「ふるめたる夜」 メテオール
メテオール

<members>
山田カズミ(カズウ):vocal・chorus・all instruments
トオコ:vocal・chorus
1.「ふるめたる夜」 詞・曲・編:山田カズミ
2.「PEACE TONE」 詞・曲・編:山田カズミ
3.「原子力ベーカリー」 詞・曲・編:山田カズミ
4.「Ghost」 詞・曲・編:山田カズミ
5.「モンスターブーツ」 詞・曲・編:山田カズミ
6.「ネジの樹」 詞・曲・編:山田カズミ
7.「食後の時間」 詞・曲・編:山田カズミ
8.「ランジェリーでダバダ」 詞・曲・編:山田カズミ
9.「キレイ・キタナイ」 詞・曲・編:山田カズミ
10.「絶望ラッパ」 詞・曲・編:山田カズミ
11.「クラスメイトになりたくて」 詞・曲・編:山田カズミ
12.「家政婦はメカ」 詞・曲・編:山田カズミ
13.「こしたんたんセキラララ」 詞・曲・編:山田カズミ
14.「がちゃめの犬」 詞・曲・編:山田カズミ
15.「ふるめたる女」 詞・曲・編:山田カズミ
<support musician>
みつこ:vocal
山手美和:vocal・chorus
ヒロック:chorus
produced by 山田カズミ
engineered by 山田カズミ
● テクノポップに演歌や民謡、フォークや童謡などごった煮にした唯一無二の個性派無国籍サウンド大作
1990年代のインディーズテクノポップシーンを牽引するバンドの1つであったパラペッツ解散後、リーダー&ヴォーカルの山田カズミは「カズウ」としてソロ活動を開始するかたわら、自身のレーベルであるミントパンチレコードよりオムニバス盤「トルマリンシリーズ」などを発表、くるくるメカやSuper Get Get Two等のアンダーグラウンドシーンで地道に活動するインディーズテクノバンドに音源発表の場を与えていました。そして90年代末に山田カズミは新たにCGをフィーチャーしたテクノユニットであるメテオールを結成、音源は山田が制作、CGはパートナーであるトオコが制作し、ライブではサポートメンバーによるバンドサウンドを追求する独自の活動を展開し、現在に至っています。本作はフルアルバムとしてはいまだ最新の15曲という多数の楽曲が収録されており、彼らならではのテクノのみならず民謡やフォーク、演歌など影響されたジャンルを横断した独特の個性的な作品で勝負をかけた力作となっています。
本作のテーマとして想起させられるのは直球的に表現すると「日本の心」です。お囃子的合いの手やコブシの回る歌い方、尺八や鼓、太鼓など日本固有の楽器音色を多用したサウンドは、洋楽的な音楽傾向を排除した潔さすら感じます。しかしこうした「和」の側面も彼らの特徴の一側面であり、15曲に及ぶバラエティに富んだ楽曲においてベースになっているのは、持ち前のおもちゃ箱をひっくり返したようなチープ&コミカルな打ち込み基調のシンセサウンドであり、P-MODELやヒカシューといった80年代初期テクノポップの影響が強い彼らならではのどこか気持ち悪いひねくれたフレーズとの絶妙な相性がメテオールの根幹を支えているものと思われます。「ふるめたる夜」「ランジェリーでダバダ」、無謀にも演歌に挑戦「ふるめたる女」のような驚くべきセンスが感じられる楽曲とその他の楽曲とのクオリティの差がはっきり出てしまうのはアマチュアならではですが、こうした粗さがあればこそのカズウサウンドではないでしょうか。現在メテオールはカズウとヒロックの2人組としてマイペースに活動中ですが、本作において確立したテクノ民謡テイストはそのまま生かされているようです。
<Favorite Songs>
・「ふるめたる夜」
不気味な童謡のような歌から始まり尺八の音色と和太鼓の乱れ打ちリズム、そしてコブシの効いた歌唱がどこまでも「和」テイストを感じさせるタイトルナンバー。とはいっても根底にあるのは打ち込みに裏打ちされたテクノ的フレーズであり、そこが彼らのジャンルを超越したサウンドの個性でもあります。
・「ランジェリーでダバダ」
にじむようなポルタメントサウンドのイントロからリズム隊が入ってきて聴こえてきたのは、まさかのランバダというセンスが光りまくった名曲。しかしただのフレーズの流用ではなく、しっかり楽曲になじむメロディとあくまでテクノなシーケンスに溶け込ませる構成力、途中のムエタイ踊りフレーズ、酒場でDABADA、くだらないランジェリー讃歌と、カオスの極みともいえます。
・「キレイ・キタナイ」
高速シーケンスによる本作中でもBPMの速いダンサブルチューン。しかし歌っている内容はスプラッター的なグロいもので、それでいてメロディは明るめという倒錯した印象です。途中の歌舞伎テイストといい擬態語連発のサビといい自由度の高いヴォーカルも特徴的です。
<評点>
・サウンド ★ (打ち込みに粗さが目立つが音色に器用さも感じられる)
・メロディ ★ (POPSからズレまくったねじれたフレーズに少々違和感)
・リズム ★★ (全編打ち込みとはいえよく練られバリエーション多し)
・曲構成 ★ (バラエティ豊かな楽曲を詰め込み過ぎてテーマをぼかす)
・個性 ★★★ (楽曲によってばらつくとはいえ他にはないセンスはある)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「pose」 normal pop?
normal pop?

<members>
本田勝之:synthesizer programming・guitar・electric voice
いとうまさみ:vocal・piano・flute
1.「Electric Candy Pop」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
2.「elle」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
3.「頭の悪い女の子」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
4.「さ・く・ら・カラー」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
5.「いじわる」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
6.「Electric Candy Rock」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
7.「終わりのテーマ」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
8.「人でなしの恋」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
9.「春の惑星」 詞:伊藤雅美 曲・編:本田勝之
10.「いつか笑える日」 詞・曲・編:本田勝之
produced by 細江慎治
engineered by 本田勝之
● 80年代中期のテクノポップメロディ&サウンドを忠実に再現した珠玉の名盤デビュー作
元宇宙ヤングのZunba Kobayashiが中心となり2000年代にテクノポップの復権を目指して設立されたTechno 4 Popレーベルから飛び出した80'sデジタルサウンドに影響を受けたとおぼしきPOPSユニット、normal pop?は、サウンド全般を司る本田勝之と弾き語りのソロシンガーとして活動していたいとうまさみの2人組で、テクノポップというジャンル分けで語られながらも、あくまで歌モノとしてのPOPS感覚を強調しアイドル歌謡を彷佛とさせるキュートで甘く気怠い声質のヴォーカルにより親しみやすさを感じさせる楽曲で、近年のテクノポップやエレクトロと呼ばれるPOPSアーティストの中でも異彩を放つ雰囲気を持つユニットです。自主制作やオムニバスでその懐かしくも質の高い楽曲を披露していた彼らの初のアルバムとなる本作は、その才能の片鱗しか見せていなかった彼らの本気が垣間見える会心の名盤と言える完成度を誇っています。
そんな彼らの得意とするサウンドは一言で言って「80年代中期のポストニューウェーブ歌謡POPSサウンド」。その核となるのがなんといってもリズム音色で、懐かしのPCMドラムマシンによる強めのスネアドラムは現在ではなかなかこうした音処理がなされないだけに非常に新鮮に聴こえます。そして明らかにYMOを通過したことが明らかな高橋幸宏的クッキリはっきりしたリズムパターン&フィルインには80年代にタイムスリップせざるを得ません。また80年代に強い影響を受けたと思われるシンセサウンドも、フィルターを微妙に絞ったような柔らかい音色を多用したり、時にはいかにもテクノっぽい電子音でアクセントを加えるなど、メジャー顔負けのサウンドデザインを披露しています。音の分離が良いシーケンスにより音の隙間を作り、1つ1つの音(と音色)が強調されているのも賞賛できる部分です。そして忘れてはならないのが彼らのほとばしるポップセンスで、キャッチーなフレーズを連発し転調のツボを押さえたメロディはどれもが親しみやすく、売り出し方によってはブレイクに至ったかもしれないほどのPOPSマスターぶりを見せており、作編曲を手掛ける本田勝之の多才ぶりには脱帽します。とにかくほとんど盲点ですらあった「80年代中期のデジタルPOPSの気持ち良さ」に目をつけ、それを忠実に実現できるそのセンスが素晴らしいと思います。この名作の後は活動は休止しているようですが、可能であれば次回作を期待したいユニットの1つです。
<Favorite Songs>
・「さ・く・ら・カラー」
桜が舞い散るようなアルペジオ&ディレイのフレーズが美しい資生堂CMソングを思い出させるキャッチーナンバー。坂本龍一っぽいプロフェットの柔らかいシンセパッドに転調を上手く活用した爽やかな曲調、そして歯切れの良いフィルインが目立つリズムと、聴き所満載の高い完成度を誇る名曲です。
・「春の惑星」
春の日射しのような優しい曲調が癒しを誘うTechno 4 Popのオムニバスにも収録されたポップチューン。とにかく楽曲の完成度が抜群で、Aメロ~サビへの流れに全くよどみがありません。間奏への入りも絶妙で80's POPSの旨味を知り尽くしているかのようです。
・「いつか笑える日」
前半インストのように推移し後半にヴォーカル(&ボコーダー)が挿入されるラストを飾るバラード。とはいってもしっかりリズムが強調されたりE-bowっぽいギターや中期YMOらしきフレーズを差し込んだり、サウンド的にも凝った構成で聴かせます。それでいて1コードに少し変化をもたせるだけの構成というのも驚かされます。
<評点>
・サウンド ★★★★★(こだわりの感じられる分離の良いシンセワークは絶品)
・メロディ ★★★★★(ツボを押さえた泣きのメロディの構成力に驚かされる)
