「鋼鉄のダミー」 パラペッツ
「鋼鉄のダミー」(1993 ミントパンチ)
パラペッツ

<members>
山田カズミ:vocals・computer programming
阿部洋勝:guitars・backing vocals
ジュピロク:bass・backing vocals
花田健哉:keyboards・backing vocals
ロバのグッちゃん:others
1.「P-P-PEAK」 曲・編:山田カズミ
2.「僕の奴隷」 詞・曲・編:山田カズミ
3.「亡者の笛」 詞・曲・編:山田カズミ
4.「切らない手術1」 曲・編:山田カズミ
5.「鋼鉄のダミー」 詞・曲・編:山田カズミ
6.「B-2の唄」 詞:東映二 曲:菊池俊輔 編:山田カズミ
7.「砂漠へ行こう'92」 詞・曲・編:山田カズミ
8.「切らない手術2」 曲・編:山田カズミ
<support musician>
塩森佳織:backing vocals
須藤佳美:backing vocals
高橋実紀:backing vocals
橋本恵美:backing vocals
produced by 山田カズミ
engineered by 山田カズミ
●チープ&ホラーな世界観?P-MODEL・ヒカシューに影響を受けたインディーズテクノバンドの裏作品
90年代初頭はニューウェーブの派生から生まれたテクノポップとは異なる意味でのクラブから発信されたダンスミュージックである「TECHNO」が急速に普及した時期であり、電子音楽の新たな可能性が提示された時期でもありました。しかし、その「TECHNO」とは異なるテクノポップに影響された世代がちょうど適齢期に入ったこともあって、P-MODELなどのテクノポップ御三家などに影響されたバンドが雨後の竹の子のように出現してきたのもこの時期だったのです。その中の1つに、このパラペッツがありました。P-MODELとヒカシューのドロッとした部分をかいつまんだような楽曲とチープな電子音のバランスがおもしろく、決して洋楽では生み出せないような和風ホラーな雰囲気が個性的なバンドでした。
本作品は彼らの初のCDアルバム(しかも8cmCD)であった「ハガネのダミー」の裏テイク、もしくは姉妹作といった風情のミニアルバムで、当時はカセットリリースのみでした(後に「ハガネのダミー」と同収録でCD-R化)。楽曲はパラペッツの明るい突き抜けた部分を極力排し、落ちるところまで落ちた病んだニューウェーブといった感じで、まさにダークサイド。代表曲「ハガネのダミー」のアナザーテイク「鋼鉄のダミー」はメロディに快活さがなく、無理矢理なフレーズを叩くピアノ音色がさらに不気味さを増しています。その他の楽曲も「奴隷」とか「亡者」とか「砂漠」とか救いようがなく、ある意味コンセプトはバッチリ決まっています。ちなみに「B-2の唄」はかの有名な特撮主題歌ですが、CD-R化の際に著作権の関係かわからないがカットされたので、レアテイクになっています。
そのような暗いアルバムですが、楽曲自体はリズミカルでノリはよく、パラペッツの個性を唯一無二のものにしているという点では、「ハガネのダミー」よりもこちらの方が名盤と言えるのではないかと思うのです。
<Favorite Songs>
・「僕の奴隷」
これはパラペッツの中でも代表曲と言ってよい名曲。高速ピコピコシーケンスからフィルター発振音をこれでもかと唸らせる強烈なイントロ、そしてつんのめるようなリズム、「僕の奴隷になれ」・・・適度なやり過ぎ感が素晴らしいです。
・「亡者の笛」
ギターフレーズが渋いのと、サビのメロディのおどろおどろしさがその楽曲の世界観を表している楽曲で、特に間奏のピアノのはっちゃけぶりが逆に狂気を感じさせます。ラストの「笛~吹き~♪」の気持ち悪いフレーズは絶品。
・「切らない手術1」
実は最も彼らの世界観を体現しているのはこのインスト曲かもしれません。オケヒットに赤ん坊の泣き声のサンプリング、奇妙な笛のような電子音がまさにホラー。夜中に聴くとその怖さの中の激しい曲調に眠れなくなります。
<評点>
・サウンド ★★★ (電子音の剥き出しの使い方がハンパじゃない)
・メロディ ★★ (わざと気持ち悪い勢いに任せたメロディ)
・リズム ★★ (つんのめりリズムはリズムマシンの手癖か)
・曲構成 ★ (アウトテイクとはいえもう少し曲が欲しかった)
・個性 ★★★★(恐らく海外では出現しないタイプの個性)
総合評点: 7点
パラペッツ

<members>
山田カズミ:vocals・computer programming
阿部洋勝:guitars・backing vocals
ジュピロク:bass・backing vocals
花田健哉:keyboards・backing vocals
ロバのグッちゃん:others
1.「P-P-PEAK」 曲・編:山田カズミ
2.「僕の奴隷」 詞・曲・編:山田カズミ
3.「亡者の笛」 詞・曲・編:山田カズミ
4.「切らない手術1」 曲・編:山田カズミ
5.「鋼鉄のダミー」 詞・曲・編:山田カズミ
6.「B-2の唄」 詞:東映二 曲:菊池俊輔 編:山田カズミ
7.「砂漠へ行こう'92」 詞・曲・編:山田カズミ
8.「切らない手術2」 曲・編:山田カズミ
<support musician>
塩森佳織:backing vocals
須藤佳美:backing vocals
高橋実紀:backing vocals
橋本恵美:backing vocals
produced by 山田カズミ
engineered by 山田カズミ
●チープ&ホラーな世界観?P-MODEL・ヒカシューに影響を受けたインディーズテクノバンドの裏作品
90年代初頭はニューウェーブの派生から生まれたテクノポップとは異なる意味でのクラブから発信されたダンスミュージックである「TECHNO」が急速に普及した時期であり、電子音楽の新たな可能性が提示された時期でもありました。しかし、その「TECHNO」とは異なるテクノポップに影響された世代がちょうど適齢期に入ったこともあって、P-MODELなどのテクノポップ御三家などに影響されたバンドが雨後の竹の子のように出現してきたのもこの時期だったのです。その中の1つに、このパラペッツがありました。P-MODELとヒカシューのドロッとした部分をかいつまんだような楽曲とチープな電子音のバランスがおもしろく、決して洋楽では生み出せないような和風ホラーな雰囲気が個性的なバンドでした。
本作品は彼らの初のCDアルバム(しかも8cmCD)であった「ハガネのダミー」の裏テイク、もしくは姉妹作といった風情のミニアルバムで、当時はカセットリリースのみでした(後に「ハガネのダミー」と同収録でCD-R化)。楽曲はパラペッツの明るい突き抜けた部分を極力排し、落ちるところまで落ちた病んだニューウェーブといった感じで、まさにダークサイド。代表曲「ハガネのダミー」のアナザーテイク「鋼鉄のダミー」はメロディに快活さがなく、無理矢理なフレーズを叩くピアノ音色がさらに不気味さを増しています。その他の楽曲も「奴隷」とか「亡者」とか「砂漠」とか救いようがなく、ある意味コンセプトはバッチリ決まっています。ちなみに「B-2の唄」はかの有名な特撮主題歌ですが、CD-R化の際に著作権の関係かわからないがカットされたので、レアテイクになっています。
そのような暗いアルバムですが、楽曲自体はリズミカルでノリはよく、パラペッツの個性を唯一無二のものにしているという点では、「ハガネのダミー」よりもこちらの方が名盤と言えるのではないかと思うのです。
<Favorite Songs>
・「僕の奴隷」
これはパラペッツの中でも代表曲と言ってよい名曲。高速ピコピコシーケンスからフィルター発振音をこれでもかと唸らせる強烈なイントロ、そしてつんのめるようなリズム、「僕の奴隷になれ」・・・適度なやり過ぎ感が素晴らしいです。
・「亡者の笛」
ギターフレーズが渋いのと、サビのメロディのおどろおどろしさがその楽曲の世界観を表している楽曲で、特に間奏のピアノのはっちゃけぶりが逆に狂気を感じさせます。ラストの「笛~吹き~♪」の気持ち悪いフレーズは絶品。
・「切らない手術1」
実は最も彼らの世界観を体現しているのはこのインスト曲かもしれません。オケヒットに赤ん坊の泣き声のサンプリング、奇妙な笛のような電子音がまさにホラー。夜中に聴くとその怖さの中の激しい曲調に眠れなくなります。
<評点>
・サウンド ★★★ (電子音の剥き出しの使い方がハンパじゃない)
・メロディ ★★ (わざと気持ち悪い勢いに任せたメロディ)
・リズム ★★ (つんのめりリズムはリズムマシンの手癖か)
・曲構成 ★ (アウトテイクとはいえもう少し曲が欲しかった)
・個性 ★★★★(恐らく海外では出現しないタイプの個性)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「冒険クラブ」 フェビアン
「冒険クラブ」(1988 CBSソニー)
フェビアン

<members>
古賀森男:vocal・guitars・background vocals
塩入岳:bass
1.「冒険クラブ」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
2.「きみにとどかない」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
3.「逃亡者」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
4.「雨」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
5.「Big Boys」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
6.「バレリーナ」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
7.「危険な世界」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
8.「Heaven」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
9.「Blue Guitar」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
10.「僕のオートバイ」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
<support musician>
松永俊弥:drums・percussions
松本晃彦:keyboards・electric percussions
種ともこ:background vocals
遊佐未森:background vocals
大竹徹夫:synthesizers & drums programming
土岐幸男:synthesizers & drums programming
produced by 古賀森男・松本晃彦
co-produced by 山口忠生
mixing engineered by 井上剛
recording engineered by 松本大英・井上剛
●デジタル&アコースティックの成功例の典型!永遠のギター青年ユニットのデビュー作
大ヒットした「フレンズ」時のレベッカのギタリストであった古賀森男のパーマネントグループであるフェビアン。ネオアコを基調としたギターサウンドに瑞々しいメロディラインが特徴の楽曲が持ち味で、古賀自身が歌う爽やかな歌もポップ性十便でした。ただし彼らの魅力はあくまでアコースティックを中心に据えながらもデジタル機材も違和感なく受け入れる懐の深さにあると思います。それがどこか青臭い、ドリーミーな世界観を醸し出していると思うのです。
本作は彼らのデビュー作ですが、フェビアンのパーマネントなメンバーであるドラムの熊倉隆は参加せず、ほとんど古賀森男のソロユニットの様相を呈しています。しかし天下のCBSソニーからのリリースということもあって、パール兄弟の松永俊弥によるまさに時代の音ともいうべきエフェクティブなスネアドラムが健在です。もちろん基本はエレキ&アコースティックギターの響きですが、共同編曲者に名を連ねた松本晃彦(踊る大捜査線のサントラで有名。元ショコラータでもある)によって挿入されるデジタルシンセがよいアクセントになっていて、「雨」や「冒険クラブ」、「バレリーナ」等の楽曲の表現を豊かにしています。もちろんデビュー作ということで、選りすぐりの楽曲ということもあり、メロディがしっかり練られていて安心して聞くことができ、よい意味で期待を裏切らない完成度を誇っています。また、種ともこや遊佐未森(クリスマスソング「Silent Bells」でもデュオを披露)といった大物ゲストも特に違和感なく世界観にマッチさせていることも、既に個性を確立している証拠でしょう。
フェビアンは現在も活動を続けているようですが、永遠の青少年ロックサウンドは不変です。ただTECHNOLOGY POPS的には爽やかすぎてギミックもなにもないのが逆に物足りないと言ったら欲張りすぎでしょうか。
<Favorite Songs>
・「冒険クラブ」
スチールドラム風のイントロとエレクトリックタムでインパクトを与える代表曲。ワンダーランド的なフェビアンの世界観を最も端的に表現したのがこの曲と言ってよいでしょう。
・「僕のオートバイ」
広大な荒野を感じさせるサビが印象的な壮大なバラードですが、やはりその爽やかさは不変です。しかしリバーブの深いドラム音に支えられたリズムが強烈で、どこかこだわりを感じさせます。
・「Heaven」
のどかな曲調にタイトなリズムというアンバランスさが魅力の楽曲ですが、リズムのディレイのかけ具合とか、トロピカルなギターソロがまさに「天国」を上手く表現していて、地味ながらなかなか楽しい曲だと思います。
<評点>
・サウンド ★★ (瑞々しいの一言だが、爽やかすぎて物足りない面も)
・メロディ ★★★ (ネオアコはメロディが勝負なのでよいフレーズ多し)
・リズム ★★★ (ドラムが思ったより強調されていて気持ちよい)
・曲構成 ★★ (ロック調バラード調とバランスはよいが何かが・・)
・個性 ★ (このアルバムでは「これ」といったものがまだ希薄か)
総合評点: 7点
フェビアン

<members>
古賀森男:vocal・guitars・background vocals
塩入岳:bass
1.「冒険クラブ」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
2.「きみにとどかない」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
3.「逃亡者」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
4.「雨」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
5.「Big Boys」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
6.「バレリーナ」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
7.「危険な世界」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
8.「Heaven」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
9.「Blue Guitar」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
10.「僕のオートバイ」 詞・曲:古賀森男 編:古賀森男・松本晃彦
<support musician>
松永俊弥:drums・percussions
松本晃彦:keyboards・electric percussions
種ともこ:background vocals
遊佐未森:background vocals
大竹徹夫:synthesizers & drums programming
土岐幸男:synthesizers & drums programming
produced by 古賀森男・松本晃彦
co-produced by 山口忠生
mixing engineered by 井上剛
recording engineered by 松本大英・井上剛
●デジタル&アコースティックの成功例の典型!永遠のギター青年ユニットのデビュー作
大ヒットした「フレンズ」時のレベッカのギタリストであった古賀森男のパーマネントグループであるフェビアン。ネオアコを基調としたギターサウンドに瑞々しいメロディラインが特徴の楽曲が持ち味で、古賀自身が歌う爽やかな歌もポップ性十便でした。ただし彼らの魅力はあくまでアコースティックを中心に据えながらもデジタル機材も違和感なく受け入れる懐の深さにあると思います。それがどこか青臭い、ドリーミーな世界観を醸し出していると思うのです。
本作は彼らのデビュー作ですが、フェビアンのパーマネントなメンバーであるドラムの熊倉隆は参加せず、ほとんど古賀森男のソロユニットの様相を呈しています。しかし天下のCBSソニーからのリリースということもあって、パール兄弟の松永俊弥によるまさに時代の音ともいうべきエフェクティブなスネアドラムが健在です。もちろん基本はエレキ&アコースティックギターの響きですが、共同編曲者に名を連ねた松本晃彦(踊る大捜査線のサントラで有名。元ショコラータでもある)によって挿入されるデジタルシンセがよいアクセントになっていて、「雨」や「冒険クラブ」、「バレリーナ」等の楽曲の表現を豊かにしています。もちろんデビュー作ということで、選りすぐりの楽曲ということもあり、メロディがしっかり練られていて安心して聞くことができ、よい意味で期待を裏切らない完成度を誇っています。また、種ともこや遊佐未森(クリスマスソング「Silent Bells」でもデュオを披露)といった大物ゲストも特に違和感なく世界観にマッチさせていることも、既に個性を確立している証拠でしょう。
フェビアンは現在も活動を続けているようですが、永遠の青少年ロックサウンドは不変です。ただTECHNOLOGY POPS的には爽やかすぎてギミックもなにもないのが逆に物足りないと言ったら欲張りすぎでしょうか。
<Favorite Songs>
・「冒険クラブ」
スチールドラム風のイントロとエレクトリックタムでインパクトを与える代表曲。ワンダーランド的なフェビアンの世界観を最も端的に表現したのがこの曲と言ってよいでしょう。
・「僕のオートバイ」
広大な荒野を感じさせるサビが印象的な壮大なバラードですが、やはりその爽やかさは不変です。しかしリバーブの深いドラム音に支えられたリズムが強烈で、どこかこだわりを感じさせます。
・「Heaven」
のどかな曲調にタイトなリズムというアンバランスさが魅力の楽曲ですが、リズムのディレイのかけ具合とか、トロピカルなギターソロがまさに「天国」を上手く表現していて、地味ながらなかなか楽しい曲だと思います。
<評点>
・サウンド ★★ (瑞々しいの一言だが、爽やかすぎて物足りない面も)
・メロディ ★★★ (ネオアコはメロディが勝負なのでよいフレーズ多し)
・リズム ★★★ (ドラムが思ったより強調されていて気持ちよい)
・曲構成 ★★ (ロック調バラード調とバランスはよいが何かが・・)
・個性 ★ (このアルバムでは「これ」といったものがまだ希薄か)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「MISPRINT」 FILMS
「MISPRINT」(1980 コロムビア)
FILMS

