「SYMBIONT」 SOFT BALLET
「SYMBIONT」(2002 ワーナー)
SOFT BALLET

<members>
遠藤遼一:vocal
森岡賢:computer programming・synthesizer
藤井麻輝:computer programming・synthesizer・guitar
1.「BIRD TIME」 詞・曲・編:SOFT BALLET
2.「JIM DOG」 詞・曲・編:SOFT BALLET
3.「BABEL」 詞・曲・編:SOFT BALLET
4.「MERCHENDIVER」 詞・曲・編:SOFT BALLET
5.「TOO FAT TO UGLY」 詞・曲・編:SOFT BALLET
6.「OUT」 曲・編:SOFT BALLET
7.「FINE TRAIN」 詞・曲・編:SOFT BALLET
8.「DEAD-END GAZE」 詞・曲・編:SOFT BALLET
9.「LOVE JUNK」 詞・曲・編:SOFT BALLET
10.「F・A・C・S」 詞・曲・編:SOFT BALLET
11.「PEACEFUL DAYS」 詞・曲・編:SOFT BALLET
<support musician>
Hiromi Frolesca:vocal
濱田マリ:vocal
成田忍:guitar
TATSU:bass
寺谷誠一:drums
白石元久:synthesizer manipulate assistance
松井サトシ:synthesizer manipulate assistance
produced by SOFT BALLET
mixing engineered by 石塚真一
recording engineered by SOFT BALLET・石塚真一
● 以前の音楽性からは相当な違和感を感じる人間味溢れる印象が強い伝説ユニットの復活作
1995年に無期限活動休止となった稀代のエレクトロユニットSOFT BALLETは、休止後もヴォーカルの遠藤遼一は自身のソロユニットENDSでエモーショナルにロックの世界に飛び込んでいき、森岡賢はソロ活動や多数のサポート活動で多忙を極め、藤井麻輝はShe-shellとしてのユニット活動やepidemic等のプロデュースワークに勤しむなど各々のフィールドで活躍してきました。しかし21世紀にどこからともなく再結成の機運が高まってくると野外ライブサマーソニックにおいて華麗に復活、そのまま(意外にも)すぐさまシングル「メルヘンダイバー」、そして復活アルバムとなる本作を立て続けにリリースします。「メルヘンダイバー」では余りのサラリとしたポップ感覚に肩透かしを食らったものの、さすがにアルバムとなると本性が見え隠れするような濃密な音世界が繰り広げられるのは、もはやベテランと化した彼らの性とも言えるでしょう。
彼らの音世界、とはいえ初期のデジタルダンスビートな世界観を期待すると拍子抜けするかもしれません。もちろん森岡特有のトランシーなシンセ&シーケンスパターンや藤井の求道的なデジタルノイズサウンドは健在ですが、のっけから「BIRD TIME」の轟音ギターロックで遠藤の激しい主張で幕を開け、その熱量に戸惑いを感じることでしょう。再結成前の彼らと異なる点は、遠藤のヴォーカルのみならず全体的なパフォーマンスの変化が非常に大きいと思われます。以前発音により粘りを増したヴォーカルスタイルに7年もの歳月を感じざるを得ませんが、実は「Million Mirrors」〜「INCUBATE」〜「FORM」の方向性をしっかりと受け継いでおり、活動休止せずに継続していても結果としてはこのようなスタイルになっていたかのように感じられるほど、SOFT BALLETというバンドとしての継続性が滲み出ていることは否めません。もちろんダンスビート色は薄まったとはいえ、電子音は以前よりも研ぎ澄まされた印象があり、特に「TOO FAT TO UGLY」「F・A・C・S」で聴かれるようなコクのあるシンセベースは本作を語る上でも外せない特徴であると思われます。結果としてはアルバムをもう1枚残して再び解散となりますが、再結成は、以前のイメージと現在進行形の音楽性とのギャップに焦点が当たりがちな再結成の中で継続性を持たせながらも彼らなりの進化を感じさせる作品を提示できたという点では、SOFT BALLETの再結成はアリだったのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「JIM DOG」
フィルタリングも鮮やかなトランスリフで始まる本作中でもリード的な役割を持つシンセポップ。執拗なブレイクビーツが主導していくダンサブルな楽曲ですが、この緊張感は再結成以前の彼らの全盛期を彷佛とさせ、ファンの溜飲を下げることのできる仕上がりです。
・「MERCHENDIVER」
記念すべき復活シングルのアルバムバージョン。シングルではわかりやすいフレーズと開き直った音の軽さで遊んだ感がありましたが(結構好きでした)、本作のアレンジではキュートなシーケンスでよりテクノ感を前面に出すことによって、作品としてのバランスを崩さないように配慮しています。
・「F・A・C・S」
静謐な前半からパワーに圧倒される中盤、そして再び静謐なアウトロへ向かっていく修道的な楽曲。熱唱型ヴォーカルとアシッドでブチブチなシンセでどぎつく盛り上がる中盤のテンションの高さがこの楽曲の魅力です。
<評点>
・サウンド ★★★ (ギター色が強い中濃厚なシンセベースが際立つ)
・メロディ ★ (かつてのポップセンスを潜めても細部の音にこだわる)
・リズム ★★ (丁寧にリズムを構築するものの派手さは抑えた印象)
・曲構成 ★ (キラーソングを見つけるのが難しく平坦な印象に)
・個性 ★ (音の進化は確かに垣間見せたが作品としては地味か)
総合評点: 6点
SOFT BALLET

<members>
遠藤遼一:vocal
森岡賢:computer programming・synthesizer
藤井麻輝:computer programming・synthesizer・guitar
1.「BIRD TIME」 詞・曲・編:SOFT BALLET
2.「JIM DOG」 詞・曲・編:SOFT BALLET
3.「BABEL」 詞・曲・編:SOFT BALLET
4.「MERCHENDIVER」 詞・曲・編:SOFT BALLET
5.「TOO FAT TO UGLY」 詞・曲・編:SOFT BALLET
6.「OUT」 曲・編:SOFT BALLET
7.「FINE TRAIN」 詞・曲・編:SOFT BALLET
8.「DEAD-END GAZE」 詞・曲・編:SOFT BALLET
9.「LOVE JUNK」 詞・曲・編:SOFT BALLET
10.「F・A・C・S」 詞・曲・編:SOFT BALLET
11.「PEACEFUL DAYS」 詞・曲・編:SOFT BALLET
<support musician>
Hiromi Frolesca:vocal
濱田マリ:vocal
成田忍:guitar
TATSU:bass
寺谷誠一:drums
白石元久:synthesizer manipulate assistance
松井サトシ:synthesizer manipulate assistance
produced by SOFT BALLET
mixing engineered by 石塚真一
recording engineered by SOFT BALLET・石塚真一
● 以前の音楽性からは相当な違和感を感じる人間味溢れる印象が強い伝説ユニットの復活作
