「UKULELE」 FAIRCHILD
「UKULELE」 (1989 ポニーキャニオン)
FAIRCHILD

<members>
戸田誠司:bass・ukulele・synthesizers・computer・backing vocals
YOU:vocals・backing vocals
川口浩和:guitar・backing vocals
1.「Ukulele #1(Opening)」
2.「シャボン玉ブギ」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
3.「Ukulele #2(いるかのごちそう)」
4.「コスモスがいっぱい」 詞:石川あゆ子 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
5.「Ukulele #3(ねこの親子)」
6.「カンシャク玉の憂鬱」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
7.「Jelly Eyesは甘くない」 詞:石川あゆ子・YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
8.「ウクレレ天国」 詞:YOU・戸田誠司 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
9.「Ukulele #4(魚)」
10.「小さな星」 詞:巻上公一 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
11.「冒険Dungeon」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
12.「Ukulele #5(冬のくま)」
13.「オアシスの妖精」 詞:松本隆 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
14.「Ukulele #6(そんなもんだカンガルー)」
15.「TAN TAN」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
16.「鳥になんかなれない」 詞:覚和歌子 曲:川口浩和・戸田誠司 編:FAIRCHILD
<support musician>
近藤達郎:acoustic piano・electric piano
矢口博康:sax
美尾洋乃:backing vocals
梅崎俊春:synthesizer manipulate
produced by FAIRCHILD
mixing engineered by 飯尾芳史・赤川新一
recording engineered by 飯尾芳史
● ウクレレソングをアクセントによりバンドらしさを前面に押し出してきたコンセプチュアルな3rdアルバム
ハイテクノロジーなニューウェーブポップで一部リスナーに好評を博したSHI-SHONENからポップネスを抜き取ったようなサウンドでデビューした戸田誠司率いるFAIRCHAILD。ニューウェーブ色が抜けきらなかった1stアルバム「YOURS」やキャッチーなポップソングの連発で名盤の誉れ高い2nd「Flower Burger」を立て続けにリリースした彼らは、2ndアルバムと同年にさらに間髪入れずに3rdアルバムの制作に取りかかります。制作意欲旺盛な彼らは3枚目にしてコンセプトアルバムに着手、ウクレレをフィーチャーした小曲を間に挟み込みながらバンドブームの真っ只中にあってさらに売れ線POPSに挑戦するかのようなキャッチーな楽曲を盛り込んでいくことになります。こうして完成した本作ですが、期待に違わぬクオリティを兼ね備えながら、完全なる売れ線ポップバンドへの脱皮にはもう一段階必要であることを感じさせる過渡期的な印象も感じられる、上昇気流に乗りつつある雰囲気がまとわりついた好作品となっています。
本作のサウンド面では非常にプログラマブルな要素が強かった2ndアルバムまでのデジタルサウンドから漸進的にディストーションギターの目立つバンドサウンドに変化した様子が窺えます。もちろんそれまでと比較して、ということですので細かい部分でのシーケンスはこれまでと同様期待できるものに仕上がっていますが、既にそのようなギミックに頼らないほどの良い意味でのバンドらしさが感じられる部分が本作の大きなポイントとなっています。そして本作からはこれまでゲスト参加も多かったギターパートも川口浩和が独り立ちし(ラストの「鳥になんかなれない」では作曲まで関わっています)、Michael Shenkerを信奉する彼らしいハードロックテイストのギターフレーズがグイグイ幅を利かせるようになりました。特に得意(?)のギターソロでは「小さな星」等でキレのあるフレーズを連発しています。YOUのヴォーカルはまだまだキャラクターが開花しきれていない印象ですが、「シャボン玉ブギ」や数々のウクレレソングあたりではその本性を垣間見せようとしています。しかし名曲度の高い「Jelly Eyesは甘くない」「小さな星」「オアシスの妖精」等では依然としてメルヘン王国の住人の如し大人しさで聴き手を誘惑しています。そして当然ながら彼らをしっかり土台から支える戸田誠司のメロディ構築力&サウンドメイクの安定感は、売れ線へのチャレンジという側面も加味した上でも十分評価できるものであり、その勇気ある挑戦は翌年のシングル「コールバック」「探してるのにぃ」のスマッシュヒットで報われていくことになります。
<Favorite Songs>
・「カンシャク玉の憂鬱」
思わず踊り出したくなるようなポップネスが光る高速打ち込みラテンポップチューン。軽快な2ビートに細かく打ち込まれたパーカッションが飛び交い、その上からシンセブラスやカッティングギターが畳み掛けるサウンドは軽快の一言。そして間奏からの矢口サックスの音の乾き具合が絶妙です。
・「Jelly Eyesは甘くない」
本作随一のロマンティックなキラーソング。印象的なキラーフレーズによるサビが大々的にフィーチャーされる一発勝負的な構成ですが、それだけでも盛り上がれるほどの訴求力のあるメロディであると思います。川口のギターソロも気持ち良いフレーズを奏でています。
・「小さな星」
他者提供となると途端にメルヘンティックに変貌する巻上公一作詞のリードチューン。シリアスなスタートからサビでは救いの感じる癒しフレーズに変化するセンスあふれるメロディ構成が特徴です。SHI-SHONEN時代から定評のあるジャストな打ち込みリズムがテクノ魂をかすかに残すものの、バンドとしての一体感も感じるこの楽曲のハイライトは、切迫感のある川口のギターソロ。このソロフレーズは申し分なくカッコ良いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (打ち込みの共存をバンドブーム寄りに巧みに料理)
・メロディ ★★★ (ポップソングとしての隙のないフレーズ作りに一日の長)
・リズム ★★ (この手のサウンドで全編打ち込みドラムは珍しい)
・曲構成 ★★ (3曲が飛び抜けており他楽曲にももうひと頑張り欲しい)
・個性 ★★ (一皮剥けるまでにはもう一歩だが準備は既にできている)
総合評点: 7点
FAIRCHILD

<members>
戸田誠司:bass・ukulele・synthesizers・computer・backing vocals
YOU:vocals・backing vocals
川口浩和:guitar・backing vocals
1.「Ukulele #1(Opening)」
2.「シャボン玉ブギ」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
3.「Ukulele #2(いるかのごちそう)」
4.「コスモスがいっぱい」 詞:石川あゆ子 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
5.「Ukulele #3(ねこの親子)」
6.「カンシャク玉の憂鬱」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
7.「Jelly Eyesは甘くない」 詞:石川あゆ子・YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
8.「ウクレレ天国」 詞:YOU・戸田誠司 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
9.「Ukulele #4(魚)」
10.「小さな星」 詞:巻上公一 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