<members>
赤城忠治:vocal・background vocals・percussions
後藤信夫:synthesizer・keyboards・strings arrangement
中原信雄:syn-bass・bass
久下恵生:drums・background vocals・co-computer program
アキ・マクレーン:background vocals・screaming & dancing
小島洋子:vocal・background vocals & dancing
岩崎工:synthesizer・keyboards・strings arrangement
1.「WELCOME TO FUTURE」 曲・編:赤城忠治
2.「30th CENTURY BOY」 詞・曲・編:赤城忠治
3.「DREAM OF COMPUTER」 詞・曲・編:赤城忠治
4.「GLAD I'M NOT LEFT ALONE」 詞・曲・編:赤城忠治
5.「CRASH KIDS」 詞・曲・編:赤城忠治
6.「T.V.PHONE AGE」 詞・曲・編:赤城忠治
7.「TAKE ME ON THE LINER JET」 詞・曲・編:赤城忠治
8.「RADIO ZONE」 詞・曲・編:赤城忠治
9.「REMOTE CONTROLLED ROMANCE」 詞・曲・編:赤城忠治
10.「FINE?」
<support musician>
本間柑治:MC-8 synthesizer・MC-8 synthesizer programming
produced by 荒川勝・新井ミチヒサ・FILMS
co-produced by 本間柑治
engineered by 鈴木慶三
●なぜか未来が懐かしい?レトロフューチャーポップの王道
1980年代はテクノポップ・ニューウェーブ流行の真っ只中であり、電子楽器にいち早く飛びついた先鋭的なニューウェーブ系バンドが数多くデビューしました。いわゆる「業界ニューウェーブ」と揶揄されたバンド達ですが、個人的に言うところのTECHNOLOGY POPS的視点からすると、当時最新テクノロジーを違和感なく採り入れながらなおかつポップにまとめた楽曲群を多く生み出した重要なムーブメントと言えるのです。その中でテクノポップバンドも含めて最もSF的な未来的なコンセプトを打ち出していたのがこの赤城忠治率いるFILMSです。全体を包むMC-8のシーケンス&リズムのほどよい軽さと赤城の透き通った甲高いヴォーカル&絶妙に挿入されるボコーダーが特徴で、その他のいわゆるテクノポップ御三家といわれるPLASTICS・ヒカシュー・P-MODELと比べても、そのシンセ使いの徹底ぶりは一線を画していたと思います。
本作はFILMSが唯一残した1stアルバムでありラストアルバムです。「30世紀への未来旅行」といったコンセプトのもと繰り出されるその楽曲はまさにレトロフューチャー。YAPOOS等で活動し、現在もベーシストとして活躍している中原信雄や、CM音楽やTPO等でフェアライト旋風を巻き起こした?岩崎工といったTECHNOLOGY POPS的に優れたプレイヤーを輩出しただけあって、そのサウンドは至って電子的。ボコーダーやイコライザーといった声質や音質を変化させるエフェクトを駆使し未来感を演出、チープなシンセサイザーは全編にわたって活躍し、そのコンセプトを強固なものとしています。特にMC-8を操る本間柑治(後にTPOのブレーンとなる)の仕事ぶりが光ります。当時打ち込みが困難だと言われたMC-8をPOPSフィールドで使用していたのはYMOとこのFILMSだけではないかと思います。この点においても、このバンドのシンセサウンドへのこだわりが感じられますが、それも赤城忠治のメロディセンスが楽曲を頭でっかちなものにせず、とっつきやすいPOPSに仕上げているからだと思います。まさにTECHNOLOGY POPS的名盤と言える作品でしょう。
このアルバムの後、メンバーチェンジ後(中原信雄に加えて鈴木智文(Portable Rockの前身)、ブラボー小松、鈴木さえ子が在籍)の2ndアルバム作成半ばにして自然消滅したFILMSであったが、2000年に1度だけ再結成しています。次回は30世紀かもしれませんね。
<Favorite Songs>
・「T.V.PHONE AGE」
覚えやすいメロディ&ボコーダーコーラス、間奏の電子音ソロ・・・魅惑のシンセポップの名曲です。線は細いが存在感たっぷりの赤城ヴォーカルが見事にはまってます。ラストのリアルタイムな音色変化も素晴らしい。
・「30th CENTURY BOY」
7分もある大曲であるが、全く飽きさせない楽曲構成。イージーリスニングと思わせるようなアナログシンセのインストからPOPS調への変化、そして限りなくポップなサビ(当然ボコーダー入り)への展開はさすがです。
・「TAKE ME ON THE LINER JET」
コーラス担当の小島洋子がリードをとったキラキラスペーシーポップ。このキレのあるシンセが非常に印象的で、この曲はいわゆるテクノポップというジャンルに一番近いのではないかと思えるほどのピコピコ度です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(当時の電子楽器センスとしてはYMOレベルの出来)
・メロディ ★★★★★(実は電子楽器がなかろうがメロディだけで聴かせられる)
・リズム ★★★ (ドラムの久下は目立たないが実は細かくよい仕事)
・曲構成 ★★★★★(まさに徹底したコンセプトに基づいた作品)
・個性 ★★★ (当時の他のバンドとは比較にならないが、次作が見たかった)
総合評点: 9点
FILMS

<members>
赤城忠治:vocal・background vocals・percussions
後藤信夫:synthesizer・keyboards・strings arrangement
中原信雄:syn-bass・bass
久下恵生:drums・background vocals・co-computer program
アキ・マクレーン:background vocals・screaming & dancing
小島洋子:vocal・background vocals & dancing
岩崎工:synthesizer・keyboards・strings arrangement
1.「WELCOME TO FUTURE」 曲・編:赤城忠治
2.「30th CENTURY BOY」 詞・曲・編:赤城忠治
3.「DREAM OF COMPUTER」 詞・曲・編:赤城忠治
4.「GLAD I'M NOT LEFT ALONE」 詞・曲・編:赤城忠治
5.「CRASH KIDS」 詞・曲・編:赤城忠治
6.「T.V.PHONE AGE」 詞・曲・編:赤城忠治
7.「TAKE ME ON THE LINER JET」 詞・曲・編:赤城忠治
8.「RADIO ZONE」 詞・曲・編:赤城忠治
9.「REMOTE CONTROLLED ROMANCE」 詞・曲・編:赤城忠治
10.「FINE?」
<support musician>
本間柑治:MC-8 synthesizer・MC-8 synthesizer programming
produced by 荒川勝・新井ミチヒサ・FILMS
co-produced by 本間柑治
engineered by 鈴木慶三
●なぜか未来が懐かしい?レトロフューチャーポップの王道
1980年代はテクノポップ・ニューウェーブ流行の真っ只中であり、電子楽器にいち早く飛びついた先鋭的なニューウェーブ系バンドが数多くデビューしました。いわゆる「業界ニューウェーブ」と揶揄されたバンド達ですが、個人的に言うところのTECHNOLOGY POPS的視点からすると、当時最新テクノロジーを違和感なく採り入れながらなおかつポップにまとめた楽曲群を多く生み出した重要なムーブメントと言えるのです。その中でテクノポップバンドも含めて最もSF的な未来的なコンセプトを打ち出していたのがこの赤城忠治率いるFILMSです。全体を包むMC-8のシーケンス&リズムのほどよい軽さと赤城の透き通った甲高いヴォーカル&絶妙に挿入されるボコーダーが特徴で、その他のいわゆるテクノポップ御三家といわれるPLASTICS・ヒカシュー・P-MODELと比べても、そのシンセ使いの徹底ぶりは一線を画していたと思います。
本作はFILMSが唯一残した1stアルバムでありラストアルバムです。「30世紀への未来旅行」といったコンセプトのもと繰り出されるその楽曲はまさにレトロフューチャー。YAPOOS等で活動し、現在もベーシストとして活躍している中原信雄や、CM音楽やTPO等でフェアライト旋風を巻き起こした?岩崎工といったTECHNOLOGY POPS的に優れたプレイヤーを輩出しただけあって、そのサウンドは至って電子的。ボコーダーやイコライザーといった声質や音質を変化させるエフェクトを駆使し未来感を演出、チープなシンセサイザーは全編にわたって活躍し、そのコンセプトを強固なものとしています。特にMC-8を操る本間柑治(後にTPOのブレーンとなる)の仕事ぶりが光ります。当時打ち込みが困難だと言われたMC-8をPOPSフィールドで使用していたのはYMOとこのFILMSだけではないかと思います。この点においても、このバンドのシンセサウンドへのこだわりが感じられますが、それも赤城忠治のメロディセンスが楽曲を頭でっかちなものにせず、とっつきやすいPOPSに仕上げているからだと思います。まさにTECHNOLOGY POPS的名盤と言える作品でしょう。
このアルバムの後、メンバーチェンジ後(中原信雄に加えて鈴木智文(Portable Rockの前身)、ブラボー小松、鈴木さえ子が在籍)の2ndアルバム作成半ばにして自然消滅したFILMSであったが、2000年に1度だけ再結成しています。次回は30世紀かもしれませんね。
<Favorite Songs>
・「T.V.PHONE AGE」
覚えやすいメロディ&ボコーダーコーラス、間奏の電子音ソロ・・・魅惑のシンセポップの名曲です。線は細いが存在感たっぷりの赤城ヴォーカルが見事にはまってます。ラストのリアルタイムな音色変化も素晴らしい。
・「30th CENTURY BOY」
7分もある大曲であるが、全く飽きさせない楽曲構成。イージーリスニングと思わせるようなアナログシンセのインストからPOPS調への変化、そして限りなくポップなサビ(当然ボコーダー入り)への展開はさすがです。
・「TAKE ME ON THE LINER JET」
コーラス担当の小島洋子がリードをとったキラキラスペーシーポップ。このキレのあるシンセが非常に印象的で、この曲はいわゆるテクノポップというジャンルに一番近いのではないかと思えるほどのピコピコ度です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(当時の電子楽器センスとしてはYMOレベルの出来)
・メロディ ★★★★★(実は電子楽器がなかろうがメロディだけで聴かせられる)
・リズム ★★★ (ドラムの久下は目立たないが実は細かくよい仕事)
・曲構成 ★★★★★(まさに徹底したコンセプトに基づいた作品)
・個性 ★★★ (当時の他のバンドとは比較にならないが、次作が見たかった)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「MODERN TIME」 吉川晃司
「MODERN TIME」(1986 SMS)
吉川晃司:vocal・chorus

1.「Mis Fit」 詞:安藤秀樹 曲:原田真二 編:後藤次利
2.「キャンドルの瞳」 詞:安藤秀樹 曲:原田真二 編:後藤次利
3.「Modern Time」 詞・曲:吉川晃司 編:後藤次利
4.「MISS COOL」 詞:安藤秀樹 曲:中島文明 編:後藤次利
5.「Drive 夜の終わりに」 詞:安藤秀樹 曲:佐藤健 編:後藤次利
6.「選ばれた夜」 詞:安藤秀樹 曲:原田真二 編:後藤次利
7.「BODY WINK」 詞:安藤秀樹 曲:吉川晃司 編:後藤次利
8.「ナーバス ビーナス」 詞・曲:吉川晃司 編:後藤次利
9.「サイケデリックHIP」 詞・曲:吉川晃司 編:後藤次利
10.「ロスト チャイルド」 詞・曲:安藤秀樹 編:後藤次利
<support musician>
北島健二:guitar
布袋寅泰:guitar
後藤次利:bass
青山純:drums
山木秀夫:drums
国吉良一:keyboards
富樫春生:keyboards
Jake H. Concepcion:sax
矢口博康:sax
安藤秀樹:chorus
川面博:chorus
佐藤健:chorus
松武秀樹:computer programming
produced by 木崎賢治・梅鉢康弘
engineered by 内沼映二
●後藤超絶ベースが炸裂!自作曲も加えたFUNK路線の集大成的作品
80年代中期にさしかかろうとした頃突如して現れた新世代アイドルであった吉川晃司。今でこそカリスマロッカー?としての地位を確立した観のある彼であるが、本当に面白かったのは実はアイドル時代なのです。デビュー曲「モニカ」以来、NOBODYや大沢誉志幸、原田真二らのキャッチーなメロディに大村雅朗や後藤次利の先鋭的なエレクトリックファンクなサウンドの融合は、男性アイドルソングに新風を吹き込み、スタイリッシュなイメージを確立した先駆者とも言えるでしょう。また、元水球日本代表という経歴を駆使した身体能力にまかせた個性的なダンスも、彼の楽曲に花を添えていたように思われます。
86年にリリースされたこの作品は、吉川自身が作曲した楽曲が半数近くを占めるなどアイドルとアーティストの転換期に当たるアルバムで、アイドルソング特有の冒険心あふれるサウンドと、アーティストとして活動していく上での指針が既に示されているかのような楽曲群が興味深いです。前作に引き続きアレンジを担当している後藤次利は、当時の自身のデジタルファンク路線をここでも採り入れ、自身で弾くベースと青山純、山木秀夫の当時指折りの凄腕ドラマーに支えられたリズム隊を土台として、前作とはどこか違った大人びたサウンドを構築しています。また吉川曲の青さを当時先鋭的なデジタルサウンドを志向していた原田真二のメロディセンス溢れる楽曲でカバーしており、このアルバムのクオリティを高めています。その強烈なリズムの音質は既にアイドル作品という域はとっくに超えており、その意味において、彼にとっても男性アイドルPOPSにとっても非常に重要な作品であることに間違いないのです。
<Favorite Songs>
・「サイケデリックHIP」
とにかく後藤次利の真骨頂であるバキバキベースが大活躍の問題作。布袋寅泰が参加したプレCOMPLEXな楽曲としても価値のある楽曲であるが、とにかく延々と鳴り続けすべてを凌駕するハードなベースシーケンス。この手の実験作品はアイドルソングならでは。
・「キャンドルの瞳」
シングルカットされたアイドル期最後期のファンク歌謡。原田真二が書いたこのポップソングは、マシンガンのような連打ドラムのイントロで表現されるような分厚いドラムサウンドが特徴。また、間奏に挿入されるサックスとその部分のコード感がオシャレで大人。
・「MISS COOL」
跳ねるリズムにチョッパーを交えたベースフレーズが印象的なダンスナンバー。煮え切らないサビの渋さがニューロマンティクスの名残を感じさせます。リリースを延ばしたE-bow系ギターとカッティングを刻む跳ねるリズムギターもこの曲の特徴。とにかくすべてが「跳ねる」印象のファンクテイストの佳曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(エレクトロファンクを基調としたサウンドは流石の一言)
・メロディ ★★★ (まだ自作曲とそうでない曲との差は否めない)
・リズム ★★★★★(キレとコクのあるベース&ドラムが絶品)
・曲構成 ★★★★ (バラードもなくリズムで聴かせる楽曲で統一)
・個性 ★★★★ (ちょうど自我が出てきて現在の基礎となる作品となった)
総合評点: 9点
吉川晃司:vocal・chorus

