「ELEVATOR」 泉谷しげる
「ELEVATOR」(1984 ポリドール)
泉谷しげる:vocal

1.「UNDER PRICK」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
2.「EROS」 詞:泉谷しげる 曲・編:吉田建
3.「ELECTRIC BLUE」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
4.「ELEVATOR」 詞:泉谷しげる 曲・編:吉田建
5.「HAIR STYLE」 詞:泉谷しげる 曲・編:吉田建
6.「1900'S」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
7.「FACES」 詞:泉谷しげる 曲:福原まり 編:吉田建
8.「SEDAI」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
9.「HYMN」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
<support musician>
柴山和彦:guitar
吉田建:bass・guitar・keyboard・voice
友田真吾:drums・percussion
福原まり:keyboard・vibraphone・voice
矢口博康:sax
武川雅寛:violin・trumpet
小滝満:MC-4 & DMX programming・keyboard
produced by 泉谷しげる
co-produced by 吉田建
engineered by 北川照明
● 無縁と思われたデジタルサウンドの大胆導入!COOLな印象が際立つニューウェーヴな実験作
1980年代のニューウェーブブームは日本の音楽界に多大な影響をもたらし、その実験的なサウンド手法はいわゆるオールドウェーブなアーティストにとっても見逃すことができなくなっていました。言わずと知れたフォークソング界の重鎮、泉谷しげるもその1人で、ニューウェーブの当時で言うところの「斬新」なサウンドに着目し、セールス的にふるわなかった自身の作品に新しい血を入れようと積極的にデジタル機材を多用し、エレクトリックなサウンドに接近していきました。本作はそういった泉谷のデジタル化時代の代表作であり、これまでの泉谷のイメージを一旦清算し、新たな可能性に挑戦する意欲が見られた、古くからのファンにとっては問題作であり賛否両論が渦巻くアルバムです。
本作におけるサウンドを全面的に支えているのは盟友のベーシスト吉田建ですが、デジタルな部分は当然のごとくニューウェーブ人脈が参加し楽曲に彩りを加えています。シーケンスやリズムのプログラミングをシネマやYAPOOS、そして後年は大沢誉志幸の片腕として活躍する小滝満が担当していることからも、そのエレクトリックな雰囲気が想像できるというものです。もともと情感ほとばしる言葉の発信力が強い泉谷も、らしくないスマートでCOOLなサウンドに合わせるように感情は抑制され、冷凍培養されたかのような無表情なライム気味ヴォーカルに徹しているように感じられます(ところどころ抑えきれない感はありますが・・)。極めつけは福原まりや矢口博康、友田真吾といったREAL FISH~SHI-SHONENの面々が参加していることで、当時は山下久美子のバックを務めるなどニューウェーブサウンド御用達のサポートとして多方面で活躍していた彼らの起用(特に福原は「FACES」を提供)をとってみても、泉谷のニューウェーブ接近の本気度が窺えるというものです。結局本作はオールドウェーブがニューウェーブに接近した際によく見られるファンの拒絶反応もあって、80年代後半にはバンドサウンドによる渋いロックに方針転換しちょっとしたブレイクに至りますが、TECHNOLOGYに近づいた本作は泉谷の試行錯誤が感じられる迷走の時代とはいえ、そのCOOLな雰囲気のサウンド(特にPCMリズム特有のジャストなノリ)を再評価したいところです。
<Favorite Songs>
・「ELEVATOR」
PCM丸出しのリズムプログラミングがかっこいいタイトルナンバー。電子音にオケヒットも挿入されてウィスパー気味のヴォーカルと合わせて非常にCOOLな印象です。随所に挿入されるチープリズムのフィルインがなんとも言えない味を出しています。
・「HAIR STYLE」
強烈なスネアとうねるベースが支えるデジタルファンクチューン。前曲とつながる形でのチープ過ぎるリズムマシンソロから入ってくる構成が気に入っています。間奏の矢口博康サックスフレーズもPOPSらしくないアヴァンギャルドさで聴き所が多い楽曲です。
・「SEDAI」
実は本作の中で最もアップテンポでポップな楽曲。典型的なテクノシーケンスのベースフレーズはYMOすら彷佛とさせます。しかし合わせてギターも目立つ構成となっているためそれほどテクノ的には感じさせないのも事実です。
<評点>
・サウンド ★★ (思い切ったデジタル処理だがまだ遠慮がある)
・メロディ ★ (サウンドでの冒険のおかげで抑え気味に終始)
・リズム ★★★ (リズムプログラミングが大活躍で音も良い)
・曲構成 ★ (実験的ではあるがインパクトも少なく中途半端に)
・個性 ★ (感情を抑えたウィスパー気味楽曲は彼らしくない)
総合評点: 6点
泉谷しげる:vocal

1.「UNDER PRICK」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
2.「EROS」 詞:泉谷しげる 曲・編:吉田建
3.「ELECTRIC BLUE」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
4.「ELEVATOR」 詞:泉谷しげる 曲・編:吉田建
5.「HAIR STYLE」 詞:泉谷しげる 曲・編:吉田建
6.「1900'S」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
7.「FACES」 詞:泉谷しげる 曲:福原まり 編:吉田建
8.「SEDAI」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
9.「HYMN」 詞・曲:泉谷しげる 編:吉田建
<support musician>
柴山和彦:guitar
吉田建:bass・guitar・keyboard・voice
友田真吾:drums・percussion
福原まり:keyboard・vibraphone・voice
矢口博康:sax
武川雅寛:violin・trumpet
小滝満:MC-4 & DMX programming・keyboard
produced by 泉谷しげる
co-produced by 吉田建
engineered by 北川照明
● 無縁と思われたデジタルサウンドの大胆導入!COOLな印象が際立つニューウェーヴな実験作
1980年代のニューウェーブブームは日本の音楽界に多大な影響をもたらし、その実験的なサウンド手法はいわゆるオールドウェーブなアーティストにとっても見逃すことができなくなっていました。言わずと知れたフォークソング界の重鎮、泉谷しげるもその1人で、ニューウェーブの当時で言うところの「斬新」なサウンドに着目し、セールス的にふるわなかった自身の作品に新しい血を入れようと積極的にデジタル機材を多用し、エレクトリックなサウンドに接近していきました。本作はそういった泉谷のデジタル化時代の代表作であり、これまでの泉谷のイメージを一旦清算し、新たな可能性に挑戦する意欲が見られた、古くからのファンにとっては問題作であり賛否両論が渦巻くアルバムです。
本作におけるサウンドを全面的に支えているのは盟友のベーシスト吉田建ですが、デジタルな部分は当然のごとくニューウェーブ人脈が参加し楽曲に彩りを加えています。シーケンスやリズムのプログラミングをシネマやYAPOOS、そして後年は大沢誉志幸の片腕として活躍する小滝満が担当していることからも、そのエレクトリックな雰囲気が想像できるというものです。もともと情感ほとばしる言葉の発信力が強い泉谷も、らしくないスマートでCOOLなサウンドに合わせるように感情は抑制され、冷凍培養されたかのような無表情なライム気味ヴォーカルに徹しているように感じられます(ところどころ抑えきれない感はありますが・・)。極めつけは福原まりや矢口博康、友田真吾といったREAL FISH~SHI-SHONENの面々が参加していることで、当時は山下久美子のバックを務めるなどニューウェーブサウンド御用達のサポートとして多方面で活躍していた彼らの起用(特に福原は「FACES」を提供)をとってみても、泉谷のニューウェーブ接近の本気度が窺えるというものです。結局本作はオールドウェーブがニューウェーブに接近した際によく見られるファンの拒絶反応もあって、80年代後半にはバンドサウンドによる渋いロックに方針転換しちょっとしたブレイクに至りますが、TECHNOLOGYに近づいた本作は泉谷の試行錯誤が感じられる迷走の時代とはいえ、そのCOOLな雰囲気のサウンド(特にPCMリズム特有のジャストなノリ)を再評価したいところです。
<Favorite Songs>
・「ELEVATOR」
PCM丸出しのリズムプログラミングがかっこいいタイトルナンバー。電子音にオケヒットも挿入されてウィスパー気味のヴォーカルと合わせて非常にCOOLな印象です。随所に挿入されるチープリズムのフィルインがなんとも言えない味を出しています。
・「HAIR STYLE」
強烈なスネアとうねるベースが支えるデジタルファンクチューン。前曲とつながる形でのチープ過ぎるリズムマシンソロから入ってくる構成が気に入っています。間奏の矢口博康サックスフレーズもPOPSらしくないアヴァンギャルドさで聴き所が多い楽曲です。
・「SEDAI」
実は本作の中で最もアップテンポでポップな楽曲。典型的なテクノシーケンスのベースフレーズはYMOすら彷佛とさせます。しかし合わせてギターも目立つ構成となっているためそれほどテクノ的には感じさせないのも事実です。
<評点>
・サウンド ★★ (思い切ったデジタル処理だがまだ遠慮がある)
・メロディ ★ (サウンドでの冒険のおかげで抑え気味に終始)
・リズム ★★★ (リズムプログラミングが大活躍で音も良い)
・曲構成 ★ (実験的ではあるがインパクトも少なく中途半端に)
・個性 ★ (感情を抑えたウィスパー気味楽曲は彼らしくない)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「POP KING」 オカノフリーク
「POP KING」(1996 Hu-Kenkoh STUDIO)
オカノフリーク

<members>
岡野晶:all instruments
1.「Hyper Tensions」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
2.「So Deep Educations」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
3.「M.I.S.S '96」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
4.「デリケート」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
5.「マジック」 詞:詩季東風香 曲・編:岡野晶
6.「夜歩く」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
7.「リトル・ガール」 詞:只野亜穂 曲・編:岡野晶
8.「BE MY BABY」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
9.「探偵物語」 詞・曲・編:岡野晶
10.「Love is Yellow」 詞:つるたまゆみ 曲・編:岡野晶
11.「外套と青空」 曲・編:岡野晶
12.「エンジェル」 詞:詩季東風香 曲・編:岡野晶
13.「The End...」 詞:只野亜穂 曲・編:岡野晶
<support musician>
源代恭子:vocals
つるたまゆみ:vocals
キャプテン材木:guitar
久保恵司:guitar
TAMA:chorus
アーヴァン野村:chorus
猪上一郎:chorus
produced by 岡野晶
engineered by 岡野晶
● 覚えやすく心を撃つメロディ!ユニット史上最もポップな楽曲の数々を集めた自主制作の名盤
MBS(毎日放送)のマスコットキャラクターである「らいよんちゃん」の声優を務め、また自身のソロ活動のみならずイラストレーターのチャンキー松本との中年デュオ、33でも活動中の関西きってのソングライターであるオカノアキラが、90年代に宅録ソロユニットとして活動していたのがオカノフリークですが、オカノフリークVol.3「I'm So Hard Core」に続く作品としてカセット媒体でリリースされたのが、4作品めながらVol.5と冠せられた本作です。タイトル通り、ポップソングの真髄を極めた楽曲を詰め込んだこのアルバムは、比較的前作までのようなアクの強いアマチュアっぽさは後退し、軽快でオシャレなリズムに乗って覚えやすいメロディを前面に押し出した非常に聴きやすい作品となっています。
ゲストヴォーカル陣は源代恭子を中心に据える形で除いて一新され、新たに高音キュートな声質のつるたまゆみが加わりましたが、これが非常にポップ性を高める結果となっています。これまで以上に気持ちよく歌い上げる源代恭子の実力はもはや疑いがありませんが、「M.I.S.S '96」「Love is Yellow」で瑞々しくもキュートに歌うつるたまゆみはまさに掘り出し物と言ってよいでしょう。サウンド面でもオカノの歌謡フルオーケストラシミュレートぶりには拍車がかかり、また「So Deep Educations」「デリケート」のようなより現代風に跳ねるハウスリズムを基調としたオシャレ感覚がこれまでよりも親しみやすく感じさせる原因の1つとなっています。しかし「POP KING」というタイトル通り明るめの楽曲が多い本作の中でも異彩を放つのが「夜歩く」と「探偵物語」というサスペンスタッチの楽曲で、サンプリングを駆使しながら昭和な世界を創り出すオカノの楽曲構築センスが遺憾なく発揮されています。本作と同時リリースのVol.6「Extra Bold」と合わせて非常に充実した楽曲を送り出したオカノフリークの全盛期的作品として、本作は関西における一部の好事家に記憶されていることでしょう。
<Favorite Songs>
・「Hyper Tensions」
ステージのスタートを思わせるビッグバンドなオープニングから夏の始まりを思わせるオープニングの中のオープニングナンバー。ダン池田を思わせるフルオーケストラシミューレーションと執拗にクォンタイズを細かく設定したかのような大げさなリズムワークが秀逸です。感想から後半になだれ込む見せ場の多い構成も素晴らしいです。
・「M.I.S.S '96」
どこまでもキャッチーな80'sニューウェーブアイドルソング風ポップチューン。こうした曲調につるたまゆみのヴォーカルがピタリとはまっていて非常に心地良い。王道のシンセベースといい安っぽいギターソロといい、フェイザーをかけたり、チープのオンパレードながら楽曲としての完成度はすこぶる高いです。
・「探偵物語」
まんま犬神家一族(しかも石坂浩二主演の)のサンプリングを巧みに使用した昭和の匂い満載のサスペンスPOPS。間奏の台詞サンプリングのキャッチボールや琴の音のハマり具合、後半の目まぐるしく変化するサウンドの凝りように思わず笑ってしまうほど完成されています。
<評点>
・サウンド ★★★ (歌謡曲的ブラスアレンジとサンプリングで混沌と)
・メロディ ★★★★★(ここまでのクオリティが埋もれていたのが不思議)
・リズム ★★★ (粗さのあるリズムトラックも勢いがあってご愛嬌)
・曲構成 ★★ (明るめのポップ縛りか似たような曲が重なった)
・個性 ★★ (もう少しアクがあっても良いくらい爽やかなPOP集)
総合評点: 8点
オカノフリーク