1995年に無期限活動休止となった稀代のエレクトロユニットSOFT BALLETは、休止後もヴォーカルの遠藤遼一は自身のソロユニットENDSでエモーショナルにロックの世界に飛び込んでいき、森岡賢はソロ活動や多数のサポート活動で多忙を極め、藤井麻輝はShe-shellとしてのユニット活動やepidemic等のプロデュースワークに勤しむなど各々のフィールドで活躍してきました。しかし21世紀にどこからともなく再結成の機運が高まってくると野外ライブサマーソニックにおいて華麗に復活、そのまま(意外にも)すぐさまシングル「メルヘンダイバー」、そして復活アルバムとなる本作を立て続けにリリースします。「メルヘンダイバー」では余りのサラリとしたポップ感覚に肩透かしを食らったものの、さすがにアルバムとなると本性が見え隠れするような濃密な音世界が繰り広げられるのは、もはやベテランと化した彼らの性とも言えるでしょう。
彼らの音世界、とはいえ初期のデジタルダンスビートな世界観を期待すると拍子抜けするかもしれません。もちろん森岡特有のトランシーなシンセ&シーケンスパターンや藤井の求道的なデジタルノイズサウンドは健在ですが、のっけから「BIRD TIME」の轟音ギターロックで遠藤の激しい主張で幕を開け、その熱量に戸惑いを感じることでしょう。再結成前の彼らと異なる点は、遠藤のヴォーカルのみならず全体的なパフォーマンスの変化が非常に大きいと思われます。以前発音により粘りを増したヴォーカルスタイルに7年もの歳月を感じざるを得ませんが、実は「Million Mirrors」〜「INCUBATE」〜「FORM」の方向性をしっかりと受け継いでおり、活動休止せずに継続していても結果としてはこのようなスタイルになっていたかのように感じられるほど、SOFT BALLETというバンドとしての継続性が滲み出ていることは否めません。もちろんダンスビート色は薄まったとはいえ、電子音は以前よりも研ぎ澄まされた印象があり、特に「TOO FAT TO UGLY」「F・A・C・S」で聴かれるようなコクのあるシンセベースは本作を語る上でも外せない特徴であると思われます。結果としてはアルバムをもう1枚残して再び解散となりますが、再結成は、以前のイメージと現在進行形の音楽性とのギャップに焦点が当たりがちな再結成の中で継続性を持たせながらも彼らなりの進化を感じさせる作品を提示できたという点では、SOFT BALLETの再結成はアリだったのではないかと思います。
<Favorite Songs>
・「JIM DOG」
フィルタリングも鮮やかなトランスリフで始まる本作中でもリード的な役割を持つシンセポップ。執拗なブレイクビーツが主導していくダンサブルな楽曲ですが、この緊張感は再結成以前の彼らの全盛期を彷佛とさせ、ファンの溜飲を下げることのできる仕上がりです。
・「MERCHENDIVER」
記念すべき復活シングルのアルバムバージョン。シングルではわかりやすいフレーズと開き直った音の軽さで遊んだ感がありましたが(結構好きでした)、本作のアレンジではキュートなシーケンスでよりテクノ感を前面に出すことによって、作品としてのバランスを崩さないように配慮しています。
・「F・A・C・S」
静謐な前半からパワーに圧倒される中盤、そして再び静謐なアウトロへ向かっていく修道的な楽曲。熱唱型ヴォーカルとアシッドでブチブチなシンセでどぎつく盛り上がる中盤のテンションの高さがこの楽曲の魅力です。
<評点>
・サウンド ★★★ (ギター色が強い中濃厚なシンセベースが際立つ)
・メロディ ★ (かつてのポップセンスを潜めても細部の音にこだわる)
・リズム ★★ (丁寧にリズムを構築するものの派手さは抑えた印象)
・曲構成 ★ (キラーソングを見つけるのが難しく平坦な印象に)
・個性 ★ (音の進化は確かに垣間見せたが作品としては地味か)
総合評点: 6点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「SWITCHED ON CYBORG」 CYBORG '80s
「SWITCHED ON CYBORG」(2002 スーパースウィープ)
CYBORG '80s

<members>
zunba:vocal・synthesizer・computer programming
1.「Change! Cyborg」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
2.「あいしてるでゴーゴー」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
3.「My Cyborg〜feat.tomoko,Sachiko&Mie(jellyfish)」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi
4.「HAKKA〜feat.Magnaroid」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
5.「HACKER」 曲・編:Zunba Kobayashi
6.「TECHNOTICA EXOTICA」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
7.「トワイライト」 曲・編:Zunba Kobayashi
8.「Interlude」 曲・編:HeartBe@t ANI
9.「Love Sports」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
10.「In the mirror〜feat.Lie Inomata」 詞:石垣三詠 曲・編:Zunba Kobayashi
11.「ミスルージュ」 詞:Zunba Kobayashi 曲:Paul Frank 編:Zunba Kobayashi
12.「夢心地〜feat.Tomoko Ishizaki」
詞:石垣三詠 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
13.「The garden in the air」 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
14.「shut down」 曲・編:Zunba Kobayashi
15.「Love Sports〜ヴォルシェビッキ mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
16.「Change! Cyborg〜1-2-3 mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
<support musician>
Magnaroid:vocal・voice・robot voice samples
石崎智子:vocal
石垣三詠:vocal
山川佐智子:vocal
猪俣リエ:vocal
Hinako Love*9:back vocal
produced by 細江慎治
mixing engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog
recording engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog・野川靖友
● ソロ時代よりテクノなコンセプトをさらに推し進めネット仲間と共に作り上げたSFコンセプトユニットのデビュー作
歌人として活躍する笹公人の音楽ユニットであった宇宙ヤングのサウンドクリエイターとして名盤「宇宙ヤング」を制作するなど、ノスタルジックなテクノポップを得意としたサウンドメイクに定評のあった小林和博が、Zunba Kobayashiと名乗ってリリースしたのが99年のソロアルバム「Techno The Future」。レトロフューチャーをこよなく愛する彼の懐古趣味的なシンセサイザーサウンドはこの作品でも結実されていますが、21世紀に入って新たなテクノポップユニットとしてCYBORG '80sを結成し、2002年に本作がリリースされることになります。ジャケを見ていただいてもわかるようにまずはコンセプチュアルな世界観で魅了しながら、実際のサウンドは「Techno The Future」の延長線上にあるかのような歌モノPOPSあり、ラウンジミュージックあり、ダンサブルなクラブを意識したエレクトリックポップありのZunbaサウンドを、気の合う仲間達などの多彩なゲストを迎えながら和気あいあいと作り上げていますが、全体としてはこれ以上ない直球テクノポップ作品に仕上がっていると言えるでしょう。