・リズム ★★★★★(高橋幸宏的リズムパターンと硬質な音色は80'sの象徴)
・曲構成 ★★★★ (バラードも効果的で捨て曲がなく他の曲も聴きたいほど)
・個性 ★★★★ (ありそうでないこの立ち位置は非常に貴重であると思う)
総合評点: 10点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「APRES MIDI」 TESTPATTERN
TESTPATTERN

<members>
比留間雅夫:vocal・all instruments(Roland・KORG・Prophet・Emulator・LINN Drum)
市村文夫:KORG synthesizer
1.「Crescent Moon」 詞:比留間雅夫 曲:比留間雅夫・市村文夫 編:比留間雅夫
2.「Souvenir Glace」 詞:Linsui 曲・編:比留間雅夫
3.「Beach Girl」
詞:比留間雅夫・Peter Barakan 曲:比留間雅夫 編:比留間雅夫・細野晴臣
4.「Sea Breeze」 詞:比留間雅夫・Peter Barakan 曲・編:比留間雅夫
5.「Modern Living」 詞:比留間雅夫・Scott 曲・編:比留間雅夫
6.「Ring Dance」 曲・編:比留間雅夫
7.「Catchball」 曲・編:比留間雅夫
8.「Techno Age」 曲・編:比留間雅夫
9.「Ocean Liner」 曲:比留間雅夫・市村文夫 編:比留間雅夫
10.「Aeroplane」 曲・編:比留間雅夫
produced by 細野晴臣
engineered by 飯尾芳史
● デザイナー畑のノンミュージシャンの感性が導くストイックなテクノリゾートポップアルバムの名作
細野晴臣と高橋幸宏が次世代のテクノポップアーティスト発掘を目的としたYENレーベルの設立により、越美晴やゲルニカといった既にキャリアのある個性的なアーティストが再デビューしましたが、その一方でインテリアやイノヤマランドといった「中間音楽」と呼ばれるアンビエントインスト系の新人グループも次々とデビューし、TECHNOLOGYを利用したPOPSの可能性を幅広く追求していました。その中間音楽系新人グループの1つとしてデビューしたのがTESTPATTERNで、本業がデザイナーでありミュージシャンの経験がほとんどない2人が創り出すシンセラウンジPOPSともいうべき穏やかな音楽性はYENレーベルの中でも異彩を放っており、隠れた評価を受けていました。そんな彼らの評価を確かなものにしたのがデビュー作にして唯一のアルバムである本作です。
ノンミュージシャンな彼らだけあってその音楽性はいたってシンプルで、リズムボックスとシンセ&シーケンサーで構築されるイージーリスニングとも受け取れる柔らかな音色が多用されたサウンドは、まさに音という色を使った水彩画のようなイメージを抱かせます。ミニマル的に繰り返すフレーズはテクノポップの王道とも言えますがセンスが感じられるのはその音色の使い方です。特に後半の「Ring Dance」や「Aeroplane」といったインストが集められている楽曲での飽きさせない音の彩り方は、さすがデザインを生業としている彼らならではの仕事と言えるでしょう。なまじ音楽的素養を身につけていないが故の自由度が感じられるところに、現在へと連なる「音楽的知識がなくても音楽を作る(デザインする)ことができる」アーティストの先駆的な役割をはからずも担っていたのではないかと思われます。
<Favorite Songs>
・「Sea Breeze」
柔らかい音色で刻んでいくイントロに淡々としたヴォーカルが乗るリゾートポップナンバー。Emulatorのサンプルボイスとボコーダーが上手く溶け合っており、そのPOPSとしての融合具合は細野晴臣のサンプラーよりも使い方には長けているといった印象です。
・「Modern Living」
ほかのテクノポップと比べれば地味とはいえTESTPATTERNとしては最もキャッチーでポップな部類に属する名曲。オリエンタルなフレーズが印象的な楽曲はPOPSとしての構成がしっかり成立しています。間奏のシンセソロも日本のテクノならではのフレーズです。
・「Catchball」
静かなイントロから徐々にリズムが加わっていき本編に移っていく構成が秀逸なインストナンバー。リズムが入ってからの生き生きとしたサウンドの雰囲気はこの楽曲のハイライトと言えます。特に足音をリズムに使うアイデアは彼らならではの自由な発想です。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセが核となっているだけに音色選択のセンスが鋭い)
・メロディ ★★ (ポップとはいえ余りにも普遍的でわかりやすいメロディ)
・リズム ★ (リズムボックスが刻む淡々としたリズムに驚きはない)
・曲構成 ★★ (前半歌モノ後半インストと分けたのが功を奏したのか?)
・個性 ★★ (イージーリスニングとしてシンセを癒しとして利用した)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「TPO1」 TPO
TPO

<members>
岩崎工:FairlightCMI・synthesizer・synthesizser programming・vocal
天野正道:FairlightCMI・synthesizer・synthesizser programming
福永柏:FairlightCMI・synthesizer・synthesizser programming
安西史孝:FairlightCMI・synthesizer・synthesizser programming
<electric instruments>
ROLAND System-700・ ROLAND Sytem-100M・ ROLAND Jupiter-8・ ROLAND SH-2・ ROLAND SH-3・ ROLAND Promars・ ROLAND RS-505・ ROLAND MC-8・ ROLAND MC-4・ ROLAND MC-202・ ROLAND DR-55・YAMAHA DX-7・PPG Wave 2.2・MOOG Libretation・HOHNER Clavinet D-6・FENDER Rhodes Piano・KORG CX-3・Mellotron 400S・OBERHEIM DMX・Fairlight CMI・APPLE II Plus・Street Electronics Speech Synthesizer
1.「DAWNING」 曲・編:安西史孝
2.「THE JET SET」 曲・編:片柳譲陽
3.「BREAKIN' UP (interlude)」 曲・編:安西史孝
4.「SUNDOG」 曲・編:天野正道
5.「SAFARI BAR」 曲・編:片柳譲陽・福永柏・安西史孝・岩崎工・天野正道
6.「NOON」 曲:福永柏 編:福永柏・片柳譲陽
7.「CAMACHO PREGUICOSA」 詞:岩崎工 曲・編:安西史孝
8.「TRAGEDY MONSTER」 曲・編:天野正道
9.「DORI TWISTED HER SMILE」 詞・曲・編:岩崎工
10.「TINGLE RINGING (interlude)」 曲・編:安西史孝
11.「TRAFFIC JAMS」 曲:片柳譲陽・福永柏 編:片柳譲陽・天野正道
12.「EYE IN THE NIGHT」 詞:菊池真美 曲・編:安西史孝
(CDのみ追加)
13.「JIVE MAN」 詞・曲・編:岩崎工
14.「ROUGE AU SOIR, BLANC AU MATIN」 曲・編:天野正道
15.「WEB OF TIME」 曲・編:安西史孝
<support musician>
菊池真美:vocal
片柳譲陽:FairlightCMI・synthesizer・synthesizser programming
produced by 片柳譲陽
engineered by 鈴木良博・大城健
● 轟くオーケストラヒット!フェアライトを日本で初めて導入した先進的クリエイター集団衝撃の1st
1980年初頭にフューチャリスティックなニューウェーブサウンドで確かな足跡を残したFILMSにてMC-8プログラミングを担当し共同プロデューサーを務めた本間柑治こと片柳譲陽率いるプロジェクトとして、筋金入りのシンセマニアでありプログレ志向の安西史孝、現在ではすっかり大御所現代音楽家となった天野正道、FILMSのキーボードであり後年はソロ活動のかたわらCM音楽でその名を馳せる岩崎工、CMやイベント音楽を手掛ける福永柏の4名によって結成されたのがTPOです。片柳譲陽の新プロジェクトとして安西と天野が参加した打ち込みラウンジユニット「GREEN」が前身のこのユニットは、当時最先端のサンプラー付シンセFairlight CMIを国内で最初に本格的に使用したことで有名ですが、そのようなことはこのユニットにとって些末な事実であり、彼ら4人(+1人)のクリエイターとしての才能が楽曲に十二分に発揮されたポップインスト集(若干歌モノあり)として評価される本作において彼らは世間に知られることになります。
ユニット名からも察せられるように当時シンセユニットの頂点を極めていたYMOの次を担うとされていたTPOですが、音楽的な幅広さでは確実にYMOを上回っていると思えるほどバラエティに富んだ楽曲を詰め込んだ本作では、オーストラリアに渡って使用法を学んできたFairlight CMIサウンドの核に据えつつ、アナログシンセでコクを付け加えた深みのあるシンセサウンドが楽しめます。しかし片柳のプロデュース力によって巧みにまとめてはいるものの、プログラミングに秀でプログレ的なシンセ偏執狂的側面が強調された安西楽曲、クラシカルな教養を基礎に貫禄のオーケストレーションインストを披露する天野楽曲、少々地味とはいえラウンジインストの黎明期を感じさせる福永楽曲、そして既にUKニューウェーブに呼応したエレポップ志向が目立った岩崎楽曲というように、個性が目立ち過ぎるほどであり、片柳を含めた5人の作品集といった趣でもあります。とはいえ統一されているのは全編シンセという共通認識であり、このテーマによる結束力がひしひしとこの作品から感じられます。YMOが日本における「テクノポップ」の先駆者と評されるならば、TPOはさしずめ「デジタル時代のシンセミュージック」の伝道者といったところでしょうか。
<Favorite Songs>
・「DAWNING」
当時にして強烈なオーケストラヒットによって度肝を抜かされる安西渾身のプログレインストナンバー。聴く者を驚かせるための要素をぎっしり詰め込んだ変拍子満載の目まぐるしい曲調に作曲者の執念めいたものが感じられます。
・「DORI TWISTED HER SMILE」