<members>
岡野晶:all instruments
1.「Hyper Tensions」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
2.「So Deep Educations」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
3.「M.I.S.S '96」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
4.「デリケート」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
5.「マジック」 詞:詩季東風香 曲・編:岡野晶
6.「夜歩く」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
7.「リトル・ガール」 詞:只野亜穂 曲・編:岡野晶
8.「BE MY BABY」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
9.「探偵物語」 詞・曲・編:岡野晶
10.「Love is Yellow」 詞:つるたまゆみ 曲・編:岡野晶
11.「外套と青空」 曲・編:岡野晶
12.「エンジェル」 詞:詩季東風香 曲・編:岡野晶
13.「The End...」 詞:只野亜穂 曲・編:岡野晶
<support musician>
源代恭子:vocals
つるたまゆみ:vocals
キャプテン材木:guitar
久保恵司:guitar
TAMA:chorus
アーヴァン野村:chorus
猪上一郎:chorus
produced by 岡野晶
engineered by 岡野晶
● 覚えやすく心を撃つメロディ!ユニット史上最もポップな楽曲の数々を集めた自主制作の名盤
MBS(毎日放送)のマスコットキャラクターである「らいよんちゃん」の声優を務め、また自身のソロ活動のみならずイラストレーターのチャンキー松本との中年デュオ、33でも活動中の関西きってのソングライターであるオカノアキラが、90年代に宅録ソロユニットとして活動していたのがオカノフリークですが、オカノフリークVol.3「I'm So Hard Core」に続く作品としてカセット媒体でリリースされたのが、4作品めながらVol.5と冠せられた本作です。タイトル通り、ポップソングの真髄を極めた楽曲を詰め込んだこのアルバムは、比較的前作までのようなアクの強いアマチュアっぽさは後退し、軽快でオシャレなリズムに乗って覚えやすいメロディを前面に押し出した非常に聴きやすい作品となっています。
ゲストヴォーカル陣は源代恭子を中心に据える形で除いて一新され、新たに高音キュートな声質のつるたまゆみが加わりましたが、これが非常にポップ性を高める結果となっています。これまで以上に気持ちよく歌い上げる源代恭子の実力はもはや疑いがありませんが、「M.I.S.S '96」「Love is Yellow」で瑞々しくもキュートに歌うつるたまゆみはまさに掘り出し物と言ってよいでしょう。サウンド面でもオカノの歌謡フルオーケストラシミュレートぶりには拍車がかかり、また「So Deep Educations」「デリケート」のようなより現代風に跳ねるハウスリズムを基調としたオシャレ感覚がこれまでよりも親しみやすく感じさせる原因の1つとなっています。しかし「POP KING」というタイトル通り明るめの楽曲が多い本作の中でも異彩を放つのが「夜歩く」と「探偵物語」というサスペンスタッチの楽曲で、サンプリングを駆使しながら昭和な世界を創り出すオカノの楽曲構築センスが遺憾なく発揮されています。本作と同時リリースのVol.6「Extra Bold」と合わせて非常に充実した楽曲を送り出したオカノフリークの全盛期的作品として、本作は関西における一部の好事家に記憶されていることでしょう。
<Favorite Songs>
・「Hyper Tensions」
ステージのスタートを思わせるビッグバンドなオープニングから夏の始まりを思わせるオープニングの中のオープニングナンバー。ダン池田を思わせるフルオーケストラシミューレーションと執拗にクォンタイズを細かく設定したかのような大げさなリズムワークが秀逸です。感想から後半になだれ込む見せ場の多い構成も素晴らしいです。
・「M.I.S.S '96」
どこまでもキャッチーな80'sニューウェーブアイドルソング風ポップチューン。こうした曲調につるたまゆみのヴォーカルがピタリとはまっていて非常に心地良い。王道のシンセベースといい安っぽいギターソロといい、フェイザーをかけたり、チープのオンパレードながら楽曲としての完成度はすこぶる高いです。
・「探偵物語」
まんま犬神家一族(しかも石坂浩二主演の)のサンプリングを巧みに使用した昭和の匂い満載のサスペンスPOPS。間奏の台詞サンプリングのキャッチボールや琴の音のハマり具合、後半の目まぐるしく変化するサウンドの凝りように思わず笑ってしまうほど完成されています。
<評点>
・サウンド ★★★ (歌謡曲的ブラスアレンジとサンプリングで混沌と)
・メロディ ★★★★★(ここまでのクオリティが埋もれていたのが不思議)
・リズム ★★★ (粗さのあるリズムトラックも勢いがあってご愛嬌)
・曲構成 ★★ (明るめのポップ縛りか似たような曲が重なった)
・個性 ★★ (もう少しアクがあっても良いくらい爽やかなPOP集)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「CHEERFUL MONSTERS」 Instant Cytron
「The Far-out Sounds of CHEERFUL MONSTERS」 (1997 東芝EMI)
Instant Cytron

<members>
片岡知子:vocal・keyboard・glocken・tambourine・bells・synthesizer・windchime・chorus・scat・talk・strings arrangement
長瀬五郎:acoustic guitar・electric guitar・synthesizer programming・glocken・chorus・clap・talk
1.「I'm hip」 曲:田中知之・長瀬五郎 編:田中知之・Instant Cytron
2.「Walkin' in wonderland」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
3.「in the classroom」
詞:片岡知子 曲:田中知之・長瀬五郎 編:田中知之・Instant Cytron
4.「Magic pop lollipop」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
5.「My thing」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
6.「Adventure monsters」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
<support musician>
渡辺等:wood bass・electric bass
YOSHIE:drums・percussion
河合代介:piano・organ・celesta・Rhodes
山本拓夫:flute・piccolo
金原千恵子Strings:strings
Angel:vocals・chorus
Erica:vocals・chorus
Lisa:vocals・chorus
Louise:vocals・chorus
Shawn:vocals
Vincent:vocals
徳江豊:chorus・clap
山口一樹:chorus・talk
伊藤俊治:synthesizer programming
田中知之:samples・chorus・clap・talk
produced by Instant Cytron
engineered by 森岡徹也
● チップマンクスを採用した新境地!瑞々しいメロディは健在のメジャーデビュー後2ndミニアルバム
不朽の名盤「CHANGE THIS WORLD」でメジャーデビューを果たした片岡知子と長瀬五郎の男女デュオInstant Cytronは、ポスト渋谷系ともいうべき美メロとアコースティックな癒しサウンドにより爽やか路線を突っ走ると思われましたが、シングル「にじますの街角」「Summertime in the place」の連続リリース後、大胆に路線を変更し、2人の趣味性を隠すことなく前面に押し出した自由な作風を目指していきます。そこで生まれたのが6曲入りのミニアルバムである本作で、モンドでオシャレなサンプリングマスターとして名を馳せていたFantastic Plastic Machineの田中知之を迎え、さらに前作でも起用したチルドレンコーラス隊をフィーチャーするなど独自のおもちゃ箱POPSを展開、遂にはボイス変調のチップマンクスを導入するなど、彼ら自身の楽しさが伝わってくる作品となっています。
Instant Cytronのような男女デュオ構成のユニットは得てして女性はヴォーカルと作詞に専念し、男性がサウンド全体を支えるという傾向が強いものですが、彼らはひと味違います。ヴォーカルだけでもその繊細かつキュートで個性的なウィスパーボイスという武器を持ち合わせている片岡知子は、キーボードやグロッケンなどの楽器演奏に関わりながらストリングスアレンジをもこなす才能を発揮しており、作曲とギターを担当してセンスあふれるメロディセンスを発揮する長瀬五郎と遜色なく、才能ある一サウンドクリエイターとして両雄並び立つという関係性が見られ、それがこのユニットの強みともなっているように思えます。この作品がきっかけとなり、彼らは独自のハッピーなトイPOPSミュージックとも呼ぶべきポップサウンドを追求していくことになりますが、そのどこまでもメジャー調の幸福感豊かなメロディアスフレーズは不変であり、片岡の繊細な声質も相まって彼らの唯一無二の個性として現在でも評価され続けているのです。
<Favorite Songs>
・「Walkin' in wonderland」
スピード感のあるドライビングPOPSともいうべき典型的なポップナンバー。縦横無尽に活躍するオルガンのフレーズと滑らかなギターが程よく絡み合って非常に喉越しがよく感じられる楽曲です。
・「My thing」
本作中でも真っ正面から切り込むストレートなラブソング。片岡のキュートな声質とセンスあふれるストリングスフレーズが溶けあった夢見心地なミディアムバラードです。
<評点>
・サウンド ★★ (手を替え品を替えおもちゃ箱をひっくり返すかの様)
・メロディ ★★★★ (懐かしさと楽しさを同居させる優れたフレーズ)
・リズム ★★ (目新しさはないものの王道POPSのボトムを支える)
・曲構成 ★ (15分ほどの小作品であるが聴き足りない印象も)
・個性 ★★★ (路線変更後の初作品としてインパクトを与える)
総合評点: 7点
Instant Cytron

<members>
片岡知子:vocal・keyboard・glocken・tambourine・bells・synthesizer・windchime・chorus・scat・talk・strings arrangement
長瀬五郎:acoustic guitar・electric guitar・synthesizer programming・glocken・chorus・clap・talk
1.「I'm hip」 曲:田中知之・長瀬五郎 編:田中知之・Instant Cytron
2.「Walkin' in wonderland」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
3.「in the classroom」
詞:片岡知子 曲:田中知之・長瀬五郎 編:田中知之・Instant Cytron
4.「Magic pop lollipop」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
5.「My thing」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
6.「Adventure monsters」 詞:片岡知子 曲:長瀬五郎 編:Instant Cytron
<support musician>
渡辺等:wood bass・electric bass
YOSHIE:drums・percussion
河合代介:piano・organ・celesta・Rhodes
山本拓夫:flute・piccolo
金原千恵子Strings:strings
Angel:vocals・chorus
Erica:vocals・chorus
Lisa:vocals・chorus
Louise:vocals・chorus
Shawn:vocals
Vincent:vocals
徳江豊:chorus・clap
山口一樹:chorus・talk
伊藤俊治:synthesizer programming
田中知之:samples・chorus・clap・talk
produced by Instant Cytron
engineered by 森岡徹也
● チップマンクスを採用した新境地!瑞々しいメロディは健在のメジャーデビュー後2ndミニアルバム
不朽の名盤「CHANGE THIS WORLD」でメジャーデビューを果たした片岡知子と長瀬五郎の男女デュオInstant Cytronは、ポスト渋谷系ともいうべき美メロとアコースティックな癒しサウンドにより爽やか路線を突っ走ると思われましたが、シングル「にじますの街角」「Summertime in the place」の連続リリース後、大胆に路線を変更し、2人の趣味性を隠すことなく前面に押し出した自由な作風を目指していきます。そこで生まれたのが6曲入りのミニアルバムである本作で、モンドでオシャレなサンプリングマスターとして名を馳せていたFantastic Plastic Machineの田中知之を迎え、さらに前作でも起用したチルドレンコーラス隊をフィーチャーするなど独自のおもちゃ箱POPSを展開、遂にはボイス変調のチップマンクスを導入するなど、彼ら自身の楽しさが伝わってくる作品となっています。
Instant Cytronのような男女デュオ構成のユニットは得てして女性はヴォーカルと作詞に専念し、男性がサウンド全体を支えるという傾向が強いものですが、彼らはひと味違います。ヴォーカルだけでもその繊細かつキュートで個性的なウィスパーボイスという武器を持ち合わせている片岡知子は、キーボードやグロッケンなどの楽器演奏に関わりながらストリングスアレンジをもこなす才能を発揮しており、作曲とギターを担当してセンスあふれるメロディセンスを発揮する長瀬五郎と遜色なく、才能ある一サウンドクリエイターとして両雄並び立つという関係性が見られ、それがこのユニットの強みともなっているように思えます。この作品がきっかけとなり、彼らは独自のハッピーなトイPOPSミュージックとも呼ぶべきポップサウンドを追求していくことになりますが、そのどこまでもメジャー調の幸福感豊かなメロディアスフレーズは不変であり、片岡の繊細な声質も相まって彼らの唯一無二の個性として現在でも評価され続けているのです。
<Favorite Songs>
・「Walkin' in wonderland」
スピード感のあるドライビングPOPSともいうべき典型的なポップナンバー。縦横無尽に活躍するオルガンのフレーズと滑らかなギターが程よく絡み合って非常に喉越しがよく感じられる楽曲です。
・「My thing」
本作中でも真っ正面から切り込むストレートなラブソング。片岡のキュートな声質とセンスあふれるストリングスフレーズが溶けあった夢見心地なミディアムバラードです。
<評点>
・サウンド ★★ (手を替え品を替えおもちゃ箱をひっくり返すかの様)
・メロディ ★★★★ (懐かしさと楽しさを同居させる優れたフレーズ)
・リズム ★★ (目新しさはないものの王道POPSのボトムを支える)
・曲構成 ★ (15分ほどの小作品であるが聴き足りない印象も)
・個性 ★★★ (路線変更後の初作品としてインパクトを与える)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「FROM A TO B」 NEW MUSIK
「FROM A TO B」(1980 GTO)
NEW MUSIK

