「テクニコントラストロン02」 goatbed
「テクニコントラストロン02」(2004 スパークル)
goatbed

<members>
石井秀仁:vocal・guitar・computer programming・sampling・synthesizer
小間貴雄:bass・disc-rec
依元智史:guitar
ヤシマヒデキ:visible img
武井誠:drums
的場誠也:drums
1.「ロケットベイベー」 詞:石井秀仁 曲:石井秀仁・小間貴雄 編:石井秀仁
2.「アナーキックマジック」 詞・曲・編:石井秀仁
3.「エレクトロスカッシュ」 詞・曲・編:石井秀仁
4.「パンクフロイト」 詞・曲・編:石井秀仁
5.「ひとつの部屋ふたりの人物」 詞:Bruce Gilbert 曲:Colin Newman 編:石井秀仁
6.「ピピ」 曲・編:石井秀仁
7.「バレーストローク」 曲:石井秀仁・小間貴雄 編:石井秀仁
8.「アンガー」 詞・曲・編:石井秀仁
9.「ラジカルバーバリアン」 詞・曲・編:石井秀仁
10.「ミュージックコンプリート」 詞・曲・編:石井秀仁
produced by goatbed
engineered by goatbed・岩崎亮・堀内耕太郎
● 01とは対照的にストイックでミニマルな実験的エレクトロをポップに料理した2ndアルバム
2003年のcali≠gari無期限活動停止を機に自身の音楽的ルーツを追求していくためのソロユニット、goatbedを開始した石井秀仁。自主製作盤「goatbed」でその80'sニューウェーブな片鱗を見せつけると、翌04年には全国流通アルバム「テクニコントラストロン01」をリリースします。古き良き80'sニューウェーブに感化された歌謡曲の時代、吉川晃司がデビュー仕立てであったミドル80'sをピンポイントに撃ち抜いたこの作品は、その隙のないエレクトリックサウンドと彼の得意とするところの哀愁テイストをふんだんに注ぎ込んだメロディラインが凝縮された良作で、当時はなかなかこうしたアプローチをするアーティストが存在していなかったこともあって、強烈な個性を放っていました。そしてこのリリースの1ヶ月後、間髪入れずに双子とも言える作品が発表されました。それが本作となるわけですが、「02」と銘打たれた本作は、収録時間も30分未満と少なめなものの、そこには石井自身のルーツへの愛情と憧憬がこれでもかと詰め込まれた、より趣味性に走った仕上がりとなっており、まさに前作とセットで聴くことが正解と言える作品となっています。
さて、10曲収録ながら収録時間が短いのには理由がありまして、それは当然のことながら1曲1曲が短いというわけなのですが、それは楽曲のスタイルがニューウェーブの中でもエレクトロパンクというべきBPMの早い直線的なベースラインと8ビートで押してくる楽曲が多い部分にあります。しかも「01」のような哀愁メロディは抑え気味にして、よりマニアックさとサイバー度が増したシンセサウンドを基軸に、ヴォーカルも必要最小限にとどめながらボイス変調を駆使して脇役に徹する徹底ぶりで、あくまで本作はサウンド志向に偏重することによって「01」との差別化を図り、goatbedのユニットとしての多面性をアピールすることに成功していると言えるでしょう。このような志向であるからして本作では最低限の歌詞によるほぼインストゥルメンタルと言っても良い楽曲が多いのですが、それでいてある種の聴きやすさを確保しているというのは、「01」で見せた彼のメロディメイカーとしての側面を隠し切れないためとも言えます。しかしそれはこのgoatbedという現れた時代のタイミングが微妙にずれてしまった稀有なユニットの長所であり、失ってはいけない個性であると個人的には感じています。現在ではより深遠なシンセサウンドに心酔したかのようなロマンティックシンセポップに変化していますが、本質は全く変わらない、いわゆる「ハズレのなさ」で安心できるユニットとして今後も聴き手を楽しませてくれることでしょう。
<Favorite Songs>
・「ピピ」
まるで80年代の4-Dのような鉄骨ビートを披露するインダストリアルなインスト。アシッドなシンセベースに直球なドラミングをベースに、後半は高速ビートで攻めまくる、いわゆるSOFT BALLETの名曲「Needle」を彷彿とさせるスタイルが楽しめます。
・「アンガー」
ミディアムなテンポによるアンニュイでダークなエレクトロチューン。コクのあるシンセベースの落ち着いたシーケンスが素晴らしい。決して音数は多くはないものの、このベースラインだけで確固たる音世界を構築することに成功しています。
・「ミュージックコンプリート」
比較的「01」に近いスタイルの軽快なシンセポップ。しかしヴォーカルは全編ボコーダーでよりSF度がアップした形となっています。Dead Or Aliveを彷彿とさせるエレクトロディスコなビートは石井秀仁の十八番とも言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★ (バリエーションは少ないがむき出しの電子音で勝負)
・メロディ ★ (持ち前のメロディセンスは意図的に抑え気味に)
・リズム ★★ (80'sのキモであるリズム隊の処理は「わかって」いる)
・曲構成 ★ (流石にコンパクトにまとまり過ぎな印象)
・個性 ★★ (ルーツをあられもなく曝け出した潔さに想いを感じる)
総合評点: 6点
goatbed

<members>
石井秀仁:vocal・guitar・computer programming・sampling・synthesizer
小間貴雄:bass・disc-rec
依元智史:guitar
ヤシマヒデキ:visible img
武井誠:drums
的場誠也:drums
1.「ロケットベイベー」 詞:石井秀仁 曲:石井秀仁・小間貴雄 編:石井秀仁
2.「アナーキックマジック」 詞・曲・編:石井秀仁
3.「エレクトロスカッシュ」 詞・曲・編:石井秀仁
4.「パンクフロイト」 詞・曲・編:石井秀仁
5.「ひとつの部屋ふたりの人物」 詞:Bruce Gilbert 曲:Colin Newman 編:石井秀仁
6.「ピピ」 曲・編:石井秀仁
7.「バレーストローク」 曲:石井秀仁・小間貴雄 編:石井秀仁
8.「アンガー」 詞・曲・編:石井秀仁
9.「ラジカルバーバリアン」 詞・曲・編:石井秀仁
10.「ミュージックコンプリート」 詞・曲・編:石井秀仁
produced by goatbed
engineered by goatbed・岩崎亮・堀内耕太郎
● 01とは対照的にストイックでミニマルな実験的エレクトロをポップに料理した2ndアルバム
