「ソラヲト」 久遠みへき
「ソラヲト」 (2014 自主制作)
久遠みへき:vocal・all instruments

1.「Blue World」 詞・曲・編:mihequi
2.「Heavenly blue」 詞・曲・編:mihequi
3.「花咲く惑星」 詞・曲・編:mihequi
4.「KaKeRa」 詞・曲・編:mihequi
5.「きみと僕の宇宙で」 詞・曲:mihequi 編:PROTOTYPE_AI
6.「ソラオト〜宙音〜」 詞:mihequi 曲:Aero Finback 編:伊藤@hertzmix
<support musician>
ficuslot:guitar
produced by 久遠みへき
engineered by mihequi
● 宇宙大好きクリエイターのスペイシーなレトロフューチャーシンセサウンドにウィスパーボイスを乗せた歌モノプロジェクトとしての1stアルバム
1990年代に少女漫画家・いづみひろのとして商業誌デビュー、様々なペンネームを用いながら同人誌を中心に活動していた彼女は、2006年にTERRARIUMというPOPSユニットでみへきと名乗り音楽活動を開始しますが、この異色のキャリアを持つ彼女の音楽人生は一過性のものではなく、ここから長い道のりが始まります。TERRARIUMは2007年に終了しますが、2009年からはmihequiとしてのソロプロジェクト・Prismatic Polynicaとしてスペイシーなテクノインスト作品を6枚もリリースしていきます。このプロジェクトは2014年に終了しますが、翌年に始まったmihequiとしてのソロワークも結局は宇宙シリーズと銘打たれたスペイシーテクノインストが基本となっており、その違いを判別することは難しいのですが、彼女はとにかく宇宙、スペース、コズミック、プラネット・・・シンセサイザーのプログラミングによるスペイシーサウンドが大好きで大好きでたまらないといった音楽性ですので、もはやその歩みを止めることはできないと思われます。しかし彼女はそのようなソロワークスの裏で、歌モノにも挑戦をし始めることになります。2012年からはKANADEやトキノマキナといったテクノユニットで活動していたPROTOTYPE_AIとのユニット・姫と博士、2015年にはボーカリストyuhとのRoséという派生ユニットを突発的に開始しながら、2013年に歌モノに特化した名義「久遠みへき」としてシングル「Prismatic」でシンガーデビュー、翌年には6曲入りのアルバムをリリースするに至る、という経緯となっております。
歌モノとはいえ宇宙大好き久遠みへきの作品ですから、当然本作も徹頭徹尾スペイシー、どこまでもエレクトリック、空間を埋めまくるシンセサイザー、何かに急き立てられるようなシーケンスまみれのコズミックテクノポップが展開されていきます。しかし本作は歌モノですので、どのような声質の歌がこの手のサウンドに乗っていくかが関心事となるわけですが、彼女の声質はとてつもなくキュートなウイスパー系で、見事に情報過多なシンセサウンドに歌が一体化しており、歌モノとして歌そのものが主張することなく、サウンドの一部として機能させるタイプと言ってよいでしょう。それにしてもサウンドにしても歌詞にしてもどこまでいってもスペイシーワールド一直線なので、確固たる世界観を持つ反面意外な展開は期待できない作風ではありますが、とにかく宇宙サウンドを構築するシンセプログラミングには豊富な経験による匠の技を会得しているためか、既にベテランの風格さえ漂っています。中森明菜「不思議」並みに歌に「壁」を作るミックスになっているため歌モノとして聴くには好き嫌いが分かれるところであると思われますが、ガッツリと宇宙空間に浸りたいリスナーにはお薦めの作品です。
<Favorite Songs>
・「Blue World」
mihequiとしてのテクノクリエイター活動を生かしたサウンドメイクが麗しいスペイシーテクノポップ。とにかくスペイシーなシーケンスを詰め込みに詰め込んだシンセサイザーサウンドにウイスパー系ボーカルが埋もれそうになるかならないかのギリギリの線を狙う強かさがこの楽曲をより魅力的なものにしています。
・「KaKeRa」
深いリバーブをウイスパーボイスにかけて非現実感を追求したサウンドのエレクトロニカPOPS。大げさなほどの音階によるウイスパーを引き立たせるために、音数は少ないながらもリズムは繊細でノイジーな処理がなされ、シーケンスを幾重に重ねることによるドリーミー感覚なサウンドに仕上げられています。
<評点>
・サウンド ★★★ (宇宙サウンドの構築にかけては一日の長あり)
・メロディ ★ (普段はインスト中心のためかリフレインが多い)
・リズム ★★ (細かなエフェクトを駆使した工夫が感じられる)
・曲構成 ★ (インスト作品の楽曲の多さを半分でも分けて欲しい)
・個性 ★ (歌モノである必要性があるかどうかが課題)
総合評点: 6点
久遠みへき:vocal・all instruments

1.「Blue World」 詞・曲・編:mihequi
2.「Heavenly blue」 詞・曲・編:mihequi
3.「花咲く惑星」 詞・曲・編:mihequi
4.「KaKeRa」 詞・曲・編:mihequi
5.「きみと僕の宇宙で」 詞・曲:mihequi 編:PROTOTYPE_AI
6.「ソラオト〜宙音〜」 詞:mihequi 曲:Aero Finback 編:伊藤@hertzmix
<support musician>
ficuslot:guitar
produced by 久遠みへき
engineered by mihequi
● 宇宙大好きクリエイターのスペイシーなレトロフューチャーシンセサウンドにウィスパーボイスを乗せた歌モノプロジェクトとしての1stアルバム
1990年代に少女漫画家・いづみひろのとして商業誌デビュー、様々なペンネームを用いながら同人誌を中心に活動していた彼女は、2006年にTERRARIUMというPOPSユニットでみへきと名乗り音楽活動を開始しますが、この異色のキャリアを持つ彼女の音楽人生は一過性のものではなく、ここから長い道のりが始まります。TERRARIUMは2007年に終了しますが、2009年からはmihequiとしてのソロプロジェクト・Prismatic Polynicaとしてスペイシーなテクノインスト作品を6枚もリリースしていきます。このプロジェクトは2014年に終了しますが、翌年に始まったmihequiとしてのソロワークも結局は宇宙シリーズと銘打たれたスペイシーテクノインストが基本となっており、その違いを判別することは難しいのですが、彼女はとにかく宇宙、スペース、コズミック、プラネット・・・シンセサイザーのプログラミングによるスペイシーサウンドが大好きで大好きでたまらないといった音楽性ですので、もはやその歩みを止めることはできないと思われます。しかし彼女はそのようなソロワークスの裏で、歌モノにも挑戦をし始めることになります。2012年からはKANADEやトキノマキナといったテクノユニットで活動していたPROTOTYPE_AIとのユニット・姫と博士、2015年にはボーカリストyuhとのRoséという派生ユニットを突発的に開始しながら、2013年に歌モノに特化した名義「久遠みへき」としてシングル「Prismatic」でシンガーデビュー、翌年には6曲入りのアルバムをリリースするに至る、という経緯となっております。