直球、というだけあってまさにグループ名通り80年代テクノポップのフォーマットにのっとったサウンドデザインが本作の核となっています。当然のことながらメインとなるのは多彩で電子音まみれなシンセサウンド&ボコーダーで、これらがフィーチャーされた「Change! Cyborg」や「あいしてるでゴーゴー」はCYBORG 80'sの真骨頂とも言えると思います。しかし本作には前述の通り多彩なゲストも制作に加わり、特に女子テクノポップユニットとして当時ニッチな人気を博していたJellyfishの参加が、マニアックになりがちな作品の雰囲気に華やかな彩りを加えていることも見逃せません。特にJellyfishのお友達がヴォーカルをとる「In the mirror」やJellyfishのメインコンポーザー&ヴォーカルの石崎智子がフィーチャーされた「夢心地」といった女性ヴォーカルモノは楽曲としてのクオリティも高く、親しみやすくも懐かしいメロディラインも相まって、一般的にもアピールできるポップネスを楽しむことができる名曲達です。そして相変わらずの細部にわたって作り込まれたZunbaサウンドは、シンセパッドのゆらぎやバスドラの響かせ方、アルトサウンドを模したかのようなシンドラリズム、ビット数の低いボコーダーの濁し方など、80'sテクノポッパー垂涎の音づくり(君に、胸キュン。のイントロパロディもあり)で聴き手を幻惑させており、その愚直なまでのこだわりには感心させられます。
結局その後路線を変えて1枚アルバムを残した後は目立った活動を行っていないこのユニットですが、またこのストレートなシンセポップミュージックを堪能したいものです。
<Favorite Songs>
・「Change! Cyborg」
オープニングにふさわしい軽快かつクールなテクノチューン。お約束の渋いボコーダーボイスがニクいくらいにハマっています。メインリフのサイン派からフィルターで尖らせていくシーケンスが、わかってはいるものの味のあるフレージングで納得させられます。電子音満載でもしつこさを感じさせないのが良いです。
・「In the mirror」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その1。バスドラのつんのめり方が絶妙です。基本的にドリーミーな音色で彩ったシンセをバックに、輪郭の丸い性質のヴォーカルが絡む癒し系の楽曲で、ポルタメントのかかった白玉パッドのにじみ方も「わかってる」感じです。
・「夢心地」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その2。オリエンタルなメロディ&音色が80年代の化粧品CMソングを彷佛とさせます。特徴的なリズム音色と琴フレーズが耳を魅かれますが、全体を漂うドリーミーでノスタルジックな雰囲気はもはや彼の芸風と言ってもよいでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (80'sシンセの見本市のような細部にこだわる音づくり)
・メロディ ★ (特にひねりは感じられないものの堅実なポップ風味)
・リズム ★★ (多彩な音色でこだわりを見せるが軽さも気になるところ)
・曲構成 ★★ (前半をテクノラウンジ、後半をテクノ歌謡で飽きさせず)
・個性 ★ (新ユニットになっても懐古テクノな芸風は変わらず)
総合評点: 7点
CYBORG '80s

<members>
zunba:vocal・synthesizer・computer programming
1.「Change! Cyborg」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
2.「あいしてるでゴーゴー」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
3.「My Cyborg〜feat.tomoko,Sachiko&Mie(jellyfish)」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi
4.「HAKKA〜feat.Magnaroid」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
5.「HACKER」 曲・編:Zunba Kobayashi
6.「TECHNOTICA EXOTICA」
詞:Buggle・Zunba Kobayashi 曲・編:Zunba Kobayashi
7.「トワイライト」 曲・編:Zunba Kobayashi
8.「Interlude」 曲・編:HeartBe@t ANI
9.「Love Sports」 詞・曲・編:Zunba Kobayashi
10.「In the mirror〜feat.Lie Inomata」 詞:石垣三詠 曲・編:Zunba Kobayashi
11.「ミスルージュ」 詞:Zunba Kobayashi 曲:Paul Frank 編:Zunba Kobayashi
12.「夢心地〜feat.Tomoko Ishizaki」
詞:石垣三詠 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
13.「The garden in the air」 曲:HeartBe@t ANI 編:Zunba Kobayashi
14.「shut down」 曲・編:Zunba Kobayashi
15.「Love Sports〜ヴォルシェビッキ mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
16.「Change! Cyborg〜1-2-3 mix〜」
詞・曲・編:Zunba Kobayashi remix:polymoog
<support musician>
Magnaroid:vocal・voice・robot voice samples
石崎智子:vocal
石垣三詠:vocal
山川佐智子:vocal
猪俣リエ:vocal
Hinako Love*9:back vocal
produced by 細江慎治
mixing engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog
recording engineered by Zunba Kobayashi・HeartBe@t ANI・polymoog・野川靖友
● ソロ時代よりテクノなコンセプトをさらに推し進めネット仲間と共に作り上げたSFコンセプトユニットのデビュー作
歌人として活躍する笹公人の音楽ユニットであった宇宙ヤングのサウンドクリエイターとして名盤「宇宙ヤング」を制作するなど、ノスタルジックなテクノポップを得意としたサウンドメイクに定評のあった小林和博が、Zunba Kobayashiと名乗ってリリースしたのが99年のソロアルバム「Techno The Future」。レトロフューチャーをこよなく愛する彼の懐古趣味的なシンセサイザーサウンドはこの作品でも結実されていますが、21世紀に入って新たなテクノポップユニットとしてCYBORG '80sを結成し、2002年に本作がリリースされることになります。ジャケを見ていただいてもわかるようにまずはコンセプチュアルな世界観で魅了しながら、実際のサウンドは「Techno The Future」の延長線上にあるかのような歌モノPOPSあり、ラウンジミュージックあり、ダンサブルなクラブを意識したエレクトリックポップありのZunbaサウンドを、気の合う仲間達などの多彩なゲストを迎えながら和気あいあいと作り上げていますが、全体としてはこれ以上ない直球テクノポップ作品に仕上がっていると言えるでしょう。