余りにニューウェーブ過ぎてCD盤には収録されなかった岩崎のソロ作「Meat The Beat」を既に彷佛とさせる歌モノポップチューン。Aメロのニューロマ感覚と転調してラテン風味に変化する変わり身の早さが岩崎らしいと思います。
・「EYE IN THE NIGHT」
這いずる回る高速シーケンスが心地良いGiorgio Moroder的エレクトロディスコチューン。なんないで派手なインストだけでなくこうしたポップナンバーをしっかり書けるのがさすが「うる星やつら」サントラで一斉を風靡する安西史孝のセンスといったところでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★★(Fairlightというよりもシンセ全体の緻密な仕事ぶりが◎)
・メロディ ★★ (聴きやすさを追求しているが少々難解なフレーズも)
・リズム ★★ (変拍子で驚かされる部分もあるが音色は総じてチープ)
・曲構成 ★★★ (ダンサブルとメロウな楽曲の振り幅もバランスがよい)
・個性 ★★★ (Fairlightの名を知らしめた歴史的作品として記憶に残す)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Phantasien」 小泉今日子
小泉今日子:vocal・voice

1.「連れてってファンタァジェン」 詞:安野ともこ 曲:細野晴臣 編:土屋昌巳
2.「Fairy Tale」 詞:小泉今日子 曲・編:土屋昌巳
3.「遅い夏」 詞:銀色夏生 曲:藤井尚之 編:土屋昌巳
4.「水のルージュ (Berlin Version)」
詞:松本隆 曲:筒美京平 編:土屋昌巳・中村哲
5.「Strange Fruits」 詞:小泉今日子 曲・編:土屋昌巳
6.「寝ながら書いたラブ・レター」
詞:銀色夏生 曲:土屋昌巳 編:土屋昌巳・中村哲
7.「ひどい顔して愛シテ」 詞:銀色夏生 曲:福岡ユタカ 編:土屋昌巳・中村哲
8.「この涙の谷間」 詞:銀色夏生 曲:関口和之 編:土屋昌巳
9.「あなたになりたい」 詞:銀色夏生 曲:福岡ユタカ 編:土屋昌巳
10.「サーチライト」 詞・曲:銀色夏生 編:土屋昌巳
<support musician>
土屋昌巳:guitars・synthesizer・bass
渡辺等:bass
川島BANANA:synthesizer
清水一登:synthesizer・acoustic piano・clarinet・organ
ヤン富田:steel drum
兼崎順一:trumpet
早川隆章:trombone
中村哲:sax
金子飛鳥:violin
佐伯(レイチ)玲子:chorus
福岡ユタカ:chorus
Eduard Meyer:voice
松武秀樹:synthesizer operate
directed by 田村充義
sound produced by 土屋昌巳
engineered by 高田英男
● 土屋昌巳「Life in Mirrors」の副産物?デジタルシンセに彩られたファンタジックな音世界
松田聖子・中森明菜に続く80年代アイドル第2世代の中でもトップランクを維持していた小泉今日子は、特に85年の「なんてったってアイドル」における開き直りとも言える快活イメージで新境地を開拓、賞味期限の短いアイドルの世界において息の長い人気を誇る基礎を築きつつありました。しかしリリースシングルが軒並み安定したランキングを保っていく絶頂期には、得てして突然変異的なアルバムが生まれるもので、とてもアイドルとは思えないような洗練されたポストニューウェーブサウンドによって、アイドルとしては先鋭的な感覚を持つ小泉ならではのクオリティが感じられる11枚目のオリジナルアルバムである本作がリリースされました。そのサウンドを支えるのは元一風堂であり、本作がリリースされた87年当時にはアルバム「Life in Mirrors」のリリースなど積極的なソロ活動期に入っていた土屋昌巳で、本作は彼のソロ活動の雰囲気が色濃く滲み出た、土屋ソロとの姉妹作と言える作品となっています。
いかにも80年代中期的なデジタル&メタリックなシンセ音色が強調されたサウンドを基本とした楽曲群のイメージはアルバムタイトル通りファンタジックな色合いが濃く出ていますが、サウンドプロデュースの土屋昌巳人脈によるBANANAや清水一登、ヤン富田といった余りアイドル作品では見られない曲者ミュージシャンの参加による雰囲気作りが功を奏しているように思われます。また、全編打ち込みのリズムを始め、緻密で存在感のあるプログラミングを聴かせるのが大御所松武秀樹で、独特の譜割で機械ならではの微妙なノリを演出しています。それにしても本作は楽曲自体が歌謡曲からかけ離れた変拍子&不思議音響のサウンドによるニューウェーブ色満載で、「Strange Fruits」「寝ながら書いたラブ・レター」「サーチライト」などはとてもアイドルソングに分類することができないプログレッシブな楽曲と言えるでしょう。作曲陣も土屋のほか細野晴臣やPINKの福岡ユタカ、作詞は全編銀色夏生というなどソレ系の人脈で固められ、アイドルソングという範疇を軽く飛び越えたアーティスティックで統一感が感じられる、この作品以降も貪欲に流行を取り入れていく小泉今日子の作品群の中でも最高傑作とも言える名盤であることに疑いありません。
<Favorite Songs>
・「Fairy Tale」
複雑で計算され尽くしたリズムトラックが楽曲を引っ張るデジタルポップチューン。金子飛鳥のバイオリンとオリエンタルを意識したフレーズは、80年代前半は東洋志向が強かった土屋プロデュースならではのものです。
・「水のルージュ (Berlin Version)」
シングルバージョンでは大村雅朗の硬質リズムが特徴であった「水のルージュ」を土屋ソロを生き写しにしたようなサウンドに生まれ変わらせたアルバムバージョン。跳ねるリズムとブラスセクションの活躍、自由自在なギターソロなど土屋ソロアルバム「Life in Mirrors収録の「Stay in Heaven」を彷佛とさせます。
・「ひどい顔して愛シテ」
もはやPINKとのコラボと言ってもよいほどPINK色の強い福岡ユタカ作曲のデジタルファンクナンバー。独特の南国を思わせる明るいダンサブル性と福岡ユタカのエスニックコーラス、縦横無尽に暴れ回るギターなどサウンドの自由度が尋常ではありません。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (金属的な音色が中心ながら随所のギターが効果的)
・メロディ ★★★ (歌謡曲としてはポップ色は後退しサウンド重視に)
・リズム ★★★★★ (打ち込みながら既存の音色に満足しない個性的な音)
・曲構成 ★★★★ (作詞の世界観も含めトータルプロデュースに優れる)
・個性 ★★★★ (アイドル作品とは思えない夢見のファンタジー世界)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「フルーレ」 島崎路子
島崎路子:vocal

1.「クロッカス・ヒルで逢いましょう」 詞:戸沢暢美 曲:遠藤京子 編:清水信之
2.「ガールフレンド」 詞:森本抄夜子 曲:和泉常寛 編:米光亮
3.「悲しみよりもそばにいる」 詞:戸沢暢美 曲:辻畑鉄也 編:井上鑑
4.「世界でいちばんちいさな海」 詞:森本抄夜子 曲:遠藤京子 編:杉山卓夫
5.「愛をひとりにしないで」 詞:戸沢暢美 曲:小森田実 編:清水信之
6.「さざ波のアラベスク」 詞:戸沢暢美 曲:桐ヶ谷俊博 編:杉山卓夫・桐ヶ谷俊博
7.「いつも心に花束を」 詞:戸沢暢美 曲:井上ヨシマサ 編:武部聡志
8.「グッドラック・チャーム」 詞:平出よしかつ 曲:小森田実 編:杉山卓夫
9.「いつか見たそよ風」 詞:イノ・ブランシュ 曲:遠藤京子 編:米光亮
10.「粉雪感傷」 詞:戸沢暢美 曲:川上明彦 編:米光亮
11.「十二月の窓辺~Silent My Love~」 詞:平出よしかつ 曲:川上明彦 編:清水信之
<support musician>
清水信之:all instruments
杉山卓夫:all instruments
米光亮:all instruments
今 剛:electric guitar
鳥山雄司:electric guitar
松原正樹:electric guitar
渡辺格:electric guitar
笛吹利明:acoustic guitar
高水健司:electric bass
中村幸司:electric bass
美久月千晴:electric bass
青山純:drums
江口信夫:drums
井上鑑:keyboard
武部聡志:keyboard
永田一郎:acoustic piano
包国充:sax
八木のぶを:harmonica
斎藤毅グループ:strings
木戸泰弘:background vocals
桐ヶ谷俊博:background vocals
国分友里恵:background vocals
東郷昌和:background vocals
中山みさ:background vocals
比山貴咏史:background vocals
広谷順子:background vocals
安倍等:synthesizer operate
飯田高広:synthesizer operate
石川鉄男:synthesizer operate
大竹徹夫:synthesizer operate
鈴木浩之:synthesizer operate
森達彦:synthesizer operate
all lyrics produced by 戸沢暢美
mixing engineered by 松岡義昭・田中信一
recording engineered by 松岡義昭・田中信一・宮内広・平瀬公一・伊藤日出男・家守久雄・吉井聡
● 繊細な歌声を見事にマッチさせたメランコリックな世界観!アイドル史上に残る隠れた名盤
富士フィルム主催のコンテストにより全国の並みいる高校生の中から選ばれた島崎路子は、1988年にシングル「悲しみよりもそばにいる」で歌手デビューを果たします。その純情可憐なルックスと消え入りそうな繊細な歌声によるイメージを崩さないナチュラルな楽曲は一部では評価されたものの、アイドル飽和の時代も相まって一般的な人気には至りませんでした。その後2nd「愛をひとりにしないで」3rd「いつも心に花束を」と立て続けにシングルをリリースし、彼女にとって怒濤の88年を彼女にとって唯一のアルバムである本作で締めることになります。前述のシングル3曲を含みながらコンセプトアルバムとも解釈できるほどの完璧な統一感をもったこの作品は、多彩な作家陣とそれを支える豪華なスタジオミュージシャン達によって大胆かつ丁寧に作られており、少し頼りなげな島崎のパーソナリティを補って余りある仕上がりを見せています。