2003年のcali≠gari無期限活動停止を機に自身の音楽的ルーツを追求していくためのソロユニット、goatbedを開始した石井秀仁。自主製作盤「goatbed」でその80'sニューウェーブな片鱗を見せつけると、翌04年には全国流通アルバム「テクニコントラストロン01」をリリースします。古き良き80'sニューウェーブに感化された歌謡曲の時代、吉川晃司がデビュー仕立てであったミドル80'sをピンポイントに撃ち抜いたこの作品は、その隙のないエレクトリックサウンドと彼の得意とするところの哀愁テイストをふんだんに注ぎ込んだメロディラインが凝縮された良作で、当時はなかなかこうしたアプローチをするアーティストが存在していなかったこともあって、強烈な個性を放っていました。そしてこのリリースの1ヶ月後、間髪入れずに双子とも言える作品が発表されました。それが本作となるわけですが、「02」と銘打たれた本作は、収録時間も30分未満と少なめなものの、そこには石井自身のルーツへの愛情と憧憬がこれでもかと詰め込まれた、より趣味性に走った仕上がりとなっており、まさに前作とセットで聴くことが正解と言える作品となっています。
さて、10曲収録ながら収録時間が短いのには理由がありまして、それは当然のことながら1曲1曲が短いというわけなのですが、それは楽曲のスタイルがニューウェーブの中でもエレクトロパンクというべきBPMの早い直線的なベースラインと8ビートで押してくる楽曲が多い部分にあります。しかも「01」のような哀愁メロディは抑え気味にして、よりマニアックさとサイバー度が増したシンセサウンドを基軸に、ヴォーカルも必要最小限にとどめながらボイス変調を駆使して脇役に徹する徹底ぶりで、あくまで本作はサウンド志向に偏重することによって「01」との差別化を図り、goatbedのユニットとしての多面性をアピールすることに成功していると言えるでしょう。このような志向であるからして本作では最低限の歌詞によるほぼインストゥルメンタルと言っても良い楽曲が多いのですが、それでいてある種の聴きやすさを確保しているというのは、「01」で見せた彼のメロディメイカーとしての側面を隠し切れないためとも言えます。しかしそれはこのgoatbedという現れた時代のタイミングが微妙にずれてしまった稀有なユニットの長所であり、失ってはいけない個性であると個人的には感じています。現在ではより深遠なシンセサウンドに心酔したかのようなロマンティックシンセポップに変化していますが、本質は全く変わらない、いわゆる「ハズレのなさ」で安心できるユニットとして今後も聴き手を楽しませてくれることでしょう。
<Favorite Songs>
・「ピピ」
まるで80年代の4-Dのような鉄骨ビートを披露するインダストリアルなインスト。アシッドなシンセベースに直球なドラミングをベースに、後半は高速ビートで攻めまくる、いわゆるSOFT BALLETの名曲「Needle」を彷彿とさせるスタイルが楽しめます。
・「アンガー」
ミディアムなテンポによるアンニュイでダークなエレクトロチューン。コクのあるシンセベースの落ち着いたシーケンスが素晴らしい。決して音数は多くはないものの、このベースラインだけで確固たる音世界を構築することに成功しています。
・「ミュージックコンプリート」
比較的「01」に近いスタイルの軽快なシンセポップ。しかしヴォーカルは全編ボコーダーでよりSF度がアップした形となっています。Dead Or Aliveを彷彿とさせるエレクトロディスコなビートは石井秀仁の十八番とも言えるでしょう。
<評点>
・サウンド ★★ (バリエーションは少ないがむき出しの電子音で勝負)
・メロディ ★ (持ち前のメロディセンスは意図的に抑え気味に)
・リズム ★★ (80'sのキモであるリズム隊の処理は「わかって」いる)
・曲構成 ★ (流石にコンパクトにまとまり過ぎな印象)
・個性 ★★ (ルーツをあられもなく曝け出した潔さに想いを感じる)
総合評点: 6点
「CARTOOOM!」 PLUS-TECH SQUEEZE BOX
「CARTOOOM!」(2004 VROOM SOUND)
PLUS-TECH SQUEEZE BOX

<members>
ハヤシベトモノリ:all instruments
ワキヤタケシ:all instruments
1.「CartooomTV」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
2.「Fiddle-dee-dee!!」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
3.「Dough-Nuts Town’s map」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
4.「F[ake]」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
5.「SUZZZZZY」 詞:witch Craft 曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
6.「starship.6」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
7.「CM#&’[$_?>!」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
8.「THE mARTIN SHOW!!」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
9.「Uncle Chicken’s drag rag」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
10.「Fantasie C dur P.491 -Generalprobe-」 曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
11.「rival」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
12.「Hoky-Poky a.la.mode.」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
13.「PAPA says」 曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
<support musician>
Cartoooms(“C” of all)<全員>:perform
ChipChopQ & scientist<カマダジュンコ>:perform
Cartoooms feat. The People of Dough-Nuts Town<全員>:perform
Mary ”Cookie” Royal<Tsugumi>:perform
witch Craft:perform
Cu3(CO3)2(OH)2<YUPPA>:perform
Cathy and more<櫻倉レオン>:perform
(Trick) Cherry bomb feat.JESSICA<櫻倉レオン>:perform
Optimistic C.I.P<EeL>:perform
Karate StaCkhouse<ヨアン>:perform
Cube Root Girl<CHINATSU FURUKAWA>:perform
produced by PLUS-TECH SQUEEZE BOX
engineered by PLUS-TECH SQUEEZE BOX
● 高速ノンストップチーププログラミングなごった煮サンプリングミュージックで驚かされる00年代型異色ポップユニットの2ndアルバム