1.「Mis Fit」 詞:安藤秀樹 曲:原田真二 編:後藤次利
2.「キャンドルの瞳」 詞:安藤秀樹 曲:原田真二 編:後藤次利
3.「Modern Time」 詞・曲:吉川晃司 編:後藤次利
4.「MISS COOL」 詞:安藤秀樹 曲:中島文明 編:後藤次利
5.「Drive 夜の終わりに」 詞:安藤秀樹 曲:佐藤健 編:後藤次利
6.「選ばれた夜」 詞:安藤秀樹 曲:原田真二 編:後藤次利
7.「BODY WINK」 詞:安藤秀樹 曲:吉川晃司 編:後藤次利
8.「ナーバス ビーナス」 詞・曲:吉川晃司 編:後藤次利
9.「サイケデリックHIP」 詞・曲:吉川晃司 編:後藤次利
10.「ロスト チャイルド」 詞・曲:安藤秀樹 編:後藤次利
<support musician>
北島健二:guitar
布袋寅泰:guitar
後藤次利:bass
青山純:drums
山木秀夫:drums
国吉良一:keyboards
富樫春生:keyboards
Jake H. Concepcion:sax
矢口博康:sax
安藤秀樹:chorus
川面博:chorus
佐藤健:chorus
松武秀樹:computer programming
produced by 木崎賢治・梅鉢康弘
engineered by 内沼映二
●後藤超絶ベースが炸裂!自作曲も加えたFUNK路線の集大成的作品
80年代中期にさしかかろうとした頃突如して現れた新世代アイドルであった吉川晃司。今でこそカリスマロッカー?としての地位を確立した観のある彼であるが、本当に面白かったのは実はアイドル時代なのです。デビュー曲「モニカ」以来、NOBODYや大沢誉志幸、原田真二らのキャッチーなメロディに大村雅朗や後藤次利の先鋭的なエレクトリックファンクなサウンドの融合は、男性アイドルソングに新風を吹き込み、スタイリッシュなイメージを確立した先駆者とも言えるでしょう。また、元水球日本代表という経歴を駆使した身体能力にまかせた個性的なダンスも、彼の楽曲に花を添えていたように思われます。
86年にリリースされたこの作品は、吉川自身が作曲した楽曲が半数近くを占めるなどアイドルとアーティストの転換期に当たるアルバムで、アイドルソング特有の冒険心あふれるサウンドと、アーティストとして活動していく上での指針が既に示されているかのような楽曲群が興味深いです。前作に引き続きアレンジを担当している後藤次利は、当時の自身のデジタルファンク路線をここでも採り入れ、自身で弾くベースと青山純、山木秀夫の当時指折りの凄腕ドラマーに支えられたリズム隊を土台として、前作とはどこか違った大人びたサウンドを構築しています。また吉川曲の青さを当時先鋭的なデジタルサウンドを志向していた原田真二のメロディセンス溢れる楽曲でカバーしており、このアルバムのクオリティを高めています。その強烈なリズムの音質は既にアイドル作品という域はとっくに超えており、その意味において、彼にとっても男性アイドルPOPSにとっても非常に重要な作品であることに間違いないのです。
<Favorite Songs>
・「サイケデリックHIP」
とにかく後藤次利の真骨頂であるバキバキベースが大活躍の問題作。布袋寅泰が参加したプレCOMPLEXな楽曲としても価値のある楽曲であるが、とにかく延々と鳴り続けすべてを凌駕するハードなベースシーケンス。この手の実験作品はアイドルソングならでは。
・「キャンドルの瞳」
シングルカットされたアイドル期最後期のファンク歌謡。原田真二が書いたこのポップソングは、マシンガンのような連打ドラムのイントロで表現されるような分厚いドラムサウンドが特徴。また、間奏に挿入されるサックスとその部分のコード感がオシャレで大人。
・「MISS COOL」
跳ねるリズムにチョッパーを交えたベースフレーズが印象的なダンスナンバー。煮え切らないサビの渋さがニューロマンティクスの名残を感じさせます。リリースを延ばしたE-bow系ギターとカッティングを刻む跳ねるリズムギターもこの曲の特徴。とにかくすべてが「跳ねる」印象のファンクテイストの佳曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★★(エレクトロファンクを基調としたサウンドは流石の一言)
・メロディ ★★★ (まだ自作曲とそうでない曲との差は否めない)
・リズム ★★★★★(キレとコクのあるベース&ドラムが絶品)
・曲構成 ★★★★ (バラードもなくリズムで聴かせる楽曲で統一)
・個性 ★★★★ (ちょうど自我が出てきて現在の基礎となる作品となった)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「e.s.s.e」 eyelush
「e.s.s.e」(1997 Oo)
eyelush

<members>
秋葉伸実:vocal・synthesizers programming・background vocals
大竹正和:keyboards・synthesizers programming・background vocals
<electric instruments>
KORG Prophecy・KORG MONO Poly・KORG Polysix・KORG MS-50・KORG Wave Station SR・BOSS PC-2・AKAI S1000・E-mu Vintage Keys・Roland JX-8P・Roland SH-2・Roland TR-909・Roland TR-606・Roland VS-880・Yamaha QX-1・Yamaha SY-99・Yamaha DX-7 II FD・ULT -Sound
1.「脳走~Brain Drive」 詞:15 曲・編:eyelush
2.「1000th Venus」 詞:15 曲・編:eyelush
3.「Domino Of Noise」 曲・編:eyelush
4.「未遂」 詞:15 曲・編:eyelush
5.「r.s.q (before the last order)」 詞:15 曲・編:eyelush
6.「融雪~A long way off, Here~」 詞:15 曲・編:eyelush
<support musician>
鈴木精華:background vocals
produced by eyelush・深田悦之
mixing engineered by John Gallen
recording engineered by 徳永宏
●エレポップの河村隆一?マニアックなシンセサウンドと親しみやすいメロディが噛み合った傑作
90年代後半に突如現れたクラブ系テクノの悪影響を全く受けていない10年早過ぎたエレポップユニットがこのeyelushです。相川七瀬のサポートキーボーディストであった秋葉伸実とその相棒である宇宙人アンテナを持つ男、大竹正和のシンセマニアデュオであるこのユニットは、ギターやベースを全く使わずアナログシンセやセミビンテージシンセとリズムマシンやエレドラ(上記Electric instruments参照)を駆使した徹底したTECHNOLOGYサウンドと熱唱型ナルシスティックヴォーカルで、キャッチーなメロディのPOPSを創り出す興味深いユニットだったのですが、売れませんでしたね・・。96年の1stミニアルバム「Bavarois」から電子楽器まみれの求道的なエレポップ観が顕著で、かつ非常に覚えやすいポップな作風が潔かったのですが、この2ndでも同路線を踏襲し、さらに王道エレポップ路線を邁進しています。
そしてこの2ndでは、eyelushの特徴でもあるどぎつい強烈なシンセソロが全編で炸裂しています。恐らくここまでシンセソロが目立ちまくった楽曲を聴かせてくれるのはeyelushだけではないでしょうか。それでいて大事なのは、やはりそのポップ感覚。ポップというのは80'sエレポップにとって非常に重要なキーでありますが、その影響をモロに受けたeyelushは、POPSであることを前提に電子POPSに仕上げているので全く違和感がないのです。あるとすれば時に羽目を外したシンセソロでしょうか。また、当時流行のヴィジュアル系的ヴォーカルは好き嫌いが分かれるところですが、この手のサウンドにありがちなCOOLさは感じられず、とにかく熱いのです(暑苦しくはありません)。ここにもeyelush的エレポップの個性が表れていると思います。ただ、このアルバムではラストの「融雪」がチープさを狙った割には地味で、他の楽曲に埋もれた形になっているのが惜しいといえば惜しいですね。
eyelushは結局2枚のアルバムを残してインディーズへ。3rdアルバム「apple minds」をリリース後、思い出したように活動するのみですが、Ooレコード在籍時のこの作品はTECHNOLOGY POPSど真ん中の傑作として記憶に残したい1枚です。惜しむらくは前作とドッキングさせた方がさらに名盤になったと思うのですが。
<Favorite Songs>
・「1000th Venus」
eyelushが残した(今のところ)最高傑作。未来観溢れるコード感覚によく伸びるヴォーカル、そして間奏の名シンセソロ。どれをとってもTECHNOLOGY POPS的にはたまらない構成の楽曲です。あくまで流行テクノに惑わされない直球80'sエレポップ路線が潔いのです。
・「脳走~Brain Drive」
アルバムのオープニングを飾る味のあるアップテンポナンバー。アナログシンセ特有のコシのあるシンセベースが気持ちいいが、この曲もやはりシンセソロ。とにかくeyelushの曲はシンセソロが飽きないのです。
・「r.s.q (before the last order)」
アナログシンセ的エレポップですが、さらに軽薄さを前面に押し出したポップチューン。しつこいようですが、これも電気を大量に消費するかのようなコクのあるシンセソロが魅力的。逆に言うとこのシンセソロが味噌汁にキムチ放り込んだ状態にしているのかもしれません。
<評点>
・サウンド ★★★★★(電子楽器1本で勝負する潔さとやはりシンセソロが○)
・メロディ ★★★★★(シンセが生きるのはこのメロディセンスがあってこそ)
・リズム ★★★ (TRシリーズが大活躍だが、強烈なゲートスネアも聴きたい)
・曲構成 ★★★ (ラストのバラードでもう少し頑張れれば・・・)
・個性 ★★★★ (ヴォーカル、シンセソロ、個性の塊なはずなのだが・・)
総合評点: 9点
eyelush

<members>
秋葉伸実:vocal・synthesizers programming・background vocals
大竹正和:keyboards・synthesizers programming・background vocals
<electric instruments>
KORG Prophecy・KORG MONO Poly・KORG Polysix・KORG MS-50・KORG Wave Station SR・BOSS PC-2・AKAI S1000・E-mu Vintage Keys・Roland JX-8P・Roland SH-2・Roland TR-909・Roland TR-606・Roland VS-880・Yamaha QX-1・Yamaha SY-99・Yamaha DX-7 II FD・ULT -Sound
1.「脳走~Brain Drive」 詞:15 曲・編:eyelush
2.「1000th Venus」 詞:15 曲・編:eyelush
3.「Domino Of Noise」 曲・編:eyelush
4.「未遂」 詞:15 曲・編:eyelush
5.「r.s.q (before the last order)」 詞:15 曲・編:eyelush
6.「融雪~A long way off, Here~」 詞:15 曲・編:eyelush
<support musician>
鈴木精華:background vocals
produced by eyelush・深田悦之
mixing engineered by John Gallen
recording engineered by 徳永宏
●エレポップの河村隆一?マニアックなシンセサウンドと親しみやすいメロディが噛み合った傑作
90年代後半に突如現れたクラブ系テクノの悪影響を全く受けていない10年早過ぎたエレポップユニットがこのeyelushです。相川七瀬のサポートキーボーディストであった秋葉伸実とその相棒である宇宙人アンテナを持つ男、大竹正和のシンセマニアデュオであるこのユニットは、ギターやベースを全く使わずアナログシンセやセミビンテージシンセとリズムマシンやエレドラ(上記Electric instruments参照)を駆使した徹底したTECHNOLOGYサウンドと熱唱型ナルシスティックヴォーカルで、キャッチーなメロディのPOPSを創り出す興味深いユニットだったのですが、売れませんでしたね・・。96年の1stミニアルバム「Bavarois」から電子楽器まみれの求道的なエレポップ観が顕著で、かつ非常に覚えやすいポップな作風が潔かったのですが、この2ndでも同路線を踏襲し、さらに王道エレポップ路線を邁進しています。
そしてこの2ndでは、eyelushの特徴でもあるどぎつい強烈なシンセソロが全編で炸裂しています。恐らくここまでシンセソロが目立ちまくった楽曲を聴かせてくれるのはeyelushだけではないでしょうか。それでいて大事なのは、やはりそのポップ感覚。ポップというのは80'sエレポップにとって非常に重要なキーでありますが、その影響をモロに受けたeyelushは、POPSであることを前提に電子POPSに仕上げているので全く違和感がないのです。あるとすれば時に羽目を外したシンセソロでしょうか。また、当時流行のヴィジュアル系的ヴォーカルは好き嫌いが分かれるところですが、この手のサウンドにありがちなCOOLさは感じられず、とにかく熱いのです(暑苦しくはありません)。ここにもeyelush的エレポップの個性が表れていると思います。ただ、このアルバムではラストの「融雪」がチープさを狙った割には地味で、他の楽曲に埋もれた形になっているのが惜しいといえば惜しいですね。
eyelushは結局2枚のアルバムを残してインディーズへ。3rdアルバム「apple minds」をリリース後、思い出したように活動するのみですが、Ooレコード在籍時のこの作品はTECHNOLOGY POPSど真ん中の傑作として記憶に残したい1枚です。惜しむらくは前作とドッキングさせた方がさらに名盤になったと思うのですが。
<Favorite Songs>
・「1000th Venus」
eyelushが残した(今のところ)最高傑作。未来観溢れるコード感覚によく伸びるヴォーカル、そして間奏の名シンセソロ。どれをとってもTECHNOLOGY POPS的にはたまらない構成の楽曲です。あくまで流行テクノに惑わされない直球80'sエレポップ路線が潔いのです。
・「脳走~Brain Drive」
アルバムのオープニングを飾る味のあるアップテンポナンバー。アナログシンセ特有のコシのあるシンセベースが気持ちいいが、この曲もやはりシンセソロ。とにかくeyelushの曲はシンセソロが飽きないのです。
・「r.s.q (before the last order)」
アナログシンセ的エレポップですが、さらに軽薄さを前面に押し出したポップチューン。しつこいようですが、これも電気を大量に消費するかのようなコクのあるシンセソロが魅力的。逆に言うとこのシンセソロが味噌汁にキムチ放り込んだ状態にしているのかもしれません。
<評点>
・サウンド ★★★★★(電子楽器1本で勝負する潔さとやはりシンセソロが○)
・メロディ ★★★★★(シンセが生きるのはこのメロディセンスがあってこそ)
・リズム ★★★ (TRシリーズが大活躍だが、強烈なゲートスネアも聴きたい)
・曲構成 ★★★ (ラストのバラードでもう少し頑張れれば・・・)
・個性 ★★★★ (ヴォーカル、シンセソロ、個性の塊なはずなのだが・・)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「砂漠の熱帯魚」 鈴木トオル
「砂漠の熱帯魚」(1989 エピックソニー)
鈴木トオル:vocal・chorus・guitar solo・acousitic piano

1.「夜を泳いで」 詞:只野菜摘 曲:渡辺信平 編:Hilary Bercovici・Bobby Martin
2.「君が降りてくる時間」 詞:只野菜摘 曲・編:渡辺信平
3.「砂漠の熱帯魚」 詞:只野菜摘 曲:菅原弘明 編:DAHLIA
4.「想像デート」 詞:只野菜摘 曲:安部恭弘 編:DAHLIA
5.「街にあきた僕」 詞:只野菜摘 曲:成田忍 編:DAHLIA
6.「風の路」 詞:山田ひろし 曲・編:矢萩渉
7.「ひぐらし」 曲・編:日向大介
8.「エッシャー的恋愛」
詞:只野菜摘 曲:中崎英也 編:Hilary Bercovici・Bobby Martin
9.「paradiseへparade」 詞:山田ひろし・只野菜摘 曲:成田忍 編:DAHLIA
10.「避暑地が遠くなる」 詞:只野菜摘 曲・編:矢萩渉
<support musician>
Michael Sembello:guitar
武沢豊:guitar
成田忍 (DAHLIA):acoustic guitar・electric guitar・chorus arrangement
Jimmy Haslip:bass
沖山優司:bass
Whacho:drums
寺谷誠一:drums
Hilary bercovici:keyboard
菅原弘明 (DAHLIA):keyboard・computer programming・chorus arrangement
松浦晃久:keyboard・acoustic piano
渡辺信平:keyboard・computer programming・chorus arrangement
日向大介:Synclavier・chorus arrangement
八尋知洋:percussions
Richard Elliot:alto sax
Bobby Martin:tenor sax・brass arrangement
前田康美:chorus
片桐はいり:my car madam
最上三樹生:computer programming
秋葉淳:Synclavier system operate
矢萩渉:chorus arrangement
produced by 篠崎恵子・日向大介
co-produced by 鈴木トオル
mixing engineered by 太田安彦・日向大介
recording engineered by 太田安彦・日向大介・Hilary Bercovici
●ヴォーカルを最大限に生かした鮮やかなオーガニックサウンド!LOOK脱退後のソロデビュー盤
「シャイニンオン君が哀しい」で颯爽とデビュー、大ヒットとなったため、その後良質なポップソングを輩出した割にはいまいち一発屋と勘違いされている向きのあるLOOK。その特徴的なハスキー&ハイトーンヴォイスでバンドを牽引していた鈴木トオルがLOOKを脱退し、ソロとして新たな一歩を刻んだ記念碑的なアルバムがこの作品です。あのようなオシャレなPOPSバンド?から脱退してまで目指すとすれば、よりハードなロック的アプローチなのか(彼はギタリストでもある)、それともさらに純粋なヴォーカリストとしての道を歩むのか、その行方が注目されたわけですが、彼は後者を選び、そのスタイルは現在も崩れてはいません。
ソロとしてのデビュー作である本作は、ゆるいテンポでじっくりヴォーカルを聴かせるアルバムでありながら、再デビューということでサウンドにも気合いの入った好盤です。プロデュースがインテリアズの日向大介で、当時シンクラヴィアの所有者でもあった彼の指揮するハイファイな音(当時)がメリハリを効かせています。作編曲陣も、Hilary bercoviciらのNYミュージシャンから、元URBAN DANCEの成田忍が当時高橋幸宏系のプログラマーとしても活躍していた菅原弘明と組んだアレンジユニットDAHLIA、新進気鋭のシティポップスアーティスト渡辺信平、安全地帯の渋いギタリスト矢萩渉といった、玄人好みのメンバーで、それぞれの特徴を生かした良質のポップソングを生み出しています。特徴的なのは、1つ1つの音を大切にしているのがわかる丁寧な音の際立たせ方で、それがその落ち着いた楽曲の多いこの作品のクオリティをさらに押し上げています。また、サマーソング中心ではあるが、はじけた印象ではなく、涼しさを感じさせる癒し系の側面も持っているので、真夏の縁側で涼みながら聴くというシチュエーションも良いのではないでしょうか。
彼はその後はレコード会社も移籍し、さらにヴォーカル重視の作風になってしまい、TECHNOLOGYさは希薄になっていきますが、この作品は彼のヴォーカルを生かしながらクセのある大人のハイクオリティサウンドに支えられた避暑地ソングの名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「街にあきた僕」
この作品の中で最もテンポが速いポップソング(そんなに速くはないが)。オルガンベースの軽快なサウンドの中に無機質なシンセ音も散りばめるという成田&菅原の職人芸が楽しめます。リズム隊が沖山優司と寺谷誠一ということで、新生URBAN DANCEの演奏という点でも興味深い(一部のマニアにはですが)楽曲です。
・「夜を泳いで」
シングルカットされたいわゆるゴージャスな名曲。NY出身ミュージシャンをバックに得意のハイトーンヴォーカルで攻めます。この曲は非常にメロディが秀逸で、特にBメロなんかは鈴木トオルの声の特徴を生かしてメロディを作っているとしか思えないほどのハマリっぷりです。渡辺信平は期待されたシンガーソングライターだったのですが、余りパッとしなかったのが残念です。
・「風の路」
全くアクのない涼しげな雰囲気が漂う安全地帯の矢萩渉作品。ギターの音の粒も鮮やかにうっすらと入るシンセパッド、スチールドラムを模した音色にこれまた良いメロディ、というか鈴木のヴォーカルが楽曲を呼んでいるような感じもします。その声にメロディが集まってくるというか・・。それほどハマるメロディがこのアルバムには多いのです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (あえてTECHNOLOGYを使ってのオーガニックさが巧み)
・メロディ ★★★★ (作家陣が歌手に生かされたという素晴らしいメロディ)
・リズム ★★ (実はリズムの音色も凝っているのだが)
・曲構成 ★★★ (コンセプト上ミディアムが多いがそれはそれで悪くない)
・個性 ★★★ (彼の声そのものが個性。それ以上何物でもない)
総合評点: 8点
鈴木トオル:vocal・chorus・guitar solo・acousitic piano