11.「冒険Dungeon」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
12.「Ukulele #5(冬のくま)」
13.「オアシスの妖精」 詞:松本隆 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
14.「Ukulele #6(そんなもんだカンガルー)」
15.「TAN TAN」 詞:YOU 曲:戸田誠司 編:FAIRCHILD
16.「鳥になんかなれない」 詞:覚和歌子 曲:川口浩和・戸田誠司 編:FAIRCHILD
<support musician>
近藤達郎:acoustic piano・electric piano
矢口博康:sax
美尾洋乃:backing vocals
梅崎俊春:synthesizer manipulate
produced by FAIRCHILD
mixing engineered by 飯尾芳史・赤川新一
recording engineered by 飯尾芳史
● ウクレレソングをアクセントによりバンドらしさを前面に押し出してきたコンセプチュアルな3rdアルバム
ハイテクノロジーなニューウェーブポップで一部リスナーに好評を博したSHI-SHONENからポップネスを抜き取ったようなサウンドでデビューした戸田誠司率いるFAIRCHAILD。ニューウェーブ色が抜けきらなかった1stアルバム「YOURS」やキャッチーなポップソングの連発で名盤の誉れ高い2nd「Flower Burger」を立て続けにリリースした彼らは、2ndアルバムと同年にさらに間髪入れずに3rdアルバムの制作に取りかかります。制作意欲旺盛な彼らは3枚目にしてコンセプトアルバムに着手、ウクレレをフィーチャーした小曲を間に挟み込みながらバンドブームの真っ只中にあってさらに売れ線POPSに挑戦するかのようなキャッチーな楽曲を盛り込んでいくことになります。こうして完成した本作ですが、期待に違わぬクオリティを兼ね備えながら、完全なる売れ線ポップバンドへの脱皮にはもう一段階必要であることを感じさせる過渡期的な印象も感じられる、上昇気流に乗りつつある雰囲気がまとわりついた好作品となっています。
本作のサウンド面では非常にプログラマブルな要素が強かった2ndアルバムまでのデジタルサウンドから漸進的にディストーションギターの目立つバンドサウンドに変化した様子が窺えます。もちろんそれまでと比較して、ということですので細かい部分でのシーケンスはこれまでと同様期待できるものに仕上がっていますが、既にそのようなギミックに頼らないほどの良い意味でのバンドらしさが感じられる部分が本作の大きなポイントとなっています。そして本作からはこれまでゲスト参加も多かったギターパートも川口浩和が独り立ちし(ラストの「鳥になんかなれない」では作曲まで関わっています)、Michael Shenkerを信奉する彼らしいハードロックテイストのギターフレーズがグイグイ幅を利かせるようになりました。特に得意(?)のギターソロでは「小さな星」等でキレのあるフレーズを連発しています。YOUのヴォーカルはまだまだキャラクターが開花しきれていない印象ですが、「シャボン玉ブギ」や数々のウクレレソングあたりではその本性を垣間見せようとしています。しかし名曲度の高い「Jelly Eyesは甘くない」「小さな星」「オアシスの妖精」等では依然としてメルヘン王国の住人の如し大人しさで聴き手を誘惑しています。そして当然ながら彼らをしっかり土台から支える戸田誠司のメロディ構築力&サウンドメイクの安定感は、売れ線へのチャレンジという側面も加味した上でも十分評価できるものであり、その勇気ある挑戦は翌年のシングル「コールバック」「探してるのにぃ」のスマッシュヒットで報われていくことになります。
<Favorite Songs>
・「カンシャク玉の憂鬱」
思わず踊り出したくなるようなポップネスが光る高速打ち込みラテンポップチューン。軽快な2ビートに細かく打ち込まれたパーカッションが飛び交い、その上からシンセブラスやカッティングギターが畳み掛けるサウンドは軽快の一言。そして間奏からの矢口サックスの音の乾き具合が絶妙です。
・「Jelly Eyesは甘くない」
本作随一のロマンティックなキラーソング。印象的なキラーフレーズによるサビが大々的にフィーチャーされる一発勝負的な構成ですが、それだけでも盛り上がれるほどの訴求力のあるメロディであると思います。川口のギターソロも気持ち良いフレーズを奏でています。
・「小さな星」
他者提供となると途端にメルヘンティックに変貌する巻上公一作詞のリードチューン。シリアスなスタートからサビでは救いの感じる癒しフレーズに変化するセンスあふれるメロディ構成が特徴です。SHI-SHONEN時代から定評のあるジャストな打ち込みリズムがテクノ魂をかすかに残すものの、バンドとしての一体感も感じるこの楽曲のハイライトは、切迫感のある川口のギターソロ。このソロフレーズは申し分なくカッコ良いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (打ち込みの共存をバンドブーム寄りに巧みに料理)
・メロディ ★★★ (ポップソングとしての隙のないフレーズ作りに一日の長)
・リズム ★★ (この手のサウンドで全編打ち込みドラムは珍しい)
・曲構成 ★★ (3曲が飛び抜けており他楽曲にももうひと頑張り欲しい)
・個性 ★★ (一皮剥けるまでにはもう一歩だが準備は既にできている)
総合評点: 7点
「世界の縁」 ウニタ・ミニマ
「世界の縁」(1989 Pin)
ウニタ・ミニマ

<members>
近藤達郎:vocals・keyboards・piano・accordion・indian banjo・mini piano・thumb piano etc
れいち:vocals・drums・xylophone・keyboards etc
1.「シャツ」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
2.「場所」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
3.「空」 詞:れいち 曲・編:ウニタ・ミニマ
4.「走る」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
5.「夜」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
6.「パレード」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
7.「微笑む」 詞・曲:近藤達郎 編:ウニタ・ミニマ
8.「世界の縁」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
produced by ウニタ・ミニマ・藤井暁
engineered by 藤井暁
● マニアックなセンスが光る複雑なリズムとミニマルなピアノをバックに真摯な歌で爪痕を残した才能溢れる男女ユニットの唯一作
チャクラのメンバーとしてその名を知られるようになってから、小川美潮界隈のみならず立花ハジメ、土屋昌巳や高橋幸宏等のテクノ&ニューウェーブ系作品への参加、その他多くのアーティストのサポートやCM音楽をこなすなど、引く手数多のキーボーディストであった近藤達郎は、前述の活動において培った音楽的センスを開放するためのソロ活動を地道に始め、1984年のMOON RIDERS系インディーズアーティストを集めたオムニバスアルバム「陽気な若き博物館員たち」では、「Ballet Machinique」「ぼくら」の2曲でソロ名義で参加、そのシンプルかつミニマル+ポリリズムな前衛的サウンドは異彩を放っていました。その中でも「ぼくら」は歌モノとしての独特な存在感を醸し出していましたが、そこでゲストヴォーカルとして参加していたのが、仙波清彦率いる強烈な個性を放つ和風ニューウェーブバンド、はにわちゃんのドラマー兼ヴォーカリストのれいちで、この楽曲の発展形として近藤とれいちの男女デュオとしてのユニットとして、ウニタ・ミニマが結成されることになります。しかしながら両者共に優れた演奏力を備えた引っ張りだこのミュージシャンということもあって、80年代の多忙な時期の合間に地道にライブ活動を続けた結果、音源としてのリリースは80年代も終わりを迎えた89年まで待たなければならなかったわけです。