ナチュラルな少女観を創り出す、後の90年代アイドルの先鞭をつけたような戸沢暢美を始めとする作詞陣の仕事も素晴らしいですが、TECHNOLOGY POPS的にはやはり作編曲陣の素晴らしい仕事ぶりに目を向けざるを得ません。特に目立つのは編曲陣の充実ぶりで、数々の名作を生み出した80年代を代表するアレンジャーである清水信之や、久保田利伸仕事などのファンキーなアレンジが光っていた杉山卓夫、そして80年代末から90年代にかけて打ち込み系アイドルソングでその計算された緻密な構成力で辣腕を振るう米光亮らの、良くも悪くもB級アイドルの作品でありながら(それだからこそ)一切手を抜かないクオリティの高いサウンドデザインは、その他のアイドル作品の追随を許さない存在感を放っています。森達彦や石川鉄男等プログラマー達のセンスの良さもファンタジック感を創り出すために一役買っており、アレンジャーとの相性も抜群です。そして本作の最大の特徴はなんといってもその迫力のあるパワフルなドラムでしょう。青山純と江口信夫が叩き出す執拗に畳み掛ける強烈なエフェクティブドラムは、歌い手が限りなく繊細で透明感のある声質であるのを逆にコントラストにして、結果的に全体的なサウンドの分離の良さに貢献しているように感じられます。そしてここまで派手なサウンドにかかわらず島崎路子の存在感が埋もれていないのは、彼女の真摯な歌声の賜物です。歌い上げるだけではないこの作品に賭ける思いが伝わってくるのです。結果的に本作はそのクオリティの高さから知る人ぞ知る時代に埋もれた傑作アルバムとなりました。
この88年をもって島崎路子の歌手活動を終了してしまいはからずも一瞬の輝きを放つだけにとどまってしまいましたが、このような名盤を生み出しただけでも価値のあることだと思います。このような名盤がいまだ再発されていないことは大変惜しいことですので、ぜひボーナストラックでのリマスタリング盤での再発を希望します。
<Favorite Songs>
・「クロッカス・ヒルで逢いましょう」
爽やかなシンセイントロから一気に力強いリズムに引っ張られていくアルバムのトップを飾る名曲。清水信之アレンジということで繊細かつ熟練したシンセサウンドと歌声に反比例した爆音ドラム音色に圧倒されます。
・「いつも心に花束を」
力強いリズムによる派手なイントロがこれまでのシングルとは一線を画す3rdシングル。Aメロからクールな印象を与える新境地のイメージですが、サビではメジャーに転調して期待を裏切らずしっかりまとめています。それにしてもこのドラム、これでもかの圧力と計算されたパターンがものすごいです。
・「粉雪感傷」
「いつも心に花束を」のカップリングに収録された島崎楽曲にしてはハードなポップチューン。淡々としたシンセベースによる静かなAメロから耳に突き刺さるシンセとギターが激しいBメロ、そして転調して明るめながら力強いリズムとリズムギターにテンションが上がるサビという構成に無駄がなく、米光亮の良質なアレンジセンスが感じられます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (特に計算されたシンセ系プログラミングの質が高い)
・メロディ ★★★★ (下手にはじけず落ち着いたキャッチーなメロが秀逸)
・リズム ★★★★★ (アイドルソングの中でも切れとパワーは最高峰)
・曲構成 ★★★★★ (島崎自身による曲順構成はストーリー性が抜群)
・個性 ★★★★ (80年代アイドルの中でも群を抜くファンタジック感)
総合評点: 10点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Chorus」 erasure
erasure

<members>
Andy Bell:vocals
Vince Clarke:synthesizers
1.「Chorus」 Vince Clarke/Andy Bell
2.「Waiting For The Day」 Vince Clarke/Andy Bell
3.「Joan」 Vince Clarke/Andy Bell
4.「Breath Of Life」 Vince Clarke/Andy Bell
5.「Am I Right?」 Vince Clarke/Andy Bell
6.「Love To Hate You」 Vince Clarke/Andy Bell
7.「Turns The Love To Anger」 Vince Clarke/Andy Bell
8.「Siren Song」 Vince Clarke/Andy Bell
9.「Perfect Stranger」 Vince Clarke/Andy Bell
10.「Home」 Vince Clarke/Andy Bell
produced by Martyn Phillips
engineered by Dave Bascombe
● 洗練されたプログラミングにポップなメロディの融合が成功したエレポップユニット進化の名盤
80年代後半から90年代にかけてUKチャートを賑わしながら日本ではいまいち知名度に欠けるエレポップユニットerasureは、「Sometimes」「A Little Respect」などに代表されるこだわりのシンセプログラミングに耳に馴染みやすいポップなメロディで人気を博しているユニットで現在も活動中です。86年のデビュー以来毎年のようにアルバムをリリースするなど精力的に活動し、90年代初頭には本国イギリスにおいてトップアーティストとして君臨していた彼らですが、1年ほど間をおいた後リリースされた本作は、これまでとはひと味違ったピュアな電子音に彩られたサウンドに進化しており、これまでの作品とは格の違いが感じられるクオリティの高い1枚となっています。
もともとDepeche Modeのサウンドを一手にになっていたerasureのコンポーザーVince Clarkeは偏執的なシンセマニアでもありリズム音色までもシンセで作りたがるこだわりの持ち主ですが、80年代のerasureはよくも悪くもデジタリックな硬質なリズムとサウンドであり、どちらかといえばメジャー調のポップで聴きやすいメロディに対する評価が高かったように思われます。しかし本作ではまずアナログシンセならではのレゾナンス剥き出しのシンセ音を惜しげもなく全開にして、スペイシーといえるようなフューチャリスティックなサウンドを展開するなど、ワンランク上のエレポップに仕上げています。もちろん「Love To Hate You」などのポップなフレーズを生かしたPOPSとしての楽曲ははそのまま維持していますが、erasureとしては本作を転機として一気にシンセサウンド重視に舵を切った感があります。そして、本作は後年リリースされる「I Say, I Say, I Say」や「ERASURE」における空から降り注ぐようなピュア電子サウンドの礎となった重要作品と言えるのです。
<Favorite Songs>
・「Breath Of Life」
シンプルかつ淡々としたシーケンスのストイックな音色が素晴らしい楽曲。Depeche Modeのようなマイナー調のメロディですが全体的に剥き出しの軽快でキュートなシンセ音色を多用するなどVince節は失われていません。サビのフレーズ構成にも無駄がありません。
・「Love To Hate You」
マイナー調とはいえどこまでも覚えやすいポップなメロディが特徴のダンスナンバー。随所に歓声が導入されるなどいかにもライブでの盛り上がりを意識した仕上がりで、シングルカットもうなずけます。リズムのみになる間奏前の細切れエフェクトも楽しいです。
・「Home」
緻密なプログラミングによるシンプルな電子音が美しいスペースロマンチックなバラード。流れ星のようにきらびやかな効果音に彩られた広がりのあるサビのフレーズ一発だけでこの楽曲は持っていってしまいます。
<評点>
・サウンド ★★★★★(アナログシンセの特性を生かしたピュアな電子音は秀逸)
・メロディ ★★★ (とにかく覚えやすいポップ性がこのユニットの魅力)
・リズム ★★ (プログラミングされたチープなリズムは90年代っぽい)
・曲構成 ★★★ (ダンサブルとメロウな楽曲の振り幅もバランスがよい)
・個性 ★★ (電子音にストイックになっていくerasureの転機的作品)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Megatrend」 EUROX
EUROX

<members>
長谷川勇:vocals・background vocals
関根安里:keyboards・violin・sequence programming・background vocals
栗原務:guitar・background vocals
岡野治雄:bass・taurus・background vocals
1.「MEGATREND」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
2.「CHEERIO」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
3.「LONGING FOR TRAVEL」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
4.「WHERE YOU ARE」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
5.「WHAT IS YOUR WISH?」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
6.「DREAM OF」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
7.「SHINING TIME」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
8.「ATTITUDE」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
9.「PLEASE WAIT FOR ME!」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
10.「ADULATION」 詞:長谷川勇 曲・編:EUROX
<support musician>
土屋敏寛:drums
池田だめお:synthesizer operate
produced by EUROX
engineered by 石崎信郎
● 熱唱ボーカルと執拗なオケヒット!中森明菜「不思議」のアレンジで脚光を浴びたプログレバンドの意欲作