直球、というだけあってまさにグループ名通り80年代テクノポップのフォーマットにのっとったサウンドデザインが本作の核となっています。当然のことながらメインとなるのは多彩で電子音まみれなシンセサウンド&ボコーダーで、これらがフィーチャーされた「Change! Cyborg」や「あいしてるでゴーゴー」はCYBORG 80'sの真骨頂とも言えると思います。しかし本作には前述の通り多彩なゲストも制作に加わり、特に女子テクノポップユニットとして当時ニッチな人気を博していたJellyfishの参加が、マニアックになりがちな作品の雰囲気に華やかな彩りを加えていることも見逃せません。特にJellyfishのお友達がヴォーカルをとる「In the mirror」やJellyfishのメインコンポーザー&ヴォーカルの石崎智子がフィーチャーされた「夢心地」といった女性ヴォーカルモノは楽曲としてのクオリティも高く、親しみやすくも懐かしいメロディラインも相まって、一般的にもアピールできるポップネスを楽しむことができる名曲達です。そして相変わらずの細部にわたって作り込まれたZunbaサウンドは、シンセパッドのゆらぎやバスドラの響かせ方、アルトサウンドを模したかのようなシンドラリズム、ビット数の低いボコーダーの濁し方など、80'sテクノポッパー垂涎の音づくり(君に、胸キュン。のイントロパロディもあり)で聴き手を幻惑させており、その愚直なまでのこだわりには感心させられます。
結局その後路線を変えて1枚アルバムを残した後は目立った活動を行っていないこのユニットですが、またこのストレートなシンセポップミュージックを堪能したいものです。
<Favorite Songs>
・「Change! Cyborg」
オープニングにふさわしい軽快かつクールなテクノチューン。お約束の渋いボコーダーボイスがニクいくらいにハマっています。メインリフのサイン派からフィルターで尖らせていくシーケンスが、わかってはいるものの味のあるフレージングで納得させられます。電子音満載でもしつこさを感じさせないのが良いです。
・「In the mirror」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その1。バスドラのつんのめり方が絶妙です。基本的にドリーミーな音色で彩ったシンセをバックに、輪郭の丸い性質のヴォーカルが絡む癒し系の楽曲で、ポルタメントのかかった白玉パッドのにじみ方も「わかってる」感じです。
・「夢心地」
女性ヴォーカルフィーチャーのテクノ歌謡路線その2。オリエンタルなメロディ&音色が80年代の化粧品CMソングを彷佛とさせます。特徴的なリズム音色と琴フレーズが耳を魅かれますが、全体を漂うドリーミーでノスタルジックな雰囲気はもはや彼の芸風と言ってもよいでしょう。
<評点>
・サウンド ★★★ (80'sシンセの見本市のような細部にこだわる音づくり)
・メロディ ★ (特にひねりは感じられないものの堅実なポップ風味)
・リズム ★★ (多彩な音色でこだわりを見せるが軽さも気になるところ)
・曲構成 ★★ (前半をテクノラウンジ、後半をテクノ歌謡で飽きさせず)
・個性 ★ (新ユニットになっても懐古テクノな芸風は変わらず)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「AUDIO SPONGE」 SKETCH SHOW
「AUDIO SPONGE」(2002 エイベックス)
SKETCH SHOW

<members>
高橋幸宏:vocal・all instruments
細野晴臣:vocal・all instruments
1.「TURN TURN」 詞・曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:テイトウワ・SKETCH SHOW
2.「Wonderful to me」
詞:高橋幸宏・細野晴臣 曲:坂本龍一・高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
3.「Microtalk」 曲:高橋幸宏・細野晴臣・木本靖夫 編:SKETCH SHOW・木本靖夫
4.「WILSON」 詞:高橋幸宏 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW・重住ひろこ
5.「Supreme Secret」
詞:高橋幸宏・細野晴臣 曲:坂本龍一・高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
6.「Do you want to marry me」 詞:Corrine Tulipe 曲:Michel Magne 編:SKETCH SHOW
7.「Gokigen ikaga 1.2.3」 詞:Snakeman Show 曲:細野晴臣 編:SKETCH SHOW
8.「Reform」 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
9.「Flying George」 詞:高橋幸宏・吉橋トモコ 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
10.「Turn Down Day」 詞・曲:David Blume・Paul Jerry Keller 編:SKETCH SHOW
11.「Return」 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
12.「Theme from a summer place」
詞:Mack Discant 曲:Max Steiner 編:SKETCH SHOW
<support musician>
Pase Wu:voices
坂本龍一:keyboards・sample guitar・clavinette
岡村玄:chorus
重住ひろこ:chorus
平慎也:chorus
森脇松平:chorus
テイトウワ:production data
produced by SKETCH SHOW
mixing engineered by 原口宏・Goh Hotoda・テイトウワ・松田直・木本靖夫・飯尾芳史・SKETCH SHOW
recording engineered by 原口宏
● 日本POPS界を牽引してきた重鎮の2人が挑戦するポストエレクトロニカPOPSの貫禄の意欲作
日本のロックシーンにおける最重要人物というべき細野晴臣と高橋幸宏。YMOでの活動が有名ではありますが、はっぴいえんどやサディスティック・ミカ・バンドといった70年代前半の日本ロック黎明期の伝説バンドのメンバーでもある彼らが、電子楽器という新しいツールによる新しい音楽を創り出そうという意欲が生み出したのがYMOであったと思われます。一時代を築いたこのバンドを散開(解散)後は、独自のテクノ道を邁進したり、ワールドミュージックやアンビエントに傾倒してみたり、日本式POPSに限りなく接近してみたりと、その豊富なキャリアと培ってきた多彩な音楽性、そして確かなサウンド面でのセンスとプレイヤーとしての技術によって、安定した活動でファンを楽しませてきました。そしてこの2人がエレクトロニカという共通言語を介して再びタッグを組んだのが2002年。SKETCH SHOWと銘打たれたこのユニットは、YMO時代においての相性の良さも手伝ってか、単なる懐古主義的なテクノポップというよりも最新式のエレクトリックPOPSを彼らなりに料理した、年齢問わず楽しめるポップミュージックを披露しました。本作はそんな彼らがフルアルバムとして唯一残している作品です。