歌モノとはいえ宇宙大好き久遠みへきの作品ですから、当然本作も徹頭徹尾スペイシー、どこまでもエレクトリック、空間を埋めまくるシンセサイザー、何かに急き立てられるようなシーケンスまみれのコズミックテクノポップが展開されていきます。しかし本作は歌モノですので、どのような声質の歌がこの手のサウンドに乗っていくかが関心事となるわけですが、彼女の声質はとてつもなくキュートなウイスパー系で、見事に情報過多なシンセサウンドに歌が一体化しており、歌モノとして歌そのものが主張することなく、サウンドの一部として機能させるタイプと言ってよいでしょう。それにしてもサウンドにしても歌詞にしてもどこまでいってもスペイシーワールド一直線なので、確固たる世界観を持つ反面意外な展開は期待できない作風ではありますが、とにかく宇宙サウンドを構築するシンセプログラミングには豊富な経験による匠の技を会得しているためか、既にベテランの風格さえ漂っています。中森明菜「不思議」並みに歌に「壁」を作るミックスになっているため歌モノとして聴くには好き嫌いが分かれるところであると思われますが、ガッツリと宇宙空間に浸りたいリスナーにはお薦めの作品です。
<Favorite Songs>
・「Blue World」
mihequiとしてのテクノクリエイター活動を生かしたサウンドメイクが麗しいスペイシーテクノポップ。とにかくスペイシーなシーケンスを詰め込みに詰め込んだシンセサイザーサウンドにウイスパー系ボーカルが埋もれそうになるかならないかのギリギリの線を狙う強かさがこの楽曲をより魅力的なものにしています。
・「KaKeRa」
深いリバーブをウイスパーボイスにかけて非現実感を追求したサウンドのエレクトロニカPOPS。大げさなほどの音階によるウイスパーを引き立たせるために、音数は少ないながらもリズムは繊細でノイジーな処理がなされ、シーケンスを幾重に重ねることによるドリーミー感覚なサウンドに仕上げられています。
<評点>
・サウンド ★★★ (宇宙サウンドの構築にかけては一日の長あり)
・メロディ ★ (普段はインスト中心のためかリフレインが多い)
・リズム ★★ (細かなエフェクトを駆使した工夫が感じられる)
・曲構成 ★ (インスト作品の楽曲の多さを半分でも分けて欲しい)
・個性 ★ (歌モノである必要性があるかどうかが課題)
総合評点: 6点
「NEO ROMANCER」 世界システム
「NEO ROMANCER」(2014 ポリゴン)
世界システム

<members>
改造:vocal・guitar synthesizer・V-Guitar・vocoder
misopon:bass
The Hatter:percussion pad・synthesizer・chorus
Maki:guitar
kanamu:synthesizer
1.「EVA」 曲:改造 編:世界システム
2.「ネオロマンサー」 詞・曲:改造 編:世界システム
3.「snow」 詞・曲:改造 編:世界システム
4.「overclock」 曲:改造 編:世界システム
5.「only feedback」 詞・曲:改造 編:世界システム
6.「モノクローム」 詞・曲:改造 編:世界システム
7.「scope」 詞・曲:改造 編:世界システム
8.「kythera」 詞・曲:改造 編:世界システム
produced by 改造
engineered by 改造
● 白塗りゴス軍服ニューウェーブ!ヴィジュアライズなコンセプトが光るが音はチープテクノな男女混合バンドの2ndアルバム
2006年にメジャーデビューも果たしたメガネ男子のテクノポップユニット「装置メガネ」の楽曲担当であったおのじゃわ君が07年に脱退した後、残されたサミーちゃんは翌08年にまず相棒に作曲とギターを担当するヒット君を迎え、そのまた翌09年に作編曲を担当するアサP君が加入し、トリオバンドとなります。しかしこのヒット君とアサP君が出会うと、2人は装置メガネとは正反対のダークウェーブ白塗りテクノポップユニットとして「世界システム」を立ち上げます。世界システムではヒット君は「回路」、アサP君は「改造」と名乗り、ベースのmisoponとシンセの斉藤ぴょんこを迎え4人組となりますが、11年に回路と改造が装置メガネを脱退し本格的に世界システムをメインで活動することになってから激動のメンバー交代が始まります。まずいきなり中核を担っていた回路が脱退、以降改造がこのバンドのメインとなります。13年には1stアルバム「BABYLONIA WAVE」をリリースされますが、今度は斉藤が脱退、しかしそれからギターのMaki、Digital Padとシンセ担当としてThe Hatter、そしてシンセの黒マスク女子kanamuが加入して5人組に変身すると、この14年の時点で早くも2ndアルバムが制作されました。それが今回取り上げる「NEO ROMANCER」というわけです。
軍服白塗りエレクトロニューウェーブということで一見コワモテの彼らですが、奏でられるサウンドはモロに耽美的なテクノポップ。低音の効いたシンセサイザーで音場を埋め尽くしながら、女性ギター&ベースの生演奏で肉感的な部分を補強しながら、独自のSF的世界観を構築しています。ボーカルはボコーダーで変調したりと工夫を凝らしていますが、声量の少なさからかサウンドに埋もれがちです。しかしこうしたネガティブな要素も個性のうちと捉えるべきでしょう。そもそも彼らの魅力はこの世界観を表現するヴィジュアルにあります。それは単なる白塗りや軍服などの姿形もさることながら、使用されている楽器も含めてのエレクトロニックな世界観です。この素晴らしいジャケットデザインをご覧下さい。スカウターを光らせる改造の使用するRoland G-707はギターシンセサイザーGR-700のギターコントローラーですがその特殊な形状から現在も80'sニューウェーブの象徴として一部人気が高いものですし、MakiのギターにはフレットにLEDが仕込まれ光る仕掛けとなっています。その他のメンバーもKorg MS-20やAlesis Micronなど楽器を見せつける主張ぶりに、このバンドのテクノなこだわりを感じざるにはいられません。もちろんサウンドからもその主張は感じられますが、なにぶんまだ発展途上の感は否めません。しかしながらそれを補って余りあるヴィジュアル面による世界観の構築ぶりに期待感を感じさせる作品であると言えるでしょう。
ところがこのバンド、この後も非常にメンバーが流動的でして、アルバムリリースを前後してkanamuが脱退し、ちびっ子のコウが加入、スタイリッシュなメンバーの中で異色な存在感を放っていたThe Hatterも16年に脱退すると、世界システムは一旦17年に解散に追い込まれます。しかし翌年には改造が自作のレーザーハープを片手に(そのチャレンジ精神は期待できます)再び世界システムを復活させると、misopon・Makiに加え、新メンバーの潤が加入した4人組に再編成、19年秋に3rdアルバム「mother」をリリース、心機一転活動を活発化させています。
<Favorite Songs>
・「ネオロマンサー」
分厚い白玉パッドでオケを埋め尽くす耽美的ニューウェーブのタイトルチューン。切迫感のあるエレクトリックサウンドにボーカルは完全に埋もれていますが、その分世界観の構築の役割は果たしていると言えます。ビシャッというアタック音も楽しいです。
・「only feedback」
グイグイと攻め込んでくるイントロから始まるこのバンドの肉感的な部分が表出されたテクノロックチューン。Aメロに入る前のメランコリックなフレーズがなかなかインパクトがあります。サビでメジャーに転調する部分はテクノポップぽい展開です。
・「kythera」
ラストナンバーにふさわしいメジャー調の疾走するスペイシーエレクトロポップチューン。キュンキュンするシンセリズムに、高速シンセベースを走らせながらボコーダーで歌い上げます。サビではそこにサイン波のシーケンスも絡ませ息をつかせる暇もありません。
<評点>
・サウンド ★★ (空間を埋め尽くし息が詰まる電子音の壁が特徴的)
・メロディ ★ (淡々と流れていくフレージングには発展の余地あり)
・リズム ★★ (基本リズムボックスだが随所での電子リズムが光る)
・曲構成 ★ (チャレンジ精神が期待できるがまだ発展途上)
・個性 ★★ (インパクトのあるキャラクターなだけに今後に期待)
総合評点: 6点
世界システム

<members>
改造:vocal・guitar synthesizer・V-Guitar・vocoder
misopon:bass