00年代前半に浸透してきたネオ渋谷系もしくはフューチャーポップと呼ばれたムーブメントは、今をときめく中田ヤスタカのcapsuleを中心にEeLやエイプリルズ等といった渋谷系の持つ親しみやすいメロディラインと、シンセポップの持つきらめくようなシーケンスサウンドを、あくまでファッショナブルにオシャレ感覚でブレンドしたグループを生み出し。一部の流行に敏感なリスナーのアンテナを刺激していました。そんなカテゴリーの中でも特に異彩を放っていたのがPLUS-TECH SQUEEZE BOXで、当初女性ヴォーカルに男性2人というトリオ編成で00年に1stアルバム「FAKE VOX」をリリース、その実験性溢れるサウンドメイクに似つかわしくないキュートなポップセンスでその存在感をグッと高めていました。その後音源発表は抑えられていたものの、4年後に満を持してリリースした本作は、まさに4年待たせたことが納得いくような緻密に練りに練り込まれたようなサンプリング&カットアップ満載の未来型ポップミュージックとして世に問われた超意欲作にして問題作に仕上がっています。
さて、30分にも満たない短い収録時間の中にノンストップの13曲、そして4500種類以上のサンプリングネタをつぎ込むなど、密度が高いというよりはもはや執念すら感じさせる濃厚なサウンドデザインは、他の追随を許さないごった煮感に溢れていますが、それでも十分にポップソングとして認識できるのは、Hazel Nuts ChocolateやSonic Coster Pop、PINE*am等のフューチャーポップ系を中心としたユニットから可愛い声質のヴォーカルを9人も取り揃えて、加工しながら手を替え品を替え料理するハヤシベトモノリの楽曲構成能力の賜物であると言えるでしょう。テーマであるカートゥーンばりの目まぐるしい展開とカットアップ特有のつぎはぎつんのめりリズムの独特なノリ、そして短い楽曲の中にこれでもかとハイスピードにサンプルが突っ込まれるがために生まれる妙な焦燥感と高揚感が、クセになる方にとってはたまらない仕様になっています。テクノ〜ラウンジ〜ジャズ〜ヒップホップなどといったジャンルを横断するだけ横断しておいて、結果生まれたのがジャンルレスな近未来式ポップソング集というところに21世紀世代の音楽的な新しいインヴェンションを感じてしまいますが、その後彼らの新しい音源がなかなか世に出てこないのも残念なところです。
<Favorite Songs>
・「Dough-Nuts Town’s map」
ゲストの女性ヴォーカル9人全員で歌うドリーミーポップソング。ミュージカルのオープニングを思わせる壮大なオーケストラから高速電子音シーケンスまでのハイスピードな展開に圧倒され、3分超の楽曲の終了後に襲われる疲労感がタダモノではありません。
・「starship.6」
高速電子音で暴走する攻撃的サンプルをぶっ込んだシンセポップチューン。Hazel Nuts ChocolateのYUPPAのヴォーカルが辛うじてポップ要素をキープしていますが、後半はもはや暴力的と言ってよいほどのカットアップの嵐で、その過剰な感覚は80'sにも通じる部分があると思います。
・「Hoky-Poky a.la.mode.」
Sonic Coster PopのCHINATSUヴォーカルの柔らかいミュージカル的アレンジ(でもやはりカットアップ)が施されたジャジーなポップチューン。フルートやピアノ、ストリングスなどの粋なフレーズを巧みに放り込んで、ポップソングとして見事な仕上がりを見せています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (膨大なサンプルと多彩なジャンルによる一代音楽絵巻)
・メロディ ★ (これだけのギミックの嵐にあってPOPSに仕上げる)
・リズム ★ (ほとんどすべてがサンプルギミックなので構築も何も)
・曲構成 ★★★★ (ノンストップに全体を1つの物語として聴かせる)
・個性 ★★★ (他に類を見ないサウンドメイクに脱帽するが疲労感も)
総合評点: 7点
PLUS-TECH SQUEEZE BOX

<members>
ハヤシベトモノリ:all instruments
ワキヤタケシ:all instruments
1.「CartooomTV」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
2.「Fiddle-dee-dee!!」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
3.「Dough-Nuts Town’s map」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
4.「F[ake]」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
5.「SUZZZZZY」 詞:witch Craft 曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
6.「starship.6」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
7.「CM#&’[$_?>!」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
8.「THE mARTIN SHOW!!」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
9.「Uncle Chicken’s drag rag」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
10.「Fantasie C dur P.491 -Generalprobe-」 曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
11.「rival」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
12.「Hoky-Poky a.la.mode.」 詞・曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
13.「PAPA says」 曲・編:PLUS-TECH SQUEEZE BOX
<support musician>
Cartoooms(“C” of all)<全員>:perform
ChipChopQ & scientist<カマダジュンコ>:perform
Cartoooms feat. The People of Dough-Nuts Town<全員>:perform
Mary ”Cookie” Royal<Tsugumi>:perform
witch Craft:perform
Cu3(CO3)2(OH)2<YUPPA>:perform
Cathy and more<櫻倉レオン>:perform
(Trick) Cherry bomb feat.JESSICA<櫻倉レオン>:perform