SKETCH SHOWのサウンドはいわゆるエレクトロニカで、チリチリとした電子ノイズを多用したり、電子的なサンプルコラージュを散りばめながらもシンプルな音像が魅力的です。基本はワンコードで、そこにバリエーションを加えてフレーズやサウンドを発展させていくスタイルで(随所でYMO的なフレーズを多用するユーモアも)、このあたりは1993年の再生YMOの匂いを残しつつ、00年代当時の流行を抑えた最新のクールなポップミュージックを志向しています。また、2曲で坂本龍一まで参加してしまったおかげでYMO再結成か?とも思われそうな作品ですが、テクノっぽい志向とはいっても根底に流れているのは細野&高橋のアメリカンPOPSへの憧憬であり、カバー曲にもそのあたりが如実に感じられるところです。本作におけるこのエレクトロニカなサウンド手法は特にその後の高橋幸宏のソロワークに継承されていき、本作のアメリカンPOPSへの回帰という点では細野晴臣のソロ活動への火付け役になったという解釈もできますが、さらに坂本龍一を加えた久しぶりの邂逅が、後のHuman Audio Sponge→HASYMO→Yello Magic Orchestraとしての3人の再活動へとつながっていくわけで、別々に活動していた稀代の3名のミュージシャンが、再び集結する着火点となった、重要な位置づけの作品であることが言えると思います。
<Favorite Songs>
・「TURN TURN」
かのYMOの名盤「TECHNODELIC」収録曲を彷佛とさせるミニマル要素の強いエレクトリックチューン。幸宏らしい緻密なリズム構築と気怠いヴォーカルが絡み合います。このリピート感覚はまさにあの時代の先鋭性が時代に追いついてきた感があります。
・「Wonderful to me」
坂本龍一が参加して疑似YMOとなった本作のキラーチューン。この楽曲も基本はワンコードですが、不協和音と化した白玉パッドの苦みが心地良いです。この3人が集まるとやはりあのバンドの味になってくるのも興味深いです。
・「Gokigen ikaga 1.2.3」
約20年ぶりに甦ったスネークマンショーへの提供曲のリメイク。ラップの古典ともいえる原曲はダンサブルとも言えるファンクポップでしたが、このリメイクでは深みのあるテクノファンクに生まれ変わってさらに不気味さを増しています。分離の良いリズム構築はさすがの幸宏マジックです。
<評点>
・サウンド ★★★ (隙間を作る音のタイミングに豊富な経験を感じさせる)
・メロディ ★ (ミニマル要素を前面に出してオリジナルは地味に終始)
・リズム ★★★ (このリズムワークだけは本当に独特で唯一無二のもの)
・曲構成 ★★ (リメイクが多いのとあと数曲キラーソングが欲しかった)
・個性 ★★ (この2名だからこその安定感、3名加わるとあのサウンド)
総合評点: 7点
SKETCH SHOW

<members>
高橋幸宏:vocal・all instruments
細野晴臣:vocal・all instruments
1.「TURN TURN」 詞・曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:テイトウワ・SKETCH SHOW
2.「Wonderful to me」
詞:高橋幸宏・細野晴臣 曲:坂本龍一・高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
3.「Microtalk」 曲:高橋幸宏・細野晴臣・木本靖夫 編:SKETCH SHOW・木本靖夫
4.「WILSON」 詞:高橋幸宏 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW・重住ひろこ
5.「Supreme Secret」
詞:高橋幸宏・細野晴臣 曲:坂本龍一・高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
6.「Do you want to marry me」 詞:Corrine Tulipe 曲:Michel Magne 編:SKETCH SHOW
7.「Gokigen ikaga 1.2.3」 詞:Snakeman Show 曲:細野晴臣 編:SKETCH SHOW
8.「Reform」 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
9.「Flying George」 詞:高橋幸宏・吉橋トモコ 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
10.「Turn Down Day」 詞・曲:David Blume・Paul Jerry Keller 編:SKETCH SHOW
11.「Return」 曲:高橋幸宏・細野晴臣 編:SKETCH SHOW
12.「Theme from a summer place」
詞:Mack Discant 曲:Max Steiner 編:SKETCH SHOW
<support musician>
Pase Wu:voices
坂本龍一:keyboards・sample guitar・clavinette
岡村玄:chorus
重住ひろこ:chorus
平慎也:chorus
森脇松平:chorus
テイトウワ:production data
produced by SKETCH SHOW
mixing engineered by 原口宏・Goh Hotoda・テイトウワ・松田直・木本靖夫・飯尾芳史・SKETCH SHOW
recording engineered by 原口宏
● 日本POPS界を牽引してきた重鎮の2人が挑戦するポストエレクトロニカPOPSの貫禄の意欲作
日本のロックシーンにおける最重要人物というべき細野晴臣と高橋幸宏。YMOでの活動が有名ではありますが、はっぴいえんどやサディスティック・ミカ・バンドといった70年代前半の日本ロック黎明期の伝説バンドのメンバーでもある彼らが、電子楽器という新しいツールによる新しい音楽を創り出そうという意欲が生み出したのがYMOであったと思われます。一時代を築いたこのバンドを散開(解散)後は、独自のテクノ道を邁進したり、ワールドミュージックやアンビエントに傾倒してみたり、日本式POPSに限りなく接近してみたりと、その豊富なキャリアと培ってきた多彩な音楽性、そして確かなサウンド面でのセンスとプレイヤーとしての技術によって、安定した活動でファンを楽しませてきました。そしてこの2人がエレクトロニカという共通言語を介して再びタッグを組んだのが2002年。SKETCH SHOWと銘打たれたこのユニットは、YMO時代においての相性の良さも手伝ってか、単なる懐古主義的なテクノポップというよりも最新式のエレクトリックPOPSを彼らなりに料理した、年齢問わず楽しめるポップミュージックを披露しました。本作はそんな彼らがフルアルバムとして唯一残している作品です。
SKETCH SHOWのサウンドはいわゆるエレクトロニカで、チリチリとした電子ノイズを多用したり、電子的なサンプルコラージュを散りばめながらもシンプルな音像が魅力的です。基本はワンコードで、そこにバリエーションを加えてフレーズやサウンドを発展させていくスタイルで(随所でYMO的なフレーズを多用するユーモアも)、このあたりは1993年の再生YMOの匂いを残しつつ、00年代当時の流行を抑えた最新のクールなポップミュージックを志向しています。また、2曲で坂本龍一まで参加してしまったおかげでYMO再結成か?とも思われそうな作品ですが、テクノっぽい志向とはいっても根底に流れているのは細野&高橋のアメリカンPOPSへの憧憬であり、カバー曲にもそのあたりが如実に感じられるところです。本作におけるこのエレクトロニカなサウンド手法は特にその後の高橋幸宏のソロワークに継承されていき、本作のアメリカンPOPSへの回帰という点では細野晴臣のソロ活動への火付け役になったという解釈もできますが、さらに坂本龍一を加えた久しぶりの邂逅が、後のHuman Audio Sponge→HASYMO→Yello Magic Orchestraとしての3人の再活動へとつながっていくわけで、別々に活動していた稀代の3名のミュージシャンが、再び集結する着火点となった、重要な位置づけの作品であることが言えると思います。