<members>
Tony Mansfield:vocals・guitars・keyboards
Tony Hibbert:bass
Clive Gates:keyboards
Phil Towner:drums・percussion
1.「STRAIGHT LINES」 Tony Mansfield
2.「SANCTUARY」 Tony Mansfield
3.「A MAP OF YOU」 Tony Mansfield
4.「SCIENCE」 Tony Mansfield
5.「ON ISLANDS」 Tony Mansfield
6.「THIS WORLD OF WATER」 Tony Mansfield
7.「LIVING BY NUMBERS」 Tony Mansfield
8.「DEAD FISH (DON'T SWIM HOME)」 Tony Mansfield
9.「ADVENTURES」 Tony Mansfield
10.「THE SAFE SIDE」 Tony Mansfield
<support musician>
Nick Bailey:string synthesizer・piano
Jane Kennaway:backing vocals
produced by Tony Mansfield
engineered by Peter Hammond
● 英国流メロディセンスとほのかなシンセサウンドが見事に融合!80年代初頭を飾るリアルポップバンドの名盤
後にテクノポップの代表的なグループと評されるTony Mansfield率いるNew Musikは、1979年にシングル「Straight Line」でデビュー、2ndシングル「LIVING BY NUMBERS」と合わせてギターを中心にしたメロディアスで爽やかなアコースティックポップな作風で注目されていました。本作はそんな彼らのデビューアルバムですが、もちろん80年代の幕開けの時期ということもあってチープなシンセサウンドも導入されてはいるものの、やはり後年に比べるとまだ味付け程度の使い方であり、本質はきらびやかなメロディラインに裏打ちされた類稀なポップセンスであり、懐かしさと切なさが同居する正統派POPS作品としての評価も高いアルバムです。
そのようなメロディ志向の楽曲をさらに引き立てているのがパーカッション系音色です。スネア音も当時としては凝っていますが「Straight Line」等のようなノイズをリズミカルに刻む独特の手法や、シンセで作ったと思われるソナー音っぽいいわゆるトニマンサウンドは、当時の他のメロディ系POPSには余り見られなかったものです。また、前述のようにシンセは味付け程度と言えますが、そのアクセント的な使用法が逆に存在感を増しており、「A MAP OF YOU」のリングモジュレートを施したフレーズや「THIS WORLD OF WATER」のモーフィングされたヴォーカル処理などは、本作がその本質とは異なっているとはいえテクノポップの名盤と語られる大きな理由であることを感じさせられます。そしてやはり忘れてはならないのがTony Mansfieldのきれい過ぎる発音のヴォーカル。英語が苦手なリスナーでも聞き取れる耳の優しいキレのある発音であると思います。特に洋楽においてキャッチーなPOPSを楽しむ場合、聞き取りやすいというのはかなりのアドバンテージになると思うのですが、そういった意味においても本作はPOPS作品として誉れ高い名盤と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「THIS WORLD OF WATER」
サビのメロディ&ヴォーカル処理にノックアウトされる名曲。イントロにしてもサビにしてもどこか切ないフレーズに、とにもかくにもサビのヴォーカル処理のアイデアには驚かされます。
・「LIVING BY NUMBERS」
爽やかなネオアコ系メロディラインが印象的なセカンドシングル。生演奏だけで成立しそうなポップソングですが、力強いノイジーパッドによるリズムのアクセントが(よい意味で)気になって仕方がありません。
・「ADVENTURES」
これも爽やか系&キャッチーなポップソング。小気味良いカッティングが楽曲を引っ張っていますが、リバース気味のピアノフレーズが非常に効果的です。また、この楽曲はBメロからの流れが素晴らしいです。
<評点>
・サウンド ★★ (ギターに絡むアクセント的なシンセの効果は十分)
・メロディ ★★★★ (デビュー時にしてポップマスターの名に恥じない)
・リズム ★★★★ (ノイズの使い方が絶妙でインパクトは抜群)
・曲構成 ★ (似たような楽曲が多くなり作風はまだ未完成か)
・個性 ★ (POPSバンドとしては評価されるがまだ発展途上)
総合評点: 7点
NEW MUSIK

<members>
Tony Mansfield:vocals・guitars・keyboards
Tony Hibbert:bass
Clive Gates:keyboards
Phil Towner:drums・percussion
1.「STRAIGHT LINES」 Tony Mansfield
2.「SANCTUARY」 Tony Mansfield
3.「A MAP OF YOU」 Tony Mansfield
4.「SCIENCE」 Tony Mansfield
5.「ON ISLANDS」 Tony Mansfield
6.「THIS WORLD OF WATER」 Tony Mansfield
7.「LIVING BY NUMBERS」 Tony Mansfield
8.「DEAD FISH (DON'T SWIM HOME)」 Tony Mansfield
9.「ADVENTURES」 Tony Mansfield
10.「THE SAFE SIDE」 Tony Mansfield
<support musician>
Nick Bailey:string synthesizer・piano
Jane Kennaway:backing vocals
produced by Tony Mansfield
engineered by Peter Hammond
● 英国流メロディセンスとほのかなシンセサウンドが見事に融合!80年代初頭を飾るリアルポップバンドの名盤
後にテクノポップの代表的なグループと評されるTony Mansfield率いるNew Musikは、1979年にシングル「Straight Line」でデビュー、2ndシングル「LIVING BY NUMBERS」と合わせてギターを中心にしたメロディアスで爽やかなアコースティックポップな作風で注目されていました。本作はそんな彼らのデビューアルバムですが、もちろん80年代の幕開けの時期ということもあってチープなシンセサウンドも導入されてはいるものの、やはり後年に比べるとまだ味付け程度の使い方であり、本質はきらびやかなメロディラインに裏打ちされた類稀なポップセンスであり、懐かしさと切なさが同居する正統派POPS作品としての評価も高いアルバムです。
そのようなメロディ志向の楽曲をさらに引き立てているのがパーカッション系音色です。スネア音も当時としては凝っていますが「Straight Line」等のようなノイズをリズミカルに刻む独特の手法や、シンセで作ったと思われるソナー音っぽいいわゆるトニマンサウンドは、当時の他のメロディ系POPSには余り見られなかったものです。また、前述のようにシンセは味付け程度と言えますが、そのアクセント的な使用法が逆に存在感を増しており、「A MAP OF YOU」のリングモジュレートを施したフレーズや「THIS WORLD OF WATER」のモーフィングされたヴォーカル処理などは、本作がその本質とは異なっているとはいえテクノポップの名盤と語られる大きな理由であることを感じさせられます。そしてやはり忘れてはならないのがTony Mansfieldのきれい過ぎる発音のヴォーカル。英語が苦手なリスナーでも聞き取れる耳の優しいキレのある発音であると思います。特に洋楽においてキャッチーなPOPSを楽しむ場合、聞き取りやすいというのはかなりのアドバンテージになると思うのですが、そういった意味においても本作はPOPS作品として誉れ高い名盤と言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「THIS WORLD OF WATER」
サビのメロディ&ヴォーカル処理にノックアウトされる名曲。イントロにしてもサビにしてもどこか切ないフレーズに、とにもかくにもサビのヴォーカル処理のアイデアには驚かされます。
・「LIVING BY NUMBERS」
爽やかなネオアコ系メロディラインが印象的なセカンドシングル。生演奏だけで成立しそうなポップソングですが、力強いノイジーパッドによるリズムのアクセントが(よい意味で)気になって仕方がありません。
・「ADVENTURES」
これも爽やか系&キャッチーなポップソング。小気味良いカッティングが楽曲を引っ張っていますが、リバース気味のピアノフレーズが非常に効果的です。また、この楽曲はBメロからの流れが素晴らしいです。
<評点>
・サウンド ★★ (ギターに絡むアクセント的なシンセの効果は十分)
・メロディ ★★★★ (デビュー時にしてポップマスターの名に恥じない)
・リズム ★★★★ (ノイズの使い方が絶妙でインパクトは抜群)
・曲構成 ★ (似たような楽曲が多くなり作風はまだ未完成か)
・個性 ★ (POPSバンドとしては評価されるがまだ発展途上)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「音楽殺人」 高橋ユキヒロ
「音楽殺人」(1980 キング)
高橋ユキヒロ:vocal・drums・vocoder・percussion

1.「SCHOOL OF THOUGHT」 詞:Chris Mosdell 曲:坂本龍一 編:高橋ユキヒロ
2.「MURDERED BY THE MUSIC」
詞:Chris Mosdell 曲:鮎川誠・高橋ユキヒロ 編:高橋ユキヒロ
3.「KID-NAP, THE DREAMER」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
4.「I-KASU!」 曲・編:高橋ユキヒロ
5.「RADIOACTIVIST」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
6.「NUMBERS FROM A CALCULATED CONVERSATION」
詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
7.「美人教師 AT THE SWIMMING SCHOOL」 曲・編:高橋ユキヒロ
8.「BLUE COLOUR WORKER」 詞:Chris Mosdell 曲:細野晴臣 編:高橋ユキヒロ
9.「STOP IN THE NAME OF LOVE」
詞・曲:Edward Holland・Brian Holland・Lamont Dozier 編:高橋ユキヒロ
10.「MIRRORMANIC」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
11.「THE CORE OF EDEN」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
<support musician>
鮎川誠:electric guitar
大村憲司:electric guitar
立花ハジメ:electric guitar
浅田孟:electric bass
細野晴臣:electric bass・acoustic guitar
坂本龍一:synthesizer・vocoder・electric piano・acoustic piano・synthesizer programming
Carmen C. Lopez:background vocals
Jose M. Lopez:background vocals
SANDII:background vocals
SHEENA:background vocals
久保田麻琴:background vocals
東郷昌和:background vocals
Chris Mosdell:quasimutanic voices
松武秀樹:computer operated
produced by 高橋ユキヒロ
mixing engineered by 伊東俊郎・笠井鉄平
recording engineered by 千葉精一
● クールな中にダークが見え隠れするロックに接近!幸宏作品史上最も洋楽っぽく仕上がった2ndアルバム
80年代の幕開けとなった1980年は、日本のみならず世界的にニューウェーブ&テクノポップの機運が高まり、当時最先端の電子楽器を利用したさまざまな実験的サウンドを核としながらも、あくまでロック&POPSの枠を外れない興味深い音楽が雨後の筍のように続々と現れた年でした。このはからずも同時多発的に生まれたシンドロームは、これまで欧米に後塵を拝してきた日本のPOPS界を一気に拮抗したレベルにまで押し上げたわけですが、その代表的なグループがかの有名なYMOであり、その中でもその正確無比なドラミングを誇る高橋幸宏は(決して言い過ぎではなく)世界に衝撃を与え、JAPANのSteve JansenやABCのDavid Palmerといった信奉者を生み出しました。そんなYMOとしての人気が絶頂に達しつつあった80年にリリースされた彼のソロ第2作目が本作です。デビュー作「SARAVAH!」ではゴージャスなヨーロピアン感覚あふれるセレブ的POPSを展開していた高橋ですが、YMOの活動を経た本作は明らかなロック志向(しかし汗臭くはなく限りなくオシャレ)で、しかもYMOとの違いをアピールするためににテクノポップ的な要素を取り入れながらも多彩なゲストを迎えた肉感的な印象を受ける作風となっています。
時代的な背景からテクノポップ作品と評される本作ですが、実はそれほどテクノを感じる部分は少なく、次作「Neuromantic」と比較すると、そのテクノ度・シンセ度という点では物足りないと言わざるを得ないかもしれません。シンセ音色やドラムのエフェクトをとってもまだまだテクノ前夜といった雰囲気ですが、それだけにいわゆる「幸宏サウンド」は確立しておらず、しかしそれがかえって洋楽と聴きまがうような欧米ポップ&ロックへの傾倒ぶりを感じさせます。こまた、の2ndアルバムまで「高橋ユキヒロ」というように名前をカタカナ表記で活動していますが、これは全く個人的な印象ですが、名前のカタカナ表記に彼の欧米志向というかオシャレな感覚がにじみ出ているような気がします。次作からはシンセまみれのニューウェーブに傾倒し名前も漢字表記となりますが、それなりに音楽的な分岐点となっているような気がします。次作以降も欧米に劣らないクオリティの非常に高い作品をリリースしていくことになるわけですが、本作のようにあからさまな欧米ロック&POPSに対するオマージュを隠しきれない作品は後にも先にもこのアルバムの右に出るものはないと思われます。とはいいつつも、独特のイコライジングヴォーカルにはニューウェーブ傾倒への萌芽が隠し切れていないのも事実です。
<Favorite Songs>
・「SCHOOL OF THOUGHT」
坂本龍一が提供したダンディズムを感じるオープニングナンバー。「Behind The Mask」を思わせるイントロですが、渋いAメロからクセになる開放感あふれるキャッチーなサビが醸し出す雰囲気が印象的です。
・「NUMBERS FROM A CALCULATED CONVERSATION」
サスペンスチックな曲調にイコライジングされた独特のヴォーカルが光るマイナーチューン。シンセオーケストレーションにチープなリズムボックス、そしてそのヴォーカルスタイルにYMOの影響を強く感じる彼にとってのニューウェーブ黎明期的な楽曲です。
・「BLUE COLOUR WORKER」
細野晴臣提供の60年代的リゾートポップチューン。本作中でも異彩を放つ爽やかさが魅力の楽曲ですが、1番と2番で高橋と女性コーラスの掛け合いが逆になる部分などはよく考えられた構成です。サビの駆け下りてくる感傷的なメロディラインは本作のハイライトと言ってよいと思います。
<評点>
・サウンド ★★★★ (ほどよくテクノ要素をまぶして生の感覚も忘れず)
・メロディ ★★★ (洋楽的メロディを多数使用するが違和感なし)
・リズム ★★★★ (音色は前時代的とはいえそのリズム感覚は秀逸)
・曲構成 ★★★★★ (異なるタイプの楽曲を配置するも統一感抜群)
・個性 ★★★ (幸宏サウンド確立前だが歌唱法はつかんだ感あり)
総合評点: 9点
高橋ユキヒロ:vocal・drums・vocoder・percussion

