンドに彼女達の楽曲力が表れています。
・「cosmic少女」
どこまでも宇宙風味ながらそのゆったりとした雰囲気に癒されるこれぞスペイシーポップの名曲。「ミュージック・ランデヴー」の尖った部分はなく、強調されたボコーダーボイスの溶け込み具合も絶妙です。またイントロや間奏の宇宙遊泳のようなフレーズが何とも言えなく良いです。
・「プラモガ」
音の太いシンセベースのフレーズが強力なインパクトを与える3曲目のスペイシーポップ。個人的には前2曲よりも好みです。メロディに派手さはないもののその落ち着きのあるサウンドに薄くかかってくる電子ボイスに粘っこいシンセベースが映えまくりです。
<評点>
・サウンド ★★★ (イメージとは裏腹に攻撃的で派手なシンセ音色が活躍する)
・メロディ ★★ (あくまで歌謡曲やPOPSの姿勢を崩さない職人的作品)
・リズム ★★ (努力の跡は見えるが全編打ち込みで音色もやはり00年代的)
・曲構成 ★ (ベスト盤の構成であるがテクノポップに統一した方が・・)
・個性 ★★ (アイドルを装う必然性もなければ自主制作である必要もない)
総合評点: 7点
Cutie Pai

<members>
まゆちゃん:vocals・chorus・micro KORG
きわサン:vocals・chorus
チッチ:vocals・chorus
1.「小っちゃな翼」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
2.「たまにはこんな恋の始まり」 詞・曲:神崎真由美 編:pigmy with bitter ends
3.「ミュージック・ランデヴー」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
4.「70’」 詞・曲:神崎真由美 編: 神崎真由美・宇津山洋
5.「ノン・ノン・プレイボーイ」 詞・曲:神崎真由美 編:うつやまだひろしとヤングオーケストラ
6.「グラスター」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
7.「太陽になりたい」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
8.「美人形」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
9.「cosmic少女」 詞・曲:神崎真由美 編:篠原哲二郎・ 宇津山洋
10.「イエスノウ」 詞・曲:神崎真由美 編:宇津山洋
11.「プラモガ」 詞・曲:神崎真由美 編: 篠原哲二郎・ 宇津山洋
produced by Cutie Pai
engineered by 宇津山洋
● アイドルの皮をかぶった類稀なセンスが光る自給自足ガールポップ注目株のベスト盤
00年代後期に入ってブレイクを果たしテクノポップの復権を担ったPerfumeは、そのブームがゆえに数々のフォロワーを生み出しました。そのフォロワー達(便宜上そう呼びます)は決してPerfumeの影響とは関係なくそれぞれの志向するエレクトロサウンドを発信すると主張することが多いものの、やはり彼女らのブレイクによる何らかの影響は与えられていたのではないかと思います。しかしその影響を隠さずともそれを上回るクオリティの作品を生み出せるというのは、センスと力量がある証拠なのです。Cutie Paiはそんな稀少なユニットの1つです。90年代に神咲まゆみとしてデビューしている実はベテランの中心人物であるまゆちゃんとマッキーのデュオとして2001年にスタートしたCutie Paiは、2006年にきわサンとチッチを加えたトリオとして再スタート、2007年にはシングルを毎月自主制作リリースするという「777」シリーズを敢行、その集大成としてベスト盤である本作をリリースします。