<Favorite Songs>
・「TURN TURN」
かのYMOの名盤「TECHNODELIC」収録曲を彷佛とさせるミニマル要素の強いエレクトリックチューン。幸宏らしい緻密なリズム構築と気怠いヴォーカルが絡み合います。このリピート感覚はまさにあの時代の先鋭性が時代に追いついてきた感があります。
・「Wonderful to me」
坂本龍一が参加して疑似YMOとなった本作のキラーチューン。この楽曲も基本はワンコードですが、不協和音と化した白玉パッドの苦みが心地良いです。この3人が集まるとやはりあのバンドの味になってくるのも興味深いです。
・「Gokigen ikaga 1.2.3」
約20年ぶりに甦ったスネークマンショーへの提供曲のリメイク。ラップの古典ともいえる原曲はダンサブルとも言えるファンクポップでしたが、このリメイクでは深みのあるテクノファンクに生まれ変わってさらに不気味さを増しています。分離の良いリズム構築はさすがの幸宏マジックです。
<評点>
・サウンド ★★★ (隙間を作る音のタイミングに豊富な経験を感じさせる)
・メロディ ★ (ミニマル要素を前面に出してオリジナルは地味に終始)
・リズム ★★★ (このリズムワークだけは本当に独特で唯一無二のもの)
・曲構成 ★★ (リメイクが多いのとあと数曲キラーソングが欲しかった)
・個性 ★★ (この2名だからこその安定感、3名加わるとあのサウンド)
総合評点: 7点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「FACE TO FACE」 face to ace
「FACE TO FACE」(2002 クラウン)
face to ace

<members>
ACE:vocal・guitar・bass
本田海月:synthesizer・computer programming
1.「MISSING WORD」 詞・曲:ACE 編:face to ace
2.「月夜のケモノたち」 詞・曲:ACE 編:face to ace
3.「FLAMING DAYS」 詞・曲:ACE 編:face to ace
4.「IN THE MAZE」 詞・曲:ACE 編:face to ace
5.「オルフェウスの朝」 詞:ACE 曲:本田海月 編:face to ace
6.「...I KNOW」 詞・曲:ACE 編:face to ace
7.「BLIND FLIGHT(無視界飛行)」 詞・曲:ACE 編:face to ace
8.「ENOUGH!」 詞・曲:ACE 編:face to ace
9.「QUIET SNOW」 詞・曲:ACE 編:face to ace
10.「SPIRAL STEPS」 詞・曲:ACE 編:face to ace
11.「早春」 詞:ACE 曲:本田海月 編:face to ace
12.「誰よりもずっと」 詞・曲:ACE 編:face to ace
<support musician>
瀧川"GASBON"浩水:alto sax
produced by face to ace
engineered by 上條直之
● 本田サウンド見事に復活!10年前のソロ作をさらに推し進め80年型AORを指向したデビュー作
GRASS VALLEY解散後のベストプロデュースの1つ、聖飢魔IIのギタリストであったエース清水のソロアルバム「TIME AXIS」から約9年、それまで山本寛太郎らとのPOPSユニットOPCELLやKei-teeのプロデュース、若木未生のライトノベル「ハイスクールオーラバスター」シリーズのサントラなどで、REVやソロで活躍した出口雅之やSOFT BALLETやP-MODELなどシンセ系のバンドを渡り歩く中でソロ活動も精力的にこなした上領亘といった元メンバー達に比べると地味ではあるものの、確かにその健在ぶりを見せていた本田恭之ですが、21世紀に入り旧知のエース清水から再び要請を受け、9年前の続編が開始することになりました。当初は「TIME AXIS」と同じく裏方に徹するつもりがエース清水ことACEの要望もあり2人組のユニットとして再出発、face to aceとして2001年シングル「MISSING WORD」でデビュー、翌年早くも記念すべき1stフルアルバムの本作がリリースと相成りました。本田恭之も「本田海月」と改名して心機一転、パーマネントグループとして活動する気概を見せた本作は、「TIME AXIS」で垣間見せた叙情的なAOR的シンセPOPSを進化させたような、期待通りのサウンドセンスを見せつけています。
ユニット始動直後ということでACE作曲の楽曲が多く彼の個性が良く出た作品ではありますが、まだ過渡期ということもあって本田が手掛けるサウンドスタイルがGRASS VALLEYやソロ活動時代を引きずった印象となっており、特に独特の残響が深いローランド系のピアノ系音色(「...I KNOW」等で活躍)にその片鱗を漂わせています。憂いを含んだコード感や音色の選び方などは本田色が目立ちますが、エッジの効いた音色は極力抑えられ(例外は「月夜のケモノたち」)、そのかわりに浮遊感のある線の細いサウンド(「QUIET SNOW」の雪が降るような音色は絶品!)を多用してその叙情的雰囲気の構築に一役買っています。しかしこのように楽曲を色彩豊かに彩りながらも主役を張るACEを立てることは忘れず、全般的に言えばACEのAOR系メロディとテクニカルなギターソロをフィーチャーした作りとなっていることも忘れてはなりません。「TIME AXIS」でもそうでしたがこの2人の音楽性は非常に相性が良く、またACEの本田に対する絶大な信頼感が上手く楽曲の完成度の反映されているような、ある種の安定感が感じられます。とは言いつつもやはり「オルフェウスの朝」「早春」といった本田楽曲の完成度はひと味違うものであり、次作以降はACEと本田でほぼ均等の作曲割合となり、アルバムの完成度はますます充実なものになっていくのです。
<Favorite Songs>
・「月夜のケモノたち」
face to aceにしては貴重なスピード感のあるロックナンバー。ギターが目立つとはいえポイントで絡むシンセ音色はまさに本田サウンドで、プラスモジュレーションがかったシンセフレーズが激しさを演出しています。そしてラストにはGRASS VALLEY時代を彷佛とさせる単純なフレーズに憂いを含む圧巻のシンセソロが堪能できます。
・「BLIND FLIGHT(無視界飛行)」
「MISSING WORD」のカップリングとなったGRASS VALLEYの名盤「MOON VOICE」の雰囲気を思い出させる夜のイメージな陰りのある楽曲。クッキリしたリズムトラックにボイス系音色や浮遊サウンドを意識した本作中でも有数の凝ったシンセサウンドで聴かせてくれます。ラストの変わった終わり方も巧みです。
・「早春」
これは久しぶりに本田メロディが炸裂したと言ってもよい珠玉のバラードソング。ほぼ弾き語り調の楽曲で特にサウンドで勝負するタイプではないものの、地味な中に潜むメロディの圧倒的な力で世界観を一気に構築する天性の音楽力を持つ名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (改めて本田シンセの絵画的フレーズ配置のセンスは抜群)
・メロディ ★★★★ (本田の才覚に負けず劣らずACEはしっかり曲が書ける人)