The Hatter:percussion pad・synthesizer・chorus
Maki:guitar
kanamu:synthesizer
1.「EVA」 曲:改造 編:世界システム
2.「ネオロマンサー」 詞・曲:改造 編:世界システム
3.「snow」 詞・曲:改造 編:世界システム
4.「overclock」 曲:改造 編:世界システム
5.「only feedback」 詞・曲:改造 編:世界システム
6.「モノクローム」 詞・曲:改造 編:世界システム
7.「scope」 詞・曲:改造 編:世界システム
8.「kythera」 詞・曲:改造 編:世界システム
produced by 改造
engineered by 改造
● 白塗りゴス軍服ニューウェーブ!ヴィジュアライズなコンセプトが光るが音はチープテクノな男女混合バンドの2ndアルバム
2006年にメジャーデビューも果たしたメガネ男子のテクノポップユニット「装置メガネ」の楽曲担当であったおのじゃわ君が07年に脱退した後、残されたサミーちゃんは翌08年にまず相棒に作曲とギターを担当するヒット君を迎え、そのまた翌09年に作編曲を担当するアサP君が加入し、トリオバンドとなります。しかしこのヒット君とアサP君が出会うと、2人は装置メガネとは正反対のダークウェーブ白塗りテクノポップユニットとして「世界システム」を立ち上げます。世界システムではヒット君は「回路」、アサP君は「改造」と名乗り、ベースのmisoponとシンセの斉藤ぴょんこを迎え4人組となりますが、11年に回路と改造が装置メガネを脱退し本格的に世界システムをメインで活動することになってから激動のメンバー交代が始まります。まずいきなり中核を担っていた回路が脱退、以降改造がこのバンドのメインとなります。13年には1stアルバム「BABYLONIA WAVE」をリリースされますが、今度は斉藤が脱退、しかしそれからギターのMaki、Digital Padとシンセ担当としてThe Hatter、そしてシンセの黒マスク女子kanamuが加入して5人組に変身すると、この14年の時点で早くも2ndアルバムが制作されました。それが今回取り上げる「NEO ROMANCER」というわけです。
軍服白塗りエレクトロニューウェーブということで一見コワモテの彼らですが、奏でられるサウンドはモロに耽美的なテクノポップ。低音の効いたシンセサイザーで音場を埋め尽くしながら、女性ギター&ベースの生演奏で肉感的な部分を補強しながら、独自のSF的世界観を構築しています。ボーカルはボコーダーで変調したりと工夫を凝らしていますが、声量の少なさからかサウンドに埋もれがちです。しかしこうしたネガティブな要素も個性のうちと捉えるべきでしょう。そもそも彼らの魅力はこの世界観を表現するヴィジュアルにあります。それは単なる白塗りや軍服などの姿形もさることながら、使用されている楽器も含めてのエレクトロニックな世界観です。この素晴らしいジャケットデザインをご覧下さい。スカウターを光らせる改造の使用するRoland G-707はギターシンセサイザーGR-700のギターコントローラーですがその特殊な形状から現在も80'sニューウェーブの象徴として一部人気が高いものですし、MakiのギターにはフレットにLEDが仕込まれ光る仕掛けとなっています。その他のメンバーもKorg MS-20やAlesis Micronなど楽器を見せつける主張ぶりに、このバンドのテクノなこだわりを感じざるにはいられません。もちろんサウンドからもその主張は感じられますが、なにぶんまだ発展途上の感は否めません。しかしながらそれを補って余りあるヴィジュアル面による世界観の構築ぶりに期待感を感じさせる作品であると言えるでしょう。
ところがこのバンド、この後も非常にメンバーが流動的でして、アルバムリリースを前後してkanamuが脱退し、ちびっ子のコウが加入、スタイリッシュなメンバーの中で異色な存在感を放っていたThe Hatterも16年に脱退すると、世界システムは一旦17年に解散に追い込まれます。しかし翌年には改造が自作のレーザーハープを片手に(そのチャレンジ精神は期待できます)再び世界システムを復活させると、misopon・Makiに加え、新メンバーの潤が加入した4人組に再編成、19年秋に3rdアルバム「mother」をリリース、心機一転活動を活発化させています。
<Favorite Songs>
・「ネオロマンサー」
分厚い白玉パッドでオケを埋め尽くす耽美的ニューウェーブのタイトルチューン。切迫感のあるエレクトリックサウンドにボーカルは完全に埋もれていますが、その分世界観の構築の役割は果たしていると言えます。ビシャッというアタック音も楽しいです。
・「only feedback」
グイグイと攻め込んでくるイントロから始まるこのバンドの肉感的な部分が表出されたテクノロックチューン。Aメロに入る前のメランコリックなフレーズがなかなかインパクトがあります。サビでメジャーに転調する部分はテクノポップぽい展開です。
・「kythera」
ラストナンバーにふさわしいメジャー調の疾走するスペイシーエレクトロポップチューン。キュンキュンするシンセリズムに、高速シンセベースを走らせながらボコーダーで歌い上げます。サビではそこにサイン波のシーケンスも絡ませ息をつかせる暇もありません。
<評点>
・サウンド ★★ (空間を埋め尽くし息が詰まる電子音の壁が特徴的)
・メロディ ★ (淡々と流れていくフレージングには発展の余地あり)
・リズム ★★ (基本リズムボックスだが随所での電子リズムが光る)
・曲構成 ★ (チャレンジ精神が期待できるがまだ発展途上)
・個性 ★★ (インパクトのあるキャラクターなだけに今後に期待)
総合評点: 6点
「永遠と瞬間」 武藤彩未
「永遠と瞬間」 (2014 A-Sketch/アミューズ)
武藤彩未:vocal

1.「宙」 詞:mavie 曲:Takeshi Asakawa・本間昭光 編:篤志
2.「時間というWonderland」 詞:森雪之丞 曲:本間昭光 編:nishi-ken
3.「彩りの夏」 詞:森雪之丞 曲:本間昭光 編:nishi-ken
4.「桜 ロマンス」 詞:三浦徳子 曲:本間昭光 編:KAY
5.「とうめいしょうじょ」 詞:三浦徳子 曲:本間昭光 編:太田雅友
6.「A.Y.M」 詞:森雪之丞 曲:Takeshi Asakawa 編:篤志
7.「女神のサジェスチョン」 詞:三浦徳子 曲:本間昭光 編:nishi-ken
8.「永遠と瞬間」 詞:森雪之丞 曲:本間昭光 編:KAY
<support musician>
Tsuyo-B:electric guitar
EFFY:piano・computer programming
KAY:computer programming・all instruments
nishi-ken:computer programming・all instruments
篤志:computer programming・all instruments
堤育子:chorus
sound produced by 本間昭光
mixing engineered by サカタコスケ・山内”Dr”隆義
recording engineered by サカタコスケ
● 80’s歌謡メロディに現代風エレクトリックサウンドを施し果敢にソロ歌手として挑戦しつつ新風を巻き起こすデビューアルバム
古くから子役モデルとして活動を続けながら、女子小中学生アイドルグループ「さくら学院」のメンバーでもあった武藤彩未は、2012年の中学卒業と同時に同グループを卒業し約1年の充電期間に入りますが、それは相当に入念に準備されたプロジェクトの始まりでした。翌年満を持して登場した彼女が掲げたコンセプトは「DNA1980」。80年代アイドル歌謡の名曲をレコーディング方法から演奏ミュージシャン、使用される音色に至るまで緻密に再現したサウンドをバックに生演奏で歌うというもので、当時のJ-POP界においては異色のチャレンジでした。それらのリメイク楽曲が収録されたライブ会場やネット通販のみでリリースされた2枚のカバーアルバムを経て、彼女は翌2014年、アイドル歌手としては異例のシングルを切らずにアルバムリリースでのデビューを果たすこととなります。「NEWTRO-POP」という温故知新を標榜する彼女ならではの80'sアイドル歌謡を現代にアップデートしたような楽曲と、世界的な映像作家である関根光才を起用した奇抜なジャケット等、練りに練られたプロモーション戦略に導かれ、アイドル新時代への期待感に溢れた作品としてリスナーには受け取られました。