「ミュージック・ランデヴー」や「cosmic少女」などテクノポップアイドルな側面で評価されている本作ですが、基本となるのはアイドルポップ・歌謡曲・80'sロックであってエレクトロなサウンドはCutie Paiにとって1つの手法でしかありません。しかしもともとがテクノ的な素養のあったmicro KORGを巧みに操るまゆちゃんこと神崎真由美と宇津山洋のコラボによる楽曲はPerfumeブレイク以降の00年代的エレクトロサウンドを巧みに採り入れることによって明らかに楽曲の幅が広がっており、結局「777」シリーズでどれくらい歌謡曲や80'sロックなどの実験的に挑戦したとしてもそのテクノ感覚は非常に顕著なものになっています。アイドル歌謡という土台があってその上にテクノの殻をかぶせていたCutie Paiが、いつのまにかテクノポップを土台としてアイドルの皮を身につけているという逆転現象が感じられるのも本作の特徴かもしれません。それは本作における新曲であるチャイナテクノの「美人形」やロック風味のリズム音がなんとも良い感じの「イエスノウ」でも感じられる傾向であり、さらにやりたい放題に自由奔放なテクノサウンドになっているところも魅力的です。その後メンバーチェンジしてP-MODELの平沢進のごとくまゆちゃんのソロユニット化していくCutie Paiですが、オムニバス「空想活劇」収録の「SIGNAL」のような名曲も生み出すなどまだまだ才能は枯渇していません。
<Favorite Songs>
・「ミュージック・ランデヴー」
00年代エレクトロの特徴ともいえるブリブリとしたシンセベースが強調されたスペイシーポップ。ボコーダーをはじめとしたボイス変調をふんだんに使用してSF感を表現した重厚なサウンドに彼女達の楽曲力が表れています。
・「cosmic少女」
どこまでも宇宙風味ながらそのゆったりとした雰囲気に癒されるこれぞスペイシーポップの名曲。「ミュージック・ランデヴー」の尖った部分はなく、強調されたボコーダーボイスの溶け込み具合も絶妙です。またイントロや間奏の宇宙遊泳のようなフレーズが何とも言えなく良いです。
・「プラモガ」
音の太いシンセベースのフレーズが強力なインパクトを与える3曲目のスペイシーポップ。個人的には前2曲よりも好みです。メロディに派手さはないもののその落ち着きのあるサウンドに薄くかかってくる電子ボイスに粘っこいシンセベースが映えまくりです。
<評点>
・サウンド ★★★ (イメージとは裏腹に攻撃的で派手なシンセ音色が活躍する)
・メロディ ★★ (あくまで歌謡曲やPOPSの姿勢を崩さない職人的作品)
・リズム ★★ (努力の跡は見えるが全編打ち込みで音色もやはり00年代的)
・曲構成 ★ (ベスト盤の構成であるがテクノポップに統一した方が・・)
・個性 ★★ (アイドルを装う必然性もなければ自主制作である必要もない)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「GOLDEN LIFE」 VARIETE
「GOLDEN LIFE」(1986 アルファ)
VARIETE

<members>
有近真澄:vocal
浜田康史:drums
錦織幸也:guitars
鶴来正基:piano・keyboards
山田多理:vari-style
1.「GOLDEN LIFE」 詞:有近真澄 曲・編:山田多理
2.「KAMIKAZE DARLIN'」
詞:有近真澄・山田多理 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
3.「JEALOUSY」 詞:有近真澄・山田多理 曲:山田多理 編:鶴来正基
4.「MY GIRL IN HEAVEN」 詞:有近真澄 曲・編:山田多理
5.「お熱いうちに」 詞:有近真澄 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
6.「SOUL ESSENCE」 詞・曲:有近真澄 編:山田多理
7.「甘い生活-La Dolce Vita-」
詞:有近真澄・山田多理 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
8.「TARI'S TOKYO」 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
<support musician>
内田健太郎:bass
武山文夫:percussion
小林正弘:trumpet
林研一郎:trumpet
菊地康正:alto sax・tenor sax
武田一臣:kamikaze sax
中西group:strings
前田group:strings
Geno C. Maddox:"fk"DJ
kenneth abrahams-band:"fk"DJ
EVE:chorus
produced by 山田多理
co-produced by 今野雄二
mixing engineered by 寺田康彦
recording engineered by 土井章嗣・寺田康彦