こうして生まれた本作ですが、2人でシーケンサーやテープに頼らずどこまでできるか、をテーマにした活動というだけあって、その音像はシンプルの一言。しかしミニマルかつプログレッシブな展開を見せる楽曲構成があいまって、そのドラムパターンは複雑極まりなく、転調を重ねまくるコードワークはまさに「一筋縄ではいかない」という言葉を象徴するかのようです。基本としてはピアノとドラム、そして両者がユニゾンで、時には輪唱で掛け合いながら歌いまくるという、純粋な共同作業スタイルですが、楽曲によってはチープなシンセサイザーで味付けして音世界にうっすらと色を加えています。そしてそのシンプルな音像に対する絶妙な色の加え方(一気にエレクトリックワールドに引き込んでいく)が彼らのセンスの見せ所であり、彼らの類稀な個性の源と言えるでしょう。このあたりは故・藤井暁のエンジニアリングによる部分も大きいのですが、彼らの独創的なミニマルポップとエレクトリックの邂逅によって非常に包容力のある音響に仕上がっていると思います。結局のところこのユニットとしてのレコーディング作品は本作のみにとどまりましたが、近藤達郎はその後も大友良英やくじら、原マスミとの共同作業のほか多数のアーティストに請われる形で現在も現役バリバリに活躍していますし、れいちも夫の清水一登とのユニットAREPOSでマイペースに活動していますので、2人ともそれぞれに音楽界で確かな足跡を残しています。そして本作は2016年、未発表音源と共にまさかのリマスターで再発されましたので、再評価の一助としていただければ幸いです(未発表ライブ音源の「昼」は絶品です)。
<Favorite Songs>
・「シャツ」
細かいハイハット&タムワークが魅力的なオープニングナンバー。決して表には出てこなくても存在感たっぷりのノイズなアトモスフィアと、間奏の不気味な2種類のシンセソロとコーラスワークに、テクノロジーを感じさせます。
・「パレード」
8分音符を刻むキーボードリフに乗って4連のスネアが強烈に主張するストレンジポップ。中盤からは絶妙にシンセな味付けが施されて音風景を広げていきます。リピートが多いメロディにあってサウンド面での抜き差しの妙が楽しめるテクニカルな楽曲です。
・「微笑む」
オリエンタル調なゆったりしたテンポに癒しを感じながらもドラムの音量が大き目に主張する楽曲。1周目の間奏からはアトモスフィアなシンセが大活躍しており、ナチュラルに楽曲に入り込みながら複雑なミニマルと転調の狭間でエレクトリックに侵食していくサウンドデザインが巧みです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ピアノ&ドラムの隙間に絶妙にシンセが流れ込む)
・メロディ ★ (歌モノとして成立するがやや捻り過ぎな面も)
・リズム ★★★ (生音を大事にしながらもテクニックに疑いなし)
・曲構成 ★ (大まかなタイプで分けると似たような楽曲が続く)
・個性 ★★★ (技巧派の演奏と真摯なユニゾン歌唱に圧倒される)
総合評点: 7点
ウニタ・ミニマ

<members>
近藤達郎:vocals・keyboards・piano・accordion・indian banjo・mini piano・thumb piano etc
れいち:vocals・drums・xylophone・keyboards etc
1.「シャツ」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
2.「場所」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
3.「空」 詞:れいち 曲・編:ウニタ・ミニマ
4.「走る」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
5.「夜」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
6.「パレード」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
7.「微笑む」 詞・曲:近藤達郎 編:ウニタ・ミニマ
8.「世界の縁」 詞:近藤達郎 曲・編:ウニタ・ミニマ
produced by ウニタ・ミニマ・藤井暁
engineered by 藤井暁
● マニアックなセンスが光る複雑なリズムとミニマルなピアノをバックに真摯な歌で爪痕を残した才能溢れる男女ユニットの唯一作
チャクラのメンバーとしてその名を知られるようになってから、小川美潮界隈のみならず立花ハジメ、土屋昌巳や高橋幸宏等のテクノ&ニューウェーブ系作品への参加、その他多くのアーティストのサポートやCM音楽をこなすなど、引く手数多のキーボーディストであった近藤達郎は、前述の活動において培った音楽的センスを開放するためのソロ活動を地道に始め、1984年のMOON RIDERS系インディーズアーティストを集めたオムニバスアルバム「陽気な若き博物館員たち」では、「Ballet Machinique」「ぼくら」の2曲でソロ名義で参加、そのシンプルかつミニマル+ポリリズムな前衛的サウンドは異彩を放っていました。その中でも「ぼくら」は歌モノとしての独特な存在感を醸し出していましたが、そこでゲストヴォーカルとして参加していたのが、仙波清彦率いる強烈な個性を放つ和風ニューウェーブバンド、はにわちゃんのドラマー兼ヴォーカリストのれいちで、この楽曲の発展形として近藤とれいちの男女デュオとしてのユニットとして、ウニタ・ミニマが結成されることになります。しかしながら両者共に優れた演奏力を備えた引っ張りだこのミュージシャンということもあって、80年代の多忙な時期の合間に地道にライブ活動を続けた結果、音源としてのリリースは80年代も終わりを迎えた89年まで待たなければならなかったわけです。
こうして生まれた本作ですが、2人でシーケンサーやテープに頼らずどこまでできるか、をテーマにした活動というだけあって、その音像はシンプルの一言。しかしミニマルかつプログレッシブな展開を見せる楽曲構成があいまって、そのドラムパターンは複雑極まりなく、転調を重ねまくるコードワークはまさに「一筋縄ではいかない」という言葉を象徴するかのようです。基本としてはピアノとドラム、そして両者がユニゾンで、時には輪唱で掛け合いながら歌いまくるという、純粋な共同作業スタイルですが、楽曲によってはチープなシンセサイザーで味付けして音世界にうっすらと色を加えています。そしてそのシンプルな音像に対する絶妙な色の加え方(一気にエレクトリックワールドに引き込んでいく)が彼らのセンスの見せ所であり、彼らの類稀な個性の源と言えるでしょう。このあたりは故・藤井暁のエンジニアリングによる部分も大きいのですが、彼らの独創的なミニマルポップとエレクトリックの邂逅によって非常に包容力のある音響に仕上がっていると思います。結局のところこのユニットとしてのレコーディング作品は本作のみにとどまりましたが、近藤達郎はその後も大友良英やくじら、原マスミとの共同作業のほか多数のアーティストに請われる形で現在も現役バリバリに活躍していますし、れいちも夫の清水一登とのユニットAREPOSでマイペースに活動していますので、2人ともそれぞれに音楽界で確かな足跡を残しています。そして本作は2016年、未発表音源と共にまさかのリマスターで再発されましたので、再評価の一助としていただければ幸いです(未発表ライブ音源の「昼」は絶品です)。
<Favorite Songs>
・「シャツ」
細かいハイハット&タムワークが魅力的なオープニングナンバー。決して表には出てこなくても存在感たっぷりのノイズなアトモスフィアと、間奏の不気味な2種類のシンセソロとコーラスワークに、テクノロジーを感じさせます。
・「パレード」
8分音符を刻むキーボードリフに乗って4連のスネアが強烈に主張するストレンジポップ。中盤からは絶妙にシンセな味付けが施されて音風景を広げていきます。リピートが多いメロディにあってサウンド面での抜き差しの妙が楽しめるテクニカルな楽曲です。
・「微笑む」
オリエンタル調なゆったりしたテンポに癒しを感じながらもドラムの音量が大き目に主張する楽曲。1周目の間奏からはアトモスフィアなシンセが大活躍しており、ナチュラルに楽曲に入り込みながら複雑なミニマルと転調の狭間でエレクトリックに侵食していくサウンドデザインが巧みです。
<評点>
・サウンド ★★★ (ピアノ&ドラムの隙間に絶妙にシンセが流れ込む)
・メロディ ★ (歌モノとして成立するがやや捻り過ぎな面も)
・リズム ★★★ (生音を大事にしながらもテクニックに疑いなし)
・曲構成 ★ (大まかなタイプで分けると似たような楽曲が続く)
・個性 ★★★ (技巧派の演奏と真摯なユニゾン歌唱に圧倒される)
総合評点: 7点
「SHAMBARA」 SHAMBARA