1.「夜を泳いで」 詞:只野菜摘 曲:渡辺信平 編:Hilary Bercovici・Bobby Martin
2.「君が降りてくる時間」 詞:只野菜摘 曲・編:渡辺信平
3.「砂漠の熱帯魚」 詞:只野菜摘 曲:菅原弘明 編:DAHLIA
4.「想像デート」 詞:只野菜摘 曲:安部恭弘 編:DAHLIA
5.「街にあきた僕」 詞:只野菜摘 曲:成田忍 編:DAHLIA
6.「風の路」 詞:山田ひろし 曲・編:矢萩渉
7.「ひぐらし」 曲・編:日向大介
8.「エッシャー的恋愛」
詞:只野菜摘 曲:中崎英也 編:Hilary Bercovici・Bobby Martin
9.「paradiseへparade」 詞:山田ひろし・只野菜摘 曲:成田忍 編:DAHLIA
10.「避暑地が遠くなる」 詞:只野菜摘 曲・編:矢萩渉
<support musician>
Michael Sembello:guitar
武沢豊:guitar
成田忍 (DAHLIA):acoustic guitar・electric guitar・chorus arrangement
Jimmy Haslip:bass
沖山優司:bass
Whacho:drums
寺谷誠一:drums
Hilary bercovici:keyboard
菅原弘明 (DAHLIA):keyboard・computer programming・chorus arrangement
松浦晃久:keyboard・acoustic piano
渡辺信平:keyboard・computer programming・chorus arrangement
日向大介:Synclavier・chorus arrangement
八尋知洋:percussions
Richard Elliot:alto sax
Bobby Martin:tenor sax・brass arrangement
前田康美:chorus
片桐はいり:my car madam
最上三樹生:computer programming
秋葉淳:Synclavier system operate
矢萩渉:chorus arrangement
produced by 篠崎恵子・日向大介
co-produced by 鈴木トオル
mixing engineered by 太田安彦・日向大介
recording engineered by 太田安彦・日向大介・Hilary Bercovici
●ヴォーカルを最大限に生かした鮮やかなオーガニックサウンド!LOOK脱退後のソロデビュー盤
「シャイニンオン君が哀しい」で颯爽とデビュー、大ヒットとなったため、その後良質なポップソングを輩出した割にはいまいち一発屋と勘違いされている向きのあるLOOK。その特徴的なハスキー&ハイトーンヴォイスでバンドを牽引していた鈴木トオルがLOOKを脱退し、ソロとして新たな一歩を刻んだ記念碑的なアルバムがこの作品です。あのようなオシャレなPOPSバンド?から脱退してまで目指すとすれば、よりハードなロック的アプローチなのか(彼はギタリストでもある)、それともさらに純粋なヴォーカリストとしての道を歩むのか、その行方が注目されたわけですが、彼は後者を選び、そのスタイルは現在も崩れてはいません。
ソロとしてのデビュー作である本作は、ゆるいテンポでじっくりヴォーカルを聴かせるアルバムでありながら、再デビューということでサウンドにも気合いの入った好盤です。プロデュースがインテリアズの日向大介で、当時シンクラヴィアの所有者でもあった彼の指揮するハイファイな音(当時)がメリハリを効かせています。作編曲陣も、Hilary bercoviciらのNYミュージシャンから、元URBAN DANCEの成田忍が当時高橋幸宏系のプログラマーとしても活躍していた菅原弘明と組んだアレンジユニットDAHLIA、新進気鋭のシティポップスアーティスト渡辺信平、安全地帯の渋いギタリスト矢萩渉といった、玄人好みのメンバーで、それぞれの特徴を生かした良質のポップソングを生み出しています。特徴的なのは、1つ1つの音を大切にしているのがわかる丁寧な音の際立たせ方で、それがその落ち着いた楽曲の多いこの作品のクオリティをさらに押し上げています。また、サマーソング中心ではあるが、はじけた印象ではなく、涼しさを感じさせる癒し系の側面も持っているので、真夏の縁側で涼みながら聴くというシチュエーションも良いのではないでしょうか。
彼はその後はレコード会社も移籍し、さらにヴォーカル重視の作風になってしまい、TECHNOLOGYさは希薄になっていきますが、この作品は彼のヴォーカルを生かしながらクセのある大人のハイクオリティサウンドに支えられた避暑地ソングの名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「街にあきた僕」
この作品の中で最もテンポが速いポップソング(そんなに速くはないが)。オルガンベースの軽快なサウンドの中に無機質なシンセ音も散りばめるという成田&菅原の職人芸が楽しめます。リズム隊が沖山優司と寺谷誠一ということで、新生URBAN DANCEの演奏という点でも興味深い(一部のマニアにはですが)楽曲です。
・「夜を泳いで」
シングルカットされたいわゆるゴージャスな名曲。NY出身ミュージシャンをバックに得意のハイトーンヴォーカルで攻めます。この曲は非常にメロディが秀逸で、特にBメロなんかは鈴木トオルの声の特徴を生かしてメロディを作っているとしか思えないほどのハマリっぷりです。渡辺信平は期待されたシンガーソングライターだったのですが、余りパッとしなかったのが残念です。
・「風の路」
全くアクのない涼しげな雰囲気が漂う安全地帯の矢萩渉作品。ギターの音の粒も鮮やかにうっすらと入るシンセパッド、スチールドラムを模した音色にこれまた良いメロディ、というか鈴木のヴォーカルが楽曲を呼んでいるような感じもします。その声にメロディが集まってくるというか・・。それほどハマるメロディがこのアルバムには多いのです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (あえてTECHNOLOGYを使ってのオーガニックさが巧み)
・メロディ ★★★★ (作家陣が歌手に生かされたという素晴らしいメロディ)
・リズム ★★ (実はリズムの音色も凝っているのだが)
・曲構成 ★★★ (コンセプト上ミディアムが多いがそれはそれで悪くない)
・個性 ★★★ (彼の声そのものが個性。それ以上何物でもない)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「CUBISM」 黒沢光義
「CUBISM」(1990 東芝EMI)
黒沢光義:vocal

1.「MARTINI EXPRESS」 詞:秋谷銀四郎 曲:大羽義光 編:井上日徳
2.「ガラスのクロコダイル」 詞:秋谷銀四郎 曲:大羽義光 編:井上日徳
3.「Try Again」 詞:小林まさみ 曲:大羽義光 編:井上日徳
4.「モノクロの心」 詞:黒沢光義 曲:大羽義光 編:井上日徳
5.「彼女はACTRESS」 詞:小林まさみ 曲:大羽義光 編:井上日徳
6.「"OVERHEAT"ノイローゼ」 詞:小林まさみ 曲:大羽義光 編:井上日徳
7.「SHAKY NIGHT」 詞:小林まさみ 曲:稗島寿太郎 編:井上日徳
8.「Silly」 詞:小林まさみ 曲:稗島寿太郎 編:井上日徳
9.「Missing Rose」 詞:小林まさみ 曲:鈴木康志 編:井上日徳
10.「KO-KO-RO」 詞:秋谷銀四郎 曲:陽明主 編:井上日徳
<support musician>
井上日徳:electric guitar・keyboards・chorus
斉藤英夫:electric guitar
吉川忠英:acoustic guitar
松原秀樹:electric bass
美久月千晴:electric bass
江口信夫:drums
小川賢司:drums
長谷部徹:drums
重実徹:keyboards
渕野繁雄:sax
EVE:chorus
かまいたち:chorus
鈴木康志:chorus
山根栄子:chorus
石川鉄男:synthesizer operate
梅原篤:synthesizer operate
福田竜太:synthesizer operate
produced by 角谷哲朗・中平ヤスオ
sound produced by 井上日徳
engineered by 三浦瑞生
●時代遅れのデジタル仕掛けサウンド!煮え切らない歌謡POPSが逆に好印象のデビュー&ラスト作
純粋な男性POPSヴォーカリスト、最近少ないと思いませんか。作詞は1曲だけ、作曲編曲はプロに委ねて自身はヴォーカルに専念するという、黒沢光義はただ朴訥に歌うのみなのです。角松敏生や原田真二のようにマルチアーティストでもない、久保田利伸や中西圭三のように黒くもない、岡村靖幸や荒木真樹彦のように男の色気も感じられない、非常に中途半端な立ち位置でただ一途に歌うのみ、それが黒沢光義なのです。その熱唱型の歌唱は実力派にふさわしい印象を受けますが、そこら辺止まりなのが、また彼らしい。もちろんそのどっちつかずな個性が邪魔をして短命に終わってしまう運命にあるのですが、実は彼が唯一残したアルバムはいま一度再評価してもよいのではないかと思います。
彼の1stアルバム「CUBISM」は、そのインパクトのある幾何学模様を配したミステリアスなルックスのジャケットが印象的であるが、サウンドは80年代の派手なオーバーヒートアレンジを通り過ぎて、幾分スタイリッシュに進化したデジタルPOPSが基調です。ビートの効いたダンスナンバーやその歌唱力で聴かせるバラードをバランスよく配置し、時にはがなりながらも力強いヴォーカルで楽曲を引っ張っています。彼を裏から支えるサウンドを操るのが、麻田華子らアイドル楽曲の編曲でも活躍していた井上日徳で、王道のロック&POPSを柱に随所でデジタルな味付けをして時代に即したサウンドに徹しています。特に2曲目の「ガラスのクロコダイル」のエレクトリックかつ大胆な展開は他に類を見ない完成度で、この曲だけで「CUBISM」を名盤たらしめていると思わせるほどであります。
この後はアルバムをリリースすることがなかった彼ですが、その地味な活動で一般の方々からは忘れられた存在になっているようです。しかしそのキレのあるTECHNOLOGY POPSサウンドをたまには堪能してみても興味深いと思います。といっても音源は廃盤ですが・・・。(B○○○○FFとかに捨て値で転がってます)
<Favorite Songs>
・「ガラスのクロコダイル」
こればかりは舐めてはいけないTECHNOLOGY POPSの名曲。細かいチープなシーケンスから徐々にシャープな迫力あるサウンドに移行する展開は、細かく砕けた破片が集まって1つの物体に復元していくような、一種異様なイメージを喚起させます。この楽曲だけでも彼はTECHNOLOGY POPSの世界にしっかり足跡を残したと思うのです。
・「Try Again」
田原俊彦主演ドラマの主題歌にもなったデビューシングルで、彼の楽曲の中でも一般に最も知られた曲とも言えます。さすがにそれなりに売れただけあって非常にポップです。特にサビは印象に残りますが、どこか90年代の匂いを感じるんですね。80年代ではないこの煮え切らない感じ。
・「KO-KO-RO」
楽曲の全体を支配するコクのあるシンセベースが印象的なアルバムラスト曲。この曲のシンセプログラミングはなかなか味があって、どこか角松敏生の全盛期を彷彿とさせるきらびやかとバブリーさを兼ね備えています。
<評点>
・サウンド ★★★ (楽曲のタイプには似つかわしくないデジタルっぽさが魅力)
・メロディ ★★ (バラードでのメロは光るが、フォーマット通りな感じ)
・リズム ★ (これといって個性は見当たらない)
・曲構成 ★★ (ダンスビート、バラードと非常に安定感がある)
・個性 ★ (これというものがないところが彼の立ち位置に表れてしまったかも)
総合評点: 6点
黒沢光義:vocal

1.「MARTINI EXPRESS」 詞:秋谷銀四郎 曲:大羽義光 編:井上日徳
2.「ガラスのクロコダイル」 詞:秋谷銀四郎 曲:大羽義光 編:井上日徳
3.「Try Again」 詞:小林まさみ 曲:大羽義光 編:井上日徳
4.「モノクロの心」 詞:黒沢光義 曲:大羽義光 編:井上日徳
5.「彼女はACTRESS」 詞:小林まさみ 曲:大羽義光 編:井上日徳
6.「"OVERHEAT"ノイローゼ」 詞:小林まさみ 曲:大羽義光 編:井上日徳
7.「SHAKY NIGHT」 詞:小林まさみ 曲:稗島寿太郎 編:井上日徳
8.「Silly」 詞:小林まさみ 曲:稗島寿太郎 編:井上日徳
9.「Missing Rose」 詞:小林まさみ 曲:鈴木康志 編:井上日徳
10.「KO-KO-RO」 詞:秋谷銀四郎 曲:陽明主 編:井上日徳
<support musician>
井上日徳:electric guitar・keyboards・chorus
斉藤英夫:electric guitar
吉川忠英:acoustic guitar
松原秀樹:electric bass
美久月千晴:electric bass
江口信夫:drums
小川賢司:drums
長谷部徹:drums
重実徹:keyboards
渕野繁雄:sax
EVE:chorus
かまいたち:chorus
鈴木康志:chorus
山根栄子:chorus
石川鉄男:synthesizer operate
梅原篤:synthesizer operate
福田竜太:synthesizer operate
produced by 角谷哲朗・中平ヤスオ
sound produced by 井上日徳
engineered by 三浦瑞生
●時代遅れのデジタル仕掛けサウンド!煮え切らない歌謡POPSが逆に好印象のデビュー&ラスト作
純粋な男性POPSヴォーカリスト、最近少ないと思いませんか。作詞は1曲だけ、作曲編曲はプロに委ねて自身はヴォーカルに専念するという、黒沢光義はただ朴訥に歌うのみなのです。角松敏生や原田真二のようにマルチアーティストでもない、久保田利伸や中西圭三のように黒くもない、岡村靖幸や荒木真樹彦のように男の色気も感じられない、非常に中途半端な立ち位置でただ一途に歌うのみ、それが黒沢光義なのです。その熱唱型の歌唱は実力派にふさわしい印象を受けますが、そこら辺止まりなのが、また彼らしい。もちろんそのどっちつかずな個性が邪魔をして短命に終わってしまう運命にあるのですが、実は彼が唯一残したアルバムはいま一度再評価してもよいのではないかと思います。
彼の1stアルバム「CUBISM」は、そのインパクトのある幾何学模様を配したミステリアスなルックスのジャケットが印象的であるが、サウンドは80年代の派手なオーバーヒートアレンジを通り過ぎて、幾分スタイリッシュに進化したデジタルPOPSが基調です。ビートの効いたダンスナンバーやその歌唱力で聴かせるバラードをバランスよく配置し、時にはがなりながらも力強いヴォーカルで楽曲を引っ張っています。彼を裏から支えるサウンドを操るのが、麻田華子らアイドル楽曲の編曲でも活躍していた井上日徳で、王道のロック&POPSを柱に随所でデジタルな味付けをして時代に即したサウンドに徹しています。特に2曲目の「ガラスのクロコダイル」のエレクトリックかつ大胆な展開は他に類を見ない完成度で、この曲だけで「CUBISM」を名盤たらしめていると思わせるほどであります。
この後はアルバムをリリースすることがなかった彼ですが、その地味な活動で一般の方々からは忘れられた存在になっているようです。しかしそのキレのあるTECHNOLOGY POPSサウンドをたまには堪能してみても興味深いと思います。といっても音源は廃盤ですが・・・。(B○○○○FFとかに捨て値で転がってます)
<Favorite Songs>
・「ガラスのクロコダイル」
こればかりは舐めてはいけないTECHNOLOGY POPSの名曲。細かいチープなシーケンスから徐々にシャープな迫力あるサウンドに移行する展開は、細かく砕けた破片が集まって1つの物体に復元していくような、一種異様なイメージを喚起させます。この楽曲だけでも彼はTECHNOLOGY POPSの世界にしっかり足跡を残したと思うのです。
・「Try Again」
田原俊彦主演ドラマの主題歌にもなったデビューシングルで、彼の楽曲の中でも一般に最も知られた曲とも言えます。さすがにそれなりに売れただけあって非常にポップです。特にサビは印象に残りますが、どこか90年代の匂いを感じるんですね。80年代ではないこの煮え切らない感じ。
・「KO-KO-RO」
楽曲の全体を支配するコクのあるシンセベースが印象的なアルバムラスト曲。この曲のシンセプログラミングはなかなか味があって、どこか角松敏生の全盛期を彷彿とさせるきらびやかとバブリーさを兼ね備えています。
<評点>
・サウンド ★★★ (楽曲のタイプには似つかわしくないデジタルっぽさが魅力)
・メロディ ★★ (バラードでのメロは光るが、フォーマット通りな感じ)
・リズム ★ (これといって個性は見当たらない)
・曲構成 ★★ (ダンスビート、バラードと非常に安定感がある)
・個性 ★ (これというものがないところが彼の立ち位置に表れてしまったかも)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「真璃子」 真璃子
「真璃子」(1986 フォーライフ)
真璃子:vocal

