「Psychedelic Insanity」 ALI PROJECT
「Psychedelic Insanity」(2007 徳間ジャパン)
ALI PROJECT

<members>
宝野アリカ:vocal
片倉三起也:all instruments
1.「青嵐血風録」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
2.「暗黒サイケデリック」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
3.「CYBER DEVILS」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
4.「胡蝶夢心中」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
5.「纏われし者ら」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
6.「欲望」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
7.「暴夜layla幻談」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
8.「六道輪廻サバイバル」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
9.「若い死者からのレクイエム」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:平野義久
10.「gai desespoir」 曲:片倉三起也 編:平野義久
<support musician>
細田真子:cembalo
渡辺剛:strings arrangement
sound produced by 片倉三起也
engineered by 滝田二郎
● ジャケットのイメージ通りゴシックにエレクトロな極彩色を施したサウンドで進化を続ける実力派ユニットの意欲作
不遇の90年代後半を経てアニメソングを手掛けるようになったALI PROJECTは、「コッペリアの柩」「月蝕グランギニョル」と現在のパブリックイメージの基礎となるタイアップシングルをリリース、そしてトップ10ヒットとなった「聖少女領域」「亡国覚醒カタルシス」によって、その音楽的スタイルと立ち位置は確立することになります。この2曲は彼らの知名度を上げることに貢献したため、その後コンスタントにリリースされるアルバムは軒並み20位以内にランクするほどの安定したヒットを続けることになりますが、彼らの音楽スタイルとデビューからの足跡を辿ってみるにつけ、それは非常に奇跡的なことなのではないでしょうか。本作はそんな彼らの8thアルバムにして、前述のスマッシュヒット2曲後の初のオリジナルアルバムでもあります。彼らはシングル曲はオリジナル作品にはほとんど収録しない、良い意味でしっかり切り分けができているグループであるのですが、本作ではシングル曲なしのしかも成功に導いたゴシカルな打ち込みストリングスPOPSのみならず、実は初期からの持ち味であるTECHNOLOGYな部分、そこにサイバーな雰囲気を味つけした新趣向を見せた挑戦作という側面も垣間みせています。
とはいえ片倉三起也の相変わらずの目まぐるしいストリングスフレーズを中心としたアレンジテクニックは健在で、宝野アリカの衰えない歌唱と共に初期からの彼らの音楽のストロングポイントになっていますが、本作は近年顕著になってきた日本的なフレーズと音使い、「和」のテイストを取り入れながらさらにエレクトリック寄りといいますか、音使いとしてシンセやエフェクティブなサウンドが全面に押し出ています。ベテランらしくそのサウンド手法も多彩で、このあたりが彼らがアニメソングだけでなく音楽界の中でも一目置かれる存在にしているのですが、本作では特に電子的なサウンドにおいてその多彩さが特にアピールされており(特に「纏われし者ら」は圧巻の一言)、シングル曲ではこれまでのリスナーの期待に応えながら、アルバムでは新しい方向性を提示するという姿勢が窺えます。その後はアルバムごとにスタイルを模索していく彼らですが、既に一聴してわかるほどの知名度を得たアリプロサウンドの安定感は崩さず、アルバムでは自身の信じる方向性を実験できるという環境は、実はアーティストにとっても理想的なのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「CYBER DEVILS」
音を電子的に歪ませる手法で新趣向を見せタイトル通りの人工風味なサウンドを聞かせる挑戦的な楽曲。なんといってもAメロの疾走する電子リズムにヴォーカルをエフェクティブに変化させるギミックが楽しいです。サビは彼ららしい大げさな盛り上がりを見せますが、ラストを賛美歌風で占める唐突さもこの混沌とした楽曲にはふさわしいです。
・「纏われし者ら」
本作の中で最も実験的かつテクノロジー的な方向性が極度に現れた会心の傑作。インダストリアルなリズムに全体に漂うサイバー感覚、ストリングス的なフレーズも皆無で全編シンセサウンドのテクノポップです。4つの場面を繰り返すような楽曲構成も斬新で興味深い名曲です。
・「六道輪廻サバイバル」
いわゆる「聖少女領域」に通じるようなダークでゴシカルな目まぐるしいフレーズが特徴のストリングスPOPS。躍動感のある逸脱したメロディラインと、意図したかのような不協和音的フレーズの使い方が、なんとも彼ららしい混沌とした世界観を生み出しています。意外にも跳ねるリズムトラックも楽しい楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ度が高く格段に電子的な味わいが深くなった)
・メロディ ★ (相変わらず凝ったフレーズで押しまくるが難解さも)
・リズム ★★ (楽曲に合わせてスタイルも音色も多彩に使いこなす)
・曲構成 ★ (どうせならラストまでそのサイバー性を貫いてほしい)
・個性 ★★ (型を確立した中で閉塞感を打破する挑戦意欲は◯)
総合評点: 7点
ALI PROJECT

<members>
宝野アリカ:vocal
片倉三起也:all instruments
1.「青嵐血風録」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
2.「暗黒サイケデリック」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