Optimistic C.I.P<EeL>:perform
Karate StaCkhouse<ヨアン>:perform
Cube Root Girl<CHINATSU FURUKAWA>:perform
produced by PLUS-TECH SQUEEZE BOX
engineered by PLUS-TECH SQUEEZE BOX
● 高速ノンストップチーププログラミングなごった煮サンプリングミュージックで驚かされる00年代型異色ポップユニットの2ndアルバム
00年代前半に浸透してきたネオ渋谷系もしくはフューチャーポップと呼ばれたムーブメントは、今をときめく中田ヤスタカのcapsuleを中心にEeLやエイプリルズ等といった渋谷系の持つ親しみやすいメロディラインと、シンセポップの持つきらめくようなシーケンスサウンドを、あくまでファッショナブルにオシャレ感覚でブレンドしたグループを生み出し。一部の流行に敏感なリスナーのアンテナを刺激していました。そんなカテゴリーの中でも特に異彩を放っていたのがPLUS-TECH SQUEEZE BOXで、当初女性ヴォーカルに男性2人というトリオ編成で00年に1stアルバム「FAKE VOX」をリリース、その実験性溢れるサウンドメイクに似つかわしくないキュートなポップセンスでその存在感をグッと高めていました。その後音源発表は抑えられていたものの、4年後に満を持してリリースした本作は、まさに4年待たせたことが納得いくような緻密に練りに練り込まれたようなサンプリング&カットアップ満載の未来型ポップミュージックとして世に問われた超意欲作にして問題作に仕上がっています。
さて、30分にも満たない短い収録時間の中にノンストップの13曲、そして4500種類以上のサンプリングネタをつぎ込むなど、密度が高いというよりはもはや執念すら感じさせる濃厚なサウンドデザインは、他の追随を許さないごった煮感に溢れていますが、それでも十分にポップソングとして認識できるのは、Hazel Nuts ChocolateやSonic Coster Pop、PINE*am等のフューチャーポップ系を中心としたユニットから可愛い声質のヴォーカルを9人も取り揃えて、加工しながら手を替え品を替え料理するハヤシベトモノリの楽曲構成能力の賜物であると言えるでしょう。テーマであるカートゥーンばりの目まぐるしい展開とカットアップ特有のつぎはぎつんのめりリズムの独特なノリ、そして短い楽曲の中にこれでもかとハイスピードにサンプルが突っ込まれるがために生まれる妙な焦燥感と高揚感が、クセになる方にとってはたまらない仕様になっています。テクノ〜ラウンジ〜ジャズ〜ヒップホップなどといったジャンルを横断するだけ横断しておいて、結果生まれたのがジャンルレスな近未来式ポップソング集というところに21世紀世代の音楽的な新しいインヴェンションを感じてしまいますが、その後彼らの新しい音源がなかなか世に出てこないのも残念なところです。
<Favorite Songs>
・「Dough-Nuts Town’s map」
ゲストの女性ヴォーカル9人全員で歌うドリーミーポップソング。ミュージカルのオープニングを思わせる壮大なオーケストラから高速電子音シーケンスまでのハイスピードな展開に圧倒され、3分超の楽曲の終了後に襲われる疲労感がタダモノではありません。
・「starship.6」
高速電子音で暴走する攻撃的サンプルをぶっ込んだシンセポップチューン。Hazel Nuts ChocolateのYUPPAのヴォーカルが辛うじてポップ要素をキープしていますが、後半はもはや暴力的と言ってよいほどのカットアップの嵐で、その過剰な感覚は80'sにも通じる部分があると思います。
・「Hoky-Poky a.la.mode.」
Sonic Coster PopのCHINATSUヴォーカルの柔らかいミュージカル的アレンジ(でもやはりカットアップ)が施されたジャジーなポップチューン。フルートやピアノ、ストリングスなどの粋なフレーズを巧みに放り込んで、ポップソングとして見事な仕上がりを見せています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (膨大なサンプルと多彩なジャンルによる一代音楽絵巻)
・メロディ ★ (これだけのギミックの嵐にあってPOPSに仕上げる)
・リズム ★ (ほとんどすべてがサンプルギミックなので構築も何も)
・曲構成 ★★★★ (ノンストップに全体を1つの物語として聴かせる)
・個性 ★★★ (他に類を見ないサウンドメイクに脱帽するが疲労感も)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「COLORFUL VIBRATION」 Pyokn
「COLORFUL VIBRATION」(2004 AMJ)
Pyokn

<members>
小妻美樹:vocals
伊藤信也:effects・voices
Hideo B Ojiro:computer programming・keyboards・chorus
1.「グッドバイ」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
2.「ガネーシャ」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
3.「ロボ」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
4.「その匂い」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
5.「うすずみ色前線」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
6.「骨の声」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
7.「繭と空」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
8.「微睡」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
9.「幻の喫水線」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
10.「BE YOURSELF」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
<support musician>
松村信也:guitar
サカイヤスフミ:violin
produced by 岡田徹・Pyokn
engineered by Hideo B Ojiro
● エレポップバンドとは思えないムーディーで力の抜けた洒落たPOPSを聴かせるトリオユニットの完成度の高いデビュー作