1.「SCHOOL OF THOUGHT」 詞:Chris Mosdell 曲:坂本龍一 編:高橋ユキヒロ
2.「MURDERED BY THE MUSIC」
詞:Chris Mosdell 曲:鮎川誠・高橋ユキヒロ 編:高橋ユキヒロ
3.「KID-NAP, THE DREAMER」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
4.「I-KASU!」 曲・編:高橋ユキヒロ
5.「RADIOACTIVIST」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
6.「NUMBERS FROM A CALCULATED CONVERSATION」
詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
7.「美人教師 AT THE SWIMMING SCHOOL」 曲・編:高橋ユキヒロ
8.「BLUE COLOUR WORKER」 詞:Chris Mosdell 曲:細野晴臣 編:高橋ユキヒロ
9.「STOP IN THE NAME OF LOVE」
詞・曲:Edward Holland・Brian Holland・Lamont Dozier 編:高橋ユキヒロ
10.「MIRRORMANIC」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
11.「THE CORE OF EDEN」 詞:Chris Mosdell 曲・編:高橋ユキヒロ
<support musician>
鮎川誠:electric guitar
大村憲司:electric guitar
立花ハジメ:electric guitar
浅田孟:electric bass
細野晴臣:electric bass・acoustic guitar
坂本龍一:synthesizer・vocoder・electric piano・acoustic piano・synthesizer programming
Carmen C. Lopez:background vocals
Jose M. Lopez:background vocals
SANDII:background vocals
SHEENA:background vocals
久保田麻琴:background vocals
東郷昌和:background vocals
Chris Mosdell:quasimutanic voices
松武秀樹:computer operated
produced by 高橋ユキヒロ
mixing engineered by 伊東俊郎・笠井鉄平
recording engineered by 千葉精一
● クールな中にダークが見え隠れするロックに接近!幸宏作品史上最も洋楽っぽく仕上がった2ndアルバム
80年代の幕開けとなった1980年は、日本のみならず世界的にニューウェーブ&テクノポップの機運が高まり、当時最先端の電子楽器を利用したさまざまな実験的サウンドを核としながらも、あくまでロック&POPSの枠を外れない興味深い音楽が雨後の筍のように続々と現れた年でした。このはからずも同時多発的に生まれたシンドロームは、これまで欧米に後塵を拝してきた日本のPOPS界を一気に拮抗したレベルにまで押し上げたわけですが、その代表的なグループがかの有名なYMOであり、その中でもその正確無比なドラミングを誇る高橋幸宏は(決して言い過ぎではなく)世界に衝撃を与え、JAPANのSteve JansenやABCのDavid Palmerといった信奉者を生み出しました。そんなYMOとしての人気が絶頂に達しつつあった80年にリリースされた彼のソロ第2作目が本作です。デビュー作「SARAVAH!」ではゴージャスなヨーロピアン感覚あふれるセレブ的POPSを展開していた高橋ですが、YMOの活動を経た本作は明らかなロック志向(しかし汗臭くはなく限りなくオシャレ)で、しかもYMOとの違いをアピールするためににテクノポップ的な要素を取り入れながらも多彩なゲストを迎えた肉感的な印象を受ける作風となっています。
時代的な背景からテクノポップ作品と評される本作ですが、実はそれほどテクノを感じる部分は少なく、次作「Neuromantic」と比較すると、そのテクノ度・シンセ度という点では物足りないと言わざるを得ないかもしれません。シンセ音色やドラムのエフェクトをとってもまだまだテクノ前夜といった雰囲気ですが、それだけにいわゆる「幸宏サウンド」は確立しておらず、しかしそれがかえって洋楽と聴きまがうような欧米ポップ&ロックへの傾倒ぶりを感じさせます。こまた、の2ndアルバムまで「高橋ユキヒロ」というように名前をカタカナ表記で活動していますが、これは全く個人的な印象ですが、名前のカタカナ表記に彼の欧米志向というかオシャレな感覚がにじみ出ているような気がします。次作からはシンセまみれのニューウェーブに傾倒し名前も漢字表記となりますが、それなりに音楽的な分岐点となっているような気がします。次作以降も欧米に劣らないクオリティの非常に高い作品をリリースしていくことになるわけですが、本作のようにあからさまな欧米ロック&POPSに対するオマージュを隠しきれない作品は後にも先にもこのアルバムの右に出るものはないと思われます。とはいいつつも、独特のイコライジングヴォーカルにはニューウェーブ傾倒への萌芽が隠し切れていないのも事実です。
<Favorite Songs>
・「SCHOOL OF THOUGHT」
坂本龍一が提供したダンディズムを感じるオープニングナンバー。「Behind The Mask」を思わせるイントロですが、渋いAメロからクセになる開放感あふれるキャッチーなサビが醸し出す雰囲気が印象的です。
・「NUMBERS FROM A CALCULATED CONVERSATION」
サスペンスチックな曲調にイコライジングされた独特のヴォーカルが光るマイナーチューン。シンセオーケストレーションにチープなリズムボックス、そしてそのヴォーカルスタイルにYMOの影響を強く感じる彼にとってのニューウェーブ黎明期的な楽曲です。
・「BLUE COLOUR WORKER」
細野晴臣提供の60年代的リゾートポップチューン。本作中でも異彩を放つ爽やかさが魅力の楽曲ですが、1番と2番で高橋と女性コーラスの掛け合いが逆になる部分などはよく考えられた構成です。サビの駆け下りてくる感傷的なメロディラインは本作のハイライトと言ってよいと思います。
<評点>
・サウンド ★★★★ (ほどよくテクノ要素をまぶして生の感覚も忘れず)
・メロディ ★★★ (洋楽的メロディを多数使用するが違和感なし)
・リズム ★★★★ (音色は前時代的とはいえそのリズム感覚は秀逸)
・曲構成 ★★★★★ (異なるタイプの楽曲を配置するも統一感抜群)
・個性 ★★★ (幸宏サウンド確立前だが歌唱法はつかんだ感あり)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「YEN」 福岡ユタカ
「YEN」 (1993 アルファ)
福岡ユタカ:voice・computer programming・background vocals

1.「HOT TOWN」 詞:吉田美奈子 曲・編:福岡ユタカ・MECKEN
2.「HALATION」
詞:福岡ユタカ 曲:福岡ユタカ・MECKEN・大村憲司・青山純 編:福岡ユタカ・MECKEN
3.「BLOOM」 詞:サエキけんぞう 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
4.「SHIPS」 詞:サエキけんぞう 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
5.「CARNIVAL」 詞:福岡ユタカ 曲・編:福岡ユタカ・MECKEN
6.「遠い瞳」 詞:杉林恭雄 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
7.「ENCHANTED FOREST」 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
8.「千の目」 詞:福岡ユタカ 曲・編:福岡ユタカ・MECKEN
9.「FAREWELL」 詞:杉林恭雄 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
<support musician>
大村憲司:guitar
窪田晴男:guitar
板倉文:acoustic guitar
MECKEN:bass・acoustic bass・synthesizer・brush・computer programming・loops
青山純:drums
BAnaNA-UG:keyboard・synth-bass・novas FX・brass stab
富樫春生:keyboard
Ma*To:synthesizer
小滝満:synthesizer
小玉和文:trumpet
瀬木貴将:zanpona
小川美潮:voice・chorus
produced by 福岡ユタカ・MECKEN
engineered by 寺田康彦・小池光夫・梶善則・Bruce Miller
● おなじみのクセ者演奏陣をバックに個性的なボーカルを重視したAOR的な最後のPOPS作品
80年代ニューウェーブの流れを汲むハイセンス&ハイテクニックなスーパーバンド、PINKのフロントマンにしてメインコンポーザーでもあった福岡ユタカは、PINK解散後も盟友であるドラマー矢壁アツノブとコンビを組み、HALOとしてキレの良過ぎるデジタルファンクで聴き手を魅了しました。しかしそのHALOも2枚のアルバムを残しほどなく活動を終了してしまいます。その後ソロに転じた福岡は1993年、自身のニックネームをタイトルに冠した本作をリリースしますが、はじけるようなエスニックファンクぶりはやや後退し、個性的な声質を生かした「聴かせる」ヴォーカルにに重点を置いた、どちらかと言えば落ち着いた作風に仕上がっています。いわゆる「AOR的」と揶揄されるほど小さくまとまってしまったとの評価もある作品ですが、その落ち着きがあるがゆえに深みを感じさせる通好みのアルバムという言い方もできるでしょう。
親交の深いKillin Time勢をバックに従えているためそのセンスの良い演奏力には絶対的な自信が感じられますが、本作では「HOT TOWN」「BLOOM」「遠い瞳」といった歌重視のミディアムテンポの癒しソングが目立ち、それがどこか魂を売ったかのような評価のされ方をしているものと思われます。しかしそこはクセのあるサポート陣が黙っているはずがありません。「HALATION」「CARNIVAL」ではPINK時代を感じさせる骨太のデジタルファンクを聴かせ、「SHIPS」「千の目」では複雑な演奏を生かしながらAOR要素を上手く昇華したポップチューンで新境地を開拓しています。特に青山純と共同プロデュースも務めたMECKENによるリズム隊の活躍が目立っており、緩急交えた彼らのボトムがあってこそ、ビブラトーンズ時代の盟友でもある窪田晴男のギターや、BANANAや小滝満、Ma*Toらのシンセフレーズが生きてくるのです。このように非常に演奏力が高いだけでなく個性も兼ね備えた彼らの演奏をバックに、福岡はこれまで以上に「歌」を歌い上げ本作を貫禄あるものに作り上げており、アーティストとしての価値を一段と高めた作品となったと個人的には思っています。結局この作品を持っていわゆる「POPS」に一区切りをつけインプロビゼーションヴォーカルの世界に身を投じていきますが、時折ニュース番組やアニメの劇判などで少しずつメディアに露出しつつ、自身の音楽道を邁進し続けています。
<Favorite Songs>
・「HOT TOWN」
PINK時代の「Private Story」を彷佛とさせる落ち着いたミディアムポップチューン。クセのあるバッキング陣らしからぬ無難でありながら味のある演奏(特に窪田晴男のギター)により癒しのリゾート感覚すら感じさせます。
・「CARNIVAL」
HALO時代に開拓したエスニックデジタルファンク路線を継承した本作において最もはじけたある意味ダンスチューンとも言える楽曲。暴れ回るドラムとスラップを交える安定感のあるベース、そしてなんといっても絶妙なリズム感のBANANAのbrass stabとラストの窪田ギターがイコライズされながらのパン回しは「熱い」です。
・「千の目」
ファンク要素をAORに取り込んだと言える福岡ならではの無国籍ポップチューン。相変わらず安定感のあるリズムに乗り、クセのある音と構成で楽曲を成立させるセンスはさすがです。特にBメロからサビ前に至る「タメ」部分のサウンドがポイントでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★ (落ち着きを増しても幻想的な作風は不変)
・メロディ ★★ (全曲聴きやすく作られているがマンネリも)
・リズム ★★★★★ (複雑なフレーズもなんのその力量に憂いなし)
・曲構成 ★★ (もう少し狂気を感じる楽曲の割合が欲しい)
・個性 ★★ (地味になろうとも彼の個性的な声質は唯一無二)
総合評点: 8点
福岡ユタカ:voice・computer programming・background vocals

1.「HOT TOWN」 詞:吉田美奈子 曲・編:福岡ユタカ・MECKEN
2.「HALATION」
詞:福岡ユタカ 曲:福岡ユタカ・MECKEN・大村憲司・青山純 編:福岡ユタカ・MECKEN
3.「BLOOM」 詞:サエキけんぞう 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
4.「SHIPS」 詞:サエキけんぞう 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
5.「CARNIVAL」 詞:福岡ユタカ 曲・編:福岡ユタカ・MECKEN
6.「遠い瞳」 詞:杉林恭雄 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
7.「ENCHANTED FOREST」 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
8.「千の目」 詞:福岡ユタカ 曲・編:福岡ユタカ・MECKEN
9.「FAREWELL」 詞:杉林恭雄 曲:福岡ユタカ 編:福岡ユタカ・MECKEN
<support musician>
大村憲司:guitar
窪田晴男:guitar
板倉文:acoustic guitar
MECKEN:bass・acoustic bass・synthesizer・brush・computer programming・loops
青山純:drums
BAnaNA-UG:keyboard・synth-bass・novas FX・brass stab
富樫春生:keyboard
Ma*To:synthesizer
小滝満:synthesizer
小玉和文:trumpet
瀬木貴将:zanpona
小川美潮:voice・chorus
produced by 福岡ユタカ・MECKEN
engineered by 寺田康彦・小池光夫・梶善則・Bruce Miller
● おなじみのクセ者演奏陣をバックに個性的なボーカルを重視したAOR的な最後のPOPS作品
80年代ニューウェーブの流れを汲むハイセンス&ハイテクニックなスーパーバンド、PINKのフロントマンにしてメインコンポーザーでもあった福岡ユタカは、PINK解散後も盟友であるドラマー矢壁アツノブとコンビを組み、HALOとしてキレの良過ぎるデジタルファンクで聴き手を魅了しました。しかしそのHALOも2枚のアルバムを残しほどなく活動を終了してしまいます。その後ソロに転じた福岡は1993年、自身のニックネームをタイトルに冠した本作をリリースしますが、はじけるようなエスニックファンクぶりはやや後退し、個性的な声質を生かした「聴かせる」ヴォーカルにに重点を置いた、どちらかと言えば落ち着いた作風に仕上がっています。いわゆる「AOR的」と揶揄されるほど小さくまとまってしまったとの評価もある作品ですが、その落ち着きがあるがゆえに深みを感じさせる通好みのアルバムという言い方もできるでしょう。
親交の深いKillin Time勢をバックに従えているためそのセンスの良い演奏力には絶対的な自信が感じられますが、本作では「HOT TOWN」「BLOOM」「遠い瞳」といった歌重視のミディアムテンポの癒しソングが目立ち、それがどこか魂を売ったかのような評価のされ方をしているものと思われます。しかしそこはクセのあるサポート陣が黙っているはずがありません。「HALATION」「CARNIVAL」ではPINK時代を感じさせる骨太のデジタルファンクを聴かせ、「SHIPS」「千の目」では複雑な演奏を生かしながらAOR要素を上手く昇華したポップチューンで新境地を開拓しています。特に青山純と共同プロデュースも務めたMECKENによるリズム隊の活躍が目立っており、緩急交えた彼らのボトムがあってこそ、ビブラトーンズ時代の盟友でもある窪田晴男のギターや、BANANAや小滝満、Ma*Toらのシンセフレーズが生きてくるのです。このように非常に演奏力が高いだけでなく個性も兼ね備えた彼らの演奏をバックに、福岡はこれまで以上に「歌」を歌い上げ本作を貫禄あるものに作り上げており、アーティストとしての価値を一段と高めた作品となったと個人的には思っています。結局この作品を持っていわゆる「POPS」に一区切りをつけインプロビゼーションヴォーカルの世界に身を投じていきますが、時折ニュース番組やアニメの劇判などで少しずつメディアに露出しつつ、自身の音楽道を邁進し続けています。
<Favorite Songs>
・「HOT TOWN」
PINK時代の「Private Story」を彷佛とさせる落ち着いたミディアムポップチューン。クセのあるバッキング陣らしからぬ無難でありながら味のある演奏(特に窪田晴男のギター)により癒しのリゾート感覚すら感じさせます。
・「CARNIVAL」
HALO時代に開拓したエスニックデジタルファンク路線を継承した本作において最もはじけたある意味ダンスチューンとも言える楽曲。暴れ回るドラムとスラップを交える安定感のあるベース、そしてなんといっても絶妙なリズム感のBANANAのbrass stabとラストの窪田ギターがイコライズされながらのパン回しは「熱い」です。
・「千の目」
ファンク要素をAORに取り込んだと言える福岡ならではの無国籍ポップチューン。相変わらず安定感のあるリズムに乗り、クセのある音と構成で楽曲を成立させるセンスはさすがです。特にBメロからサビ前に至る「タメ」部分のサウンドがポイントでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★ (落ち着きを増しても幻想的な作風は不変)
・メロディ ★★ (全曲聴きやすく作られているがマンネリも)
・リズム ★★★★★ (複雑なフレーズもなんのその力量に憂いなし)
・曲構成 ★★ (もう少し狂気を感じる楽曲の割合が欲しい)
・個性 ★★ (地味になろうとも彼の個性的な声質は唯一無二)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「TIN DRUM」 JAPAN
「TIN DRUM」(1981 Virgin)
JAPAN