古くは銀河漂流バイファムの主題歌が知られているTAOのメンバーとして活動していた関根安里(keyboard,Violin)、岡野治雄(bass)、野澤竜郎(drums)の3名が栗原務(guitar)と根本進(vocal)を迎えて結成されたのがEUROXです。CMソングに起用されたでデビューシングル「COLD LINE」や機甲界ガリアンの主題歌などで、そのTAOから継承された英語混じりのプログレロックサウンドで聴き手を魅了していましたが、フロントマンの根本とリズムを支えた野澤が脱退、ヴォーカルを長谷川勇に交代して新たなスタートを切ったのが1980年代後半に差し掛かった頃となります。それから中森明菜絶頂期の問題作「不思議」において共同プロデューサーに抜擢されたEUROXは、文字通りの不思議音響+ゴシック色の強いサウンドでその実力の一端を垣間見せることとなり、その勢いに乗じて遅れてきた1stアルバムである本作をリリースすることになります。
ヴォーカル交代後初の作品となる本作ですが、前任者とは好対照の熱唱型のよく伸びる若い高音ヴォーカルを支えるニューウェーブを通過しつつもプログレ的な味わいを残したEUROXサウンドが健在です。彼らの代名詞ともいえる関根のバイオリンもしっかりフィーチャーされており、またつかみどころのない岡野のベースフレーズとともに本作で最も活躍している栗原のテクニカルなギターなど各メンバーの演奏力を再確認できる魅力が詰まっている作品です。そして80年代後半らしく非常に目立つのが過剰なオーケストラヒットで、「MEGATREND」や「DREAM OF」等での大胆な使用は気持ちよいほどの潔さにあふれています。もちろんただ演奏力にまかせるだけでなくアニメの主題歌を担当していた彼らだけあってPOPSとして成立させるほどのメロディ心を持っている部分も見逃せません。このポップ性があってこそ派手でテクニカルなサウンドが生きてくるのだと思います。本作の素晴らしいサウンド構築ぶりは中森明菜「不思議」における大胆な音処理と独特の世界観をサポートした力量が本物であるという確信に至らしめました。このアルバムはそれほどの完成度を持つ作品と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「DREAM OF」
パワフルなオケヒットに先導されるイントロが迫力十分の楽曲。大陸的な広がりのあるメロディとシンセによるスケールの大きいサウンドが特徴です。十八番である間奏のバイオリンソロは圧巻です。
・「SHINING TIME」
ゆったりとしたオリエンタルイメージの前半とリズミカルで攻撃的な後半とのギャップに驚かされるプログレ魂が炸裂した楽曲。特に後半の過剰なシンセブラスと苛烈で複雑なリズムワーク、そして畳み掛ける執拗なオケヒット、ファンキーなギター&ベース、シャウト&熱唱スタイルのヴォーカルなど聴き所満載です。
・「PLEASE WAIT FOR ME!」
メタリックな打撃音で始まるスピード感あふれるリズムで突っ走る本作随一のポップナンバー。中森明菜「Wait For Me」のセルフカバーですが、原曲よりもよりキレがあり過激に処理されています。流れるようなギターソロも違和感なく溶け込んでいます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (各パートのキレのある貫禄の演奏力はただものではない)
・メロディ ★★ (プログレにありがちなポップ性の軽視は見られない)
・リズム ★★★ (ノイズ成分たっぷりのスネア音色は本作の個性でもある)
・曲構成 ★★ (出来のよい楽曲と地味な楽曲の振る幅が少し大きいか)
・個性 ★★ (高音ヴォーカルはプログレ臭さを助長させるが・・)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「空耳の丘」 遊佐未森
遊佐未森:vocal・chorus・marimba・sakaphone・piano・chorus arrangement

1.「空耳の丘」 曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
2.「窓を開けた時」 詞・曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
3.「風の吹く丘」 詞・曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
4.「旅人」 詞・曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
5.「星屑の停留所」 詞:工藤順子 曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
6.「川」 詞・曲:遊佐未森 編:外間隆史・遠山淳
7.「地図をください」 詞:工藤順子 曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
8.「日曜日」 詞:工藤順子 曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
9.「ひまわり [Napraforgo]」 詞:工藤順子 曲:成田忍 編:外間隆史・遠山淳
10.「夢のひと」 詞・曲:太田裕美 編:外間隆史・遠山淳
11.「Run in the Rain」 詞:工藤順子 曲:遊佐未森 編:外間隆史・遠山淳
12.「空耳の丘 (Repraise)」 曲:外間隆史 編:外間隆史・遠山淳
<support musician>
成田忍:electric guitar
古賀森男:acoustic guitar・electric guitar
沖山優司:bass
中原信雄:bass
渡辺等:bass・mandolin
青山純:drums・percussions
鈴木厚志:piano
鶴来正基:piano
外間隆史:synthesizer・recorder・chorus arrangement
清水一登:clarinet
高橋章:recorder
橋本仁:quena
大橋功:sakaphone
福岡知彦:sakaphone
栄田嘉彦:violin
斉藤ネコ:violin
山田雄司:viola
藤森亮:cello
遠山淳:computer programming・synthesizers・recorder・chorus arrangemen
produced by 福岡知彦・外間隆史
sound produced by 外間隆史
mixing engineered by Nigel Walker
recording engineered by 河合十里
● 青山純のドラムがしっかり支えるノスタルジーサウンド!外間色を前面に押し出した出世作
シングル「瞳水晶」で不思議ノスタルジー系シンガーとしてデビューした遊佐未森は、同タイトルの1stアルバムをリリース、高野寛や鈴木祥子などの新感覚派POPSと呼ばれたアーティストの1人として期待されていましたが、3rdシングル「地図をください」がCMソングに抜擢され、早速一般的にも注目を浴びることになります。このシングルを収録した2ndアルバムである本作は、童話的なメルヘンティックな世界観が強調され、彼女がライブ活動を展開する際に率いるバックバンド「ソラミミ楽団」を意識したアルバムタイトルが表す通り、彼女の音楽性に対する方向性を決定づけた最重要作品として位置づけられていると言えるでしょう。
4-D・URBAN DANCEの成田忍プロデュースであった1stアルバムでは、エキセントリックな打ち込み&ギターサウンドが目立っていましたが、本作ではデビュー時から彼女の世界観をプロデュースしていた元FILMSの外間隆史が担当、音は普遍性を増したもののポップ性と楽曲の完成度が増したこともあり、遊佐が持つノスタルジックな属性を生かした印象的な楽曲が多く収録された形となっています。楽曲の本質は懐かしくほのぼのした雰囲気のものですが、本作における最大のポイントは複雑かつパワフルに、しかも緻密に計算された青山純のドラムにほかなりません。特に「風の吹く丘」「旅人」と続く惜しみなくフィルインを豪快に入れながらキレまくるリズムフレーズは本作のハイライトであり、「星屑の停留所」においてもNigel Walkerによってミキシングされた抜けの良い音色が心地良く感じられます。そして裏を支える遠山淳のプログラミングの技はアコースティックとデジタルが融合したファンタジックなサウンドには欠かせない要素です。この青山のドラムと遠山のプログラミング、そして外間によって引き出されたメルヘンノスタルジーな魅力が噛み合い、さらにアルバム全体にストーリー性を感じさせる構成の妙も相まって、遊佐未森というアーティストの進むべき道を提示した作品に仕上がっているのです。
<Favorite Songs>
・「風の吹く丘」
タイトル通り風通しの良いコーラスが印象的な楽曲。とはいえ最もインパクトが強いのはなんといっても青山純のドラミングのキレの良さであり、複雑なリズムをスピード感を失わず正確に刻むテクニックに圧倒されます。
・「星屑の停留所」
遊佐お得意のノスタルジックな世界観が全開の名曲。開放感満点の高音を生かしたサビに心を奪われがちですが、ここでもドラムの安定感が素晴らしく、ただ懐かしく温かい楽曲とはいかない強烈な個性を持っています。
・「ひまわり [Napraforgo]」
本作中唯一の成田忍楽曲ということで1stアルバムの匂いをほのかに感じる楽曲。しかしアレンジは外間&遠山コンビなので世界観は他の楽曲に合わせる形で崩していません。キレのよいカッティングギターに成田テイスト感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★ (こうした楽曲でのデジタルの積極的な活用が嬉しい)
・メロディ ★★ (少々似たような楽曲を集め過ぎたかもしれない)
・リズム ★★★★★ (青山純参加のPOPS作品の中では最高のプレイの1つ)
・曲構成 ★★★ (インストで前後を押さえたコンセプト作品として秀逸)
・個性 ★★ (遊佐未森としてのイメージを決定づけたこれぞ代表作)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「LIVING FOR THE SPANGLED MOMENT」 Bill Nelson
Bill Nelson:vocals・electric guitar・acoustic guitar・keyboards・marimba・drums・percussion・bass

1.「HEART AND SOUL」 Bill Nelson
2.「LIVING FOR THE SPANGLED MOMENT」 Bill Nelson
3.「FEAST OF LANTERNS」 Bill Nelson