21世紀に入り徐々に「歌」を意識したエレクトロポップが復権を果たしていくようになりますが、そのあり方は多種多様で、90年代テクノの流れから生まれたクラブ御用達ダンサブルユニット、ニューウェーブ直系の斜に構える系のバンドスタイル、ヴィジュアル系に特化したデジロック風味の耽美系バンド等々、多彩なアプローチからの次世代エレクトロポップが水面下で邦楽界を席巻していくことになります。そのような中デモテープが岡田徹に見初められた3人組ユニットPyoknは、岡田のプロデュースのもと作品発表の機会を与えられることとなり、2004年には彗星のごとく1stアルバムのリリースに至ることとなります。打ち込み&シンセベースのエレクトリックスタイルでありながら泣きのメロディラインをもって歌を聴かせることを重視した彼らの音楽性は、他の同系ユニットとは一風異なるものであり、本作もエレクトロポップというよりはむしろ、音の輪郭に丸みを帯びた柔らかくどこかソウルフルなポップミュージックといった趣の作品と言えるものです。
様々なジャンルを飲み込んだリズム隊は軽く涼やかに、ヴォーカルは比較的淡々と歌いこなすという比較的地味な印象ですが、楽曲を装飾するシンセのかぶせ方にクセがあり、このあたりがエレポップとされるゆえんであると思われます。しかしながらそのシンセ音色はニューウェーブ系やトランス系では使わないような電子音剥き出し音というよりは、どちらかといえば生音シミュレート音色も巧みにエフェクト処理したような緻密な音づくりのこだわりが感じられます(特にベースにレゾナンスな要素は少ないようです)。楽曲ももともとラテン系やジャズ、R&Bといったタイプををエレポップにリミックスしたような、良い意味で違和感が感じられるものを得意としているようです。前述のソウルフルな感覚はそんな楽曲の印象から生まれたものと言えるでしょう。サウンド面の余りにも丁寧な作りから淡々とした抑揚のなさが気になる作品ではありますが、クオリティの高さは間違いなく、その後活動は細々と継続しながらもリリースされていない次回作が待たれるところです。
<Favorite Songs>
・「ロボ」
タイトルの通りヴォーカルにエフェクト変調を効かせたテクノロジーを意識したデジポップ。ボトムの効いた速くも遅くもないリズムに乗り、逆回転サウンドをフレーズにしたり、シンセパッドやアルペジオの上モノで派手に装飾したりと、小技が光る楽曲です。
・「繭と空」
スウィングするリズムにおしゃれなメロディで踊らせるソウルフルなポップミュージック。Bメロ〜サビのリズムの4小節目で入る金属音が絶妙なアクセントとなっています。本作随一のキャッチーなサビは、作品全体の空気を象徴していると思います。
・「幻の喫水線」
ふんわりしたシンセリフに包まれたアンビエント系エレポップ。歌とシンセによる音の壁を錆びで作り出していて雰囲気はバッチリです。鳥の泣き声っぽいギミック的シンセフレーズなど、細かい配慮も忘れない玄人好みの楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (上モノシンセで淡々とした楽曲を見事に味つけ)
・メロディ ★★ (メロディ重視ではあるが泣きというほどでもない)
・リズム ★ (大人しく軽い印象があるものの作りは丁寧に)
・曲構成 ★ (もう少し楽曲にバラエティがあっても良いかも)
・個性 ★ (シンセの乗せ方に光るものがあるので今後に期待)
総合評点: 6点
Pyokn

<members>
小妻美樹:vocals
伊藤信也:effects・voices
Hideo B Ojiro:computer programming・keyboards・chorus
1.「グッドバイ」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
2.「ガネーシャ」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
3.「ロボ」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
4.「その匂い」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
5.「うすずみ色前線」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
6.「骨の声」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
7.「繭と空」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
8.「微睡」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
9.「幻の喫水線」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
10.「BE YOURSELF」 詞:伊藤信也 曲・編:Hideo B Ojiro
<support musician>
松村信也:guitar
サカイヤスフミ:violin
produced by 岡田徹・Pyokn
engineered by Hideo B Ojiro
● エレポップバンドとは思えないムーディーで力の抜けた洒落たPOPSを聴かせるトリオユニットの完成度の高いデビュー作
21世紀に入り徐々に「歌」を意識したエレクトロポップが復権を果たしていくようになりますが、そのあり方は多種多様で、90年代テクノの流れから生まれたクラブ御用達ダンサブルユニット、ニューウェーブ直系の斜に構える系のバンドスタイル、ヴィジュアル系に特化したデジロック風味の耽美系バンド等々、多彩なアプローチからの次世代エレクトロポップが水面下で邦楽界を席巻していくことになります。そのような中デモテープが岡田徹に見初められた3人組ユニットPyoknは、岡田のプロデュースのもと作品発表の機会を与えられることとなり、2004年には彗星のごとく1stアルバムのリリースに至ることとなります。打ち込み&シンセベースのエレクトリックスタイルでありながら泣きのメロディラインをもって歌を聴かせることを重視した彼らの音楽性は、他の同系ユニットとは一風異なるものであり、本作もエレクトロポップというよりはむしろ、音の輪郭に丸みを帯びた柔らかくどこかソウルフルなポップミュージックといった趣の作品と言えるものです。
様々なジャンルを飲み込んだリズム隊は軽く涼やかに、ヴォーカルは比較的淡々と歌いこなすという比較的地味な印象ですが、楽曲を装飾するシンセのかぶせ方にクセがあり、このあたりがエレポップとされるゆえんであると思われます。しかしながらそのシンセ音色はニューウェーブ系やトランス系では使わないような電子音剥き出し音というよりは、どちらかといえば生音シミュレート音色も巧みにエフェクト処理したような緻密な音づくりのこだわりが感じられます(特にベースにレゾナンスな要素は少ないようです)。楽曲ももともとラテン系やジャズ、R&Bといったタイプををエレポップにリミックスしたような、良い意味で違和感が感じられるものを得意としているようです。前述のソウルフルな感覚はそんな楽曲の印象から生まれたものと言えるでしょう。サウンド面の余りにも丁寧な作りから淡々とした抑揚のなさが気になる作品ではありますが、クオリティの高さは間違いなく、その後活動は細々と継続しながらもリリースされていない次回作が待たれるところです。
<Favorite Songs>
・「ロボ」