1.「なきむし天使」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:奥慶一
2.「風少年」 詞:山川啓介 曲・編:水谷公生
3.「コスモス物語」 詞:麻生圭子 曲:鈴木キサブロー 編:山川恵津子
4.「私星伝説」 詞:麻生圭子 曲:鈴木キサブロー 編:山川恵津子
5.「九月には行かないで」 詞:竜真知子 曲:鈴木キサブロー 編:山川恵津子
6.「恋、みーつけた」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:山川恵津子
7.「土曜日のカナリア」 詞:松井五郎 曲・編:水谷公生
8.「魔法の時間」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:山川恵津子
9.「22色のハート」 詞:松井五郎 曲・編:山川恵津子
10.「アリスの恋」 詞:ありうべ雁子 曲・編:山川恵津子
<support musician>
今 剛:electric guitar
松下誠:electric guitar
笛吹利明:acoustic guitar
安田裕美:acoustic guitar
富倉安生:electric bass
美久月千晴:electric bass
渡辺直樹:electric bass
青山純:drums
宮崎まさひろ:drums
山木秀夫:drums
奥慶一:keyboards
福田裕彦:keyboards・synthesizer operate
山川恵津子:keyboards・backing vocals
斉藤ノブ:percussions
菅原裕紀:percussions
坂宏之:oboe
中西グループ:strings
前田グループ:strings
中西俊博:solo violin
木戸泰弘:backing vocals
比山貴咏史:backing vocals
土岐幸男:synthesizer operate
鳥山敬治:synthesizer operate
松武秀樹:synthesizer operate
森達彦:synthesizer operate
produced by 池田雅彦・山内英邦
engineered by 石塚良一
●山川恵津子の編曲能力が大活躍!音響面にも凝ったアイドル歌謡の傑作
86年にデビューしたアイドル歌手、真璃子。現在のJ-POPwシーンではやたらとローマ字の名前だけというアーティスト名が多いような気がしますが、当時のアイドルは「苗字+名前」のノーマルタイプの芸名(本名)がほとんどでした。その中でこの「真璃子」という芸名は異彩を放つとともに、どこか神秘的な香りさえ漂わせていたような感じがします。そんな彼女は同事務所のとんねるずの妹分という微妙な肩書きを背負ってデビュー。おかっぱ頭に微妙なルックス(失礼)、しかし歌唱力には定評のあった歌手(アイドルというよりは歌手・・かな)でした。とにかくデビューシングル「私星伝説」のインパクトが凄いのです。何が凄いのかというと、当時後藤次利仕事等でハードエッジなデジタルサウンドに開眼していた山川恵津子のアレンジで、上品さの中に必要以上に凝ったサウンドが生かされています。
そのデビューシングルを引っさげてリリースされたのが1stアルバムである本作品で、山川恵津子がそのアレンジ力を存分に発揮した重要な作品となっています。尋常でない響きを持ったシンセとドラムサウンドが特徴的で、「私星伝説」もそうなのですが、ラストの「アリスの恋」のギラギラしたシンセや吸い込まれそうなうねり系エフェクトはこのアルバムのハイライトです。そのサウンドを支えているのがやはりエンジニア石塚良一&シンセプログラマーの森達彦なのでしょうか。リバーブの使い方がとにかく派手で、時代を感じさせますがアイドル歌謡でのこの冒険心が好きです。全体的にはアイドルにしてはニューミュージック寄りの落ち着いた楽曲が多いのですが、それでいてこの強烈な(あえて使いますこの単語)サウンドでビシッと引き締めています。ただ惜しむらくは山川恵津子以外のアレンジャー、特に水谷公生の2曲が余りにも他とかけ離れたフォーキーな楽曲で、統一感をなくしていること。全編山川で通して統一感を出せればさらにもう1段階上の名盤になったかもしれません。
<Favorite Songs>
・「アリスの恋」
稀代の名曲。イントロのフレーズから溢れるギラギラしたデジタルシンセ。リバーブ&ディレイをかけるだけかけたシンセ&ドラムサウンドの数々がメルヘンチックなメロディを支えています。特にスネアの音の攻撃的なことといったら・・。圧巻なのはラストCoda部分。フェイザーかフランジャーのうねり系エフェクトで音の渦に吸い込まれそうになる絶妙な音響は既にアイドルソングを超えています。
・「私星伝説」
驚愕のデビューシングル。山川恵津子の入魂アレンジが光ります。それにも増してリバーブたっぷりのシンセパッドやサンプリングドラムの爆音ぶりが素晴らしい。歌謡曲的なメロディのバックがこの音というのがまたシュールです。エンディングのスパッと切ったゲートリバーブもかっこいい!
・「魔法の時間」
松本+筒美の黄金コンビに山川の上品派手アレンジが加わった幻想POPS。ディレイとリバーブを駆使したパワフル音響で、タイトル通り全く現実感がない雰囲気となっています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (やりすぎなくらいのエフェクトがあってのアイドルソング)
・メロディ ★★ (アイドルソングにしては珍しくメロ先行ではない)
・リズム ★★★★★(とにかくスネアの音響がかっこよすぎる)
・曲構成 ★ (複数の編曲者を使ってしまいばらつきが)
・個性 ★★ (歌は上手すぎるほどだが個性は余り感じられない)
総合評点: 7点
真璃子:vocal

1.「なきむし天使」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:奥慶一
2.「風少年」 詞:山川啓介 曲・編:水谷公生
3.「コスモス物語」 詞:麻生圭子 曲:鈴木キサブロー 編:山川恵津子
4.「私星伝説」 詞:麻生圭子 曲:鈴木キサブロー 編:山川恵津子
5.「九月には行かないで」 詞:竜真知子 曲:鈴木キサブロー 編:山川恵津子
6.「恋、みーつけた」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:山川恵津子
7.「土曜日のカナリア」 詞:松井五郎 曲・編:水谷公生
8.「魔法の時間」 詞:松本隆 曲:筒美京平 編:山川恵津子
9.「22色のハート」 詞:松井五郎 曲・編:山川恵津子
10.「アリスの恋」 詞:ありうべ雁子 曲・編:山川恵津子
<support musician>
今 剛:electric guitar
松下誠:electric guitar
笛吹利明:acoustic guitar
安田裕美:acoustic guitar
富倉安生:electric bass
美久月千晴:electric bass
渡辺直樹:electric bass
青山純:drums
宮崎まさひろ:drums
山木秀夫:drums
奥慶一:keyboards
福田裕彦:keyboards・synthesizer operate
山川恵津子:keyboards・backing vocals
斉藤ノブ:percussions
菅原裕紀:percussions
坂宏之:oboe
中西グループ:strings
前田グループ:strings
中西俊博:solo violin
木戸泰弘:backing vocals
比山貴咏史:backing vocals
土岐幸男:synthesizer operate
鳥山敬治:synthesizer operate
松武秀樹:synthesizer operate
森達彦:synthesizer operate
produced by 池田雅彦・山内英邦
engineered by 石塚良一
●山川恵津子の編曲能力が大活躍!音響面にも凝ったアイドル歌謡の傑作
86年にデビューしたアイドル歌手、真璃子。現在のJ-POPwシーンではやたらとローマ字の名前だけというアーティスト名が多いような気がしますが、当時のアイドルは「苗字+名前」のノーマルタイプの芸名(本名)がほとんどでした。その中でこの「真璃子」という芸名は異彩を放つとともに、どこか神秘的な香りさえ漂わせていたような感じがします。そんな彼女は同事務所のとんねるずの妹分という微妙な肩書きを背負ってデビュー。おかっぱ頭に微妙なルックス(失礼)、しかし歌唱力には定評のあった歌手(アイドルというよりは歌手・・かな)でした。とにかくデビューシングル「私星伝説」のインパクトが凄いのです。何が凄いのかというと、当時後藤次利仕事等でハードエッジなデジタルサウンドに開眼していた山川恵津子のアレンジで、上品さの中に必要以上に凝ったサウンドが生かされています。
そのデビューシングルを引っさげてリリースされたのが1stアルバムである本作品で、山川恵津子がそのアレンジ力を存分に発揮した重要な作品となっています。尋常でない響きを持ったシンセとドラムサウンドが特徴的で、「私星伝説」もそうなのですが、ラストの「アリスの恋」のギラギラしたシンセや吸い込まれそうなうねり系エフェクトはこのアルバムのハイライトです。そのサウンドを支えているのがやはりエンジニア石塚良一&シンセプログラマーの森達彦なのでしょうか。リバーブの使い方がとにかく派手で、時代を感じさせますがアイドル歌謡でのこの冒険心が好きです。全体的にはアイドルにしてはニューミュージック寄りの落ち着いた楽曲が多いのですが、それでいてこの強烈な(あえて使いますこの単語)サウンドでビシッと引き締めています。ただ惜しむらくは山川恵津子以外のアレンジャー、特に水谷公生の2曲が余りにも他とかけ離れたフォーキーな楽曲で、統一感をなくしていること。全編山川で通して統一感を出せればさらにもう1段階上の名盤になったかもしれません。
<Favorite Songs>
・「アリスの恋」
稀代の名曲。イントロのフレーズから溢れるギラギラしたデジタルシンセ。リバーブ&ディレイをかけるだけかけたシンセ&ドラムサウンドの数々がメルヘンチックなメロディを支えています。特にスネアの音の攻撃的なことといったら・・。圧巻なのはラストCoda部分。フェイザーかフランジャーのうねり系エフェクトで音の渦に吸い込まれそうになる絶妙な音響は既にアイドルソングを超えています。
・「私星伝説」
驚愕のデビューシングル。山川恵津子の入魂アレンジが光ります。それにも増してリバーブたっぷりのシンセパッドやサンプリングドラムの爆音ぶりが素晴らしい。歌謡曲的なメロディのバックがこの音というのがまたシュールです。エンディングのスパッと切ったゲートリバーブもかっこいい!
・「魔法の時間」
松本+筒美の黄金コンビに山川の上品派手アレンジが加わった幻想POPS。ディレイとリバーブを駆使したパワフル音響で、タイトル通り全く現実感がない雰囲気となっています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (やりすぎなくらいのエフェクトがあってのアイドルソング)
・メロディ ★★ (アイドルソングにしては珍しくメロ先行ではない)
・リズム ★★★★★(とにかくスネアの音響がかっこよすぎる)
・曲構成 ★ (複数の編曲者を使ってしまいばらつきが)
・個性 ★★ (歌は上手すぎるほどだが個性は余り感じられない)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「LOGIC」 LOGIC SYSTEM
「LOGIC」(1981 東芝EMI)
LOGIC SYSTEM

<members>
松武秀樹:Moog III-C・Prophet 5・ARP Odessey・Oberheim 8 voice・Yamaha SS-30・Yamaha CS-10・Polymoog・Yamaha CP-80・Horner Clavinet D-6・EMS VCS-3・Pollard Syndrum・Roland Jupiter-4・Roland Vocoder VP-330・Roland MC-8 computer programming・Roland TR-808・Roland DR-55・vocal
1.「Intro」 曲・編:松武秀樹
2.「Unit」 曲・編:川上了
3.「Domino Dance」 曲・編:川上了
4.「天変地異 (Convulsion of nature)」 曲:川上了 編:川上了・松武秀樹
5.「XY?」 詞:Gregg D. Moore 曲・編:川上了
6.「Talk Back」 詞:松武秀樹・Gregg D. Moore 曲・編:川上了
7.「Clash (Chinju of Sun)」 曲・編:川上了
8.「Person to Person」 曲・編:川上了
9.「Logic」 曲・編:川上了
<support musician>
大村憲司:electric guitar
玉木宏樹:electric violin
produced by 松武秀樹
co-produced by 川上了
engineered by 松武秀樹・関本スグル
●YMO直系の卓越したプログラミング以上に川上了のセンスが光るテクノアルバム
YMO全盛期を陰で支えた張本人、computer programmerの先駆けである大御所、松武秀樹の個人ユニットであるLOGIC SYSTEM。現在でも一応活動を続けているらしいのですが、これはYMO全盛期に勢いにまかせてリリースされたデビューアルバムです。言うまでもなくYMOの初期から2度目のワールドツアーにかけては彼の存在なくしては語れないほどの影響力であったので、自然とこのアルバムはYMOの音が堪能できます。そりゃそうですよね。YMOの音を創っていたのは彼ですから。まあこの時代のソレ系の音は、ほとんど彼が関わってるといっても過言ではないでしょう。急速に電子音楽が市民権を得た当時、彼のような存在は引っ張りだこだったに違いないのです。
さて、この作品は前述のようにYMOモドキと言われても仕方がないような兄弟アルバムですが、さすがプログラマーらしく歌モノはほんの一部にとどめ、インストで固めた電子音そのものを聴かせようとする作風で、POPSとしての解釈は難しいかもしれません。しかしそこは作編曲家の川上了を迎え、ほぼ全作品の楽曲の作編曲を任せています。しかしそこはさすがプロ。このジャンルの楽曲を見事にPOPSとして昇華しています。インストなのに。メロディ心があるというか。この楽曲の素晴らしさがあるからこそ松武秀樹のシンセオペレーティングが生きてくるわけで、現にこの作品での図太いアナログシンセサウンドはYMOよりもYMOっぽい、いや、どちらかというと坂本龍一「千のナイフ」に近いクラシックな電子音楽を感じさせながら、聞きやすいというスペースミュージック作品となっています。しかし「千のナイフ」と異なるのはギターの違いです。大村憲司の起用でフュージョン色は全くありません。
その後このユニットは「Venus」、「東方快車」を立て続けにリリース(既にYMO色は薄れたが)、1度活動休止した後、90年代に1度復活、21世紀になってまた復活し、しぶとく活動しています。松武秀樹のライフワークですね。
<Favorite Songs>
・「XY?」
エフェクトされたナレーションが絡むアップテンポな楽曲。そのCOOLなシンセサウンドはYMOでいうところの「BGM」に近いと感じられます。またこの曲が限りなくポップに聞こえるのは、後半の前衛的なエレキヴァイオリン(ギターに聞こえるけど・・)によるところが多いと思います。
・「Talk Back」
シンセで創ったリズム音が特徴的な唯一のヴォーカル曲。一応本人が歌ってるみたいです。しかしこのデフォルメされたヴォーカルを聴くと、ほとんどYMOっぽいです。多分このアルバムのリリース時期が早ければYMOの第2次ワールドツアーで披露されてたかもしれませんね。この曲では大村憲司ギター大活躍です。
・「Unit」
この楽曲が限りなくYMOっぽく聞こえる理由、それはやはりあのフランス語?のナレーションです。「中国女」のナレーションですからね。曲調もゆったりな大陸的イメージですが、その淡々と進むスピードが冒頭曲としては落ち着き過ぎか?ということを差し引いてもしっかり音で楽しめるはずです。
<評点>
・サウンド ★★★★(MC-8とムーグのシンセの音圧はやはり・・スゴイ)
・メロディ ★★ (楽曲の性格的にいかにメロディつけたといっても・・)
・リズム ★★ (YMOは高橋幸宏がいたが、さすがに機械リズムだと)
・曲構成 ★ (もう少しヴォーカル曲があってもよかったなあ)
・個性 ★★ (当時としては仕方ないかもしれないが、やはりYMO)
総合評点: 7点
LOGIC SYSTEM