4.「ILLUSIONS OF YOU」 Bill Nelson
5.「WORD FOR WORD」 Bill Nelson
6.「FINKS AND STOOGES OF THE SPIRIT」 Bill Nelson
7.「NIGHTBIRDS」 Bill Nelson
<support musician>
Iain Denby:bass
Andy Davis:keyboards
Preston Heyman:percussion
Dick Morrisey:sax
Ian Nelson:sax
William Gregory:soprano sax
produced by Bill Nelson
engineered by Steve Nye・Bill Nelson・Leon Phillips・John Leckie
● CBSでのPOP路線をさらに追求!卓越したメロディにもエレクトロな心を忘れない名作ミニアルバム
80年代初頭にソロへ転向した後、「Love That Whirls」「Chimera」といったYMO系テクノポップ・ニューウェーブフリーク垂涎の名盤をリリースし続けた敏腕ギタリストBill Nelsonは、現在に至るまでコンスタントに作品をリリースし続ける恐るべき多作ぶりを発揮していますが、そのほとんどに日本国内でのリリースがなく、最近ではネット通販の充実や再発ラッシュなどにより比較的入手しやすくなったものの、YMOのサポートによる知名度からするとそのソロ活動の実態は知る人ぞ知るものであったと思われます。今回取り上げるのは自身が設立しソロ作品をリリースしてきたCocteauレーベルから一時離れ、大手レコード会社のCBSと契約した作品の中でも、アルバム「Getting The Holy Ghost Across」よりもエレポップ性を大きく打ち出したミニアルバムです。
「Getting The Holy Ghost Across」がこれまでの実験的でキレのある音色と持ち前の明るさの目立つメロディが持ち味であった彼の作品と比べると、じっくり聴かせるタイプの楽曲が多く少々地味な印象が強かったのですが、この12インチ仕様のミニアルバムでは、80年代前半の楽曲の賑やかさとは比べられないもののシンセブラスやサックスを利用した少し大人なエレポップへ進化した姿を見ることができます。ギターシンセやE-BOWを駆使した音色は影を潜めていますがシンセフレーズのセンスは健在で、高橋幸宏とのコラボ(Neil Youngのカバー「Helpless」など)で培ったロマンティックなエレポップスタイルをそのまま80年代後半へ持ち込んだような安定感のあるAORシンセポップロックに仕上がっています。この作品の後は自身のCocteauレーベルに戻り、時々メジャーに籍を置いてはPOPSからギターインストに至るまで多彩な作品群をリリースしていきますが、TECHNOLOGY POPSとして納得のいくクオリティはここまでとなります。
<Favorite Songs>
・「HEART AND SOUL」
シンセブラスがゴージャス感を引き立てる大人のエレポップ。楽曲の持つ明るい雰囲気は80年代そのもの。控えめな音色のテクニカルなギターソロとAOR的サックスソロがこれまでのBill楽曲からの新境地を見せています。
・「LIVING FOR THE SPANGLED MOMENT」
メランコリックな曲調のミディアムバラード。この楽曲においてもシンセブラスやいかにもデジタルな鐘の80年代的音色が満載です。アルペジオに乗るロマンティックなAメロがこの楽曲の聴き所でしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (他のエレポップの違いは1つ1つの音色とリズム感)
・メロディ ★★ (1~2曲目のロマンポップ感覚は売れ線を狙ったが・・)
・リズム ★★ (全編打ち込みとはいえリズム感覚は衰えてはいない)
・曲構成 ★ (この曲数でインスト2曲は必要なくもっと歌モノを)
・個性 ★★ (持ち前のポップ性をよく発揮したもののマンネリ感も)
総合評点: 7点
近年見事に再発。ボーナストラックに本作の楽曲が全て収録。
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「散歩前」 村上ユカ
村上ユカ:vocal・keyboards・melodion・computer programming・chorus

1.「ブランコ」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
2.「moon night holograph」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
3.「恋はルリ色 (L' Amour Est Luri)」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
4.「banana moon」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
5.「野ばら」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
6.「遠い瞳」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
7.「散歩前」 曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
8.「padoma」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
9.「はちみつ」 詞・曲:村上ユカ 編:熊原正幸・村上ユカ
10.「Spiral wind」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
11.「morn tale」 詞・曲:村上ユカ 編:田尻光隆・村上ユカ
<support musician>
熊原正幸:keyboards・computer programming
田尻光隆:keyboards・computer programming
折原信明:maracas
曽禰荒助:hi-hat・cymbal
produced by Think Sync Integral(寺田康彦・矢島潤一・緑川千佳子・高原裕介・杉本健・市川裕美)
mixing engineered by 寺田康彦
recording engineered by 寺田康彦・寺山紀幸・杉本健
● エレクトリックな童話的世界観?和洋折衷の感覚を呼び起こす北方の歌姫デビュー作
古き良きテクノポップの90年代解釈「Mezo Techno」を標榜して、エンジニア寺田康彦が中心となって設立されたレーベルThink Sync Integralの第1弾アーティストとしてマキシシングル「はちみつ」でデビューした北海道出身の村上ユカは、遊佐未森と矢野顕子に影響されたと思われる素朴な音楽性と何のてらいもなくシンセプログラミングをこなす現代的アーティストな側面をあわせもったアーティストであり、じゃ毛デザインも手掛けるマルチな才能を持つシンガーソングライターです。テクノとPOPSの中間点を目指したとおぼしき「Mezo Techno」に見事にはまったこの北方の歌姫は早くもデビューアルバムである本作においてその可能性をまざまざと発揮、独特の和洋折衷な童話的世界観を積極的にアピールした好作品となっています。
その彗星のごとく現れた歌姫の楽曲は確かな光を放ちつつもいまだ粗さの目立つ印象でしたが、楽曲の魅力を保ちつつ緻密に交通整理を施したサウンドに仕立て上げているのは共同アレンジャーとしてクレジットされている田尻光隆です。最近はアニメ「アスラクライン」の音楽を担当するなど舞台やドラマ等のサウンドトラックを手掛ける彼のシンセオーケストレーションは、シンセならではの独特な雰囲気を醸し出し、ともすればチープになりがちな村上楽曲の縁の下から支えています。頼りになる相棒を得た村上はこのストーリー性のある本作において持てる力を注ぎ込み、「ブランコ」「padoma」等のテクノポップ直系の打ち込みシンセサウンドの楽曲を基調に、「恋はルリ色」のようなポエトリーリーディングや「banana moon」で聴けるゆったり癒しのラップ?、そしてダビング弾き語りな「遠い瞳」といったノスタルジーPOPSを交えつつも、ちょっと悪戯っぽくキュートな地声と遊佐未森風の高音ファルセットヴォーカルを駆使して、遊佐や矢のとは違った独自の和洋混在・過去未来を行ったり来たりするような個性的な音楽性で勝負していこうという気概が見せています。1stアルバムは得てしてアマチュア活動の集大成的な作品になることが多いのですが、本作もそのような面は否定できないものの、持ち味を生かしつつ今後に期待を抱かせる秀逸な作品であることに疑いはありません。
<Favorite Songs>
・「ブランコ」
ナチュラルシンセポップファンという方々がいるかはわかりませんが、そういったタイプのファンの心を見事につかんだ村上ユカの代表曲。シンセドラムの音と控えめなギター音色、そして流れ星の音が隠し味となっていますが、無駄のないメロディのセンスには頭が下がります。ラストの大団円は村上ソングの十八番でしょう。
・「野ばら」
教会っぽい荘厳なイントロとバリバリにプログラミングされた本編とのギャップが魅力の名曲。音程を激しく行き来するキャッチーなサビが特徴ですが、泣きの入ったコード感覚のオーケストレーションに乗る後半のサビが2段変速よろしく転調する部分が聴き所です。
・「padoma」
本作の中でも最もスペイシーテクノなポップソング。ノスタルジックさが売りの1つである村上楽曲の中でも近未来感、宇宙感を漂わせるテクノ歌謡です。上昇するアルペジオとAメロの8拍目、サビの4拍目のスネア音色にテクノを感じますw
<評点>
・サウンド ★★★★ (ナチュラルが売りと思いきやシンセへのこだわりが◎)
・メロディ ★★★★ (弾き語りでも通用する懐かしさを感じるメロディ)
・リズム ★★★ (リズム音色の貫禄はさすがの寺田エンジニアリング)
・曲構成 ★★★★ (持てるパターンをつぎ込みながら見事に世界観を統一)
・個性 ★★★ (遊佐&矢野らの系譜を継ぎながら隙間を縫う立ち位置)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「jellyfish sensation」 jellyfish
jellyfish

<members>
石崎智子:vocal・keyboard・computer programming・rap・chorus arrangement・vocal arrangement