3.「CYBER DEVILS」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
4.「胡蝶夢心中」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
5.「纏われし者ら」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
6.「欲望」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:片倉三起也・渡辺剛
7.「暴夜layla幻談」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
8.「六道輪廻サバイバル」 詞:宝野アリカ 曲・編:片倉三起也
9.「若い死者からのレクイエム」 詞:宝野アリカ 曲:片倉三起也 編:平野義久
10.「gai desespoir」 曲:片倉三起也 編:平野義久
<support musician>
細田真子:cembalo
渡辺剛:strings arrangement
sound produced by 片倉三起也
engineered by 滝田二郎
● ジャケットのイメージ通りゴシックにエレクトロな極彩色を施したサウンドで進化を続ける実力派ユニットの意欲作
不遇の90年代後半を経てアニメソングを手掛けるようになったALI PROJECTは、「コッペリアの柩」「月蝕グランギニョル」と現在のパブリックイメージの基礎となるタイアップシングルをリリース、そしてトップ10ヒットとなった「聖少女領域」「亡国覚醒カタルシス」によって、その音楽的スタイルと立ち位置は確立することになります。この2曲は彼らの知名度を上げることに貢献したため、その後コンスタントにリリースされるアルバムは軒並み20位以内にランクするほどの安定したヒットを続けることになりますが、彼らの音楽スタイルとデビューからの足跡を辿ってみるにつけ、それは非常に奇跡的なことなのではないでしょうか。本作はそんな彼らの8thアルバムにして、前述のスマッシュヒット2曲後の初のオリジナルアルバムでもあります。彼らはシングル曲はオリジナル作品にはほとんど収録しない、良い意味でしっかり切り分けができているグループであるのですが、本作ではシングル曲なしのしかも成功に導いたゴシカルな打ち込みストリングスPOPSのみならず、実は初期からの持ち味であるTECHNOLOGYな部分、そこにサイバーな雰囲気を味つけした新趣向を見せた挑戦作という側面も垣間みせています。
とはいえ片倉三起也の相変わらずの目まぐるしいストリングスフレーズを中心としたアレンジテクニックは健在で、宝野アリカの衰えない歌唱と共に初期からの彼らの音楽のストロングポイントになっていますが、本作は近年顕著になってきた日本的なフレーズと音使い、「和」のテイストを取り入れながらさらにエレクトリック寄りといいますか、音使いとしてシンセやエフェクティブなサウンドが全面に押し出ています。ベテランらしくそのサウンド手法も多彩で、このあたりが彼らがアニメソングだけでなく音楽界の中でも一目置かれる存在にしているのですが、本作では特に電子的なサウンドにおいてその多彩さが特にアピールされており(特に「纏われし者ら」は圧巻の一言)、シングル曲ではこれまでのリスナーの期待に応えながら、アルバムでは新しい方向性を提示するという姿勢が窺えます。その後はアルバムごとにスタイルを模索していく彼らですが、既に一聴してわかるほどの知名度を得たアリプロサウンドの安定感は崩さず、アルバムでは自身の信じる方向性を実験できるという環境は、実はアーティストにとっても理想的なのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「CYBER DEVILS」
音を電子的に歪ませる手法で新趣向を見せタイトル通りの人工風味なサウンドを聞かせる挑戦的な楽曲。なんといってもAメロの疾走する電子リズムにヴォーカルをエフェクティブに変化させるギミックが楽しいです。サビは彼ららしい大げさな盛り上がりを見せますが、ラストを賛美歌風で占める唐突さもこの混沌とした楽曲にはふさわしいです。
・「纏われし者ら」
本作の中で最も実験的かつテクノロジー的な方向性が極度に現れた会心の傑作。インダストリアルなリズムに全体に漂うサイバー感覚、ストリングス的なフレーズも皆無で全編シンセサウンドのテクノポップです。4つの場面を繰り返すような楽曲構成も斬新で興味深い名曲です。
・「六道輪廻サバイバル」
いわゆる「聖少女領域」に通じるようなダークでゴシカルな目まぐるしいフレーズが特徴のストリングスPOPS。躍動感のある逸脱したメロディラインと、意図したかのような不協和音的フレーズの使い方が、なんとも彼ららしい混沌とした世界観を生み出しています。意外にも跳ねるリズムトラックも楽しい楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (シンセ度が高く格段に電子的な味わいが深くなった)
・メロディ ★ (相変わらず凝ったフレーズで押しまくるが難解さも)
・リズム ★★ (楽曲に合わせてスタイルも音色も多彩に使いこなす)
・曲構成 ★ (どうせならラストまでそのサイバー性を貫いてほしい)
・個性 ★★ (型を確立した中で閉塞感を打破する挑戦意欲は◯)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Leer Lied」 kukui
「Leer Lied」(2007 ランティス)
kukui

<members>
霜月はるか:vocal
myu:all instruments
1.「空蝉ノ影」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
2.「彼方からの鎮魂歌」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
3.「ピチカート日和」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
4.「みどりのゆび」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
5.「はちみつ」 詞:あべかずひろ 曲・編:myu
6.「透明シェルター」 詞・曲・編:myu
