「гипноза [Gipnoza]」 核P-MODEL
「гипноза [Gipnoza]」(2013 ケイオスユニオン)
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「гипноза (Gipnoza)」 詞・曲・編:平沢進
2.「それ行け! Halycon」 詞・曲・編:平沢進
3.「排時光」 詞・曲・編:平沢進
4.「白く巨大で」 詞・曲・編:平沢進
5.「Dμ34=不死」 詞・曲・編:平沢進
6.「Dr.древние (Dr.Drevniye)」 詞・曲・編:平沢進
7.「Parallel Kozak」 曲・編:平沢進
8.「Alarm」 詞・曲・編:平沢進
9.「109号区の氾濫」 詞・曲・編:平沢進
10.「Timelineの東」 詞・曲・編:平沢進
<support musician>
PEVO1号:guitar
田中靖美:keyboard solo
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 老いてもなお盛んな電子音の嵐!9年ぶりに放つソロP-MODELのブレない平沢テクノ全開の2ndアルバム
2004年に突然始まった解凍後のP-MODELのような攻撃的な電子音を撒き散らす作風の平沢進のアナザーユニット・核P-MODEL。その刺激的かつ衝撃的な電子音に彩られた1stアルバム「ビストロン」は、作風に落ち着きが見え始めていたソロワークスにマンネリズムを感じ始めていたリスナーにとっても好意的に迎えられた作品でした。その後も平沢はソロアルバムを3枚、アニメ映画「パプリカ」のオリジナルサウンドトラック、そしてソロ活動20周年・P-MODEL30周年記念プロジェクト「凝集する過去 還弦主義8760時間」に関連するリメイクアルバム等、精力的に作品を発表し続けながら、インタラクティブライブを定期的に開催するなど、その活動ペースは盛んになるばかりでした。そして周年行事が落ち着いた2013年、9年ぶりにまさかの核P-MODELが再始動、本作のリリースに至るというわけです。
タイトルチューンを真っ先に配置しスタートからパワー全開で電子音をぶちまけてきますが、その勢いは3曲目までとどまることを知りません。高速シーケンスと平沢印のストレンジな電子音で埋め尽くす飽和状態のサウンドは健在です。そして本作のポイントは彼の最近の作品としては珍しいゲストプレイヤーの参加で、初期P-MODELの盟友・田中靖美とPEVO星人のギタリスト・pevo1号という、新旧の相棒が参加しているというサービス精神が嬉しい部分です。さて、平沢式テクノポップの魅力の1つといえば、その意外性たっぷりのフレージングにあると思われますが、本作でも「それ行け! Halycon」に代表される音階の幅を可能な限り広げながら行き来するフレーズ構築が、彼が生み出す音楽のストレンジ性を増幅させているように感じます。あの変態的なギターソロにおいても高低を短いフレーズで行き来させることで、独特のサイバー感覚を演出していると思われます。そんな彼の得意技は本作でも存分に発揮されており、加えて剥き出しの電子音を歪ませたり高速で推移させたりするものですから、提供されるサウンドは刺激的以外の何物でもありません。また驚くべきはその高低自在のフレージングを自身のボーカルにも適用してしまうことです。これは相当音域に幅がないとできない芸当ですし、しかも当時還暦間近であったことを考えますと、その衰えない歌唱には脱帽せざるを得ないでしょう。この世代でいまだにそのようなショッキングな電子音をバックに朗々と歌い上げるアーティストは皆無であり、それが彼を必要以上に神格化させる要因の1つではないかと思います。しかしさらに驚かされるのは、2020年の現在であっても彼の音楽性やパフォーマンスが全く衰えないということでしょう。この不世出のアーティストにはこれからも目が離せない状況が続きそうです。
<Favorite Songs>
・「それ行け! Halycon」
忙しないリズムと素っ頓狂なメインフレーズが初期P-MODELのオマージュを感じさせるエレクトロスカチューン。それもそのはず、初期Pの盟友でありサウンドの代名詞でもあったキーボーディスト・田中靖美がキーボードで参加、衰えを知らない激しいソロプレイで古くからのリスナーの感涙を呼びます。。
・「白く巨大で」
ローファイなリズムと雄大なギターによるメインフレーズが開放的な本作においても完成度の高さは随一のミディアムナンバー。どこを切り取ってもいわゆる「聴かせる」楽曲であるのに、細かく刻まれていく電子ノイズや一般的に使用されないような大げさなギミック電子音で埋め尽くす「バラード」です。ギターソロもとにかく美しいです。
・「Dμ34=不死」
不穏な空気満々の暗黒SFエレクトロチューン。特に2周目から現れてくるグチュグチュした足下を這いずり回るようなシーケンスがとにかく気持ち悪いのですが、サビでの徐々に低下していくランダムフレーズがなんとも硬派です。この楽曲ではアルペジオ大活躍で、音色に酸味を加えながら変化させていく高速アルペジオフレーズの細やかさには流石の年季を感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (誰にも真似はできない恐るべき電子音の構築術)
・メロディ ★★★ (前作よりもソロの作風に引っ張られたような渋み)
・リズム ★★★★ (ローファイな処理を施したスネアも活躍)
・曲構成 ★★★ (激しい楽曲が多い反面同タイプの曲も多いか)
・個性 ★★★★ (質うんぬんを超えて孤高の立ち位置に到達)
総合評点: 9点
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「гипноза (Gipnoza)」 詞・曲・編:平沢進
2.「それ行け! Halycon」 詞・曲・編:平沢進
3.「排時光」 詞・曲・編:平沢進
4.「白く巨大で」 詞・曲・編:平沢進
5.「Dμ34=不死」 詞・曲・編:平沢進
6.「Dr.древние (Dr.Drevniye)」 詞・曲・編:平沢進
7.「Parallel Kozak」 曲・編:平沢進
8.「Alarm」 詞・曲・編:平沢進
9.「109号区の氾濫」 詞・曲・編:平沢進
10.「Timelineの東」 詞・曲・編:平沢進
<support musician>
PEVO1号:guitar
田中靖美:keyboard solo
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 老いてもなお盛んな電子音の嵐!9年ぶりに放つソロP-MODELのブレない平沢テクノ全開の2ndアルバム
2004年に突然始まった解凍後のP-MODELのような攻撃的な電子音を撒き散らす作風の平沢進のアナザーユニット・核P-MODEL。その刺激的かつ衝撃的な電子音に彩られた1stアルバム「ビストロン」は、作風に落ち着きが見え始めていたソロワークスにマンネリズムを感じ始めていたリスナーにとっても好意的に迎えられた作品でした。その後も平沢はソロアルバムを3枚、アニメ映画「パプリカ」のオリジナルサウンドトラック、そしてソロ活動20周年・P-MODEL30周年記念プロジェクト「凝集する過去 還弦主義8760時間」に関連するリメイクアルバム等、精力的に作品を発表し続けながら、インタラクティブライブを定期的に開催するなど、その活動ペースは盛んになるばかりでした。そして周年行事が落ち着いた2013年、9年ぶりにまさかの核P-MODELが再始動、本作のリリースに至るというわけです。