タイトルの通りヴォーカルにエフェクト変調を効かせたテクノロジーを意識したデジポップ。ボトムの効いた速くも遅くもないリズムに乗り、逆回転サウンドをフレーズにしたり、シンセパッドやアルペジオの上モノで派手に装飾したりと、小技が光る楽曲です。
・「繭と空」
スウィングするリズムにおしゃれなメロディで踊らせるソウルフルなポップミュージック。Bメロ〜サビのリズムの4小節目で入る金属音が絶妙なアクセントとなっています。本作随一のキャッチーなサビは、作品全体の空気を象徴していると思います。
・「幻の喫水線」
ふんわりしたシンセリフに包まれたアンビエント系エレポップ。歌とシンセによる音の壁を錆びで作り出していて雰囲気はバッチリです。鳥の泣き声っぽいギミック的シンセフレーズなど、細かい配慮も忘れない玄人好みの楽曲です。
<評点>
・サウンド ★★★ (上モノシンセで淡々とした楽曲を見事に味つけ)
・メロディ ★★ (メロディ重視ではあるが泣きというほどでもない)
・リズム ★ (大人しく軽い印象があるものの作りは丁寧に)
・曲構成 ★ (もう少し楽曲にバラエティがあっても良いかも)
・個性 ★ (シンセの乗せ方に光るものがあるので今後に期待)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「ビストロン」 核P-MODEL
「ビストロン」(2004 ケイオスユニオン)
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「二重展望3」 曲・編:平沢進
2.「Big Brother」 詞・曲・編:平沢進
3.「アンチ・ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
4.「崇めよ我はTVなり」 詞・曲・編:平沢進
5.「巡航プシクラオン」 詞・曲・編:平沢進
6.「暗黒πドゥアイ」 詞・曲・編:平沢進
7.「パラ・ユニフス」 詞・曲・編:平沢進
8.「Space hook」 詞・曲・編:平沢進
9.「ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
10.「アンチモネシア」 詞・曲・編:平沢進
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 痙攣するシンセ!飛び散る電子音!よりエレクトリックに傾倒した培養中ソロP-MODELの名盤
20世紀末に「培養期」と称して長年にわたる活動を凍結した稀代のテクノ・ニューウェーブバンドP-MODEL。その後完全にソロに転じた平沢進は、ソロアルバムのほか太陽光発電により音楽制作を行うプロジェクトHirasawa Energy WorksやNHKの幼児向け番組に「地球ネコ」を提供するなど多彩な活動を繰り広げていきますが、2004年にP-MODELの名前を冠した新たな企画を開始します。「核P-MODEL」と名付けられたそのプロジェクトはその名のとおり「P-MODELの核」である平沢進のソロユニットであり(この際アシュオンの核の能動的活動とかどうとかの設定はもはやどうでもよい)、その鷹揚たる音楽性が確立しつつあった平沢ソロ作品とは異なったより攻撃的な電子的サウンドアプローチは、P-MODELという一癖も二癖もあるカリスマグループの名を冠するにふさわしいと言えるでしょう。そんな核P-MODELが残した現在唯一のアルバムが本作というわけです。
先行配信曲「Big Brother」でその過激な電子サウンドの片鱗を見せつけていた本作ですが、期待に違わず攻撃的で刺激的なシンセフレーズでかつての解凍P-MODELファンにとってはこれ以上ない電子音の雨を降らせてくれます。倍音により歪ませた音色を多用したリフや、平沢本人やサンプリング素材を加工した過激な変調ボイス、執拗に繰り返されるアシッドなシーケンス、そして平沢サウンドの十八番であるシャウトや奇天烈ギターフレーズが楽曲を盛り上げ、終始にわたって作品のテンションを維持させることに成功しています。同じく強力な電子音が全体を支配した解凍P-MODEL(「P-MODEL」「Big Body」時代)と比較すると、サウンド自体は細くなった印象もあるものの鋭利な刃物のように尖った音色で聴き手を突き刺していく感覚が、本作の攻撃性を如実に表していると言えるでしょう。そして何よりも細かい譜割を高速で動かすことで電子音を1曲の中にぎっしり詰め込んだ圧迫感が凄まじく、とにかく安心感を与えないサウンドデザインで疲労感すら覚える本作の異質な完成度は他に類を見ないものであるように思えます。P-MODELを冠したソロユニットだからこそ歯止めが効かずに衝動的にさらけ出した電子音への欲求と、持ち前の過激でひねくれた世界観が、これまでのソロ活動を通して確立された自身の音楽性により絶妙にまとめ上げられた突然変異的名作として、(次回作が生まれるまでは)最大級の評価を惜しむことはないでしょう。
<Favorite Songs>
・「Big Brother」
先行無料配信でその過激なサウンドが鮮烈な印象を残した本作のリード曲。とにかく全編にわたり高速につんのめるシンセリフが凄まじく、それが非常に緊張感を高めています。軽めなリズムも連打を多用し攻撃的。苛烈な電子音で聴き手を驚かせます。
・「暗黒πドゥアイ」
サスペンチックなイントロからメジャー調で展開、そして壮大なオペラへとさらに変化を遂げる過激なエレクトリックチューン。サビ前のカウントからのシャウトの間で風向きが変わっていくかのような調の変化を見せる部分が秀逸です。
・「パラ・ユニフス」
細かく絡み合ったシーケンスでこれでもかと責めまくる高速テクノポップ。とにかく音がぎっしり詰め込まれ息のつく間も与えてくれない膨満感が尋常ではありません。途中挿入されるノイジーな変調ボイスのギミックも奇妙でアクセントとして抜群です。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (全編電子音とはいえなにより音が刺激的で熱い)
・メロディ ★★★ (過激過ぎる音に対してもポップ性を維持する)
・リズム ★★★★ (細かく執拗に連打されるリズム&ベースが強烈)
・曲構成 ★★★★★ (全編にわたるテンションの高さで聴き手を圧倒)
・個性 ★★★★★ (ソロでもバンドでもない圧倒的な電子的世界観)
総合評点: 10点
核P-MODEL

<members>
平沢進:vocals・guitars・synthesizers・computer programming
1.「二重展望3」 曲・編:平沢進
2.「Big Brother」 詞・曲・編:平沢進
3.「アンチ・ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
4.「崇めよ我はTVなり」 詞・曲・編:平沢進
5.「巡航プシクラオン」 詞・曲・編:平沢進
6.「暗黒πドゥアイ」 詞・曲・編:平沢進
7.「パラ・ユニフス」 詞・曲・編:平沢進
8.「Space hook」 詞・曲・編:平沢進
9.「ビストロン」 詞・曲・編:平沢進
10.「アンチモネシア」 詞・曲・編:平沢進
produced by 平沢進
engineered by 鎮西正憲