さて、「NEWTRO-POP」というくらいですので本作では「DNA1980」のような徹底的な80'sアイドル歌謡のイミテーションにはこだわらず、サウンド面では現代風のエレクトロサウンドで装飾された楽曲が8曲収録されています。しかし当然のことながら80年代のDNAは色濃く残しており、作詞では三浦徳子や森雪之丞といった黄金時代を知るベテランを起用、作曲とプロデュースには80'sの空気を否が応でも浴びてきた熟練のクリエイター本間昭光が手掛け、訴求力のあるノスタルジーメロディラインで当時のJ-POPシーンと一線を画することに成功しています。しかしそこで80年代当時のアレンジャーを起用しない部分に逆にこだわりを感じていて、いずれも当時30代の若手クリエイター、宇都宮隆や土橋安騎夫らの薫陶を受けるサウンドメイカーnishi-kenや、ポルノグラフィティ新藤昭一のユニットTHE野党のメンバーでもあり、藍井エイルらを手掛ける篤志、大阪出身でジャニーズ楽曲を多く手掛けるKAY、田村ゆかり楽曲で名を馳せた太田雅友らが起用され(作曲にも一部FLOWのTakeshi Asakawaを起用)、彼らの時代に呼応したエレクトリックサウンドデザインとメロディラインのはっきりした80'sマナー溢れる楽曲とのコラボレーションによって、新風を吹き込みたいという野心が感じられる8曲となっています。本作の強みは何と言っても魅惑的でキャッチーなサビで、現在では古臭いと言われるフレーズの中に生まれる「引っかかり」が、歌謡曲においては何よりも大事であることを再認識させられます。テレビで毎日のようにアイドル歌手がフルバンドをバックに歌いまくっていた古き良き時代を、容易に想起させるシンガーとしてのキャラクターを彼女が持ち合わせているのも魅力ですが、本作の現代的なエレクトロ仕様のアレンジで新機軸を図ろうとする意図も頷けるところであり、そのプロジェクト全体のチャレンジ精神は評価したいところです。結局売り上げには繋がらなかったのか、新たなムーブメントを起こすまでには至りませんでしたが、平成のJ-POP歌謡史においては確かな足跡を残せたのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「宙」
浮遊感のあるシーケンスと飛び道具がファンタジックなオープニングナンバー。ノスタルジックなメロディラインを歌う武藤の歌唱はまさに80'sアイドルイミテーションとして鍛えられただけあって癖のない透明感があります。四つ打ち上等の現代的なエレクトロアレンジもこの楽曲でのマッチングにハマっています。
・「女神のサジェスチョン」
メロディの展開が完璧なキュートでキャッチーなアイドル歌謡。AメロからBメロ、そしてまさにキラーフレーズとも言えるサビへの進め方が抜群。Cメロから後半のサビへ移る際のワンポイント入れる転調部分など芸術的です。
・「永遠と瞬間」
ドリーミーなエレクトリックアレンジも麗しいタイトルチューン。あくまでサウンドは現代風でありながら、Bメロのキャッチーなフレーズが素晴らしいアクセントになっていて、歌謡曲としてのクオリティを一段階上げています。
<評点>
・サウンド ★★ (シンセ中心でこれでもかのエレクトリック仕様)
・メロディ ★★★★★ (サビの訴求力で勝負するという制作者の意図を感じる)
・リズム ★ (あくまで現代風なのでスネアは軽くてバスドラ志向)
・曲構成 ★★ (欲を言えば80'sDNAとしてあと2曲収録して欲しかった)
・個性 ★★★ (J-POPシーンに新たな一石を投じたように見えたのだが)
総合評点: 7点
武藤彩未:vocal

1.「宙」 詞:mavie 曲:Takeshi Asakawa・本間昭光 編:篤志
2.「時間というWonderland」 詞:森雪之丞 曲:本間昭光 編:nishi-ken
3.「彩りの夏」 詞:森雪之丞 曲:本間昭光 編:nishi-ken
4.「桜 ロマンス」 詞:三浦徳子 曲:本間昭光 編:KAY
5.「とうめいしょうじょ」 詞:三浦徳子 曲:本間昭光 編:太田雅友
6.「A.Y.M」 詞:森雪之丞 曲:Takeshi Asakawa 編:篤志
7.「女神のサジェスチョン」 詞:三浦徳子 曲:本間昭光 編:nishi-ken
8.「永遠と瞬間」 詞:森雪之丞 曲:本間昭光 編:KAY
<support musician>
Tsuyo-B:electric guitar
EFFY:piano・computer programming
KAY:computer programming・all instruments
nishi-ken:computer programming・all instruments
篤志:computer programming・all instruments
堤育子:chorus
sound produced by 本間昭光
mixing engineered by サカタコスケ・山内”Dr”隆義
recording engineered by サカタコスケ
● 80’s歌謡メロディに現代風エレクトリックサウンドを施し果敢にソロ歌手として挑戦しつつ新風を巻き起こすデビューアルバム
古くから子役モデルとして活動を続けながら、女子小中学生アイドルグループ「さくら学院」のメンバーでもあった武藤彩未は、2012年の中学卒業と同時に同グループを卒業し約1年の充電期間に入りますが、それは相当に入念に準備されたプロジェクトの始まりでした。翌年満を持して登場した彼女が掲げたコンセプトは「DNA1980」。80年代アイドル歌謡の名曲をレコーディング方法から演奏ミュージシャン、使用される音色に至るまで緻密に再現したサウンドをバックに生演奏で歌うというもので、当時のJ-POP界においては異色のチャレンジでした。それらのリメイク楽曲が収録されたライブ会場やネット通販のみでリリースされた2枚のカバーアルバムを経て、彼女は翌2014年、アイドル歌手としては異例のシングルを切らずにアルバムリリースでのデビューを果たすこととなります。「NEWTRO-POP」という温故知新を標榜する彼女ならではの80'sアイドル歌謡を現代にアップデートしたような楽曲と、世界的な映像作家である関根光才を起用した奇抜なジャケット等、練りに練られたプロモーション戦略に導かれ、アイドル新時代への期待感に溢れた作品としてリスナーには受け取られました。