タイトルチューンを真っ先に配置しスタートからパワー全開で電子音をぶちまけてきますが、その勢いは3曲目までとどまることを知りません。高速シーケンスと平沢印のストレンジな電子音で埋め尽くす飽和状態のサウンドは健在です。そして本作のポイントは彼の最近の作品としては珍しいゲストプレイヤーの参加で、初期P-MODELの盟友・田中靖美とPEVO星人のギタリスト・pevo1号という、新旧の相棒が参加しているというサービス精神が嬉しい部分です。さて、平沢式テクノポップの魅力の1つといえば、その意外性たっぷりのフレージングにあると思われますが、本作でも「それ行け! Halycon」に代表される音階の幅を可能な限り広げながら行き来するフレーズ構築が、彼が生み出す音楽のストレンジ性を増幅させているように感じます。あの変態的なギターソロにおいても高低を短いフレーズで行き来させることで、独特のサイバー感覚を演出していると思われます。そんな彼の得意技は本作でも存分に発揮されており、加えて剥き出しの電子音を歪ませたり高速で推移させたりするものですから、提供されるサウンドは刺激的以外の何物でもありません。また驚くべきはその高低自在のフレージングを自身のボーカルにも適用してしまうことです。これは相当音域に幅がないとできない芸当ですし、しかも当時還暦間近であったことを考えますと、その衰えない歌唱には脱帽せざるを得ないでしょう。この世代でいまだにそのようなショッキングな電子音をバックに朗々と歌い上げるアーティストは皆無であり、それが彼を必要以上に神格化させる要因の1つではないかと思います。しかしさらに驚かされるのは、2020年の現在であっても彼の音楽性やパフォーマンスが全く衰えないということでしょう。この不世出のアーティストにはこれからも目が離せない状況が続きそうです。
<Favorite Songs>
・「それ行け! Halycon」
忙しないリズムと素っ頓狂なメインフレーズが初期P-MODELのオマージュを感じさせるエレクトロスカチューン。それもそのはず、初期Pの盟友でありサウンドの代名詞でもあったキーボーディスト・田中靖美がキーボードで参加、衰えを知らない激しいソロプレイで古くからのリスナーの感涙を呼びます。。
・「白く巨大で」
ローファイなリズムと雄大なギターによるメインフレーズが開放的な本作においても完成度の高さは随一のミディアムナンバー。どこを切り取ってもいわゆる「聴かせる」楽曲であるのに、細かく刻まれていく電子ノイズや一般的に使用されないような大げさなギミック電子音で埋め尽くす「バラード」です。ギターソロもとにかく美しいです。
・「Dμ34=不死」
不穏な空気満々の暗黒SFエレクトロチューン。特に2周目から現れてくるグチュグチュした足下を這いずり回るようなシーケンスがとにかく気持ち悪いのですが、サビでの徐々に低下していくランダムフレーズがなんとも硬派です。この楽曲ではアルペジオ大活躍で、音色に酸味を加えながら変化させていく高速アルペジオフレーズの細やかさには流石の年季を感じさせます。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (誰にも真似はできない恐るべき電子音の構築術)
・メロディ ★★★ (前作よりもソロの作風に引っ張られたような渋み)
・リズム ★★★★ (ローファイな処理を施したスネアも活躍)
・曲構成 ★★★ (激しい楽曲が多い反面同タイプの曲も多いか)
・個性 ★★★★ (質うんぬんを超えて孤高の立ち位置に到達)
総合評点: 9点
「鳥と魚」 村上ユカ
「鳥と魚」 (2013 yucafe)
村上ユカ:vocal・computer programming

1.「るりかあいかそらのいろ」 詞・曲・編:村上ユカ
2.「さかなになって」 詞・曲・編:村上ユカ
3.「butterfly effect」 曲・編:村上ユカ
4.「花がさいた」 詞・曲・編:村上ユカ
5.「冬の一日」 詞・曲・編:村上ユカ
6.「ラムネ坂」 詞・曲:村上ユカ 編:村上ユカ・井波陽子・藤木信希
7.「呼吸世界」 詞・曲・編:村上ユカ
8.「あの星の名は」 詞・曲・編:村上ユカ
9.「三つの窓」 詞・曲・編:村上ユカ
10.「夜の向こう」 詞・曲・編:村上ユカ
11.「かなえて」 詞・曲・編:村上ユカ
<support musician>
井波陽子:piano・piano arrangement
藤木信希:chorus・chorus arrangement
produced by 村上ユカ・杉本健
engineered by 杉本健
● 前作のバンドサウンドから9年ぶりに原点に戻りテケテケプチテクノポップが冴え渡る満を持した4thアルバム
テクノポップ北方の歌姫として、矢野顕子や遊佐未森から影響を受けたような和洋折衷童謡系打ち込みPOPSを一貫として志向してきた村上ユカは、現在で称されるところの「DTM女子」の先駆けとなった存在です。1990年代中盤のDTM黎明期から作詞作曲のみならずアレンジまでこなすマルチシンガーソングライターとして確固たる世界観を構築してきた彼女も、2004年リリースの3rdアルバム「角砂糖」リリース後は(子育てに忙しいという部分もありますが)徐々にマイペースな活動にシフト、2008年には前年に発売された普及型ボーカロイド・初音ミクを使用した楽曲「天球散歩」「呼吸世界」「あの星の名は」をYouTubeにUPし、テクノポッパーとしてのボーカロイドとの相性の良さを再確認させるなど健在ぶりを見せていましたが、3rdアルバムから実に9年が経過した2013年、ついに待望の4枚目のフルアルバムがリリースされることになります。
前作がホッピー神山プロデュースの生楽器の比重が高い肉感的な作品でしたが、本作は遂にアレンジを全面的に村上本人が担当、そしてミックス等エンジニアリングを夫である杉本健が手がけたことで、非常にドメスティックな作品に仕上がっています。驚くべきはそのシンセサイザーを中心とした電子音の純度の高さです。特に唯一のインストゥルメンタル曲「butterfly effect」では日本特有の和のメロディラインにい刺激的な電子音をふんだんに使用したサウンドデザインが施されており、彼女のテクノポッパーとしてのセンスと実力を垣間見せていますが、その楽曲に限らず、数あるテクノポップ系の歌モノの中でも「ここまでのレベル」という一線を軽く飛び越える、使用される電子音に対する「基準」が他のアーティストとは少し違う感覚を持っているように感じられます。そのクリーンな雑味を排したようなエレクトロサウンドは杉本のエンジニアリングの部分も大きいとは思いますが、本作のサウンドレベルを明らかに向上させていることに相違ないと思われます。「ラムネ坂」や「かなえて」のような弾き語り系を難なくこなすように、メロディと歌だけでも勝負できる資質を持ちながら、テクノポップ的なサウンドへのチャレンジを怠ることのないその音楽的姿勢は、彼女の立ち位置を特異なものにしていると思われますし、「鏡の世界」「銀河エレベーター」と良曲シングルが続く彼女の今後の作品への期待感を大いに煽るものであるとも言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「るりかあいかそらのいろ」
イントロから完全にテクノポップの遺伝子に対する期待感を感じさせるオープニングナンバー。せわしなく鳴り続けるローファイなハンドクラップ、レゾナンスが強く効いたシンセベース、ノングルーヴでディケイの短いアルペジオ&シーケンス、そんなヤンチャなサウンドに被せられるヴォーカル&コーラス等、音数の多さで圧倒します。
・「さかなになって」
前曲に引き続き、四つ打ちにドラムンベース気味のガチャガチャしたリズム隊の疾走感がたまらない煌びやかなシンセポップ。それでいてメロディは童謡めいた牧歌的なフレーズで、そのコントラストはまさに村上ユカ謹製と言えるでしょう。淡々としていてシーケンスに彩られたサウンドは細かく緻密にプログラミングされたスピード感覚が秀逸です。