「SHAMBARA」 (1989 ポリドール)
SHAMBARA

<members>
桜井哲夫:electric bass
神保彰:drums・percussion
古川望:electric guitar
梁邦彦:keyboards
国分友里恵:vocal
秋元薫:vocal
1.「ON THE EARTH」 詞:国分友里恵 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
2.「恋の瞬間〜Can’t stop my love」
詞:国分友里恵・秋元薫 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
3.「TAKE ME HIGHER」 詞:国分友里恵 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
4.「SOLID DANCE」 詞:秋元薫 曲・編:古川望
5.「LOVIN’ YOU」 詞:秋元薫 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
6.「DELICIOUS LOVER」 詞:秋元薫 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
7.「MONOCHROME」 詞:国分友里恵 曲:石黒彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
8.「Aquariumの都会」 詞:秋元薫 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
9.「HURRY UP TO YOU」 詞:秋元薫 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
10.「In The Universe」
詞:国分友里恵 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
produced by 神保彰・桜井哲夫
mixing engineered by 北川照明
recording engineered by 北川照明・松藤暢彦
● CASIOPEAのリズム隊が濃厚な音の壁を形成してPOPS界に殴り込んだ豪華実力派ユニット唯一のアルバム
1970年代末にデビューしたフュージョンバンドCASIOPEAは1980年代に黄金時代を迎え日本を代表する大御所バンドに成長していくわけですが、その超絶技巧に支えられたバンドをリズム隊として底辺から支え続けたのがベースの桜井哲夫とドラムの神保彰でした。スラップを多用したアクロバティックな演奏に定評のあった桜井と随所にエレクトリックドラムを取り入れた手数の多さが魅力の神保のコンビは、スーパーバンドのボトムラインと呼ぶにふさわしい実力を兼ね備えていました。しかしバンドというものは長年活動していくとソロ活動の時期も迎えるわけで、88年の大規模な全国ツアーを経て一区切りついたCASIOPEAはメンバー各自独自に活動を始めていきますが、桜井と神保の2人は彼らがプロデューサーとなって新たなプロジェクトを開始します。SHAMBARAと名付けられたこのプロジェクトは、日本語ヴォーカルによるPOPSを標榜したもので、既にソロ歌手として活躍していた国分友里恵と秋元薫という2人の実力派女性ヴォーカルを従えて、テクニカルな演奏と安定した歌唱力との融合を図った玄人好みのポップミュージックとして、89年にバンド名を冠した本作をリリースすることになります。
当然桜井&神保のリズム隊なので期待通り派手なリズムが満載の本作ですが、80年代末ということもあり過剰のピークは過ぎた印象で、サウンド全体とすれば安定感のある大人の仕上がりを感じさせます。もちろんギミックは随所に挿入、特に桜井のスラップによるフィルインはそれぞれの楽曲のアクセントになっていると共に見せ場でもあります。しかしそれ以上に印象的なのはAOR感覚豊かなメロディアスな楽曲群で、確かにこうしたフュージョン畑のプレイヤーがPOPSに挑戦すると安定感抜群のシティポップに落ち着くことはままあるのですが、本作も期待を裏切らない高水準の洋楽ライクなAORな匂いを強く感じることができます。そのあたりは国分友里恵のソロのサウンドワークを手掛ける岩本正樹が編曲に加わっていることもあるでしょうし、ポップ感覚やエレクトリックなサウンドデザインにはメンバーである浜田省吾バックバンドの梁邦彦や編曲陣の1人である石黒彰(後に聖飢魔IIのサポートキーボード、レクターH.伯爵として活躍)のセンスによる部分も大きいでしょう。特に梁邦彦の強烈なシンセブラスは本作のサウンド面でも主導権を握っている感がありますし、古川望もジャズプログレ畑ながらロックテイストのギターワークを厭わず、サウンドの幅を広げることに成功しています。このように桜井&神保のネームバリューに頼らず、各々が持ち味を生かし切っているからこそ、本作のような安定感のある演奏が得られているものと思われます。
しかしこのユニットは思わぬ出来事の引き金となってしまいます。SHAMBARAとしての活動がCASIOPEAの活動に支障を来すと危惧したCASIOPEAの他のメンバーとの軋轢が生じた桜井と神保は、CASIOPEAを脱退することになり黄金時代は突然の終焉を迎えることになります。しかし2人はその後SHAMBARAを続けることなく、そのまま2人のプロデューサーズユニットとなり JIMSAKUとして90年代を共にすることになります。不遇と時代の趨勢が重なり結局自然消滅してしまったSHAMBARAですが、現在もそのテクニカルな演奏及び歌唱を楽しめるので、復活を望むのは難しいとはいえ、まずは作品を残してくれたことに感謝したいと思います。
<Favorite Songs>
・「恋の瞬間〜Can’t stop my love」
力強いリズムに似合わずメロディアスなシティポップ感覚豊かなフレーズが楽しめる本作のリードチューン。古川望のロックなギターや国分&秋元のパワフルなヴォーカルはその派手なリズムにマッチしていますが、どこか裏ぶれたサウンドに終始しているのは1989年という時代が成せる空気感のように思えます。
・「SOLID DANCE」
本作唯一の古川望作編曲のミディアムチューン。ファンク風のダンサブルリズムに目立つシンセブラスのフレーズが引っ張りながら、全体的に柔らかいシンセパッドが支配するからこそ得られるこの安定感は、まさしく良質なシティポップそのものです。熱いギターソロも聴き所です。
・「DELICIOUS LOVER」
本作の中でも最高にビートの強いデジタルファンクPOPS。派手なシンセブラスと圧の強いヴォーカルは食傷気味ながらも、やはりインパクトの強い桜井のテクニカルなスラップは血湧き肉踊るといった印象です。
<評点>
・サウンド ★★★ (各々のフレーズの置き方には流石に熟練を感じる)
・メロディ ★ (ポップに攻める意思は感じるが普遍に陥った感も)
・リズム ★★★ (彼らだからこそもう少し派手に冒険してもよいかも)
・曲構成 ★★ (緩急織り交ぜ技巧的には問題ないがそれ以上もない)
・個性 ★ (技巧が練られ過ぎてそれ以上のインパクトに欠ける)
総合評点: 7点
SHAMBARA

<members>
桜井哲夫:electric bass
神保彰:drums・percussion
古川望:electric guitar
梁邦彦:keyboards
国分友里恵:vocal
秋元薫:vocal
1.「ON THE EARTH」 詞:国分友里恵 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
2.「恋の瞬間〜Can’t stop my love」
詞:国分友里恵・秋元薫 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
3.「TAKE ME HIGHER」 詞:国分友里恵 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
4.「SOLID DANCE」 詞:秋元薫 曲・編:古川望
5.「LOVIN’ YOU」 詞:秋元薫 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
6.「DELICIOUS LOVER」 詞:秋元薫 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
7.「MONOCHROME」 詞:国分友里恵 曲:石黒彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