石垣三詠:vocal・KORG MS-20・tambourine・chorus・background vocal・rap
山川佐智子:vocal・klaxon・theremin・agogo・castanets・guiro・ukulele・maracas・bongo・toy piano・rainstick・background vocal・rap
1.「jellyfish sensation」 詞:石垣三詠 曲:石崎智子 編:増山龍太
2.「マーメイド」 詞:石垣三詠 曲:石崎智子 編:ケンカツマタ・石崎智子
3.「bambi walk -her incredible map」 詞:石垣三詠 曲・編:イシガキアトム
4.「なつのうた」
詞:増山龍太・Matthew Forrest 曲:増山龍太 編:増山龍太・三井ゆきこ
5.「luv vibration 00」
詞:石垣三詠 曲:イシガキアトム 編:イシガキアトム・石崎智子
6.「Do you love me?」 詞・曲・編:石崎智子
7.「満月の瞳」 詞:石垣三詠 曲:清水太郎・石崎智子 編:清水太郎
8.「egare en les premier jours de lete」 詞:石垣三詠 曲・編:イシガキアトム
9.「jellyfish girl」 詞・曲:石崎智子 編:ケンカツマタ・石崎智子
10.「space☆gigolo」 詞:石垣三詠 曲・編:石崎智子
11.「星の輝く夜に」 詞:石垣三詠 曲・編:イシガキアトム
12.「snow white ("Secret Garden" Version)」 詞:石垣三詠 曲・編:石崎智子
13.「snow white ("Popmagic Meets Humining" Version)」
詞:石垣三詠 曲・編:石崎智子
<support musician>
渡辺倫子:vocal
増田秀生:electric guitars・acoustic guitars
吉岡勲:sampled bass
イシガキアトム:Prophet5・organ・piano・vocoder・computer programming・background vocal
三井ゆきこ:keyboards・strings arrangement
Matthew Forrest:rap
ケンカツマタ:computer programming
清水太郎:computer programming
増山龍太:computer programming
produced by 増山龍太・ケンカツマタ・イシガキアトム・石崎智子・清水太郎・石垣三詠
engineered by 増山龍太・ケンカツマタ・イシガキアトム・清水太郎・石崎智子
● テクノにこだわらず多様なジャンルのエッセンスを取り込んだアイドルPOPSを展開した名盤2nd
90年代末を密かに席巻したエレクトリックなPOPSをこよなく愛する女性3人組jellyfishは、ニューウェーブリバイバルの波から微妙にズレた形で、テクノポップ愛好家の中で確かな人気を誇っていたポップグループでした。1998年にリリースされた1stアルバム「jellyfish」ではテクノポップや渋谷系、そしてアイドルPOPSを通過してきた当時では珍しい方であった彼女らの音楽性が詰まった好作品でしたが、20世紀最後を飾る2000年、さらに楽曲を充実させた形で2ndアルバムである本作をリリースします。リーダー格である石崎智子のメロディ&サウンドセンスと女性ならではの説得力がある石垣三詠が描く歌詞世界、なくてはならない山川佐智子の個性的なキャラクターが、パワーアップしたサウンドによって十二分に引き出されており、彼女らにとって渾身の代表作と言えるアルバムです。
石崎自身がアレンジも手掛けるマルチなガールズユニットであるjellyfishですが、前作に引き続きブレーンとなる作編曲家陣は健在で、増山龍太やイシガキアトム、清水太郎といった前作からのクリエイター達に加え、テクノユニットARCHE TYPEやIDOL TAXIで活動していた不思議コラージュ職人ケンカツマタも加わり、さらに幅が広がり奥行きを感じさせるサウンドに進化しています。彼らのインディーズながら職人芸的な匠のアレンジ力に支えられながらあくまでテクノ歌謡的なPOPSにこだわる彼女らの志向は当時こそまだまだメインストリームからは離れたものでしたが、現在Perfumeに代表されるエレクトロガールズグループが隆盛を誇っていることを考えると、登場が早過ぎたのかもしれません。とはいえ、彼女らのシンセ使いは(特に石崎楽曲では)限りなくキュートで、その柔らかさが現在で言うところの「テクノポップ」にはない要素であり、良い意味でのチープさと泣きのメロディを兼ね備えたjellyfishのようなグループはこの時期だからこそ再評価されるべきではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「なつのうた」
YMOカルトQ出演でも名を知られるdiet musicの増山龍太が手掛けた哀愁のサマーソング。もやっとしたエレピ調の音色と多彩なタイプのギターサウンド、後半の転調で盛り上がるサビのフレーズ、シャッター音によって切り替わるカットアップと凝った構成に気合いが垣間見えます。
・「星の輝く夜に」
ボサノバ調で流れ星が飛び交うような癒しエレクトロバラード。広がりのあるシンセアレンジにクールで美しいサビ&コーラスはセンス抜群、作編曲のイシガキアトムの素晴らしい仕事ぶりが光るいわゆる「突き抜けた」名曲です。
・「snow white ("Popmagic Meets Humining" Version)」
なんと細川ふみえをトリビュートしたというどこまでもキュートなシンセポップ歌謡。わざわざ細川ふみえの声質と似てる渡辺倫子をヴォーカルに迎える徹底ぶりに恐れ入ります。柔らかいシンセパッドと跳ねるレゾナンスリズム音がキュート感の源でしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセを多用するがテクノ的というよりは全うなPOPS)
・メロディ ★★★ (何曲か飛び抜けたキラーソングを配置し実力を見せる)
・リズム ★★ (全編打ち込みのリズムだが時代に沿ったのか軽過ぎる)
・曲構成 ★★ (中盤に少々中だるみするが名曲群が最初と最後を固める)
・個性 ★★★ (テクノ歌謡3人組の先駆け的なグループとして名を残す)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「PSYCHO-DELICIOUS」 PINK
PINK

<members>
福岡ユタカ:vocal・guitars
岡野ハジメ:bass・guitars
矢壁アツノブ:drums
ホッピー神山:keyboards
スティーブ衛藤:percussion
渋谷ヒデヒロ:guitars
1.「BODY AND SOUL」 詞:宇辺セージ 曲:福岡ユタカ 編:PINK
2.「NAKED CHILD」 詞・曲:福岡ユタカ 編:PINK
3.「KEEP YOUR VIEW」 詞:吉田美奈子 曲:福岡ユタカ 編:PINK
4.「LOVE IS STRANGE」 詞:宇辺セージ 曲:福岡ユタカ 編:PINK
5.「SCANNER」 詞:近田春夫 曲:福岡ユタカ 編:PINK
6.「SHADOW PARADISE」 詞:吉田美奈子 曲:福岡ユタカ 編:PINK
7.「BODY SNATCHER」 詞:福岡ユタカ 曲:福岡ユタカ・ホッピー神山 編:PINK
8.「SLIP INTO FIRE」 詞:吉田美奈子 曲:福岡ユタカ 編:PINK
9.「ELECTRIC MESSAGE」
詞:宇辺セージ 曲:福岡ユタカ・ホッピー神山 編:PINK
<support musician>
板倉文:guitars・folklore instruments
窪田晴男:guitars
松下誠:guitars
若林忠広:folklore instruments
横山英規:sax
World Standard:chorus
吉田美奈子:voices
produced by PINK
engineered by 寺田康彦
● エンちゃんが雄叫ぶ!超絶技巧バンドがバンドとして集大成の域に達した名作3rd
福岡ユタカ、岡野ハジメ、ホッピー神山など強烈な個性と確かな技術を兼ね備えた若手技巧派バンドとしてデビュー、「PINK」「光の子」と立て続けに強烈なインパクトを放つ名盤をリリースしてきたPINKは、その勢いそのままにPINKサウンドの集大成となるべき3rdアルバムである本作をリリースします。ライブ活動も積極的に行ってきた彼らですが、本作ではいかにもライブ映えするようなスピード感のある楽曲のほかにAORな雰囲気さえ漂う貫禄のミディアムバラードとのコントラストがさらに鮮明になり、2ndよりも格段に成長した姿を見ることができます、良い意味で粗さがとれて洗練された印象のサウンドは賛否が分かれるところですが、楽曲および作品のクオリティは申し分なく本作もハイレベルな名盤として語るに値する作品と言えるでしょう。
肝心のサウンド面に関してですが、相変わらずの造語を含む福岡ユタカのエキセントリックなヴォーカルスタイルに呼応するかのように、時には苛烈に、時には包み込むようなホッピー神山のシンセサウンドを中心に、独特なフレーズを刻む岡野ハジメのベースプレイとサウンドの根幹を成す矢壁&スティーブの打楽器隊が見事に融合する音世界は一段と磨きがかかっています。また本作では前作以上にリズム隊の迫力が増しているように聴こえます。「NAKED CHILD」「SCANNER」「SHADOW PARADISE」などその耳の余韻が残るようなリズム処理が、本作においてボトム的な役割を果たしていて1本芯を通した印象を受ける要因となっていると思われます。このリズムがあって個性的なシンセやベースなどの飛び道具(ベースが飛び道具というのも不思議な話で、そこがPINKらしいのですが)が生きてくるのでしょう。そういった意味ではPINKはスタイリッシュでありながら非常にリズム重視の肉体派バンドとも言えるのではないでしょうか。
<Favorite Songs>
・「NAKED CHILD」
本作中で最も攻撃的なスピードダンスチューン。畳み掛けるような8ビートに存在感のあるベースフレーズとその音色、サビに代表されるどこまでも伸びるような福岡の高音ヴォイスパフォーマンスは必聴です。
・「LOVE IS STRANGE」
PINKの十八番とも言える複雑なフレーズが組み合わさったニューウェーブファンク。これぞ岡野というべきキテレツなベースフレーズが強烈な個性を放っていますが、それ以上に圧巻なのは間奏の福岡のフェイクとシンセソロが重なり合う瞬間です。
・「BODY SNATCHER」