7.「近くて遠いゆめ」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
8.「モノクロセカイ」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
9.「現夢」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
10.「Leer Lied」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
11.「Eden」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
12.「光の螺旋律」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
produced by 伊藤善之
● 人気アニメの世界を見事に具現化するクオリティの高い幻想POPSユニットの傑作ベスト盤
90年代末より同人サークルなどで活躍しポストファンタジーポップユニットと呼べる女性2人組であったrefioは、ヴォーカルのriyaが菊地創とのeufoniusとしての活動を本格化させるために脱退、残されたサウンド担当のmyuはrefioをソロユニットとして機能させます。コンピレーションなどでゲストを迎えながら活動していたrefioでしたが、2004年秋にアニメ「Rozen Maiden」のエンディング主題歌の起用に恵まれ、同じく同人音楽界で人気を誇っていたヴォーカリスト霜月はるかをゲストに迎えて「透明シェルター」を完成させます。非常に質の高いこの楽曲によってこのコンビとしての活動に自信を持った彼女らはほどなくkukuiとして新たな活動を開始し、数々のアニメソングを手掛け、その名曲の数々を一般に認知させていきます。そして彼女らを引き合わせたきっかけとなったアニメ「Rozen Maiden」へは1期、2期、特別編をはじめキャラクターソングも多く手掛け、その世界観を誰よりも表現できるユニットとして、それらの楽曲を集めた「Rozen Maiden」のためのベストアルバムをリリースします。それがkukuiにとって1stアルバムと呼べる本作というわけです。
もともと宅録ユニットであったrefioから発展したkukuiということもあり、サウンドの基礎となっているのはmyuのプログラミングということになりますが、明と暗を使い分け(どちらかと「暗」の部分とミディアムテンポの楽曲が多いが)、楽曲によって表情を変えながらもストリングスやコーラスを使って厚みを加えていくセンスは非凡なものがあります。ストリングスと電子音の親和性が高いことは数々の名曲で証明されていはいますが、特にmyuが手掛ける楽曲はそのバランス感覚が非常に優れており、本作でも弦楽器音を多用した中世ヨーロッパ的な優雅な非常に深みのある音世界と相性抜群の透明感溢れる声質でコーラスワークにも優れている霜月はるかのヴォーカルで、プログレッシブかつ幻想的なkukui的世界観をアピールしながら、それが「Rozen Maiden」の世界観としっかりリンクしているという点でも、本作が単なるベストアルバムという範疇を超えた名盤の証となるのではないでしょうか。最近ではマイペースな活動ながらより電子ポップ的なアプローチが顕著になっているkukuiですが、アニメ界隈にとどまらずTECHNOLOGY POPS的な側面からも要チェックの個性派ユニットです。
<Favorite Songs>
・「彼方からの鎮魂歌」
「Rozen Maiden」の敵役?水銀燈のキャラクターソング。そのほの暗い印象を味わい深いオルガンと造語コーラス、優雅なストリングスを中心に哀しく奏でられています。しかしkukuiの良い所はこういう曲調であってもギミック的な電子音を忘れないところです。
・「透明シェルター」
kukuiのスタートラインとなった「refio+霜月はるか」名義での楽曲にして。「Rozen Maiden」エンディング主題歌。全体を通した乾いたリズムトラックによる空虚感もそうですが、ストリングス+ベル+コーラスによる幻想的なBメロから前衛的な旋律のサビ+ストリングスの存在感がスゴいです。
・「光の螺旋律」
アニメ「Rozen Maiden traument」エンディング主題歌。なんといってもイントロの窓から風が吹き抜けるようなシンセパッドが素晴らしい。これだけで既に名曲ですが、ストリングスやチェンバロ風のフレーズが物悲しいヨーロピアンバラードのフレーズの数々が泣けます。
<評点>
・サウンド ★★★★★(打ち込みも弦もコーラスも緻密かつ冒険心に溢れている)
・メロディ ★★★ (プログレ的に少しひねり過ぎてしまうのもご愛嬌か)
・リズム ★★★ (打ち込みながら各楽曲で細かく音色もエフェクトも仕込む)
・曲構成 ★★★★ (アニメのベスト盤ながらkukuiの世界観も全くブレない)
・個性 ★★★★ (同人音楽から現れた類稀な才能を世に知らしめた)
総合評点: 9点
kukui

<members>
霜月はるか:vocal
myu:all instruments
1.「空蝉ノ影」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
2.「彼方からの鎮魂歌」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
3.「ピチカート日和」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
4.「みどりのゆび」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
5.「はちみつ」 詞:あべかずひろ 曲・編:myu
6.「透明シェルター」 詞・曲・編:myu
7.「近くて遠いゆめ」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
8.「モノクロセカイ」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
9.「現夢」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
10.「Leer Lied」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
11.「Eden」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