8.「Aquariumの都会」 詞:秋元薫 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
9.「HURRY UP TO YOU」 詞:秋元薫 曲:神保彰 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
10.「In The Universe」
詞:国分友里恵 曲:桜井哲夫 編:SHAMBARA・岩本正樹・石黒彰
produced by 神保彰・桜井哲夫
mixing engineered by 北川照明
recording engineered by 北川照明・松藤暢彦
● CASIOPEAのリズム隊が濃厚な音の壁を形成してPOPS界に殴り込んだ豪華実力派ユニット唯一のアルバム
1970年代末にデビューしたフュージョンバンドCASIOPEAは1980年代に黄金時代を迎え日本を代表する大御所バンドに成長していくわけですが、その超絶技巧に支えられたバンドをリズム隊として底辺から支え続けたのがベースの桜井哲夫とドラムの神保彰でした。スラップを多用したアクロバティックな演奏に定評のあった桜井と随所にエレクトリックドラムを取り入れた手数の多さが魅力の神保のコンビは、スーパーバンドのボトムラインと呼ぶにふさわしい実力を兼ね備えていました。しかしバンドというものは長年活動していくとソロ活動の時期も迎えるわけで、88年の大規模な全国ツアーを経て一区切りついたCASIOPEAはメンバー各自独自に活動を始めていきますが、桜井と神保の2人は彼らがプロデューサーとなって新たなプロジェクトを開始します。SHAMBARAと名付けられたこのプロジェクトは、日本語ヴォーカルによるPOPSを標榜したもので、既にソロ歌手として活躍していた国分友里恵と秋元薫という2人の実力派女性ヴォーカルを従えて、テクニカルな演奏と安定した歌唱力との融合を図った玄人好みのポップミュージックとして、89年にバンド名を冠した本作をリリースすることになります。
当然桜井&神保のリズム隊なので期待通り派手なリズムが満載の本作ですが、80年代末ということもあり過剰のピークは過ぎた印象で、サウンド全体とすれば安定感のある大人の仕上がりを感じさせます。もちろんギミックは随所に挿入、特に桜井のスラップによるフィルインはそれぞれの楽曲のアクセントになっていると共に見せ場でもあります。しかしそれ以上に印象的なのはAOR感覚豊かなメロディアスな楽曲群で、確かにこうしたフュージョン畑のプレイヤーがPOPSに挑戦すると安定感抜群のシティポップに落ち着くことはままあるのですが、本作も期待を裏切らない高水準の洋楽ライクなAORな匂いを強く感じることができます。そのあたりは国分友里恵のソロのサウンドワークを手掛ける岩本正樹が編曲に加わっていることもあるでしょうし、ポップ感覚やエレクトリックなサウンドデザインにはメンバーである浜田省吾バックバンドの梁邦彦や編曲陣の1人である石黒彰(後に聖飢魔IIのサポートキーボード、レクターH.伯爵として活躍)のセンスによる部分も大きいでしょう。特に梁邦彦の強烈なシンセブラスは本作のサウンド面でも主導権を握っている感がありますし、古川望もジャズプログレ畑ながらロックテイストのギターワークを厭わず、サウンドの幅を広げることに成功しています。このように桜井&神保のネームバリューに頼らず、各々が持ち味を生かし切っているからこそ、本作のような安定感のある演奏が得られているものと思われます。
しかしこのユニットは思わぬ出来事の引き金となってしまいます。SHAMBARAとしての活動がCASIOPEAの活動に支障を来すと危惧したCASIOPEAの他のメンバーとの軋轢が生じた桜井と神保は、CASIOPEAを脱退することになり黄金時代は突然の終焉を迎えることになります。しかし2人はその後SHAMBARAを続けることなく、そのまま2人のプロデューサーズユニットとなり JIMSAKUとして90年代を共にすることになります。不遇と時代の趨勢が重なり結局自然消滅してしまったSHAMBARAですが、現在もそのテクニカルな演奏及び歌唱を楽しめるので、復活を望むのは難しいとはいえ、まずは作品を残してくれたことに感謝したいと思います。
<Favorite Songs>
・「恋の瞬間〜Can’t stop my love」
力強いリズムに似合わずメロディアスなシティポップ感覚豊かなフレーズが楽しめる本作のリードチューン。古川望のロックなギターや国分&秋元のパワフルなヴォーカルはその派手なリズムにマッチしていますが、どこか裏ぶれたサウンドに終始しているのは1989年という時代が成せる空気感のように思えます。
・「SOLID DANCE」
本作唯一の古川望作編曲のミディアムチューン。ファンク風のダンサブルリズムに目立つシンセブラスのフレーズが引っ張りながら、全体的に柔らかいシンセパッドが支配するからこそ得られるこの安定感は、まさしく良質なシティポップそのものです。熱いギターソロも聴き所です。
・「DELICIOUS LOVER」
本作の中でも最高にビートの強いデジタルファンクPOPS。派手なシンセブラスと圧の強いヴォーカルは食傷気味ながらも、やはりインパクトの強い桜井のテクニカルなスラップは血湧き肉踊るといった印象です。
<評点>
・サウンド ★★★ (各々のフレーズの置き方には流石に熟練を感じる)
・メロディ ★ (ポップに攻める意思は感じるが普遍に陥った感も)
・リズム ★★★ (彼らだからこそもう少し派手に冒険してもよいかも)
・曲構成 ★★ (緩急織り交ぜ技巧的には問題ないがそれ以上もない)
・個性 ★ (技巧が練られ過ぎてそれ以上のインパクトに欠ける)
総合評点: 7点
「BLOND SAURUS」 REBECCA
「BLOND SAURUS」 (1989 CBSソニー)
REBECCA

<members>
NOKKO:vocal・chorus
土橋安騎夫:synthesizers・computer programming・chorus
高橋教之:electric bass・computer programming・chorus
小田原豊:drums
1.「BLOND SAURUS」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫・高橋教之 編:REBECCA
2.「VANITY ANGEL」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
3.「NAVY BLUE」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
4.「COTTON LOVE」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
5.「LITTLE DARLING」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
6.「LADY LADY LADY」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
7.「SUPER GIRL」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
8.「NAKED COLOR」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
9.「WHEN YOU DANCE WITH ME」 詞:Kim O’Leary 曲:NOKKO 編:REBECCA
10.「ONE WAY OR ANOTHER」
詞:M. Kessley・M.L. Kortes 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
<support musician>
Mike “Dino” Campbell:guitar
是永巧一:guitars
Alan Friedman:percussion・drum programming・sampling/Dinosaur consultant
Fred Maher:percussion・drum programming
中島オバヲ:percussion
Jeff Smith:sax
Toots Thielemans:harmonica
Fonzi Thornton:background vox
Tawatha Agee:background vox
Michelle Oobbs:background vox