<members>
David Sylvian:vocals・guitar・keyboards・keyboard programming・tapes
Mick Karn:fretless bass・african flute・dida
Steve Jansen:drums・percussion・electronic & keyboard percussion
Richard Barbieri:keyboards・keyboard programming・tapes
1.「THE ART OF PARTIES」 David Sylvian
2.「TALKING DRUM」 David Sylvian
3.「GHOSTS」 David Sylvian
4.「CANTON」 David Sylvian/Steve Jansen
5.「STILL LIFE IN MOBILE HOMES」 David Sylvian
6.「VISIONS OF CHINA」 David Sylvian/Steve Jansen
7.「SONS OF PIONEERS」 David Sylvian/Mick Karn
8.「CANTONESE BOY」 David Sylvian
<support musician>
藤井ユカ:vocals
Simon House:violin
produced by Steve Nye・JAPAN
engineered by Steve Nye
● 東洋的メロディと他の追随を許さない不可思議サウンドが話題を呼んだ集大成的名盤
グラムロックに影響を受けたヴィジュアル系アイドルバンドとしてデビューしたJAPANが、Giorgio Moroderプロデュースによるミュンヘンディスコ「Life in Tokyo」でエレクトロポップ路線にシフトしてからは一気に個性的なシンセを中心としたニューウェーブサウンドに拍車がかかり、「Quiet Life」「Gentlemen Take Polaroids」とエレクトロ色の強いアルバムを続けてリリースします。しかし、余りにエレクトリックに傾倒し過ぎたためかギタリストのRob Deanは脱退を余儀なくされ、4人編成となったJAPANはそのバンド名に導かれるようなオリエンタルな作風の名作である本作をリリース、デビュー当初の人気先行イメージを完全に払拭するに値する最高レベルのクオリティに達する驚くべき完成度を誇るアルバムとして、誰もが認める名盤に挙げられています。
Prophet5で作られた摩訶不思議なシンセサウンド、複雑でありながら緻密で正確なドラミング、当時流行のニューロマな匂いを存分にまき散らす自意識過剰な妖艶ヴォーカル、どれをとっても非常に個性的ですが、何といってもMick Karnの予測不能なフリーダム過ぎるフレットレスベースが余りに際立ち過ぎて、衝撃を受けること請け合いです。音階無視の自由自在のフレーズに見せかけて実は辻褄が合っている感性と計算が両立している見事なプレイは、本作を歴史的傑作の1枚にまで上り詰めさせることに成功しています。80年痔亜初頭のニューウェーブ・ニューロマンティクスブームでは、その妖艶で斬新なヴィジュアルを音で表現するかのようなフレットレスベースフレーズがもてはやされていましたが、Mick Karnのベースはそのフレーズの自由さや出音のコクが他の追随を許しません。前作からMickの変態的ベースは注目されつつありましたが、本作でそれは疑問から確信に至った感があります。Mick式個性派ベースの完成に引っ張られるようにSteveのドラミングはますます手数が多く、RichardのProphetもますます複雑に音色変化していくなどメンバー同士の相乗効果でサウンドはPOPSとしてはカオス度を増し、それが本作を唯一無二の名盤に仕立て上げているに違いありません。
<Favorite Songs>
・「TALKING DRUM」
ねちっこくスライドする超個性的ベースフレーズが目立ち過ぎる本作の雰囲気を如実に表現しているオリエンタル楽曲。リズム隊の大活躍もさることながら随所に挿入されるテープによるサンプリング前夜的オリエンタルフレーズが絶妙です。
・「GHOSTS」
BarbieriのProphet音色のセンスが際立つJAPAN最大のシングルヒット曲。タイトルを見事に表現した効果音的音使いは秀逸です。特に長い減衰音に細かい音が散らばっていくかのような音色変化のシンセマニピュレートのセンスが抜きん出ています。
・「STILL LIFE IN MOBILE HOMES」
パーカッシヴなベースに倍音豊かなシンセ、本作にしては爽やか系なサビに癒される本作きってのポップチューン。圧巻は間奏のミニマルシーケンスに正確無比なドラミングに和中折衷な笛&歌舞伎ヴォイスを加えたカオティックな構成です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(突き抜け過ぎる音の粒をまとめ上げるセンス)
・メロディ ★★★ (このカオスなサウンドにしてPOPSにまとめる)
・リズム ★★★★★(リズム隊の絶妙な掛け合いは今も昔も唯一神)
・曲構成 ★★★★ (後半少し大人しくなる部分をどう評価するか)
・個性 ★★★★★(後にフォロワーは存在しても近づけない孤高作)
総合評点: 10点
JAPAN

<members>
David Sylvian:vocals・guitar・keyboards・keyboard programming・tapes
Mick Karn:fretless bass・african flute・dida
Steve Jansen:drums・percussion・electronic & keyboard percussion
Richard Barbieri:keyboards・keyboard programming・tapes
1.「THE ART OF PARTIES」 David Sylvian
2.「TALKING DRUM」 David Sylvian
3.「GHOSTS」 David Sylvian
4.「CANTON」 David Sylvian/Steve Jansen
5.「STILL LIFE IN MOBILE HOMES」 David Sylvian
6.「VISIONS OF CHINA」 David Sylvian/Steve Jansen
7.「SONS OF PIONEERS」 David Sylvian/Mick Karn
8.「CANTONESE BOY」 David Sylvian
<support musician>
藤井ユカ:vocals
Simon House:violin
produced by Steve Nye・JAPAN
engineered by Steve Nye
● 東洋的メロディと他の追随を許さない不可思議サウンドが話題を呼んだ集大成的名盤
グラムロックに影響を受けたヴィジュアル系アイドルバンドとしてデビューしたJAPANが、Giorgio Moroderプロデュースによるミュンヘンディスコ「Life in Tokyo」でエレクトロポップ路線にシフトしてからは一気に個性的なシンセを中心としたニューウェーブサウンドに拍車がかかり、「Quiet Life」「Gentlemen Take Polaroids」とエレクトロ色の強いアルバムを続けてリリースします。しかし、余りにエレクトリックに傾倒し過ぎたためかギタリストのRob Deanは脱退を余儀なくされ、4人編成となったJAPANはそのバンド名に導かれるようなオリエンタルな作風の名作である本作をリリース、デビュー当初の人気先行イメージを完全に払拭するに値する最高レベルのクオリティに達する驚くべき完成度を誇るアルバムとして、誰もが認める名盤に挙げられています。
Prophet5で作られた摩訶不思議なシンセサウンド、複雑でありながら緻密で正確なドラミング、当時流行のニューロマな匂いを存分にまき散らす自意識過剰な妖艶ヴォーカル、どれをとっても非常に個性的ですが、何といってもMick Karnの予測不能なフリーダム過ぎるフレットレスベースが余りに際立ち過ぎて、衝撃を受けること請け合いです。音階無視の自由自在のフレーズに見せかけて実は辻褄が合っている感性と計算が両立している見事なプレイは、本作を歴史的傑作の1枚にまで上り詰めさせることに成功しています。80年痔亜初頭のニューウェーブ・ニューロマンティクスブームでは、その妖艶で斬新なヴィジュアルを音で表現するかのようなフレットレスベースフレーズがもてはやされていましたが、Mick Karnのベースはそのフレーズの自由さや出音のコクが他の追随を許しません。前作からMickの変態的ベースは注目されつつありましたが、本作でそれは疑問から確信に至った感があります。Mick式個性派ベースの完成に引っ張られるようにSteveのドラミングはますます手数が多く、RichardのProphetもますます複雑に音色変化していくなどメンバー同士の相乗効果でサウンドはPOPSとしてはカオス度を増し、それが本作を唯一無二の名盤に仕立て上げているに違いありません。
<Favorite Songs>
・「TALKING DRUM」
ねちっこくスライドする超個性的ベースフレーズが目立ち過ぎる本作の雰囲気を如実に表現しているオリエンタル楽曲。リズム隊の大活躍もさることながら随所に挿入されるテープによるサンプリング前夜的オリエンタルフレーズが絶妙です。
・「GHOSTS」
BarbieriのProphet音色のセンスが際立つJAPAN最大のシングルヒット曲。タイトルを見事に表現した効果音的音使いは秀逸です。特に長い減衰音に細かい音が散らばっていくかのような音色変化のシンセマニピュレートのセンスが抜きん出ています。
・「STILL LIFE IN MOBILE HOMES」
パーカッシヴなベースに倍音豊かなシンセ、本作にしては爽やか系なサビに癒される本作きってのポップチューン。圧巻は間奏のミニマルシーケンスに正確無比なドラミングに和中折衷な笛&歌舞伎ヴォイスを加えたカオティックな構成です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(突き抜け過ぎる音の粒をまとめ上げるセンス)
・メロディ ★★★ (このカオスなサウンドにしてPOPSにまとめる)
・リズム ★★★★★(リズム隊の絶妙な掛け合いは今も昔も唯一神)
・曲構成 ★★★★ (後半少し大人しくなる部分をどう評価するか)
・個性 ★★★★★(後にフォロワーは存在しても近づけない孤高作)
総合評点: 10点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「FRIEND or FOE?」 F.O.E
「FRIEND or FOE?」 (1985 テイチク)
F.O.E

<members>
細野晴臣:vocal・rap・all instruments
野中英紀:vocal・synthesizer・chorus
1.「WORLD FAMOUS TECHNO POP」 詞:細野晴臣・Giles Duke 曲・編:細野晴臣
2.「RETURN OF BODY SNATCHERS (Exterminated mix)」
詞:細野晴臣・Peter Barakan 曲・編:細野晴臣
3.「STRANGE LOVE (Fonk version)」
詞:細野晴臣・Peter Barakan 曲・編:細野晴臣
4.「OTT MANIFEST (OTT mix)」 詞:細野晴臣・野中英紀 曲・編:細野晴臣
<support musician>
越美晴:vocal
Peter Barakan:rap
produced by 細野晴臣
engineered by 細野晴臣・寺田康彦
● ラップを採用するなど新ユニット結成によりテクノの可能性を臨界点まで突き詰めた実験作
YMO散開後も「テクノの忘れ物」を探すかのようにエレクトロマシナリー化した傑作ソロ「S-F-X」や若手を巻き込んだSFストーリーオムニバス、アポジー&ペリジー「超時空コロダスタン旅行記」、また12インチ「スーパーゼビウス」のリリースなどによりゲーム音楽の礎を築くなど、実はテクノへの造詣が深まるばかりであった細野晴臣は、「S-F-X」において自身のレコーディング機材群を称して名付けた「Friends Of Earth」をユニットとして実体化することを試み、YENレーベルの盟友(弟子?)であったインテリアの野中英紀を相棒に迎え、「S-F-X」路線をさらに過激に推し進めたミニアルバムを1985年にリリースします。既にYMOが確立したレコーディング方法論が広く認知される中、オリジンとして本領発揮すべく、PCMリズムマシンによるマシナリービートが強調された実験作となっています。
オリジナル2曲+既存のremixが2曲という構成ながら、「S-F-X」でも見られた重厚な機械ビートはますます存在感を増し、過剰なまでに押しまくる脅迫的なリズムはまさに「Over The Top」(限界突破)を目指すかのようです。その開き直ったようなテクノぶりを見るにつけ、細野自身が他のメンバー以上にYMOを引きずっていたかのように思えてなりませんが、彼は志半ばであった(と思いたい)テクノポップへのおとしまえを果たそうとしたのではないでしょうか。それほどこの時期におけるF.O.Eとしての活動を通した彼の過激なエレクトロミュージックへの傾倒は鬼気迫るものがあったのです。しかしラップやボイスサンプリングの積極的利用によって、来るべきヒップホップの本格的流行を思わせるサウンドを構築するなど、後世にも何かしらの足跡をしっかり残していくのも細野らしいといえばそうかもしれません。結局頂点を極めれば後は下っていくばかりということもあって、ドーピングは長くは続かず2枚のアルバムを残してF.O.Eは活動停止ということになりましたが、細野が最もトンがっていた時代の産物として再評価に値する作品と言えると思います。
<Favorite Songs>
・「WORLD FAMOUS TECHNO POP」
テクノポップアンセムとして非常に完成度の高いオリジナリティあふれる名曲。低速ながら重量感のあるリズムにKraftwerkを意識した無機質なシーケンス、細野らしい「和」のテイストを感じさせるフレーズ、ラップやスクラッチを挿入するHIPHOPへの先見性など、テクノ要素満載のストイックな楽曲です。
・「OTT MANIFEST (OTT mix)」
切迫感を強調したビートが硬派なF.O.Eというユニットのテーマを最も端的に表現したリードチューン。ゲートリバーブを効かせまくったバスドラが執拗に連打する超機械的リズムは、もはやテクノジャンキーと言っても過言ではないでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (音色の選び方はテクノポップの師匠そのもの)
・メロディ ★ (この作品はメロディよりも音を聞くタイプ)
・リズム ★★★★★(圧倒的な過激デジタルビート連打にKO寸前)
・曲構成 ★ (次作と一緒にしてオリジナル曲はもっと欲しい)
・個性 ★★ (目が血走るほどの過激さの追求は吉と出たか?)
総合評点: 7点
F.O.E