・「呼吸世界」
2008年の初音ミクバージョンでも披露されていたアッパーテクノポップチューン。本人歌唱によって全てにおいてバージョンアップが施されており、リズムは詰め込み過ぎなくらいカオティックに、電子音はより刺激的に、間奏では印象的なフェイクを追加、そしてその後の圧巻なプログラミングでしか味わえないピアノソロからのスペイシーなシーケンスの流れの、一体どこまで行ってしまうのかという暴走ぶりが楽しいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (突き刺さる電子音を中心として一線を飛び越えるエレクトロ)
・メロディ ★★★ (この日本童謡な旋律はこの電子音があってのオリジナリティ)
・リズム ★★★ (過去作品を倍速にしたかのような高速疾走のプログラミング)
・曲構成 ★★ (攻撃的なエレクトロが突き抜けるからこそバラードが生きる)
・個性 ★★★ (音楽性は不変であるがやはり彼女には打ち込みがよく似合う)
総合評点: 8点
村上ユカ:vocal・computer programming

1.「るりかあいかそらのいろ」 詞・曲・編:村上ユカ
2.「さかなになって」 詞・曲・編:村上ユカ
3.「butterfly effect」 曲・編:村上ユカ
4.「花がさいた」 詞・曲・編:村上ユカ
5.「冬の一日」 詞・曲・編:村上ユカ
6.「ラムネ坂」 詞・曲:村上ユカ 編:村上ユカ・井波陽子・藤木信希
7.「呼吸世界」 詞・曲・編:村上ユカ
8.「あの星の名は」 詞・曲・編:村上ユカ
9.「三つの窓」 詞・曲・編:村上ユカ
10.「夜の向こう」 詞・曲・編:村上ユカ
11.「かなえて」 詞・曲・編:村上ユカ
<support musician>
井波陽子:piano・piano arrangement
藤木信希:chorus・chorus arrangement
produced by 村上ユカ・杉本健
engineered by 杉本健
● 前作のバンドサウンドから9年ぶりに原点に戻りテケテケプチテクノポップが冴え渡る満を持した4thアルバム
テクノポップ北方の歌姫として、矢野顕子や遊佐未森から影響を受けたような和洋折衷童謡系打ち込みPOPSを一貫として志向してきた村上ユカは、現在で称されるところの「DTM女子」の先駆けとなった存在です。1990年代中盤のDTM黎明期から作詞作曲のみならずアレンジまでこなすマルチシンガーソングライターとして確固たる世界観を構築してきた彼女も、2004年リリースの3rdアルバム「角砂糖」リリース後は(子育てに忙しいという部分もありますが)徐々にマイペースな活動にシフト、2008年には前年に発売された普及型ボーカロイド・初音ミクを使用した楽曲「天球散歩」「呼吸世界」「あの星の名は」をYouTubeにUPし、テクノポッパーとしてのボーカロイドとの相性の良さを再確認させるなど健在ぶりを見せていましたが、3rdアルバムから実に9年が経過した2013年、ついに待望の4枚目のフルアルバムがリリースされることになります。
前作がホッピー神山プロデュースの生楽器の比重が高い肉感的な作品でしたが、本作は遂にアレンジを全面的に村上本人が担当、そしてミックス等エンジニアリングを夫である杉本健が手がけたことで、非常にドメスティックな作品に仕上がっています。驚くべきはそのシンセサイザーを中心とした電子音の純度の高さです。特に唯一のインストゥルメンタル曲「butterfly effect」では日本特有の和のメロディラインにい刺激的な電子音をふんだんに使用したサウンドデザインが施されており、彼女のテクノポッパーとしてのセンスと実力を垣間見せていますが、その楽曲に限らず、数あるテクノポップ系の歌モノの中でも「ここまでのレベル」という一線を軽く飛び越える、使用される電子音に対する「基準」が他のアーティストとは少し違う感覚を持っているように感じられます。そのクリーンな雑味を排したようなエレクトロサウンドは杉本のエンジニアリングの部分も大きいとは思いますが、本作のサウンドレベルを明らかに向上させていることに相違ないと思われます。「ラムネ坂」や「かなえて」のような弾き語り系を難なくこなすように、メロディと歌だけでも勝負できる資質を持ちながら、テクノポップ的なサウンドへのチャレンジを怠ることのないその音楽的姿勢は、彼女の立ち位置を特異なものにしていると思われますし、「鏡の世界」「銀河エレベーター」と良曲シングルが続く彼女の今後の作品への期待感を大いに煽るものであるとも言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「るりかあいかそらのいろ」
イントロから完全にテクノポップの遺伝子に対する期待感を感じさせるオープニングナンバー。せわしなく鳴り続けるローファイなハンドクラップ、レゾナンスが強く効いたシンセベース、ノングルーヴでディケイの短いアルペジオ&シーケンス、そんなヤンチャなサウンドに被せられるヴォーカル&コーラス等、音数の多さで圧倒します。
・「さかなになって」
前曲に引き続き、四つ打ちにドラムンベース気味のガチャガチャしたリズム隊の疾走感がたまらない煌びやかなシンセポップ。それでいてメロディは童謡めいた牧歌的なフレーズで、そのコントラストはまさに村上ユカ謹製と言えるでしょう。淡々としていてシーケンスに彩られたサウンドは細かく緻密にプログラミングされたスピード感覚が秀逸です。
・「呼吸世界」
2008年の初音ミクバージョンでも披露されていたアッパーテクノポップチューン。本人歌唱によって全てにおいてバージョンアップが施されており、リズムは詰め込み過ぎなくらいカオティックに、電子音はより刺激的に、間奏では印象的なフェイクを追加、そしてその後の圧巻なプログラミングでしか味わえないピアノソロからのスペイシーなシーケンスの流れの、一体どこまで行ってしまうのかという暴走ぶりが楽しいです。
<評点>
・サウンド ★★★★ (突き刺さる電子音を中心として一線を飛び越えるエレクトロ)
・メロディ ★★★ (この日本童謡な旋律はこの電子音があってのオリジナリティ)
・リズム ★★★ (過去作品を倍速にしたかのような高速疾走のプログラミング)
・曲構成 ★★ (攻撃的なエレクトロが突き抜けるからこそバラードが生きる)
・個性 ★★★ (音楽性は不変であるがやはり彼女には打ち込みがよく似合う)
総合評点: 8点
「Melody Palette」 Negicco
「Melody Palette」(2013 T-Pallete)
Negicco

<members>
Nao☆:vocal・hand clap
Megu:vocal・hand clap
Kaede:vocal・hand clap
1.「愛のタワー・オブ・ラヴ」 詞・曲・編:西寺郷太
2.「あなたと Pop With You!」 詞・曲・編:connie
3.「アイドルばかり聴かないで」 詞・曲・編:小西康陽
4.「イミシン☆かもだけど」 詞・曲・編:長谷泰宏
5.「相思相愛」 詞・曲・編:tofubeats
6.「恋のEXPRESS TRAIN」 詞・曲・編:connie
7.「GET IT ON!」 詞・曲・編:connie
8.「ナターシア」 詞:サイプレス上野・connie 曲・編:サイプレス上野とロベルト吉野・connie
9.「ルートセヴンの記憶」 詞・曲・編:connie
10.「ネガティヴ・ガールズ!」 詞:Negicco・connie 曲:connie 編:吉田哲人
11.「Negiccoから君へ」 詞・曲・編:RAM RIDER
12.「スウィート・ソウル・ネギィー (grooveman’s Jack Bounce Mix)」
詞・曲・編:connie remix:grooveman spot