Rodney Assue:bass voice instrument
大山曜:synthesizer manipulate
produced by REBECCA
co-produced by Francois Kevorkian
mixing engineered by Michael Hutchinson・Francois Kevorkian
recording engineered by 大森政人・宮島哲博・佐久間よしのり・天童淳・Tad Goto・中村悦弘・Bill Esses・Ron Saint Germain
● 東京&ニューヨーク録音によりバンドの終焉を感じさせる頂点に君臨しつつ潔く解散を決意したラストアルバム
1980年代後期のバンドブームにあってガールズロックの先頭を走り次代を担ったバンドとしてスターロードを邁進していたREBECCA(レベッカ)も、80年代末期となるといよいよバンドの終焉を迎えつつありました。バンドの顔として期待以上の役割を果たし、ロック少女のカリスマにまで登り詰めていたNOKKOと、メンバーチェンジの頻度が高かった初期からもそのサウンドの要としての活躍ぶりは変わらなかった土橋安騎夫の音楽的方向性の違いは、肥大化したスターバンドにありがちな迷走に陥らせるのに十分でした。そんな89年にリリースされた7枚目のアルバムである本作は、ニューヨークと東京の2カ所でのレコーディングを敢行といえば聞こえは良いものの、それはもともとアメリカ進出志向が強かったNOKKOと、レベッカという稀有なバンドの存続を図ろうとした土橋の意向が見え隠れするようで、なんとも複雑な気分のする作品となっています。
そのようないわくつきの本作ですが、サウンド面ではサポートメンバーにsynthesizer manipulatorの大山曜が参加したこともありプログラミングを多用したダンサブルチューンが中心となっています。当然小田原豊がドラムなのでリズムトラックは芯のあるものになってはいますが、音色の加工もふんだんに施されており、その処理はダンスチューン仕様という印象です。そのあたりは共同プロデューサーであるFrancois Kevorkianの色と言えるかもしれません。そんな本作の中でも「VANITY ANGEL」や「COTTON LOVE」、「SUPER GIRL」のようなかつてのレベッカたらしめた王道ガールズロックに回帰したような楽曲を多数収録しているのは、再びバンドとしての結束を確かめていたように思えるのですが、対照的に「NAVY BLUE」や「LADY LADY LADY」、「WHEN YOU DANCE WITH ME」あたりになると典型的な洋楽志向の打ち込みダンスポップで、次のフェーズへ向かおうとしているNOKKOの意思表明のような形になってしまっているので、その両極端な音世界が聴き手にとっては散漫な印象を受けてしまうでしょうし、決してサウンド面でのクオリティは低くないにもかかわらず正当な評価を受けられない要因にもなっていると思われます。ラストの「ONE WAY OR ANOTHER」は「VANITY ANGEL」の英語バージョンという肩透かしで、完全にNOKKOの心が離れてしまった感もあり諦観せざるを得ないエンディングとなった本作というわけで、ツアー終了後活動休止→解散と至ることになるREBECCAですが、時が経てば何とやらということで、数度の再結成を果たすこととなります。
<Favorite Songs>
・「BLOND SAURUS」
パワフルなドラムの導かれきらびやかなシンセがフィーチャーされた気合いの乗ったREBECCA'sロックチューン。音の分離も良くシンセベースの深みもあり、サウンド面の充実ぶりは集大成的なものも感じられます。
・「VANITY ANGEL」
洗練されたメロディとサウンドで疾走感も衰えを知らない先行シングル。ベル系とパッド系の音色により緩急がつけられた土橋のシンセワークは王道のREBECCAサウンドそのものですが、特にこの楽曲ではその音の置き方のテクニックが際立っているように思われます。
・「WHEN YOU DANCE WITH ME」
本作中ただ1曲のNOKKO作曲の英語詞ダンスチューン。軽快なリズムギターとシンセベースに乗った外タレコーラスに乗ったヴォーカルは、既にREBECCA色は失い完全にソロアーティスト然としています。リズムボックスのリズム隊はこれまでのREBECCA楽曲にはなかったもので、この楽曲で解散は決定的になったかもしれません。しかし楽曲単体としてはダンサブルPOPSとして質は高いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (多彩なシンセワークとエフェクト処理は匠の域に)
・メロディ ★ (名曲度は落ちたものの安定感は感じられる)
・リズム ★★ (生ドラムはパワフルだが洗練されたのが逆に薄味に)
・曲構成 ★ (特に後半は洋楽志向が強く感じられ個性を失う)
・個性 ★ (志向が散漫な印象はあるが最後の意地は見せたか)
総合評点: 6点
REBECCA

<members>
NOKKO:vocal・chorus
土橋安騎夫:synthesizers・computer programming・chorus
高橋教之:electric bass・computer programming・chorus
小田原豊:drums
1.「BLOND SAURUS」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫・高橋教之 編:REBECCA
2.「VANITY ANGEL」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
3.「NAVY BLUE」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
4.「COTTON LOVE」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
5.「LITTLE DARLING」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
6.「LADY LADY LADY」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
7.「SUPER GIRL」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
8.「NAKED COLOR」 詞:NOKKO 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
9.「WHEN YOU DANCE WITH ME」 詞:Kim O’Leary 曲:NOKKO 編:REBECCA
10.「ONE WAY OR ANOTHER」
詞:M. Kessley・M.L. Kortes 曲:土橋安騎夫 編:REBECCA
<support musician>
Mike “Dino” Campbell:guitar
是永巧一:guitars
Alan Friedman:percussion・drum programming・sampling/Dinosaur consultant
Fred Maher:percussion・drum programming
中島オバヲ:percussion
Jeff Smith:sax
Toots Thielemans:harmonica
Fonzi Thornton:background vox
Tawatha Agee:background vox
Michelle Oobbs:background vox
Rodney Assue:bass voice instrument
大山曜:synthesizer manipulate
produced by REBECCA
co-produced by Francois Kevorkian
mixing engineered by Michael Hutchinson・Francois Kevorkian
recording engineered by 大森政人・宮島哲博・佐久間よしのり・天童淳・Tad Goto・中村悦弘・Bill Esses・Ron Saint Germain
● 東京&ニューヨーク録音によりバンドの終焉を感じさせる頂点に君臨しつつ潔く解散を決意したラストアルバム