さて、「NEWTRO-POP」というくらいですので本作では「DNA1980」のような徹底的な80'sアイドル歌謡のイミテーションにはこだわらず、サウンド面では現代風のエレクトロサウンドで装飾された楽曲が8曲収録されています。しかし当然のことながら80年代のDNAは色濃く残しており、作詞では三浦徳子や森雪之丞といった黄金時代を知るベテランを起用、作曲とプロデュースには80'sの空気を否が応でも浴びてきた熟練のクリエイター本間昭光が手掛け、訴求力のあるノスタルジーメロディラインで当時のJ-POPシーンと一線を画することに成功しています。しかしそこで80年代当時のアレンジャーを起用しない部分に逆にこだわりを感じていて、いずれも当時30代の若手クリエイター、宇都宮隆や土橋安騎夫らの薫陶を受けるサウンドメイカーnishi-kenや、ポルノグラフィティ新藤昭一のユニットTHE野党のメンバーでもあり、藍井エイルらを手掛ける篤志、大阪出身でジャニーズ楽曲を多く手掛けるKAY、田村ゆかり楽曲で名を馳せた太田雅友らが起用され(作曲にも一部FLOWのTakeshi Asakawaを起用)、彼らの時代に呼応したエレクトリックサウンドデザインとメロディラインのはっきりした80'sマナー溢れる楽曲とのコラボレーションによって、新風を吹き込みたいという野心が感じられる8曲となっています。本作の強みは何と言っても魅惑的でキャッチーなサビで、現在では古臭いと言われるフレーズの中に生まれる「引っかかり」が、歌謡曲においては何よりも大事であることを再認識させられます。テレビで毎日のようにアイドル歌手がフルバンドをバックに歌いまくっていた古き良き時代を、容易に想起させるシンガーとしてのキャラクターを彼女が持ち合わせているのも魅力ですが、本作の現代的なエレクトロ仕様のアレンジで新機軸を図ろうとする意図も頷けるところであり、そのプロジェクト全体のチャレンジ精神は評価したいところです。結局売り上げには繋がらなかったのか、新たなムーブメントを起こすまでには至りませんでしたが、平成のJ-POP歌謡史においては確かな足跡を残せたのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「宙」
浮遊感のあるシーケンスと飛び道具がファンタジックなオープニングナンバー。ノスタルジックなメロディラインを歌う武藤の歌唱はまさに80'sアイドルイミテーションとして鍛えられただけあって癖のない透明感があります。四つ打ち上等の現代的なエレクトロアレンジもこの楽曲でのマッチングにハマっています。
・「女神のサジェスチョン」
メロディの展開が完璧なキュートでキャッチーなアイドル歌謡。AメロからBメロ、そしてまさにキラーフレーズとも言えるサビへの進め方が抜群。Cメロから後半のサビへ移る際のワンポイント入れる転調部分など芸術的です。
・「永遠と瞬間」
ドリーミーなエレクトリックアレンジも麗しいタイトルチューン。あくまでサウンドは現代風でありながら、Bメロのキャッチーなフレーズが素晴らしいアクセントになっていて、歌謡曲としてのクオリティを一段階上げています。
<評点>
・サウンド ★★ (シンセ中心でこれでもかのエレクトリック仕様)
・メロディ ★★★★★ (サビの訴求力で勝負するという制作者の意図を感じる)
・リズム ★ (あくまで現代風なのでスネアは軽くてバスドラ志向)
・曲構成 ★★ (欲を言えば80'sDNAとしてあと2曲収録して欲しかった)
・個性 ★★★ (J-POPシーンに新たな一石を投じたように見えたのだが)
総合評点: 7点
「ROMANTICISM」 Lillies and Remains
「ROMANTICISM」(2014 フィフティワン)
Lillies and Remains

<members>
KENT:vocals・guitar・synthesizer
KAZUYA:guitar・chorus
1.「Body」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
2.「Go Back」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
3.「Sublime Times」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
4.「Like The Way We Were」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
5.「Sigh」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
6.「Final Cut」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
7.「Recover」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
8.「Composition V」 曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
9.「To The Left」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
10.「This City #2」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
11.「Hopeless」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
<support musician>
藤井麻輝:all instruments
Nara Minoru:bass
高橋武:drums
吉野功:drums
produced by 藤井麻輝
engineered by 中野正之・藤井麻輝・石塚真一・原浩一
● 現代に甦る80’sポストパンク&ニューウェーブで他者と一線を画すバンドに藤井麻輝がエレクトロ魂を注入した勝負の3rdアルバム
2008年にミニアルバム「Moralist S.S.」でメジャーデビューを果たしたポストパンクバンドLillies and Remainsは、その後は断続的かつマイペースに活動を続けていき、フルアルバムを発表するごとにその予告編としてのミニアルバムをリリースするという律儀な側面を垣間見せるバンドです。彼らの根底にあるのはなんといっても80年代UKニューウェーブで、特に比較的アンダーグラウンドシーンで活動していた湿りっ気のある延々曇り空のロンドンの場末の酒場で演奏しているような雰囲気抜群の低音ヴォーカル(もちろん英語)と、粗さの残るギターリフを軸とした直球ポストパンク、The SmithsやEcho & the Bunnymenあたりの空気に影響を受けたありそうでないサウンドで、注目を浴びていました。そしてベーシストNara Minoruが脱退し2人組となった2014年、オリジナルフルアルバム3枚目となる本作のリリースとなったわけですが、過去の作品から何枚も殻を破ったかのような変化を求めた作品に仕上がっています。
本作の最大の特徴といえば、もちろん元SOFT BALLETにして現minus(-)のサウンドマジシャン藤井麻輝の全面プロデュースです。過去は濱田マリやepidemicのアルバムをプロデュースしてきた彼ですが、彼の音楽的志向とすればLillies and Remainsが最もマッチしているかのような相性を本作で示しています。まずは音響面で物足りなさのあった2ndアルバム「TRANSPERSONAL」からは、劇的に音質が上がり、音色も多彩になりました。これは藤井のアレンジというよりは彼の指導のもと、エンジニアリングも含めての全体的なクオリティの底上げがあったものと推測されます。もちろん随所に効果的な電子音が挿入されており、単純なギターリフにもシンセがかぶさってきたり、エフェクターによるギミックで音の幅を広げたりと、サウンド面での凝り性とも言える仕事ぶりは藤井ならではで、その偏執的に突き詰めた作業により極められたサウンドを聴くにつれ、やはり藤井とLilliesの相性の良さを感じざるを得ません。それでいて、彼らが本来持ち合わせているストイック性、粗さの残るギターに代表されるアンダーグラウンド的な青さ、といった部分はしっかり残しており、彼らの顔を立てながらオーバープロデュースになり過ぎずに、サウンドと音楽的な幅を広げながらポテンシャルを引き出すことに成功していると思われます。また、メロディセンスもさらに向上し、一概にポストパンクやニューウェーブとはいえないほどの、「Like The Way We Were」や「Recover」等でタイトルにふさわしくロマンチシズムに溢れたフレーズを随所に披露し、新境地を開拓しています。3枚目にしてようやく含蓄の感じられる名盤を生み出してくれたと言えるでしょう。