13.「ニュー・トリノ・ラヴ (banvox remix)」 詞・曲・編:connie remix:banvox
<support musician>
Zandhi:electric guitars
アレッシー:electric guitars
奥田健介:electric guitars・electric piano
藤枝暁:electric guitars
connie:keyboards・computer programming・hand clap・background vocals
西寺郷太:keyboards・computer programming・background vocals
長谷泰宏:keyboards・computer programming・background vocals・strings arrangement
吉田哲人:keyboards・computer programming・hand clap・background vocals
織田祐亮:trumpet
須賀裕之:trombone
本宮宏美:flute
CHIKA STRINGS:strings
仁科かおり:background vocals
サイプレス上野:rap
ロベルト吉野:scratch
sakajun:Niigata gag
tofubeats:computer programming
RAM RIDER:computer programming
新井俊也:computer programming
produced by connie・西寺郷太・小西康陽・長谷泰宏・tofubeats・サイプレス上野とロベルト吉野・RAM RIDER
mixing engineered by 兼重哲哉・connie・廣瀬修・吉田哲人・tofubeats・RAM RIDER
recording engineered by 兼重哲哉・井上一郎・廣瀬修・塚田耕司・murataDR・RAM RIDER
● 10年の雌伏の時を越えて遂に羽ばたいた地方発アイドルユニットを当代のポップクリエイター達がバックアップした高品質アイドルPOPS作品
新潟県のご当地アイドルとして2003年から地道に活動を続けてきたNegiccoが、プロデューサーのconnieが手掛ける良質なポップソングと安定したパフォーマンスが認められてタワーレコード傘下の新設レーベルであるT-Paletteレコードに参加したのが2011年。ここから全国展開を始めていくわけですが、2012年リリースの「恋のEXPRESS TRAIN」「あなたと Pop With You!」といったシングル曲は、アイドルマニアからはそのクオリティの高さから評価を受けていたもののブレイクへの扉を開くまでにはもう一歩何かが足りない状態が続いていました。そこでこの状態を打開すべく、翌年connieがプロデュースを打診したのがNONA REEVESの西寺郷太です。彼の80'sフレーバー溢れるメロディ構築力と渾身のベースプログラミングによるシングル「愛のタワー・オブ・ラヴ」は、彼女達が被っていた才能とセンスの殻を破るのに十分なインパクトを与える完成度で、まさにブレイクへの扉が開かれた瞬間となりました。そして次のシングルには大御所・小西康陽を起用した「アイドルばかり聴かないで」をリリース、勢いに乗った彼女達を待っていた初のオリジナルアルバムが本作というわけです。
まずは何はなくとも「愛のタワー・オブ・ラヴ」です。シンセベースプログラミングの楽しさを十分にアピールしたこの勝負曲は、確かなクオリティを獲得しながらもアイドルソングとしての矜持を忘れないポップ性をも兼ね備えている名曲で、この楽曲で完全にNegiccoのアイドル人生は上昇気流を掴み、スターダムへの軌道に乗ったと言えるでしょう。この名曲から始まる本作では、小西康陽、長谷泰宏、tofubeats、サイプレス上野とロベルト吉野、吉田哲人(ex.Fantastic Plastic Machine)、RAM RIDERといった新旧の実力派クリエイターをゲストに迎えつつ、remixの2曲は一十三十一仕事でキレのあるサウンドを手掛けるgrooveman spotや、エレクトロミュージック界の驚異の新鋭banvoxを迎えるなど、その人選にその期待のほどが窺えますが、それもこれもconnieが作り上げた爽やかさを前面に押し出したアイドルソングマナーをしっかり意識した楽曲とサウンドメイクが評価されてこその引力であり、そのあたりが当時の他の地方発アイドル達とは一線を画していた部分であると思われます。特に特筆すべきは透き通るようなベル系シンセフレーズの多用で、これが四つ打ちリズムであっても重々しくならず楽曲に繊細さを持ち込みつつ鮮度を失わない役割を果たしていると思います。ゲスト陣もそれぞれサウンドメイクの特徴を生かしながら質の高いアレンジに仕上げてはいますが、根元にあるのはconnieスピリッツであることには変わりありません。特にNegiccoに関してはその部分を強く感じさせるわけです。
メジャー進出によってさらに優秀なブレーンを持つスタッフに恵まれたNegiccoプロジェクトですが、急成長を遂げた本作リリース後の2013年秋には再び西寺郷太プロデュースの必殺キラーチューン「ときめきのヘッドライナー」でその人気はかつてのPerfumeを彷彿とさせる成長曲線を描いてブレイクスルーへと進んでいくことになるのです。
<Favorite Songs>
・「愛のタワー・オブ・ラヴ」
フワーッとしたシンセパッドからなだれ込んでくる縦横無尽なシンセベースの嵐に度肝を抜かれるその後のNegiccoの歴史を変えた名曲。シンセストリングスやゲートリバーブの効いたパワフルスネアも流石は80'sマスター西寺郷太の大仕事です。そしてこのオシャレな展開の楽曲でもライブを意識した合いの手を入れてくるサービスも忘れない隙のなさも魅力です。
・「あなたと Pop With You!」
苦楽を共にしてきたconnieプロデュースのメジャー2ndシングル。キラキラなシンセが施された90年代的エレガントサウンドを意識したポップチューン。青春ど真ん中な甘酸っぱいサビのメロディラインだけでもその質の高さを体感することができます。
・「イミシン☆かもだけど」
ポスト渋谷系な乙女ティックなガールポップにおけるストリングスマスターとして多方面で活躍する長谷泰宏(ユメトコスメ)が手がけたゴージャスポップソング。彼特有の複雑なメロディと凝り過ぎなほどの緻密なストリングスアレンジメントは笑ってしまうくらいです。これでもかのハープの多用やしつこ過ぎる転調など聴きどころも満載です。
<評点>
・サウンド ★★ (ゲストによるアプローチの違いを楽しめる)
・メロディ ★★ (いわゆる良い旋律は散見されるが引っかかりも少ない)
・リズム ★★★ (西寺曲の圧倒的なリズム構築のセンスが際立つ)
・曲構成 ★★ (ゲストサイドとconnieサイドのバランスは難しい)
・個性 ★★ (良質な楽曲を歌う地方アイドルから抜け出す前夜)
総合評点: 7点
Negicco

<members>
Nao☆:vocal・hand clap
Megu:vocal・hand clap
Kaede:vocal・hand clap
1.「愛のタワー・オブ・ラヴ」 詞・曲・編:西寺郷太
2.「あなたと Pop With You!」 詞・曲・編:connie
3.「アイドルばかり聴かないで」 詞・曲・編:小西康陽
4.「イミシン☆かもだけど」 詞・曲・編:長谷泰宏
5.「相思相愛」 詞・曲・編:tofubeats
6.「恋のEXPRESS TRAIN」 詞・曲・編:connie
7.「GET IT ON!」 詞・曲・編:connie
8.「ナターシア」 詞:サイプレス上野・connie 曲・編:サイプレス上野とロベルト吉野・connie