<members>
松武秀樹:Moog III-C・Prophet 5・ARP Odessey・Oberheim 8 voice・Yamaha SS-30・Yamaha CS-10・Polymoog・Yamaha CP-80・Horner Clavinet D-6・EMS VCS-3・Pollard Syndrum・Roland Jupiter-4・Roland Vocoder VP-330・Roland MC-8 computer programming・Roland TR-808・Roland DR-55・vocal
1.「Intro」 曲・編:松武秀樹
2.「Unit」 曲・編:川上了
3.「Domino Dance」 曲・編:川上了
4.「天変地異 (Convulsion of nature)」 曲:川上了 編:川上了・松武秀樹
5.「XY?」 詞:Gregg D. Moore 曲・編:川上了
6.「Talk Back」 詞:松武秀樹・Gregg D. Moore 曲・編:川上了
7.「Clash (Chinju of Sun)」 曲・編:川上了
8.「Person to Person」 曲・編:川上了
9.「Logic」 曲・編:川上了
<support musician>
大村憲司:electric guitar
玉木宏樹:electric violin
produced by 松武秀樹
co-produced by 川上了
engineered by 松武秀樹・関本スグル
●YMO直系の卓越したプログラミング以上に川上了のセンスが光るテクノアルバム
YMO全盛期を陰で支えた張本人、computer programmerの先駆けである大御所、松武秀樹の個人ユニットであるLOGIC SYSTEM。現在でも一応活動を続けているらしいのですが、これはYMO全盛期に勢いにまかせてリリースされたデビューアルバムです。言うまでもなくYMOの初期から2度目のワールドツアーにかけては彼の存在なくしては語れないほどの影響力であったので、自然とこのアルバムはYMOの音が堪能できます。そりゃそうですよね。YMOの音を創っていたのは彼ですから。まあこの時代のソレ系の音は、ほとんど彼が関わってるといっても過言ではないでしょう。急速に電子音楽が市民権を得た当時、彼のような存在は引っ張りだこだったに違いないのです。
さて、この作品は前述のようにYMOモドキと言われても仕方がないような兄弟アルバムですが、さすがプログラマーらしく歌モノはほんの一部にとどめ、インストで固めた電子音そのものを聴かせようとする作風で、POPSとしての解釈は難しいかもしれません。しかしそこは作編曲家の川上了を迎え、ほぼ全作品の楽曲の作編曲を任せています。しかしそこはさすがプロ。このジャンルの楽曲を見事にPOPSとして昇華しています。インストなのに。メロディ心があるというか。この楽曲の素晴らしさがあるからこそ松武秀樹のシンセオペレーティングが生きてくるわけで、現にこの作品での図太いアナログシンセサウンドはYMOよりもYMOっぽい、いや、どちらかというと坂本龍一「千のナイフ」に近いクラシックな電子音楽を感じさせながら、聞きやすいというスペースミュージック作品となっています。しかし「千のナイフ」と異なるのはギターの違いです。大村憲司の起用でフュージョン色は全くありません。
その後このユニットは「Venus」、「東方快車」を立て続けにリリース(既にYMO色は薄れたが)、1度活動休止した後、90年代に1度復活、21世紀になってまた復活し、しぶとく活動しています。松武秀樹のライフワークですね。
<Favorite Songs>
・「XY?」
エフェクトされたナレーションが絡むアップテンポな楽曲。そのCOOLなシンセサウンドはYMOでいうところの「BGM」に近いと感じられます。またこの曲が限りなくポップに聞こえるのは、後半の前衛的なエレキヴァイオリン(ギターに聞こえるけど・・)によるところが多いと思います。
・「Talk Back」
シンセで創ったリズム音が特徴的な唯一のヴォーカル曲。一応本人が歌ってるみたいです。しかしこのデフォルメされたヴォーカルを聴くと、ほとんどYMOっぽいです。多分このアルバムのリリース時期が早ければYMOの第2次ワールドツアーで披露されてたかもしれませんね。この曲では大村憲司ギター大活躍です。
・「Unit」
この楽曲が限りなくYMOっぽく聞こえる理由、それはやはりあのフランス語?のナレーションです。「中国女」のナレーションですからね。曲調もゆったりな大陸的イメージですが、その淡々と進むスピードが冒頭曲としては落ち着き過ぎか?ということを差し引いてもしっかり音で楽しめるはずです。
<評点>
・サウンド ★★★★(MC-8とムーグのシンセの音圧はやはり・・スゴイ)
・メロディ ★★ (楽曲の性格的にいかにメロディつけたといっても・・)
・リズム ★★ (YMOは高橋幸宏がいたが、さすがに機械リズムだと)
・曲構成 ★ (もう少しヴォーカル曲があってもよかったなあ)
・個性 ★★ (当時としては仕方ないかもしれないが、やはりYMO)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「GRAPE IRIS」 D-DAY
「GRAPE IRIS」 (1986 バルコニー)
D-DAY

<members>
川喜多美子:vocals・bass
大桃修一:keyboards
秀島恭子:guitars
桜井真理夫:bass
野沢"マル"久仁子:drums
藤原勝:guitars
石田宏一:drums
1.「NIGHT SHIFT」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
2.「CITRON」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
3.「私の昼と夜」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
4.「NOSTALGIA」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
5.「SWEET SULTAN」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
6.「DEAD END」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
7.「MEMORY」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
8.「DUST」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
9.「KI・RA・I」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
10.「SO THAT NIGHT」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
11.「FLOAT A BOAT」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
<support musician>
板倉文:guitars・keyboards
BANANA:keyboards
吉川洋一郎:keyboards
MA*TO:computer programming
produced by 板倉文
engineered by MA*TO
●全体を包むダークな雰囲気とウィスパーボーカルの対比が興味深い自主制作の名盤
80年代インディーズシーンの中で、可憐さとダークさの二面性で異彩を放っていたのが、川喜多美子率いるD-DAYでした。儚すぎるお世辞にも声量がないながらも、その陰鬱さが個性だった初期から、徐々に声質を生かしたメルヘンチックな世界観へと変貌した後期まで、志向は変わってもその個性的なウィスパーボイスは不変でした。個人的には後期のアイドルPOPSと見まがうかのような、メロディのわかりやすい楽曲が好きでしたが、時期においてサウンドも変わるこのバンドは、それぞれの楽曲によってファン層が分かれるタイプだと思います。
本作はD-DAYの1stアルバムですが、インディーズデビューしてからの軌跡をたどったアルバムといった感じで、レコードのA面とB面では全く異なった音楽性になっています。A面はKilling Timeの板倉文をプロデューサーに迎え、その可憐な歌声のイメージを決定づけたキュートなポップソング集を集めています。ここでは板倉と同じKilling Timeの重要人物MA*TOのサンプラーを中心とした巧妙なプログラミングが印象的で、あっさりとした楽曲に色づけをしています。特にポエトリーリーディング的な「SWEET SULTAN」の幻想的なバックトラックは真骨頂でしょう。かたやB面は初期の楽曲を集めており、楽曲によっては前メンバーでの演奏もあるように、ギターサウンド中心の粗い演奏の楽曲が中心となっています。初期楽曲のアレンジは当時戸川純&ヤプーズ在籍の吉川洋一郎ですが、下手に楽曲をいじくらずどこかデモテープとも言えるような音質がかえって世界観を引き立てているような印象です。何曲かで聞けるリズムボックスもこの時期の特徴です。
D-DAYは昨年から本格的に川喜多ソロユニットとして復活し、現夫の4-D成田忍をパートナーとして、当時よりエレクトロ寄りのPOPSを基調にアルバム「Heavenly Blue」をリリースするなどマイペースに活動中です。そんな時期だからこそあの時代の環境で生まれた天使のようなこの作品も再評価すべき作品だと思います(一昨年リリースの究極ベスト盤「Crossed Fingers」で再評価されましたが)。
<Favorite Songs>
・「NOSTALGIA」
やはり最も好きなのは最も明るくノリノリな、しかしどこか切ないこのポップな楽曲です。イントロの割り切ったシンセフレーズが良いのですが、川喜多の音程もあやふやな浮遊感のあるヴォーカルがなければこの世界観は成り立ちません。
・「NIGHT SHIFT」
全体的にキュートなA面の中で、バンドとしてのかっこよさを追求したとも言えるロック的でありまたニューウェーブ感覚あふれる楽曲です。ここではMA*TOのサンプラーが大活躍で、タイミング良く入るギミックが印象的です。
・「KI・RA・I」
吉川洋一郎アレンジの初期のシングル曲です。気だるい男女の痴話喧嘩?in 電話といった風情の変則構成で、これは川喜多の声でいわゆる「狙った」感じが出ていますw しかしこういうタイプの楽曲(しかもセリフだけで通す)は珍しいだけに、貴重です。また、サウンドを支えるシンセパッドのコード感、COOLですね。
<評点>
・サウンド ★★ (バンドとしての音を大事にしてるとも思えるが、地味か)
・メロディ ★★★(切ないメロディを書ける人だと思う)
・リズム ★★ (リズムボックスにしても生にしても結構淡々としている)
・曲構成 ★ (アルバムとしての統一感であればA面だけでよかったか)
・個性 ★★★(あのヴォーカルだけでも個性だが、バンドの存在感が・・)
総合評点: 6点
「GRAPE IRIS」の楽曲やその他の音源、未発表曲まで収録された究極のベストです。
90年に「All Leaves」というベストが出ましたが(あれは装丁がよかった)、今回はそれを上回る内容です。
D-DAY

<members>
川喜多美子:vocals・bass
大桃修一:keyboards
秀島恭子:guitars
桜井真理夫:bass
野沢"マル"久仁子:drums
藤原勝:guitars
石田宏一:drums
1.「NIGHT SHIFT」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
2.「CITRON」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
3.「私の昼と夜」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
4.「NOSTALGIA」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
5.「SWEET SULTAN」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
6.「DEAD END」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
7.「MEMORY」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
8.「DUST」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
9.「KI・RA・I」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
10.「SO THAT NIGHT」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
11.「FLOAT A BOAT」 詞・曲:川喜多美子 編:D-DAY
<support musician>
板倉文:guitars・keyboards
BANANA:keyboards
吉川洋一郎:keyboards
MA*TO:computer programming
produced by 板倉文
engineered by MA*TO
●全体を包むダークな雰囲気とウィスパーボーカルの対比が興味深い自主制作の名盤
80年代インディーズシーンの中で、可憐さとダークさの二面性で異彩を放っていたのが、川喜多美子率いるD-DAYでした。儚すぎるお世辞にも声量がないながらも、その陰鬱さが個性だった初期から、徐々に声質を生かしたメルヘンチックな世界観へと変貌した後期まで、志向は変わってもその個性的なウィスパーボイスは不変でした。個人的には後期のアイドルPOPSと見まがうかのような、メロディのわかりやすい楽曲が好きでしたが、時期においてサウンドも変わるこのバンドは、それぞれの楽曲によってファン層が分かれるタイプだと思います。
本作はD-DAYの1stアルバムですが、インディーズデビューしてからの軌跡をたどったアルバムといった感じで、レコードのA面とB面では全く異なった音楽性になっています。A面はKilling Timeの板倉文をプロデューサーに迎え、その可憐な歌声のイメージを決定づけたキュートなポップソング集を集めています。ここでは板倉と同じKilling Timeの重要人物MA*TOのサンプラーを中心とした巧妙なプログラミングが印象的で、あっさりとした楽曲に色づけをしています。特にポエトリーリーディング的な「SWEET SULTAN」の幻想的なバックトラックは真骨頂でしょう。かたやB面は初期の楽曲を集めており、楽曲によっては前メンバーでの演奏もあるように、ギターサウンド中心の粗い演奏の楽曲が中心となっています。初期楽曲のアレンジは当時戸川純&ヤプーズ在籍の吉川洋一郎ですが、下手に楽曲をいじくらずどこかデモテープとも言えるような音質がかえって世界観を引き立てているような印象です。何曲かで聞けるリズムボックスもこの時期の特徴です。
D-DAYは昨年から本格的に川喜多ソロユニットとして復活し、現夫の4-D成田忍をパートナーとして、当時よりエレクトロ寄りのPOPSを基調にアルバム「Heavenly Blue」をリリースするなどマイペースに活動中です。そんな時期だからこそあの時代の環境で生まれた天使のようなこの作品も再評価すべき作品だと思います(一昨年リリースの究極ベスト盤「Crossed Fingers」で再評価されましたが)。
<Favorite Songs>
・「NOSTALGIA」
やはり最も好きなのは最も明るくノリノリな、しかしどこか切ないこのポップな楽曲です。イントロの割り切ったシンセフレーズが良いのですが、川喜多の音程もあやふやな浮遊感のあるヴォーカルがなければこの世界観は成り立ちません。
・「NIGHT SHIFT」
全体的にキュートなA面の中で、バンドとしてのかっこよさを追求したとも言えるロック的でありまたニューウェーブ感覚あふれる楽曲です。ここではMA*TOのサンプラーが大活躍で、タイミング良く入るギミックが印象的です。
・「KI・RA・I」
吉川洋一郎アレンジの初期のシングル曲です。気だるい男女の痴話喧嘩?in 電話といった風情の変則構成で、これは川喜多の声でいわゆる「狙った」感じが出ていますw しかしこういうタイプの楽曲(しかもセリフだけで通す)は珍しいだけに、貴重です。また、サウンドを支えるシンセパッドのコード感、COOLですね。
<評点>
・サウンド ★★ (バンドとしての音を大事にしてるとも思えるが、地味か)
・メロディ ★★★(切ないメロディを書ける人だと思う)
・リズム ★★ (リズムボックスにしても生にしても結構淡々としている)
・曲構成 ★ (アルバムとしての統一感であればA面だけでよかったか)
・個性 ★★★(あのヴォーカルだけでも個性だが、バンドの存在感が・・)
総合評点: 6点
「GRAPE IRIS」の楽曲やその他の音源、未発表曲まで収録された究極のベストです。
90年に「All Leaves」というベストが出ましたが(あれは装丁がよかった)、今回はそれを上回る内容です。
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「夢恋人」 藤村美樹
「夢恋人」(1983 徳間ジャパン)
藤村美樹:vocal

1.「仏蘭西映画」 詞:松尾由起夫 曲・編:細野晴臣
2.「レディメイドの恋」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:高橋ユキヒロ
3.「夢・恋・人。」 詞:松本隆 曲・編:細野晴臣
4.「妖星傳」 詞:松尾由起夫 曲・編:細野晴臣
5.「春 mon amour」 詞:松本隆 曲・編:細野晴臣
6.「妖精譜」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:高橋ユキヒロ
7.「抱きとめて」 詞:松尾由起夫 曲:仲井戸麗市 編:白井良明
8.「アフリカンファンタジー」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:白井良明
9.「無垢の花束」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:大村憲司
10.「祈りと微笑(ほほえみ)」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:高橋ユキヒロ
<support musician>
大村憲司:electric guitar
白井良明:electric guitar・acoustic guitar・marimba・kalimba・chorus
鈴木博文:electric bass
富倉安生:electric bass
中原信雄:electric bass
青山純:drums
橿渕哲郎:drums
高橋ユキヒロ:drums・Prophet5・MC-4・Emulator・LINN drum
岡田徹:Prophet5・MC-4
中村哲:OBX・Prophet5・MC-4・TR-808
細野晴臣:Prophet5・MC-4・LINN drum・electric bass・piano・electric piano・TR-808
武川雅寛:trumpet・chorus
矢口博康:sax・chorus
前野佳代子:back vocal
mixing engineered by 松本裕
recording engineered by 松本裕・鈴木隆一
●YMO型テクノポップフォーマットにのっとった歌謡曲仕事の典型的アルバム
1970年代に一世を風靡したアイドルグループであったキャンディーズ。その突然の解散劇はアイドル史上に残る事件であったが、その後の彼女達はというとランこと伊藤蘭とスーこと田中好子は女優として一定の地位を築いたが、ミキこと藤村美樹はシングル「夢・恋・人。」のスマッシュヒットを置き土産に結婚を機に引退。その後は表舞台には出てきません。しかし、キャンディーズの中ではただ1人期間限定とはいえ音楽で勝負したこと、しかもアルバムの半数の作曲をこなしたことなど、音楽性の高さという点では他の2人を圧倒的に凌駕していたのです。
この作品は彼女が唯一残したアルバム。前述のカネボウ化粧品CMソング「夢・恋・人。」のヒットの副産物ともいえる(既定路線だったかもしれないが)この作品は、アイドルの面影もなく全体的に妖艶さをまとった、どこかしらニューロマンティックな雰囲気さえ感じられます。そんなサウンドを支えたのが、細野晴臣・高橋幸宏といったYMO勢や白井良明・岡田徹らMOON RIDERSの面々。このカリスマ的な2大テクノ・ニューウェーブバンドを従えた楽曲は、大胆にも当時最先端の機材を駆使したテクノ・エレポップサウンドで、前半を細野特有の浮遊感溢れるメロディとゆったりながらもジャストなノリのユキヒロDrumsで幻想的な世界観を構築し、後半はどちらかというと多彩なギターサウンド、特に白井良明が大活躍、といってもロックスタイルではなくあくまでストレンジなエフェクトギターですが、細野作品とはまた違ったリアリティの感じられない楽曲が目白押しとなっています。そんなお世辞にも簡単ではないクセのある楽曲群(しかも半数が彼女自身の作曲!)を淡々と歌いこなす藤村美樹、さすがにキャンディーズの音楽面を支えたというだけあります。ただやはりこの作品だけ、というのはその才能からいっても残念ですね。
<Favorite Songs>
・「夢・恋・人。」
ヒットシングル。当時細野晴臣関係の楽曲は総じてYMO的な平坦シンセベースフレーズのエレポップになってしまうのですが、当時大ヒットの中森明菜「禁区」と同タイプの楽曲ながら、やはり少女Aよりは大人の貫禄といいますか、一日の長が感じられます。サウンド面はもう今さら言わなくてもわかるあのシンベとあの幸宏フィルインを期待通り聞くことができます。
・「仏蘭西映画」
アルバムの1曲目がこの渋い曲。とはいえサウンドはMC-4やProphetが活躍するエレクトロ仕様という、当時の流行(歌謡曲界ではやや先取り感がある)を敏感に採り入れた楽曲に仕上がっています。そのふわふわしたメロディといい、どこかチープなシンセといい、どこから聞いても細野楽曲に疑いはありません。
・「アフリカンファンタジー」
強烈なポリリズムが延々と続く80年代白井良明的不思議楽曲の1つです。門あさ美「Beradonna」的なやりたい放題なリズムがとにかく印象的であるが、いくらいななくギターで白井がかき乱そうともそれに動じない藤村美樹の歌唱力が頼もしいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (これはエフェクトにしろ電子機材にしろこだわりを感じる)
・メロディ ★★ (浮遊感を押し出したのか複雑で難しい印象)
・リズム ★★★ (スネアの音色というよりはリズムそのものに幸宏色が)
・曲構成 ★★ (イメージとはいえ、このメンバーならまだ冒険できる)
・個性 ★★ (妖艶で歌も上手いのだが、彼女である必要性というと?)
総合評点: 7点
藤村美樹:vocal