● 痙攣するシンセ!飛び散る電子音!よりエレクトリックに傾倒した培養中ソロP-MODELの名盤
20世紀末に「培養期」と称して長年にわたる活動を凍結した稀代のテクノ・ニューウェーブバンドP-MODEL。その後完全にソロに転じた平沢進は、ソロアルバムのほか太陽光発電により音楽制作を行うプロジェクトHirasawa Energy WorksやNHKの幼児向け番組に「地球ネコ」を提供するなど多彩な活動を繰り広げていきますが、2004年にP-MODELの名前を冠した新たな企画を開始します。「核P-MODEL」と名付けられたそのプロジェクトはその名のとおり「P-MODELの核」である平沢進のソロユニットであり(この際アシュオンの核の能動的活動とかどうとかの設定はもはやどうでもよい)、その鷹揚たる音楽性が確立しつつあった平沢ソロ作品とは異なったより攻撃的な電子的サウンドアプローチは、P-MODELという一癖も二癖もあるカリスマグループの名を冠するにふさわしいと言えるでしょう。そんな核P-MODELが残した現在唯一のアルバムが本作というわけです。
先行配信曲「Big Brother」でその過激な電子サウンドの片鱗を見せつけていた本作ですが、期待に違わず攻撃的で刺激的なシンセフレーズでかつての解凍P-MODELファンにとってはこれ以上ない電子音の雨を降らせてくれます。倍音により歪ませた音色を多用したリフや、平沢本人やサンプリング素材を加工した過激な変調ボイス、執拗に繰り返されるアシッドなシーケンス、そして平沢サウンドの十八番であるシャウトや奇天烈ギターフレーズが楽曲を盛り上げ、終始にわたって作品のテンションを維持させることに成功しています。同じく強力な電子音が全体を支配した解凍P-MODEL(「P-MODEL」「Big Body」時代)と比較すると、サウンド自体は細くなった印象もあるものの鋭利な刃物のように尖った音色で聴き手を突き刺していく感覚が、本作の攻撃性を如実に表していると言えるでしょう。そして何よりも細かい譜割を高速で動かすことで電子音を1曲の中にぎっしり詰め込んだ圧迫感が凄まじく、とにかく安心感を与えないサウンドデザインで疲労感すら覚える本作の異質な完成度は他に類を見ないものであるように思えます。P-MODELを冠したソロユニットだからこそ歯止めが効かずに衝動的にさらけ出した電子音への欲求と、持ち前の過激でひねくれた世界観が、これまでのソロ活動を通して確立された自身の音楽性により絶妙にまとめ上げられた突然変異的名作として、(次回作が生まれるまでは)最大級の評価を惜しむことはないでしょう。
<Favorite Songs>
・「Big Brother」
先行無料配信でその過激なサウンドが鮮烈な印象を残した本作のリード曲。とにかく全編にわたり高速につんのめるシンセリフが凄まじく、それが非常に緊張感を高めています。軽めなリズムも連打を多用し攻撃的。苛烈な電子音で聴き手を驚かせます。
・「暗黒πドゥアイ」
サスペンチックなイントロからメジャー調で展開、そして壮大なオペラへとさらに変化を遂げる過激なエレクトリックチューン。サビ前のカウントからのシャウトの間で風向きが変わっていくかのような調の変化を見せる部分が秀逸です。
・「パラ・ユニフス」
細かく絡み合ったシーケンスでこれでもかと責めまくる高速テクノポップ。とにかく音がぎっしり詰め込まれ息のつく間も与えてくれない膨満感が尋常ではありません。途中挿入されるノイジーな変調ボイスのギミックも奇妙でアクセントとして抜群です。
<評点>
・サウンド ★★★★★ (全編電子音とはいえなにより音が刺激的で熱い)
・メロディ ★★★ (過激過ぎる音に対してもポップ性を維持する)
・リズム ★★★★ (細かく執拗に連打されるリズム&ベースが強烈)
・曲構成 ★★★★★ (全編にわたるテンションの高さで聴き手を圧倒)
・個性 ★★★★★ (ソロでもバンドでもない圧倒的な電子的世界観)
総合評点: 10点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「オール バイ マイセルフ」 藤井隆
「オール バイ マイセルフ」 (2004 R&C)
藤井隆:vocal・chorus

1.「わたしの青い空」 詞・曲:堀込高樹 編:本間昭光・堀込高樹
2.「ある夜 僕は逃げだしたんだ」 詞:YOU 曲・編:本間昭光
3.「赤と黒」 詞:YOU 曲・編:本間昭光
4.「Sa ら Sa」 詞・曲:林田健司 編:本間昭光
5.「Ka-ra-su」 詞:シマタケミ 曲・編:本間昭光
6.「Socket」 詞:シマタケミ 曲・編:本間昭光
7.「タメイキ」 詞・曲:小室哲哉 編:本間昭光
8.「未来 -SEX-」 詞:YOU 曲・編:本間昭光
9.「美しい別れ」 詞・曲:Fayray 編:中村太知
10.「月と砂漠と」 詞:シマタケミ 曲:横山輝一 編:本間昭光
11.「1/2の孤独」 詞:四方海 曲:堀込高樹 編:本間昭光
<support musician>
中村太知:guitar・bass
林部直樹:guitar
本間昭光:keyboard
飯田高広:synthesizer
Fayray:chorus
YOU:chorus
林田健司:chorus
produced by 本間昭光・島武実
mixing engineered by 山田直樹
recording engineered by 山田直樹・阪田幸亮
● 多彩な作家陣を迎えニューミュージック的要素を醸し出したPOPS作品として高水準の名盤2ndアルバム
コメディアン藤井隆はその人気にあやかって浅倉大介プロデュースのシングル「ナンダカンダ」で歌手デビューを果たし、さらに2002年にははなんと大御所作詞家松本隆プロデュースによる歌謡曲テイストを前面に押し出した高品質POPSアルバム「ロミオ道行」がその本気度から音楽ファンにも受け入れられつつありました。もともと80年代歌謡POPSに造詣が深かった彼ならではのJ-POPへの挑戦状といったこの音楽性は一部で支持を得られた反面、1枚だけだと企画モノと揶揄される危険性もありましたが、彼は2年後にリリースされた2ndアルバムの本作で見事にその懸念を払拭、さらに奥深く、しかもキャッチーに、そして豪華な作家陣による多彩なハイクオリティPOPSの数々を収録したこの作品によって、彼は00年代のPOPS史に見事にその名を刻んだと言っても大げさではありません。
前作プロデュースの松本隆から卒業しての本作という流れからプロデュースを任されたのは、前作でもアレンジャーとして参加し、90年代から独自のポップセンスで評価を高め、ポルノグラフィティのサウンドプロデュースでブレイクした本間昭光で、本作でもPOPSの旨味を熟知したかのような巧みなエレクトリックアレンジで、キリンジの堀込高樹や林田健司、小室哲哉、横山輝一といった90年代を彩る実力派コンポーザー達の楽曲を盛り上げ、しかも藤井のサラッとした優男風のヴォーカルとの相性が抜群ということもあって非常に完成度が高く、特に前半4曲のクオリティは飛び抜けたものがあります。特別際立った個性はないものの本間昭光のアレンジは素のメロディを引き立てる弁え方が絶妙で、出過ぎず埋もれすぎずの微妙なさじ加減で勝負した結果彼の持っている才能がいかんなく発揮され、全面プロデュースとしての本間の起用は大成功であったと思います。後半ほんの少し地味な楽曲が続いてしまったことだけが気になりますが、00年代の他の音楽を生業としているアーティストの作品と遜色ないどころか凌駕するほどの作品であることには間違いありません。藤井隆にはまたいつの日か本作のような深みのある歌謡POPSを惜しまず追求していってほしいです。