9.「ルートセヴンの記憶」 詞・曲・編:connie
10.「ネガティヴ・ガールズ!」 詞:Negicco・connie 曲:connie 編:吉田哲人
11.「Negiccoから君へ」 詞・曲・編:RAM RIDER
12.「スウィート・ソウル・ネギィー (grooveman’s Jack Bounce Mix)」
詞・曲・編:connie remix:grooveman spot
13.「ニュー・トリノ・ラヴ (banvox remix)」 詞・曲・編:connie remix:banvox
<support musician>
Zandhi:electric guitars
アレッシー:electric guitars
奥田健介:electric guitars・electric piano
藤枝暁:electric guitars
connie:keyboards・computer programming・hand clap・background vocals
西寺郷太:keyboards・computer programming・background vocals
長谷泰宏:keyboards・computer programming・background vocals・strings arrangement
吉田哲人:keyboards・computer programming・hand clap・background vocals
織田祐亮:trumpet
須賀裕之:trombone
本宮宏美:flute
CHIKA STRINGS:strings
仁科かおり:background vocals
サイプレス上野:rap
ロベルト吉野:scratch
sakajun:Niigata gag
tofubeats:computer programming
RAM RIDER:computer programming
新井俊也:computer programming
produced by connie・西寺郷太・小西康陽・長谷泰宏・tofubeats・サイプレス上野とロベルト吉野・RAM RIDER
mixing engineered by 兼重哲哉・connie・廣瀬修・吉田哲人・tofubeats・RAM RIDER
recording engineered by 兼重哲哉・井上一郎・廣瀬修・塚田耕司・murataDR・RAM RIDER
● 10年の雌伏の時を越えて遂に羽ばたいた地方発アイドルユニットを当代のポップクリエイター達がバックアップした高品質アイドルPOPS作品
新潟県のご当地アイドルとして2003年から地道に活動を続けてきたNegiccoが、プロデューサーのconnieが手掛ける良質なポップソングと安定したパフォーマンスが認められてタワーレコード傘下の新設レーベルであるT-Paletteレコードに参加したのが2011年。ここから全国展開を始めていくわけですが、2012年リリースの「恋のEXPRESS TRAIN」「あなたと Pop With You!」といったシングル曲は、アイドルマニアからはそのクオリティの高さから評価を受けていたもののブレイクへの扉を開くまでにはもう一歩何かが足りない状態が続いていました。そこでこの状態を打開すべく、翌年connieがプロデュースを打診したのがNONA REEVESの西寺郷太です。彼の80'sフレーバー溢れるメロディ構築力と渾身のベースプログラミングによるシングル「愛のタワー・オブ・ラヴ」は、彼女達が被っていた才能とセンスの殻を破るのに十分なインパクトを与える完成度で、まさにブレイクへの扉が開かれた瞬間となりました。そして次のシングルには大御所・小西康陽を起用した「アイドルばかり聴かないで」をリリース、勢いに乗った彼女達を待っていた初のオリジナルアルバムが本作というわけです。
まずは何はなくとも「愛のタワー・オブ・ラヴ」です。シンセベースプログラミングの楽しさを十分にアピールしたこの勝負曲は、確かなクオリティを獲得しながらもアイドルソングとしての矜持を忘れないポップ性をも兼ね備えている名曲で、この楽曲で完全にNegiccoのアイドル人生は上昇気流を掴み、スターダムへの軌道に乗ったと言えるでしょう。この名曲から始まる本作では、小西康陽、長谷泰宏、tofubeats、サイプレス上野とロベルト吉野、吉田哲人(ex.Fantastic Plastic Machine)、RAM RIDERといった新旧の実力派クリエイターをゲストに迎えつつ、remixの2曲は一十三十一仕事でキレのあるサウンドを手掛けるgrooveman spotや、エレクトロミュージック界の驚異の新鋭banvoxを迎えるなど、その人選にその期待のほどが窺えますが、それもこれもconnieが作り上げた爽やかさを前面に押し出したアイドルソングマナーをしっかり意識した楽曲とサウンドメイクが評価されてこその引力であり、そのあたりが当時の他の地方発アイドル達とは一線を画していた部分であると思われます。特に特筆すべきは透き通るようなベル系シンセフレーズの多用で、これが四つ打ちリズムであっても重々しくならず楽曲に繊細さを持ち込みつつ鮮度を失わない役割を果たしていると思います。ゲスト陣もそれぞれサウンドメイクの特徴を生かしながら質の高いアレンジに仕上げてはいますが、根元にあるのはconnieスピリッツであることには変わりありません。特にNegiccoに関してはその部分を強く感じさせるわけです。
メジャー進出によってさらに優秀なブレーンを持つスタッフに恵まれたNegiccoプロジェクトですが、急成長を遂げた本作リリース後の2013年秋には再び西寺郷太プロデュースの必殺キラーチューン「ときめきのヘッドライナー」でその人気はかつてのPerfumeを彷彿とさせる成長曲線を描いてブレイクスルーへと進んでいくことになるのです。
<Favorite Songs>
・「愛のタワー・オブ・ラヴ」
フワーッとしたシンセパッドからなだれ込んでくる縦横無尽なシンセベースの嵐に度肝を抜かれるその後のNegiccoの歴史を変えた名曲。シンセストリングスやゲートリバーブの効いたパワフルスネアも流石は80'sマスター西寺郷太の大仕事です。そしてこのオシャレな展開の楽曲でもライブを意識した合いの手を入れてくるサービスも忘れない隙のなさも魅力です。
・「あなたと Pop With You!」
苦楽を共にしてきたconnieプロデュースのメジャー2ndシングル。キラキラなシンセが施された90年代的エレガントサウンドを意識したポップチューン。青春ど真ん中な甘酸っぱいサビのメロディラインだけでもその質の高さを体感することができます。
・「イミシン☆かもだけど」
ポスト渋谷系な乙女ティックなガールポップにおけるストリングスマスターとして多方面で活躍する長谷泰宏(ユメトコスメ)が手がけたゴージャスポップソング。彼特有の複雑なメロディと凝り過ぎなほどの緻密なストリングスアレンジメントは笑ってしまうくらいです。これでもかのハープの多用やしつこ過ぎる転調など聴きどころも満載です。
<評点>
・サウンド ★★ (ゲストによるアプローチの違いを楽しめる)
・メロディ ★★ (いわゆる良い旋律は散見されるが引っかかりも少ない)
・リズム ★★★ (西寺曲の圧倒的なリズム構築のセンスが際立つ)
・曲構成 ★★ (ゲストサイドとconnieサイドのバランスは難しい)
・個性 ★★ (良質な楽曲を歌う地方アイドルから抜け出す前夜)
総合評点: 7点
「ELECTRIC SEXY」 ORIGINAL LOVE
「ELECTRIC SEXY」(2013 ワンダフルワールド)
ORIGINAL LOVE

<members>
田島貴男:vocals・guitars・bass・synthesizers・keyboards・computer programming