12.「光の螺旋律」 詞:霜月はるか 曲・編:myu
produced by 伊藤善之
● 人気アニメの世界を見事に具現化するクオリティの高い幻想POPSユニットの傑作ベスト盤
90年代末より同人サークルなどで活躍しポストファンタジーポップユニットと呼べる女性2人組であったrefioは、ヴォーカルのriyaが菊地創とのeufoniusとしての活動を本格化させるために脱退、残されたサウンド担当のmyuはrefioをソロユニットとして機能させます。コンピレーションなどでゲストを迎えながら活動していたrefioでしたが、2004年秋にアニメ「Rozen Maiden」のエンディング主題歌の起用に恵まれ、同じく同人音楽界で人気を誇っていたヴォーカリスト霜月はるかをゲストに迎えて「透明シェルター」を完成させます。非常に質の高いこの楽曲によってこのコンビとしての活動に自信を持った彼女らはほどなくkukuiとして新たな活動を開始し、数々のアニメソングを手掛け、その名曲の数々を一般に認知させていきます。そして彼女らを引き合わせたきっかけとなったアニメ「Rozen Maiden」へは1期、2期、特別編をはじめキャラクターソングも多く手掛け、その世界観を誰よりも表現できるユニットとして、それらの楽曲を集めた「Rozen Maiden」のためのベストアルバムをリリースします。それがkukuiにとって1stアルバムと呼べる本作というわけです。
もともと宅録ユニットであったrefioから発展したkukuiということもあり、サウンドの基礎となっているのはmyuのプログラミングということになりますが、明と暗を使い分け(どちらかと「暗」の部分とミディアムテンポの楽曲が多いが)、楽曲によって表情を変えながらもストリングスやコーラスを使って厚みを加えていくセンスは非凡なものがあります。ストリングスと電子音の親和性が高いことは数々の名曲で証明されていはいますが、特にmyuが手掛ける楽曲はそのバランス感覚が非常に優れており、本作でも弦楽器音を多用した中世ヨーロッパ的な優雅な非常に深みのある音世界と相性抜群の透明感溢れる声質でコーラスワークにも優れている霜月はるかのヴォーカルで、プログレッシブかつ幻想的なkukui的世界観をアピールしながら、それが「Rozen Maiden」の世界観としっかりリンクしているという点でも、本作が単なるベストアルバムという範疇を超えた名盤の証となるのではないでしょうか。最近ではマイペースな活動ながらより電子ポップ的なアプローチが顕著になっているkukuiですが、アニメ界隈にとどまらずTECHNOLOGY POPS的な側面からも要チェックの個性派ユニットです。
<Favorite Songs>
・「彼方からの鎮魂歌」
「Rozen Maiden」の敵役?水銀燈のキャラクターソング。そのほの暗い印象を味わい深いオルガンと造語コーラス、優雅なストリングスを中心に哀しく奏でられています。しかしkukuiの良い所はこういう曲調であってもギミック的な電子音を忘れないところです。
・「透明シェルター」
kukuiのスタートラインとなった「refio+霜月はるか」名義での楽曲にして。「Rozen Maiden」エンディング主題歌。全体を通した乾いたリズムトラックによる空虚感もそうですが、ストリングス+ベル+コーラスによる幻想的なBメロから前衛的な旋律のサビ+ストリングスの存在感がスゴいです。
・「光の螺旋律」
アニメ「Rozen Maiden traument」エンディング主題歌。なんといってもイントロの窓から風が吹き抜けるようなシンセパッドが素晴らしい。これだけで既に名曲ですが、ストリングスやチェンバロ風のフレーズが物悲しいヨーロピアンバラードのフレーズの数々が泣けます。
<評点>
・サウンド ★★★★★(打ち込みも弦もコーラスも緻密かつ冒険心に溢れている)
・メロディ ★★★ (プログレ的に少しひねり過ぎてしまうのもご愛嬌か)
・リズム ★★★ (打ち込みながら各楽曲で細かく音色もエフェクトも仕込む)
・曲構成 ★★★★ (アニメのベスト盤ながらkukuiの世界観も全くブレない)
・個性 ★★★★ (同人音楽から現れた類稀な才能を世に知らしめた)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「General Midge」 Phnonpenh Model
「General Midge」(2007 IRQ)
Phnonpenh Model

<members>
谷口'マルタ'正明:all instruments
ことぶき光:all instruments
1.「BURGER GAME」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
2.「DROP」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
3.「仕事(part2)」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
4.「keep on!~boom boom」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
produced by ことぶき光
engineered by 石川照幸
● 強烈な電子シーケンスに雄叫びも健在!沈黙を破り再始動した個性的ユニットのミニアルバム
P-MODELのコピーバンド大会においてメンバーであったことぶき光みずから企画ユニットとして参加したことぶき光 with Phnonpenh Modelは、高評価もあってアルバム「Desk Top Hard Lock」をリリースしましたが、手応えを感じたのかことぶきのP-MODEL脱退後もパーマネントな活動を続け、その後もライブ盤を含むアルバムを3枚発表するなど、海外からも評価を受けるほどのグループに成長しましたが21世紀初頭には活動を中止し沈黙期間に入っていました。もともとが谷口正明(マルタ)の演劇がかった熱いボーカルにことぶきの狂気の電子音とエスニックな感覚が同居したエクスペリメンタルな作風でありましたが、7年もの沈黙の末に遂にリリースされた本作では怒りにも満ちたようなハードでハイスピードな電子音シーケンスがフィーチャーされた攻撃的な楽曲が目立つ、衝撃的な作品となっています。