1980年代後期のバンドブームにあってガールズロックの先頭を走り次代を担ったバンドとしてスターロードを邁進していたREBECCA(レベッカ)も、80年代末期となるといよいよバンドの終焉を迎えつつありました。バンドの顔として期待以上の役割を果たし、ロック少女のカリスマにまで登り詰めていたNOKKOと、メンバーチェンジの頻度が高かった初期からもそのサウンドの要としての活躍ぶりは変わらなかった土橋安騎夫の音楽的方向性の違いは、肥大化したスターバンドにありがちな迷走に陥らせるのに十分でした。そんな89年にリリースされた7枚目のアルバムである本作は、ニューヨークと東京の2カ所でのレコーディングを敢行といえば聞こえは良いものの、それはもともとアメリカ進出志向が強かったNOKKOと、レベッカという稀有なバンドの存続を図ろうとした土橋の意向が見え隠れするようで、なんとも複雑な気分のする作品となっています。
そのようないわくつきの本作ですが、サウンド面ではサポートメンバーにsynthesizer manipulatorの大山曜が参加したこともありプログラミングを多用したダンサブルチューンが中心となっています。当然小田原豊がドラムなのでリズムトラックは芯のあるものになってはいますが、音色の加工もふんだんに施されており、その処理はダンスチューン仕様という印象です。そのあたりは共同プロデューサーであるFrancois Kevorkianの色と言えるかもしれません。そんな本作の中でも「VANITY ANGEL」や「COTTON LOVE」、「SUPER GIRL」のようなかつてのレベッカたらしめた王道ガールズロックに回帰したような楽曲を多数収録しているのは、再びバンドとしての結束を確かめていたように思えるのですが、対照的に「NAVY BLUE」や「LADY LADY LADY」、「WHEN YOU DANCE WITH ME」あたりになると典型的な洋楽志向の打ち込みダンスポップで、次のフェーズへ向かおうとしているNOKKOの意思表明のような形になってしまっているので、その両極端な音世界が聴き手にとっては散漫な印象を受けてしまうでしょうし、決してサウンド面でのクオリティは低くないにもかかわらず正当な評価を受けられない要因にもなっていると思われます。ラストの「ONE WAY OR ANOTHER」は「VANITY ANGEL」の英語バージョンという肩透かしで、完全にNOKKOの心が離れてしまった感もあり諦観せざるを得ないエンディングとなった本作というわけで、ツアー終了後活動休止→解散と至ることになるREBECCAですが、時が経てば何とやらということで、数度の再結成を果たすこととなります。
<Favorite Songs>
・「BLOND SAURUS」
パワフルなドラムの導かれきらびやかなシンセがフィーチャーされた気合いの乗ったREBECCA'sロックチューン。音の分離も良くシンセベースの深みもあり、サウンド面の充実ぶりは集大成的なものも感じられます。
・「VANITY ANGEL」
洗練されたメロディとサウンドで疾走感も衰えを知らない先行シングル。ベル系とパッド系の音色により緩急がつけられた土橋のシンセワークは王道のREBECCAサウンドそのものですが、特にこの楽曲ではその音の置き方のテクニックが際立っているように思われます。
・「WHEN YOU DANCE WITH ME」
本作中ただ1曲のNOKKO作曲の英語詞ダンスチューン。軽快なリズムギターとシンセベースに乗った外タレコーラスに乗ったヴォーカルは、既にREBECCA色は失い完全にソロアーティスト然としています。リズムボックスのリズム隊はこれまでのREBECCA楽曲にはなかったもので、この楽曲で解散は決定的になったかもしれません。しかし楽曲単体としてはダンサブルPOPSとして質は高いです。
<評点>
・サウンド ★★★ (多彩なシンセワークとエフェクト処理は匠の域に)
・メロディ ★ (名曲度は落ちたものの安定感は感じられる)
・リズム ★★ (生ドラムはパワフルだが洗練されたのが逆に薄味に)
・曲構成 ★ (特に後半は洋楽志向が強く感じられ個性を失う)
・個性 ★ (志向が散漫な印象はあるが最後の意地は見せたか)
総合評点: 6点
「N°1」 IX・IX
「N°1」(1989 アルファムーン)
IX・IX

<members>
山本振市:vocals・guitars・background vocals
山本洸盟:drums・percussions・background vocals
山本一留成:vocals・keyboards・background vocals
1.「Take me with you」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
2.「Turning Back」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本一留成 編:IX・IX
3.「laughter in the sun」 詞:山本振市・山本洸盟 曲:山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
4.「Dreaming」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
5.「Moon Blue」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
6.「Heartbeat」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
7.「my way my love」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
8.「Oh! Lady」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
9.「Gypsy Girl」 詞:山本洸盟・山本一留成 曲:山本一留成 編:IX・IX
10.「Faces」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
<support musician>
Steve Lukather:guitars
鈴木茂:guitars
Carmen Mosier:acoustic guitar
Neil Stubenhaus:bass
重実徹:electric piano・acoustic piano
難波弘之:electric piano・acoustic piano
Paulinho Da Costa:percussion
Brandon Fields:sax
Glen Garrett:sax
Rick Riso:background vocals
Tim Hosman:background vocals
石川鉄男:synthesizer operate
林秀幸:synthesizer operate
福田竜太:synthesizer operate
produced by IX・IX
mixing engineered by 伊東俊郎・佐藤康夫
recording engineered by Mark Jackson・Peter Woodford・David Glover・Brian Soucy・中村辰也・佐藤康夫
● やんちゃだったエレポップ3兄弟が洗練された大人のAORポップユニットとして帰って来た再デビューアルバム
後藤次利プロデュースにより1983年にデビューしたタキシード姿も麗しい3兄弟ユニットIKOSHINの音楽性は過激なエレクトリックビートとニューロマンティクス感たっぷりのヴォーカル&パフォーマンスで、ヴィジュアル面でも先鋭的な感覚を持ちながらもいまいちブレイクしきれずに2枚のミニアルバムを残し2年間にわたる活動を休止してしまい、音楽界からは忘れかけた存在となっていました。その後音楽界はさらなるテクノロジーの進歩によりエレクトリックサウンドの手法は一般化かつ過激化していったわけですが、それが飽和状態に達した89年に再び彼らは音楽界に姿を現し、X・IX(アイクス・アイクス)という新しいグループ名のもと1stアルバムである本作をリリースします。5年の歳月を経て大人になった彼らが80年代末期に世に問うたサウンドとはいかなるものだったのでしょうか。