1.「スーパースター」 詞・曲・編:田島貴男
2.「ファッションアピール」 詞・曲・編:田島貴男
3.「エブリデイ エブリデイ」 詞・曲・編:田島貴男
4.「エナジーサプライ」 詞・曲・編:田島貴男
5.「線と線」 詞・曲・編:田島貴男
6.「きらめきヤングマン」 詞・曲・編:田島貴男
7.「セーリングボート」 詞・曲・編:田島貴男
8.「一撃アタック」 詞・曲・編:田島貴男
9.「太陽を背に」 詞・曲・編:田島貴男
10.「帰りのバス」 詞・曲・編:田島貴男
<support musician>
鹿島達也:bass
古田たかし:drums
中山努:synthesizers
produced by 田島貴男
mixing engineered by 森岡徹也
recording engineered by 田島貴男・森岡徹也
● 電子音&シーケンスでエレクトリックに新境地を開拓した衰えを知らないポップメイカーの挑戦的作品
田島貴男の生涯をかけたソロプロジェクト、ORIGINAL LOVEは初期のバンド活動よりそのポテンシャルが高く評価され、1991年のメジャーデビュー後もシングルヒットを連発し一気にスターダムにのし上がりつつありましたが、95年には全てのバンドメンバーが脱退し、ソロプロジェクトへと移行していきます。それからは田島自身が挑戦してみたい音楽スタイルを作品ごとに実践していくようになり、エレクトロニクス、ジャズやロック、昭和歌謡など変幻自在の作風ながらも、しっかりとコンスタントにアルバムをリリースしていきました。そして、2011年の20周年を機に自身のレーベルWONDERFUL WORLD RECORDSへと拠点を移しての第2作目のオリジナルアルバムとして本作がリリースされました。
さて、本作の特徴といえば2000年代前後の「L」や「ビッグクランチ」にて披露していた大胆なエレクトロニクスアプローチに久しぶりに取り組んだことでしょう。今回はアナログシンセをサウンドの中心に据え、それら特有のチープでローファイ、かつストレートで剥き出しな電子音色を多用した楽曲が目白押しとなっています。本来はギターの弾き語りや手練れのプレイヤーによる生演奏のバンドアンサンブルでも完成できるような楽曲を、これでもかといったような大胆で派手なアナログシンセサウンドで彩り、その多彩な音色により楽曲に対する脳内イメージを増幅させることに成功しています。「L」や「ビッグクランチ」ではまだバラエティに富んだ楽曲が多く、エレクトロニクスの取り扱いにブレがあったことも否めなかったのですが、本作では徹頭徹尾シンセサイザー(とマシナリーなリズムトラック)にこだわったエレポップを志向しており、本作においてはその本気度が窺える仕上がりとなっています。しかしながらこのようなエレクトロニクスへの傾倒は当人にとっては周期的なものらしく、次作「ラヴァーマン」からはまた元通り本来のスタイルに帰還することになります。田島貴男にとってエレクトロニクスはあくまでサウンド手法の1つであり信念ではありません。しかし稀代のメロディメイカーである彼のスタイルとしてはそれで何ら問題はないわけです。
<Favorite Songs>
・「スーパースター」
堅実に刻むギターリフに控えめなシンセフレーズが添えられたイントロで始まるオープニングナンバー。サビに入るとシンセストリングスで盛り上げてきますが、フィルイン的に入ってくるホワイトノイズが面白いです。
・「エブリデイ エブリデイ」
本作におけるリードチューン。爽やかなメロディラインにシンセサイザー中心のサウンドで華やかに彩っています。ロングトーンのシンセパッドのコード感もチープながらも美しく、乾いたスチールドラム風音色で合いの手を入れてくる部分も効果的です。
・「エナジーサプライ」
これもオートアルペジオが大活躍かつシンセが大胆にフィーチャーされたエレクトロシンドロームな楽曲。いかにも電子的なミニマルなシーケンスで全体を支配していきます。間奏で見せるシンセパッドの熟成感のある響き方は秀逸な仕事です。
<評点>
・サウンド ★★★ (ここまでシンセにこだわった作品はこれまでなかった)
・メロディ ★★ (サウンド面に気を遣う余りキラーチューンは少ない)
・リズム ★★ (打ち込み中心であるが多彩な音色で見せ場を作る)
・曲構成 ★★ (収録曲数や各曲の時間も適度であり安心感がある)
・個性 ★★ (これがこのユニットの魅力というとそれもまた違うかも)
総合評点: 7点
ORIGINAL LOVE

<members>
田島貴男:vocals・guitars・bass・synthesizers・keyboards・computer programming
1.「スーパースター」 詞・曲・編:田島貴男
2.「ファッションアピール」 詞・曲・編:田島貴男
3.「エブリデイ エブリデイ」 詞・曲・編:田島貴男
4.「エナジーサプライ」 詞・曲・編:田島貴男
5.「線と線」 詞・曲・編:田島貴男
6.「きらめきヤングマン」 詞・曲・編:田島貴男
7.「セーリングボート」 詞・曲・編:田島貴男
8.「一撃アタック」 詞・曲・編:田島貴男
9.「太陽を背に」 詞・曲・編:田島貴男
10.「帰りのバス」 詞・曲・編:田島貴男
<support musician>
鹿島達也:bass
古田たかし:drums
中山努:synthesizers
produced by 田島貴男
mixing engineered by 森岡徹也
recording engineered by 田島貴男・森岡徹也
● 電子音&シーケンスでエレクトリックに新境地を開拓した衰えを知らないポップメイカーの挑戦的作品
田島貴男の生涯をかけたソロプロジェクト、ORIGINAL LOVEは初期のバンド活動よりそのポテンシャルが高く評価され、1991年のメジャーデビュー後もシングルヒットを連発し一気にスターダムにのし上がりつつありましたが、95年には全てのバンドメンバーが脱退し、ソロプロジェクトへと移行していきます。それからは田島自身が挑戦してみたい音楽スタイルを作品ごとに実践していくようになり、エレクトロニクス、ジャズやロック、昭和歌謡など変幻自在の作風ながらも、しっかりとコンスタントにアルバムをリリースしていきました。そして、2011年の20周年を機に自身のレーベルWONDERFUL WORLD RECORDSへと拠点を移しての第2作目のオリジナルアルバムとして本作がリリースされました。
さて、本作の特徴といえば2000年代前後の「L」や「ビッグクランチ」にて披露していた大胆なエレクトロニクスアプローチに久しぶりに取り組んだことでしょう。今回はアナログシンセをサウンドの中心に据え、それら特有のチープでローファイ、かつストレートで剥き出しな電子音色を多用した楽曲が目白押しとなっています。本来はギターの弾き語りや手練れのプレイヤーによる生演奏のバンドアンサンブルでも完成できるような楽曲を、これでもかといったような大胆で派手なアナログシンセサウンドで彩り、その多彩な音色により楽曲に対する脳内イメージを増幅させることに成功しています。「L」や「ビッグクランチ」ではまだバラエティに富んだ楽曲が多く、エレクトロニクスの取り扱いにブレがあったことも否めなかったのですが、本作では徹頭徹尾シンセサイザー(とマシナリーなリズムトラック)にこだわったエレポップを志向しており、本作においてはその本気度が窺える仕上がりとなっています。しかしながらこのようなエレクトロニクスへの傾倒は当人にとっては周期的なものらしく、次作「ラヴァーマン」からはまた元通り本来のスタイルに帰還することになります。田島貴男にとってエレクトロニクスはあくまでサウンド手法の1つであり信念ではありません。しかし稀代のメロディメイカーである彼のスタイルとしてはそれで何ら問題はないわけです。