ライオンメリィが脱退し、マルタとことぶきの2人ユニットとなった本作ではありますが、根本的な部分、すなわち谷口の鬼気迫るヴォイスパフォーマンスとことぶきの逸脱したエレクトリックフレーズは健在です。しかし本作は4曲という少ない収録曲数ということもあって、バラエティに富むというよりは一気に勢いのまま駆け抜けていくといった印象が強いです。その上で本作で目立っているのがサンプリングされた激しいドラムパターンをループさせたリズムトラックで、あくまで攻撃的なこの切迫感溢れるリズムが本作の勢いを保つ上で重要な役割を果たしています。これにしつこいほど熱い(暑苦しい?)ヴォーカルフレーズが手を替え品を替えリピートさせるわけですから、その混沌さでトリップ感覚に陥りかけます。なんだかんだで4曲しかないので少々物足りないくらいあっという間に過ぎてしまう作品ですが。ぜひこの路線でフルアルバムを制作できればとてつもない名盤が生まれる期待感を煽らせるほどのインパクトを持っています。ただマイペースに活動している彼らにとってはそれは酷な話であるとも思うのですが・・・。
<Favorite Songs>
・「BURGER GAME」
少し巻き舌の入った怒気あふれるヴォーカルが印象的なハイスピードチューン。細かい電子音がランダムに飛び交い、どぎついギミックでインパクトを与える手法も相変わらずです。つぎはぎされた暴れ回るリズムトラックも激しさを増しています。
・「仕事(part2)」
打ち込み風景をそのまま録音して楽曲の一部にしてしまっているこれぞ実験的な小楽曲。単純な上下を行き来するシーケンスやエコーたっぷりのヴォーカルなどフレーズのスケッチともいうべき楽曲で、制作途中の脱力感さえ漂っています。
<評点>
・サウンド ★★★★★(ギタープレイにはキレがあるが全体的に軽く薄っぺらい)
・メロディ ★ (マルタの個性の前ではメロディはあってなきがごとし)
・リズム ★★★★ (リズムトラックの解体再構築により力強さが増した)
・曲構成 ★ (曲数の少なさを勢いでカバーしているがやはり物足りない)
・個性 ★★★ (相変わらずの取り憑かれたような呪術的楽曲が楽しい)
総合評点: 8点
Phnonpenh Model

<members>
谷口'マルタ'正明:all instruments
ことぶき光:all instruments
1.「BURGER GAME」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
2.「DROP」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
3.「仕事(part2)」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
4.「keep on!~boom boom」 詞:谷口'マルタ'正明 曲・編:Phnonpenh Model
produced by ことぶき光
engineered by 石川照幸
● 強烈な電子シーケンスに雄叫びも健在!沈黙を破り再始動した個性的ユニットのミニアルバム
P-MODELのコピーバンド大会においてメンバーであったことぶき光みずから企画ユニットとして参加したことぶき光 with Phnonpenh Modelは、高評価もあってアルバム「Desk Top Hard Lock」をリリースしましたが、手応えを感じたのかことぶきのP-MODEL脱退後もパーマネントな活動を続け、その後もライブ盤を含むアルバムを3枚発表するなど、海外からも評価を受けるほどのグループに成長しましたが21世紀初頭には活動を中止し沈黙期間に入っていました。もともとが谷口正明(マルタ)の演劇がかった熱いボーカルにことぶきの狂気の電子音とエスニックな感覚が同居したエクスペリメンタルな作風でありましたが、7年もの沈黙の末に遂にリリースされた本作では怒りにも満ちたようなハードでハイスピードな電子音シーケンスがフィーチャーされた攻撃的な楽曲が目立つ、衝撃的な作品となっています。
ライオンメリィが脱退し、マルタとことぶきの2人ユニットとなった本作ではありますが、根本的な部分、すなわち谷口の鬼気迫るヴォイスパフォーマンスとことぶきの逸脱したエレクトリックフレーズは健在です。しかし本作は4曲という少ない収録曲数ということもあって、バラエティに富むというよりは一気に勢いのまま駆け抜けていくといった印象が強いです。その上で本作で目立っているのがサンプリングされた激しいドラムパターンをループさせたリズムトラックで、あくまで攻撃的なこの切迫感溢れるリズムが本作の勢いを保つ上で重要な役割を果たしています。これにしつこいほど熱い(暑苦しい?)ヴォーカルフレーズが手を替え品を替えリピートさせるわけですから、その混沌さでトリップ感覚に陥りかけます。なんだかんだで4曲しかないので少々物足りないくらいあっという間に過ぎてしまう作品ですが。ぜひこの路線でフルアルバムを制作できればとてつもない名盤が生まれる期待感を煽らせるほどのインパクトを持っています。ただマイペースに活動している彼らにとってはそれは酷な話であるとも思うのですが・・・。
<Favorite Songs>
・「BURGER GAME」
少し巻き舌の入った怒気あふれるヴォーカルが印象的なハイスピードチューン。細かい電子音がランダムに飛び交い、どぎついギミックでインパクトを与える手法も相変わらずです。つぎはぎされた暴れ回るリズムトラックも激しさを増しています。
・「仕事(part2)」
打ち込み風景をそのまま録音して楽曲の一部にしてしまっているこれぞ実験的な小楽曲。単純な上下を行き来するシーケンスやエコーたっぷりのヴォーカルなどフレーズのスケッチともいうべき楽曲で、制作途中の脱力感さえ漂っています。
<評点>
・サウンド ★★★★★(ギタープレイにはキレがあるが全体的に軽く薄っぺらい)
・メロディ ★ (マルタの個性の前ではメロディはあってなきがごとし)
・リズム ★★★★ (リズムトラックの解体再構築により力強さが増した)
・曲構成 ★ (曲数の少なさを勢いでカバーしているがやはり物足りない)
・個性 ★★★ (相変わらずの取り憑かれたような呪術的楽曲が楽しい)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「metafysik」 eufonius
「metafysik」(2007 ランティス)
eufonius

<members>
riya:vocal・chorus
菊地創:all instruments・organ
1.「turning world」 詞:riya 曲・編:菊地創
2.「キミのカタチ」 詞:riya 曲・編:菊地創