<members>
細野晴臣:vocal・rap・all instruments
野中英紀:vocal・synthesizer・chorus
1.「WORLD FAMOUS TECHNO POP」 詞:細野晴臣・Giles Duke 曲・編:細野晴臣
2.「RETURN OF BODY SNATCHERS (Exterminated mix)」
詞:細野晴臣・Peter Barakan 曲・編:細野晴臣
3.「STRANGE LOVE (Fonk version)」
詞:細野晴臣・Peter Barakan 曲・編:細野晴臣
4.「OTT MANIFEST (OTT mix)」 詞:細野晴臣・野中英紀 曲・編:細野晴臣
<support musician>
越美晴:vocal
Peter Barakan:rap
produced by 細野晴臣
engineered by 細野晴臣・寺田康彦
● ラップを採用するなど新ユニット結成によりテクノの可能性を臨界点まで突き詰めた実験作
YMO散開後も「テクノの忘れ物」を探すかのようにエレクトロマシナリー化した傑作ソロ「S-F-X」や若手を巻き込んだSFストーリーオムニバス、アポジー&ペリジー「超時空コロダスタン旅行記」、また12インチ「スーパーゼビウス」のリリースなどによりゲーム音楽の礎を築くなど、実はテクノへの造詣が深まるばかりであった細野晴臣は、「S-F-X」において自身のレコーディング機材群を称して名付けた「Friends Of Earth」をユニットとして実体化することを試み、YENレーベルの盟友(弟子?)であったインテリアの野中英紀を相棒に迎え、「S-F-X」路線をさらに過激に推し進めたミニアルバムを1985年にリリースします。既にYMOが確立したレコーディング方法論が広く認知される中、オリジンとして本領発揮すべく、PCMリズムマシンによるマシナリービートが強調された実験作となっています。
オリジナル2曲+既存のremixが2曲という構成ながら、「S-F-X」でも見られた重厚な機械ビートはますます存在感を増し、過剰なまでに押しまくる脅迫的なリズムはまさに「Over The Top」(限界突破)を目指すかのようです。その開き直ったようなテクノぶりを見るにつけ、細野自身が他のメンバー以上にYMOを引きずっていたかのように思えてなりませんが、彼は志半ばであった(と思いたい)テクノポップへのおとしまえを果たそうとしたのではないでしょうか。それほどこの時期におけるF.O.Eとしての活動を通した彼の過激なエレクトロミュージックへの傾倒は鬼気迫るものがあったのです。しかしラップやボイスサンプリングの積極的利用によって、来るべきヒップホップの本格的流行を思わせるサウンドを構築するなど、後世にも何かしらの足跡をしっかり残していくのも細野らしいといえばそうかもしれません。結局頂点を極めれば後は下っていくばかりということもあって、ドーピングは長くは続かず2枚のアルバムを残してF.O.Eは活動停止ということになりましたが、細野が最もトンがっていた時代の産物として再評価に値する作品と言えると思います。
<Favorite Songs>
・「WORLD FAMOUS TECHNO POP」
テクノポップアンセムとして非常に完成度の高いオリジナリティあふれる名曲。低速ながら重量感のあるリズムにKraftwerkを意識した無機質なシーケンス、細野らしい「和」のテイストを感じさせるフレーズ、ラップやスクラッチを挿入するHIPHOPへの先見性など、テクノ要素満載のストイックな楽曲です。
・「OTT MANIFEST (OTT mix)」
切迫感を強調したビートが硬派なF.O.Eというユニットのテーマを最も端的に表現したリードチューン。ゲートリバーブを効かせまくったバスドラが執拗に連打する超機械的リズムは、もはやテクノジャンキーと言っても過言ではないでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (音色の選び方はテクノポップの師匠そのもの)
・メロディ ★ (この作品はメロディよりも音を聞くタイプ)
・リズム ★★★★★(圧倒的な過激デジタルビート連打にKO寸前)
・曲構成 ★ (次作と一緒にしてオリジナル曲はもっと欲しい)
・個性 ★★ (目が血走るほどの過激さの追求は吉と出たか?)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「HYS」 YAPOOS
「HYS」 (1995 東芝EMI)
YAPOOS

<members>
戸川純:vocal
中原信雄:bass
ライオンメリィ:keyboards
河野裕一:guitars
新井田耕造:drums
1.「ヒス」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
2.「本能の少女」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
3.「ラブ・バズーカ」 詞:戸川純 曲:河野裕一 編:YAPOOS
4.「シャルロット・セクサロイドの憂鬱」
詞:戸川純 曲:ライオンメリィ 編:YAPOOS
5.「思春期病」 詞:戸川純 曲:ライオンメリィ 編:YAPOOS
6.「少年A」 詞:戸川純 曲:河野裕一 編:YAPOOS
7.「いじめ」 詞・曲:戸川純 編:YAPOOS
8.「それいけ!ロリータ危機一髪 -或るスパイを襲った一種の強迫観念について-」
詞:戸川純 曲:河野裕一 編:YAPOOS
9.「あたしもうぢき駄目になる」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
10.「赤い花の満開の下」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
<support musician>
木本靖夫:synthesizer programming
百々政幸:synthesizer programming
山口慎一:synthesizer programming
produced by YAPOOS
engineered by 滝田二郎
● 新しいプログラマーによるマシナリーなサウンド!リズムにも重厚感が増した5th
オリジナルメンバーが戸川と中原のみとなり新メンバーで心機一転リリースされた「Dadada ism」から3年、サポートとして参加していた元RCサクセションの新井田耕造をドラマーに迎え、YAPOOSはさらにボトム感を増したニューウェーブサウンドを志向した5枚目のオリジナルアルバムである本作をリリースします。どちらかといえばエッジの効いたロック寄りのサウンドが目立った前作と比較すると、彼らのルーツと言ってもよい原点に立ち返ったかのような典型的ニューウェーブバンドサウンドは90年代半ばの時期にあっては逆に新鮮であり、80年代を駆け抜けた個性派バンドの集大成的な位置づけの作品となっています。
本作がニューウェーブ色が強いことの要因の1つに、これまで以上にシンセプログラミングがクローズアップされていることが挙げられます。いかにも電子音的な剥き出しのシンセ音色や硬質なメタリックリズムなどサイバーテクノ風味漂うサウンドを裏で支えているのは、後に正式にYAPOOSに加入することになる山口慎一とP-MODEL関連の仕事などで辣腕を振るうMOMOこと百々政幸のプログラマー陣で、本作に限っては彼らの貢献度が非常に高いです。特に金属管とパワーが増したリズムとシンセとサンプルの多彩な音色をコラージュした緻密なシーケンスフレーズによる音世界は、その硬派な雰囲気も含めて彼らプログラマー勢の個性と言ってよいと思います。このサイバーな音衣装を身にまとったYAPOOSは、山口慎一加入後さらにSF的世界観を強くしたまま90年代末から2000年代前半まで、戸田誠司やDennis Gunn、山口やMOMOとエレクトロユニットSOYUZ PROJECTを結成していた元P-MODELの福間創を迎えるなど、テクノ・ニューウェーブのオールスター編成として活動していくことになります。
<Favorite Songs>
・「ヒス」
やり場のない怒りを起伏のない煮え切らないメロディで、そして変幻自在の声質で表現する投げやり脱力系ニューウェーブ。肩の力が抜けるサビから急展開して平沢進っぽいキテレツフレーズのギターソロへなだれ込む部分にテンションが上がります。
・「本能の少女」
どギツイノコギリ波音色とよく響く個性的なスネア音が心地良いシングルカットナンバー。オリエンタルなサビのフレーズがキャッチーですが、この楽曲でもギターの活躍が目立ちます。徐々に盛り上げていくギターソロも味があります。
・「シャルロット・セクサロイドの憂鬱」
代表曲「バーバラセクサロイド」の続編とも言うべきサイバーテクノチューン。本作中でも最もテクノ色の強い楽曲で、強烈なSF感覚が全体を覆っています。サウンドコラージュと言ってもよい細かい音の羅列によるシーケンスなど山口慎一のプログラマー職人としての仕事ぶりが目立ちます。
<評点>
・サウンド ★★★ (これまで以上にシンセが前面に押し出ている)
・メロディ ★★ (ポップであることもニューウェーブの証明)
・リズム ★★★ (金属感覚あふれるリズム音色の力強さが印象的)
・曲構成 ★ (後半少し大人しくなる部分をどう評価するか)
・個性 ★★ (集大成的作品だが変に落ち着いた感がある)
総合評点: 7点
YAPOOS

<members>
戸川純:vocal
中原信雄:bass
ライオンメリィ:keyboards
河野裕一:guitars
新井田耕造:drums
1.「ヒス」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
2.「本能の少女」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
3.「ラブ・バズーカ」 詞:戸川純 曲:河野裕一 編:YAPOOS
4.「シャルロット・セクサロイドの憂鬱」
詞:戸川純 曲:ライオンメリィ 編:YAPOOS
5.「思春期病」 詞:戸川純 曲:ライオンメリィ 編:YAPOOS
6.「少年A」 詞:戸川純 曲:河野裕一 編:YAPOOS
7.「いじめ」 詞・曲:戸川純 編:YAPOOS
8.「それいけ!ロリータ危機一髪 -或るスパイを襲った一種の強迫観念について-」
詞:戸川純 曲:河野裕一 編:YAPOOS
9.「あたしもうぢき駄目になる」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
10.「赤い花の満開の下」 詞:戸川純 曲:中原信雄 編:YAPOOS
<support musician>
木本靖夫:synthesizer programming
百々政幸:synthesizer programming
山口慎一:synthesizer programming
produced by YAPOOS
engineered by 滝田二郎
● 新しいプログラマーによるマシナリーなサウンド!リズムにも重厚感が増した5th
オリジナルメンバーが戸川と中原のみとなり新メンバーで心機一転リリースされた「Dadada ism」から3年、サポートとして参加していた元RCサクセションの新井田耕造をドラマーに迎え、YAPOOSはさらにボトム感を増したニューウェーブサウンドを志向した5枚目のオリジナルアルバムである本作をリリースします。どちらかといえばエッジの効いたロック寄りのサウンドが目立った前作と比較すると、彼らのルーツと言ってもよい原点に立ち返ったかのような典型的ニューウェーブバンドサウンドは90年代半ばの時期にあっては逆に新鮮であり、80年代を駆け抜けた個性派バンドの集大成的な位置づけの作品となっています。
本作がニューウェーブ色が強いことの要因の1つに、これまで以上にシンセプログラミングがクローズアップされていることが挙げられます。いかにも電子音的な剥き出しのシンセ音色や硬質なメタリックリズムなどサイバーテクノ風味漂うサウンドを裏で支えているのは、後に正式にYAPOOSに加入することになる山口慎一とP-MODEL関連の仕事などで辣腕を振るうMOMOこと百々政幸のプログラマー陣で、本作に限っては彼らの貢献度が非常に高いです。特に金属管とパワーが増したリズムとシンセとサンプルの多彩な音色をコラージュした緻密なシーケンスフレーズによる音世界は、その硬派な雰囲気も含めて彼らプログラマー勢の個性と言ってよいと思います。このサイバーな音衣装を身にまとったYAPOOSは、山口慎一加入後さらにSF的世界観を強くしたまま90年代末から2000年代前半まで、戸田誠司やDennis Gunn、山口やMOMOとエレクトロユニットSOYUZ PROJECTを結成していた元P-MODELの福間創を迎えるなど、テクノ・ニューウェーブのオールスター編成として活動していくことになります。
<Favorite Songs>
・「ヒス」
やり場のない怒りを起伏のない煮え切らないメロディで、そして変幻自在の声質で表現する投げやり脱力系ニューウェーブ。肩の力が抜けるサビから急展開して平沢進っぽいキテレツフレーズのギターソロへなだれ込む部分にテンションが上がります。
・「本能の少女」
どギツイノコギリ波音色とよく響く個性的なスネア音が心地良いシングルカットナンバー。オリエンタルなサビのフレーズがキャッチーですが、この楽曲でもギターの活躍が目立ちます。徐々に盛り上げていくギターソロも味があります。
・「シャルロット・セクサロイドの憂鬱」
代表曲「バーバラセクサロイド」の続編とも言うべきサイバーテクノチューン。本作中でも最もテクノ色の強い楽曲で、強烈なSF感覚が全体を覆っています。サウンドコラージュと言ってもよい細かい音の羅列によるシーケンスなど山口慎一のプログラマー職人としての仕事ぶりが目立ちます。
<評点>
・サウンド ★★★ (これまで以上にシンセが前面に押し出ている)
・メロディ ★★ (ポップであることもニューウェーブの証明)
・リズム ★★★ (金属感覚あふれるリズム音色の力強さが印象的)
・曲構成 ★ (後半少し大人しくなる部分をどう評価するか)
・個性 ★★ (集大成的作品だが変に落ち着いた感がある)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「MY NAME IS」 SPANK HAPPY
「MY NAME IS」 (1994 東芝EMI)
SPANK HAPPY

<members>
ハラミドリ:vocal・chorus
菊地成孔:sax・chorus
河野伸:keyboards・synthesizer programming・chorus
1.「天上の方の人々」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
2.「ウィークエンド」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
3.「走り泣く乙女(バンドタイプ)」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
4.「くよくよする日」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
5.「オー!神様」 詞・曲:SPANK HAPPY 編:SPANK HAPPY・外山明
6.「ノールームメイト」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
7.「お早う」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
<support musician>
今堀恒雄:electric guitar・acoustic guitar
MECKEN:bass
外山明:drums・percussions
ASA-CHANG:percussions
荒木敏男:trumpet
村田陽一:trombone
佐藤潔:tuba
飛鳥Strings:strings
produced by SPANK HAPPY
engineered by 野島英明
● 個性的な3人の才能がPOPSを土台にぶつかり合う!裏ドリカムと呼ばれたトリオバンドデビュー作
財津和夫とのデュエット「償いの日々」でデビューしたシンガーソングライター原みどり改めハラミドリと、岸野雄一が主宰する芸術集団「京浜兄弟社」に出入りし、スタジオミュージシャンとしても活躍、前衛インプロビゼーションバンドTIPOGRAPHICAのメンバーでもあった菊地成孔、そして多数のアーティストの作編曲を手掛けたキーボーディスト河野伸により、あくまで売れ線を狙うことを目的としたポップグループであるSPANK HAPPYは結成されました。1994年シングル「走り泣く乙女」でデビューした彼らは、そのままの勢いですぐさま1stミニアルバムである本作を発表、女性1人男性2人のDreams Come True編成というおいしいメンバー構成でありながら、ひとクセもふたクセもある歌詞と演奏力で、一定の評価は得たもののマニア受けするがゆえに一般認知度は思ったほど浸透しなかったようでした。
交通標識のパロディによるインパクトが強いジャケを見ても理解できるようにとても一筋縄ではいかない個性を持っているこのグループは、売れ線を狙ったというのが嘘のようなアーティスティックなサウンドを聴かせてくれます。全体的なアレンジを主導しているのは安定感のある河野伸ですが、彼らの個性はやはり菊地成孔のアヴァンギャルドなブラスフレーズに独特な視点による歌詞世界、そして圧倒的なハラミドリのヴォーカルパフォーマンスによる部分が大きいと思われます。また忘れてはならないのはバックを支える今堀恒雄や外山明といったTIPOGRAPHICA勢の抜群の演奏力で、菊地の人脈による曲者&凄腕ミュージシャン達の参加が、トリオのみでは表現しきれない彼らの楽曲にある種のパワーをもたらしていると言ってよいでしょう。そんなアヴァンギャルドポップな側面が注目される中、実は本作の中で光っているのは「くよくよする日」や「ノールームメイト」といいたミディアムバラードの優しくも美しいメロディで、柔らかなシンセで包み込むようなアレンジ力もあって非常に完成度が高く、本気になればこれほどの楽曲も作れるという才能の一端を見せてくれる職人芸的名仕事と言えます。次のシングル「僕は楽器」で持てる力量を爆発させた後、2ndアルバム「FREAK SMILE」という集大成的大作を残しますが、本作は彼らの名刺的な1枚としてコンパクトに楽しめる好作品であり、安心して聴ける1枚でもあるのです。
<Favorite Songs>
・「ウィークエンド」
オルガン系音色にパーカッシブなリズムで構成されるポップチューン。河野伸主導の洗練されたアレンジにキムチを入れたような暴れ回るサックスフレーズにこのバンド特有の毒を感じます。
・「ノールームメイト」
90年代を代表する抜群の完成度を誇る名バラード。フィールドレコーディングっぽい演出といい、サビでさりげなく入ってくる優し過ぎるストリングスアレンジといい、長めの場末的サックスソロといい、胸をえぐるポイントに限りがありません。
・「お早う」
彼らの代表作といってもよい軽やかなハウス系リズムとあっさり味が爽やかなポップナンバー。おしゃれ感が際立つキャッチー過ぎるサビはさすが売れ線を意識したもの。しかし楽曲構成が相変わらず個性的なため一般受けはやはりしないのも頷けます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (サポートも含めて個性的かつ技巧派の演奏力)
・メロディ ★★★★ (バラード系の美し過ぎるフレーズはセンス抜群)
・リズム ★★★ (全編生ドラムでもよかったがこだわりは感じる)
・曲構成 ★★ (少数精鋭とはいえもう少し曲数が欲しかった)
・個性 ★★ (彼らの資質を鑑みるにまだまだ爪を隠している)
総合評点: 8点
SPANK HAPPY