・リズム ★★ (全編打ち込みながら1つ1つ丁寧に作り込まれている印象)
・曲構成 ★★ (満を持してのデビューで曲数多く少々入れ込み過ぎかも)
・個性 ★★ (後の彼らの作品に比べると楽曲に若さと躍動感を感じる)
総合評点: 8点
face to ace

<members>
ACE:vocal・guitar・bass
本田海月:synthesizer・computer programming
1.「MISSING WORD」 詞・曲:ACE 編:face to ace
2.「月夜のケモノたち」 詞・曲:ACE 編:face to ace
3.「FLAMING DAYS」 詞・曲:ACE 編:face to ace
4.「IN THE MAZE」 詞・曲:ACE 編:face to ace
5.「オルフェウスの朝」 詞:ACE 曲:本田海月 編:face to ace
6.「...I KNOW」 詞・曲:ACE 編:face to ace
7.「BLIND FLIGHT(無視界飛行)」 詞・曲:ACE 編:face to ace
8.「ENOUGH!」 詞・曲:ACE 編:face to ace
9.「QUIET SNOW」 詞・曲:ACE 編:face to ace
10.「SPIRAL STEPS」 詞・曲:ACE 編:face to ace
11.「早春」 詞:ACE 曲:本田海月 編:face to ace
12.「誰よりもずっと」 詞・曲:ACE 編:face to ace
<support musician>
瀧川"GASBON"浩水:alto sax
produced by face to ace
engineered by 上條直之
● 本田サウンド見事に復活!10年前のソロ作をさらに推し進め80年型AORを指向したデビュー作
GRASS VALLEY解散後のベストプロデュースの1つ、聖飢魔IIのギタリストであったエース清水のソロアルバム「TIME AXIS」から約9年、それまで山本寛太郎らとのPOPSユニットOPCELLやKei-teeのプロデュース、若木未生のライトノベル「ハイスクールオーラバスター」シリーズのサントラなどで、REVやソロで活躍した出口雅之やSOFT BALLETやP-MODELなどシンセ系のバンドを渡り歩く中でソロ活動も精力的にこなした上領亘といった元メンバー達に比べると地味ではあるものの、確かにその健在ぶりを見せていた本田恭之ですが、21世紀に入り旧知のエース清水から再び要請を受け、9年前の続編が開始することになりました。当初は「TIME AXIS」と同じく裏方に徹するつもりがエース清水ことACEの要望もあり2人組のユニットとして再出発、face to aceとして2001年シングル「MISSING WORD」でデビュー、翌年早くも記念すべき1stフルアルバムの本作がリリースと相成りました。本田恭之も「本田海月」と改名して心機一転、パーマネントグループとして活動する気概を見せた本作は、「TIME AXIS」で垣間見せた叙情的なAOR的シンセPOPSを進化させたような、期待通りのサウンドセンスを見せつけています。
ユニット始動直後ということでACE作曲の楽曲が多く彼の個性が良く出た作品ではありますが、まだ過渡期ということもあって本田が手掛けるサウンドスタイルがGRASS VALLEYやソロ活動時代を引きずった印象となっており、特に独特の残響が深いローランド系のピアノ系音色(「...I KNOW」等で活躍)にその片鱗を漂わせています。憂いを含んだコード感や音色の選び方などは本田色が目立ちますが、エッジの効いた音色は極力抑えられ(例外は「月夜のケモノたち」)、そのかわりに浮遊感のある線の細いサウンド(「QUIET SNOW」の雪が降るような音色は絶品!)を多用してその叙情的雰囲気の構築に一役買っています。しかしこのように楽曲を色彩豊かに彩りながらも主役を張るACEを立てることは忘れず、全般的に言えばACEのAOR系メロディとテクニカルなギターソロをフィーチャーした作りとなっていることも忘れてはなりません。「TIME AXIS」でもそうでしたがこの2人の音楽性は非常に相性が良く、またACEの本田に対する絶大な信頼感が上手く楽曲の完成度の反映されているような、ある種の安定感が感じられます。とは言いつつもやはり「オルフェウスの朝」「早春」といった本田楽曲の完成度はひと味違うものであり、次作以降はACEと本田でほぼ均等の作曲割合となり、アルバムの完成度はますます充実なものになっていくのです。
<Favorite Songs>
・「月夜のケモノたち」
face to aceにしては貴重なスピード感のあるロックナンバー。ギターが目立つとはいえポイントで絡むシンセ音色はまさに本田サウンドで、プラスモジュレーションがかったシンセフレーズが激しさを演出しています。そしてラストにはGRASS VALLEY時代を彷佛とさせる単純なフレーズに憂いを含む圧巻のシンセソロが堪能できます。
・「BLIND FLIGHT(無視界飛行)」
「MISSING WORD」のカップリングとなったGRASS VALLEYの名盤「MOON VOICE」の雰囲気を思い出させる夜のイメージな陰りのある楽曲。クッキリしたリズムトラックにボイス系音色や浮遊サウンドを意識した本作中でも有数の凝ったシンセサウンドで聴かせてくれます。ラストの変わった終わり方も巧みです。
・「早春」
これは久しぶりに本田メロディが炸裂したと言ってもよい珠玉のバラードソング。ほぼ弾き語り調の楽曲で特にサウンドで勝負するタイプではないものの、地味な中に潜むメロディの圧倒的な力で世界観を一気に構築する天性の音楽力を持つ名曲です。
<評点>
・サウンド ★★★★ (改めて本田シンセの絵画的フレーズ配置のセンスは抜群)
・メロディ ★★★★ (本田の才覚に負けず劣らずACEはしっかり曲が書ける人)
・リズム ★★ (全編打ち込みながら1つ1つ丁寧に作り込まれている印象)
・曲構成 ★★ (満を持してのデビューで曲数多く少々入れ込み過ぎかも)
・個性 ★★ (後の彼らの作品に比べると楽曲に若さと躍動感を感じる)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽
「UTA」 Cha pari
「UTA」(2002 サブライム)
Cha pari:vocal・all instruments

1.「KOE」 曲・編:Cha pari
2.「Daisy」 詞・曲・編:Cha pari
3.「Lady emperor」 詞・曲・編:Cha pari
4.「Words」 曲・編:Cha pari
5.「Feel」 曲・編:Cha pari
6.「He is a naughty child」 詞・曲・編:Cha pari
7.「Yoakemade」 詞・曲・編:Cha pari
8.「OTO」 詞・曲・編:Cha pari
9.「Smile」 詞・曲・編:Cha pari
10.「Reset」 曲・編:Cha pari
11.「Asobi」 曲・編:Cha pari
12.「She is a witch」 詞・曲・編:Cha pari
13.「UTA」 曲・編:Cha pari
produced by Cha pari
engineered by Cha pari
● 加工された音や声の断片を切り貼りした不思議POPSを構築する女性クリエイターの意欲作