3.「Apocrypha」 詞:riya 曲・編:菊地創
4.「ノクターン」 詞:riya 曲・編:菊地創
5.「遠い夏空」 詞:riya 曲・編:菊地創
6.「resonanz」 詞:riya 曲・編:菊地創
7.「Idea」 詞:riya 曲・編:菊地創
8.「wish」 詞:riya 曲・編:菊地創
9.「eidos」 詞:riya 曲・編:菊地創
10.「恋するココロ」 詞:riya 曲・編:菊地創
11.「楽園」 詞:riya 曲・編:菊地創
<support musician>
朝井泰生:guitars
飯室博:guitar
高山一也:guitars
渡辺等:bass
ただすけ:piano
CHIKAストリングス:strings
金原千恵子ストリングス:strings
弦一徹ストリングス:strings
室屋光一郎ストリングス:strings
sound produced by 菊地創
mixing engineered by 阿部哲也・松本大英・大久保将・松田正博・西沢栄一・赤川新一
recording engineered by 赤川新一・松田正博・西沢栄一・守屋勝美・森田信之・菊地創
● 転調を重ねた透明感溢れるメロディが美しいファンタジーPOPS界が満を持して送り出した名作
2000年以降急速に広がっていったファンタジーな音楽性とアニメ&ゲームソングの親和性を駆使して相互作用をもたらしている音楽ユニットの代表格として、eufoniusはトップランナーとして現在も精力的に活動していますが、インディーズにて1枚アルバムをリリースした後の2006年、メジャー(キングレコード)からのミニアルバム「スバラシキセカイ」を堂々発表しますが、同時に彼らはアニメ・ゲーム・声優関連に特化したレコード会社、ランティスからもシングルをリリースし、そのタイアップソングを多く手掛けることで徐々にその実力を開花させていきました。「idea」「恋するココロ」「Apocrypha」といったアニメ主題歌の3曲は、打ち込みとストリングス、そして造語コーラスを融合させたいわゆるファンタジックスタイルの音楽性と、目まぐるしく場面を変化させる転調を駆使したメロディラインを遺憾なく発揮した名曲揃いで、彼らの名を一気に知らしめた作品群ですが、こうした彼らの名曲群をほぼベストアルバム的に集めて1枚の作品に仕立て上げたのが、初のフルアルバムである本作というわけです。
アニメやゲームのタイアップというある意味制限がある中でどれだけ自分たちの個性を演出できるか、このようなジャンルで活動するグループの命題でもありますが、eufoniusも例外ではなく「eufonius」や「Σ」といった自主制作盤のようにやりたいことがやれる環境での、ある意味深くマニアックな作風は根底に抱えながら、実験的な要素は認められながらもある種ポップセンスが異様に求められる状況において、彼らが最上の仕事を披露している証拠が本作にはあります。数々のタイアップ作品はそれぞれナチュラルともヒーリングともとれるような、可愛らしく優しいフレーズが満載で、ストリングスとピアノ、ギターなどの生楽器の多用で楽曲に温かさと彩りを与えています。そしてこうしたグループの特徴である電子音への抵抗感のなさも功を奏しており、その情景描写をより鮮明なものにしています。そして忘れてはならないのは透明感のあるriyaの歌唱で、ファンタジックPOPSには不可欠なこのような声質とZABADAK(上野洋子在籍時)や新居昭乃等の影響が顕著な言葉に意味を持たない造語のコーラスワークが、楽曲の方向性を確固たるものにしています。この方向性に菊地創の独自の転調センス溢れる個性的なメロディとサウンドメイキングが相まって彼らのサウンドが確立されています。本作はタイアップ作品の寄せ集めといわれるかもしれませんが、驚くほどイメージは統一されており違和感は全くありません。逆にポップセンスの開花で自主制作盤よりもTECHNOLOGY POPSとしては完成度の高く感じられる名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「キミのカタチ」
名作アニメ「sola」のイメージソングとして発表された軽快なナチュラルソング。アコギによるリズムが癒しを与えてくれますがサビからスッと入ってくるストリングスが絶品で、キャッチーで風通しの良いサビとの抜群の相性を見せてくれます。
・「Apocrypha」
アニメ「神曲奏界ポリフォニカ」主題歌の疾走感のあるファンタジックな名曲。全体を支配する動き回るストリングスに乗って目まぐるしく転調するフレーズの組み合わせが魅力です。複雑でグルーヴィーなベースもポイントの1つでサビラスト前のフレーズにグッときます。
・「Idea」
彼らの名を一躍知らしめた不思議構成のマニアックポップな名曲。アニメ「ノエイン もうひとりの君へ」主題歌というだけあり、その近未来な作風を敏感に感じ取ったシンセフレーズと切迫感のあるストリングス、そしてサビのモヤモヤッとしながらも上手くまとめられているプログレッシブで不思議なフレーズは、そのまま彼ら独自の個性であると言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★ (打ち込みとストリングスの相性の良さを広く知らしめる)
・メロディ ★★★★★(無理矢理な転調部分をポップにまとめ上げる稀なセンス)
・リズム ★★ (この手のサウンドにリズムが前に出ることは得策でない)
・曲構成 ★★★ (ベスト的意味合いのため一貫性が低いと思いきや・・)
・個性 ★★★★ (タイアップなしでも普通に評価されるべき高い音楽性)
総合評点: 9点
eufonius

<members>
riya:vocal・chorus
菊地創:all instruments・organ
1.「turning world」 詞:riya 曲・編:菊地創
2.「キミのカタチ」 詞:riya 曲・編:菊地創
3.「Apocrypha」 詞:riya 曲・編:菊地創
4.「ノクターン」 詞:riya 曲・編:菊地創
5.「遠い夏空」 詞:riya 曲・編:菊地創
6.「resonanz」 詞:riya 曲・編:菊地創
7.「Idea」 詞:riya 曲・編:菊地創
8.「wish」 詞:riya 曲・編:菊地創
9.「eidos」 詞:riya 曲・編:菊地創
10.「恋するココロ」 詞:riya 曲・編:菊地創
11.「楽園」 詞:riya 曲・編:菊地創
<support musician>
朝井泰生:guitars