本作の後はしばらく作品リリースのないLilliesですが、再び本作のような聞き応えのあるような作品を生み出してくれるか、期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Body」
淡々としたシンセベースに平坦なヴォーカルがまさしくDepeche Modeなオープニングナンバー。あからさまなエレクトロとの融合はまさに藤井麻輝プロデュースの賜物でしょう。間奏ではシンセストリングスやシーケンスはもちろん、ギターサウンドも過剰に壮大で、前作までの比較的シンプルなサウンドとは一線を画しています。
・「Like The Way We Were」
暗澹としたマイナー調の多い彼らの楽曲にあって、初夏の爽やかさすら感じるメロディアスなギターポップ。乾いたドラムの音響もキレがあり、リバーブがかけられたギターリフや、随所で効果的に入れてくるシンセフレーズとS.E.ギミック、ミキシングも工夫されて楽曲のイメージを広げることに成功しています。
・「This City #2」
インダストリアルなシングル曲を藤井プロデュースでリニューアルしたニューバージョン。まるでBRAIN DRIVEのような疾走するエレクトロロックで、ノイズや電子音を控えめに背後に侍らせながら、あくまで主役はギターです。
<評点>
・サウンド ★★ (随所で挟み込むシンセのみならず音響面が格段に向上)
・メロディ ★★ (前作までの単調さに比べると新境地の甘い旋律に挑戦)
・リズム ★ (軽めの処理で淡々と刻んでいくパターンが多い)
・曲構成 ★★ (新境地へのチャレンジと音質の向上で単調さから逃れる)
・個性 ★★ (基本的に路線は変わらないがサウンド全体の底上げが著しい)
総合評点: 7点
Lillies and Remains

<members>
KENT:vocals・guitar・synthesizer
KAZUYA:guitar・chorus
1.「Body」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
2.「Go Back」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
3.「Sublime Times」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
4.「Like The Way We Were」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
5.「Sigh」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
6.「Final Cut」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
7.「Recover」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
8.「Composition V」 曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
9.「To The Left」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
10.「This City #2」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
11.「Hopeless」 詞・曲:KENT 編:Lillies and Remains・藤井麻輝
<support musician>
藤井麻輝:all instruments
Nara Minoru:bass
高橋武:drums
吉野功:drums
produced by 藤井麻輝
engineered by 中野正之・藤井麻輝・石塚真一・原浩一
● 現代に甦る80’sポストパンク&ニューウェーブで他者と一線を画すバンドに藤井麻輝がエレクトロ魂を注入した勝負の3rdアルバム
2008年にミニアルバム「Moralist S.S.」でメジャーデビューを果たしたポストパンクバンドLillies and Remainsは、その後は断続的かつマイペースに活動を続けていき、フルアルバムを発表するごとにその予告編としてのミニアルバムをリリースするという律儀な側面を垣間見せるバンドです。彼らの根底にあるのはなんといっても80年代UKニューウェーブで、特に比較的アンダーグラウンドシーンで活動していた湿りっ気のある延々曇り空のロンドンの場末の酒場で演奏しているような雰囲気抜群の低音ヴォーカル(もちろん英語)と、粗さの残るギターリフを軸とした直球ポストパンク、The SmithsやEcho & the Bunnymenあたりの空気に影響を受けたありそうでないサウンドで、注目を浴びていました。そしてベーシストNara Minoruが脱退し2人組となった2014年、オリジナルフルアルバム3枚目となる本作のリリースとなったわけですが、過去の作品から何枚も殻を破ったかのような変化を求めた作品に仕上がっています。
本作の最大の特徴といえば、もちろん元SOFT BALLETにして現minus(-)のサウンドマジシャン藤井麻輝の全面プロデュースです。過去は濱田マリやepidemicのアルバムをプロデュースしてきた彼ですが、彼の音楽的志向とすればLillies and Remainsが最もマッチしているかのような相性を本作で示しています。まずは音響面で物足りなさのあった2ndアルバム「TRANSPERSONAL」からは、劇的に音質が上がり、音色も多彩になりました。これは藤井のアレンジというよりは彼の指導のもと、エンジニアリングも含めての全体的なクオリティの底上げがあったものと推測されます。もちろん随所に効果的な電子音が挿入されており、単純なギターリフにもシンセがかぶさってきたり、エフェクターによるギミックで音の幅を広げたりと、サウンド面での凝り性とも言える仕事ぶりは藤井ならではで、その偏執的に突き詰めた作業により極められたサウンドを聴くにつれ、やはり藤井とLilliesの相性の良さを感じざるを得ません。それでいて、彼らが本来持ち合わせているストイック性、粗さの残るギターに代表されるアンダーグラウンド的な青さ、といった部分はしっかり残しており、彼らの顔を立てながらオーバープロデュースになり過ぎずに、サウンドと音楽的な幅を広げながらポテンシャルを引き出すことに成功していると思われます。また、メロディセンスもさらに向上し、一概にポストパンクやニューウェーブとはいえないほどの、「Like The Way We Were」や「Recover」等でタイトルにふさわしくロマンチシズムに溢れたフレーズを随所に披露し、新境地を開拓しています。3枚目にしてようやく含蓄の感じられる名盤を生み出してくれたと言えるでしょう。
本作の後はしばらく作品リリースのないLilliesですが、再び本作のような聞き応えのあるような作品を生み出してくれるか、期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Body」
淡々としたシンセベースに平坦なヴォーカルがまさしくDepeche Modeなオープニングナンバー。あからさまなエレクトロとの融合はまさに藤井麻輝プロデュースの賜物でしょう。間奏ではシンセストリングスやシーケンスはもちろん、ギターサウンドも過剰に壮大で、前作までの比較的シンプルなサウンドとは一線を画しています。
・「Like The Way We Were」
暗澹としたマイナー調の多い彼らの楽曲にあって、初夏の爽やかさすら感じるメロディアスなギターポップ。乾いたドラムの音響もキレがあり、リバーブがかけられたギターリフや、随所で効果的に入れてくるシンセフレーズとS.E.ギミック、ミキシングも工夫されて楽曲のイメージを広げることに成功しています。
・「This City #2」