1.「仏蘭西映画」 詞:松尾由起夫 曲・編:細野晴臣
2.「レディメイドの恋」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:高橋ユキヒロ
3.「夢・恋・人。」 詞:松本隆 曲・編:細野晴臣
4.「妖星傳」 詞:松尾由起夫 曲・編:細野晴臣
5.「春 mon amour」 詞:松本隆 曲・編:細野晴臣
6.「妖精譜」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:高橋ユキヒロ
7.「抱きとめて」 詞:松尾由起夫 曲:仲井戸麗市 編:白井良明
8.「アフリカンファンタジー」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:白井良明
9.「無垢の花束」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:大村憲司
10.「祈りと微笑(ほほえみ)」 詞:松尾由起夫 曲:藤村美樹 編:高橋ユキヒロ
<support musician>
大村憲司:electric guitar
白井良明:electric guitar・acoustic guitar・marimba・kalimba・chorus
鈴木博文:electric bass
富倉安生:electric bass
中原信雄:electric bass
青山純:drums
橿渕哲郎:drums
高橋ユキヒロ:drums・Prophet5・MC-4・Emulator・LINN drum
岡田徹:Prophet5・MC-4
中村哲:OBX・Prophet5・MC-4・TR-808
細野晴臣:Prophet5・MC-4・LINN drum・electric bass・piano・electric piano・TR-808
武川雅寛:trumpet・chorus
矢口博康:sax・chorus
前野佳代子:back vocal
mixing engineered by 松本裕
recording engineered by 松本裕・鈴木隆一
●YMO型テクノポップフォーマットにのっとった歌謡曲仕事の典型的アルバム
1970年代に一世を風靡したアイドルグループであったキャンディーズ。その突然の解散劇はアイドル史上に残る事件であったが、その後の彼女達はというとランこと伊藤蘭とスーこと田中好子は女優として一定の地位を築いたが、ミキこと藤村美樹はシングル「夢・恋・人。」のスマッシュヒットを置き土産に結婚を機に引退。その後は表舞台には出てきません。しかし、キャンディーズの中ではただ1人期間限定とはいえ音楽で勝負したこと、しかもアルバムの半数の作曲をこなしたことなど、音楽性の高さという点では他の2人を圧倒的に凌駕していたのです。
この作品は彼女が唯一残したアルバム。前述のカネボウ化粧品CMソング「夢・恋・人。」のヒットの副産物ともいえる(既定路線だったかもしれないが)この作品は、アイドルの面影もなく全体的に妖艶さをまとった、どこかしらニューロマンティックな雰囲気さえ感じられます。そんなサウンドを支えたのが、細野晴臣・高橋幸宏といったYMO勢や白井良明・岡田徹らMOON RIDERSの面々。このカリスマ的な2大テクノ・ニューウェーブバンドを従えた楽曲は、大胆にも当時最先端の機材を駆使したテクノ・エレポップサウンドで、前半を細野特有の浮遊感溢れるメロディとゆったりながらもジャストなノリのユキヒロDrumsで幻想的な世界観を構築し、後半はどちらかというと多彩なギターサウンド、特に白井良明が大活躍、といってもロックスタイルではなくあくまでストレンジなエフェクトギターですが、細野作品とはまた違ったリアリティの感じられない楽曲が目白押しとなっています。そんなお世辞にも簡単ではないクセのある楽曲群(しかも半数が彼女自身の作曲!)を淡々と歌いこなす藤村美樹、さすがにキャンディーズの音楽面を支えたというだけあります。ただやはりこの作品だけ、というのはその才能からいっても残念ですね。
<Favorite Songs>
・「夢・恋・人。」
ヒットシングル。当時細野晴臣関係の楽曲は総じてYMO的な平坦シンセベースフレーズのエレポップになってしまうのですが、当時大ヒットの中森明菜「禁区」と同タイプの楽曲ながら、やはり少女Aよりは大人の貫禄といいますか、一日の長が感じられます。サウンド面はもう今さら言わなくてもわかるあのシンベとあの幸宏フィルインを期待通り聞くことができます。
・「仏蘭西映画」
アルバムの1曲目がこの渋い曲。とはいえサウンドはMC-4やProphetが活躍するエレクトロ仕様という、当時の流行(歌謡曲界ではやや先取り感がある)を敏感に採り入れた楽曲に仕上がっています。そのふわふわしたメロディといい、どこかチープなシンセといい、どこから聞いても細野楽曲に疑いはありません。
・「アフリカンファンタジー」
強烈なポリリズムが延々と続く80年代白井良明的不思議楽曲の1つです。門あさ美「Beradonna」的なやりたい放題なリズムがとにかく印象的であるが、いくらいななくギターで白井がかき乱そうともそれに動じない藤村美樹の歌唱力が頼もしいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (これはエフェクトにしろ電子機材にしろこだわりを感じる)
・メロディ ★★ (浮遊感を押し出したのか複雑で難しい印象)
・リズム ★★★ (スネアの音色というよりはリズムそのものに幸宏色が)
・曲構成 ★★ (イメージとはいえ、このメンバーならまだ冒険できる)
・個性 ★★ (妖艶で歌も上手いのだが、彼女である必要性というと?)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「改造への躍動」 ゲルニカ
「改造への躍動」 (1982 アルファ)
ゲルニカ

<members>
戸川純:vocal
上野耕路:all instruments
太田螢一:lyrics・visual
1.「ブレヘメン」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
2.「カフェ・ド・サヰコ」 詞:フォックス 曲・編:上野耕路
3.「工場見學」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
4.「夢の山嶽地帯」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
5.「動力の姫」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
6.「落日」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
7.「復興の唄」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
8.「潜水艦」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
9.「大油田交響楽」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
10.「スケエテヰング・リンク」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
11.「曙」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
produced by 細野晴臣
engineered by 飯尾芳史
●他の追随を許さないコンセプト!上野耕路の才能が爆発した怪作
「ジャンル」という言葉にこれほど当てはまらないユニットも珍しいと言えるゲルニカは、少年ホームランズ、81/2、ハルメンズといったニューウェーブなバンドで活躍していた楽曲担当の上野耕路と当時はまだカリスマの片鱗を見せているだけであったタレントで歌担当の戸川純と、イラストレーターで作詞・ビジュアル担当の太田螢一のトリオ編成です。折しもテクノポップ全盛期、大正~昭和初期の雰囲気を現代風(当時)にデフォルメしたそのシンプルながら幻惑的なサウンドは、驚きを持って一般人に受け入れられたと思われます。クラシック音楽の手法で構築する上野の作曲スタイル、子供からオペラティックな歌唱、寸劇的なセリフ回しなど八面六臂の活躍を見せる戸川のヴォーカル、そしてコンセプチュアルなその世界観を見事に表現した太田の歌詞&イメージ・・・他を寄せつけない圧倒的な個性がそこにはありました。
デビューアルバムである本作は、そのクラシカルな楽曲をシンセサイザーおよびリズムボックスで構築するという冒険作で、しかもどこまでもチープさを狙うためにわざとヒスノイズを加えSP盤の雰囲気を醸しつつ、4トラックレコーダーを使用するなど徹底した音質劣化に努めています。ここで注目すべきなのは、シンセサイザーという当時の最新機材を利用しながら、それが未来的ではなく懐古的なイメージを狙っていることです。シンセらしくない、といえばそうではないかもしれないが、少なくともTECHNOLOGYは感じさせません。しかし、その手法はまさしくTECHNOLOGYそのものであり、その意味においてTECHNOLOGY POPSの名盤に値する作品と言えるのだと思います。また、彼らは「銀輪は唄う」というシングルをリリースし、それはフルオーケストラサウンドとなっています。88年の次作「新世紀への運河」ではフルオーケストラになっていることを考えると、さらに本作の電子楽器(とピアノ)のみで作られたそのサウンドスタイルのコンセプチュアルぶりに驚嘆せざるを得ないのです。
<Favorite Songs>
・「曙」
短い楽曲が多数を占めるこのアルバムにあって、大作と言うべき展開を見せる名曲。そのクラシカルな手法のためフレーズは複雑さを極めるが、チープさを狙ったそのシンセの音色が一種の癒しを感じさせます。特に後半スピードアップし畳みかけるフレーズなんかは、どこかChip Tuneを連想させます。
・「動力の姫」
起承転結のあるPOPSスタイルとはかけ離れたクラシカルな展開を見せる上野耕路の真骨頂的な楽曲。Aメロ(なんてあるのか?)のコード感が何とも言えずCOOLで、ていうか歌はほとんどがAメロという感じなのですがw とりあえずフレーズがフルオーケストラを想定して作られているので、シンセなのにシンセに聞こえず何か別の楽器に聞こえてしまうところが楽しいです。
・「潜水艦」
セリフ入りの奇曲。恐らくリズムボックスを利用した潜水艦のエンジン音?や、Tony Mansfield真っ青のソナー音、そしてメジャーとマイナーを行き来する変幻自在の曲調というように聞き所は満載です。危機的な状況から希望的な観測への展開などセリフに合わせての楽曲の変化が絶妙。
<評点>
・サウンド ★★★★ (この楽曲スタイルを電子楽器のみで挑戦。非凡)
・メロディ ★★★ (POPSの範疇を超えてしまって複雑過ぎて)
・リズム ★★★ (全編チープなリズムボックスで統一)
・曲構成 ★★★ (統一されたサウンドとは裏腹に実は多彩な楽曲群)
・個性 ★★★★★(ただ単純に昔も今も誰もこの個性には達していない)
総合評点: 8点
ゲルニカ

<members>
戸川純:vocal
上野耕路:all instruments
太田螢一:lyrics・visual
1.「ブレヘメン」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
2.「カフェ・ド・サヰコ」 詞:フォックス 曲・編:上野耕路
3.「工場見學」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
4.「夢の山嶽地帯」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
5.「動力の姫」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
6.「落日」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
7.「復興の唄」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
8.「潜水艦」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
9.「大油田交響楽」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
10.「スケエテヰング・リンク」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
11.「曙」 詞:太田螢一 曲・編:上野耕路
produced by 細野晴臣
engineered by 飯尾芳史
●他の追随を許さないコンセプト!上野耕路の才能が爆発した怪作
「ジャンル」という言葉にこれほど当てはまらないユニットも珍しいと言えるゲルニカは、少年ホームランズ、81/2、ハルメンズといったニューウェーブなバンドで活躍していた楽曲担当の上野耕路と当時はまだカリスマの片鱗を見せているだけであったタレントで歌担当の戸川純と、イラストレーターで作詞・ビジュアル担当の太田螢一のトリオ編成です。折しもテクノポップ全盛期、大正~昭和初期の雰囲気を現代風(当時)にデフォルメしたそのシンプルながら幻惑的なサウンドは、驚きを持って一般人に受け入れられたと思われます。クラシック音楽の手法で構築する上野の作曲スタイル、子供からオペラティックな歌唱、寸劇的なセリフ回しなど八面六臂の活躍を見せる戸川のヴォーカル、そしてコンセプチュアルなその世界観を見事に表現した太田の歌詞&イメージ・・・他を寄せつけない圧倒的な個性がそこにはありました。
デビューアルバムである本作は、そのクラシカルな楽曲をシンセサイザーおよびリズムボックスで構築するという冒険作で、しかもどこまでもチープさを狙うためにわざとヒスノイズを加えSP盤の雰囲気を醸しつつ、4トラックレコーダーを使用するなど徹底した音質劣化に努めています。ここで注目すべきなのは、シンセサイザーという当時の最新機材を利用しながら、それが未来的ではなく懐古的なイメージを狙っていることです。シンセらしくない、といえばそうではないかもしれないが、少なくともTECHNOLOGYは感じさせません。しかし、その手法はまさしくTECHNOLOGYそのものであり、その意味においてTECHNOLOGY POPSの名盤に値する作品と言えるのだと思います。また、彼らは「銀輪は唄う」というシングルをリリースし、それはフルオーケストラサウンドとなっています。88年の次作「新世紀への運河」ではフルオーケストラになっていることを考えると、さらに本作の電子楽器(とピアノ)のみで作られたそのサウンドスタイルのコンセプチュアルぶりに驚嘆せざるを得ないのです。
<Favorite Songs>
・「曙」
短い楽曲が多数を占めるこのアルバムにあって、大作と言うべき展開を見せる名曲。そのクラシカルな手法のためフレーズは複雑さを極めるが、チープさを狙ったそのシンセの音色が一種の癒しを感じさせます。特に後半スピードアップし畳みかけるフレーズなんかは、どこかChip Tuneを連想させます。
・「動力の姫」
起承転結のあるPOPSスタイルとはかけ離れたクラシカルな展開を見せる上野耕路の真骨頂的な楽曲。Aメロ(なんてあるのか?)のコード感が何とも言えずCOOLで、ていうか歌はほとんどがAメロという感じなのですがw とりあえずフレーズがフルオーケストラを想定して作られているので、シンセなのにシンセに聞こえず何か別の楽器に聞こえてしまうところが楽しいです。
・「潜水艦」
セリフ入りの奇曲。恐らくリズムボックスを利用した潜水艦のエンジン音?や、Tony Mansfield真っ青のソナー音、そしてメジャーとマイナーを行き来する変幻自在の曲調というように聞き所は満載です。危機的な状況から希望的な観測への展開などセリフに合わせての楽曲の変化が絶妙。
<評点>
・サウンド ★★★★ (この楽曲スタイルを電子楽器のみで挑戦。非凡)
・メロディ ★★★ (POPSの範疇を超えてしまって複雑過ぎて)
・リズム ★★★ (全編チープなリズムボックスで統一)
・曲構成 ★★★ (統一されたサウンドとは裏腹に実は多彩な楽曲群)
・個性 ★★★★★(ただ単純に昔も今も誰もこの個性には達していない)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「EDO RIVER」 CARNATION
「EDO RIVER」(1994 コロムビア)
CARNATION