飯室博:guitar
高山一也:guitars
渡辺等:bass
ただすけ:piano
CHIKAストリングス:strings
金原千恵子ストリングス:strings
弦一徹ストリングス:strings
室屋光一郎ストリングス:strings
sound produced by 菊地創
mixing engineered by 阿部哲也・松本大英・大久保将・松田正博・西沢栄一・赤川新一
recording engineered by 赤川新一・松田正博・西沢栄一・守屋勝美・森田信之・菊地創
● 転調を重ねた透明感溢れるメロディが美しいファンタジーPOPS界が満を持して送り出した名作
2000年以降急速に広がっていったファンタジーな音楽性とアニメ&ゲームソングの親和性を駆使して相互作用をもたらしている音楽ユニットの代表格として、eufoniusはトップランナーとして現在も精力的に活動していますが、インディーズにて1枚アルバムをリリースした後の2006年、メジャー(キングレコード)からのミニアルバム「スバラシキセカイ」を堂々発表しますが、同時に彼らはアニメ・ゲーム・声優関連に特化したレコード会社、ランティスからもシングルをリリースし、そのタイアップソングを多く手掛けることで徐々にその実力を開花させていきました。「idea」「恋するココロ」「Apocrypha」といったアニメ主題歌の3曲は、打ち込みとストリングス、そして造語コーラスを融合させたいわゆるファンタジックスタイルの音楽性と、目まぐるしく場面を変化させる転調を駆使したメロディラインを遺憾なく発揮した名曲揃いで、彼らの名を一気に知らしめた作品群ですが、こうした彼らの名曲群をほぼベストアルバム的に集めて1枚の作品に仕立て上げたのが、初のフルアルバムである本作というわけです。
アニメやゲームのタイアップというある意味制限がある中でどれだけ自分たちの個性を演出できるか、このようなジャンルで活動するグループの命題でもありますが、eufoniusも例外ではなく「eufonius」や「Σ」といった自主制作盤のようにやりたいことがやれる環境での、ある意味深くマニアックな作風は根底に抱えながら、実験的な要素は認められながらもある種ポップセンスが異様に求められる状況において、彼らが最上の仕事を披露している証拠が本作にはあります。数々のタイアップ作品はそれぞれナチュラルともヒーリングともとれるような、可愛らしく優しいフレーズが満載で、ストリングスとピアノ、ギターなどの生楽器の多用で楽曲に温かさと彩りを与えています。そしてこうしたグループの特徴である電子音への抵抗感のなさも功を奏しており、その情景描写をより鮮明なものにしています。そして忘れてはならないのは透明感のあるriyaの歌唱で、ファンタジックPOPSには不可欠なこのような声質とZABADAK(上野洋子在籍時)や新居昭乃等の影響が顕著な言葉に意味を持たない造語のコーラスワークが、楽曲の方向性を確固たるものにしています。この方向性に菊地創の独自の転調センス溢れる個性的なメロディとサウンドメイキングが相まって彼らのサウンドが確立されています。本作はタイアップ作品の寄せ集めといわれるかもしれませんが、驚くほどイメージは統一されており違和感は全くありません。逆にポップセンスの開花で自主制作盤よりもTECHNOLOGY POPSとしては完成度の高く感じられる名盤と言えるでしょう。
<Favorite Songs>
・「キミのカタチ」
名作アニメ「sola」のイメージソングとして発表された軽快なナチュラルソング。アコギによるリズムが癒しを与えてくれますがサビからスッと入ってくるストリングスが絶品で、キャッチーで風通しの良いサビとの抜群の相性を見せてくれます。
・「Apocrypha」
アニメ「神曲奏界ポリフォニカ」主題歌の疾走感のあるファンタジックな名曲。全体を支配する動き回るストリングスに乗って目まぐるしく転調するフレーズの組み合わせが魅力です。複雑でグルーヴィーなベースもポイントの1つでサビラスト前のフレーズにグッときます。
・「Idea」
彼らの名を一躍知らしめた不思議構成のマニアックポップな名曲。アニメ「ノエイン もうひとりの君へ」主題歌というだけあり、その近未来な作風を敏感に感じ取ったシンセフレーズと切迫感のあるストリングス、そしてサビのモヤモヤッとしながらも上手くまとめられているプログレッシブで不思議なフレーズは、そのまま彼ら独自の個性であると言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★★ (打ち込みとストリングスの相性の良さを広く知らしめる)
・メロディ ★★★★★(無理矢理な転調部分をポップにまとめ上げる稀なセンス)
・リズム ★★ (この手のサウンドにリズムが前に出ることは得策でない)
・曲構成 ★★★ (ベスト的意味合いのため一貫性が低いと思いきや・・)
・個性 ★★★★ (タイアップなしでも普通に評価されるべき高い音楽性)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「Σ」 eufonius
「Σ」(2007 frequency⇒e)
eufonius

<members>
riya:vocal・chorus・voice noize・special voice
菊地創:all instruments・electric bass・toy piano
1.「ring」 詞・曲・編:菊地創
2.「fantajius」 詞:riya 曲・編:菊地創
3.「光の雨」 詞:riya 曲・編:菊地創
4.「ルベージュ」 詞:riya 曲・編:菊地創
5.「ベルーカ」 詞:riya 曲・編:菊地創
6.「delete」 詞:riya 曲・編:菊地創
7.「ナルキッソス」 詞:riya 曲・編:菊地創
<support musician>
朝井泰生:guitars
池哲太郎:bass
西川八重:violin
produced by 菊地創
mixing engineered by 大久保将・菊地創
recording engineered by 菊地創・水野アヒル
● 無国籍なファンタジー性をより強く打ち出した自主製作によるアナザーワールド作品