インダストリアルなシングル曲を藤井プロデュースでリニューアルしたニューバージョン。まるでBRAIN DRIVEのような疾走するエレクトロロックで、ノイズや電子音を控えめに背後に侍らせながら、あくまで主役はギターです。
<評点>
・サウンド ★★ (随所で挟み込むシンセのみならず音響面が格段に向上)
・メロディ ★★ (前作までの単調さに比べると新境地の甘い旋律に挑戦)
・リズム ★ (軽めの処理で淡々と刻んでいくパターンが多い)
・曲構成 ★★ (新境地へのチャレンジと音質の向上で単調さから逃れる)
・個性 ★★ (基本的に路線は変わらないがサウンド全体の底上げが著しい)
総合評点: 7点
「GUSTO」 Especia
「GUSTO」(2014 つばさ)
Especia

<members>
冨永悠香:vocal・voice sample
三ノ宮ちか:vocal・voice sample
杉本暁音:vocal・voice sample
三瀬ちひろ:vocal・voice sample
脇田もなり:vocal・voice sample
森絵莉加:vocal・voice sample
1.「Intro」
2.「BayBlues」 詞:mirco 曲:miifuu 編:Schtein&Longer
3.「FOOLISH」 詞:mirco・ポウル守屋 曲・編:Schtein&Longer
4.「アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver)」 詞・曲・編:マセラティ渚
5.「Mount Up」 詞:三瀬ちひろ 曲:大谷武史 編:大谷武史・Schtein&Longer
6.「BEHIND YOU」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
7.「嘘つきなアネラ」 詞:UKO 曲:柿平愛 編:Schtein&Longer
8.「Intermission」
9.「No1 Sweeper」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
10.「L’elisir d’amore」 詞:mirco・ナンブフトシ 曲:Schtein&Longer 編:AWA
11.「海辺のサティ(PellyColo Remix)」 詞:mirco 曲・編:PellyColo
12.「ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)」
詞・曲:SAWA 編:Schtein&Longer
13.「くるかな」 詞・曲・編:マセラティ渚
14.「アビス」 詞:mirco 曲:ikkubaru 編:ikkubaru・Schtein&Longer
15.「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」 詞:mirco 曲:松隈ケンタ 編:Schtein&Longer
16.「Outro」
<support musician>
大谷武史:guitar
佐久間崇文:guitar
横山佑輝:guitar・bass・drum programming
柿平愛:piano・chorus
蝿田ミノル:piano
米原俊:trumpet
中川悦宏:tenor sax・alto sax
UKO:chorus
嵯峨根エラン:voice sample
新貝友輝:voice sample
山本大地:voice sample
山田由樹:voice sample
清水大充:rap・chorus
sound produced by Schtein&Longer
engineered by Rillsoul
● 濃厚な80’s臭を醸し出す音楽性で勝負する大阪ギャルアイドルグループの満を持したバブリー&ムーディーな1stフルアルバム
大阪堀江の80'sフレーバー豊かな地方アイドルグループEspeciaは、2012年のシングル「DULCE」、翌年の収録曲を一部入れ替えた2形態の変則ミニアルバム「AMARGA -Noche-」「AMARGA -Tarde-」が話題を呼び、その知名度を徐々に一部の音楽マニア達に浸透させていきます。BiS等の楽曲提供でその名を知られつつあったSchtein&Longerこと横山佑輝をサウンドプロデューサーに迎えていた彼女らの楽曲は、現在の80'シティポップ〜AORムーブメントの先鞭をつける役割を担うこととなり、そのアイドルらしからぬ渋さ全開のサウンドメイクは、個性を際立たせようとするあまり多様なジャンルに活路を求めていくことになる10年代アイドルグループの中でも確固たる地位を獲得し、アイドルソングに対する新たなファン層を増やしていくモデルケースとして注目を浴びる存在となっていきました。そして2014年、待望の1stフルアルバムがリリースされることとなるわけです。
十分に期待を持たせてからのフルアルバムということで、本作も実にがっつり16曲という大作となっていますが、キャッチーな楽曲でのっけから引き込むということもなく、いきなりムードたっぷりのインストから「Bay Blues」「FOOLISH」といったミディアムテンポの(良い意味での)地味な楽曲で勝負する、そのベテランのような風格というか貫禄たるや、まだメジャーデビューも果たしていないアイドルグループらしからぬ落ち着きが感じられます。対して宅録女子シンガーSAWAが手がけたキャッチー&ポップチューン「ミッドナイトConfusion」(本作のバージョンには全く納得がいってはいませんが)やVaporwave感満載の本作のリードチューン「No1 Sweeper」、Bis関係を手掛ける気鋭のサウンドプロデューサー松隈ケンタ作曲のシングルカット曲「YA・ME・TE!」といった打ち込み系ダンスチューンでは、覚えやすいキラーフレーズをしっかり混ぜ込みながら80'sサウンドを満喫できます。そしてその他のアルバム曲はアルバム曲らしく出過ぎず目立た過ぎず、Schtein&Longerお得意の「乾いたブラスセクションと煮え切らないメロディ」という古き良きシティポップマナーを踏襲した楽曲で音楽通を頷かせるような気遣いがなされており、若干の間延び感はあるものの、そのいなたさ具合がそのままEspeciaというグループ自体の個性として成立しているため、特に嫌味にも感じられません。まずはこの楽曲の充実ぶりとグループ個性の完成から考えても彼女らが全盛期に差し掛かってきたことが如実に理解できる作品と言えるでしょう。
アイドルソングのみならずPOPSとしての質の高さが認められた本作を手土産に、メジャーフィールドへ進出、順風満帆に思われたEspeciaでしたが、そこからプロモーション戦略の失敗からかイメージチェンジ→失速→メンバー脱退→新メンバー加入によるイメージチェンジ→失速→解散というように、もったいない方向へと推移していきます。大阪特有の場末感が彼女達の魅力の1つでもあっただけに、東京進出による迷いが戦略に現れてしまった不幸な例となってしまったことは残念でなりません。
<Favorite Songs>
・「No1 Sweeper」
流麗なサックスソロから一気になだれ込んでくる80'sエレクトロファンクチューン。クッキリとしたリズムパターン、長尺に揺らしながらのシンセパッドが特徴ですが、それらが支えているのは彼女達の真摯なヴォーカルで、本作中でも最もリズム感や楽曲とのマッチ感に優れていると思います。
・「アビス」
皆さんお馴染みインドネシアのikkubaruが提供したド直球のシティポップナンバー。ブラスセクションや軽快なギターのカッティング以上に、非常にメロディラインが良いです。特にノスタルジックなAメロに心打たれます。
・「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」
跳ねるブラス、粒の立ったスラップベースにより抜群のノリを生み出したシングルカット曲。メインフレーズを動き回るブラスセクションに任せながら、ワウワウギターとピアノをバックにあくまでアナログに攻めまくります。間奏のサックスソロにも深みを感じます。
<評点>