<members>
ハラミドリ:vocal・chorus
菊地成孔:sax・chorus
河野伸:keyboards・synthesizer programming・chorus
1.「天上の方の人々」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
2.「ウィークエンド」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
3.「走り泣く乙女(バンドタイプ)」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
4.「くよくよする日」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
5.「オー!神様」 詞・曲:SPANK HAPPY 編:SPANK HAPPY・外山明
6.「ノールームメイト」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
7.「お早う」 詞・曲・編:SPANK HAPPY
<support musician>
今堀恒雄:electric guitar・acoustic guitar
MECKEN:bass
外山明:drums・percussions
ASA-CHANG:percussions
荒木敏男:trumpet
村田陽一:trombone
佐藤潔:tuba
飛鳥Strings:strings
produced by SPANK HAPPY
engineered by 野島英明
● 個性的な3人の才能がPOPSを土台にぶつかり合う!裏ドリカムと呼ばれたトリオバンドデビュー作
財津和夫とのデュエット「償いの日々」でデビューしたシンガーソングライター原みどり改めハラミドリと、岸野雄一が主宰する芸術集団「京浜兄弟社」に出入りし、スタジオミュージシャンとしても活躍、前衛インプロビゼーションバンドTIPOGRAPHICAのメンバーでもあった菊地成孔、そして多数のアーティストの作編曲を手掛けたキーボーディスト河野伸により、あくまで売れ線を狙うことを目的としたポップグループであるSPANK HAPPYは結成されました。1994年シングル「走り泣く乙女」でデビューした彼らは、そのままの勢いですぐさま1stミニアルバムである本作を発表、女性1人男性2人のDreams Come True編成というおいしいメンバー構成でありながら、ひとクセもふたクセもある歌詞と演奏力で、一定の評価は得たもののマニア受けするがゆえに一般認知度は思ったほど浸透しなかったようでした。
交通標識のパロディによるインパクトが強いジャケを見ても理解できるようにとても一筋縄ではいかない個性を持っているこのグループは、売れ線を狙ったというのが嘘のようなアーティスティックなサウンドを聴かせてくれます。全体的なアレンジを主導しているのは安定感のある河野伸ですが、彼らの個性はやはり菊地成孔のアヴァンギャルドなブラスフレーズに独特な視点による歌詞世界、そして圧倒的なハラミドリのヴォーカルパフォーマンスによる部分が大きいと思われます。また忘れてはならないのはバックを支える今堀恒雄や外山明といったTIPOGRAPHICA勢の抜群の演奏力で、菊地の人脈による曲者&凄腕ミュージシャン達の参加が、トリオのみでは表現しきれない彼らの楽曲にある種のパワーをもたらしていると言ってよいでしょう。そんなアヴァンギャルドポップな側面が注目される中、実は本作の中で光っているのは「くよくよする日」や「ノールームメイト」といいたミディアムバラードの優しくも美しいメロディで、柔らかなシンセで包み込むようなアレンジ力もあって非常に完成度が高く、本気になればこれほどの楽曲も作れるという才能の一端を見せてくれる職人芸的名仕事と言えます。次のシングル「僕は楽器」で持てる力量を爆発させた後、2ndアルバム「FREAK SMILE」という集大成的大作を残しますが、本作は彼らの名刺的な1枚としてコンパクトに楽しめる好作品であり、安心して聴ける1枚でもあるのです。
<Favorite Songs>
・「ウィークエンド」
オルガン系音色にパーカッシブなリズムで構成されるポップチューン。河野伸主導の洗練されたアレンジにキムチを入れたような暴れ回るサックスフレーズにこのバンド特有の毒を感じます。
・「ノールームメイト」
90年代を代表する抜群の完成度を誇る名バラード。フィールドレコーディングっぽい演出といい、サビでさりげなく入ってくる優し過ぎるストリングスアレンジといい、長めの場末的サックスソロといい、胸をえぐるポイントに限りがありません。
・「お早う」
彼らの代表作といってもよい軽やかなハウス系リズムとあっさり味が爽やかなポップナンバー。おしゃれ感が際立つキャッチー過ぎるサビはさすが売れ線を意識したもの。しかし楽曲構成が相変わらず個性的なため一般受けはやはりしないのも頷けます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (サポートも含めて個性的かつ技巧派の演奏力)
・メロディ ★★★★ (バラード系の美し過ぎるフレーズはセンス抜群)
・リズム ★★★ (全編生ドラムでもよかったがこだわりは感じる)
・曲構成 ★★ (少数精鋭とはいえもう少し曲数が欲しかった)
・個性 ★★ (彼らの資質を鑑みるにまだまだ爪を隠している)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Long Long Way Home」 鈴木祥子
「Long Long Way Home」(1990 エピックソニー)
鈴木祥子:vocal・hi-hat・glockenspiel・background vocals

1.「光の駅」 詞:杉林恭雄 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
2.「メロディ」 詞:杉林恭雄 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
3.「Little Love」
詞:西尾佐栄子 曲:鈴木祥子・佐橋佳幸 編:佐橋佳幸・藤井丈司・門倉聡
4.「水の中の月」 詞・曲:鈴木祥子 編:門倉聡
5.「Down By The River」 詞・曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司・西本明
6.「夏のまぼろし」 詞・曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
7.「あの空に帰ろう」 詞:戸沢暢美 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
8.「青い空の音符」 詞:大貫妙子 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
9.「かもめ」 詞・曲:鈴木祥子 編:門倉聡
10.「どこにもかえらない」 詞・曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
<support musician>
佐橋佳幸:electric guitar・acoustic guitar・glockenspiel・mandolin・uklele・background vocals
小倉博和:gut guitar・charango・uklele・bouzouki
浅田孟:electric bass
美久月千晴:electric bass・acoustic bass
渡辺等:acoustic bass・uklele・mandocello・mandolin・bowed psaltery
青山純:drums
小田原豊:drums
山木秀夫:drums
Sir Nikolai Kadokov:acoustic piano
門倉聡:acoustic piano・keyboards・Roland S-50・reed organ
Huj Mahar:Roland S-50 solo
柴田俊文:synthesizer・Wurlitzer
西本明:synthesizer・acoustic piano・Hammond organ・Prophet5 solo・Wurlitzer
浜口茂外也:percussion・tambourines・sticks・shaker・rainmaker・pandero
矢口博康:alto sax・tenor sax・soprano sax solo
坂宏之:oboe
金子飛鳥:violin
桑野聖:violin
村山達哉:viola
堀内茂雄:cello
Emmy Lou Bell:background vocals・glockenspiel
Lefty Bridges:background vocals
井上利衣:background vocals
向井寛:background vocals
藤井丈司:computer programming
produced by 藤井丈司
co-produced by 佐橋佳幸
engineered by 村瀬範恭・飯尾芳史
● 落ち着きのあるアコースティックサウンドに確かなメロディセンスを発揮した癒し系傑作アルバム
瑞々しい感性のアコースティックサウンドを得意とする新感覚派アーティストとしてデビューした鈴木祥子は、2ndアルバム「水の冠」によって作曲家としての才能が開花し、特にミディアムテンポの楽曲においてそのメロディセンスを際立たせ始めました。さらに佐橋佳幸や西平彰といった熟練のアレンジャー陣によるきらびやかなサウンドは、楽曲を引き立てるに十分なクオリティを誇り、3rdアルバム「風の扉」における大々的なプロモーション活動のおかげもあり、EPICレコードの一押しアーティストとしてその名を知られることになります。しかし鈴木本人にとってはその状況は違和感のあるものであったらしく、3rdリリースの同年にはシックなジャケからも感じられるような一抹の寂寥感を醸し出す静謐なアルバムである本作をリリース、当時の鈴木の持てる力が十二分に発揮された自信作となりました。
前作よりギターが目立つアコースティックな音が増した本作ですが、合わせてリズムも比較的乾いた音質となり早くも90年代を感じさせるサウンドです。定評のある構成力のあるメロディは前作以上にその威力を発揮しており、そのロマンティックかつ寂しげなフレーズはまさしくリリース時期でもある秋から冬にかけての季節にぴったりはまっています。そのような楽曲であるがゆえに生楽器の存在が大きくTECHNOLOGYも控えめになっていますが、そこは往年の曲者シンセプログラマー藤井丈司プロデュースの本作、随所に挿入されるシンセフレーズはチープながらも存在感を放つ個性的な音であり、特に「メロディ」や「Down By The River」のシンセソロは聴き所の1つでしょう。とはいえやはり本作はアコースティックな味わいの落ち着きのある作風という表現がしっくりくるのも事実であり、鈴木祥子の湿り気のある艶やかな声質も相まって、4枚目にして遂に彼女独自の世界観を確立した感のある名盤として、彼女のファンにもそれほどファンでない方々にも語られることの多い作品です。そして現在息長く活動している彼女の作品群の中でもいまだ本作を上回る作品には出会っていないのも事実です。
<Favorite Songs>
・「メロディ」
ウキウキと歩きたくなるような心地良いテンポのタイトル通り良い「メロディ」のポップミュージック。コーラスとオルガンが温かみを与え、キャッチーなサビに安心感があります。間奏のProphet5によるキュートなシンセソロもよいアクセントになって高い完成度となっています。
・「Little Love」
鈴木祥子の魅力をぎっしり詰め込んだクリスマスシーズンにぴったりの珠玉の名曲。相変わらずのAメロキラーぶりにポップマエストロに不可欠なサビのキャッチー性がカッチリはまった見事な構成で、シンセストリングスも暖かいギターとヒンヤリとしたシンセストリングスの対比もよく、「メロディ」同様線の細いシンセソロフレーズのアクセントが絶妙です。
・「あの空に帰ろう」
カントリーミュージックの趣すら感じさせるノスタルジックなミディアムPOPS。ここでも最大限にアピールするのは分厚いコーラスで、冷たい空気の中の人肌の温もりのような暖かさを感じる優しい癒しのサウンドで和ませること間違いなしの楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (生楽器中心の中にチープなシンセが際立つ)
・メロディ ★★★★ (独特の奥が深い暖かいメロディは彼女の才能)
・リズム ★★ (楽曲により力強くメリハリが効いたリズムも)
・曲構成 ★★★ (後半は地味めな楽曲が続くところで気分が・・)
・個性 ★★★★ (間違いなく「水の冠」と並ぶ彼女の最高傑作)
総合評点: 8点
鈴木祥子:vocal・hi-hat・glockenspiel・background vocals