myu(ex.kukui)との音系同人ユニットrefioのヴォーカルであったriyaと、駆け出しの作編曲家であった菊地創がネット上で知り合い2004年に結成されたeufoniusは、アニメやゲーム音楽を手掛けるなどして頭角を現し、アニメ「ノエイン もうひとりの君へ」主題歌「idea」の凄まじい転調と幻想的な作風が高い評価を受け、一躍その名を知らしめることになります。そしてメジャーフィールドにおけるさらなる活躍が期待された2007年、彼らは自身の音楽性をメジャーの制約に縛られず自由に表現する場を保つためか、自主制作盤として本作をリリースします。独特な旋律と透明感のある歌で個性を発揮する彼らの楽曲は、メジャーフィールドにおいてはポップ性を兼ね備えた耳に優しい、ともすれば癒しともなり得る作風ですが、本作は彼らの幻想的な音楽性はそのままにどこか物憂げな寂寥感すら感じさせ、自主制作ならではのアプローチを試みています。
家内制手工業的な作品というだけあり音に粗さを感じさせる仕上がりですが、それだけにサンプリングを多用した音遊びもふんだんに取り入れられており、その音の粒立ちはメジャー作品よりも際立っている印象です。特にノイズを組み合わせたような機械的なリズムトラックは本作の特徴と言えるでしょう。そこに彼らが元合わせている牧歌的な雰囲気とそれを不意に歪めるような予期せぬ転調を駆使した楽曲構成が、音の隙間の多さも相まって独自の存在感を醸し出すことに成功しています。本作リリース後は本格的にメジャーへ活動の場を移していき数々の名曲を残すことになる彼らですが、本作は彼らのアナザーワールドというよりは本来の姿と言ってもよい作品であり、現在のクオリティの高い作品を連発できる彼らのセンスの素養となっているターニングポイントの作品になっていると思われます。
<Favorite Songs>
・「fantajius」
ギター中心のサビをストリングスで盛り上げるタイプのストレートな王道楽曲ですが、リズムトラックに細かい仕掛けを作ったり、ラストをシンセのポルタメントで締めるなど、どこか機械仕掛けな印象があります。
・「ナルキッソス」
PCゲーム「narcissu SIDE 2nd」主題歌でもある電子的なリズムに彩られた物悲しいバラード。新居昭乃や上野洋子に影響されたとおぼしき持ち前の造語コーラスと、ファンタジックな音像でバラードながら退屈させないサウンドが特徴です。
<評点>
・サウンド ★★ (ノイズを多用したリズムに程よい電子音がポイント)
・メロディ ★★ (基本ポップではあるが無理矢理な転調で歪めてしまう)
・リズム ★★★ (00年代には珍しく力強いリズムを前に出す構成)
・曲構成 ★★ (マイナー楽曲が多いことが逆に統一感を高めることに)
・個性 ★★ (ノイジーなサンプルなどメジャーで憚れる要素を詰め込む)
総合評点: 7点
eufonius

<members>
riya:vocal・chorus・voice noize・special voice
菊地創:all instruments・electric bass・toy piano
1.「ring」 詞・曲・編:菊地創
2.「fantajius」 詞:riya 曲・編:菊地創
3.「光の雨」 詞:riya 曲・編:菊地創
4.「ルベージュ」 詞:riya 曲・編:菊地創
5.「ベルーカ」 詞:riya 曲・編:菊地創
6.「delete」 詞:riya 曲・編:菊地創
7.「ナルキッソス」 詞:riya 曲・編:菊地創
<support musician>
朝井泰生:guitars
池哲太郎:bass
西川八重:violin
produced by 菊地創
mixing engineered by 大久保将・菊地創
recording engineered by 菊地創・水野アヒル
● 無国籍なファンタジー性をより強く打ち出した自主製作によるアナザーワールド作品
myu(ex.kukui)との音系同人ユニットrefioのヴォーカルであったriyaと、駆け出しの作編曲家であった菊地創がネット上で知り合い2004年に結成されたeufoniusは、アニメやゲーム音楽を手掛けるなどして頭角を現し、アニメ「ノエイン もうひとりの君へ」主題歌「idea」の凄まじい転調と幻想的な作風が高い評価を受け、一躍その名を知らしめることになります。そしてメジャーフィールドにおけるさらなる活躍が期待された2007年、彼らは自身の音楽性をメジャーの制約に縛られず自由に表現する場を保つためか、自主制作盤として本作をリリースします。独特な旋律と透明感のある歌で個性を発揮する彼らの楽曲は、メジャーフィールドにおいてはポップ性を兼ね備えた耳に優しい、ともすれば癒しともなり得る作風ですが、本作は彼らの幻想的な音楽性はそのままにどこか物憂げな寂寥感すら感じさせ、自主制作ならではのアプローチを試みています。
家内制手工業的な作品というだけあり音に粗さを感じさせる仕上がりですが、それだけにサンプリングを多用した音遊びもふんだんに取り入れられており、その音の粒立ちはメジャー作品よりも際立っている印象です。特にノイズを組み合わせたような機械的なリズムトラックは本作の特徴と言えるでしょう。そこに彼らが元合わせている牧歌的な雰囲気とそれを不意に歪めるような予期せぬ転調を駆使した楽曲構成が、音の隙間の多さも相まって独自の存在感を醸し出すことに成功しています。本作リリース後は本格的にメジャーへ活動の場を移していき数々の名曲を残すことになる彼らですが、本作は彼らのアナザーワールドというよりは本来の姿と言ってもよい作品であり、現在のクオリティの高い作品を連発できる彼らのセンスの素養となっているターニングポイントの作品になっていると思われます。
<Favorite Songs>
・「fantajius」
ギター中心のサビをストリングスで盛り上げるタイプのストレートな王道楽曲ですが、リズムトラックに細かい仕掛けを作ったり、ラストをシンセのポルタメントで締めるなど、どこか機械仕掛けな印象があります。
・「ナルキッソス」
PCゲーム「narcissu SIDE 2nd」主題歌でもある電子的なリズムに彩られた物悲しいバラード。新居昭乃や上野洋子に影響されたとおぼしき持ち前の造語コーラスと、ファンタジックな音像でバラードながら退屈させないサウンドが特徴です。
<評点>
・サウンド ★★ (ノイズを多用したリズムに程よい電子音がポイント)
・メロディ ★★ (基本ポップではあるが無理矢理な転調で歪めてしまう)
・リズム ★★★ (00年代には珍しく力強いリズムを前に出す構成)
・曲構成 ★★ (マイナー楽曲が多いことが逆に統一感を高めることに)
・個性 ★★ (ノイジーなサンプルなどメジャーで憚れる要素を詰め込む)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