90年代後半から活動を開始、CM音楽の制作などを経て2002年テクノレーベルの老舗Sublime Recordsから彗星のごとく現れた女性サウンドクリエイターCha Pariは、同年シングル「OTO」、そしてデビューアルバムの本作をリリースし、その大胆かつポップなエレクトロサウンドでその存在感を露にします。クラシカルな音楽理論を身につけながらそのキャリアにとらわれず先進的なサウンドを志向し、しかもただ実験的なテクノミュージックにとどまらず自身のコーラスワークを前面に押し出してPOPSアーティストとしての意識を持ち合わせている稀有なアーティストとして、国内外で一躍カルトな注目を浴びました。RolandのハードディスクレコーダーVS-1680を最大限に活用したカット&ペースト手法のサウンドはこれまでのシンセサウンドとは一線を画したものであり、オリジナリティあふれる音使いとそのような実験的手法をポップに昇華したそのセンスがこの作品には十二分に詰まっています。
音という音を片っ端からVS-1680に取り込んでエフェクトで加工しまくり再構築したサウンド。これは一見混沌とした不協和音にも感じられるような不気味な雰囲気すら醸し出していますが、それをPOPSとして成立させているのはやはり彼女の歌をはじめとした声の使い方です。幾重にも重ねられエフェクティブに歪めまくったコーラスワークと歌は、いわゆるAuto Tune効果ではとても期待できないものでこれぞテクノロジーを利用したボイスエフェクトの典型と言ってよいでしょう。また、そのサウンド手法が最も生きているのが野太いリズム音色で、腹にずっしり来るようなコシのあるキック&スネアは当時の他のアーティストとは異なった個性であると思います。無軌道に散りばめられた電子音がなぜかぴったり楽曲にハマっている絶妙なトラックには驚かされますが、根底ではあくまでPOPSを追求している彼女の姿勢には個人的に非常に共感を覚えます。結局本作のリリース以来新作が届くことはありませんが、現在でも地道に活動をしているようなので、今後の作品に期待したいところです(といいつつ9年近くたとうとしていますが・・・)。
<Favorite Songs>
・「Lady emperor」
00年代とは思えない野太いリズムによるボトムの効いたポップチューン。VSに取り込んで再構築したと思われる単純なリズムの強烈なインパクトがこの楽曲の魅力です。メインフレーズの高速に散りばめられている電子音も狂っていて楽しいです。
・「OTO」
宗教的な何かを感じさせるような歌が埋もれるような混沌サウンドが持ち味のシングルカット曲。剥き出しの電子音とエフェクトまみれのサンプリング音、細かく刻むチープなリズムなど1つの楽曲にこれでもかと音の要素を詰め込んでいます。
・「She is a witch」
前曲「Asobi」で文字通り音で遊びまくった後に来る本作随一のポップソング。とはいっても相変わらず細かい音の粒が散らかりまくっています。声は加工されまくっていますが単調なシンセパッドが楽曲に唯一落ち着きを与えていて、これがはっきりしたサビのフレーズと相まってこの楽曲をキャッチーなものにしています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (かつてない手法で斬新な電子サウンドをもたらす)
・メロディ ★ (ポップではあるがそれは前衛的なサウンドの中での話)
・リズム ★★★ (この独特な重い音色のリズムはまさにVSマジック?)
・曲構成 ★ (考えていそうでそうでもなさそうな微妙な収録曲)
・個性 ★★★ (この攻撃的なアレンジを女性が手掛けているのに注目)
総合評点: 8点
Cha pari:vocal・all instruments

1.「KOE」 曲・編:Cha pari
2.「Daisy」 詞・曲・編:Cha pari
3.「Lady emperor」 詞・曲・編:Cha pari
4.「Words」 曲・編:Cha pari
5.「Feel」 曲・編:Cha pari
6.「He is a naughty child」 詞・曲・編:Cha pari
7.「Yoakemade」 詞・曲・編:Cha pari
8.「OTO」 詞・曲・編:Cha pari
9.「Smile」 詞・曲・編:Cha pari
10.「Reset」 曲・編:Cha pari
11.「Asobi」 曲・編:Cha pari
12.「She is a witch」 詞・曲・編:Cha pari
13.「UTA」 曲・編:Cha pari
produced by Cha pari
engineered by Cha pari
● 加工された音や声の断片を切り貼りした不思議POPSを構築する女性クリエイターの意欲作
90年代後半から活動を開始、CM音楽の制作などを経て2002年テクノレーベルの老舗Sublime Recordsから彗星のごとく現れた女性サウンドクリエイターCha Pariは、同年シングル「OTO」、そしてデビューアルバムの本作をリリースし、その大胆かつポップなエレクトロサウンドでその存在感を露にします。クラシカルな音楽理論を身につけながらそのキャリアにとらわれず先進的なサウンドを志向し、しかもただ実験的なテクノミュージックにとどまらず自身のコーラスワークを前面に押し出してPOPSアーティストとしての意識を持ち合わせている稀有なアーティストとして、国内外で一躍カルトな注目を浴びました。RolandのハードディスクレコーダーVS-1680を最大限に活用したカット&ペースト手法のサウンドはこれまでのシンセサウンドとは一線を画したものであり、オリジナリティあふれる音使いとそのような実験的手法をポップに昇華したそのセンスがこの作品には十二分に詰まっています。
音という音を片っ端からVS-1680に取り込んでエフェクトで加工しまくり再構築したサウンド。これは一見混沌とした不協和音にも感じられるような不気味な雰囲気すら醸し出していますが、それをPOPSとして成立させているのはやはり彼女の歌をはじめとした声の使い方です。幾重にも重ねられエフェクティブに歪めまくったコーラスワークと歌は、いわゆるAuto Tune効果ではとても期待できないものでこれぞテクノロジーを利用したボイスエフェクトの典型と言ってよいでしょう。また、そのサウンド手法が最も生きているのが野太いリズム音色で、腹にずっしり来るようなコシのあるキック&スネアは当時の他のアーティストとは異なった個性であると思います。無軌道に散りばめられた電子音がなぜかぴったり楽曲にハマっている絶妙なトラックには驚かされますが、根底ではあくまでPOPSを追求している彼女の姿勢には個人的に非常に共感を覚えます。結局本作のリリース以来新作が届くことはありませんが、現在でも地道に活動をしているようなので、今後の作品に期待したいところです(といいつつ9年近くたとうとしていますが・・・)。
<Favorite Songs>
・「Lady emperor」
00年代とは思えない野太いリズムによるボトムの効いたポップチューン。VSに取り込んで再構築したと思われる単純なリズムの強烈なインパクトがこの楽曲の魅力です。メインフレーズの高速に散りばめられている電子音も狂っていて楽しいです。
・「OTO」
宗教的な何かを感じさせるような歌が埋もれるような混沌サウンドが持ち味のシングルカット曲。剥き出しの電子音とエフェクトまみれのサンプリング音、細かく刻むチープなリズムなど1つの楽曲にこれでもかと音の要素を詰め込んでいます。
・「She is a witch」
前曲「Asobi」で文字通り音で遊びまくった後に来る本作随一のポップソング。とはいっても相変わらず細かい音の粒が散らかりまくっています。声は加工されまくっていますが単調なシンセパッドが楽曲に唯一落ち着きを与えていて、これがはっきりしたサビのフレーズと相まってこの楽曲をキャッチーなものにしています。
<評点>
・サウンド ★★★★ (かつてない手法で斬新な電子サウンドをもたらす)
・メロディ ★ (ポップではあるがそれは前衛的なサウンドの中での話)
・リズム ★★★ (この独特な重い音色のリズムはまさにVSマジック?)
・曲構成 ★ (考えていそうでそうでもなさそうな微妙な収録曲)
・個性 ★★★ (この攻撃的なアレンジを女性が手掛けているのに注目)
総合評点: 8点
テーマ : 本日のCD・レコード - ジャンル : 音楽