・サウンド ★★★ (アイドルの必要性を感じさせないほどの貫禄の音像)
・メロディ ★ (本格派を追求するあまり地味なフレーズが多し)
・リズム ★★ (80'sの匂いも残しながらそれは現代風に再構築)
・曲構成 ★ (幾ら何でも16曲は放り込み過ぎで質に差も)
・個性 ★★ (本作以降何でもありのアイドルグループが増加)
総合評点: 7点
Especia

<members>
冨永悠香:vocal・voice sample
三ノ宮ちか:vocal・voice sample
杉本暁音:vocal・voice sample
三瀬ちひろ:vocal・voice sample
脇田もなり:vocal・voice sample
森絵莉加:vocal・voice sample
1.「Intro」
2.「BayBlues」 詞:mirco 曲:miifuu 編:Schtein&Longer
3.「FOOLISH」 詞:mirco・ポウル守屋 曲・編:Schtein&Longer
4.「アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver)」 詞・曲・編:マセラティ渚
5.「Mount Up」 詞:三瀬ちひろ 曲:大谷武史 編:大谷武史・Schtein&Longer
6.「BEHIND YOU」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
7.「嘘つきなアネラ」 詞:UKO 曲:柿平愛 編:Schtein&Longer
8.「Intermission」
9.「No1 Sweeper」 詞:mirco 曲・編:Schtein&Longer
10.「L’elisir d’amore」 詞:mirco・ナンブフトシ 曲:Schtein&Longer 編:AWA
11.「海辺のサティ(PellyColo Remix)」 詞:mirco 曲・編:PellyColo
12.「ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)」
詞・曲:SAWA 編:Schtein&Longer
13.「くるかな」 詞・曲・編:マセラティ渚
14.「アビス」 詞:mirco 曲:ikkubaru 編:ikkubaru・Schtein&Longer
15.「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」 詞:mirco 曲:松隈ケンタ 編:Schtein&Longer
16.「Outro」
<support musician>
大谷武史:guitar
佐久間崇文:guitar
横山佑輝:guitar・bass・drum programming
柿平愛:piano・chorus
蝿田ミノル:piano
米原俊:trumpet
中川悦宏:tenor sax・alto sax
UKO:chorus
嵯峨根エラン:voice sample
新貝友輝:voice sample
山本大地:voice sample
山田由樹:voice sample
清水大充:rap・chorus
sound produced by Schtein&Longer
engineered by Rillsoul
● 濃厚な80’s臭を醸し出す音楽性で勝負する大阪ギャルアイドルグループの満を持したバブリー&ムーディーな1stフルアルバム
大阪堀江の80'sフレーバー豊かな地方アイドルグループEspeciaは、2012年のシングル「DULCE」、翌年の収録曲を一部入れ替えた2形態の変則ミニアルバム「AMARGA -Noche-」「AMARGA -Tarde-」が話題を呼び、その知名度を徐々に一部の音楽マニア達に浸透させていきます。BiS等の楽曲提供でその名を知られつつあったSchtein&Longerこと横山佑輝をサウンドプロデューサーに迎えていた彼女らの楽曲は、現在の80'シティポップ〜AORムーブメントの先鞭をつける役割を担うこととなり、そのアイドルらしからぬ渋さ全開のサウンドメイクは、個性を際立たせようとするあまり多様なジャンルに活路を求めていくことになる10年代アイドルグループの中でも確固たる地位を獲得し、アイドルソングに対する新たなファン層を増やしていくモデルケースとして注目を浴びる存在となっていきました。そして2014年、待望の1stフルアルバムがリリースされることとなるわけです。
十分に期待を持たせてからのフルアルバムということで、本作も実にがっつり16曲という大作となっていますが、キャッチーな楽曲でのっけから引き込むということもなく、いきなりムードたっぷりのインストから「Bay Blues」「FOOLISH」といったミディアムテンポの(良い意味での)地味な楽曲で勝負する、そのベテランのような風格というか貫禄たるや、まだメジャーデビューも果たしていないアイドルグループらしからぬ落ち着きが感じられます。対して宅録女子シンガーSAWAが手がけたキャッチー&ポップチューン「ミッドナイトConfusion」(本作のバージョンには全く納得がいってはいませんが)やVaporwave感満載の本作のリードチューン「No1 Sweeper」、Bis関係を手掛ける気鋭のサウンドプロデューサー松隈ケンタ作曲のシングルカット曲「YA・ME・TE!」といった打ち込み系ダンスチューンでは、覚えやすいキラーフレーズをしっかり混ぜ込みながら80'sサウンドを満喫できます。そしてその他のアルバム曲はアルバム曲らしく出過ぎず目立た過ぎず、Schtein&Longerお得意の「乾いたブラスセクションと煮え切らないメロディ」という古き良きシティポップマナーを踏襲した楽曲で音楽通を頷かせるような気遣いがなされており、若干の間延び感はあるものの、そのいなたさ具合がそのままEspeciaというグループ自体の個性として成立しているため、特に嫌味にも感じられません。まずはこの楽曲の充実ぶりとグループ個性の完成から考えても彼女らが全盛期に差し掛かってきたことが如実に理解できる作品と言えるでしょう。
アイドルソングのみならずPOPSとしての質の高さが認められた本作を手土産に、メジャーフィールドへ進出、順風満帆に思われたEspeciaでしたが、そこからプロモーション戦略の失敗からかイメージチェンジ→失速→メンバー脱退→新メンバー加入によるイメージチェンジ→失速→解散というように、もったいない方向へと推移していきます。大阪特有の場末感が彼女達の魅力の1つでもあっただけに、東京進出による迷いが戦略に現れてしまった不幸な例となってしまったことは残念でなりません。
<Favorite Songs>
・「No1 Sweeper」
流麗なサックスソロから一気になだれ込んでくる80'sエレクトロファンクチューン。クッキリとしたリズムパターン、長尺に揺らしながらのシンセパッドが特徴ですが、それらが支えているのは彼女達の真摯なヴォーカルで、本作中でも最もリズム感や楽曲とのマッチ感に優れていると思います。
・「アビス」
皆さんお馴染みインドネシアのikkubaruが提供したド直球のシティポップナンバー。ブラスセクションや軽快なギターのカッティング以上に、非常にメロディラインが良いです。特にノスタルジックなAメロに心打たれます。
・「YA・ME・TE!(GUSTO Ver)」
跳ねるブラス、粒の立ったスラップベースにより抜群のノリを生み出したシングルカット曲。メインフレーズを動き回るブラスセクションに任せながら、ワウワウギターとピアノをバックにあくまでアナログに攻めまくります。間奏のサックスソロにも深みを感じます。
<評点>
・サウンド ★★★ (アイドルの必要性を感じさせないほどの貫禄の音像)
・メロディ ★ (本格派を追求するあまり地味なフレーズが多し)
・リズム ★★ (80'sの匂いも残しながらそれは現代風に再構築)
・曲構成 ★ (幾ら何でも16曲は放り込み過ぎで質に差も)
・個性 ★★ (本作以降何でもありのアイドルグループが増加)
総合評点: 7点