<Favorite Songs>
・「スーパースター」
堅実に刻むギターリフに控えめなシンセフレーズが添えられたイントロで始まるオープニングナンバー。サビに入るとシンセストリングスで盛り上げてきますが、フィルイン的に入ってくるホワイトノイズが面白いです。
・「エブリデイ エブリデイ」
本作におけるリードチューン。爽やかなメロディラインにシンセサイザー中心のサウンドで華やかに彩っています。ロングトーンのシンセパッドのコード感もチープながらも美しく、乾いたスチールドラム風音色で合いの手を入れてくる部分も効果的です。
・「エナジーサプライ」
これもオートアルペジオが大活躍かつシンセが大胆にフィーチャーされたエレクトロシンドロームな楽曲。いかにも電子的なミニマルなシーケンスで全体を支配していきます。間奏で見せるシンセパッドの熟成感のある響き方は秀逸な仕事です。
<評点>
・サウンド ★★★ (ここまでシンセにこだわった作品はこれまでなかった)
・メロディ ★★ (サウンド面に気を遣う余りキラーチューンは少ない)
・リズム ★★ (打ち込み中心であるが多彩な音色で見せ場を作る)
・曲構成 ★★ (収録曲数や各曲の時間も適度であり安心感がある)
・個性 ★★ (これがこのユニットの魅力というとそれもまた違うかも)
総合評点: 7点
「New Age」 (((さらうんど)))
「New Age」(2013 カクバリズム)
(((さらうんど)))

<members>
鴨田潤:vocal・acoustic guitar・chorus・chorus arrangement
Crystal:computer programming・chorus・voice
Kenya Koarata:rhythm programming・cowbell・chorus
1.「Welcome to Brand New Age」 曲・編:Crystal
2.「Signal Signal」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal
3.「Imagination.oO」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal
4.「きみは New Age」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal・砂原良徳
5.「Soul Music」 詞・曲:鴨田潤 編:鴨田潤・Crystal
6.「Neon Tetra」 詞:鴨田潤 曲:澤部渡 編:Crystal
7.「空中分解するアイラビュー」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal
8.「半径1mの夏」 詞・曲:鴨田潤 編:(((さらうんど)))
9.「Swan Song’s Story」 詞:鴨田潤 曲:荒内佑 編:Crystal
10.「Hocus Pocus」 詞・曲:鴨田潤 編:鴨田潤・Crystal
<support musician>
Kashif:electric guitar・acoustic guitar・electric bass・synth bass・chorus・voice
澤部渡:acoustic guitar・chorus
荒内佑:synth bass・keyboard・chorus arrangement
後関好宏:sax
アチコ:chorus・chorus arrangement
小野寺克之:voice
小林全哉:voice
砂原良徳:computer programming
produced by 鴨田潤・Crystal・Kenya Koarata・砂原良徳
engineered by 得能直也
● 80’sシティポップを現代のエレクトロサウンド手法で甦らせた気分爽快&ノスタルジックなサマーソングアルバム
2000年代初頭に活動を開始したテクノ・ハウス系DJチームTraks Boys。CrystalとK404(Kenya Koarata)から成るこのユニットは2007年に「Technicolor」、翌2008年に「Bring The Noise」と立て続けにアルバムをリリースし、数々のイベント出演を重ねることでその評価を高めていきました。そんな彼らが「新時代のポップス」を標榜してヒップホップ界で異彩を放っていたイルリメの鴨田潤と結成したのが(((さらうんど)))です。クラブ仕様のフィルターを通したテクノサウンドをPOPSに落とし込むありそうでないアプローチで、2012年に1stアルバム「(((さらうんど)))」をリリースしますが、まだまだ手探り状態であったこの作品から短いインターバルで制作された2ndアルバムが今回紹介する本作となりますが、前作の方向性を継承しながらもPOPSとしての練度をメロディ、サウンド、そして歌詞においても精微に高めていった努力とセンスが感じられる傑作に仕上がっています。
「New Age」というコンセプトも高らかに唱えられた本作ですが、クラブ仕様ながらその美しいコードワークと80'sテクノフレイバー溢れるシンセサウンドのセンスに定評のあったCrystalのトラックメイキングは成長著しく、シンセのワンフレーズを切り取っただけでも、そのテクノ&ニューウェーブへの半端ではない傾倒具合が間違いなく感じられます。そしてこれは(((さらうんど)))というグループのアイデンティティでもあるかと思いますが、この偏執的ともいえるテクノなシンセフレーズがギリギリな線を攻めながらも、センスあるコードワークによってPOPSたらしめるバランス感覚に非常に優れていて、なるほど「新時代のポップス」という大上段に構えたキャッチフレーズにも頷けるほどの質を感じます。また、本作には彼らが信奉する砂原良徳や、澤部渡(ex.スカート)、荒内佑(ex.cero)といった若手の注目株が参加し、それぞれが期待に違わぬクオリティを注ぎ込んだ楽曲を提供していますが、サポートギタリストとして八面六臂の活躍を惜しまないKashifの貢献も忘れてはいけません。プログラマブルな楽曲のバックでこそ映える効果的なギターフレーズは彼らの「ポップス面」の構築に欠かせない要素であり、時には情熱なフレーズで盛り上げ、時には前衛的なソロフレーズにチャレンジしたりと、そのプレイぶりはPan Pacific Playaでの活動にはとどまらない売れっ子ギタリストとしての勢いを感じさせるものです。彼の起用も本作においては大正解と言えると思われます。
(((さらうんど)))は2015年の3rdアルバム「See you, Blue」を最後に目立った活動を行なっていないようですが、現代的エレクトロポップの信頼できるグループの1つでもありますので、新作を期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Signal Signal」
細かく刻むシンセリフがエレポップ魂を感じさせるリードチューン。Kashifのギターも気持ちよく大活躍してリゾート風味を増幅させることに成功しています。Olivia Newton-John「Physical」のオマージュも巧みに取り入れるユーモアも彼ららしくて好感が持てます。
・「きみは New Age」
ここでもKashifの活躍ぶりが目立つ砂原良徳との共作となるタイトルチューン。さすがに砂原流といいますか、彼特有の音の凄まじい輪郭が目立ちます。イントロのロングリバーブ1つをとっても、その余韻だけでも聴いていられるほどのクオリティを備えています。ボコーダーを飛び交うコラージュな間奏も面白いのですが、それ以上にジャストなタイミングで決まるハンドクラップがトラックを引き締めています。
・「Soul Music」