再び直線的なビートで攻めてくるダンスナンバー。這いずり回るチョッパー絡みのベースフレーズが気持ちいいです。福岡の雄叫びフェイクによって間奏でいきなりエスニック展開される場面とそれが開けてねちっこいシンセソロに至る展開がこの上なく熱いです。
<評点>
・サウンド ★★★★★(デジタル寄りながら個々の演奏力が融合し化学反応が)
・メロディ ★★★★ (サウンド面が意識されがちだがあくまで彼らはポップ)
・リズム ★★★★★(ストレートに響いてくるリズムのエフェクト加減が絶妙)
・曲構成 ★★★ (非常に楽曲が充実しているだけにあと何曲か欲しかった)
・個性 ★★★ (集大成的作品であるが基本は前作からの延長線上)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「EXTRA BOLD」 オカノフリーク
オカノフリーク

<members>
岡野晶:all instruments
1.「情熱の花」 詞:つるたまゆみ 曲・編:岡野晶
2.「愛で殺されたい」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
3.「素直になりたい」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
4.「痴人と踊る堕落した夜」 曲・編:岡野晶
5.「背中」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
6.「ラプソディNo.9」 詞:アーヴァン野村 曲・編:岡野晶
7.「ナイト・ソング」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
8.「アンビエントNo.9」 曲・編:岡野晶
9.「オレンジ」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
10.「眠れる美女」 詞:TAMA 曲・編:岡野晶
11.「黒い太陽」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
12.「Stop In The Name Of Love」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
13.「チェリーにおまかせ」 詞:TAMA 曲・編:岡野晶
14.「悲しいうわさ」 詞:土木キャロライン 曲・編:岡野晶
15.「愛がアブない」 詞:源代恭子 曲・編:岡野晶
<support musician>
TAMA:vocals・chorus
アーヴァン野村:vocals・chorus
源代恭子:vocals
田中ゆかり:vocals
つるたまゆみ:vocals
キャプテン材木:guitar
久保恵司:guitar
猪上一郎:bass・chorus
吉田のりこ:bass
村治進:steel pan
土木キャロライン:chorus
produced by 岡野晶
engineered by 岡野晶
● 弾ける躍動感!相変わらずのメロディセンスに切迫感すら感じられる最後の自主制作傑作カセット
現在はソロとして活動し関西インディーズ界に確かなインパクトを与え続けているオカノアキラが、1990年代にパーマネントに活動の基軸としていた80'sニューウェーブ&POPSユニットがオカノフリークでした。外資系レコード店を中心に自主制作カセットテープという媒体で次々と作品をリリース、95年にはカセット集Vol.2「Music for Romantic Age」、Vol.3「I'm So Hard Core」を同時リリース、収録曲が多く低価格というコストパフォーマンスに優れ、ポップなレーベルデザインが非常に目を引いていました。そして翌96年カセット集Vol.5「POP KING」と共にリリースされた自主制作カセットが本作Vol.6「EXTRA BOLD」です。楽曲の出来にばらつきがあり消化不良であったVol.2~3から進化し、ポップであることを念頭に置きまばゆいばかりの名フレーズが光る楽曲群を収録した「POP KING」とは対照的に、本作ではオカノフリーク史上最も多くのゲストミュージシャンを迎え、ポップであるのはもちろんのこと、サウンドの幅を広げより肉感的な印象を持つ作品に仕上げています。
15曲という多くの楽曲を収録し完成度が散漫になってしまうと思いきや、本作はしっかり吟味された上での自身に裏打ちされたポップソングに裏切りはなく、どれもが水準以上のクオリティを誇っているのが嬉しいところです。マイナーもメジャーも自由自在のメロディセンスに加え、少々粗さの目立つリズムトラックとミキシングがこのユニットの魅力でもありますが、本作ではサウンド面でもアジアンな「情熱の花」カリブな「ナイト・ソング」ファンキーな「黒い太陽」など世界一周旅行をしているかのような多彩な音楽性を見せつけ、コンセプトアルバムとしても楽しめます。もちろん源代恭子を中心とした楽曲ごとに起用される歌姫たちの真摯な仕事ぶりも好印象。特に黒っぽく新境地を見せた「黒い太陽」「Stop In The Name Of Love」における源代のヴォーカル力と「眠れる美女」「チェリーにおまかせ」といった不思議なポップチューンを歌いこなすTAMAの個性が光ります。とにかく当時のインディーズにしてここまでの80's的、ひいては昭和的なポップソングで勝負するユニットは非常に少なく、そんな彼の作品の中でも本作は最も充実期にあたる名作と言えるだけに、現在入手するすべがほとんどないのが悔やまれるところです。
<Favorite Songs>
・「眠れる美女」
本作の中でも最も不思議ワールドに展開する、ロリータヴォイスのTAMAがリードをとる楽曲。森に迷い込んだようなAパートから間奏を経てサウンドとリズムを手を替え品を替えながら、最後にはオーケストレーションを交え盛り上げていく構成が秀逸です。
・「黒い太陽」
ねちっこいシンセベースと跳ねるリズム、リズミカルなカッティングなど新境地を見せるファンクチューン。イントロから目立つ横ノリブラスセクションが非常にダンサブルで、かつ間奏やラストで活躍するかっこいいギターソロやこれまたかっこいい源代ヴォーカルが絡む非常に完成度の高い楽曲です。
・「チェリーにおまかせ」
オカノフリークお得意のはじけるような80'sアイドルソング調ポップソング。2番に入って本題に入っていく構成で意表を突かれますが、何よりも間奏の大げさな盛り上がりから怒濤の後半になだれ込んでいく流れが素晴らしいです。しっかり1つの楽曲の中で物語になっているのが秀逸です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (大げさともいえる思い切りの良いオーケストレーション)
・メロディ ★★★★★(POPSというものを良く研究しないと到達しないセンス)
・リズム ★★★ (打ち込みなリズムトラックの粗さが良い方向に作用)
・曲構成 ★★★★ (寄せ集めと思わせて実はストーリー性も感じる構成)
・個性 ★★★ (メロディ・サウンドとも飛躍的に向上し名曲も多数)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
2010年あけましておめでとうございます
昨年もそうでしたが、新年のご挨拶だけはさせていただきます律儀なreryoです。
遂に当ブログは3年目に突入いたしました。
固有名詞を多用したり、ジャケ画像が異様に大きかったり、ということでそういった検索をされる方が多く訪問されるようで、大変恐れ入ります。
だらだらと、そして型にはまってしまったこれといって面白みのないレビューブログですが、今年も2日に1回くらいのペースでドロップしていきますので、ご興味があればお立ち寄りいただけますと幸いです。
実はまだ折り返し地点を回りかけたところですので、まだまだ続きます。
当初から4年計画くらいのつもりでしたので、なんとか完走したいと思っております。
(多少自分の辞書代わりに書いている部分もあるのですが・・・w)
さて、昨年も同じようなことを書いたのですが、本年も2009年の個人的に選んだ3枚をご紹介したいと思います。
相変わらずオリコン関係には無知なのですが、「TECHNOLOGY」をセンス良く利用した「POPS」ということではまだまだ新譜も捨てたものじゃないと思っております。
![]() | Glassy Heaven (2009/07/22) Ceui 商品詳細を見る |
2007年にアニメ「sola」のエンディング主題歌「mellow melody」で脚光を浴びたアニメやゲーム関係を中心に活躍する女性シンガーCeuiの1stアルバム。ほとんどがソレ関係のタイアップというベスト盤的な扱いで、余り予備知識なしに聴きましたが、これは驚きました。コンビを組んでいる若手の作編曲家である小高光太郎のサウンドメイキングが素晴らしいです。細かい譜割とエフェクトを駆使した幻想的なシンセ音色の使い方が、透明感のあるCeuiの声質と絶妙にマッチしています。捨て曲もなく2009年の個人的なNo.1作品です。
![]() | ニューロマンサー (2009/01/28) 宮川弾 商品詳細を見る |
元ラヴ・タンバリンズのキーボードだった渋谷系界隈で活躍する敏腕作編曲家のソロ名義では初のアルバム。管弦を中心とした生楽器を利用したサウンドに定評がある彼ですが、本作では80'sに影響を受けたバリバリの打ち込みサウンドと青臭いシティポップメロディに乗ったハスキーヴォイスでみずから歌っています。その計算され尽くしたシンセ中心のアレンジはお見事で、中盤少しだれる部分もありますがエレクトロポップ作品として十二分に楽しめます。
![]() | NEUROVISION (2009/03/18) 鈴木光人 商品詳細を見る |
元overrocketの鈴木光人の2枚目のソロアルバム。純度の高い透明感のあるシンセサウンドがほとんどを占める圧倒的なエレクトリックワールドは2枚目にして孤高の境地に達したかのようです。このタイプのクリエイターはインストで満足しがちですが、彼はしっかり自身で歌も歌うなど歌モノとしての「POPS」を意識しているのが非常に好印象です。タイトル曲の美しさは尋常でなく、楽曲単位では2009年屈指と言えるでしょう。
以上、2009年はPOPSが前提にあっていかにシンセやエフェクトなどのTECHNOLOGYをセンス良く融合させているかに注目した結果、上記の3作品を選ばさせていただきました。
このほかの2009年リリースの作品に関しては、いつになるかは不明ですが当ブログで詳しくレビューいたします。
今年は2010年代の始まりの年、さらなるTECHNOLOGY POPSの名盤に出会うことを願っております。
本年もよろしくお願いいたします。
(次回から再び通常のレビューに戻ります)
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