● シャンソンの香りすら漂わせる突然変異のデジタルフレンチPOPSグループの快心作
1990年代にソロアーティストとして、また寺本りえ子とのTV JESUSで活動し、現在は窪田晴男とのエロヒム等で地道に音楽活動を続ける有近真澄が、ニューウェーブの流れを汲む個性的な似非フレンチポップグループ、ヴァリエテ(VARIETE)のメンバーとして、アルバム「in style」でデビューしたのが1985年。デジタリックにフレンチサウンドをコーディネートする謎多きクリエイター山田多理をはじめとする若きセンス溢れるメンバーによるこのバンドは、有近のユニセックスなヴォーカルの印象もあって、当時は異端的な捉え方をされている節もありました。そのような中翌年リリースされた本作では、強烈なフレンチ臭さが漂っていた1stからは格段にポップ寄りにしシフトしたサウンドを聴かせてくれます。優しく繊細なストリングスを基調としたシングル「甘い生活-La Dolce Vita-」は化粧品CMソングに起用されるなどそのポップ性は認められつつあり、その後の活動も期待されてはいたのですが・・・。
全体的な印象はデジタルフレンチPOPSということで間違いなく、気持ち良く歌い上げる高音ヴォーカルはシャンソンを意識しているようにも思えますが、前作ほどのフレンチへの傾倒ぶりは控えめとなり、どちらかといえばアメリカンPOPSの雰囲気さえ漂わせます。タイトル曲や都会的なインスト「TARI'S TOKYO」などヨーロッパのような湿っぽさはなく、カラッとした開放感が感じられる楽曲が多く収録されています。そして前作で大活躍したストリングスに加えて本作ではブラスセクションも豪快なフィーチャーされており、全体的にゴージャスなサウンドに仕上がっている部分も見逃せません。単なる打ち込みを施したおいしいどころ取りの楽曲と思いきや、POPSの贅を尽くした間口の広いサウンドに山田多理のセンスの奥深さが感じられるとともに、若き日の鶴来正基のアレンジ能力も発揮された本作は、ヴァリエテの手数の多さを知らしめる意欲的な作品として評価できると思います。
<Favorite Songs>
・「KAMIKAZE DARLIN'」
武田一臣のサックスの暴れっぷりが心地良いジャングルナンバー。きらびやかなシンセパッドの音色が個性的ですが、淡々としているように見えてノリを生み出しているベースフレーズにも注目です。
・「お熱いうちに」
打ち込みを混ぜたキレの良いブーガルーリズムとクッキリしたブラスセクションとピアノが活躍する彼らお得意のラテン風味のデジタルフレンチPOPS。間奏の不安を煽る転調に次ぐ転調や、アウトロのピアノソロなど見せ場も十分です。
・「TARI'S TOKYO」
どこかで聴いたような都会派シティポップインスト。この異常なパロディ臭さが山田多理の持ち味でもあるのですが、随所に挿入されるブレーキ音などの都会の喧騒音やジャングル音のサンプリングと、EVEのコーラスワークがアクセントとして機能しています。
<評点>
・サウンド ★★ (生ブラスの大胆な導入で打ち込み多用のオケに花を添える)
・メロディ ★ (純粋なPOPSにシフトしたとはいえメロに弱さを感じる)
・リズム ★★ (生と機械を上手く組み合わせたリズムの面白みは不変)
・曲構成 ★ (どうしても全体的に似た楽曲が多くなるのも個性かも)
・個性 ★ (前作よりもこのグループで演奏する必然性はなくなった)
総合評点: 6点
VARIETE

<members>
有近真澄:vocal
浜田康史:drums
錦織幸也:guitars
鶴来正基:piano・keyboards
山田多理:vari-style
1.「GOLDEN LIFE」 詞:有近真澄 曲・編:山田多理
2.「KAMIKAZE DARLIN'」
詞:有近真澄・山田多理 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
3.「JEALOUSY」 詞:有近真澄・山田多理 曲:山田多理 編:鶴来正基
4.「MY GIRL IN HEAVEN」 詞:有近真澄 曲・編:山田多理
5.「お熱いうちに」 詞:有近真澄 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
6.「SOUL ESSENCE」 詞・曲:有近真澄 編:山田多理
7.「甘い生活-La Dolce Vita-」