鴨田潤もアレンジに加わった素っ頓狂なサウンドが度肝を抜く異色の楽曲。LFOを効かせた電子音が行き交うとっちらかったサウンドにラッパーならではのリズミカルな節回しでヴォーカルをとるプログレッシブなポップチューンで、当然ギターもアヴァンギャルドに攻めまくります。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ音の端々に80's的音作りの凝り性な部分を感じる)
・メロディ ★★ (この嫌味のない軽さを感じるフレージングが魅力的)
・リズム ★★ (ジャストなグルーヴをPOPSに落とし込むセンスで勝負)
・曲構成 ★★ (Crystalパートと鴨田パートの味わいにまだ差がある)
・個性 ★★ (この手のシティポップにしては電子音の粒立ちがテクノ)
総合評点: 7点
(((さらうんど)))

<members>
鴨田潤:vocal・acoustic guitar・chorus・chorus arrangement
Crystal:computer programming・chorus・voice
Kenya Koarata:rhythm programming・cowbell・chorus
1.「Welcome to Brand New Age」 曲・編:Crystal
2.「Signal Signal」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal
3.「Imagination.oO」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal
4.「きみは New Age」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal・砂原良徳
5.「Soul Music」 詞・曲:鴨田潤 編:鴨田潤・Crystal
6.「Neon Tetra」 詞:鴨田潤 曲:澤部渡 編:Crystal
7.「空中分解するアイラビュー」 詞:鴨田潤 曲・編:Crystal
8.「半径1mの夏」 詞・曲:鴨田潤 編:(((さらうんど)))
9.「Swan Song’s Story」 詞:鴨田潤 曲:荒内佑 編:Crystal
10.「Hocus Pocus」 詞・曲:鴨田潤 編:鴨田潤・Crystal
<support musician>
Kashif:electric guitar・acoustic guitar・electric bass・synth bass・chorus・voice
澤部渡:acoustic guitar・chorus
荒内佑:synth bass・keyboard・chorus arrangement
後関好宏:sax
アチコ:chorus・chorus arrangement
小野寺克之:voice
小林全哉:voice
砂原良徳:computer programming
produced by 鴨田潤・Crystal・Kenya Koarata・砂原良徳
engineered by 得能直也
● 80’sシティポップを現代のエレクトロサウンド手法で甦らせた気分爽快&ノスタルジックなサマーソングアルバム
2000年代初頭に活動を開始したテクノ・ハウス系DJチームTraks Boys。CrystalとK404(Kenya Koarata)から成るこのユニットは2007年に「Technicolor」、翌2008年に「Bring The Noise」と立て続けにアルバムをリリースし、数々のイベント出演を重ねることでその評価を高めていきました。そんな彼らが「新時代のポップス」を標榜してヒップホップ界で異彩を放っていたイルリメの鴨田潤と結成したのが(((さらうんど)))です。クラブ仕様のフィルターを通したテクノサウンドをPOPSに落とし込むありそうでないアプローチで、2012年に1stアルバム「(((さらうんど)))」をリリースしますが、まだまだ手探り状態であったこの作品から短いインターバルで制作された2ndアルバムが今回紹介する本作となりますが、前作の方向性を継承しながらもPOPSとしての練度をメロディ、サウンド、そして歌詞においても精微に高めていった努力とセンスが感じられる傑作に仕上がっています。
「New Age」というコンセプトも高らかに唱えられた本作ですが、クラブ仕様ながらその美しいコードワークと80'sテクノフレイバー溢れるシンセサウンドのセンスに定評のあったCrystalのトラックメイキングは成長著しく、シンセのワンフレーズを切り取っただけでも、そのテクノ&ニューウェーブへの半端ではない傾倒具合が間違いなく感じられます。そしてこれは(((さらうんど)))というグループのアイデンティティでもあるかと思いますが、この偏執的ともいえるテクノなシンセフレーズがギリギリな線を攻めながらも、センスあるコードワークによってPOPSたらしめるバランス感覚に非常に優れていて、なるほど「新時代のポップス」という大上段に構えたキャッチフレーズにも頷けるほどの質を感じます。また、本作には彼らが信奉する砂原良徳や、澤部渡(ex.スカート)、荒内佑(ex.cero)といった若手の注目株が参加し、それぞれが期待に違わぬクオリティを注ぎ込んだ楽曲を提供していますが、サポートギタリストとして八面六臂の活躍を惜しまないKashifの貢献も忘れてはいけません。プログラマブルな楽曲のバックでこそ映える効果的なギターフレーズは彼らの「ポップス面」の構築に欠かせない要素であり、時には情熱なフレーズで盛り上げ、時には前衛的なソロフレーズにチャレンジしたりと、そのプレイぶりはPan Pacific Playaでの活動にはとどまらない売れっ子ギタリストとしての勢いを感じさせるものです。彼の起用も本作においては大正解と言えると思われます。
(((さらうんど)))は2015年の3rdアルバム「See you, Blue」を最後に目立った活動を行なっていないようですが、現代的エレクトロポップの信頼できるグループの1つでもありますので、新作を期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Signal Signal」
細かく刻むシンセリフがエレポップ魂を感じさせるリードチューン。Kashifのギターも気持ちよく大活躍してリゾート風味を増幅させることに成功しています。Olivia Newton-John「Physical」のオマージュも巧みに取り入れるユーモアも彼ららしくて好感が持てます。
・「きみは New Age」
ここでもKashifの活躍ぶりが目立つ砂原良徳との共作となるタイトルチューン。さすがに砂原流といいますか、彼特有の音の凄まじい輪郭が目立ちます。イントロのロングリバーブ1つをとっても、その余韻だけでも聴いていられるほどのクオリティを備えています。ボコーダーを飛び交うコラージュな間奏も面白いのですが、それ以上にジャストなタイミングで決まるハンドクラップがトラックを引き締めています。
・「Soul Music」
鴨田潤もアレンジに加わった素っ頓狂なサウンドが度肝を抜く異色の楽曲。LFOを効かせた電子音が行き交うとっちらかったサウンドにラッパーならではのリズミカルな節回しでヴォーカルをとるプログレッシブなポップチューンで、当然ギターもアヴァンギャルドに攻めまくります。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ音の端々に80's的音作りの凝り性な部分を感じる)
・メロディ ★★ (この嫌味のない軽さを感じるフレージングが魅力的)
・リズム ★★ (ジャストなグルーヴをPOPSに落とし込むセンスで勝負)
・曲構成 ★★ (Crystalパートと鴨田パートの味わいにまだ差がある)
・個性 ★★ (この手のシティポップにしては電子音の粒立ちがテクノ)
総合評点: 7点