IKOSHIN時代からも後藤次利のサポートがありながらも3兄弟による楽曲制作を行っていましたが、本作では既に独り立ちしたかのような安定感を作品全体から感じ取ることができます。しかし5年前のハイパーエレクトロ連打ビートの面影はリズム音色の残滓にとどまっており、(もちろんビート構築のキレにはセンスを感じますが)よりポップネスに舵を切ったサウンドを志向しています。また2曲は大物ギタリスト鈴木茂のプロデュースを受けていますが、これも安定期に入った山本3兄弟の象徴ともいうべきAORアプローチ満載の音づくりなので、IKOSHIN時代の音を期待していたリスナーにとっては肩透かしを食らうかもしれません。しかしながらもともとが帰国子女であるための洋楽志向である彼らがTOTOのSteve Lukatherをゲストに迎えてまで西海岸風AORへ傾倒していくのは当然の帰結とも言えるでしょう。そのようなわけで何とも薄味な音楽性に落ち着いたと揶揄された彼らですが、救いは89年という時代性からのパワーが残るリズムトラックで、この厚みのあるビート構築があるこそ美しいメロディが引き立つわけで、埋没しがちな個性を掘り起こすことにも成功していると思われます。結局この手法も長くは続かず、翌年2ndアルバム「Stories」を発表後は再び眠りにつくことになりますが、日本人らしからぬ安定感と美意識を兼ね備えていたグループであったと思うので、再評価を期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Take me with you」
落ち着いたサウンドと美メロをアピールしたオープニングナンバー。ファンタジック系とメタリック系を駆使したシンセ音色がオシャレで、曲調にスパイスを与えるいななきギターも良いですが、ラストの転調とジャラ〜ンとしたギターが美しいです。
・「Heartbeat」
柔らかいシンセパッドが染み渡る英詞ミディアムチューン。サックスもフィーチャーされたムーディーなAORに終わらないのはタイトに主張するスネア音色に他なりません。
・「Gypsy Girl」
これもインダストリアルなリズム音色で個性を際立たせるAOR歌謡。楽曲としてはソフトタッチの美メロPOPSと終えますが、延々と続くガシンッ!ガシンッ!というスネアが耳について仕方がありません。
<評点>
・サウンド ★★ (派手さはないものの隙のなさに成長を感じる)
・メロディ ★★ (センスは感じるがどこか煮え切らなさも感じる不安)
・リズム ★★ (打ち込みによる正確性とタイトな音色が光る)
・曲構成 ★ (ポップ性を追求するあまり似たような楽曲が集まる)
・個性 ★ (感覚の鋭さは年齢を重ねるごとに衰えてた感もあり)
総合評点: 6点
IX・IX

<members>
山本振市:vocals・guitars・background vocals
山本洸盟:drums・percussions・background vocals
山本一留成:vocals・keyboards・background vocals
1.「Take me with you」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
2.「Turning Back」 詞:山本洸盟・松尾由起夫 曲:山本一留成 編:IX・IX
3.「laughter in the sun」 詞:山本振市・山本洸盟 曲:山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
4.「Dreaming」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
5.「Moon Blue」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
6.「Heartbeat」 詞:山本洸盟 曲:山本振市 編:IX・IX
7.「my way my love」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX・鈴木茂
8.「Oh! Lady」 詞:山本洸盟 曲:山本振市・山本一留成 編:IX・IX
9.「Gypsy Girl」 詞:山本洸盟・山本一留成 曲:山本一留成 編:IX・IX
10.「Faces」 詞:山本振市 曲:山本一留成 編:IX・IX
<support musician>
Steve Lukather:guitars
鈴木茂:guitars
Carmen Mosier:acoustic guitar
Neil Stubenhaus:bass
重実徹:electric piano・acoustic piano
難波弘之:electric piano・acoustic piano
Paulinho Da Costa:percussion
Brandon Fields:sax
Glen Garrett:sax
Rick Riso:background vocals
Tim Hosman:background vocals
石川鉄男:synthesizer operate
林秀幸:synthesizer operate
福田竜太:synthesizer operate
produced by IX・IX
mixing engineered by 伊東俊郎・佐藤康夫
recording engineered by Mark Jackson・Peter Woodford・David Glover・Brian Soucy・中村辰也・佐藤康夫
● やんちゃだったエレポップ3兄弟が洗練された大人のAORポップユニットとして帰って来た再デビューアルバム
後藤次利プロデュースにより1983年にデビューしたタキシード姿も麗しい3兄弟ユニットIKOSHINの音楽性は過激なエレクトリックビートとニューロマンティクス感たっぷりのヴォーカル&パフォーマンスで、ヴィジュアル面でも先鋭的な感覚を持ちながらもいまいちブレイクしきれずに2枚のミニアルバムを残し2年間にわたる活動を休止してしまい、音楽界からは忘れかけた存在となっていました。その後音楽界はさらなるテクノロジーの進歩によりエレクトリックサウンドの手法は一般化かつ過激化していったわけですが、それが飽和状態に達した89年に再び彼らは音楽界に姿を現し、X・IX(アイクス・アイクス)という新しいグループ名のもと1stアルバムである本作をリリースします。5年の歳月を経て大人になった彼らが80年代末期に世に問うたサウンドとはいかなるものだったのでしょうか。
IKOSHIN時代からも後藤次利のサポートがありながらも3兄弟による楽曲制作を行っていましたが、本作では既に独り立ちしたかのような安定感を作品全体から感じ取ることができます。しかし5年前のハイパーエレクトロ連打ビートの面影はリズム音色の残滓にとどまっており、(もちろんビート構築のキレにはセンスを感じますが)よりポップネスに舵を切ったサウンドを志向しています。また2曲は大物ギタリスト鈴木茂のプロデュースを受けていますが、これも安定期に入った山本3兄弟の象徴ともいうべきAORアプローチ満載の音づくりなので、IKOSHIN時代の音を期待していたリスナーにとっては肩透かしを食らうかもしれません。しかしながらもともとが帰国子女であるための洋楽志向である彼らがTOTOのSteve Lukatherをゲストに迎えてまで西海岸風AORへ傾倒していくのは当然の帰結とも言えるでしょう。そのようなわけで何とも薄味な音楽性に落ち着いたと揶揄された彼らですが、救いは89年という時代性からのパワーが残るリズムトラックで、この厚みのあるビート構築があるこそ美しいメロディが引き立つわけで、埋没しがちな個性を掘り起こすことにも成功していると思われます。結局この手法も長くは続かず、翌年2ndアルバム「Stories」を発表後は再び眠りにつくことになりますが、日本人らしからぬ安定感と美意識を兼ね備えていたグループであったと思うので、再評価を期待したいところです。
<Favorite Songs>
・「Take me with you」
落ち着いたサウンドと美メロをアピールしたオープニングナンバー。ファンタジック系とメタリック系を駆使したシンセ音色がオシャレで、曲調にスパイスを与えるいななきギターも良いですが、ラストの転調とジャラ〜ンとしたギターが美しいです。
・「Heartbeat」
柔らかいシンセパッドが染み渡る英詞ミディアムチューン。サックスもフィーチャーされたムーディーなAORに終わらないのはタイトに主張するスネア音色に他なりません。
・「Gypsy Girl」
これもインダストリアルなリズム音色で個性を際立たせるAOR歌謡。楽曲としてはソフトタッチの美メロPOPSと終えますが、延々と続くガシンッ!ガシンッ!というスネアが耳について仕方がありません。
<評点>
・サウンド ★★ (派手さはないものの隙のなさに成長を感じる)
・メロディ ★★ (センスは感じるがどこか煮え切らなさも感じる不安)
・リズム ★★ (打ち込みによる正確性とタイトな音色が光る)
・曲構成 ★ (ポップ性を追求するあまり似たような楽曲が集まる)
・個性 ★ (感覚の鋭さは年齢を重ねるごとに衰えてた感もあり)
総合評点: 6点