詞:有近真澄・山田多理 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
8.「TARI'S TOKYO」 曲:山田多理 編:山田多理・鶴来正基
<support musician>
内田健太郎:bass
武山文夫:percussion
小林正弘:trumpet
林研一郎:trumpet
菊地康正:alto sax・tenor sax
武田一臣:kamikaze sax
中西group:strings
前田group:strings
Geno C. Maddox:"fk"DJ
kenneth abrahams-band:"fk"DJ
EVE:chorus
produced by 山田多理
co-produced by 今野雄二
mixing engineered by 寺田康彦
recording engineered by 土井章嗣・寺田康彦
● シャンソンの香りすら漂わせる突然変異のデジタルフレンチPOPSグループの快心作
1990年代にソロアーティストとして、また寺本りえ子とのTV JESUSで活動し、現在は窪田晴男とのエロヒム等で地道に音楽活動を続ける有近真澄が、ニューウェーブの流れを汲む個性的な似非フレンチポップグループ、ヴァリエテ(VARIETE)のメンバーとして、アルバム「in style」でデビューしたのが1985年。デジタリックにフレンチサウンドをコーディネートする謎多きクリエイター山田多理をはじめとする若きセンス溢れるメンバーによるこのバンドは、有近のユニセックスなヴォーカルの印象もあって、当時は異端的な捉え方をされている節もありました。そのような中翌年リリースされた本作では、強烈なフレンチ臭さが漂っていた1stからは格段にポップ寄りにしシフトしたサウンドを聴かせてくれます。優しく繊細なストリングスを基調としたシングル「甘い生活-La Dolce Vita-」は化粧品CMソングに起用されるなどそのポップ性は認められつつあり、その後の活動も期待されてはいたのですが・・・。
全体的な印象はデジタルフレンチPOPSということで間違いなく、気持ち良く歌い上げる高音ヴォーカルはシャンソンを意識しているようにも思えますが、前作ほどのフレンチへの傾倒ぶりは控えめとなり、どちらかといえばアメリカンPOPSの雰囲気さえ漂わせます。タイトル曲や都会的なインスト「TARI'S TOKYO」などヨーロッパのような湿っぽさはなく、カラッとした開放感が感じられる楽曲が多く収録されています。そして前作で大活躍したストリングスに加えて本作ではブラスセクションも豪快なフィーチャーされており、全体的にゴージャスなサウンドに仕上がっている部分も見逃せません。単なる打ち込みを施したおいしいどころ取りの楽曲と思いきや、POPSの贅を尽くした間口の広いサウンドに山田多理のセンスの奥深さが感じられるとともに、若き日の鶴来正基のアレンジ能力も発揮された本作は、ヴァリエテの手数の多さを知らしめる意欲的な作品として評価できると思います。
<Favorite Songs>
・「KAMIKAZE DARLIN'」
武田一臣のサックスの暴れっぷりが心地良いジャングルナンバー。きらびやかなシンセパッドの音色が個性的ですが、淡々としているように見えてノリを生み出しているベースフレーズにも注目です。
・「お熱いうちに」
打ち込みを混ぜたキレの良いブーガルーリズムとクッキリしたブラスセクションとピアノが活躍する彼らお得意のラテン風味のデジタルフレンチPOPS。間奏の不安を煽る転調に次ぐ転調や、アウトロのピアノソロなど見せ場も十分です。
・「TARI'S TOKYO」
どこかで聴いたような都会派シティポップインスト。この異常なパロディ臭さが山田多理の持ち味でもあるのですが、随所に挿入されるブレーキ音などの都会の喧騒音やジャングル音のサンプリングと、EVEのコーラスワークがアクセントとして機能しています。
<評点>
・サウンド ★★ (生ブラスの大胆な導入で打ち込み多用のオケに花を添える)
・メロディ ★ (純粋なPOPSにシフトしたとはいえメロに弱さを感じる)
・リズム ★★ (生と機械を上手く組み合わせたリズムの面白みは不変)
・曲構成 ★ (どうしても全体的に似た楽曲が多くなるのも個性かも)
・個性 ★ (前作よりもこのグループで演奏する必然性はなくなった)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
| HOME |