<Favorite Songs>
・「わたしの青い空」
前作では「未確認飛行物体」や「代官山エレジー」などで異彩を放ったキリンジの堀込兄によるシングルカット曲。エレポップ風味でクールな質感のこの楽曲はシングルとしては地味ながらも滲み出る味わい深さがたまらなく後からじわじわ来るタイプの名曲です。
・「Sa ら Sa」
ファンクテイストが持ち味のクリエイター林田健司作詞作曲の軽快なダンサブルハウスチューン。跳ねまくるリズムトラックもさることながらこれぞ林田的ノリのカッティングギターとブラスセクションのファンキーぶりに笑ってしまいます。余りにダンサブル過ぎて音頭みたいになっているのと角松敏生ばりに林田コーラスが前に出過ぎてしまっているのもご愛嬌です。
・「月と砂漠と」
横山輝一作曲の爽やかハウスPOPS。作詞が共同プロデュースも務める元PLASTICSのシマタケミ(島武実)ですが、彼も本作の貢献者の1人です。サビの高音を使うフレーズが横山輝一を彷佛とさせますが、それを必死に歌い切る藤井隆の生真面目さにも好感が持てます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (出過ぎず騒がず肌触りの良い打ち込みアレンジが絶妙)
・メロディ ★★★★ (豪華作家陣のキラーフレーズが随所に非凡に展開する)
・リズム ★★★ (全編チープなリズムを通すものの意外と緻密に形成)
・曲構成 ★★★ (Fayrayの曲だけが浮いてしまった部分だけが残念・・)
・個性 ★★★★ (歌謡曲を通過した日本独自のPOPSの品質を知らしめる)
総合評点: 9点
藤井隆:vocal・chorus

1.「わたしの青い空」 詞・曲:堀込高樹 編:本間昭光・堀込高樹
2.「ある夜 僕は逃げだしたんだ」 詞:YOU 曲・編:本間昭光
3.「赤と黒」 詞:YOU 曲・編:本間昭光
4.「Sa ら Sa」 詞・曲:林田健司 編:本間昭光
5.「Ka-ra-su」 詞:シマタケミ 曲・編:本間昭光
6.「Socket」 詞:シマタケミ 曲・編:本間昭光
7.「タメイキ」 詞・曲:小室哲哉 編:本間昭光
8.「未来 -SEX-」 詞:YOU 曲・編:本間昭光
9.「美しい別れ」 詞・曲:Fayray 編:中村太知
10.「月と砂漠と」 詞:シマタケミ 曲:横山輝一 編:本間昭光
11.「1/2の孤独」 詞:四方海 曲:堀込高樹 編:本間昭光
<support musician>
中村太知:guitar・bass
林部直樹:guitar
本間昭光:keyboard
飯田高広:synthesizer
Fayray:chorus
YOU:chorus
林田健司:chorus
produced by 本間昭光・島武実
mixing engineered by 山田直樹
recording engineered by 山田直樹・阪田幸亮
● 多彩な作家陣を迎えニューミュージック的要素を醸し出したPOPS作品として高水準の名盤2ndアルバム
コメディアン藤井隆はその人気にあやかって浅倉大介プロデュースのシングル「ナンダカンダ」で歌手デビューを果たし、さらに2002年にははなんと大御所作詞家松本隆プロデュースによる歌謡曲テイストを前面に押し出した高品質POPSアルバム「ロミオ道行」がその本気度から音楽ファンにも受け入れられつつありました。もともと80年代歌謡POPSに造詣が深かった彼ならではのJ-POPへの挑戦状といったこの音楽性は一部で支持を得られた反面、1枚だけだと企画モノと揶揄される危険性もありましたが、彼は2年後にリリースされた2ndアルバムの本作で見事にその懸念を払拭、さらに奥深く、しかもキャッチーに、そして豪華な作家陣による多彩なハイクオリティPOPSの数々を収録したこの作品によって、彼は00年代のPOPS史に見事にその名を刻んだと言っても大げさではありません。
前作プロデュースの松本隆から卒業しての本作という流れからプロデュースを任されたのは、前作でもアレンジャーとして参加し、90年代から独自のポップセンスで評価を高め、ポルノグラフィティのサウンドプロデュースでブレイクした本間昭光で、本作でもPOPSの旨味を熟知したかのような巧みなエレクトリックアレンジで、キリンジの堀込高樹や林田健司、小室哲哉、横山輝一といった90年代を彩る実力派コンポーザー達の楽曲を盛り上げ、しかも藤井のサラッとした優男風のヴォーカルとの相性が抜群ということもあって非常に完成度が高く、特に前半4曲のクオリティは飛び抜けたものがあります。特別際立った個性はないものの本間昭光のアレンジは素のメロディを引き立てる弁え方が絶妙で、出過ぎず埋もれすぎずの微妙なさじ加減で勝負した結果彼の持っている才能がいかんなく発揮され、全面プロデュースとしての本間の起用は大成功であったと思います。後半ほんの少し地味な楽曲が続いてしまったことだけが気になりますが、00年代の他の音楽を生業としているアーティストの作品と遜色ないどころか凌駕するほどの作品であることには間違いありません。藤井隆にはまたいつの日か本作のような深みのある歌謡POPSを惜しまず追求していってほしいです。
<Favorite Songs>
・「わたしの青い空」
前作では「未確認飛行物体」や「代官山エレジー」などで異彩を放ったキリンジの堀込兄によるシングルカット曲。エレポップ風味でクールな質感のこの楽曲はシングルとしては地味ながらも滲み出る味わい深さがたまらなく後からじわじわ来るタイプの名曲です。
・「Sa ら Sa」
ファンクテイストが持ち味のクリエイター林田健司作詞作曲の軽快なダンサブルハウスチューン。跳ねまくるリズムトラックもさることながらこれぞ林田的ノリのカッティングギターとブラスセクションのファンキーぶりに笑ってしまいます。余りにダンサブル過ぎて音頭みたいになっているのと角松敏生ばりに林田コーラスが前に出過ぎてしまっているのもご愛嬌です。
・「月と砂漠と」
横山輝一作曲の爽やかハウスPOPS。作詞が共同プロデュースも務める元PLASTICSのシマタケミ(島武実)ですが、彼も本作の貢献者の1人です。サビの高音を使うフレーズが横山輝一を彷佛とさせますが、それを必死に歌い切る藤井隆の生真面目さにも好感が持てます。
<評点>
・サウンド ★★★★ (出過ぎず騒がず肌触りの良い打ち込みアレンジが絶妙)
・メロディ ★★★★ (豪華作家陣のキラーフレーズが随所に非凡に展開する)
・リズム ★★★ (全編チープなリズムを通すものの意外と緻密に形成)
・曲構成 ★★★ (Fayrayの曲だけが浮いてしまった部分だけが残念・・)
・個性 ★★★★ (歌謡曲を通過した日本独自のPOPSの品質を知らしめる)
総合評点: 9点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