<members>
直枝政太郎:vocals・guitar
矢部浩志:drums・percussions・synthesizer
棚谷祐一:keyboards・chorus
鳥羽修:guitar
大田譲:bass・chorus
1.「Edo River」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
2.「Be My Baby」 詞:直枝政太郎 曲:直枝政太郎・矢部浩志 編:CARNATION
3.「アイ・アム・サル」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
4.「さよならプー」 詞:直枝政太郎 曲:矢部浩志 編:CARNATION
5.「サイケなココロ」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
6.「Speed Skate Sightseeing」 曲:棚谷祐一 編:CARNATION
7.「ダイナマイト・ボイン」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
8.「サマーデイズ」 詞:直枝政太郎 曲:矢部浩志 編:CARNATION
9.「ローマ・函館」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
10.「レター」 詞:直枝政太郎 曲:棚谷祐一・直枝政太郎 編:CARNATION
11.「今日も朝から夜だった」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
12.「Love Experience」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
<support musician>
大野由美子:Moog・chorus
平田直樹:trumpet
小泉邦男:trombone
ロベルト小山:alto sax・tenor sax・flute
美尾洋乃:violin
鈴木千夏:viola
青山陽一:chorus
斉藤美和子:chorus
佐藤奈々子:chorus
新美和:chorus
山本ムーグ:turntable
produced by CARNATION・牧野"Q"英司
engineered by 牧野"Q"英司
●メロディアス&グルーヴを基調としたサウンドに進化!飛躍のきっかけとなった新境地の名盤
デビュー当時は水族館レーベルに端を発したムーンライダース系のひねくれPOPSバンド、森高千里のバックバンドを経て、その後メンバーチェンジしながらメロディアスなロックサウンドにシフト、現在はトリオ編成となり骨太のベテランロックバンドとして確固たる地位を占めているCARNATIONの、転換期でありブレイクのきっかけとなった作品がこの「EDO RIVER」です。もともとニューウェーブ的なシニカルなサウンドとメロディが売りだった彼らが、前作の「天国と地獄」という大作アルバムでグルーヴィーなロックバンドとしての礎を築き、満を持して勝負に出たのが本作と解釈していますが、ブラスセクションやオルガンをフィーチャーした耳なじみのよいポップなサウンドに乗っかる直枝政太郎(現:直枝政広)や矢部浩志のメロディの気合いの入りようが凄まじく、全曲シングルカットできるほどの粒ぞろいの楽曲になっています。
前作に続いて比較的曲数の多い大作系のアルバムですが、前述のような肌触りのよい楽曲といいつつも、そのスタイルはバラエティに富んでおり、時には「サイケなココロ」のようにカントリーっぽいものや、「今日も朝から夜だった」のようなブルースなど、多様なエッセンスを採り入れるセンスに長けている印象を受けます。しかし特筆すべきはその力の抜け方。それまでの彼らのアルバムはどこか肩に力が入っていてその音楽センスを上手く表現しきれない部分があったように感じられたのですが、非常に自然体かつポップな姿勢で、聞く側も楽になれる、これぞPOPSとしてもロックとしても受け入れやすい名盤として評価できるアルバムであると個人的には思います。その後似たようなアルバムが「A Beautiful Day」「Girl Friend Army」と2枚ほど続きましたが、このアルバムほどのインパクトを生み出すには少し荷が重かったような気がします。
<Favorite Songs>
・「ローマ・函館」
アルバム中では実は最も聞きやすい、全体を聞くと最も覚えやすいと思われる淀みないメロディで構成された楽曲というイメージです。国名で歌詞を押し切るお茶目さも感じられるし、無駄なく後半の盛り上げどころまで持っていってるし、アルバム全体の印象である力の抜け具合が最も表れていると言える名曲です。
・「サマーデイズ」
綴りは「Summer Daze」です。矢部浩志の非常に小気味よいリズムに支えられ、リゾート感あふれるポップソングとなっています。ブラスセクションとギターフレーズによる印象的なサビはまさにリゾートポップの象徴的なフレーズという感じです。特に間奏の盛り上げ方なんかは確信犯。
・「ダイナマイト・ボイン」
奇しくもアルバム中盤の3曲に偏ってしまいましたが、やはりこの3曲あってこそ作品が締まっていると思うのです。これはこのアルバムの中では最もアップテンポで激しい楽曲と言えますが、ロックサウンドに山本ムーグのturntableが絶妙に絡み合い、ただでは済まさない雰囲気を醸し出しています。間奏のハープシコードっぽい棚谷祐一のソロとアヴァンギャルドな鳥羽修のギターソロはアルバムのハイライトと言ってよいでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (力が抜けたおかげでとにかく耳障りが良い)
・メロディ ★★★★ (彼らがロックバンドとして貴重なのはこのセンス)
・リズム ★★★★ (矢部浩志のドラムは非常に安心感があって良い)
・曲構成 ★★★★ (バラエティに富んだ楽曲を無理なく配置)
・個性 ★★★ (バンドとしての方向性はこの作品で固まる)
総合評点: 8点
CARNATION

<members>
直枝政太郎:vocals・guitar
矢部浩志:drums・percussions・synthesizer
棚谷祐一:keyboards・chorus
鳥羽修:guitar
大田譲:bass・chorus
1.「Edo River」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
2.「Be My Baby」 詞:直枝政太郎 曲:直枝政太郎・矢部浩志 編:CARNATION
3.「アイ・アム・サル」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
4.「さよならプー」 詞:直枝政太郎 曲:矢部浩志 編:CARNATION
5.「サイケなココロ」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
6.「Speed Skate Sightseeing」 曲:棚谷祐一 編:CARNATION
7.「ダイナマイト・ボイン」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
8.「サマーデイズ」 詞:直枝政太郎 曲:矢部浩志 編:CARNATION
9.「ローマ・函館」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
10.「レター」 詞:直枝政太郎 曲:棚谷祐一・直枝政太郎 編:CARNATION
11.「今日も朝から夜だった」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
12.「Love Experience」 詞・曲:直枝政太郎 編:CARNATION
<support musician>
大野由美子:Moog・chorus
平田直樹:trumpet
小泉邦男:trombone
ロベルト小山:alto sax・tenor sax・flute
美尾洋乃:violin
鈴木千夏:viola
青山陽一:chorus
斉藤美和子:chorus
佐藤奈々子:chorus
新美和:chorus
山本ムーグ:turntable
produced by CARNATION・牧野"Q"英司
engineered by 牧野"Q"英司
●メロディアス&グルーヴを基調としたサウンドに進化!飛躍のきっかけとなった新境地の名盤
デビュー当時は水族館レーベルに端を発したムーンライダース系のひねくれPOPSバンド、森高千里のバックバンドを経て、その後メンバーチェンジしながらメロディアスなロックサウンドにシフト、現在はトリオ編成となり骨太のベテランロックバンドとして確固たる地位を占めているCARNATIONの、転換期でありブレイクのきっかけとなった作品がこの「EDO RIVER」です。もともとニューウェーブ的なシニカルなサウンドとメロディが売りだった彼らが、前作の「天国と地獄」という大作アルバムでグルーヴィーなロックバンドとしての礎を築き、満を持して勝負に出たのが本作と解釈していますが、ブラスセクションやオルガンをフィーチャーした耳なじみのよいポップなサウンドに乗っかる直枝政太郎(現:直枝政広)や矢部浩志のメロディの気合いの入りようが凄まじく、全曲シングルカットできるほどの粒ぞろいの楽曲になっています。
前作に続いて比較的曲数の多い大作系のアルバムですが、前述のような肌触りのよい楽曲といいつつも、そのスタイルはバラエティに富んでおり、時には「サイケなココロ」のようにカントリーっぽいものや、「今日も朝から夜だった」のようなブルースなど、多様なエッセンスを採り入れるセンスに長けている印象を受けます。しかし特筆すべきはその力の抜け方。それまでの彼らのアルバムはどこか肩に力が入っていてその音楽センスを上手く表現しきれない部分があったように感じられたのですが、非常に自然体かつポップな姿勢で、聞く側も楽になれる、これぞPOPSとしてもロックとしても受け入れやすい名盤として評価できるアルバムであると個人的には思います。その後似たようなアルバムが「A Beautiful Day」「Girl Friend Army」と2枚ほど続きましたが、このアルバムほどのインパクトを生み出すには少し荷が重かったような気がします。
<Favorite Songs>
・「ローマ・函館」
アルバム中では実は最も聞きやすい、全体を聞くと最も覚えやすいと思われる淀みないメロディで構成された楽曲というイメージです。国名で歌詞を押し切るお茶目さも感じられるし、無駄なく後半の盛り上げどころまで持っていってるし、アルバム全体の印象である力の抜け具合が最も表れていると言える名曲です。
・「サマーデイズ」
綴りは「Summer Daze」です。矢部浩志の非常に小気味よいリズムに支えられ、リゾート感あふれるポップソングとなっています。ブラスセクションとギターフレーズによる印象的なサビはまさにリゾートポップの象徴的なフレーズという感じです。特に間奏の盛り上げ方なんかは確信犯。
・「ダイナマイト・ボイン」
奇しくもアルバム中盤の3曲に偏ってしまいましたが、やはりこの3曲あってこそ作品が締まっていると思うのです。これはこのアルバムの中では最もアップテンポで激しい楽曲と言えますが、ロックサウンドに山本ムーグのturntableが絶妙に絡み合い、ただでは済まさない雰囲気を醸し出しています。間奏のハープシコードっぽい棚谷祐一のソロとアヴァンギャルドな鳥羽修のギターソロはアルバムのハイライトと言ってよいでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (力が抜けたおかげでとにかく耳障りが良い)
・メロディ ★★★★ (彼らがロックバンドとして貴重なのはこのセンス)
・リズム ★★★★ (矢部浩志のドラムは非常に安心感があって良い)
・曲構成 ★★★★ (バラエティに富んだ楽曲を無理なく配置)
・個性 ★★★ (バンドとしての方向性はこの作品で固まる)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「yellow」 岡村靖幸
「yellow」(1987 エピックソニー)
岡村靖幸:vocal・guitar・keyboards・chorus

1.「Out of Blue」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
2.「Young oh! oh!」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
3.「冷たくされても」 詞:神沢礼江 曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
4.「Check Out Love」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
5.「はじめて」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
6.「Water Bed」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
7.「RAIN」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
8.「彼女はScience Teacher」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
9.「White courage」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
<support musician>
北島健二:guitar
佐橋佳幸:guitar
有賀啓雄:bass
荻原基文:bass
青山純:drums
友田真吾:drums
古田たかし:drums
富樫春生:keyboards
中西康晴:keyboards
西平彰:keyboards
Whacho:percussion
数原晋:trumpet
兼崎順一:trumpet
早川隆章:trombone
渕野繁雄:sax
加藤グループ:strings
朝川朋之:harp
EVE:chorus
大滝裕子:chorus
黒住憲五:chorus
produced by 小坂洋二・小林和之
sound produced by 岡村靖幸・西平彰
mixing engineered by Larry Alexander・坂元達也
recording engineered by 坂元達也・園田一恵
●天才と呼ばれたクリエイターの純粋なPOPS職人としての才能を垣間見せたデビュー作
全盛期にカリスマ的な人気を誇り、紆余曲折を経て現在出直しを図っている天才アーティストの1人、岡村靖幸。安藤秀樹、松岡英明と共にEPIC御三家と呼ばれていたのも懐かしいが、その独特なリズム感と堂々とした歌いっぷり、そして作編曲、ギター、キーボードまでこなすマルチなアーティストとして一時代を築いたとも言えます。日本では珍しいそのアーティストスタイルから今でもフォロワーが後を絶たない彼であるが、彼がスタイルを確立するのは2ndアルバム「DATE」以降です。デビューアルバムである「yellow」では、正統派のロックシンガーとして期待されていたように個人的に思います。事実このアルバムでは余りブラックミュージックの影響は感じられず、随所に特異なリズム感を垣間見せてはいますが、基本はデジタル機材を積極的に採り入れたEPICらしいTECHNOLOGY POPS的なロックミュージックと呼べるべき作品です。
また、このアルバムで目立つのはギターサウンド。どの楽曲においても主役はギターのカッティングで、しかもほとんど打楽器のようにリズムを刻むギターなのです。その傾向は彼の特徴の1つとしてその後のアルバムで聞くことができるが、ブラック色が強くなる2nd以降に比べるとその音がより強く主張していることがわかるのです。まだまだセリフに恥ずかしさが見られるのもご愛嬌であるが、本格派ロックシンガーとしての資質は既にこのアルバムで示したとも言え、次作へのフェーズへとつながっていく基礎となった自信作と言えるのです(岡村ファンには物足りないかもしれませんが)。
<Favorite Songs>
・「Out of Blue」
デビューシングルにして名曲の誉れ高い楽曲です。アコギの目立つアレンジは好みとは言えないのですが、COOLというか清らかなAメロがそれを補って余りあるクオリティ。ア行をハ行で歌う彼の歌唱法はこの頃から健在で、エロさはなくシリアスさが目立っていても既に才能が光り輝いています。
・「Young oh! oh!」
非常にギターのカッティングが印象的なポップロック。メロディに無駄がないところに彼の才能が見え隠れしていますが、お得意のフェイクの片鱗が特にアウトロで聞くことができます。しかし2nd以降のアルバムに比べるとどこかシリアスなんですね。
・「RAIN」
ストリングスをフィーチャーした大仰な楽曲ですが、力強いドラムとドラマティックな展開をバックに岡村が必死に歌い上げる様子に力が入ります。特に後半のサビ部分からつながるフェイク(まだ控えめ)を聞くにつれ、まだ若さゆえの必死さが伝わってくるのです。
<評点>
・サウンド ★★ (サウンドでアピールするにはあと一歩の感)
・メロディ ★★★ (ロックサウンドの中のメロディセンスは光るものが)
・リズム ★★★★ (ギターも含んだリズム隊という意味ではセンスあり)
・曲構成 ★★ (バラードの2曲も非常によいが、統一感はもう一歩)
・個性 ★★★ (次作以降との比較より、既にただものでない雰囲気が)
総合評点: 7点
岡村靖幸:vocal・guitar・keyboards・chorus

1.「Out of Blue」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
2.「Young oh! oh!」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
3.「冷たくされても」 詞:神沢礼江 曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
4.「Check Out Love」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
5.「はじめて」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
6.「Water Bed」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
7.「RAIN」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
8.「彼女はScience Teacher」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
9.「White courage」 詞・曲:岡村靖幸 編:岡村靖幸・西平彰
<support musician>
北島健二:guitar
佐橋佳幸:guitar
有賀啓雄:bass
荻原基文:bass
青山純:drums
友田真吾:drums
古田たかし:drums
富樫春生:keyboards
中西康晴:keyboards
西平彰:keyboards
Whacho:percussion
数原晋:trumpet
兼崎順一:trumpet
早川隆章:trombone
渕野繁雄:sax
加藤グループ:strings
朝川朋之:harp
EVE:chorus
大滝裕子:chorus
黒住憲五:chorus
produced by 小坂洋二・小林和之
sound produced by 岡村靖幸・西平彰
mixing engineered by Larry Alexander・坂元達也
recording engineered by 坂元達也・園田一恵
●天才と呼ばれたクリエイターの純粋なPOPS職人としての才能を垣間見せたデビュー作
全盛期にカリスマ的な人気を誇り、紆余曲折を経て現在出直しを図っている天才アーティストの1人、岡村靖幸。安藤秀樹、松岡英明と共にEPIC御三家と呼ばれていたのも懐かしいが、その独特なリズム感と堂々とした歌いっぷり、そして作編曲、ギター、キーボードまでこなすマルチなアーティストとして一時代を築いたとも言えます。日本では珍しいそのアーティストスタイルから今でもフォロワーが後を絶たない彼であるが、彼がスタイルを確立するのは2ndアルバム「DATE」以降です。デビューアルバムである「yellow」では、正統派のロックシンガーとして期待されていたように個人的に思います。事実このアルバムでは余りブラックミュージックの影響は感じられず、随所に特異なリズム感を垣間見せてはいますが、基本はデジタル機材を積極的に採り入れたEPICらしいTECHNOLOGY POPS的なロックミュージックと呼べるべき作品です。
また、このアルバムで目立つのはギターサウンド。どの楽曲においても主役はギターのカッティングで、しかもほとんど打楽器のようにリズムを刻むギターなのです。その傾向は彼の特徴の1つとしてその後のアルバムで聞くことができるが、ブラック色が強くなる2nd以降に比べるとその音がより強く主張していることがわかるのです。まだまだセリフに恥ずかしさが見られるのもご愛嬌であるが、本格派ロックシンガーとしての資質は既にこのアルバムで示したとも言え、次作へのフェーズへとつながっていく基礎となった自信作と言えるのです(岡村ファンには物足りないかもしれませんが)。
<Favorite Songs>
・「Out of Blue」
デビューシングルにして名曲の誉れ高い楽曲です。アコギの目立つアレンジは好みとは言えないのですが、COOLというか清らかなAメロがそれを補って余りあるクオリティ。ア行をハ行で歌う彼の歌唱法はこの頃から健在で、エロさはなくシリアスさが目立っていても既に才能が光り輝いています。
・「Young oh! oh!」
非常にギターのカッティングが印象的なポップロック。メロディに無駄がないところに彼の才能が見え隠れしていますが、お得意のフェイクの片鱗が特にアウトロで聞くことができます。しかし2nd以降のアルバムに比べるとどこかシリアスなんですね。
・「RAIN」
ストリングスをフィーチャーした大仰な楽曲ですが、力強いドラムとドラマティックな展開をバックに岡村が必死に歌い上げる様子に力が入ります。特に後半のサビ部分からつながるフェイク(まだ控えめ)を聞くにつれ、まだ若さゆえの必死さが伝わってくるのです。
<評点>
・サウンド ★★ (サウンドでアピールするにはあと一歩の感)
・メロディ ★★★ (ロックサウンドの中のメロディセンスは光るものが)
・リズム ★★★★ (ギターも含んだリズム隊という意味ではセンスあり)
・曲構成 ★★ (バラードの2曲も非常によいが、統一感はもう一歩)
・個性 ★★★ (次作以降との比較より、既にただものでない雰囲気が)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
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