1.「光の駅」 詞:杉林恭雄 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
2.「メロディ」 詞:杉林恭雄 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
3.「Little Love」
詞:西尾佐栄子 曲:鈴木祥子・佐橋佳幸 編:佐橋佳幸・藤井丈司・門倉聡
4.「水の中の月」 詞・曲:鈴木祥子 編:門倉聡
5.「Down By The River」 詞・曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司・西本明
6.「夏のまぼろし」 詞・曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
7.「あの空に帰ろう」 詞:戸沢暢美 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
8.「青い空の音符」 詞:大貫妙子 曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
9.「かもめ」 詞・曲:鈴木祥子 編:門倉聡
10.「どこにもかえらない」 詞・曲:鈴木祥子 編:佐橋佳幸・藤井丈司
<support musician>
佐橋佳幸:electric guitar・acoustic guitar・glockenspiel・mandolin・uklele・background vocals
小倉博和:gut guitar・charango・uklele・bouzouki
浅田孟:electric bass
美久月千晴:electric bass・acoustic bass
渡辺等:acoustic bass・uklele・mandocello・mandolin・bowed psaltery
青山純:drums
小田原豊:drums
山木秀夫:drums
Sir Nikolai Kadokov:acoustic piano
門倉聡:acoustic piano・keyboards・Roland S-50・reed organ
Huj Mahar:Roland S-50 solo
柴田俊文:synthesizer・Wurlitzer
西本明:synthesizer・acoustic piano・Hammond organ・Prophet5 solo・Wurlitzer
浜口茂外也:percussion・tambourines・sticks・shaker・rainmaker・pandero
矢口博康:alto sax・tenor sax・soprano sax solo
坂宏之:oboe
金子飛鳥:violin
桑野聖:violin
村山達哉:viola
堀内茂雄:cello
Emmy Lou Bell:background vocals・glockenspiel
Lefty Bridges:background vocals
井上利衣:background vocals
向井寛:background vocals
藤井丈司:computer programming
produced by 藤井丈司
co-produced by 佐橋佳幸
engineered by 村瀬範恭・飯尾芳史
● 落ち着きのあるアコースティックサウンドに確かなメロディセンスを発揮した癒し系傑作アルバム
瑞々しい感性のアコースティックサウンドを得意とする新感覚派アーティストとしてデビューした鈴木祥子は、2ndアルバム「水の冠」によって作曲家としての才能が開花し、特にミディアムテンポの楽曲においてそのメロディセンスを際立たせ始めました。さらに佐橋佳幸や西平彰といった熟練のアレンジャー陣によるきらびやかなサウンドは、楽曲を引き立てるに十分なクオリティを誇り、3rdアルバム「風の扉」における大々的なプロモーション活動のおかげもあり、EPICレコードの一押しアーティストとしてその名を知られることになります。しかし鈴木本人にとってはその状況は違和感のあるものであったらしく、3rdリリースの同年にはシックなジャケからも感じられるような一抹の寂寥感を醸し出す静謐なアルバムである本作をリリース、当時の鈴木の持てる力が十二分に発揮された自信作となりました。
前作よりギターが目立つアコースティックな音が増した本作ですが、合わせてリズムも比較的乾いた音質となり早くも90年代を感じさせるサウンドです。定評のある構成力のあるメロディは前作以上にその威力を発揮しており、そのロマンティックかつ寂しげなフレーズはまさしくリリース時期でもある秋から冬にかけての季節にぴったりはまっています。そのような楽曲であるがゆえに生楽器の存在が大きくTECHNOLOGYも控えめになっていますが、そこは往年の曲者シンセプログラマー藤井丈司プロデュースの本作、随所に挿入されるシンセフレーズはチープながらも存在感を放つ個性的な音であり、特に「メロディ」や「Down By The River」のシンセソロは聴き所の1つでしょう。とはいえやはり本作はアコースティックな味わいの落ち着きのある作風という表現がしっくりくるのも事実であり、鈴木祥子の湿り気のある艶やかな声質も相まって、4枚目にして遂に彼女独自の世界観を確立した感のある名盤として、彼女のファンにもそれほどファンでない方々にも語られることの多い作品です。そして現在息長く活動している彼女の作品群の中でもいまだ本作を上回る作品には出会っていないのも事実です。
<Favorite Songs>
・「メロディ」
ウキウキと歩きたくなるような心地良いテンポのタイトル通り良い「メロディ」のポップミュージック。コーラスとオルガンが温かみを与え、キャッチーなサビに安心感があります。間奏のProphet5によるキュートなシンセソロもよいアクセントになって高い完成度となっています。
・「Little Love」
鈴木祥子の魅力をぎっしり詰め込んだクリスマスシーズンにぴったりの珠玉の名曲。相変わらずのAメロキラーぶりにポップマエストロに不可欠なサビのキャッチー性がカッチリはまった見事な構成で、シンセストリングスも暖かいギターとヒンヤリとしたシンセストリングスの対比もよく、「メロディ」同様線の細いシンセソロフレーズのアクセントが絶妙です。
・「あの空に帰ろう」
カントリーミュージックの趣すら感じさせるノスタルジックなミディアムPOPS。ここでも最大限にアピールするのは分厚いコーラスで、冷たい空気の中の人肌の温もりのような暖かさを感じる優しい癒しのサウンドで和ませること間違いなしの楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (生楽器中心の中にチープなシンセが際立つ)
・メロディ ★★★★ (独特の奥が深い暖かいメロディは彼女の才能)
・リズム ★★ (楽曲により力強くメリハリが効いたリズムも)
・曲構成 ★★★ (後半は地味めな楽曲が続くところで気分が・・)
・個性 ★★★★ (間違いなく「水の冠」と並ぶ彼女の最高傑作)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「オレンジ」 電気グルーヴ
「オレンジ」 (1996 キューンソニー)
電気グルーヴ

<members>
石野卓球:vocal・synthesizer & computer programming
ピエール瀧:vocal
砂原良徳:vocal・synthesizer & computer programming
1.「ママケーキ」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲:砂原良徳 編:電気グルーヴ
2.「誰だ!」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
3.「キラーポマト」 詞・曲・編:電気グルーヴ
4.「VIVA! アジア丸出し」 詞・曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
5.「なんとも言えないわびしい気持ちになったことはあるかい?」
詞・曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
6.「ポパイポパイ」 詞・曲:ピエール瀧 編:電気グルーヴ
7.「反復横飛び」 曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
8.「スコーピオン」 詞:ピエール瀧 曲:砂原良徳 編:電気グルーヴ
9.「スマイレス スマイル」 詞・曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
10.「Tシャツで雪まつり including 燃えよドラゴンのテーマ」
詞:ピエール瀧 曲:電気グルーヴ・Lalo Schifrin 編:電気グルーヴ
<support musician>
秋元薫:voice
岡村靖幸:voice
徳光和夫:voice
produced by 電気グルーヴ
mixing engineered by 松本靖雄・電気グルーヴ
recording engineered by 松本靖雄
● テクノブームの象徴だった全盛期にあえて以前のナンセンス歌路線に挑戦した問題作
80年代テクノへの愛情をフロア系テクノミュージックが脚光を浴びた90年代を通して進化させたサウンドに、独自のコミカルなラップを中心とした言葉を乗せてジャパニーズテクノの頂点に上り詰めた感のある電気グルーヴは、それまでの脱力系ギャグ路線の作品から究極のテクノミュージックを目指して丹念の作り上げた代表作「VITAMIN」「DRAGON」において国内外で高い評価を得ることに成功しましたが、逆にそのストイックなサウンドが彼ら本来のナンセンスなバカバカしさと「やり過ぎ感」のようなものは後退せざるを得ませんでした。そこで彼らはYMOが日本で逆輸入的にブレイクした後に、にわかファンを切り捨てたマイナー実験作である傑作「BGM」をリリースしたパターンとは逆のパターンで、本格的なテクノ作品として評価された反動として、原点回帰ともいえるナンセンスギャグを根幹とした「歌」を強調した愛すべきバカ作品である本作をリリースします。
「キラーポマト」「ポパイポパイ」など余りに狂気でバカバカしくてナンセンス、それでいてメッセージ色も強いあるあるネタっぽい歌詞がこれでもかとフィーチャーされた本来の電気グルーヴの魅力が発揮されている本作ですが、肝心の音使いに関しては、前2作の本格的フロア系テクノの要素を生かしながら、どちらかというと前作までのアナログシンセ色が強かった音色から、サンプリング系サウンドを多用する傾向に変化しているように見受けられます。それが逆に音の感触としては地味なものにしている感がありますが、その分繰り返すことによる味わい深さも感じられます。印象としては彼らの混迷作である2ndアルバム「UFO」に近く、本来の電気グルーヴをアピールはしているもののサウンドとしてもメロディとしても煮え切らなさが残る、しかし妙に奥歯に物が挟まった感覚が抜け切らない、本格テクノ路線を好む方々には拍子抜けする、本来のギャグ路線が好きな方々にはポップさが足りないという微妙な立ち位置のアルバムと言えるかもしれません。本人達もその煮え切らなさを感じたのか次作「A」では「VITAMIN」路線を進化させた本格路線に再び挑戦したかい評価を得ますが、個人的には本作のようなある種ムカつくような「やりすぎ感」を持った作風の方がやはり彼らの持ち味を十二分に発揮できていると思います。砂原脱退後に足かせがとれたようなやりたい放題アルバム「VOXXX」などはその最たるものであり、彼らの立ち位置はまさにそこにあると思えるのです。
<Favorite Songs>
・「ママケーキ」
強制的に歌わされてる感がおもしろい砂原良徳の生歌のインパクトが強烈なオープニングナンバー。最初と最後を脱力的生歌で締めていますが、本編は本格的なリズム重視の90年代らしいトラックで、砂原らしいギミックを取り入れた完成度の高いサウンドとコミカルな側面とのギャップがポイントです。
・「VIVA! アジア丸出し」
当時第一線から退きつつあった岡村靖幸をゲストヴォーカルに迎えるという大胆な策が光る楽曲。ストレートで攻撃的なテクノリズムが多い本作にあって、横ノリのダンサブルなトラックは存在感がありますが、本作に限っては岡村の天才的なフェイクに注目し、大胆にフィーチャーした着眼点の鋭さに注目したいところです。
・「スコーピオン」
立体的な音像とスピード感のあるリズムが特徴の砂原楽曲2曲目。ピエールの声色やおもしろ台詞はともかく本作中最もクールでかっこよさが光るサウンドです。それぞれのフレーズに対するディレイの使い方が非常に巧みです。
<評点>
・サウンド ★★ (ループをふんだんに使用した繰り返しの美学)
・メロディ ★ (歌を強調したコンセプトであるがメロは少々弱い)
・リズム ★★ (リズムは非常に前に出た攻撃性のある打ち込み)
・曲構成 ★ (興味深い試みはあるが全体的に地味な楽曲が多い)
・個性 ★★ (本来の姿ではあるがまだまだこんなものではない)
総合評点: 6点
電気グルーヴ

<members>
石野卓球:vocal・synthesizer & computer programming
ピエール瀧:vocal
砂原良徳:vocal・synthesizer & computer programming
1.「ママケーキ」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲:砂原良徳 編:電気グルーヴ
2.「誰だ!」 詞:石野卓球・ピエール瀧 曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
3.「キラーポマト」 詞・曲・編:電気グルーヴ
4.「VIVA! アジア丸出し」 詞・曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
5.「なんとも言えないわびしい気持ちになったことはあるかい?」
詞・曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
6.「ポパイポパイ」 詞・曲:ピエール瀧 編:電気グルーヴ
7.「反復横飛び」 曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
8.「スコーピオン」 詞:ピエール瀧 曲:砂原良徳 編:電気グルーヴ
9.「スマイレス スマイル」 詞・曲:石野卓球 編:電気グルーヴ
10.「Tシャツで雪まつり including 燃えよドラゴンのテーマ」
詞:ピエール瀧 曲:電気グルーヴ・Lalo Schifrin 編:電気グルーヴ
<support musician>
秋元薫:voice
岡村靖幸:voice
徳光和夫:voice
produced by 電気グルーヴ
mixing engineered by 松本靖雄・電気グルーヴ
recording engineered by 松本靖雄
● テクノブームの象徴だった全盛期にあえて以前のナンセンス歌路線に挑戦した問題作
80年代テクノへの愛情をフロア系テクノミュージックが脚光を浴びた90年代を通して進化させたサウンドに、独自のコミカルなラップを中心とした言葉を乗せてジャパニーズテクノの頂点に上り詰めた感のある電気グルーヴは、それまでの脱力系ギャグ路線の作品から究極のテクノミュージックを目指して丹念の作り上げた代表作「VITAMIN」「DRAGON」において国内外で高い評価を得ることに成功しましたが、逆にそのストイックなサウンドが彼ら本来のナンセンスなバカバカしさと「やり過ぎ感」のようなものは後退せざるを得ませんでした。そこで彼らはYMOが日本で逆輸入的にブレイクした後に、にわかファンを切り捨てたマイナー実験作である傑作「BGM」をリリースしたパターンとは逆のパターンで、本格的なテクノ作品として評価された反動として、原点回帰ともいえるナンセンスギャグを根幹とした「歌」を強調した愛すべきバカ作品である本作をリリースします。
「キラーポマト」「ポパイポパイ」など余りに狂気でバカバカしくてナンセンス、それでいてメッセージ色も強いあるあるネタっぽい歌詞がこれでもかとフィーチャーされた本来の電気グルーヴの魅力が発揮されている本作ですが、肝心の音使いに関しては、前2作の本格的フロア系テクノの要素を生かしながら、どちらかというと前作までのアナログシンセ色が強かった音色から、サンプリング系サウンドを多用する傾向に変化しているように見受けられます。それが逆に音の感触としては地味なものにしている感がありますが、その分繰り返すことによる味わい深さも感じられます。印象としては彼らの混迷作である2ndアルバム「UFO」に近く、本来の電気グルーヴをアピールはしているもののサウンドとしてもメロディとしても煮え切らなさが残る、しかし妙に奥歯に物が挟まった感覚が抜け切らない、本格テクノ路線を好む方々には拍子抜けする、本来のギャグ路線が好きな方々にはポップさが足りないという微妙な立ち位置のアルバムと言えるかもしれません。本人達もその煮え切らなさを感じたのか次作「A」では「VITAMIN」路線を進化させた本格路線に再び挑戦したかい評価を得ますが、個人的には本作のようなある種ムカつくような「やりすぎ感」を持った作風の方がやはり彼らの持ち味を十二分に発揮できていると思います。砂原脱退後に足かせがとれたようなやりたい放題アルバム「VOXXX」などはその最たるものであり、彼らの立ち位置はまさにそこにあると思えるのです。
<Favorite Songs>
・「ママケーキ」
強制的に歌わされてる感がおもしろい砂原良徳の生歌のインパクトが強烈なオープニングナンバー。最初と最後を脱力的生歌で締めていますが、本編は本格的なリズム重視の90年代らしいトラックで、砂原らしいギミックを取り入れた完成度の高いサウンドとコミカルな側面とのギャップがポイントです。
・「VIVA! アジア丸出し」
当時第一線から退きつつあった岡村靖幸をゲストヴォーカルに迎えるという大胆な策が光る楽曲。ストレートで攻撃的なテクノリズムが多い本作にあって、横ノリのダンサブルなトラックは存在感がありますが、本作に限っては岡村の天才的なフェイクに注目し、大胆にフィーチャーした着眼点の鋭さに注目したいところです。
・「スコーピオン」
立体的な音像とスピード感のあるリズムが特徴の砂原楽曲2曲目。ピエールの声色やおもしろ台詞はともかく本作中最もクールでかっこよさが光るサウンドです。それぞれのフレーズに対するディレイの使い方が非常に巧みです。
<評点>
・サウンド ★★ (ループをふんだんに使用した繰り返しの美学)
・メロディ ★ (歌を強調したコンセプトであるがメロは少々弱い)
・リズム ★★ (リズムは非常に前に出た攻撃性のある打ち込み)
・曲構成 ★ (興味深い試みはあるが全体的に地味な楽曲が多い)
・個性 ★★ (本来の姿ではあるがまだまだこんなものではない)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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